【解決手段】プログラムは、法定通貨による入金額を設定する設定入力を受け付け、前記入金額から、仮想通貨に換金する換金額を設定する設定入力を受け付け、前記換金額に応じた前記仮想通貨を取得し、取得した前記仮想通貨を運用するトランザクションを実行し、運用により運用益が発生したか否かを判定し、前記運用益が発生したと判定した場合、前記入金額から前記換金額を差し引いた保持額と、運用に用いる前記仮想通貨の保有量とを調整するトランザクションを実行する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
法定通貨による入金額から、決済処理のために保持する保持額と、仮想通貨に換金する換金額との配分を設定する設定入力を受け付け、前記換金額に応じた前記仮想通貨を取得し、取得した前記仮想通貨を運用するトランザクションを実行し、前記保持額に基づく決済処理の実行を要求する、処理を第1コンピュータに実行させる第1プログラムを、前記第1コンピュータにインストールさせるべく送信し、
所定条件を満たした場合、前記決済処理に利用可能な特典情報を前記第1コンピュータに対して発行し、前記第1コンピュータから前記決済処理の実行要求を受け付け、前記特典情報を用いた前記決済処理を実行する、処理を第2コンピュータに実行させる第2プログラムを、前記第2コンピュータにインストールさせるべく送信し、前記第1コンピュータ及び第2コンピュータにより構成される仮想通貨取引システムを製造する製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、情報処理システムの構成例を示す模式図である。本実施の形態では、仮想通貨を用いた運用処理と、法定通貨による電子決済処理とを行う情報処理システムについて説明する。情報処理システムは、情報処理装置1、端末装置2、及び店舗端末3を含む。各装置は、インターネット等のネットワークNを介して相互に通信接続されている。
【0011】
情報処理装置1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能な情報処理装置であり、例えばサーバ装置、パーソナルコンピュータ等である。本実施の形態で情報処理装置1はサーバ装置であるものとし、以下では簡潔のためサーバ1と読み替える。サーバ1は、仮想通貨の取引所、販売所等として機能し、ユーザから入金を受け付けて仮想通貨を売買する運用処理を行う。同時に、サーバ1は電子決済サービスを提供する決済処理装置としても機能し、ユーザが法定通貨により入金した入金額を限度とした電子決済処理を行う。
【0012】
端末装置2は、ユーザが所有する情報処理端末であり、例えばスマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等である。以下では簡潔のため、端末装置2を端末2と読み替える。端末2には、サーバ1が提供するアプリケーションプログラム、具体的には仮想通貨のウォレットとして機能するアプリケーションプログラムがインストールされている。ユーザは当該ウォレットにより仮想通貨を保有する。さらに当該ウォレットは、仮想通貨を保有するためのウォレットとしてだけでなく、所定の店舗で電子決済を行うための電子ウォレットとしても機能する。ユーザは入金額の一部を仮想通貨ではなく法定通貨のままウォレットにチャージしておき、チャージ金額を限度として、店舗での商品又はサービスの購入に伴う電子決済サービスを受けることができる。
【0013】
店舗端末3は、サーバ1が提供する電子決済サービスに加盟する加盟店に設置された端末装置である。本システムで提供する電子決済サービスには一又は複数の加盟店が加入しており、ユーザは各加盟店で電子決済を受けることができる。店舗端末3は、ユーザの端末2とNFC(Near Field Communication)通信等により通信を行って電子決済要求を受け付け、サーバ1に対して電子決済の承認要求を行う。決済を承認した場合、サーバ1は加盟店に対して商品又はサービスの購入額分の送金を行う。
【0014】
図2は、サーバ1及び端末2の構成例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、主記憶部12、通信部13、及び補助記憶部14を備える。
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有し、補助記憶部14に記憶されたプログラムP1を読み出して実行することにより、サーバ1に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の一時記憶領域であり、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部13は、通信に関する処理を行うための処理回路等を含み、端末2等と情報の送受信を行う。
【0015】
補助記憶部14は大容量メモリ、ハードディスク等であり、制御部11が処理を実行するために必要なプログラムP1、その他のデータを記憶している。また、補助記憶部14は、ユーザDB141及び加盟店DB142を記憶している。ユーザDB141は、各ユーザのウォレットの情報を記憶している。加盟店DB142は、各加盟店の情報を記憶している。
【0016】
なお、補助記憶部14はサーバ1に接続された外部記憶装置であってもよい。また、サーバ1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであってもよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0017】
また、本実施の形態においてサーバ1は上記の構成に限られず、例えば可搬型記憶媒体に記憶された情報を読み取る読取部等を含んでもよい。
【0018】
端末2は、制御部21、主記憶部22、通信部23、表示部24、入力部25、位置取得部26、補助記憶部27を備える。
制御部21は、一又は複数のCPU、MPU等の演算処理装置を有し、補助記憶部27に記憶されたプログラムP2を読み出して実行することにより、端末2に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。主記憶部22は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の一時記憶領域であり、制御部21が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部23は、通信を行うためのアンテナ、処理回路等を含み、サーバ1等と情報の送受信を行う。表示部24は、液晶ディスプレイ、有機EL(Elector Luminescence)ディスプレイ等の表示装置であり、制御部21から与えられた画像を表示する。入力部25は、例えばタッチパネル、メカニカルキー等の操作部品であり、ユーザからの操作入力を受け付ける。位置取得部26は、端末2の位置情報、例えばGPS(Global Positioning System)情報を取得する。
【0019】
補助記憶部27は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリであり、制御部21が処理を実行するために必要なプログラムP2、その他のデータを記憶している。また、補助記憶部27は、ユーザが保有する仮想通貨のデータ、及び電子決済用にチャージされているチャージ金額のデータを含む、ウォレット201のデータを記憶している。ウォレット201には、仮想通貨ウォレットに係るウォレットアドレス、秘密鍵等の情報を保持している。
【0020】
図3は、ユーザDB141及び加盟店DB142のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。ユーザDB141は、ユーザID列、ユーザ名列、ウォレットアドレス列、決済情報列、設定情報列を含む。ユーザID列は、各ユーザを識別するためのIDを記憶している。ユーザ名列は、ユーザIDと対応付けて、各ユーザの氏名を記憶している。ウォレットアドレス列は、ユーザIDと対応付けて、各ユーザのウォレット201のウォレットアドレスを記憶している。決済情報列は、ユーザIDと対応付けて、ユーザのウォレット201にチャージされているチャージ残高、決済履歴等の情報を記憶している。設定情報列は、ユーザIDと対応付けて、後述する仮想通貨の運用ポリシーを規定する設定情報を記憶している。設定情報は、例えば運用する仮想通貨の売買限度額、数量、種類、運用方法、運用取引の相手方である取引相手、運用を行う際のユーザの許諾の有無等、多岐にわたる。仮想通貨の運用処理について、詳しくは後述する。
【0021】
加盟店DB142は、加盟店ID列、店舗名列、住所列、送金先列を含む。加盟店ID列は、各加盟店を識別するためのIDを記憶している。店舗名列は、加盟店IDと対応付けて、各加盟店の名称を記憶している。住所列は、加盟店IDと対応付けて、各加盟店の住所を記憶している。送金先列は、加盟店IDと対応付けて、電子決済に係る決済額の送金先に関する情報(例えば加盟店の金融口座番号)を記憶している。
【0022】
図4は、情報処理システムの構成例を示す機能ブロック図である。
図4に基づき、各装置の機能構成について説明する。
端末2は、ウォレット201、及びマイニング部202を有する。ウォレット201は、仮想通貨のウォレット、及び電子決済ウォレットとして機能する。ウォレット201は、ユーザから法定通貨により入金された入金額を、仮想通貨に換金する換金額と、電子決済用に保持する保持額(チャージ金額)とに配分する配分設定を受け付ける。ウォレット201は、換金額相当の仮想通貨を取得するようサーバ1に要求し、サーバ1は、ウォレット201からの要求に従って換金額相当の仮想通貨を仮想通貨の発行元、あるいは仮想通貨を保有する他のユーザから取得(購入)し、端末2のウォレット201に格納する。
【0023】
図5は、入金画面の一例を示す説明図である。端末2はプログラムP2を実行し、
図5に示す入金画面を表示部24に表示する。入金画面は、ウォレットアドレス入力欄51、入金額欄52、チャージ金額欄53、通貨選択欄54、換金額欄55を含む。ウォレットアドレス入力欄51は、ユーザのウォレットアドレスを入力するための入力欄である。ユーザは、予め開設してある自己のウォレットアドレスをウォレットアドレス入力欄51に入力する。なお、ウォレットアドレスは予めアプリケーションプログラム上に登録されていてもよい。
【0024】
入金額欄52は、ユーザが入金する入金額を設定するための入力欄である。ユーザは入金額欄52に任意の入金額を入力し、銀行振込等の手段で本システムの管理者宛に入金を行う。
【0025】
チャージ金額欄53は、入金額のうち、電子決済用にウォレット201にチャージ(保持)しておく金額を設定するための入力欄である。ユーザは、入金額欄52で設定した入金額のうち、電子決済用に保持しておく金額を設定する。
【0026】
通貨選択欄54は、入金額の一部を換金する仮想通貨を選択するための選択欄である。ユーザは通貨選択欄54において、任意の仮想通貨を選択する。換金する仮想通貨は、例えばビットコイン(登録商標)、イーサリアム等の既存の仮想通貨、あるいは企業、個人等が発行する新規仮想通貨のように、一般に流通する仮想通貨である。又は、本システム独自の仮想通貨であってもよい。本実施の形態ではまず、本システムで取り扱う仮想通貨は一般に流通している仮想通貨であるものとして説明する。
【0027】
換金額欄55は、入金額のうち、仮想通貨に換金する換金額を設定するための入力欄である。ユーザは換金額欄55により、通貨選択欄54で選択した仮想通貨に換金する換金額を設定する。なお、
図5では換金額のみが換金額欄55に図示してあるが、端末2は換金額(法定通貨の額)以外に、換金後の仮想通貨の数量も併せて表示してよい。
【0028】
入金画面での設定登録完了後、サーバ1は、通貨選択欄54で選択された仮想通貨を、換金額欄55で設定された換金額に相当する分だけ取得するトランザクションを実行する。例えばサーバ1は、ウォレットアドレスを有する各ノード(他の保有者)に対し、購入申込をブロードキャストで送信し、他の保有者から仮想通貨を取得する。サーバ1は、取得した仮想通貨を端末2に送信してウォレット201に格納する。また、サーバ1は、チャージ金額欄53で設定されたチャージ金額をユーザDB141に記憶する。
【0029】
なお、
図5で示すように、端末2は複数の通貨選択欄54及び換金額欄55を表示し、複数種類の仮想通貨を設定可能としてある。これにより、ウォレット201には複数種類の仮想通貨が保持される。
【0030】
入金額の配分設定後、端末2は不図示の設定画面において、後述する仮想通貨の運用を行うための事前設定を受け付ける。設定される情報は、例えば運用する仮想通貨の売買限度額(仮想通貨を購入する際の上限額及び売却する際の下限額)、数量、種類、運用方法、運用取引の相手方である取引相手、運用を行う際のユーザの許諾の有無等である。本実施の形態では、仮想通貨の運用方法として、ユーザが保有する仮想通貨を他の仮想通貨又は法定通貨に換金する通貨(リバランス)運用、仮想通貨を所定の金融機関に出資(預金)する出資運用、企業等が新規に発行する新規仮想通貨や株式、債券、その他の投資銘柄を売買する投資運用などである。これらの運用方法について、詳しくは後述する。ユーザは端末2を操作して、仮想通貨を運用する際のポリシーを事前に設定し、サーバ1に送信する。
【0031】
上述の配分設定操作により、ウォレット201にはユーザが保有する仮想通貨のデータが格納されると共に、入金額の一部がチャージされた状態となる。つまり、ウォレット201は仮想通貨のウォレットとしても機能し、電子決済用のウォレットとしても機能する。ウォレット201は、サーバ1と通信を行って仮想通貨の売買、預金、投資等の運用処理を行うと同時に、店舗端末3と通信を行って電子決済処理を行う。また、後述するように、ウォレット201はユーザが保有する仮想通貨と、電子決済用にチャージしてある法定通貨との間の自動調整を行い、両者を相互に換金する処理を行う。当該処理について、詳細は後述する。
【0032】
図4に戻って、マイニング部202は端末2を仮想通貨のマイナーとして機能させ、マイニングに係る演算処理を実行する。例えば仮想通貨に係るブロックチェーンがProof of Workに係るアルゴリズムを採用している場合、マイニング部202は、ブロックチェーン上のトランザクションデータのハッシュ値から正解のナンス値を探索する演算処理を実行する。なお、マイニングに参加するか否かはユーザによる任意の設定事項であり、マイニングに参加しない場合、端末2はマイニングに係る処理を実行せずともよい。
【0033】
サーバ1は、決済処理部101、運用処理部102、リバランス部103、預金処理部104、投資管理部105、通貨情報取得部106、投資情報取得部107を有する。
決済処理部101は、店舗端末3からの決済承認要求を受け付け、ウォレット201にチャージされているチャージ金額を確認して決済承認を行う処理を行う。既に述べたように、ユーザが加盟店で商品又はサービスを購入するに伴い、端末2は店舗端末3との間でNFC通信を行い、電子決済処理を要求する。決済要求を受け付けた場合、店舗端末3は決済処理部101に対して電子決済を承認するよう要求する。決済処理部101は当該要求に対し、ユーザDB141に記憶されているチャージ金額(残高)を確認し、決済を承認する。その後、例えば決済処理部101は銀行等の金融機関のシステムに対して購入額相当の送金要求を送信し、金融機関のシステムが加盟店への送金を行う。
【0034】
運用処理部102は、ユーザが保有する仮想通貨を運用する運用処理を行う。本実施の形態でサーバ1は、ユーザが法定通貨から換金した仮想通貨の一部又は全部を、等金額リバランス、預金運用、投資運用等により運用する処理を行い、運用益の獲得を図る。
【0035】
具体的には、運用処理部102はリバランス部103、預金処理部104、及び投資管理部105を動作させ、仮想通貨の運用を行う。リバランス部103は、仮想通貨と法定通貨との間の等金額リバランス、あるいは複数の仮想通貨の間の等金額リバランスに係る演算処理を実行する。リバランス部103は、通貨情報取得部106がネットワークNを介して取得した各仮想通貨の時価価値に関する情報(以下、「通貨情報」と呼ぶ)を元に、ウォレット201内の仮想通貨の保有量と、決済用にチャージしてある法定通貨の保持額とを調整する。または、ユーザが複数種類の仮想通貨を保有している場合、リバランス部103は各仮想通貨の保有量を調整する。
【0036】
図6は、リバランス処理を説明するための説明図である。
図6では、仮想通貨と法定通貨との間で保有量を調整する様子を、概念的に図示している。
図6に基づき、ウォレット201内の各通貨のリバランス処理について説明する。
【0037】
図6Aでは、初期時点におけるウォレット201内の各通貨の保有量を概念的に図示している。
図6Aでは説明の便宜上、ハッチング付きの矩形枠にて「Coin X」で示す仮想通貨と、白抜きの矩形枠にて「JPY」で示す日本円とが、初期時点で等しい割合でウォレット201に管理されているものとする。
【0038】
図6Bでは、一定期間が経過し、ユーザが保有する仮想通貨の価値が上昇した場合を図示している。例えば一定期間でユーザが保有する仮想通貨の時価価値が増大した場合、ユーザは運用益を獲得する。あるいは後述する他の仮想通貨との間の交換、預金運用、投資運用等によって、運用益を獲得する。
【0039】
運用益が発生した場合、リバランス部103は等金額リバランスに基づくトランザクション処理を実行し、仮想通貨と法定通貨との間の換金を行って各通貨の保有量を調整する。等金額リバランスは、金融分野における投資手法の一つであり、複数の投資銘柄の間で資産価値が等分されるよう保有量を調整する分散運用手法である。
【0040】
図6Cでは、リバランス後の各通貨の保有量を概念的に図示している。
図6Bで示したように、仮想通貨による運用益が発生した場合、リバランス部103は、当該運用益の額を特定する。リバランス部103はまず、特定した運用益のうち、一部を積立用に分離する。
図6Cでは、運用益の3分の1程度が積み立てられている。なお、積立の割合は任意の設定事項であり、例えばユーザが自ら希望する割合を設定してよい。積立額に相当する仮想通貨は以降の処理において運用に用いられず、ウォレット201に格納されたままになる。これにより、運用益の一部が自動的に分離され、貯蓄される。
【0041】
なお、リバランス部103は積立用に分離した運用益の一部を、仮想通貨ではなく、法定通貨に換金して保持するようにしても良い。仮想通貨よりも価格変動の少ない法定通貨で積み立てておくことで、ユーザの貯蓄がより安定する。
【0042】
次にリバランス部103は、残りの運用益のうち、半分を法定通貨に換金する。
図6Cでは、運用益の3分の1が法定通貨に換金されている。換金された法定通貨はウォレット201において決済用にチャージされ、ユーザは加盟店での電子決済に利用可能となる。
【0043】
上記のように、リバランス部103は運用益を仮想通貨と法定通貨とに等配分し、各通貨の保有量を調整する。これにより、価値が激しく変動する仮想通貨を運用するに際してリスク分散がなされ、極端な運用が是正される。また、ウォレット201のチャージ金額を自動的に増大させることができ、ユーザは加盟店での決済を行う都度新たにチャージを行う必要がなくなり、利便性を向上させることができる。
【0044】
図7は、複数の仮想通貨に跨るリバランス処理を説明するための説明図である。
図6では簡潔のため、一の仮想通貨と法定通貨との間の等金額リバランスについて説明したが、ユーザが複数種類の仮想通貨を保有する場合、リバランス部103は各通貨の間の等金額リバランスを行う。例えば
図7Aのように各仮想通貨の価値が増減した場合、リバランス部103は通貨情報に基づいて各通貨での収益及び損益を特定する。リバランス部103は、収益が発生している仮想通貨は収益の一部又は全部を売却し、損益が発生している仮想通貨は損益の一部又は全部に相当する数量を購入する。これにより、
図7Bに示すように、リバランス部103は各通貨の保有量を調整する。そしてリバランス部103は、総合的に収益が発生している場合、仮想通貨とチャージ金額との間で保有量を調整し、各仮想通貨、及びチャージ金額の保有価値が等しくなるよう配分する。
【0045】
上記のように、リバランス部103は等金額リバランスの手法を利用し、仮想通貨とチャージ金額との間の保有量、又は仮想通貨間の保有量を調整する。これにより、ユーザは安定した仮想通貨の運用を行うことができる。同時に、仮想通貨にて運用益(収益)が発生した場合のみチャージ金額(法定通貨)との間の換金が行うようにすることで、ウォレット201にチャージされている金額が減少することはなく、加盟店での商品購入時に決済額が不足するような事態を防止することができる。
【0046】
上記ではウォレット201内で仮想通貨とチャージ金額(法定通貨)との間の、あるいは仮想通貨間の運用を行う旨を述べたが、本実施の形態においてサーバ1はウォレット201内の運用だけでなく、外部の機関を取引相手として、他の手法による仮想通貨の運用も行う。
【0047】
図4に戻って説明を続ける。預金処理部104は、ユーザが保有する仮想通貨を、所定の金融機関に出資(預金)し、配当を受ける処理を行う。例えば預金処理部104は、ユーザが保有する仮想通貨の一部又は全部を、銀行、取引所等の金融機関に送信(送金)するトランザクションを実行する。預金処理部104は、一定期間後に金融機関から出資額に応じた配当を受け、配当分をウォレット201に返信する。例えば端末2は、出資(預金)を行うか否か、どの金融機関に出資するか、及び出資する仮想通貨の数量を設定する設定入力をユーザから事前に受け付け、設定内容をユーザDB141に保存する。預金処理部104は、ユーザによる設定内容に従ってウォレット201内の仮想通貨を金融機関に送金し、金融機関との定めに従って配当を受ける。
【0048】
投資管理部105は、所謂ICO(Initial Coin Offering)等によって企業、個人、その他の機関に対して投資する処理を実行する。ICOを一例に説明すると、投資管理部105は企業等から新規仮想通貨(トークン)の発行に係る公開情報を取得し、端末2に通知する。ユーザは投資管理部105から通知された公開情報(例えば発行元である企業の事業内容、トークンの販売額等)を参考に、自らが保有する仮想通貨を元手に(あるいは新規に法定通貨の入金を行い、入金額を元手にしてもよい)新規仮想通貨を購入するか否かを端末2に入力する。端末2は、入力内容を元に、サーバ1に対して新規仮想通貨を取得(購入)するよう要求する。投資管理部105は、端末2からの要求に基づき新規発行通貨を取得し、ウォレット201に送信する。
【0049】
なお、上記ではユーザ自身がICOに係る意思決定を行うことにしたが、例えば本システムの管理者とユーザとの間で投資運用に係る契約を結び、ユーザに代わるオペレータが意思決定を行うようにしてもよい。また、意思決定自体を自動化し、サーバ1が発行元の企業等から受けた情報を元に投資を行うか否かを判定し、自動的に新規通貨の取得を行うようにしてもよい。例えばユーザはこれらの運用ポリシーを事前に設定し、ユーザDB141に保存しておく。サーバ1はユーザDB141に保存された運用ポリシーに係る設定情報に従い、投資運用に関わるトランザクションを実行する。
【0050】
また、上記ではICOを一例に投資運用の説明を行ったが、例えば株式、債券、その他の投資銘柄を投資対象としてもよい。つまり、投資対象は仮想通貨に限定されず、その他の資産であってよい。
【0051】
以上より、本システムは一のウォレット201において、仮想通貨の運用と、法定通貨による決済とを実現する。入金額の一部を、価値が安定している法定通貨のまま決済用にチャージしておき、加盟店での決済に利用することで、安定した決済が可能となる。また、仮想通貨を通貨間のリバランス、金融機関への預金、企業への投資等に充てることで、運用益獲得を図り、ユーザが保有する資産価値を増大させることができる。さらに、仮想通貨の時価価値に応じて運用益をチャージ金額に還元することで、利便性をさらに高めることができる。
【0052】
図8は、配分設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8に基づき、法定通貨及び仮想通貨の配分を設定する処理について説明する。
端末2の制御部21は、ユーザによる操作入力に従い、
図5で例示した入金画面を表示する(ステップS11)。制御部21は、当該入金画面を介して、法定通貨による入金額を設定する設定入力を受け付ける(ステップS12)。
【0053】
さらに制御部21は、入金額のうち、法定通貨により保持しておく保持額と、仮想通貨に換金する換金額との配分を設定する設定入力を受け付ける(ステップS13)。具体的には、制御部21は、決済用にチャージしておくチャージ金額の設定入力を受け付けると共に、換金する仮想通貨の種類、及び各仮想通貨に換金する換金額の設定入力を受け付ける。
【0054】
さらに制御部21は、仮想通貨の運用ポリシーを規定する設定情報の入力を受け付ける(ステップS14)。ステップS14で設定される情報は、例えば運用する仮想通貨の売買限度額(仮想通貨を購入する際の上限額及び売却する際の下限額)、数量、種類、運用方法、運用の相手方である取引相手、運用に係るトランザクションを実行する際のユーザの許諾の有無等である。運用方法は、上述の如く、例えばユーザが保有する仮想通貨を他の仮想通貨又は法定通貨に換金する通貨自体の運用、仮想通貨を所定の金融機関に出資(預金)する出資運用、企業等が新規に発行する新規仮想通貨や株式、債券、その他の投資銘柄の売買運用などであるが、これらに限定されるものではない。ユーザは端末2を操作して、仮想通貨を運用する際のポリシーを事前に設定し、サーバ1に送信する。サーバ1はユーザの仮想通貨を運用する際、設定情報に規定された運用ポリシーに従って運用(トランザクション)を行う。制御部21は、ステップS13で設定された入金額の配分、及びステップS14で設定された設定情報をサーバ1に通知する(ステップS15)。
【0055】
端末2から通知を取得した場合、サーバ1の制御部11は、ユーザからの入金があったか否かを判定する(ステップS16)。未入金であると判定した場合(S16:NO)、制御部11は処理を待機する。入金があったと判定した場合(S16:YES)、制御部11は、ステップS13で設定された保持額(チャージ金額)、及びステップS15で入力された設定情報をユーザDB141に記憶する(ステップS17)。さらに制御部11は、ステップS13で設定された換金額に相当する仮想通貨をネットワークN上から取得(購入)し、端末2に送信(送金)するトランザクションを実行する(ステップS18)。端末2の制御部21は、サーバ1から受信した仮想通貨のデータを補助記憶部27(ウォレット201)に記憶し(ステップS19)、一連の処理を終了する。
【0056】
図9は、決済処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9に基づき、決済処理の処理内容について説明する。
サーバ1の制御部11は、加盟店の店舗端末3から、商品又はサービスの購入に伴う電子決済処理の承認要求を受け付ける(ステップS31)。例えば端末2は店舗端末3とNFC通信を行い、決済処理の実行を店舗端末3に要求する。当該実行要求を受け付けた場合、店舗端末3は商品又はサービスの購入額分の決済を承認するようサーバ1に要求する。承認要求を受け付けた場合、制御部11はユーザDB141を参照して、ウォレット201に保持されている保持額(チャージ金額の残高)に基づき、決済を承認するか否かを判定する(ステップS32)。決済を承認すると判定した場合(S32:YES)、制御部11は、決済を承認する旨を店舗端末3に返信する(ステップS33)。また、制御部11は、購入額分の送金を行う決済処理を実行する(ステップS34)。例えば制御部11は、銀行等の金融機関に対して送金要求を送信し、金融機関のシステムが送金を行う。決済を承認しないと判定した場合(S32:NO)、制御部11は、決済承認を拒否する旨を店舗端末3に返信する(ステップS35)。制御部11は、一連の処理を終了する。
【0057】
図10は、運用処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10に基づき、仮想通貨の運用処理の処理内容について説明する。
例えばサーバ1の制御部11は、バッチ処理により以下の処理を実行する。制御部11は、ユーザが保有する仮想通貨を運用するトランザクションを実行する(ステップS51)。例えば制御部11は、上述の如く、ユーザが保有する仮想通貨の一部又は全部を金融機関に送信することで、出資額に応じた配当を得るトランザクションを実行する。また、例えば制御部11は、ユーザが保有する仮想通貨を用いて、企業、個人等から新規に発行される仮想通貨(トークン)を取得(購入)するトランザクションを実行する。その他、制御部11はユーザが保有する仮想通貨を元手に、株式、債券等の銘柄の売買などを行う。これらの運用方法は一例であって、制御部11はユーザが保有する仮想通貨を元手に運用を行うことができればよい。
【0058】
制御部11は、本システムで取り扱う各仮想通貨の通貨情報を、ネットワークNを介して取得する(ステップS52)。通貨情報は、仮想通貨の時価価値を示す情報である。制御部11は、取得した通貨情報に基づき、ステップS51の処理により発生した運用益を特定する(ステップS53)。
【0059】
制御部11は、特定した運用益に基づき、ウォレット201にてユーザが保有する仮想通貨の保有量と法定通貨の保持額とを調整、又はユーザが保有する複数の仮想通貨の保有量を調整するトランザクションを実行する(ステップS54)。例えば制御部11は、上述の如く、仮想通貨の運用によって運用益(収益)が発生しているか否かを判定し、運用益が発生している場合、運用益を仮想通貨と法定通貨とに等配分するトランザクションを実行する。この場合に、例えば制御部11は運用益の一部を積立額として、仮想通貨のまま、又は法定通貨に換金して保持し、残りの運用益を仮想通貨と法定通貨とに等配分する。次回のステップS51の処理において、制御部11は積立額に相当する仮想通貨は運用に使用せず、残りの保有通貨によって運用を行う。
【0060】
また、ユーザが複数の仮想通貨を保有している場合、制御部11は、各仮想通貨の運用によって生じた運用益(収益及び損益)を特定し、特定した運用益に応じて各仮想通貨の保有量を調整する。具体的には、制御部11は、収益が生じている仮想通貨の収益の一部又は全部を売却(他の仮想通貨、又は法定通貨に交換)するトランザクションを実行する。また、制御部11は、損益が生じている仮想通貨の損益の一部又は全部に相当する数量を取得(購入)するトランザクションを実行する。これにより、制御部11は各通貨の保有量を等配分する。制御部11は、トランザクション実行後のデータを端末2(ウォレット201)に送信し(ステップS55)、一連の処理を終了する。
【0061】
なお、上記では端末2にウォレット201を用意し、ウォレット201にて仮想通貨の管理を行うことにしたが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。例えばサーバ1が各ユーザ向けのオンライン口座を用意し、各ユーザが保有する仮想通貨を管理する形にしてもよい。つまり、仮想通貨の保管場所はオンライン上であってもよく、ローカル端末であってもよい。
【0062】
また、上記では説明の便宜上、サーバ1が処理主体となり、法定通貨による決済処理、及び仮想通貨の運用処理を行うことにしたが、一連の処理の一部又は全部を端末2が実行するようにしてもよい。例えば通貨間のリバランスについて述べれば、端末2が通貨情報を元に運用益を計算し、各通貨の保有量を調整するようトランザクションを実行してもよい。また、端末2が、仮想通貨の送金、受取に関わるトランザクションを実行し、金融機関、企業等との間で仮想通貨の運用を直接行ってもよい。このように、どのコンピュータリソースがどの処理を担当するかは任意の設計事項であり、種々の設計変更があり得る。
【0063】
以上より、本実施の形態1によれば、ユーザが保有する仮想通貨の運用を行うことで、運用益獲得を図ることができる。また、ウォレット201内の法定通貨の保有量と法定通貨の保持額(チャージ金額)とを自動的に調整し、両者の適切なバランスを取ることができる。多くの仮想通貨は発行量の上限が設けられていることから、その価値が大きく変動するが、上述のリバランス処理を行うことで過度な運用が是正され、仮想通貨を適切に管理することができる。
【0064】
また、本実施の形態1によれば、運用益の一部を自動的に積み立てると共に、当該一部の運用益を除く残額を運用と保持額とに配分することで、より適切な管理を行うことができる。
【0065】
また、本実施の形態1によれば、複数種類の仮想通貨を一のウォレット201で取り扱うことができると共に、各仮想通貨の保有量を自動的に調整し、ユーザが保有する仮想通貨の資産価値を最大化することができる。
【0066】
また、本実施の形態1によれば、ウォレット201にチャージされている法定通貨を用い、加盟店での決済を行う。例えば本実施の形態のチャージ相当分の金額を仮想通貨として保持しておくと仮定して、仮想通貨の価値が下落した場合、いつの間にかチャージ残高が減ることになり、ユーザにとって不都合なものとなる。そこで、法定通貨で入金された入金額の一部を決済用に保持しておくことで、安定した決済が可能となる。また、上述の如く、法定通貨の保持額と仮想通貨の保有量とを調整することから、両者を適切に管理することができる。つまり、ウォレット201は、所謂電子マネーに代表される決済機能と、仮想通貨の運用機能とを単に合わせたものではなく、両者を相互に交換して適切な配分で管理するハイブリッドなウォレットとして機能する。これにより、ユーザにとってより利便性に富み、安定したウォレットを提供することができる。
【0067】
(実施の形態2)
実施の形態1では、ウォレット201に入金額の一部をチャージしておき、法定通貨により電子決済を行う形態について述べた。実施の形態2では、入金額の一部を決済用の仮想通貨としてウォレット201に保持しておき、仮想通貨による決済を行う形態について述べる。なお、実施の形態1と重複する内容については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図11は、実施の形態2に係る情報処理システムの構成例を示す機能ブロック図である。本実施の形態に係るサーバ1は、決済処理部101、運用処理部102等のほか、通貨発行部108、合意判定部109を有する。通貨発行部108は、本システム独自の仮想通貨(以下、「独自通貨」と呼ぶ)をユーザに発行する。合意判定部109は、独自通貨のマイニング処理を管理し、マイニングに係る合意を判定(形成)する処理を行う。独自通貨のマイニング合意について、詳しくは後述する。
【0069】
なお、
図11に示すように、本実施の形態で決済処理部101は、実店舗である加盟店だけでなく、ネットワークN(インターネット)上の仮想店舗であるECサイトからも決済要求を受け付け、仮想通貨による決済を行う。当該ECサイトは、例えば出品者が商品を出品するショッピングサイトである。決済処理部101は、ユーザがECサイトを利用して出品者から商品を購入する際、ECサイトに代わって電子決済を代行する。ECサイトから決済要求を受け付けた場合、決済処理部101は購入額分の送金を商品の出品者(提供元)に対して行う。これにより、ユーザは自らが保有する仮想通貨を使って、所謂ネットショッピングを行うことができる。
【0070】
以下の説明では、サーバ1が発行する独自通貨を決済及び運用に用いる形態について説明する。
【0071】
図12は、実施の形態2の概要を説明するための説明図である。
図12に基づき、仮想通貨(独自通貨)に基づく決済処理と運用処理とについて説明する。
図12では、
図6等と同様に、ウォレット201に格納されている仮想通貨の保有量を概念的に図示している。
図12Aでは運用前の、
図12Bでは運用後の仮想通貨の保有量を図示している。なお、
図12では簡潔のため、法定通貨によってチャージされるチャージ金額については省略し、法定通貨によって入金された入金額の全部が仮想通貨に換金されているものとして説明する。法定通貨もウォレット201にチャージ可能とする形態については、変形例1で後述する。
【0072】
本実施の形態においてウォレット201には、電子決済に用いる独自通貨と、運用に用いる独自通貨とが、別々に保管されている。決済用に管理された独自通貨は、加盟店での商品又はサービスの購入に伴う電子決済に利用することができる。運用に用いる独自通貨は、実施の形態1と同様に運用される。決済用の独自通貨と運用のための独自通貨との配分は、例えば
図5と同様の入金画面においてユーザが設定する。
【0073】
ここで、実施の形態1と同様に安定した決済を可能とするため、決済用に管理されている独自通貨は、当該通貨を取得した時点での換金額と同レートで決済に利用することができる。例えばユーザが独自通貨1コインを1万円で購入し、0.5コインを決済用に、0.5コインを運用に設定した場合、決済用に保持されている0.5コインは価値が変動せず、購入時点(取得時点)と同レートの5000円分の決済に充てることができる。
【0074】
例えばサーバ1の通貨発行部108は、ユーザからの入金を受け付けて入金額分の独自通貨を発行するに際し、決済用に設定された金額分については、発行時点と同レートで決済に利用可能とする旨の契約情報を付加して、独自通貨を発行する。例えば通貨発行部108は、独自通貨を発行して端末2のウォレット201に送信するトランザクションを実行するに際し、発行時点と同レートで法定通貨と交換(換金)する旨の契約情報をトランザクションデータに書き込み、当該トランザクションデータをブロックチェーン上に出力する。
【0075】
当該処理と類似する技術としては、イーサリアムのスマートコントラクトが挙げられる。スマートコントラクトは、イーサリアムを送金側から受取側へ送信(送金)するに際し、どのような目的で送金を行うかをブロックチェーン上に記録しておく手法である。例えば商品の購入を仮想通貨で行う場合、どの商品を何時までに購入者に納品するかといった情報を、仮想通貨のトランザクションデータに規格として設けられた空き領域に書き込む。これにより、トランザクションデータに書き込まれた情報は、改竄困難なブロックチェーンに記録される。本実施の形態では、トランザクションデータに書き込む情報として、発行する独自通貨を同レートで法定通貨に換金する旨の契約情報を書き込んでおけばよい。
【0076】
ユーザが加盟店で電子決済を行う場合、サーバ1の決済処理部101は、ブロックチェーン上のトランザクションデータから当該契約情報を読み出し、決済用にウォレット201に格納されている独自通貨が発行時点のレートでいくらなのか、換金額を計算する。電子決済による購入額が換金額以下である場合、決済処理部101は、決済枠の仮想通貨を用いて電子決済を行う決済処理を実行する。具体的には、決済処理部101は決済枠の仮想通貨の一部又は全部を法定通貨に換金するトランザクションを実行し、換金した法定通貨を、金融機関を介して加盟店に送金する。
【0077】
なお、上述の契約情報は、独自通貨と法定通貨との間のレートを規定した契約だけでなく、決済に用いる法定通貨の為替レートに関するヘッジ契約も含めて良い。例えば本実施の形態に係るウォレット201で複数の法定通貨(例えば日本円及びUSドル)での決済を受け付ける場合、サーバ1は、ユーザに独自通貨を発行した時点と同じ為替レートで、各法定通貨による決済を利用可能とする旨の情報を契約情報としてトランザクションデータに書き込んでおく。これにより、ユーザは独自通貨を各法定通貨による決済に用いる場合、為替変動に関わらず取得時点と同レートで決済に利用可能となる。
【0078】
運用枠として設定された独自通貨に関しては、サーバ1は実施の形態1と同様に、他の仮想通貨との間の交換、預金運用、投資運用等による仮想通貨運用のトランザクションを実行する。当該トランザクションにより運用益が発生した場合、サーバ1は、運用益を等配分して、一部を決済用に保持(還元)する。これにより、
図12A、Bを比較すればわかるように、決済用に保持された仮想通貨の保有量が増大する。
【0079】
このように、サーバ1は入金額のうち、決済用に保持する保持額と、運用に用いる換金額との設定入力を受け付け、各金額に相当する独自通貨を発行する。この内、サーバ1は決済用に保持する独自通貨については契約情報を付加する。ユーザから決済要求を受け付けた場合、サーバ1は当該契約情報に基づき、発行時点と同レートで電子決済を行う。これにより、実施の形態1のように法定通貨のままウォレット201にチャージせずとも、固定レートでの安定した決済が可能となる。また、サーバ1において独自通貨の発行量をコントロールすることで、独自通貨を一般の仮想通貨と同様に投資運用の対象とすることもできる。
【0080】
なお、上記でサーバ1はユーザからの入金を受け、新規に独自通貨を発行するものとして説明したが、独自通貨を新規に発行することなく、他のユーザが保有する独自通貨を購入してユーザに与えるようにしてもよい。つまり、ユーザが独自通貨を取得可能であればよく、取得経路は新規発行によるものでも、他のユーザからの取得であってもよい。
【0081】
本実施の形態ではユーザによる独自通貨の利用を促進すべく、サーバ1はさらに、加盟店での電子決済に利用可能な特典情報をユーザに付与する処理を行う。
【0082】
例えば通貨発行部108は、ユーザから入金を受け付けて独自通貨を発行する場合に、単に入金額と同額分の独自通貨を発行するだけでなく、加盟店での電子決済に利用可能なクーポン(特典情報)を発行して端末2に送信する。クーポンは、例えば入金額よりも余剰に発行する独自通貨である。つまり、独自通貨を購入するユーザへの特典として場合、サーバ1は余分に独自通貨を与える。これにより、ユーザに対して独自通貨を利用するインセンティブを与えることができる。
【0083】
なお、サーバ1は独自通貨自体ではなく、その他の特典をユーザに与えることにしてもよい。例えばサーバ1は、加盟店での電子決済で割引を受けることができる電子クーポンを発行するようにしてもよい。つまりサーバ1は、独自通貨を電子決済に利用する特典として、割引サービスを提供する。このように、特典情報(クーポン)は独自通貨を利用するユーザへの特典であればよく、独自通貨自体でなくともよい。
【0084】
また、クーポンを発行するタイミングは独自通貨の取得時に限定されず、例えばユーザが加盟店での決済を行った決済処理時などであってもよい。
【0085】
さらにサーバ1は、単に独自通貨の取得時、決済時等にクーポンを発行するだけでなく、ユーザによる仮想通貨の運用益、又は加盟店での決済利用額に応じて、特典情報をユーザに付与する処理を行う。
【0086】
具体的には、サーバ1は、マイニングに伴う手数料を特典に用い、仮想通貨の運用益、又は加盟店での決済利用額に応じてマイニングの合意を形成し、ユーザに付与する。具体的には、サーバ1の合意判定部109が一定期間毎にブロックチェーン上のトランザクションデータを参照して、当該期間に行われた各トランザクションに伴う手数料を集計する。合意判定部109は、ユーザの運用益、又は決済利用額に応じて、マイニングに伴う当該手数料を特典としてユーザに付与する。
【0087】
例えば運用益を基準として独自通貨を付与する場合、合意判定部109は、各ユーザのウォレット201のデータを参照して、当該期間で最も独自通貨の運用益が高いユーザを特定する。そして合意判定部109は、集計した手数料を、当該ユーザのウォレット201に送信する。
【0088】
また、決済利用額を基準として独自通貨を付与する場合、合意判定部109は、単純に決済利用額が最も高いユーザに対して独自通貨を付与するようにしても良い。しかし、本実施の形態ではさらに、ユーザ(端末2)の位置情報を組み合わせて、地域別にユーザらが利用した決済利用額を集計し、集計結果に応じて、決済利用額が高い地域の加盟店を利用したユーザに対して独自通貨を付与する。
【0089】
具体的には、サーバ1は各加盟店を、所在地に応じて複数の地域それぞれにグループ分けしておく。そしてサーバ1は、決済時に端末2から位置情報を取得し、加盟店で利用した決済利用額を地域別に集計する。そしてサーバ1は、決済利用額が最も高い地域を利用したユーザに対し、独自通貨を付与する。
【0090】
これにより、ユーザに対する単純なインセンティブを与えるだけでなく、地域間の競争を促すことができる。従って、ユーザに対するサービス向上を促すことができる。
【0091】
また、上記でサーバ1は各地域での決済利用額を順位付けして独自通貨を付与したが、順位付けの基礎となる情報は決済利用額に限定されない。例えばサーバ1は、所定のインターネット投票の投票結果によって独自通貨を発行してもよい。例えばユーザは、加盟店でQRコード(登録商標)を端末2で読み取るなどして、各加盟店に対する人気投票を行う。サーバ1は投票結果を集計し、投票結果に応じて、最多票を得た加盟店を利用したユーザに対して独自通貨を付与する。このように、サーバ1はユーザの決済行動に伴う情報を集計し、集計結果に応じてユーザに特典を付与可能であればよく、集計する情報は決済利用額に限定されない。
【0092】
図13は、実施の形態2に係る配分設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図13に基づき、実施の形態2に係る入金額の配分設定処理について説明する。
入金額の設定入力を受け付けた後(ステップS12)、端末2の制御部21は、以下の処理を実行する。制御部21は、決済処理のために保持する独自通貨(仮想通貨)の保持額と、運用のために換金する独自通貨への換金額との配分を設定する設定入力を受け付け(ステップS201)、処理をステップS14に移行する。
【0093】
ユーザからの入金があったと判定し(S16:YES)、運用に係る設定情報をユーザDB141に記憶した後(ステップS17)、サーバ1の制御部11は、以下の処理を実行する。制御部11は、ステップS201で設定された決済用の保持額、及び運用のための換金額に相当する独自通貨を取得する(ステップS202)。ステップS18では、独自通貨を新規に発行するようにしてもよく、独自通貨を保有する他のユーザから購入するようにしてもよい。
【0094】
制御部11は、決済用に取得した独自通貨に対して、ステップS18で取得した取得時点と同レートで決済処理に利用可能とする旨の契約情報を発行する(ステップS203)。例えば制御部11は、当該契約情報をトランザクションデータに書き込み、ネットワークN(ブロックチェーン)上に出力する。
【0095】
さらに制御部11は、決済用に取得した独自通貨の保持額に応じて、加盟店での電子決済に利用可能な特典情報(クーポン)を発行する(ステップS204)。クーポンは、例えば元々の保持額よりも余剰に発行する独自通貨、あるいは加盟店での商品又はサービスの購入の際に割引を受けることができる電子クーポン等であるが、その内容は特に限定されない。
【0096】
制御部11は、契約情報付きの決済用の独自通貨、及び契約情報が付随しない運用のための独自通貨、及び特典情報を端末2に送信し(ステップS205)、処理をステップS19に移行する。
【0097】
図14は、実施の形態2に係る決済処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14に基づき、実施の形態2に係る決済処理の処理内容について説明する。
制御部11は、電子決済処理の承認要求を受け付ける(ステップS221)。例えば制御部11は、実店舗である加盟店の店舗端末3から、又はネットワークN上の仮想店舗であるECサイトから、電子決済の承認要求を受け付ける。ここで制御部11は、ユーザが加盟店で特典情報を利用(使用)した場合、決済の承認要求と共に特典情報も取得する。制御部11は、ウォレット201に決済用に保持されている独自通貨の保持額(残額)に基づき、決済を承認するか否かを判定する(ステップS222)。この場合に制御部11は、ステップS203で発行した契約情報に基づき、独自通貨の保持額を取得時点と同レートで計算して、決済を承認するか否かを判定する。すなわち、決済用に取得した独自通貨に関しては、その後の独自通貨の価格変動に関わらず、取得時点と同レートで法定通貨に換算し、決済を行う。
【0098】
決済を承認しないと判定した場合(S222:NO)、制御部11は処理をステップS35に移行する。決済を承認すると判定した場合(S222:YES)、制御部11は決済を承認する旨を店舗端末3に返信する(ステップS223)。そして制御部11は、購入額分の送金を行う決済処理を実行する(ステップS224)。この場合に制御部11は、ステップS223で取得した特典情報を参照して、当該特典情報に基づき送金額を計算し、加盟店に送金を行う。また、決済要求がECサイトからの者である場合、制御部11はECサイトに代行して、商品の出品者に対して送金を行う。
【0099】
決済処理を実行後、制御部11は、端末2から位置情報を取得する(ステップS225)。そして制御部11は、取得した位置情報を、ステップS224で実行した決済利用額と対応付けてユーザDB141に記憶する(ステップS226)。制御部11は、後述するステップS241において、決済利用額に対応付けられた位置情報を参照し、地域毎の決済利用額を集計する。制御部11は、一連の処理を終了する。
【0100】
図15は、実施の形態2に係る運用処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15に基づき、実施の形態2に係る運用処理の処理内容について説明する。
独自通貨(仮想通貨)の運用で発生した運用益を特定した後(ステップS53)、サーバ1の制御部11は、以下の処理を実行する。制御部11はユーザDB141を参照して、複数の地域それぞれの加盟店で利用された各ユーザの決済利用額を、端末2から取得した位置情報に基づいて集計する(ステップS241)。そして制御部11は、ステップS53で特定した運用益に応じて、又はステップS241で集計した決済利用額の集計結果に応じて、決済処理に利用可能な特典情報をユーザに付与する(ステップS242)。当該特典情報は、例えば独自通貨のマイニングに伴う手数料である。制御部11は、運用益又は決済利用額に応じてマイニングの合意を形成し、マイニングに係る手数料をユーザに付与するトランザクションを実行する。例えば制御部11は、運用益が最も高いユーザのウォレット201に対し、一定期間のマイニングで発生した手数料を送信(送金)する。また、例えば制御部11は、予めグループ分けされた複数の地域のうち、決済利用額の集計結果が最も高い地域の加盟店を利用したユーザのウォレット201に対し、手数料を送信する。制御部11は、処理をステップS54に移行する。
【0101】
以上より、本実施の形態2によれば、サーバ1は、ユーザが決済用の独自通貨を取得した時点と同レートで決済を行う旨の契約情報を発行し、当該契約情報に従って決済を行うこと。これにより、法定通貨に依らずとも、実施の形態1と同じく安定した決済が可能となる。
【0102】
また、本実施の形態2によれば、運用益、決済利用額等に応じて特典を与えることで、独自通貨の利用をユーザに促すことができる。
【0103】
また、本実施の形態2によれば、運用益又は決済利用額に応じてマイニングの合意を形成し、マイニングに伴う手数料を特典としてユーザに付与する。これにより、運用益又は決済利用額に応じてユーザに与える特典を別途用意する必要がなく、好適に特典をユーザに与えることができる。
【0104】
また、本実施の形態2によれば、複数の地域それぞれの決済利用額を集計し、集計結果に応じて特典をユーザに付与する。これにより、地域間の競争が促され、ユーザに対するサービス向上を期待することができる。
【0105】
なお、本実施の形態ではビジネス上の実現可能性を考慮して、サーバ1が独自通貨を発行するものとして説明したが、本実施の形態で対象とする仮想通貨は独自通貨に限定されるものではない。つまり、仮想通貨を取得時点と同レートで決済するよう保証できればよいことから、技術上、又はビジネス上の障害がなければ、決済に用いる仮想通貨は独自通貨でなくともよい。
【0106】
また、本実施の形態では本システムの管理者(サーバ1)が発行主体となって特典情報を発行(付与)するものとしたが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、特典情報の発行元は加盟店であってもよい。この場合、店舗端末3、又は店舗端末3を管理する加盟店のPOS(Point of Sales)サーバ等が特典情報を発行して端末2に送信する。
【0107】
例えばサーバ1は、店舗端末3、POSサーバ等のコンピュータに対し、特典情報を発行するための所定のアプリケーションプログラムを配信し、インストールさせる。店舗端末3、POSサーバ等のコンピュータは、当該プログラムを実行し、所定条件が満たされた場合(例えばユーザが独自通貨を取得した場合等)に、端末2に対して特典情報を発行する。そして当該コンピュータは、加盟店において端末2から決済要求を受け付け、特典情報を用いた決済処理を実行する。当該決済処理は、店舗端末3、POSサーバ等の加盟店側のコンピュータが端末2と直接トランザクションを行って(あるいは実施の形態1のように、法定通貨の送金を行って)決済するものでもよく、サーバ1に決済処理の承認要求を行い、ユーザと加盟店との間の決済を仲介させるようにしてもよい。
【0108】
すなわちサーバ1は、ウォレット201として機能するアプリケーションプログラム(第1プログラム、プログラムP2)を端末2(第1コンピュータ)にインストールさせるべく配信すると共に、クーポンの発行、決済受付のためのアプリケーションプログラム(第2プログラム)を店舗端末3、POSサーバ等のコンピュータ(第2コンピュータ)にインストールさせるべく送信する。各プログラムを協働させることで、実施の形態2と同様に、仮想通貨の運用を行うことができると共に、特典情報を用いた電子決済を行う一連の仮想通貨取引システムを製造(構築)することができる。
【0109】
(変形例1)
実施の形態1では、ウォレット201に一定額の法定通貨をチャージしておく形態について述べた。また、実施の形態2では、ウォレット201において取得時点と同レートで決済利用可能な独自通貨を発行する形態について述べた。変形例1では、実施の形態1、2を組み合わせ、運用のための仮想通貨と、決済用の仮想通貨と、法定通貨(チャージ金額)とを同一のウォレット201で管理する形態について述べる。
【0110】
図16は、変形例1に係る仮想通貨の管理形態について説明するための説明図である。
図16では、
図6で図示した形態と、
図12で図示した形態とを組み合わせ、同一のウォレット201において運用のための仮想通貨と、決済用の仮想通貨と、法定通貨(チャージ金額)とが管理されている様子を図示している。
【0111】
図16に示すように、ウォレット201に格納されている仮想通貨(独自通貨)のうち、一部が運用枠として、一部が決済枠として格納されている。運用枠とする仮想通貨はサーバ1によって運用が為され、運用益獲得が図られる。決済枠とする仮想通貨に関しては、取得時点で契約情報が発行され、取得時点と同レートでの決済処理が行われる。
【0112】
また、ウォレット201には入金額の一部が法定通貨のままチャージされている。チャージされた金額についても、加盟店での決済利用が可能である。
【0113】
サーバ1は、運用枠及び決済枠の仮想通貨、並びにチャージされている法定通貨に関して、相互に換金を行う。例えばサーバ1は、決済用の仮想通貨に付随する契約情報に従い、決済用の仮想通貨とチャージ金額(法定通貨)とを取得時点と同レートで相互に換金可能とする。また、サーバ1は、運用によって得た運用益を、決済用の仮想通貨を、又はチャージ金額に還元するリバランス処理を行う。このように、ウォレット201は各枠の通貨を流動的に管理し、仮想通貨及び法定通貨の双方で決済処理を行うことができる。
【0114】
仮想通貨の運用、加盟店での決済等の処理内容は実施の形態1、2と同様であるため、その他の詳細な図示及び説明は省略する。
【0115】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。