【解決手段】金属成形体の製造方法は、仮凹部及び仮凸部が交互に並ぶように平板状の金属板を張り出し成形して、仮成形体を形成することであって、仮凹部及び仮凸部はそれぞれ、内側に向けて窪んだ窪み部が形成された頂壁を含むことと、仮成形体をプレス加工して窪み部を外側に押し出し、頂壁が平坦状となった凹部及び凸部が交互に並ぶ成形体を形成することとを含む。
仮凹部及び仮凸部が交互に並ぶように平板状の金属板を張り出し成形して、仮成形体を形成することであって、前記仮凹部及び前記仮凸部はそれぞれ、内側に向けて窪んだ窪み部が形成された頂壁を含むことと、
前記仮成形体をプレス加工して前記窪み部を外側に押し出し、前記頂壁が平坦状となった凹部及び凸部が交互に並ぶ成形体を形成することとを含む、金属成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
[金属セパレータ]
金属セパレータ10(成形体)は、
図1に示されるように、矩形状を呈する板状部材であり、燃料電池スタック1(
図3参照)の一部を構成している。金属セパレータ10は、平板状の金属板Mが所定の形状に加工されてなる。金属板Mの厚さは、例えば0.05mm〜0.3mm程度であってもよいし、0.1mm〜0.2mm程度であってもよい。金属板Mの種類としては、軟鋼材(例えば、冷間圧延材、熱間圧延材など)、高張力鋼板及びこれらの板材の表面に貴金属層がコーティングされたものであってもよい。
【0015】
金属セパレータ10は、
図1に示されるように、外周に沿って形成されたフレーム部11と、フレーム部11によって囲まれた溝形成領域12とを含む。金属セパレータ10が車載用燃料電池に用いられる場合には、金属セパレータ10の一辺の長さは、例えば100mm〜700mm程度であってもよいし、200mm〜300mm程度であってもよい。
【0016】
金属セパレータ10は、
図1及び
図2に示されるように、複数の凸部13と、複数の凹部14とを含む。より詳しくは、金属セパレータ10の溝形成領域12には、複数の凸部13と複数の凹部14とが交互に並んだ繰り返しパターンが形成されている。繰り返しパターンのピッチLは、金属板Mの厚さなどによるが、例えば、0.5mm〜5mm程度であってもよいし、0.5mm〜1.5mm程度であってもよいし、0.5mm〜1.0mm程度であってもよい。
図1には、便宜上、溝形成領域12が5つの凸部13を含む形態が図示されているが、実際の金属セパレータ10は、極めて微細な凹部及び凸部によって構成される多数の溝を含む。
【0017】
凸部13は、略平坦な頂壁13aと、凹部14に向けて屈曲された角部13bとを含む。凹部14は、略平坦な頂壁14aと、凸部13に向けて屈曲された角部14bとを含む。頂壁13aと頂壁14aとの距離(凸部13と凹部14との高さ)Hは、例えば、0.3mm〜1.2mm程度であってもよいし、0.5mm〜1.0mm程度であってもよい。
【0018】
角部13bは、頂壁13aの両端に位置しており、隣り合う角部14bと一体的に接続されている。角部14bは、頂壁14aの両端に位置しており、隣り合う角部13bと一体的に接続されている。角部13b,14bの曲率半径は、0.03mm〜0.3mmであってもよいし、0.1mm〜0.2mm程度であってもよい。曲率半径が0.03mm以上であると、角部13b,14bにおける金属板Mの破断が生じ難くなる。曲率半径が0.3mm以下であると、頂壁13a,14aの幅を確保しやすくなるので、金属セパレータ10の電気的導通が良好となる傾向にある。曲率半径が0.3mm以下であると、ガス(燃料ガス又は空気)が流通する流路として凸部13及び凹部14が機能する際に当該流路の断面積が拡がり、圧力損失が低下する傾向にある。
【0019】
[燃料電池スタック]
上記の金属セパレータ10を用いた燃料電池スタック1の構成について、
図3を参照して説明する。燃料電池スタック1は、複数の金属セパレータ10と、複数の膜電極接合体2と、一対の端面板3とを含む。燃料電池スタック1は、金属セパレータ10と膜電極接合体2とが交互に積層された積層体4が一対の端面板3によって挟持されて構成されている。換言すれば、一つの膜電極接合体2は、一対の金属セパレータ10によって挟持されている。膜電極接合体2の一方側に位置する金属セパレータ10の凸部13と、膜電極接合体2の他方側に位置する金属セパレータ10の凹部14とは対向している。膜電極接合体2の一方側に位置する金属セパレータ10の凹部14と、膜電極接合体2の他方側に位置する金属セパレータ10の凸部13とは対向している。
【0020】
膜電極接合体2は、燃料極(水素極;アノード)2aと、電解質層2bと、空気極(酸素極;カソード)2cとを含む。燃料極2aと、燃料極2aに向かって開口する凸部13とで囲まれる空間10Aは、燃料ガスが流通するように構成されている。すなわち、空間10Aは、燃料ガス用の流路として機能する。空気極2cと、空気極2cに向かって開口する凹部14とで囲まれる空間10Bは、空気が流通するように構成されている。すなわち、空間10Bは、空気用の流路として機能する。端面板3と、端面板3に向けて開口する凸部13又は凹部14とで囲まれる空間10Cは、冷媒が流通するように構成されている。すなわち、空間10Cは、冷媒用の流路として機能する。
【0021】
[金属セパレータの製造方法]
続いて、
図4〜
図9を参照して、金属セパレータ10の製造方法(金属板Mの成形方法)について説明する。当該方法は、予備成形工程と、本成形工程と、矯正工程とを含む。
【0022】
(1)予備成形工程
まず、予備成形工程について説明する。予備成形工程では、
図4に示される予備成形機100が用いられる。予備成形機100は、下型110(仮金型)と、上型120(仮金型)と、ストリッパ130とを含む。
【0023】
下型110は、下方に向けて窪んだ凹状の成形領域111と、成形領域111内に設けられた複数の凸部112とを含む。凸部112の高さは、成形領域111の周囲を囲む周縁部113の高さと同等であってもよいし、周縁部113の高さよりも低くてもよいし、周縁部113の高さよりも高くてもよい。凸部112の幅W1は、燃料電池スタック1の仕様に応じて種々の大きさとすることができるが、例えば、300μm〜1500μm程度であってもよい。
【0024】
各凸部112の頂面S1には、下方に向けて窪む窪み部112aが設けられている。
図4においては、一つの窪み部112aが頂面S1の中央部に位置しているが、2つ以上の窪み部112aが頂面S1に設けられていてもよい。窪み部112aは、頂面S1の中央部以外の箇所に位置していてもよい。窪み部112aの深さは、金属板Mに生ずる加工硬化の程度が小さい範囲で設定されていればよいが、凸部112の高さよりも小さく設定されていてもよく、例えば、10μm〜200μm程度であってもよい。
【0025】
複数の凸部112は、所定間隔をもって一方向に並んでいる。そのため、隣り合う凸部112同士の間には凹部114が構成されている。すなわち、下型110の成形領域111における表面(上面)は凹凸面(第1の凹凸面)を呈している。凹部114の底面S2には、上方に向けて突出する突出部114aが設けられている。
図4においては、一つの突出する突出部114aが底面S2の中央部に位置しているが、2つ以上の突出部114aが底面S2に設けられていてもよい。突出部114aは、底面S2の中央部以外の箇所に位置していてもよい。突出部114aの高さは、金属板Mに生ずる加工硬化の程度が小さい範囲で設定されていればよいが、凸部112の高さよりも小さく設定されていてもよく、例えば、50μm〜300μm程度であってもよい。
【0026】
上型120の下端部は、成形領域111よりも若干小さな外形を有する。上型120の下端面は、下型110の成形領域111と対応する凹凸面(第1の凹凸面)を呈している。すなわち、上型120は、下方に向けて突出する凸部121と、上方に向けて窪む凹部122とを含む。凸部121の幅W2は、燃料電池スタック1の仕様に応じて種々の大きさとすることができるが、例えば、300μm〜1500μm程度であってもよい。幅W2は、幅W1と同程度であってもよいし、幅W1よりも小さくてもよいし、幅W1よりも大きくてもよい。
【0027】
凹部114に対応する凸部121の頂面S3には、上方に向けて窪む窪み部121aが設けられている。
図4においては、一つの窪み部121aが頂面S3の中央部に位置しているが、凹部114の凹部114に対応して、2つ以上の窪み部121aが頂面S3に設けられていてもよい。窪み部121aは、凹部114の凹部114に対応して、頂面S3の中央部以外の箇所に位置していてもよい。窪み部121aの深さは、金属板Mに生ずる加工硬化の程度が小さい範囲で設定されていればよいが、凸部121の高さよりも小さく設定されていてもよく、例えば、10μm〜200μm程度であってもよい。
【0028】
複数の凸部121は、所定間隔をもって一方向に並んでいる。そのため、隣り合う凸部121同士の間には凹部122が位置している。凹部122の底面S4には、下方に向けて突出する突出部122aが設けられている。
図4においては、一つの突出する突出部122aが底面S4の中央部に位置しているが、凸部112の窪み部112aに対応して、2つ以上の突出部122aが底面S4に設けられていてもよい。突出部122aは、凸部112の窪み部112aに対応して、底面S4の中央部以外の箇所に位置していてもよい。突出部122aの高さは、金属板Mに生ずる加工硬化の程度が小さい範囲で設定されていればよいが、凸部121の高さよりも小さく設定されていてもよく、例えば、50μm〜300μm程度であってもよい。
【0029】
ストリッパ130は、下型110の周縁部113との間で金属板Mの端部を挟持するように構成されている。
【0030】
予備成形機100を用いて平板状の金属板Mを予備成形する際には、まず、下型110と上型120とを離間させておき、下型110上に金属板Mを配置する。このとき、金属板Mの端部は、下型110の周縁部113で支持される。次に、ストリッパ130を下型110に向けて降下させ、金属板Mの端部をストリッパ130と下型110の周縁部113とで挟持させる。
【0031】
次に、
図5に示されるように、上型120を下型110に向けて降下させ、平板状の金属板Mを張り出し成形する。これにより、金属板Mが予備成形された仮成形体20が得られる。上型120が下死点に位置するとき、下型110と上型120との間の最小隙間(最小離間距離)が、金属板Mの板厚以上となるように設定されていてもよい。
【0032】
仮成形体20は、下型110及び上型120の表面に沿った形状を呈している。すなわち、仮成形体20は、仮凸部21と仮凹部22とを含む。仮凸部21と仮凹部22とは、一方向に交互に並んでいる。仮凸部21の頂壁21aには、窪み部112a及び突出部122aに対応して、内側(
図5では下方)に向けて窪む窪み部21bが設けられている。仮凹部22の頂壁22aには、突出部114a及び窪み部121aに対応して、内側(
図5では上方)に向けて窪む窪み部22bが設けられている。
【0033】
(2)本成形工程
次に、本成形工程について説明する。本成形工程では、
図6に示される成形機200が用いられる。成形機200は、下型210(本金型)と、上型220(本金型)と、ストリッパ230とを含む。
【0034】
下型210は、下方に向けて窪んだ凹状の成形領域211と、成形領域211内に設けられた複数の凸部212とを含む。各凸部112の頂面S5は略平坦状を呈している。凸部212の高さは、成形領域211の周囲を囲む周縁部213の高さと同等であってもよいし、周縁部213の高さよりも低くてもよいし、周縁部213の高さよりも高くてもよい。凸部212の幅W3は、燃料電池スタック1の仕様に応じて種々の大きさとすることができるが、例えば、300μm〜1500μm程度であってもよい。幅W3は、幅W1以上に設定されていてもよい。
【0035】
複数の凸部212は、所定間隔をもって一方向に並んでいる。そのため、隣り合う凸部212同士の間には凹部214が構成されている。すなわち、下型210の成形領域211における表面(上面)は凹凸面(第2の凹凸面)を呈している。凹部214の底面S6は略平坦状を呈している。
【0036】
上型220の下端部は、成形領域211よりも若干小さな外形を有する。上型220の下端面は、下型110の成形領域111と対応する凹凸面(第2の凹凸面)を呈している。すなわち、上型220は、下方に向けて突出する凸部221と、上方に向けて窪む凹部222とを含む。各凸部221の頂面S7は略平坦状を呈している。凸部221の幅W4は、燃料電池スタック1の仕様に応じて種々の大きさとすることができるが、例えば、300μm〜1500μm程度であってもよい。幅W4は、幅W3と同程度であってもよいし、幅W3よりも小さくてもよいし、幅W3よりも大きくてもよい。幅W4は、幅W2以上に設定されていてもよい。
【0037】
複数の凸部221は、所定間隔をもって一方向に並んでいる。そのため、隣り合う凸部221同士の間には凹部222が位置している。凹部222の底面S8は略平坦状を呈している。
【0038】
ストリッパ230は、下型210の周縁部213との間で仮成形体20の端部を挟持するように構成されている。
【0039】
成形機200を用いて仮成形体20を本成形する際には、まず、下型210と上型220とを離間させておき、下型210上に仮成形体20を配置する。このとき、仮成形体20の端部は、下型210の周縁部213で支持される。次に、ストリッパ230を下型210に向けて降下させ、仮成形体20の端部をストリッパ230と下型210の周縁部213とで挟持させる。
【0040】
次に、
図7(a)に示されるように、上型220を下型210に向けて降下させ、仮成形体20をプレス成形する。まず、
図7(a)に示されるように、上型220の凸部221が仮凹部22の窪み部22bに当接する。上型220がさらに降下すると、
図7(b)に示されるように、窪み部22bが外方(
図7では下方)に向けて押し出される。このとき、例えば、窪み部22bの両側に位置する仮凹部22の頂点Pは、窪み部22bが外方に向けて押し出されることに伴い、側方に向けて拡がるように移動する(
図7(b)参照)。仮凸部21も同様に、窪み部21bが凸部212によって外方に向けて押し出される。そのため、窪み部21bの両側に位置する仮凸部21の頂点も、側方に向けて拡がるように移動する。
【0041】
上型220が下死点まで降下すると、
図8に示されるように、窪み部21b,22bが略平坦化される。これにより、金属セパレータ10が得られる。上型220が下死点に位置するとき、下型210と上型220との間の最小隙間(最小離間距離)が、金属板Mの板厚以上となるように設定されていてもよい。なお、本成形工程では、上型220及び下型210を用いて仮成形体20を張り出し成形してもよい。
【0042】
(3)矯正工程
ところで、このように得られた金属セパレータ10を成形機200から取り出すと、金属セパレータ10が全体として反って(湾曲して)しまうことがある。これは、得られる金属セパレータ10の上面形状と下面形状とが異なることにより金属板Mの延びが均一でなかったり、金属板Mに付与される力が金属板Mの上面と下面とで均一でなく、歪みに偏りが生ずるためであると考えられる。そこで、次に、金属セパレータ10の矯正工程について説明する。矯正工程では、
図9に示される矯正機300が用いられる。矯正機300は、下型310と、上型320と、ストリッパ330とを含む。
【0043】
下型310は、下方に向けて窪んだ凹状の成形領域311を含むが、下型110,210とは異なり凸部を含んでいない。すなわち、成形領域311の底面S9は略平坦状を呈している。成形領域311の周囲には、底面S9から上方に突出する周縁部312が設けられている。
【0044】
上型320の下端部は、成形領域311よりも若干小さな外形を有する。上型320は、下方に向けて突出する凸部321と、上方に向けて窪む凹部322とを含む。これらの凸部321及び凹部322で構成される上型320の凹凸面は、金属セパレータ10の表面又は裏面と略同等の形状を呈していてもよい。上型320のその他の構造は上型220の構造と同様であるので、その説明を省略する。
【0045】
ストリッパ330は、下型310の周縁部312との間で金属セパレータ10の端部を挟持するように構成されている。
【0046】
矯正機300を用いて金属セパレータ10を矯正する際には、まず、下型310と上型320とを離間させておき、下型310上に金属セパレータ10を配置する。このとき、金属セパレータ10の端部は、下型310の周縁部312で支持される。次に、ストリッパ330を下型310に向けて降下させ、金属セパレータ10の端部をストリッパ330と下型310の周縁部312とで挟持させる。
【0047】
次に、
図10に示されるように、上型320を下型310に向けて降下させ、金属セパレータ10をプレス成形(平打ち加工)する。このとき、上型320の凸部321が金属セパレータ10の凹部14に挿入されるが、下型110の成形領域311の底面S9が平坦であるので、凸部13には下型310が挿入されない。そのため、凹部14が凸部321によって加圧されることにより、凹部14の歪みが凸部13側に逃げることができる。これにより、金属セパレータ10の反りが矯正され、金属セパレータ10が全体として略平坦となる。上型320が下死点に位置するとき、下型310と上型320との間の最小隙間(最小離間距離)が、金属板Mの板厚以上となるように設定されていてもよい。
【0048】
[作用]
以上のような本実施形態では、張り出し成形により仮成形体20が形成されるので、他の加工方法(例えば、絞り成形、鍛造など)と異なり、加工を経ても金属板Mが伸び難い。そのため、仮凹部22及び仮凸部21の角部の薄肉化が大きく抑制され、これに伴い、凹部14及び凸部13の角部の薄肉化も大きく抑制される。また、張り出し成形により仮成形体20が形成されるので、仮成形体20に加工硬化が生じ難い。そのため、続く工程において頂壁21a,22aの窪み部21b,22bが加圧されると、窪み部21b,22bが容易に変形して平坦状となり、その後にさらに窪み部21b,22bが硬化するので、金属セパレータ10の頂壁21a,22aが平坦面となりやすくなる。さらに、窪み部21b,22bが加圧されて平坦状となる過程で、仮凹部22及び仮凸部21の角部(頂点P)が側方に向けて移動する。そのため、仮成形体20をプレス加工する過程で、頂壁21a,22aが拡がりつつ平坦化される。従って、凹部14及び凸部13において十分な平坦領域が確保される。以上より、角部13b,14bの薄肉化を抑制することが可能となる共に、十分な平坦領域を確保しつつ頂壁13a,14aを平坦化することが可能となる。
【0049】
本実施形態では、矯正工程において、凹部14の頂壁14aが加圧され、凸部13の頂壁13aが加圧されないので、頂壁14aに存在する歪みが頂壁13a側に逃げる。従って、金属セパレータ10に存する反りを矯正することが可能となる。
【0050】
本実施形態では、上型120が下死点に位置する時に、下型110と上型120との間の最小隙間を金属板Mの板厚以上に設定しうる。上型220が下死点に位置する時に、下型210と上型220との間の最小隙間を金属板Mの板厚以上に設定しうる。上型320が下死点に位置する時に、下型310と上型320との間の最小隙間を金属板Mの板厚以上に設定しうる。これらの場合、金属板Mが金型に押しつぶされて金型内で流動しない。そのため、角部13b,14bの薄肉化をいっそう抑制することが可能となる。
【0051】
本実施形態では、幅W3が幅W1以上に設定され、幅W4が幅W2以上に設定されうる。この場合、窪み部21b,22bが凸部212,221によって加圧されて平坦状となる過程で、仮凹部22及び仮凸部21の角部(頂点P)が側方に向けてより移動しやすくなる。そのため、より広い平坦領域を確保することが可能となる。
【0052】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、上記の実施形態では、予備成形工程において、仮凸部21の頂壁21aに窪み部21bが形成され、仮凹部22の頂壁22aに窪み部22bが形成されていたが、外側に向けて突出する突出部が頂壁21a,22aに形成されてもよい。
【0053】
上記の実施形態では、燃料電池用の金属セパレータ10を製造する場合を例示したが、これ以外の用途に使用される凹凸溝付き金属成形体の製造に本発明を適用してもよい。
【0054】
[摘記]
例1.本開示の一つの例に係る金属成形体(10)の製造方法は、仮凹部(22)及び仮凸部(21)が交互に並ぶように平板状の金属板(M)を張り出し成形して、仮成形体(20)を形成することであって、仮凹部(22)及び仮凸部(21)はそれぞれ、内側に向けて窪んだ窪み部(22b,21b)が形成された頂壁(22a,21a)を含むことと、仮成形体(20)をプレス加工して窪み部(22b,21b)を外側に押し出し、頂壁(14a,13a)が平坦状となった凹部(14)及び凸部(13)が交互に並ぶ成形体(10)を形成することとを含む。この場合、張り出し成形により仮成形体(20)が形成されるので、他の加工方法(例えば、絞り成形、鍛造など)と異なり、加工を経ても金属板(M)が伸び難い。そのため、仮凹部(22)及び仮凸部(21)の角部の薄肉化が大きく抑制され、これに伴い、凹部(14)及び凸部(13)の角部(14b,13b)の薄肉化も大きく抑制される。また、張り出し成形により仮成形体(20)が形成されるので、仮成形体(20)に加工硬化が生じ難い。そのため、続く工程において頂壁(22a,21a)の窪み部(22b,21b)が加圧されると、窪み部(22b,21b)が容易に変形して平坦状となり、その後にさらに窪み部(22b,21b)が硬化するので、成形体(10)の凹部(14)及び凸部(13)の頂壁(14a,13a)が平坦面となりやすくなる。さらに、頂壁(22a,21a)の窪み部(22b,21b)が加圧されて平坦状となる過程で、仮凹部(22)及び仮凸部(21)の角部(P)が側方に向けて移動する。そのため、仮成形体(20)をプレス加工する過程で、頂壁(22a,21a)が拡がりつつ平坦化される。従って、十分な平坦領域が確保される。以上、例1の方法によれば、角部(14b,13b)の薄肉化を抑制することが可能で、且つ、十分な平坦領域を確保しつつ頂壁(14a,13a)を平坦化することが可能となる。
【0055】
例2.例1の方法は、凹部(22)及び凸部(21)の一方の頂壁(22a,21a)をプレス加工することをさらに含んでもよい。金属板(M)に凹部(22)及び凸部(21)を形成する過程で金属板(M)に歪みが蓄積され、成形体(10)が全体として反って(湾曲して)しまうことがありうる。しかしながら、例2の方法によれば、凹部(22)及び凸部(21)の一方の頂壁(22a,21a)が加圧され、凹部(22)及び凸部(21)の他方の頂壁(22a,21a)が加圧されないので、当該一方の頂壁(22a,21a)に存在する歪みが当該他方の頂壁(22a,21a)側に逃げる。従って、成形体(10)に存する反りを矯正することが可能となる。
【0056】
例3.例1又は例2の方法において、仮成形体(20)を形成することは、一対の仮金型(110,120)で金属板(M)を加圧することを含み、一対の仮金型(110,120)同士の最小隙間は金属板(M)の板厚以上となるように設定されていてもよい。この場合、仮成形体(20)を形成する際に、金属板(M)が仮金型(110,120)に押しつぶされて仮金型(110,120)内で流動しない。そのため、角部(14b,13b)の薄肉化をいっそう抑制することが可能となる。
【0057】
例4.例1〜例3のいずれかの方法において、成形体(10)を形成することは、一対の本金型(210,220)で仮成形体(20)を加圧することを含み、一対の本金型(210,220)同士の最小隙間は、金属板(M)の板厚以上となるように設定されていてもよい。この場合、成形体(10)を形成する際に、金属板(M)が本金型(210,220)に押しつぶされて本金型(210,220)内で流動しない。そのため、角部14b,13b)の薄肉化をいっそう抑制することが可能となる。
【0058】
例5.例1〜例4のいずれかの方法において、仮成形体(20)を形成することは、第1の凹凸面を有する一対の仮金型(110,120)で金属板(M)を加圧することを含み、成形体(10)を形成することは、第2の凹凸面を有する一対の本金型(210,220)で仮成形体(20)を加圧することを含み、第2の凹凸面の凸部(212,221)の幅(W3,W4)は、第1の凹凸面の凸部(112,121)の幅(W1,W2)以上に設定されていてもよい。この場合、窪み部(22b,21b)が第2の凹凸面の凸部(212,221)によって加圧されて平坦状となる過程で、仮凹部(22)及び仮凸部(21)の角部(P)が側方に向けてより移動しやすくなる。そのため、より広い平坦領域を確保することが可能となる。
【0059】
例6.例1〜例5のいずれかの方法において、金属成形体は金属セパレータであってもよい。
【0060】
例7.本開示の他の例に係る燃料電池スタック(1)は、例6の方法において製造された金属セパレータ(10)と膜電極接合体(2)とが交互に積層されてなる。