特開2019-141034(P2019-141034A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 財團法人工業技術研究院の特許一覧

特開2019-141034細胞培養モジュール、細胞培養システムおよび細胞培養方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-141034(P2019-141034A)
(43)【公開日】2019年8月29日
(54)【発明の名称】細胞培養モジュール、細胞培養システムおよび細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20190802BHJP
【FI】
   C12M3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-239098(P2018-239098)
(22)【出願日】2018年12月21日
(31)【優先権主張番号】62/610,909
(32)【優先日】2017年12月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】107145323
(32)【優先日】2018年12月14日
(33)【優先権主張国】TW
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】王 英凱
(72)【発明者】
【氏名】沈 盈▲文▼
(72)【発明者】
【氏名】▲登▼ 雅姿
(72)【発明者】
【氏名】林 登泰
(72)【発明者】
【氏名】劉 育秉
(72)【発明者】
【氏名】謝 幸英
(72)【発明者】
【氏名】葉 維洲
(72)【発明者】
【氏名】楊 孟華
(72)【発明者】
【氏名】許 祥俊
(72)【発明者】
【氏名】簡 ▲瑩▼君
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC02
4B029DG08
4B029HA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞培養モジュール、細胞培養システム及び細胞培養方法を提供する。
【解決手段】細胞培養システムは、セルタンク、培養液モジュール及び細胞培養モジュール100Hを含む。セルタンクと培養液モジュールは、夫々細胞培養モジュールに接続され、細胞培養モジュールはケーシング111、第1固定部材120、第2固定部材130及びシート状担体部材14を含む。ケーシングは、チャンバC10とそれに接続する少なくとも1つの出入口T12〜18を有する。第1固定部材は、ケーシングに固定され、チャンバ内に配置される。第2固定部材はチャンバ内に配置され、第1固定部材に対して移動可能である。シート状担体部材は、複数の細胞培養担体140が配列配置されて成り、両端が夫々第1、第2固定部材に固定される。第2固定部材の移動に伴って、第1、第2固定部材間の距離が変化すると、シート状担体部材は、展開状態又は折り曲げ状態を呈する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ及び少なくとも1つの出入口を有し、前記少なくとも1つの出入口が前記チャンバに接続されるケーシングと、
前記ケーシングに固定され、前記チャンバ内に配置される第1固定部材と、
前記チャンバ内に配置され、前記第1固定部材に対して移動可能である第2固定部材と、
複数の細胞培養担体が配列配置されて成り、両端がそれぞれ前記第1固定部材と前記第2固定部材に固定され、前記第2固定部材の移動に伴って前記第1固定部材と前記第2固定部材との間の距離が変化すると、展開状態または折り曲げ状態を呈するシート状担体部材と、を備える細胞培養モジュール。
【請求項2】
前記細胞培養担体の軸延在方向で相対する両端が、それぞれ前記第1固定部材と前記第2固定部材とに固定される、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項3】
前記シート状担体部材が更に、第1接続部と第2接続部を含み、前記細胞培養担体の相対する両端がそれぞれ前記第1接続部と前記第2接続部に固定され、かつ前記第1接続部および前記第2接続部は、前記第1固定部材と前記第2固定部材に隣接して接続される、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項4】
前記第1接続部と前記第2接続部が、鋸歯状又は波状の外形である、請求項3に記載の細胞培養モジュール。
【請求項5】
前記シート状担体部材が更に、第3接続部を含み、前記第3接続部は、前記第1接続部と前記第2接続部との間に配置され、前記細胞培養担体の一端が前記第1接続部に固定され、前記細胞培養担体の他端が前記第3接続部まで延伸し、前記第3接続部を介してから前記第2接続部まで延伸する、請求項3に記載の細胞培養モジュール。
【請求項6】
前記第2固定部材の移動方向が、前記シート状担体部材における前記細胞培養担体の軸延在方向と直交である、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項7】
前記ケーシングはテーパー部を有し、前記少なくとも1つの出入口が前記テーパー部に設けられる、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項8】
前記少なくとも1つの出入口の数が複数であり、それぞれ前記テーパー部及び前記ケーシングの前記テーパー部に相対する他の側に配置される、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項9】
前記第2固定部材が磁性を有し、前記第2固定部材の移動を磁気制御する磁気制御部材を更に含む、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項10】
更に、前記ケーシングが更に弾性波形構造を有し、前記第2固定部材は前記ケーシングに固定され、かつ前記弾性波形構造が前記第1固定部材と前記第2固定部材の間に位置し、前記弾性波形構造の伸張状態と圧縮状態の間の変換を制御する固定部材を含み、
前記弾性波形構造が前記伸張状態にあるとき、前記シート状担体部材は展開状態を呈し、
前記弾性波形構造が前記圧縮状態にあるとき、前記シート状担体部材は折り曲げ状態を呈する、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項11】
更に、前記ケーシングに移動可能に貫通配置され、前記第2固定部材に接続して、前記第2部材の移動を制御するロッドを含む、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項12】
更に、前記ケーシングに設けられ、かつ前記チャンバ内に位置する流体圧力制御部を含み、
前記第2固定部材が前記流体圧力制御部と前記第1固定部材との間に位置し、前記流体圧力制御部が前記第2固定部材の移動を制御する、請求項1に記載の細胞培養モジュール。
【請求項13】
セルタンクと、
培養液モジュールと、
請求項1から12のいずれかに記載の細胞培養モジュールと、を含み、
前記セルタンクと前記培養液モジュールがそれぞれ前記細胞培養モジュールと接続する細胞培養システム。
【請求項14】
更に、ポンプを含み、
前記セルタンクと前記培養液モジュールがそれぞれ前記ポンプを介して前記細胞培養モジュールに接続する、請求項13に記載の細胞培養システム。
【請求項15】
更に、前記細胞培養モジュールに接続する洗浄液タンクを含む、請求項13に記載の細胞培養システム。
【請求項16】
更に、前記細胞培養モジュールに接続する細胞剥離酵素タンクを含む、請求項13に記載の細胞培養システム。
【請求項17】
更に、前記セルタンク、前記培養液モジュール及び前記細胞培養モジュールに接続するコントローラを含む、請求項13に記載の細胞培養システム。
【請求項18】
細胞を折り曲げ状態の前記シート状担体部材上に付着させ、
前記細胞培養モジュール中で培養液を循環潅流するとともに、前記細胞の培養を開始し、
前記培養液を排出するとともに洗浄液を注入して、浸漬洗浄で残留した前記培養液を除去し、
細胞剥離酵素を注入するとともに、前記シート状担体部材が展開状態を呈するとき、前記細胞を前記シート状担体部材から剥離させ、前記細胞培養モジュール懸濁液に懸濁させ、
前記細胞を含有する前記懸濁液を回収する、ことを含む、
請求項1から12のいずれかに記載の細胞培養モジュールを使用する、細胞培養方法。
【請求項19】
前記細胞を折り曲げ状態の前記シート状担体部材上に付着させる工程が更に、
先に、前記細胞培養モジュールの前記シート状担体部材を折り曲げ状態とし、それから前記細胞を折り曲げ状態の前記シート状担体部材上に注入接種することを含む、請求項18に記載の細胞培養方法。
【請求項20】
前記細胞を折り曲げ状態の前記シート状担体部材上に付着させる工程が更に、
前記細胞を展開状態の前記シート状担体部材上に注入接種し、それから前記細胞培養モジュールの前記シート状担体部材を折り曲げ状態とすることを含む、請求項18に記載の細胞培養方法。
【請求項21】
前記細胞を折り曲げ状態の前記シート状担体部材上に付着させる工程が更に、
前記第2固定部材を前記第1固定部材の近くの位置まで移動させ、前記細胞培養モジュールの前記シート状担体部材を折り曲げ状態とすることを含む、請求項18に記載の細胞培養方法。
【請求項22】
前記細胞剥離酵素を注入するとともに、前記シート状担体部材が展開状態を呈するとき、前記細胞を前記シート状担体部材から剥離させ、前記細胞培養モジュールの懸濁液に懸濁させる工程が、更に、先に前記細胞剥離酵素を注入してから、前記シート状担体部材を折り曲げ状態から展開状態に変換させることを含む、請求項18に記載の細胞培養方法。
【請求項23】
前記細胞剥離酵素を注入するとともに、前記シート状担体部材が展開状態を呈するとき、前記細胞を前記シート状担体部材から剥離させ、前記細胞培養モジュールの懸濁液に懸濁させる工程が、更に、先に前記シート状担体部材を折り曲げ状態から展開状態に変換してから、前記細胞剥離酵素を注入することを含む、請求項18に記載の細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養モジュール、培養システム、および培養方法に関するものであり、特に細胞培養モジュール、細胞培養システム、および細胞培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、細胞量産に使用される担体足場は、2つのタイプ、すなわちコラーゲン(collagen)、キトサン(chitosan)またはゼラチン(gelatin)などの天然材料、或いはポリカプロラクトン(PCL)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)またはポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)などの合成材料に分類することができる。天然材料の多くは動物性材料由来であり、動物性材料は細胞毒性が低く、かつ生体適合性が高いが、動物性材料は検出不可能な動物性汚染を有する可能性があるため、現在は、汚染のリスクを減らすために、動物性材料の使用を減らす、または使用さえもしないという傾向にある。
【0003】
また、現在市場にある細胞担体はアルギン酸塩(Alginate)を基材とする関連製品を除き、その他の合成材料はどれも分解(degradation)が非常に困難であり、よって細胞を円滑に回収することが困難である。アルギン酸塩を基材とする関連製品は細胞培養中に高濃度のカルシウムイオンを必要とするため、細胞を損傷したり、ある種の細胞を分化させたりする可能性があり(例、間葉系幹細胞)、アルギン酸塩を分解するときにも、カルシウムイオンキレート剤(chelator)の使用が必要であり、不適切な使用により容易に細胞を損傷してしまう。また、細胞を集めるための担体足場の重要な技術はまだ大きな発展が望まれている状態であり、よって現在、細胞量産の技術は従来の二次元フラットプレートの培養方法に留まっており、製造工程を円滑に拡大することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、動物性汚染源を有さず、急速な細胞の大量増殖や成長に適した担体材料をどのように見つけるか、及び如何に細胞回収率と細胞品質を向上させるかは研究者が現在解決を切望している課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、細胞回収率および細胞品質が良好でない問題を解決することができる細胞培養モジュール、細胞培養システムおよび細胞培養方法を提供する。
【0006】
本発明の細胞培養モジュールは、ケーシング、第1固定部材、第2固定部材、およびシート状の担体部材を含む。ケーシングはチャンバと少なくとも1つの出入口を有する。出入口はチャンバに接続されている。第1固定部材はケーシングに固定され、チャンバ内に配置されている。第2固定部材はチャンバ内に配置され、第1固定部材に対して移動可能である。シート状担体部材は複数の細胞培養担体が配列配置されて成り、シート状担体部材の両端はそれぞれ第1固定部材と第2固定部材に固定されている。第2固定部材の移動に伴って第1固定部材と第2固定部材との間の距離が変化すると、シート状担体部材は展開状態または折り曲げ状態を呈する。
【0007】
本発明の細胞培養システムは、セルタンク、培養液モジュールおよび細胞培養モジュールを含む。セルタンクと培養液モジュールはそれぞれ細胞培養モジュールに接続され、細胞培養モジュールはケーシング、第1固定部材、第2固定部材およびシート状担体部材を含む。ケーシングはチャンバと少なくとも1つの出入口を有する。出入口はチャンバに接続される。第1固定部材はケーシングに固定され、チャンバ内に配置される。第2固定部材はチャンバ内に配置され、第1固定部材に対して移動可能である。シート状担体部材は複数の細胞培養担体が配列配置されて成り、シート状担体部材の両端はそれぞれ第1固定部材、第2固定部材に固定される。第2固定部材の移動に伴って第1固定部材と第2固定部材との間の距離が変化すると、シート状担体部材は展開状態または折り曲げ状態を呈する。
【0008】
本発明の細胞培養方法は、上記細胞培養モジュールを用い、そのステップは、折り曲げ状態のシート状担体部材に細胞を付着させることを含む。細胞培養モジュールに培養液を循環灌流し、細胞の培養を開始する。培養液を排出し、洗浄液を注ぎ、残留した培養液を浸漬洗浄により除去する。細胞剥離酵素を注ぎ、シート状担体部材を展開状態とすると、細胞がシート状担体部材から剥離し、細胞培養モジュールの懸濁液に懸濁する。そして、細胞を含む懸濁液を回収する。
【発明の効果】
【0009】
以上のことから、本発明の細胞培養モジュール、細胞培養システムおよび細胞培養方法では、第2固定部材によって、細胞培養担体をねじれのない状態とねじれ状態、或いは展開状態と折り曲げ状態との間での変換を制御することができ、それによって細胞回収および細胞品質を向上することができる。
【0010】
本発明の上記特徴と優れた点を更に明確に理解できるよう、以下において実施形態を例示するとともに、図面と併せて以下のように詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aと図1Bは本発明の実施形態の一つによる細胞培養モジュールの細胞培養担体のねじれ状態およびねじれのない状態をそれぞれ示す概略図である。
図2図2A図2Bは本発明の別の実施形態の一つによる細胞培養モジュールの細胞培養担体のねじれのない状態およびねじれ状態をそれぞれ示す概略図である。
図3図3は本発明のさらに別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。
図4図4Aおよび図4Bは、本発明のさらに別の実施形態による細胞培養モジュールの細胞培養担体のねじれ状態およびねじれのない状態をそれぞれ示す概略図である。
図5図5は、本発明の更に別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。
図6図6は、本発明の更に別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。
図7図7は、本発明の更に別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。
図8図8Aから図8Fは、本発明の実施形態の一つによる、細胞培養システムで細胞培養を行う複数の段階の概略図である。
図9図9は、本発明の実施形態による細胞培養システムおよび細胞培養モジュールで行うことができる細胞培養方法のフローチャートである。
図10図10Aおよび図10Bは、本発明の実施形態による、細胞培養モジュールのシート状担体部材の展開状態と折り曲げ状態をそれぞれ示す概略図である。
図11図11は、本発明の別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。
図12図12Aおよび図12Bは、本発明の別の実施形態による、細胞培養モジュールのシート状担体部材の展開状態と折り曲げ状態をそれぞれ示す概略図である。
図13図13は、本発明のさらに別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。
図14図14は、本発明のまたさらに別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。
図15図15は、本発明の実施形態の一つによる細胞培養モジュールの概略図である。
図16図16は、本発明の別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。
図17図17は、本発明の実施形態の一つによる細胞培養システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の上記特徴と優れた点を更に明確に理解できるよう、以下において実施形態を例示するとともに、図面と併せて以下のように詳細に説明する。以下において実施形態を例示するとともに、図面と併せて詳細に説明するが、本発明は様々な異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものではない。図面中の同一または類似の符号番号は、同一または類似の部材を示し、以下の段落では逐一説明は行わない。
【0013】
図1Aと図1Bは本発明の実施形態の一つによる細胞培養モジュールの細胞培養担体のねじれ状態およびねじれのない状態をそれぞれ示す概略図である。図1Aおよび図1Bを参照すると、本実施形態の細胞培養モジュール100Aは、外側スリーブ110と、第1固定部材120と、第2固定部材130Aと、複数の細胞培養担体140とを含む。外側スリーブ110はチャンバC10と少なくとも1つの出入口T12を有する。チャンバC10は細胞培養のためのスペースを提供するために用いる。出入口T12はチャンバC10に接続される。第1固定部材120は外側スリーブ110に固定され、かつチャンバC10内に配置される。第2固定部材130AはチャンバC10に配置され、第1固定部材120に対して移動可能である。細胞培養担体140の両端はそれぞれ第1固定部材120と第2固定部材130Aに固定される。第2固定部材130Aの移動に伴って第1固定部材120と第2固定部材130Aとの間の距離が変化すると、図1Aに示すように細胞培養担体140はねじれた状態となり、或いは図1Bに示すように細胞培養担体140はねじれがない状態となる。
【0014】
言い換えれば、第2固定部材130Aの移動に伴って第1固定部材120と第2固定部材130Aとの間の距離が、細胞培養担体140の伸展長さより短いとき、図1Aに示されるように、細胞培養担体140はねじれ状態となる。細胞培養担体140は帯状でもよい。この状態では、限られたスペースで複数本の細胞培養担体140を使用して細胞付着面積を大きくして培養可能な細胞数を増やすことができる。
【0015】
また、第2固定部材130Aの移動に伴って第1固定部材120と第2固定部材130Aの間の距離が細胞培養担体140の伸展長さにほぼ等しいとき、図1Bに示すように、細胞培養担体140はねじれがない状態になる。この状態で、細胞培養担体140から細胞を剥離させることができる酵素などの物質作用と組み合わせて、細胞培養担体140がねじれ状態からねじれのない状態に変換する過程で細胞を細胞培養担体140から剥離させることができる。また、細胞培養担体140の間の距離が広がるため、本来細胞培養担体140内部の酵素が作用しにくい細胞にも酵素などを充分に作用させることができ、細胞回収率の向上に寄与することができる。
【0016】
本実施形態では、第2固定部材130AがチャンバC10内に移動可能に配置されているので、外側スリーブ110が図1Aの状態にあるとき、第2固定部材130Aは自重により第1固定部材120に近い位置まで下向きに移動する。細胞培養担体140をねじれのない状態に変換しようとするときには、図1Bに示すように、外側スリーブ110を図1Aの状態に対して上下逆にすることができる。その結果、第2固定部材130Aは自重により第1固定部材120から離れた位置まで下向きに移動し、細胞培養担体140は第1固定部材120と第2固定部材130Aによって引き伸ばされてねじれのない状態になる。さらに、第2固定部材130Aの移動能力を高めるために、ウェイトブロックを第2固定部材130Aに付けて、第2固定部材130Aの自重での移動を確保することができる。
【0017】
別の観点から、細胞培養担体140がねじれのない状態にあるとき、各細胞培養担体140は二次元構造に相当する。細胞培養担体140がねじれた状態にあるとき、交差する細胞培養担体140は三次元構造に相当する。図1Aでは、ねじれ状態の各細胞培養担体140は規則的な螺旋形状であるが、無秩序なねじれ状態でもよく、複数のねじれ状態の細胞培養担体140が巻き形状を呈していてもよいが、これらに限定されない。図1Bでは、ねじれのない状態の各細胞培養担体140は直線状であり、よって複数のねじれのない状態の細胞培養担体140は平行な線配列を呈してもよいが、互いに平行でなくてもよく、或いは細胞培養担体140の一部がわずかに湾曲した状態を呈してもよく、しかしこれらに限定されない。
【0018】
細胞培養担体140の材料は、例えば、ポリエステル(Polyester;PET)、ナイロン(Nylon)、ポリエチレン(Polyethylene;PE)、ポリプロピレン(Polypropylene;PP)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride;PVC)、ポリスチレン(polystyrene;PS)、ポリカーボネート(Polycarbonate;PC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(Ethylene Vinyl Acetate;EVA)またはポリウレタン(polyurethane;PU)などである。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、糸引き特性を有する任意の材料を本発明の細胞培養担体の材料として使用することができる。さらに、各細胞培養担体140は、帯状シート、線状シート、またはその他の適切な形状の形態であり得る。
【0019】
細胞培養担体140は、細胞が付着可能な材料または処理後に細胞付着性を有する材料であり得る。前記処理の方法としては、表面改質、表面コーティングまたは表面微細構造化などが挙げられる。表面改質は、例えば、細胞付着性材料または細胞非付着性材料の表面にプラズマ処理(plasma modification)を行い、細胞付着を容易にするために表面に細胞付着性を具えさせる。表面コーティング(coating)は、細胞付着を促進するために、細胞付着性材料、または細胞非付着性材料の表面に、例えばコラーゲン(collagen)、キトサン(chitosan)、ゼラチン(gelatin)もしくはアルギン酸塩(Alginate)などをコーティングするが、これらに限定されない。表面微細構造化(micro-structured)は、細胞付着を容易にするために、たとえば細胞付着性材料または細胞非付着性材料の表面上にレーザー切断により微細孔を形成する。しかし、本発明の処理方法は、これらに限定されるものではなく、細胞付着性を改善することができる任意の処理方法を本発明に適用することができる。
【0020】
外側スリーブ110、第1固定部材120、第2固定部材130Aの材料は、例えば、ポリエステル(Polyester;PET)、ナイロン(Nylon)、ポリエチレン(Polyethylene;PE)、ポリプロピレン(Polypropylene;PP)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride;PVC)、ポリスチレン(polystyrene;PS)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(Ethylene Vinyl Acetate;EVA)、ポリウレタン(polyurethane;PU)、ポリカーボネート(Polycarbonate;PC)又はガラスなどであるが、本発明は、これらに限定されない。
【0021】
実施形態の一つでは、出入口T12の細胞培養モジュール100を外側スリーブ110の一端に配置することができ、細胞培養モジュール100が単一の出入口T12のみを備える場合、培地、緩衝液、および細胞の収集などは、どれも出入口T12を通して液体の進出を行うことができる。しかしながら、他の実施形態では、モジュール全体の汚染を防止するとの観点から、培地、緩衝液の進出および細胞の収集などを異なる導管を介して行ってもよい。詳細には、実施形態の細胞培養モジュール100は、複数の出入口T12、T14、T16、T18(図示せず)、T21、T23を有してもよく、このうち、出入口T12は外側スリーブ110の端部に設置され、出入口T12の設置を介して細胞の収集ができる。出入口T14、T16、T18は外側スリーブ110の側面の出入口T12が設けられる外側スリーブ110端部の近くに配置して、それぞれ異なる緩衝液及び培地の進入に供してもよい。なお、出入口T14、T16、T18の数は、実際に注入する液体の種類に応じて異なる配置数に変化し得るものであり、列挙されたものに限定されない。出入口T21、T23は外側スリーブ110の出入口T12に相対する他端部に設けられ、出入口T21は培地、緩衝液等の液体の進出に供され、出入口T23は予備孔とし、出入口T21は出入口T14、T16及びT18と相対する位置に設計され、チャンバC10での液体の分配及び流動を容易なものとするようにしてもよい。
【0022】
この実施形態の細胞培養モジュール100は、チャンバC10内に配置され出入口T12と第1固定部材120との間に配置されたスポイラー150をさらに含んでもよい。また、スポイラー150は、出入口T14、T16、T18と同じ平面高さに配置することができる。出入口T14、T16およびT18から進入した液体は、スポイラー150の回転により、チャンバC10内の液体が流動するように動かされ、その結果、チャンバC10内の液体中の物質が均一に分配される。
【0023】
細胞培養モジュールは繰り返し使用されるかどうかによって異なる設計を有する。細胞培養モジュールが繰り返し使用されるとき、本実施の形態のような細胞培養モジュール100の外側スリーブ110は、本体112とカバー114をさらに含み、本体112とカバー114は接続されてチャンバC10を形成する。カバー114が開かれることにより、チャンバC10と接続し、細胞培養担体140を交換することができる。さらに、本体112とカバー114との間に更にシール部116を配置して、チャンバC10の密封性を維持することができる。細胞培養モジュールを一度の使用とするとき、外側スリーブ110は一体成形される。
【0024】
図2A図2Bは、本発明の別の実施形態による、細胞培養モジュールの細胞培養担体のねじれのない状態およびねじれた状態をそれぞれ示す概略図である。図2Aおよび図2Bを参照すると、本実施形態の細胞培養モジュール100Bは、図1Aの細胞培養モジュール100Aと類似であるが、本実施形態の細胞培養モジュール100Bは、磁気制御部材160Aをさらに含むことに留意されたい。これに対し、本実施形態の第2固定部材130Bは磁性を有する。したがって、磁気制御部材160Aは、磁気吸引力や磁気反発力などの磁力によって第2固定部材130Bの移動を制御することができる。図2Aに示すように、磁気制御部材160Aが第2固定部材130Bを第1固定部材120から離れた位置まで移動するよう磁気制御すると、細胞培養担体140はねじれていない状態を呈する。図2Bに示すように、磁気制御部材160Aが第2固定部材130Bを第1固定部材120に近い位置まで移動するように制御すると、細胞培養担体140はねじれた状態となる。本実施形態の磁気制御部材160Aの外形は、外側スリーブ110の外形とほぼマッチするものであり、磁気制御部材160A自体が移動して第2固定部材130Bの移動を駆動するが、本発明はこれに限定されない。
【0025】
図3は本発明のさらに別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。図3を参照すると、本実施形態の細胞培養モジュール100Cは図2Aの細胞培養モジュール100Bに類似しているが、本実施形態の磁気制御部材160Bは第2固定部材130Bの移動を制御するとき、外側スリーブ110上の第1固定部材120から離れた側まで直接移動し、磁気吸引を利用して第2固定部材130Bを第1固定部材120から離れた位置まで移動させる。反対に、磁気制御部材160Bが取り除かれた後、第2固定部材130Bは自重により第1固定部材120に近い位置まで移動する。
【0026】
図4Aおよび図4Bは、本発明のさらに別の実施形態による細胞培養モジュールの細胞培養担体のねじれの状態とねじれのない状態を示す概略図である。図4Aおよび図4Bを参照すると、本実施形態の細胞培養モジュール100Dは図1Aの細胞培養モジュール100Aと類似であるが、本実施形態の細胞培養モジュール100Dはさらに留め具170を含むことに留意されたい。また、外側スリーブ110Aはさらに弾性波形構造110A1を有する。力が加わっていない状態では、弾性波状構造110A1は、例えば、図4Bの伸張状態である。留め具170は、弾性波形構造110A1が圧縮状態を維持するか否かを制御するのに用いられ、図4Bの伸張状態と図4Aの圧縮状態とを切り替える。本実施形態の第2固定部材130Cは外側スリーブ110Aに固定され、弾性波形構造110A1は第1固定部材120と第2固定部材130Cの間に位置する。留め具170が係合しているとき、弾性波形構造110A1は圧縮状態にあるので、第1固定部材120と第2固定部材130Cは互いに接近しており、細胞培養担体140はねじれた状態を呈する。留め具170が解放されると、弾性波形構造110A1は伸張状態にあるので、第1固定部材120と第2固定部材130Cは互いに離れており、細胞培養担体140はねじれのない状態を呈する。なお、本実施形態では、留め具170を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、留め具170は、マジックテープ、ネジ、ロープなどの他の固定部材と任意に置き換えることができる。
【0027】
図5は、本発明のさらに別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。図5を参照すると、本実施形態の細胞培養モジュール100Eは図1Aの細胞培養モジュール100Aと類似しているが、本実施形態の細胞培養モジュール100Eはさらにロッド180およびガイド孔182を含むことに留意されたい。ガイド孔182は、外側スリーブ110Bの第1固定部材120に相対する一端に配置され、ロッド180が外側スリーブ110Bに移動可能に貫通配置されるように案内する。ロッド180は、第2固定部材130Aに連結され、第2固定部材130Aの移動を制御するのに用いられる。外側スリーブ110Bへのロッド180の挿入程度を制御することによって、第2固定部材130Bの第1固定部材120の近く或いは離れた位置への移動を制御することが可能である。
【0028】
図6は、本発明の別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。図6を参照すると、本実施形態の細胞培養モジュール100Fは、図1Aの細胞培養モジュール100Aと同様であるが、本実施形態の細胞培養モジュール100Fは、外側スリーブ110に設けられかつチャンバC10内に配置された流体圧力制御部190をさらに含むことに留意されたい。第2固定部材130Aは流体圧力制御部材190と第1固定部材120との間に配置される。流体圧力制御部190は第2固定部材130Aの移動を制御するために用いられる。例えば、流体圧力制御部190は、流体を収容する袋体に適用することができるが、これに限定されない。流体圧力制御部190に充填される気体、水、油、又はその他の流体が増加すると、流体圧力制御部190の体積も伴って増加し、第1固定部材120に近づく方向へ向けて移動するよう第2固定部材130Aを押動かすことができる。流体圧力制御部190に充填される気体、水、油または他の流体の量が減少すると、流体圧力制御部190の体積も伴って減少し、第2固定部材130Aが第1固定部材120から離れる方向に移動することを可能にする。
【0029】
図7は、本発明のさらに別の実施形態による細胞培養モジュールの概略図である。図7を参照すると、本実施形態の細胞培養モジュール100Gは、図1Aの細胞培養モジュール100Aと類似であるが、本実施形態の細胞培養モジュール100Gでは、第2固定部材130Dが外側スリーブ110Cの孔壁にねじ止めされていることに留意されたい。言い換えれば、第2固定部材130Dと外側スリーブ110Cの両方の接触面には、互いに一致するねじ山が設けられている。したがって、第2固定部材130Dが外側スリーブ110Cに対して回転すると、第2固定部材130Dは第1固定部材120に接近する、或いは第1固定部材120から離れるように移動する。実施形態の第2固定部材130Dは、使用者が第2固定部材130Dを回転させるために力を加えるのを容易にするためのノブ130D1をさらに有する。
【0030】
図8Aから図8Fは本発明の実施形態のひとつによる、細胞培養システムで細胞培養を行う複数の段階の概略図である。まず図8Aを参照すると、本実施形態の細胞培養システム1000は、セルタンク200、培養液モジュール300、および細胞培養モジュール400を含む。セルタンク200と培養液モジュール300は、それぞれ細胞培養モジュール400に接続される。細胞培養モジュール400は、前述の実施形態の細胞培養モジュールまたは本発明の精神に適合する他の細胞培養モジュールでもよく、細胞培養モジュール400の詳細な説明はここでは省略する。本実施形態の細胞培養システム1000は、前述の各実施形態の細胞培養モジュールと同じ細胞培養モジュール400を使用しているので、本実施形態の細胞培養システム1000は細胞培養の産量および回収率を増加させることができる。また、本実施形態の細胞培養システム1000は、さらにポンプ500、洗浄液タンク600及び細胞剥離酵素タンク700を選択的に含んでいてもよい。セルタンク200および培養液モジュール300は、それぞれポンプ500を介して細胞培養モジュール400に接続される。洗浄液タンク600および細胞剥離酵素タンク700も、細胞培養モジュール400と接続し、例えばポンプ500を介して細胞培養モジュール400に接続される。
【0031】
本実施形態のセルタンク200、培養液モジュール300、洗浄液タンク600、細胞剥離酵素タンク700は、全てポンプ500を介して細胞培養モジュール400に接続される。セルタンク200は、ポンプ500を介して、細胞培養モジュール400の出入口T12に接続される。洗浄液タンク600は、ポンプ500を介して、細胞培養モジュール400の出入口T14に接続される。細胞剥離酵素タンク700は、ポンプ500を介して、細胞培養モジュール400の出入口T16に接続される。培養液モジュール300は、ポンプ500を介して、細胞培養モジュール400の出入口T18に接続される。培養液モジュール300の培養液は、出入口T18から細胞培養モジュール400に進入した後、細胞培養モジュール400の他端の出入口T21から培養液モジュール300に逆流する。したがって、培養液モジュール300の培養液をリサイクルすることができる。培養液モジュール300の培養液の品質を監視するために、培養液モジュール300の培養液タンク310には、培養液センサ314が設けられる。培養液センサ314は、例えば、pH計、温度計、または溶存酸素計である。また、培養液タンク310内には、培養物質の培養液中への均一な分散を保持するための撹拌棒312が配置されている。また、培養液モジュール300は更にポンプ320とレギュレータ330を有する。培養液センサ314が培養液タンク310内の培養液の品質が臨界値より低いことを感知すると、ポンプ320はレギュレータ330の調整物質を培養液タンク310に放出して培養液の品質を改善させる。本実施形態の細胞培養システム1000は、コントローラ800を更に含み、コントローラ800はそれぞれポンプ500、培養液センサ314及びポンプ320を介してセルタンク200、洗浄液タンク600、細胞剥離酵素タンク700、細胞培養モジュール400および培養液モジュール300に接続され、ポンプ500、ポンプ320、レギュレータ330および培養液センサ314を制御するのに用いる。また、本実施形態の細胞培養システム1000は、必要に応じて細胞培養モジュール400内の物質を調整するために細胞培養モジュール400に実装されるレギュレータ900をさらに含んでもよい。
【0032】
図9は本発明の実施形態の一つの細胞培養システムおよび細胞培養モジュールにより行う細胞培養方法のフローチャートである。図8Aおよび図9を参照すると、細胞培養を行う際には、まず、ステップS110では、細胞培養モジュール400の細胞培養担体140をねじれ状態とし、システムの管線の設置を完了させる。前述の各実施形態で説明したように、細胞培養モジュール400の細胞培養担体140をねじれ状態にする方法は、第2固定部材を第1固定部材120に近い位置に移動させる方法であるが、これはどの方法で行うかは限定されず、前述の実施形態のように重力や磁力、或いはその他の機械的力などを利用して第2固定部材を移動させることができ、磁気制御部材160Aにより第2固定部材130Bの移動制御を補助させてもよく、ただしこれに限定されない。
【0033】
図8Aおよび図9を参照すると、ステップS120では、続いてポンプ500を利用して、セルタンク200で培養対象の細胞を細胞培養モジュール400に送り込み、培養対象の細胞をねじれ状態の細胞培養担体140に注入接種する。培養細胞は、例えば幹細胞または分化細胞であるが、本発明はこれらに限定されず、具体的には、培養細胞は、例えば、ベロ細胞(VERO, an African green monkey kidney cell line)、脂肪幹細胞(ADSC, Human Adipose-Derived Stem Cell)、間葉系幹細胞(MSC, Mesenchymal Stem Cell)、MDCK細胞(MDCK, Madin-Darby Canine Kidney)或いはヒト胎児腎細胞293 (HEK293, Human Embryonic Kidney 293)などであるが、これらに限定されない。この実施例では、まず、培地を細胞培養担体140に加え、そして細胞を細胞培養担体140に接種する。別の実施形態では、細胞を含む細胞培地を細胞培養担体140に直接加えてもよい。培地は、細胞培養に通常使用される標準的な増殖培地、例えば、ウシ胎児血清(FBS)を含む培地または無血清培地であるが、本発明はこれらに限定されない。また、細胞培養液の濃度に対する要求は細胞の特性によって異なるので、細胞の特性に応じて濃度を調節することができ、必要に応じて増殖因子または抗生物質などを培地に添加することができることを理解すべきである。そして細胞を細胞培養担体に付着させる。この実施形態では、細胞を細胞培養担体140に付着させるために、細胞培養担体140を特定の増殖条件(例えば、特定の温度、湿度、または二酸化炭素濃度)下で細胞培養モジュール400中に入れる。
【0034】
他の実施形態では、細胞培養担体140がねじれのない状態にあるとき、システムの各管線を先に設置し、その後、細胞をねじれのない細胞培養担体140に注入接種し、細胞が付着した後に細胞培養担体140をねじる動作を行ってもよいが、以上は例を挙げたものであり、これに限るものではない。
【0035】
図8Bおよび図9を参照すると、ステップS130では、細胞を付着させた後、培養液を循環潅流して、細胞培養を開始する。すなわち、上記ステップ終了後、ポンプ500を起動して培養液モジュール300の培養液を細胞培養モジュール400内に導入し、培養液モジュール300と細胞培養モジュール400との間で培養液の循環を持続させながら細胞を培養することができる。細胞培養の方法は、例えば、静置培養または動的培養である。動的培養は、細胞培養担体の周囲の培養液をかき混ぜてもよく、培養液をかき混ぜる方法は、例えば図1Aのようなスポイラー150を使用することができるが、この実施形態には図示されない。実施形態の一つでは、培養後の細胞数は元の量の100倍を超えるまで増加させることができる。別の実施形態では、培養後の細胞数は元の量の2000倍を超えるまで増加することができる。
【0036】
異なる細胞は異なる特性を有するので、異なる細胞の種類に従って細胞培養条件を調整することができることに留意すべきである。例えば、哺乳動物の細胞を培養するとき、37℃および5%COの条件下で細胞培養を実施することができるとともに、培養液のpHはその生理学的範囲内に維持され、たとえば大多数の動物細胞から言えば、培養液はpH7.2〜7.4が適切である。
【0037】
図8Cおよび図9を参照すると、ステップS140では、続いて培養液が排出され、洗浄液が注入され、残留した培養液が浸漬洗浄により除去される。すなわち、細胞培養モジュール400の培養液がすべて培養液モジュール300に戻される。次に、ポンプ500により、洗浄液タンク600内の洗浄液を細胞培養モジュール400に導入し、残留した培養液が浸漬洗浄により除去される。洗浄液は、例えばリン酸緩衝食塩水である。
【0038】
図8Dおよび図9を参照すると、ステップS150では、続いて細胞剥離酵素を注入し、その細胞培養担体および細胞をその中に浸漬する。すなわち、細胞培養モジュール400の全ての洗浄液が洗浄液タンク600に戻される。次に、ポンプ500により細胞剥離酵素タンク700中の細胞剥離酵素を細胞培養モジュール400に導入し、ねじれ状態の細胞培養担体140と細胞をその中に浸漬する。細胞剥離酵素は、例えば、トリプシン(trypsin)、TrypLE、Accutase、Accumaxまたはコラゲナーゼ(collagenase)であるが、本発明はこれらに限定されず、細胞を剥離することができる他の酵素または試薬を使用することもできる。
【0039】
図8Eおよび図9を参照すると、ステップS160では、続いて、細胞培養担体が展開されて二次元構造に変換され、細胞の剥離が促進される。つまり、細胞培養モジュール400の細胞培養担体140をねじれ状態からねじれのない状態に変化させる。前述の各実施形態で説明したように、細胞培養モジュール400の胞培養担体140をねじれのない状態にする方法は、第2固定部材130Aを第1固定部材120から離れた位置まで移動させるものであり、本実施形態では磁気制御部材160Aによって補助することができる。
【0040】
図8Fおよび図9を参照すると、ステップS170では、続いて細胞懸濁液が回収される。すなわち、ポンプ500を介して細胞培養モジュール400中の細胞懸濁液をセルタンク200に送る。細胞の回収は細胞培養担体140がねじれのない状態で行われるので、その開かれた構造は、細胞培養担体140を細胞剥離酵素を含む試薬と十分に反応させることができ、かつ細胞培養担体140の内層で増殖する細胞を剥離させることにも効力を発揮して、細胞回収率を効果的に高めることができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、先に細胞剥離酵素を注入した後に、細胞培養担体140を開いて、細胞の収集を進めている。しかし、他の実施形態では、培養細胞の収集を容易にするため、先に細胞培養担体140を開いて、それを二次元状態に戻してから、細胞剥離酵素を注入しているが、上記に列挙したものに限定されない。
【0042】
上記実施形態では、細胞培養モジュールの外側スリーブは円筒形状を採用しているが、これに限定されない。別の実施形態では、必要に応じて細胞培養モジュールを他の形状で設計することもできる。異なる形状の細胞培養モジュールに合せるために、細胞培養担体も適応した異なる敷設方法を有することに注意しなければならない。
【0043】
図10Aおよび図10Bは、本発明の実施形態による、細胞培養モジュールのシート状担体部材の展開状態と折り曲げ状態をそれぞれ示す概略図である。図10A及び図10Bを参照すると、本実施形態の細胞培養モジュール100Hは、ケーシング111、第1固定部材120、第2固定部材130、及びシート状担体部材14を含む。ケーシング111は、チャンバC10および少なくとも1つの出入口T12を有し、少なくとも1つの出入口T12はチャンバC10に接続する。第1固定部材120はケーシング111に固定され、チャンバC10内に配置される。第2固定具130は、チャンバC10内に配置され、第1固定具120に対して移動可能である。シート状担体部材14は、複数の細胞培養担体140が配列配置されてなり、シート状担体部材14の相対する両端はそれぞれ第1固定部材120と第2固定部材130に固定される。第2固定部材130の移動に伴って第1固定部材120と第2固定部材130との間の距離が変化すると、図10Aに示すようにシート状担体部材14が展開状態を呈する、或いは図10Bに示すようにシート状担体部材14が折り曲げ状態を呈する。
【0044】
本実施形態では、ケーシング111は六面の箱状の外形、例えば平板状であるが、これに限定されない。複数の細胞培養モジュール100Hを用いるとき、複数のケーシング111を互いに積み重ねることができ、全体のスペースをより効率的に利用することができる。また、細胞培養担体140は、ケーシング111の形状の変化に合わせて排列されてシート状担体部材14を成し、シート状担体部材14が展開状態にあるときに平板ケーシング111の一面を覆うことができる。
【0045】
上述したように、直線状の細胞培養担体140は単線、多重線または糸構造でもよく、線の形状は直線、曲線、螺旋曲線、波線、ジグザグ線、反転曲線またはシート状線などでもよいが、例に挙げられているものに限定されない。複数の直線状の細胞培養担体140が配列設置されてシート状担体部材14を形成し、細胞培養担体140の排列方法は並列配置、或いは交互配置でもよく、配列されたシート状担体部材14は単層でも複数層でもよく、これらに限定されない。
【0046】
本実施形態では、複数の細胞培養担体140を単層で並列配置してシート状担体部材14を形成し、かつ細胞培養担体140の軸延在方向で相対する両端をそれぞれ第1固定部材120と第2固定部材130とに固定している。したがって、第2固定部材130の移動に伴って第1固定部材120と第2固定部材130との間の距離がシート状担体部材14(または細胞培養担体140)の伸展長さよりも小さくなると、図10Bに示すように、シート状担体部材14(または細胞培養担体140)は折り曲げ状態となる。この状態で、限られたスペースで複数の細胞培養担体140を使用することで、細胞付着面積を大きくして培養可能な細胞数を増やすことができる。第1固定部材120と第2固定部材130との間の距離が、第2固定部材130の移動に伴ってシート状担体部材14(または細胞培養担体140)の伸展長さにほぼ等しくなると、図10Aに示すように、シート状担体部材14(または細胞培養担体140)が展開状態を呈する。この状態では、シート状担体部材14が折り曲げ状態から展開状態に変換する過程で細胞を細胞培養担体140から剥離することができる。また、細胞培養担体140間の距離が広がるため、細胞培養担体140からの細胞の剥離を補助する酵素などの物質を再注入することができ、全細胞に到達しやすいとともに、充分な反応をさせやすく、細胞回収率の向上に寄与する。
【0047】
図11を参照されたい。別の実施形態では、複数の細胞培養担体140を単層で並列配置してシート状担体部材14を形成し、シート状担体部材14は第1接続部142および第2接続部144をさらに含み、かつ細胞培養担体140の軸延在方向で相対する両端をそれぞれ第1接続部142と第2接続部144とに固定している。第1接続部142および第2接続部144は、第1固定部材120および第2固定部材130に隣接して接続される。詳細には、第1接続部142と第2接続部144はシート状担体部材14の2つの長辺であり、シート状担体部材14の第1固定部材120と第2固定部材130に固定される辺は、シート状担体部材14の2つの短辺である。つまり、第1接続部142、第2接続部144、第1固定部材120、および第2固定部材130は、すべてシート状担体部材14の異なる辺上にある。
【0048】
また、図1Aから図10Bの実施形態では、第2固定部材の移動方向Dは、細胞培養担体140の軸延在方向と略平行であるが、図11の実施形態では、第2固定部材130の移動方向Dは、シート状担体部材14における前記細胞培養担体140の軸延在方向と略直交である。他の実施形態では、第2固定部材130の移動方向Dは、シート状担体部材14における細胞培養担体140の軸延在方向に対して実質的に角度を有してもよいが、それに限定されない。
【0049】
図11図12Aおよび図12Bを同時に参照されたい。なお、図示を簡略化するために、図12Aおよび図12Bには細胞培養担体140を図示していないが、細胞培養担体140の配置は、細胞培養担体140の軸延在方向と第2固定部材130の移動方向Dが、互いに直交、角度を有する或いは平行でもよいことが前述の描写より理解できる。図11の実施形態では、シート状担体部材14が展開状態にあるとき、第1接続部142および第2接続部144は略直線である、或いはわずかに湾曲した状態であるが、図12Aおよび12Bの異なる実施形態では、第1接続部142と第2接続部144は、成形によって鋸歯状または波状の外形を呈するように設計することができるが、これに限定されない。第1接続部142と第2接続部144の鋸歯状或いは波状の平らでない外形は、第2固定部材130が第1固定部材120に向かって移動するときに、シート状担体部材14の均一な折り曲げをガイドすることができ、シート状担体部材14が折り曲げ状態のとき、複数の細胞培養担体140の間に適度な空間を具えさせ、複数の細胞培養担体140の間の一部の領域が不均一に押圧されて過度に密となり細胞の増殖に不利となることを回避することができる。
【0050】
図12Aおよび図12Bに示すように、細胞培養モジュール100J中のシート状担体部材14は、第3接続部146をさらに含む。第3接続部146は、第1接続部142と第2接続部144との間に配置され、細胞培養担体140の一端が第1接続部142に固定され、細胞培養担体140の他端が第3接続部146まで延伸し、第3接続部146を介してから第2接続部144まで延伸する。第3接続部146は、第1接続部142と第2接続部144と同様の折り曲げガイドの成形機能を有することに加えて、第1接続部142と第2接続部144との間の距離が長い場合、第3接続部146は固定支持機能を提供するよう設置ことができ、両端間の距離が長すぎることによる細胞培養担体140の垂れ下がりを回避する。また、第3接続部146の数は1つに限られない。
【0051】
実施形態の一つでは、ケーシング111はテーパー部113を有し、少なくとも1つの出入口T12がテーパー部113に設けられる。テーパー部113は、ケーシング111から外側に向かって徐々に縮小して漏斗状構造を形成し、テーパー部113は細胞回収時に細胞回収液を流出させやすくすることで細胞の残留を減少させることができ、チャンバC10内に残留するガスを排出させ易くすることもできる。もちろん、テーパー部113はまた、チャンバC10に進入する液体を効率的に集めて排出を容易にすることも可能である。
【0052】
実施形態の一つでは、細胞培養モジュールが単一の出入口T12のみを備える場合、培地、緩衝液、および細胞の収集などは、出入口T12を通して液体の進出を実施することができる。しかしながら、他の実施形態では、モジュール全体が汚染されるのを予防するとの観点から、培地、緩衝液、および細胞の収集などが異なる導管を介して行えるようにしてもよい。詳細には、本実施形態の細胞培養モジュール100H‐100Jは、複数の出入口T12、T14、T16、およびT18を含んでもよく、出入口T12をテーパー部113に設けて、出入口T12の設置により細胞の採取を行ってもよい。出入口T14、T16およびT18は、ケーシング111のテーパー部113に相対する他の側に配置して、それぞれ異なる緩衝液および培地の進入に供してもよい。なお、出入口T14、T16、T18の数は、実際に注入する液体の種類に応じて必要により異なる配置数に変化し得るものであり、列挙されたものに限定されない。出入口T12と出入口T14、T16とT18は相対位置に設計され、チャンバC10内の液体の分布と流動循環に寄与する。また、細胞培養モジュール100H、100I及び100Jも繰り返し使用の要否に応じて異なる設計としてもよい。細胞培養モジュール100H、100Iおよび100Jを繰り返し使用する場合、ケーシング111は分離可能な二つの構成部材として設計することができ、すなわちケーシング111はさらに本体112およびカバー114を含むか、或いは更にシール部116を設けることができ(112、114、116は図示せず、図1Aを参考とすることができる)、その機能および目的は前述の実施形態で記載のものと同じであり、ここでは詳細に説明しない。細胞培養モジュール100H、100I、100Jを一度だけ使用する場合、ケーシング111は一体成形とすることができ、2つの部材に分けて設計する必要はない。
【0053】
また、細胞培養モジュール100H、100I、100Jの実施形態では、前述の実施形態のように、第2固定部材130を重力、磁力、その他の機械的力で移動させてシート状担体部材14の状態を変化させることができる。詳細には、第2固定部材130を変位させるために重力を用いた場合、第2固定部材130はチャンバC10内に移動可能に配置されるので、ケーシング111が直立に置かれると、第2固定部材130はそれ自重により下方に移動して、第1固定部材120の位置に近づく。シート状担体部材14を展開状態に変換するとき、ケーシング111を他方の対応方向に向けて直立させ、これにより、第2固定部材130はそれ自重のために下向きに第1固定部材120から離れた位置まで移動し、シート状担体部材14が第1固定部材120と第2固定部材130の引き伸ばしを受けて展開状態を呈する。さらに、第2固定部材130の移動性を高めるために、ウェイトブロックを第2固定部材130に付けて、第2固定部材130の自重での移動を確保することができる。
【0054】
図13を参照すると、実施形態の一つでは、磁力を用いて第2固定部材130を変位させる場合、細胞培養モジュール100Kはさらに磁気制御部材160Kを含む。これに対し、本実施形態の第2固定部材130Kは、磁気特性を有する。したがって、磁気制御部材160Kは、磁気吸引力又は磁気反発力などの磁力によって第2固定部材130Kの移動を制御することができる。第2固定部材130Kが第1固定部材120から離れた位置に移動するよう磁気制御部材160Kが磁気制御すると、シート状担体部材14は展開状態になる。第2固定部材130Kが第1固定部材120に近い位置に移動するよう磁気制御部材160Kが磁気制御すると、シート状担体部材14は折り曲げ状態になる。本実施形態の磁気制御部材160Kは、形状が限定されるものではなく、ケーシング111の表面に近づけることができ、かつ磁気制御部材160K自体が移動して、これにより第2固定部材130Kの移動を駆動することが出来さえすればよいものであるが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態では、細胞培養モジュール100Kを直立させることができ、第2固定部材130Kのその自重による移動変位を助けることができるものである。
【0055】
図14を参照すると、実施形態の一つでは、細胞培養モジュール100Lはさらに留め具170を含む。また、ケーシング111は弾性波形構造111Aを更に有する。弾性波形構造111Aは、前述の図4Aおよび4Bの細胞培養モジュール100Dにおける弾性波形構造110A1と同じである。力が加わっていない状態では、弾性波形構造111Aは、例えば、図14の伸張状態である。留め具170は、弾性波形構造111Aが圧縮状態を維持するか否かを制御するために用いられ、伸張状態と圧縮状態との間を切り替える。本実施形態の第2固定部材130Lはケーシング111に固定され、弾性波形構造111Aは第1固定部材120と第2固定部材130Lとの間に位置する。留め具170が係合しているとき、弾性波形構造111Aは圧縮状態にあるので、第1固定部材120と第2固定部材130Lは互いに接近し、シート状担体部材14は折り曲げ状態を呈する。留め具170が解放されているとき、弾性波形構造111Aは伸張状態にあるので、第1固定部材120と第2固定部材130Lは互いに離れ、シート状担体部材14は展開状態を呈する。なお、本実施形態では、留め具170を例に挙げて説明したが、留め具170は、マジックテープ、ネジ、ロープなどの他の固定部材と任意に置き換えることができる。
【0056】
図15を参照すると、実施形態の一つでは、細胞培養モジュール100Mは図5の細胞培養モジュール100Eと類似であるが、さらにロッド180およびガイド孔182を含む。ガイド孔182は、ケーシング111の第1固定部材120に相対する一端に配置され、ロッド180がケーシング111に移動可能に貫通配置されるように案内する。ロッド180は、第2固定部材130に連結され、第2固定部材130の移動を制御するのに用いられる。ケーシング111へのロッド180の挿入程度を制御することによって、第2固定部材130の第1固定部材の近く或いは離れた位置への移動を制御することが可能である。この実施形態では、第2固定部材130とテーパー部113はそれぞれケーシング111の相対する異なる側に配置されているが、他の実施形態では、第2固定部材130とテーパー部113はケーシングの同じ側にあってもよい(即ち、ロッド180とガイド孔182がテーパー部113と同じ側に設けられる)が、これに限定されない。
【0057】
図16を参照すると、実施形態の一つでは、細胞培養モジュール100Nは図6の細胞培養モジュール100Fと類似であるが、ケーシング111に配置されかつチャンバC10内に配置された流体圧力制御部190をさらに含む。第2固定部材130は流体圧力制御部190と第1固定部材120の間に位置する。流体圧力制御部190は第2固定部材130の移動を制御するために用いられる。例えば、流体圧力制御部190は、流体を収容する袋体に適用することができるが、本発明はこれに限定されない。流体圧力制御部190に充填される気体、水、油、または他の流体が増加すると、流体圧力制御部190の体積も増加し、第1固定部材120に近づく方向へ向けて移動するよう第2固定部材130を押動かすことができる。流体圧力制御部190に充填される気体、水、油、または他の流体の量が減少すると、流体圧力制御部190の体積も伴って減少し、第2固定部材130が第1固定部材120から離れる方向に移動することを可能にする。この実施形態では、第2固定部材130とテーパー部113はそれぞれケーシング111の相対する異なる側に配置されているが、他の実施形態では、第2固定部材130とテーパー部113はケーシングの同じ側にあってもよい(すなわち流体圧力制御部190はテーパー部113と同じ側に設けられる)が、これに限定されない。
【0058】
図17は、本発明の実施形態の一つによる細胞培養システムの概略図である。本実施形態の細胞培養システム2000は、セルタンク200、培養液モジュール300、細胞培養モジュール400Aを含む。セルタンク200と培養液モジュール300はそれぞれ細胞培養モジュール400Aに接続される。細胞培養モジュール400Aは、前述の各実施形態の細胞培養モジュール(例えば細胞培養モジュール100H〜100N)または本発明の精神に符合する他の細胞培養モジュールでもよく、細胞培養モジュール400Aの詳細な説明はここでは省略する。本実施形態の細胞培養システム2000は、前述の各実施例の細胞培養モジュールと同じ細胞培養モジュール400Aを使用しているので、本実施例の細胞培養システム2000は細胞培養の産量および回収率を増加させることができる。また、本実施形態の細胞培養システム2000は、ポンプ500、洗浄液タンク600、細胞剥離酵素タンク700、及びコントローラ800をさらに選択的に含んでもよい。セルタンク200および培養液モジュール300はそれぞれポンプ500を介して細胞培養モジュール400Aに接続される。洗浄液タンク600および細胞剥離酵素タンク700もどちらも細胞培養モジュール400Aに接続され、例えばポンプ500を介して細胞培養モジュール400に接続する。コントローラ800は、ポンプ500、培養液センサ314、およびポンプ320を介して、それぞれセルタンク200、洗浄液タンク600、細胞剥離酵素タンク700、細胞培養モジュール400A、および培養液モジュール300に接続し、ポンプ500、ポンプ320、レギュレータ330と培養液センサ314を制御するのに用いられる。
【0059】
細胞培養を行う際には、まず培養する細胞を折り曲げ状態のシート状担体部材14に付着させる。詳細には、先に細胞培養モジュール400Aのシート状担体部材14を折り曲げ状態とし、システムの各管線を設定することができる。細胞培養モジュール400Aのシート状担体部材14を折り曲げ状態にする方法は、第2固定部材130を第1固定部材120に近い位置に移動させる方法であるが、どのような方法によって行うかは限定されるものではなく、前述の実施形態のとおり、重力、磁力、或いはその他の機械的力などにより第2固定部材130を変位させることができるが、ここでは再度説明はしない。次に、ポンプ500を用いてセルタンク200内で培養する細胞を細胞培養モジュール400Aに送り、折り曲げ状態のシート状担体部材14に培養する細胞を付着させる。他の実施形態では、細胞培養モジュール400Aのシート状担体部材14が展開状態にあるとき、システムの各管線が先に設定され、次いで展開状態のシート状担体部材14に該細胞を付着させ、それから細胞培養モジュール400Aのシート状担体部材14が折り曲げ状態に収縮されて、その後の細胞培養ステップが行われるが、前述で列記するものに限られない。
【0060】
細胞を付着させた後、培養液を細胞培養モジュール400A中で循環潅流し、細胞培養を開始する。その後、培養液を排出するとともに洗浄液を注ぎ、残留した培養液を浸漬洗浄により除去する。
【0061】
続いて、細胞剥離酵素を注いでシート状担体部材14と細胞を浸し、シート状担体部材14を展開状態とすると、細胞がシート状担体部材14から剥離し、細胞培養モジュール400Aの懸濁液に懸濁する。詳細には、実施形態の一つでは、先に細胞剥離酵素が注入され、次いでシート状担体部材14が折り曲げ状態から展開されて二次元構造の展開状態へと変換されてもよい。他の実施形態では、先にシート状担体部材14を折り曲げ状態から展開して二次元構造の展開状態に変換し、それから細胞剥離酵素を注入することも可能であるが、列挙されたものに限定されない。
【0062】
最後に、細胞を含む懸濁液を回収する。詳細な操作ステップは、前述の細胞培養システム1000のものと同じであり、ここでは説明されない。
【0063】
このように、本実施の形態における細胞培養モジュールと細胞培養システムでは、第2固定部材が移動可能であるため、シート状担体部材の両端の第1固定部材と第2固定部材との間の距離が変化すると、シート状担体部材が展開状態と折り曲げ状態の間で変換できる。折り曲げ状態のシート状担体部材は細胞培養の産量を増加させるのを助け、展開状態のシート状担体部材は細胞回収率および回収された細胞の品質を向上させることができる。
【0064】
本発明において、細胞培養担体はねじれのない/ねじれた状態を呈すること、及びシート状担体部材は展開/折り曲げの状態を呈することに言及しているが、実質的には複数の細胞培養担体が作り出す細胞成長領域が二次元の面形状態/三次元の立体空間で変化する状況を意味し、細胞培養担体の異なる配置方法に応じて描写したものであり、これらに限定されない。
【0065】
以上のように、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【符号の説明】
【0066】
100A〜100N:細胞培養モジュール
110、110A、110B、110C:外側スリーブ
110A1、111A:弾性波形構造
111:ケーシング
112:本体
113:テーパー部
114:カバー
116:シール部
120:第1固定部材
130、130A、130B、130C、130D、130K、130L:第2固定部材
130D1:ノブ
14:シート状担体部材
140:細胞培養担体
142:第1接続部
144:第2接続部
146:第3接続部
150:スポイラー
160A、160B、160K:磁気制御部材
170:留め具
180:ロッド
182:ガイド孔
190:流体圧力制御部
C10:チャンバ
D:移動方向
T12、T14、T16、T18、T21、T23:出入口
1000、2000:細胞培養システム
200:セルタンク
300:培養液モジュール
310:培養液タンク
312:撹拌棒
314:培養液センサ
320、500:ポンプ
330、900:レギュレータ
400、400A:細胞培養モジュール
600:洗浄液タンク
700:細胞剥離酵素タンク
800:コントローラ
S110〜S170:ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【外国語明細書】
2019141034000001.pdf