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特開2019-141844三元触媒、及びそれの排気システムでの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-141844(P2019-141844A)
(43)【公開日】2019年8月29日
(54)【発明の名称】三元触媒、及びそれの排気システムでの使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20190802BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190802BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20190802BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   B01J29/74 AZAB
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/24 C
   F01N3/24 E
   F01N3/24 B
   F01N3/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-59928(P2019-59928)
(22)【出願日】2019年3月27日
(62)【分割の表示】特願2016-527201(P2016-527201)の分割
【原出願日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】61/897,543
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン, シャオ−ラン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ハイ−イン
(72)【発明者】
【氏名】ク, クワンモ
(72)【発明者】
【氏名】リーク, ジェフリー スコット
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091AB05
3G091AB06
3G091AB13
3G091BA03
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3G091GB17X
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4G169ZA19B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF09A
4G169ZF09B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内燃機関からの排気ガスの浄化のための三元触媒であって、特にコールドスタート期間に、炭化水素の貯蔵及び変換能が向上した三元触媒、及び該三元触媒を含む内燃機関のための排気システムの提供。
【解決手段】銀−含有の押出成形されたゼオライト基材、及び銀−含有の押出成形されたゼオライト基材に配置された触媒層を含む三元触媒であって、前記触媒層は、1以上の白金族金属及び1以上の無機酸化物キャリアを含む担持された白金族金属触媒を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)銀−含有の押出成形されたゼオライト基材;及び(2)銀−含有の押出成形されたゼオライト基材に配置された触媒層を含み、触媒層が1以上の白金族金属及び1以上の無機酸化物キャリアを含む担持された白金族金属触媒を含む、三元触媒。
【請求項2】
ゼオライトが、ベータゼオライト、フォージャサイト、L−ゼオライト、ZSMゼオライト、SSZ−ゼオライト、AEIフレームワークゼオライト、モルデナイト、チャバサイト、オフレタイト、エリオナイト、クリノプチロライト、シリカライト、アルミニウムホスフェートのゼオライト、メソ孔ゼオライト、金属導入されたゼオライト及びそれらの混合物、からなる群から選択される、請求項1に記載の三元触媒。
【請求項3】
ゼオライトが、ベータゼオライト、ZSM−5、SSZ−33、Y−ゼオライト及びそれらの混合物、からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の三元触媒。
【請求項4】
1以上の白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム及びそれらの混合物、からなる群から選択される、請求項1から3の何れか一項に記載の三元触媒。
【請求項5】
1以上の白金族金属がパラジウム及びロジウムである、請求項1から4の何れか一項に記載の三元触媒。
【請求項6】
1以上の無機酸化物キャリアが、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、及び混合酸化物又はそれらの複合酸化物、からなる群から選択される請求項1から5の何れか一項に記載の三元触媒。
【請求項7】
押出成形されたゼオライト基材がフロー−スルー基材である、請求項1から6の何れか一項に記載の三元触媒。
【請求項8】
銀−含有の押出成形されたゼオライト基材が、1から700g/ftまでの銀を含む、請求項1から7の何れか一項に記載の三元触媒。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載の、三元触媒を含む、内燃機関のための排気システム。
【請求項10】
選択的触媒還元触媒システム;微粒子フィルター;選択的触媒還元フィルターシステム;NO吸着触媒;又はそれらの組合せを更に含む、請求項9に記載の排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三元触媒、及び内燃機関のための排気システム内でのそれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物(“NO”)を含む種々の汚染物質を含有する排気ガスを生じる。排気ガス触媒を含む排出制御システムは、大気に排出されるそれらの汚染物質の量を低減するように広く利用される。ガソリン機関のアプリケーションのための一般的に使用される触媒は、“三元触媒”(TWC)である。TWCsは、3つの主な機能:(1)COの酸化;(2)未燃炭化水素の酸化;及び(3)NへのNOの還元、を実行する。
【0003】
TWCsは、他の排気ガス触媒のように、一旦それらがそれらの作動温度(典型的には、200℃以上)に達すると、典型的には非常に高い効率を達成する。しかしながら、それらのシステムは、それらの作動温度未満(“コールドスタート”期間)で相対的に非効率である。国家及び地域のより一層厳重な法規がディーゼル又はガソリン機関から排出されうる汚染物質の量を低下させるので、コールドスタート期間の間に排出物を低減することは、主たる挑戦になる。このように、コールドスタート条件の間に排出されるNO及び炭化水素の水準を低減するための方法は、探究され続ける。
【0004】
コールドスタート炭化水素制御のために、炭化水素捕捉成分としてのゼオライトを含む炭化水素(HC)トラップが、調査された。これらのシステムにおいて、ゼオライト成分は、スタートアップ期間の間に、炭化水素を吸着し貯蔵し、かつ排気温度が炭化水素を放出するのに十分高いとき貯蔵された炭化水素を放出する。放出された炭化水素は、HCトラップ内に導入されたTWC成分かHCトラップの下流に配置された別のTWCのどちらかにより、続いて変換される。
【0005】
例えば、米国特許第5,772,972は、炭化水素捕捉材料、及びパラジウムベースの三元触媒材料、のハイブリッドシステムを開示する。米国特許第6,617,276は、炭化水素−吸着ゼオライト、及びゼオライトに含浸されたK、Rb又はCsの活性金属、から本質的になる第1の層、少なくとも1の白金族金属から本質的になる少なくとも1の追加の層、並びに第1の層及び1以上の追加の層に配置された触媒基材、を含む触媒構造体を教示する。EP1129774では、炭化水素吸着部材は、100以上のSiO:Alモル比及び1μm以下の平均一次粒子直径を有するゼオライトを含むこと、並びにそれが一価の金属元素に束縛されないこと、が教示される。米国特許第6,074,973は、高い表面積の金属酸化物担体上に分散されたパラジウム及び銀、並びに1以上の、ZSM−5、ベータ、Y及び他の適当なゼオライト、のようなゼオライト材料を含む、触媒化された炭化水素トラップ材料、を教示する。
【0006】
米国出願公開第2012/0117953A1は、10−100重量%の少なくとも1のバインダー/マトリクス成分、5−90重量%のゼオライト性モレキュラーシーブ、非ゼオライト性モレキュラーシーブ又はそれらの何れか2以上の混合物、及び0−80重量%の任意の安定化セリアを含む押出成形されたソリッド体、を含む三元触媒を教示する。触媒は、少なくとも1の貴金属及び任意で少なくとも1の非貴金属を含み、ここで:(i)少なくとも1の貴金属は押出成形ソリッド体の表面上の1以上のコーティング層に導入され;(ii)少なくとも1の金属は押出成形ソリッド体の至る所に存在し、かつ少なくとも1の貴金属は押出成形されたソリッド体の表面上の1以上のコーティング層にも導入され;又は(iii)少なくとも1の金属は押出成形されたソリッド体の至る所に存在し、少なくとも1の金属は押出成形されたソリッド体の表面でより高い濃度で存在し、かつ少なくとも1の貴金属は押出成形されたソリッド体の表面上の1以上のコーティング層にも導入される。加えて、米国出願公開第2012/0308439A1は、(1)卑金属、貴金属及びゼオライトを含むゼオライト触媒、並びに(2)1以上の白金族金属及び1以上の無機酸化物キャリアを含む担持された白金族金属触媒、を含むコールドスタート触媒を教示する。
【0007】
任意の自動車のシステム及び方法と同様に、排気ガス処理システム、特にコールドスタート条件下、において一層更なる改善を達成することは、望まれている。我々は、内燃機関からの排気ガスの高められた洗浄、を提供する新たな三元触媒を発見した。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、排気システムでの使用のための三元触媒である。三元触媒は、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材を含む。三元触媒は、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材上に配置された触媒層、も含む。触媒層は、1以上の白金族金属及び1以上の無機酸化物キャリアを含む担持された白金族金属触媒を含む。本発明は、三元触媒を含む排気システムも含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の三元触媒は、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材を含む。
【0010】
銀−含有の押出成形されたゼオライト基材のゼオライトは、モレキュラーシーブを含む任意の自然的な又は人工的なゼオライトであってもよく、かつ好ましくは、アルミニウム、シリコン及び/又はリンで構成される。ゼオライトは、典型的には、酸素原子を共有することにより結合されるSiO、AlO及び/又はPOの三次元配置を有する。ゼオライトフレームワークは、典型的にはアニオン性であり、そしてそれは、電荷補償するカチオン、典型的にはアルカリ及びアルカリ土類元素(例えば、Na、K、Mg、Ca、Sr及びBa)、並びにまたプロトンにより相殺される。
【0011】
ゼオライトは、好ましくは、ベータゼオライト、フォージャサイト(NaY及びUSYを含む、X−ゼオライト又はY−ゼオライトのような)、L−ゼオライト、ZSMゼオライト(例えば、ZSM−5、ZSM−48)、SSZ−ゼオライト(例えば、SSZ−13、SSZ−41、SSZ−33)、AEIフレームワークゼオライト、モルデナイト、チャバサイト、オフレタイト、エリオナイト、クリノプチロライト、シリカライト、アルミニウムホスフェートゼオライト(SAPO−34のような金属アルミノホスフェートを含む)、メソ孔ゼオライト(例えば、MCM−41、MCM−49、SBA−15)又はそれらの混合物であり、より好ましくはゼオライトがベータゼオライト、ZSM−5ゼオライト、SSZ−33又はY−ゼオライトである。ゼオライトは、最も好ましくは、ベータゼオライト、ZSM−5ゼオライト又はSSZ−33である。
【0012】
押出成形されたゼオライト基材は、任意の既知手段により形成されてもよい。典型的には、ゼオライトは、フロー‐スルー又はフィルター基材を形成するように押出成形され、及び好ましくは、ハニカムフロー‐スルーモノリスを形成するように押出成形される。押出成形されたゼオライト基材及びハニカム体、並びにそれらを作製するための方法は、当該技術分野で知られる。例えば、米国特許第5,492,883、5,565,394及び5,633,217並びに米国特許第Re.34,804を参照されたい。典型的には、ゼオライト材料は、シリコン樹脂のような永久的なバインダー、及びメチルセルロースのような一時的なバインダーと混合され、混合物はグリーンハニカム体を形成するように押出成形され、そしてそれはその後、最終の押出成形されたゼオライト基材を形成するようにか焼及び焼結される。
【0013】
押出成形されたゼオライト基材は、フロー‐スルー又はフィルター基材として形成されてもよい。もしフロー−スルー基材として形成されたら、それは、好ましくは、基材の軸方向に広がり、基材の入口から出口の至る所に延びる多くの小さな平行薄壁チャネルを有するハニカム構造を有するフロー‐スルーモノリスである。基材のチャネル断面は、任意の形であってもよいが、好ましくは、四角形、シヌソイド、三角形、長方形、六角形、台形、丸又は楕円である。
【0014】
もしフィルター基材として形成されるならば、銀‐含有の押出成形されたゼオライト基材は、好ましくは、ウォール−フローモノリスフィルターである。ウォール−フローフィルターのチャネルは互い違いに塞がれ、そしてそれは、排気ガス流が、入口からチャネルに入ること、その後、チャネル壁を通り流れること、そして出口へ導く異なるチャネルからフィルターを出ること、を可能にする。排気ガス流中の微粒子は、このようにフィルター中で捕捉される。
【0015】
ゼオライトは、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材が、押出成形手順により生じさせられるように、押出成形の前に銀を含有してもよい。もしゼオライトが押出成形の前に銀を含有するならば、銀は、銀−含有ゼオライトを形成するように、任意の既知手段によりゼオライトに加えられてもよく、添加の方法が特に重要だとは考えられていない。例えば、銀化合物(硝酸銀のような)は、含浸、吸着、イオン‐交換、インシピエントウエットネス又は沈殿等により、ゼオライトに加えられてもよい。
【0016】
もし押出成形されたゼオライト基材が銀無しで第一に形成されるならば、その後、押出成形されたゼオライトモノリスは、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材を生じるように銀を充填される。好ましくは、押出成形されたゼオライトモノリスは、ゼオライトモノリスの上に銀を充填するように、含浸法にかけられる。
【0017】
好ましくは、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材は、1から700g/ftまでの銀、より好ましくは、10から200g/ftまでの銀を含む。
【0018】
三元触媒は、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材上に配置された触媒層、も含む。触媒層は、担持された白金族金属触媒を含む。担持された白金族金属触媒は、1以上の白金族金属(“PGM”)及び1以上の無機酸化物キャリアを含む。PGMは、白金、パラジウム、ロジウム又はそれらの組合せであってもよく、及び最も好ましくは、パラジウム及びロジウムである。無機酸化物キャリアは、最も一般的には、第2、第3、第4、第5、第13及び第14族元素の酸化物を含む。有用な無機酸化物キャリアは、好ましくは、10から700m/gの範囲の表面積、0.1から4mL/gの範囲の孔体積及び約10から1000オングストロームの孔直径、を有する。無機酸化物キャリアは、好ましくは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物又は混合酸化物又はそれらの何れか2以上の複合酸化物、例えば、シリカ−アルミナ、セリア−ジルコニア又はアルミナ−セリア−ジルコニア、である。アルミナ及びセリア−ジルコニアは、特に好まれる。
【0019】
担持された白金族金属触媒は、任意の既知手段により調製されてもよい。好ましくは、1以上の白金族金属は、担持されたPGM触媒を形成するように、任意の既知手段により、1以上の無機酸化物に充填され、添加の方法が特に重要だとは考えられていない。例えば、パラジウム化合物(硝酸パラジウムのような)は、含浸、吸着、イオン‐交換、インシピエントウエットネス又は沈殿等により無機酸化物上に担持され得る。他の金属も、担持されたPGM触媒に添加されてよい。
【0020】
担持されたPGM触媒層は、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材上に配置される。担持されたPGM触媒層は、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材上に、当該技術分野でよく知られた方法により配置されてもよい。好ましくは、担持された白金族金属触媒は、本発明の三元触媒を生じさせるように、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材の上へ、ウォッシュコート法を使用してコーティングされる。
【0021】
ウォッシュコート法を使用して三元触媒を調製するための代表的な方法は、以下で明らかにされる。本発明の異なる実施態様によれば、以下の方法が変形されうることは、理解されるであろう。
【0022】
ウォッシュコート法は、好ましくは、適切な溶媒、好ましくは水、の中で、スラリーを形成するように、担持された白金族金属触媒の細かく分けられた粒子を第一にスラリー化することにより実行される。遷移金属酸化物、バインダー、安定剤又はプロモーター、のような追加の成分も、水溶化合物又は水−分散性化合物の混合物としてスラリー中に導入されてよい。スラリーは、好ましくは10から70重量%の間、より好ましくは30から50重量%の間、の固体を含有する。スラリーを形成する前に、担持された白金族触媒粒子は、好ましくは、固体粒子の平均粒径が直径20ミクロン未満であるようなサイズ低減処理(例えば、ミリング)にかけられる。
【0023】
銀−含有の押出成形されたゼオライト基材は、その後、1回以上スラリー中に浸されてもよく、又は銀−含有の押出成形されたゼオライト基材上に望ましい充填量の触媒材料が沈着されるように、スラリーが基材上にコーティングされてもよい。あるいは、第一に、無機酸化物−コーティングされた基材を形成し、乾燥及びか焼の工程が続くように、無機酸化物のみを含有するスラリーが、ゼオライト触媒−コーティングされた基材上に沈着されてもよい。白金族金属は、その後、白金族金属化合物(硝酸白金のような)の含浸、吸着、又はイオン−交換、を含む任意の既知手段により、無機酸化物−コーティングされた基材に加えられてもよい。
【0024】
好ましくは、銀−含有の押出成形されたゼオライト基材の全長は、担持された白金族触媒のウォッシュコートが基材の表面全体を覆うように、スラリーでコーティングされる。
【0025】
銀−含有の押出成形されたゼオライト基材が、担持された白金族触媒スラリーでコーティングされた後、コーティングされた基材は、好ましくは、乾燥され、その後、三元触媒が形成されるように昇温された温度で熱することによりか焼される。好ましくは、か焼は、約1から8時間、400から600℃で起きる。
【0026】
本発明は、三元触媒を含む、内燃機関のための排気システムも含む。排気システムは、好ましくは、内燃機関の排気ガスから汚染物質を除去しうる1以上の追加の後処理装置を含む。
【0027】
好ましくは、排気システムは、近接−連結された触媒及び本発明の三元触媒を含む。近接−連結された触媒は、三元触媒の上流に位置する。好ましくは、微粒子フィルターがこのシステムにも加えられてもよい。微粒子フィルターは、近接−連結された触媒の下流及び三元触媒の上流に位置してもよく、又は微粒子フィルターは三元触媒の下流に位置してもよい。
【0028】
近接−連結された触媒は、当該技術分野でよく知られる。三元触媒で測定された温度が約150から220℃までの範囲の温度未満であろう時、近接−連結された触媒は、典型的には、機関の始動に続くコールドスタート期間の間に炭化水素排出物を低減するように、利用される。近接−連結された触媒は、機関が温まった後、機関から直ちに出る高温排気ガスにさらされるように、典型的には、排気マニホールド及びフードの下に隣接した、機関の区画内、に位置する。
【0029】
近接−連結された触媒は、好ましくは、Pt、Pd及びRhから選択される少なくとも1の貴金属を含有する熱抵抗性無機酸化物の触媒層でコーティングされた基材構造体を含む。熱抵抗性基材が、典型的にはモノリス基材であり、好ましくはセラミック基材又は金属基材である。セラミック基材は、熱抵抗性で耐火性の任意の適当な材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化シリコン、炭化シリコン、ジルコニウムケイ酸塩、マグネシウムケイ酸塩、アルミニウムケイ酸塩及び金属アルミニウムケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメンのような)、又は混合物もしくはそれらの何れか2以上の混合酸化物、でできていてもよい。金属基材は、任意の適当な金属、特に熱抵抗性金属、並びに他の微量金属(典型的には、希土類金属)に加えて、鉄、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムを含有するフェライト系合金並びにチタンとステンレス鋼のような金属合金、でできていてもよい。
【0030】
基材は、好ましくはフロー−スルー基材であるが、フィルター基材でもあってよい。フロー−スルー基材は、好ましくは、基材の軸方向に広がり、基材の至る所に拡張する多くの小さな並行平行薄壁チャネル、を有するハニカム構造を有する。もし基材がフィルター基材であるならば、それは好ましくはウォール−フローモノリスフィルターである。ウォール−フローフィルターのチャネルは互い違いに塞がれ、そしてそれは、排気ガス流が、入口からチャネルに入ること、その後、チャネル壁を通り流れること、そして出口に導く異なるチャネルから出ること、を可能にする。排気ガス気流中の微粒子は、このようにフィルター中で捕捉される。
【0031】
近接−連結された触媒の触媒層は、典型的には、1以上の無機酸化物及び1以上の白金族金属を好ましくは含むウォッシュコートとして、基材に加えられる。無機酸化物は、最も一般的には、第2、第3、第4、第5、第13及び第14族元素の酸化物を含む。有用な無機酸化物は、好ましくは、10から700m/gの範囲の表面積、0.1から4mL/gの範囲の孔体積、及び約10から1000オングストロームの孔直径、を有する。無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、希土類酸化物(特にセリア又はネオジウム酸化物)、又は混合酸化物又はそれらの何れか2以上の複合酸化物、例えば、シリカ−アルミナ、セリア−ジルコニア又はアルミナ−セリア−ジルコニアであり、かつゼオライトでもありうる。PGMは1以上の白金、パラジウム及びロジウムを含む。近接−連結された触媒は、他の金属又は金属酸化物を、同様に含有してもよい。
【0032】
他の有用な実施態様において、排気システムも、好ましくは、一般的な酸化触媒成分及び本発明の三元触媒を含む。この形状において、好ましくは、コールドスタート期間(三元触媒で測定されるとして約150から220℃までの範囲の温度未満)の間に、排気ガスが一般的な酸化触媒成分へ流れる前に三元触媒と接触するように管理されるような、バルブ又は他のガス−管理法を排気システムは含有するであろう。後処理装置が一旦作動温度(三元触媒で測定されるとして、約150から220℃)に達すると、排気ガス流は、その後、三元触媒に接触する前に一般的な酸化触媒成分と接触するように、再管理される。微粒子フィルターも、このバイパスシステムに加えられてよい。その教示が参照によりここに援用される米国特許第5,656,244は、例えば、コールドスタート及び通常作動の条件の間に排気ガス流を制御するための手段、を教示する。
【0033】
一般的な酸化触媒成分は、好ましくは、TWC層でコーティングされた基材を含む一般的なTWC触媒である。基材は、典型的にはモノリス基材であり、好ましくはセラミック基材又は金属基材であり、かつ好ましくはフロー‐スルー基材であるが、フィルター基材であってもよい。TWC触媒層は、好ましくは、上述したように、1以上の白金族金属(“PGM”)及び1以上の無機酸化物キャリアを含む担持された白金族金属触媒、を含む。
【0034】
以下の例は、単に本発明を説明する。当業者は、本発明の精神及び特許請求の範囲、の中で多くの変形例を認めるであろう。
【0035】
実施例1:本発明の触媒の調製
触媒1A:押出成形されたベータゼオライト上のAg+Pd−Rh層
【0036】
ベータゼオライトモノリス(ハニカムモノリスへとベータゼオライトを押出成形することにより形成され、55%のベータゼオライトを含有する;例えば、米国特許第5,492,883、5,565,394及び5,633,217参照)は、硝酸銀水性溶液で含浸され、その後乾燥、及び150g/ftのAg充填量を達成するように、500℃で4時間熱することによりか焼される。
【0037】
Ag/ベータゼオライトモノリスは、その後、Pd及びRhのための担体としての、アルミナ及びセリア−ジルコニア混合酸化物、からなる典型的なTWC層でコーティングされる。Pd充填量は、76.5g/ftであり、Rh充填量は8.5g/ftである。担持されコーティングされた基材は、乾燥され、その後、500℃で4時間熱することによりか焼される。
【0038】
実施例2:比較触媒調製
比較触媒2A:押出成形されたベータゼオライト+Pd−Rh層
【0039】
比較触媒2Aは、押出成形されたベータゼオライトが銀で含浸されないという例外を伴い、触媒1Aと同様の手順により調製される。
【0040】
比較触媒2B:コーディエライト基材+Pd−Rh層
【0041】
比較触媒2Bは、コーディエライト基材モノリスがAg/ベータゼオライトモノリスの代わりに使用されるという例外を伴い、触媒1Aと同様の手順により調製される。
【0042】
実施例3:実験室試験の手順及び結果
触媒の全ては、フロー−スルー触媒−コーティングされた基材のコアサンプル(2.54cmx8.4cm)上で、試験される。真新しい触媒及び古い触媒は、双方とも試験される。触媒コアは、フロースルー条件下で、炉中で、水熱条件下(5%のHO、残部空気)で、800℃で80時間、エージングされる。コアは、その後、個々の排気ガス成分のマス流を調節することにより調製された供給ガス流を用いて、実験室の反応器中での炭化水素吸着について試験される。ガス流レートは、結果として30,000h−1(GHSV=30,000h−1)のガス時間単位空間速度となる21.2Lmin−1で維持される。
【0043】
触媒は、室温まで冷却する前に、2250ppmのO、10%のCO、10%のHO及び残部窒素のガス流中で、650℃で前処理される。前処理の後に、触媒は、触媒が、1500ppm(Cベース)のHC(17体積%のトルエン、24体積%のイソペンタン及び59体積%のプロペン)、1000ppmのNO、1000ppmのCO、2250ppmのO、10%のHO、10%のCO及び残部窒素からなるHC−含有ガスと30秒間接触させられる、HC吸着工程を受ける。HC吸着工程は、その後、触媒が、200ppm(Cベース)のHC、300ppmのO、10%のHO、10%のCO及び残部窒素からなる放出ガスにかけられる、HC放出期間が続く。
【0044】
吸着期間及び酸化期間の間のHC排出物並びに除去された総HCについての真新しい触媒及び古い触媒に関する結果は、表1に示される。
【0045】
実施例4:機関試験の手順
実施例1A並びに比較例2A及び2Bの、実物大の触媒は、2.4Lのガソリン車両で評価される。試験のそれぞれにおいて、市販のPd−RhTWC触媒は、実施例の触媒の上流の、近接−連結された位置に配置される。CCC TWC触媒は、前部区域に405g/ftのPd及び15g/ftのRh、並びに後部区域に105g/ftのPd及び15g/ftのRh、を含有する。システムのそれぞれは、800℃でピークに達する実施例の触媒床温を用いて150時間エージングされる。FTP75試験プロトコル下での、システムの排気管総HC(THC)排出物は、表2に示される。触媒1Aは、2つの比較例と比較して更なる4mg/mileのTHCを除去する。
【0046】
結果を表2に示す。

表1:NO貯蔵容量の結果
*比較例

表2:総炭化水素(THC)排出を示す、機関試験の結果
*比較例
【手続補正書】
【提出日】2019年4月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】
2019141844000001.pdf