【課題】産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりしたときの、産業用ロボットの再教示作業を不要とすることが可能になる産業用ロボットの補正値算出方法を提供する。
【解決手段】この産業用ロボットの補正値算出方法では、座標特定工程において、カメラ36、37によって、検知用治具35の角部35aの座標と、検知用治具35の角部35bの座標とを特定している。また、補正値算出工程において、座標特定工程で特定された角部35a、35bの座標に基づいて、本体部に対して第1アーム部を回動させる第1モータを制御するための第1エンコーダの補正値と、第1アーム部に対して第2アーム部を回動させる第2モータを制御するための第2エンコーダの補正値と、第2アーム部に対してハンド基部を回動させる第3モータを制御するための第3エンコーダの補正値とを算出している。
前記第1カメラと前記第2カメラとは、前記受渡し位置に配置される前記ハンドフォークの長手方向および前記ハンドフォークの長手方向に直交する方向にずれた状態で配置されていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
前記第1カメラの視野内に配置され前記第1カメラに撮影される第1基準マークと、前記第2カメラの視野内に配置され前記第2カメラに撮影される第2基準マークとが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
前記第1カメラと前記第2カメラと前記第1基準マークと前記第2基準マークとは、前記受渡し位置に配置された前記ハンドフォークに搭載される前記搬送対象物の位置確認にも使用されることを特徴とする請求項3記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
前記産業用ロボットは、前記搬送対象物に対して所定の処理を行うための複数の処理部を有する処理システムに組み込まれて使用されるとともに、前記処理システムの一部を構成する前記搬送対象物の供給部と前記処理システムの一部を構成する前記搬送対象物の排出部と複数の前記処理部との間で前記搬送対象物を搬送し、
前記第1カメラおよび前記第2カメラは、前記供給部または前記排出部の内部に設置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
前記産業用ロボットは、前記本体部に対する前記第1アーム部の回動方向における前記第1アーム部の原点位置を検知するための第1原点センサと、前記第1アーム部に対する前記第2アーム部の回動方向における前記第2アーム部の原点位置を検知するための第2原点センサと、前記第2アーム部に対する前記ハンド基部の回動方向における前記ハンド基部の原点位置を検知するための第3原点センサとを備え、
前記ロボット動作工程では、前記第1原点センサの検知結果に基づいてまたは前記第1原点センサの検知結果と前記第1エンコーダの検知結果とに基づいて前記第1モータを駆動制御し、前記第2原点センサの検知結果に基づいてまたは前記第2原点センサの検知結果と前記第2エンコーダの検知結果とに基づいて前記第2モータを駆動制御するとともに、前記第3原点センサの検知結果に基づいてまたは前記第3原点センサの検知結果と前記第3エンコーダの検知結果とに基づいて前記第3モータを駆動制御して、前記産業用ロボットを前記基準姿勢にすることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の産業用ロボットの補正置算出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の産業用ロボットが有機ELディスプレイ等の製造システムに設置されると、産業用ロボットの動作プログラムを作成するために、一般に、産業用ロボットの教示作業が行われている。また、たとえば、製造システムに設置される産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりすると、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対して、交換後の産業用ロボットのロボット座標系がずれる。
【0006】
そのため、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりした場合にも、一般に、産業用ロボットの教示作業が再度行われている。しかしながら、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりした場合に、産業用ロボットの教示作業が再度行われると、産業用ロボットの交換等のために停止している製造システムが再稼働するまでに時間がかかる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりしたときの、産業用ロボットの再教示作業を不要とすることが可能になる産業用ロボットの補正値算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットの補正値算出方法は、産業用ロボットの動作を補正するための補正値を算出する産業用ロボットの補正値算出方法であって、産業用ロボットは、本体部と、本体部に基端側が回動可能に連結される第1アーム部と第1アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第2アーム部とを有するアームと、第2アーム部の先端側に回動可能に連結されるハンド基部とハンド基部から水平方向の一方向に伸びるとともに搬送対象物が搭載されるハンドフォークとを有するハンドと、本体部に対して第1アーム部を回動させるための第1モータと、第1アーム部に対して第2アーム部を回動させるための第2モータと、第2アーム部に対してハンド基部を回動させるための第3モータと、第1モータの回転量を検知するための第1エンコーダと、第2モータの回転量を検知するための第2エンコーダと、第3モータの回転量を検知するための第3エンコーダとを備え、産業用ロボットの補正値算出方法は、ハンドフォークに検知用治具を搭載する治具搭載工程と、産業用ロボットを動作させて所定の基準姿勢にするロボット動作工程と、治具搭載工程およびロボット動作工程後に、産業用ロボットを動作させて搬送対象物の受渡し位置にハンドフォークを移動させるハンド移動工程と、ハンド移動工程後に、受渡し位置に配置されるハンドフォークの長手方向およびハンドフォークの長手方向に直交する方向の少なくともいずれか一方にずれた状態で配置される第1カメラおよび第2カメラによって、検知用治具に形成されるとともに第1カメラの視野内に配置される第1角部の座標と、検知用治具に形成されるとともに第2カメラの視野内に配置される第2角部の座標とを特定する座標特定工程と、座標特定工程で特定された第1角部の座標と第2角部の座標とに基づいて、第1モータを制御するための第1エンコーダの補正値、第2モータを制御するための第2エンコーダの補正値および第3モータを制御するための第3エンコーダの補正値を算出する補正値算出工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の産業用ロボットの補正値算出方法では、ハンド移動工程において、所定の基準姿勢となっている産業用ロボットを動作させて搬送対象物の受渡し位置にハンドフォークを移動させ、ハンド移動工程後の座標特定工程において、受渡し位置に配置されるハンドフォークの長手方向およびハンドフォークの長手方向に直交する方向の少なくともいずれか一方にずれた状態で配置される第1カメラおよび第2カメラによって、第1カメラの視野内に配置される検知用治具の第1角部の座標と、第2カメラの視野内に配置される検知用治具の第2角部の座標とを特定している。また、本発明では、補正値算出工程において、座標特定工程で特定された第1角部の座標と第2角部の座標とに基づいて、本体部に対して第1アーム部を回動させる第1モータを制御するための第1エンコーダの補正値と、第1アーム部に対して第2アーム部を回動させる第2モータを制御するための第2エンコーダの補正値と、第2アーム部に対してハンド基部を回動させる第3モータを制御するための第3エンコーダの補正値とを算出している。
【0010】
そのため、本発明では、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりする前の交換前の産業用ロボットのハンドフォークが搬送対象物の受渡し位置に移動したときの、交換前の産業用ロボットのハンドフォークに搭載された検知用治具の第1角部の座標と第2角部の座標とが予め記憶されていて、補正値算出工程において、交換前の産業用ロボットのハンドフォークに搭載された検知用治具の第1角部の座標および第2角部の座標と、座標特定工程で特定された第1角部の座標および第2角部の座標とに基づいて補正値を算出することで、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりしても、補正値算出工程で算出された補正値に基づいて、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれを補正することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれを補正することで、産業用ロボットの再教示作業を不要とすることが可能になる。すなわち、本発明では、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりしたときの、産業用ロボットの再教示作業を不要とすることが可能になる。
【0012】
本発明において、第1カメラと第2カメラとは、受渡し位置に配置されるハンドフォークの長手方向およびハンドフォークの長手方向に直交する方向にずれた状態で配置されていることが好ましい。このように構成すると、第1カメラと第2カメラとがハンドフォークの長手方向にのみずれている場合や、ハンドフォークの長手方向に直交する方向にのみずれている場合と比較して、座標特定工程で特定された第1角部の座標と第2角部の座標とに基づいて、補正値算出工程において、補正値を精度良く算出することが可能になる。
【0013】
本発明において、第1カメラの視野内に配置され第1カメラに撮影される第1基準マークと、第2カメラの視野内に配置され第2カメラに撮影される第2基準マークとが設けられていることが好ましい。このように構成すると、たとえば、第1カメラや第2カメラが交換されたときや、何らかの原因で第1カメラや第2カメラの位置がずれたときに、第1カメラや第2カメラの位置調整を行わなくても、第1基準マークを基準にして第1角部の座標を精度良く特定することが可能になるとともに、第2基準マークを基準にして第2角部の座標を精度良く特定することが可能になる。
【0014】
本発明において、第1カメラと第2カメラと第1基準マークと第2基準マークとは、受渡し位置に配置されたハンドフォークに搭載される搬送対象物の位置確認にも使用されることが好ましい。このように構成すると、受渡し位置に配置されたハンドフォークに搭載される搬送対象物の位置確認を行うためのカメラや基準マークを別途設ける必要がなくなる。
【0015】
本発明において、産業用ロボットは、搬送対象物に対して所定の処理を行うための複数の処理部を有する処理システムに組み込まれて使用されるとともに、処理システムの一部を構成する搬送対象物の供給部と処理システムの一部を構成する搬送対象物の排出部と複数の処理部との間で搬送対象物を搬送し、第1カメラおよび第2カメラは、供給部または排出部の内部に設置されていることが好ましい。一般に、搬送対象物に対して所定の処理を行うための処理部の内部には、比較的多くの機器が設置されるのに対して、供給部および排出部の内部に設置される機器は多くない。そのため、このように構成すると、処理部の内部に第1カメラおよび第2カメラが設置されている場合と比較して、第1カメラおよび第2カメラを設置しやすくなる。
【0016】
本発明において、第1カメラおよび第2カメラは、供給部の内部に設置されていることが好ましい。このように構成すると、供給部において特定された第1角部の座標と第2角部の座標とに基づいて補正値が算出されるとともに、算出された補正値に基づいて、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれが補正される。したがって、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりしても、処理システムに供給される搬送対象物を供給部においてハンドフォークに精度良く搭載することが可能になる。その結果、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりした後であっても、処理部に対して搬送対象物を精度良く搬送することが可能になる。
【0017】
また、上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットの補正値算出方法は、産業用ロボットの動作を補正するための補正値を算出する産業用ロボットの補正値算出方法であって、産業用ロボットは、本体部と、本体部に基端側が回動可能に連結される第1アーム部と第1アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第2アーム部とを有するアームと、第2アーム部の先端側に回動可能に連結されるハンド基部とハンド基部から水平方向の一方向に伸びるとともに搬送対象物が搭載されるハンドフォークとを有するハンドと、本体部に対して第1アーム部を回動させるための第1モータと、第1アーム部に対して第2アーム部を回動させるための第2モータと、第2アーム部に対してハンド基部を回動させるための第3モータと、第1モータの回転量を検知するための第1エンコーダと、第2モータの回転量を検知するための第2エンコーダと、第3モータの回転量を検知するための第3エンコーダとを備え、産業用ロボットの補正値算出方法は、ハンドフォークに検知用治具を搭載する治具搭載工程と、産業用ロボットを動作させて所定の基準姿勢にするロボット動作工程と、治具搭載工程およびロボット動作工程後に、産業用ロボットを動作させて搬送対象物の受渡し位置にハンドフォークを移動させるハンド移動工程と、ハンド移動工程後に、受渡し位置に配置されるハンドフォークの長手方向およびハンドフォークの長手方向に直交する方向の少なくともいずれか一方に互いにずれた状態で配置される3個のセンサのそれぞれによって検知用治具のエッジが検知されるまで産業用ロボットを動作させるとともに、3個のセンサのそれぞれによって検知用治具のエッジが検知されたときの産業用ロボットの座標を特定する座標特定工程と、座標特定工程で特定された産業用ロボットの座標に基づいて、第1モータを制御するための第1エンコーダの補正値、第2モータを制御するための第2エンコーダの補正値および第3モータを制御するための第3エンコーダの補正値を算出する補正値算出工程とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の産業用ロボットの補正値算出方法では、ハンド移動工程において、所定の基準姿勢となっている産業用ロボットを動作させて搬送対象物の受渡し位置にハンドフォークを移動させ、ハンド移動工程後の座標特定工程において、受渡し位置に配置されるハンドフォークの長手方向およびハンドフォークの長手方向に直交する方向の少なくともいずれか一方に互いにずれた状態で配置される3個のセンサのそれぞれによって検知用治具のエッジが検知されるまで産業用ロボットを動作させるとともに、3個のセンサのそれぞれによって検知用治具のエッジが検知されたときの産業用ロボットの座標を特定している。また、本発明では、補正値算出工程において、座標特定工程で特定された産業用ロボットの座標に基づいて、本体部に対して第1アーム部を回動させる第1モータを制御するための第1エンコーダの補正値と、第1アーム部に対して第2アーム部を回動させる第2モータを制御するための第2エンコーダの補正値と、第2アーム部に対してハンド基部を回動させる第3モータを制御するための第3エンコーダの補正値とを算出している。
【0019】
そのため、本発明では、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりする前の交換前の産業用ロボットのハンドフォークに搭載された検知用治具のエッジが3個のセンサのそれぞれによって検知されるときの産業用ロボットの座標が予め記憶されていて、補正値算出工程において、交換前の産業用ロボットのハンドフォークに搭載された検知用治具のエッジが3個のセンサのそれぞれによって検知されるときの産業用ロボットの座標と、座標特定工程で特定された産業用ロボットの座標とに基づいて補正値を算出することで、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりしても、補正値算出工程で算出された補正値に基づいて、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれを補正することが可能になる。
【0020】
また、本発明では、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれを補正することで、産業用ロボットの再教示作業を不要とすることが可能になる。すなわち、本発明では、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりしたときの、産業用ロボットの再教示作業を不要とすることが可能になる。
【0021】
本発明において、たとえば、産業用ロボットは、本体部に対する第1アーム部の回動方向における第1アーム部の原点位置を検知するための第1原点センサと、第1アーム部に対する第2アーム部の回動方向における第2アーム部の原点位置を検知するための第2原点センサと、第2アーム部に対するハンド基部の回動方向におけるハンド基部の原点位置を検知するための第3原点センサとを備え、ロボット動作工程では、第1原点センサの検知結果に基づいてまたは第1原点センサの検知結果と第1エンコーダの検知結果とに基づいて第1モータを駆動制御し、第2原点センサの検知結果に基づいてまたは第2原点センサの検知結果と第2エンコーダの検知結果とに基づいて第2モータを駆動制御するとともに、第3原点センサの検知結果に基づいてまたは第3原点センサの検知結果と第3エンコーダの検知結果とに基づいて第3モータを駆動制御して、産業用ロボットを基準姿勢にする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の産業用ロボットの補正値算出方法によって補正値を算出すれば、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりしたときの、産業用ロボットの再教示作業を不要とすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
(産業用ロボットの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの補正値算出方法によって補正値が算出される産業用ロボット1の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図2は、
図1に示す産業用ロボット1が有機ELディスプレイの製造システム3に組み込まれた状態を示す平面図である。
図3は、
図1に示す産業用ロボット1の構成を説明するためのブロック図である。
【0026】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である有機ELディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するためのロボットである。基板2は、長方形の平板状に形成されている。このロボット1は、
図2に示すように、有機ELディスプレイの製造システム3に組み込まれて使用される水平多関節ロボットである。製造システム3は、中心に配置されるトランスファーチャンバー4(以下、「チャンバー4」とする。)と、チャンバー4を囲むように配置される複数のチャンバー5〜7とを備えている。
【0027】
チャンバー5は、基板2に対して所定の処理を行うためのプロセスチャンバーである。また、チャンバー6は、製造システム3に供給される基板2が収容される供給用のチャンバー(ローダ)であり、チャンバー7は、製造システム3から排出される基板2が収容される排出用のチャンバー(アンローダ)である。チャンバー4〜7の内部は、真空になっている。チャンバー4の内部には、ロボット1の一部が配置されている。ロボット1を構成する後述のハンドフォーク18、19がチャンバー5〜7の中に入り込むことで、ロボット1は、複数のチャンバー5〜7の間で基板2を搬送する。
【0028】
本形態のチャンバー5は、基板2に対して所定の処理を行うための処理部である。また、本形態の製造システム3は、複数の処理部を備える処理システムである。また、本形態のチャンバー6は、処理システムである製造システム3の一部を構成する基板2の供給部であり、チャンバー7は、処理システムである製造システム3の一部を構成する基板2の排出部である。
【0029】
図1に示すように、ロボット1は、基板2が搭載されるハンド8と、ハンド8が先端側に回動可能に連結されるアーム9と、アーム9の基端側が回動可能に連結される本体部10とを備えている。ハンド8およびアーム9は、本体部10の上側に配置されている。本体部10は、アーム9を昇降させる昇降機構と、昇降機構が収容されるケース体13とを備えている。ケース体13は、略有底円筒状に形成されている。ケース体13の上端には、円板状に形成されたフランジ14が固定されている。
【0030】
上述のように、ロボット1の一部は、チャンバー4の内部に配置されている。具体的には、ロボット1の、フランジ14の下端面よりも上側の部分がチャンバー4の内部に配置されている。すなわち、ロボット1の、フランジ14の下端面よりも上側の部分は、真空領域VRの中に配置されており、ハンド8およびアーム9は、真空チャンバー内(真空中)に配置されている。一方、ロボット1の、フランジ14の下端面よりも下側の部分は、大気領域ARの中(大気中)に配置されている。
【0031】
アーム9は、互いに回動可能に連結される第1アーム部15と第2アーム部16とを備えている。本形態のアーム9は、第1アーム部15と第2アーム部16との2個のアーム部によって構成されている。第1アーム部15の基端側は、本体部10に回動可能に連結されている。第1アーム部15の先端側には、第2アーム部16の基端側が回動可能に連結されている。第2アーム部16の先端側には、ハンド8が回動可能に連結されている。
【0032】
第2アーム部16は、第1アーム部15よりも上側に配置されている。また、ハンド8は、第2アーム部16よりも上側に配置されている。本体部10に対する第1アーム部15の回動中心と第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動中心との距離は、第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動中心と第2アーム部16に対するハンド8の回動中心との距離と等しくなっている。
【0033】
ハンド8は、第2アーム部16の先端側に回動可能に連結されるハンド基部17と、基板2が搭載されるハンドフォーク18、19とを備えている。本形態のハンド8は、2本のハンドフォーク18と、2本のハンドフォーク19とを備えている。ハンドフォーク18、19は、直線状に形成されている。ハンドフォーク18とハンドフォーク19とは同形状に形成されている。2本のハンドフォーク18は、互いに所定の間隔をあけた状態で平行に配置されている。ハンドフォーク18は、ハンド基部17から水平方向の一方向へ伸びている。2本のハンドフォーク19は、互いに所定の間隔をあけた状態で平行に配置されている。ハンドフォーク19は、ハンド基部17からハンドフォーク18と逆方向に伸びている。
【0034】
ハンドフォーク18、19は、ハンド基部17に固定されている。具体的には、ハンドフォーク18、19は、固定用のネジによってハンド基部17に固定されている。ハンドフォーク18、19には、固定用のネジが挿通される挿通穴が形成されている。この挿通穴は、ハンドフォーク18、19の長手方向に直交する方向を長手方向とする長穴であり、ハンドフォーク18、19の長手方向に直交する方向において、ハンド基部17に対するハンドフォーク18、19の固定位置を調整することが可能となっている。
【0035】
本形態では、1枚の基板2が2本のハンドフォーク18に搭載される。また、1枚の基板2が2本のハンドフォーク19に搭載される。ハンドフォーク18の上面には、搭載される基板2を位置決めするための位置決め部材が取り付けられている。ハンドフォーク19の上面にも、搭載される基板2を位置決めするための位置決め部材が取り付けられている。
【0036】
また、ロボット1は、本体部10に対して第1アーム部15を回動させるためのモータ21と、第1アーム部15に対して第2アーム部16を回動させるためのモータ22と、第2アーム部16に対してハンド基部17を回動させるためのモータ23と、モータ21の回転量を検知するためのエンコーダ24と、モータ22の回転量を検知するためのエンコーダ25と、モータ23の回転量を検知するためのエンコーダ26とを備えている(
図3参照)。
【0037】
エンコーダ24は、モータ21に取り付けられている。エンコーダ25は、モータ22に取り付けられ、エンコーダ26は、モータ23に取り付けられている。モータ21およびエンコーダ24は、たとえば、本体部10の内部に配置されている。また、モータ22、23およびエンコーダ25、26は、たとえば、第1アーム部15の内部に配置されている。モータ21〜23は、ロボット1の制御部27に電気的に接続されている。エンコーダ24〜26も、制御部27に電気的に接続されている。本形態のモータ21は第1モータであり、モータ22は第2モータであり、モータ23は第3モータである。また、エンコーダ24は第1エンコーダであり、エンコーダ25は第2エンコーダであり、エンコーダ26は第3エンコーダである。
【0038】
さらに、ロボット1は、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向における第1アーム部15の原点位置を検知するための原点センサ31と、第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動方向における第2アーム部16の原点位置を検知するための原点センサ32と、第2アーム部16に対するハンド基部17の回動方向におけるハンド基部17の原点位置を検知するための原点センサ33とを備えている。本形態の原点センサ31は第1原点センサであり、原点センサ32は第2原点センサであり、原点センサ33は第3原点センサである。
【0039】
原点センサ31〜33は、たとえば、近接センサである。あるいは、原点センサ31〜33は、たとえば、発光素子と受光素子とを有する光学式のセンサである。原点センサ31〜33は、制御部27に電気的に接続されている。本体部10と第1アーム部15との連結部である関節部において、原点センサ31は、本体部10および第1アーム部15のいずれか一方に固定され、本体部10および第1アーム15のいずれか他方には、第1アーム部15が原点位置にあるときに原点センサ31に検知される検知部材が固定されている。
【0040】
同様に、第1アーム部15と第2アーム部16との連結部である関節部において、原点センサ32は、第1アーム部15および第2アーム部16のいずれか一方に固定され、第1アーム部15および第2アーム16のいずれか他方には、第2アーム部16が原点位置にあるときに原点センサ32に検知される検知部材が固定されている。また、第2アーム部16とハンド基部17との連結部である関節部において、原点センサ33は、第2アーム部16およびハンド基部17のいずれか一方に固定され、第2アーム部16およびハンド基部17のいずれか他方には、ハンド基部17が原点位置にあるときに原点センサ33に検知される検知部材が固定されている。
【0041】
本形態では、第2アーム部16が原点位置にあるときには、上下方向から見たときに第1アーム部15の長手方向と第2アーム部16の長手方向とが一致するように、第1アーム部15と第2アーム部16とが上下方向で重なっている。また、ハンド基部17が原点位置にあるときには、上下方向から見たときに第2アーム部16の長手方向とハンドフォーク18、19の長手方向とが直交している。
【0042】
(産業用ロボットの補正値の算出方法)
図4は、
図2に示すチャンバー6の内部の構成を説明するための拡大図である。
【0043】
ロボット1が製造システム3に設置されると、ロボット1の動作プログラムを作成するために、ロボット1の教示作業が行われる。また、たとえば、製造システム3に設置されるロボット1が交換されたり、ロボット1のモータ21〜23が交換されたりすると、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対して交換後のロボット1のロボット座標系がずれるため、ロボット1の教示作業を再度行う必要が生じる。
【0044】
一方で、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正すれば、煩雑な教示作業を再度行う必要がなくなる。本形態では、ロボット1を交換したり、モータ21〜23を交換したりした後に煩雑な教示作業を再度行わなくても良いように、製造システム3に設置されるロボット1が交換されたり、モータ21〜23が交換されたりすると、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正するための補正値を算出する。すなわち、交換後のロボット1の動作を補正するための補正値を算出する。以下、この補正値の算出方法を説明する。
【0045】
ロボット1の動作を補正するための補正値を算出するときには、ハンドフォーク18に検知用治具35が搭載される。検知用治具35は、長方形の平板状に形成されている。本形態の検知用治具35は、基板2と同形状に形成されている。検知用治具35は、ハンドフォーク18の上面に取り付けられた位置決め部材によって位置決めされた状態で、2本のハンドフォーク18に搭載される。すなわち、検知用治具35は、ハンドフォーク18の、基板2が搭載される箇所と同じ箇所に、基板2と同じ向きで搭載される。なお、検知用治具35は、ハンドフォーク19に搭載されても良い。
【0046】
また、ロボット1の動作を補正するための補正値を算出するときには、2個のカメラ36、37が使用される。カメラ36、37は、チャンバー6の内部に設置されている。また、カメラ36、37は、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置(
図2においてハンドフォーク18が配置されている位置)に配置されるハンドフォーク18、19の長手方向およびハンドフォーク18、19の長手方向に直交する方向にずれた状態で配置されている。カメラ36、37は、受渡し位置に配置されるハンドフォーク18、19の上方に設置されている。
【0047】
長方形の平板状に形成される検知用治具35の一方の対角線上に配置される2個の角部のそれぞれを角部35a、35b(
図4参照)とすると、カメラ36は、受渡し位置に配置されたハンドフォーク18に搭載される検知用治具35の角部35aがカメラ36の視野内に配置されるように設置され、カメラ37は、受渡し位置に配置されたハンドフォーク18に搭載される検知用治具35の角部35bがカメラ37の視野内に配置されるように設置されている。
【0048】
すなわち、検知用治具35には、受渡し位置にハンドフォーク18が配置されているときに、カメラ36の視野内に配置される角部35aと、カメラ37の視野内に配置される角部35bとを含む4個の角部が形成されている。本形態のカメラ36は、第1カメラであり、カメラ37は、第2カメラである。また、本形態の角部35aは、第1角部であり、角部35bは、第2角部である。
【0049】
また、チャンバー6の内部には、2個の基準マーク38、39(
図4参照)が設けられている。基準マーク38、39は、たとえば、図示を省略する基準マーク形成部材に形成された貫通穴である。基準マーク形成部材は、受渡し位置に配置されるハンドフォーク18、19の下方に設置されており、基準マーク38、39は、ハンドフォーク18、19の下方に配置されている。基準マーク38は、カメラ36の視野内に配置されており、カメラ36に撮影される。基準マーク39は、カメラ37の視野内に配置されており、カメラ37に撮影される。
【0050】
上下方向から見たときに、基準マーク38は、受渡し位置に配置されたハンドフォーク18に搭載される検知用治具35の角部35aとずれた位置に配置されている。また、上下方向から見たときに、基準マーク39は、受渡し位置に配置されたハンドフォーク18に搭載される検知用治具35の角部35bとずれた位置に配置されている。本形態の基準マーク38は、第1基準マークであり、基準マーク39は、第2基準マークである。
【0051】
たとえば、製造システム3に設置されるロボット1が交換されると、2本のハンドフォーク18に検知用治具35を搭載する(治具搭載工程)。検知用治具35は、ハンドフォーク18の上面に取り付けられた位置決め部材によって位置決めされた状態で、2本のハンドフォーク18に搭載される。また、ロボット1を動作させてロボット1を所定の基準姿勢にする(ロボット動作工程)。
【0052】
ロボット動作工程では、原点センサ31の検知結果に基づいてまたは原点センサ31の検知結果とエンコーダ24の検知結果とに基づいてモータ21を駆動制御し、原点センサ32の検知結果に基づいてまたは原点センサ32の検知結果とエンコーダ25の検知結果とに基づいてモータ22を駆動制御するとともに、原点センサ33の検知結果に基づいてまたは原点センサ33の検知結果とエンコーダ26の検知結果とに基づいてモータ23を駆動制御して、ロボット1を基準姿勢にする。具体的には、ロボット動作工程において、モータ21〜23を駆動制御して、ロボット1を仮の動作開始位置まで動作させる。
【0053】
その後(すなわち、治具搭載工程およびロボット動作工程後に)、ロボット1を動作させて基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させる(ハンド移動工程)。具体的には、アーム9を伸ばして、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置(
図4の実線で示す位置)にハンドフォーク18を移動させる。
【0054】
その後、カメラ36、37によって、検知用治具35の角部35a、35bの座標を特定する(座標特定工程)。すなわち、カメラ36によって検知用治具35の角部35aの座標を特定し、カメラ37によって検知用治具35の角部35bの座標を特定する。本形態では、基準マーク38の座標を基準にして角部35aの座標が特定されている。また、基準マーク39の座標を基準にして角部35bの座標が特定されている。
【0055】
なお、本形態では、ハンドフォーク18に検知用治具35が搭載された交換前のロボット1を動作させてチャンバー6の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させたとき(
図4の二点鎖線参照)の、検知用治具35の角部35aの座標と角部35bの座標とが予め特定されて記憶されている。交換前のロボット1において角部35a、35bの座標を特定するときにも、基準マーク38の座標を基準にして角部35aの座標が特定され、基準マーク39の座標を基準にして角部35bの座標が特定されている。
【0056】
その後、座標特定工程で特定された角部35aの座標と角部35bの座標とに基づいて、モータ21を制御するためのエンコーダ24の補正値、モータ22を制御するためのエンコーダ25の補正値およびモータ23を制御するためのエンコーダ26の補正値を算出する(補正値算出工程)。
【0057】
具体的には、補正値算出工程では、まず、座標特定工程で特定された角部35aの座標と角部35bの座標とに基づいて特定される角部35aと角部35bとを結ぶ線分の中点の座標と、交換前のロボット1において予め特定されて記憶された角部35aの座標と角部35bの座標とに基づいて特定される角部35aと角部35bとを結ぶ線分の中点の座標とのずれに基づいて、交換前のロボット1の座標系と交換後のロボット1の座標系との水平方向(XY方向)のずれを求める。
【0058】
また、座標特定工程で特定された角部35aの座標と角部35bの座標とに基づいて特定される角部35aと角部35bとを結ぶ直線と、交換前のロボット1において予め特定されて記憶された角部35aの座標と角部35bの座標とに基づいて特定される角部35aと角部35bとを結ぶ直線とがなす角度に基づいて、交換前のロボット1の座標系と交換後のロボット1の座標系との、鉛直方向を回動の軸方向とする回動方向(θ方向)のずれを求める。
【0059】
また、補正値算出工程では、交換前のロボット1の座標系と交換後のロボット1の座標系とのXY方向およびθ方向のずれ(XYθ方向のずれ)に基づく所定の演算を行って、エンコーダ24〜26の補正値を算出する。その後、補正値算出工程で算出された補正値を反映させてモータ21〜23を駆動制御して、ロボット1を正規の動作開始位置に戻す。
【0060】
なお、本形態では、ロボット1の動作開始位置とロボット1のホームポジションとが一致しているが、ロボット1の動作開始位置とロボット1のホームポジションとがずれていても良い。また、本形態では、ロボット1が動作開始位置まで動作して所定の基準姿勢となっているときには、第1アーム部15、第2アーム部16およびハンド基部17は、原点位置にある。また、本形態では、カメラ36、37および基準マーク38、39は、チャンバー6の受渡し位置に配置されたハンドフォーク18、19に搭載される基板2の位置確認にも使用されている。
【0061】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ハンド移動工程後の座標特定工程において、カメラ36、37によって、検知用治具35の角部35a、35bの座標を特定している。また、本形態では、補正値算出工程において、座標特定工程で特定された角部35a、35bの座標と、交換前のロボット1において予め特定されて記憶された角部35a、35bの座標とに基づいて、交換前のロボット1の座標系と交換後のロボット1の座標系とのXYθ方向のずれ求めるとともに、求めたXYθ方向のずれに基づく所定の演算を行って、エンコーダ24〜26の補正値を算出している。
【0062】
そのため、本形態では、ロボット1が交換されたり、ロボット1のモータ21〜23が交換されたりしても、補正値算出工程で算出された補正値に基づいて、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正することが可能になる。また、本形態では、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正することで、ロボット1が交換されたり、モータ21〜23が交換されたりしても、ロボット1の再教示作業を不要とすることができる。
【0063】
本形態では、カメラ36とカメラ37とが、受渡し位置に配置されるハンドフォーク18の長手方向およびハンドフォーク18の長手方向に直交する方向にずれた状態で配置されている。そのため、本形態では、カメラ36とカメラ37とがハンドフォーク18の長手方向にのみずれている場合や、ハンドフォーク18の長手方向に直交する方向にのみずれている場合と比較して、座標特定工程で特定された角部35a、35bの座標に基づいて、交換前のロボット1の座標系と交換後のロボット1の座標系とのX方向、Y方向およびθ方向の全てのずれを精度良く求めることが可能になる。したがって、本形態では、補正値算出工程において補正値を精度良く算出することが可能になる。
【0064】
本形態では、チャンバー6の内部に基準マーク38、39が設けられており、基準マーク38の座標を基準にして角部35aの座標が特定され、基準マーク39の座標を基準にして角部35bの座標が特定されている。そのため、本形態では、たとえば、カメラ36、37が交換されたときや、何らかの原因でカメラ36、37の位置がずれたときに、カメラ36、37の位置調整を行わなくても、基準マーク38を基準にして角部35aの座標を精度良く特定することが可能になるとともに、基準マーク39を基準にして角部35bの座標を精度良く特定することが可能になる。
【0065】
本形態では、カメラ36、37および基準マーク38、39は、チャンバー6の受渡し位置に配置されたハンドフォーク18、19に搭載される基板2の位置確認にも使用されている。そのため、本形態では、チャンバー6の受渡し位置に配置されたハンドフォーク18、19に搭載される基板2の位置確認を行うためのカメラや基準マークをチャンバー6に別途設ける必要がない。したがって、本形態では、チャンバー6の構成を簡素化することが可能になる。
【0066】
本形態では、カメラ36、37は、供給用のチャンバーであるチャンバー6の内部に設置されている。プロセスチャンバーであるチャンバー5の内部には、比較的多くの機器が設置されるのに対して、供給用のチャンバーであるチャンバー6の内部に設置される機器は多くない。そのため、本形態では、チャンバー5の内部にカメラ36、37が設置されている場合と比較して、カメラ36、37を設置しやすくなる。
【0067】
また、本形態では、カメラ36、37がチャンバー6の内部に設置されており、チャンバー6において特定された角部35a、35bの座標に基づいて補正値が算出されるとともに、算出された補正値に基づいて、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれが補正されている。そのため、本形態では、ロボット1が交換されたり、モータ21〜23が交換されたりしても、製造システム3に供給される基板2をチャンバー6においてハンドフォーク18、19に精度良く搭載することが可能になる。したがって、本形態では、ロボット1が交換されたり、モータ21〜23が交換されたりした後であっても、チャンバー5に対して基板2を精度良く搬送することが可能になる。
【0068】
(補正値算出方法の変形例)
図5は、本発明の他の実施の形態にかかるロボット1の補正値算出方法を説明するための図である。
【0069】
上述した形態において、カメラ36、37に代えて、チャンバー6の内部に3個のセンサ41〜43が配置されていても良い。センサ41〜43は、たとえば、近接センサまたは光学式センサである。センサ41〜43は、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置に配置されるハンドフォーク18、19の長手方向およびハンドフォーク18、19の長手方向に直交する方向の少なくともいずれか一方に互いにずれた状態で配置されている。たとえば、センサ41〜43は、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置に配置されるハンドフォーク18、19の長手方向およびハンドフォーク18、19の長手方向に直交する方向に互いにずれた状態で配置されている。なお、この場合には、基準マーク38、39は不要になる。
【0070】
センサ41は、長方形の平板状に形成される検知用治具35の短手方向の一方のエッジ(端面)を検知可能な位置に配置され、センサ42は、検知用治具35の短手方向の他方のエッジ(端面)を検知可能な位置に配置されている。また、センサ41は、検知用治具35の長手方向の一端側(ハンドフォーク18、19の基端側)に配置され、センサ42は、検知用治具35の長手方向の他端側(ハンドフォーク18、19の先端側)に配置されている。センサ43は、検知用治具35の長手方向のエッジ(端面)であって、ハンドフォーク18、19の先端側に配置される検知用治具35のエッジを検知可能な位置に配置されている。
【0071】
この変形例では、ハンド移動工程後の座標特定工程において、3個のセンサ41〜43のそれぞれによって検知用治具35のエッジが検知されるまでロボット1を動作させるとともに、3個のセンサ41〜43のそれぞれによって検知用治具35のエッジが検知されたときのロボット1の座標を特定する。
【0072】
たとえば、ハンド移動工程において、
図5(A)に示す位置にハンドフォーク18が移動すると、座標特定工程において、
図5(B)に示すように、センサ41によって検知用治具35のエッジが検知されるまでロボット1を動作させるとともに、センサ41によって検知用治具35のエッジが検知されたときのロボット1の座標を特定する。また、座標特定工程において、
図5(C)に示すように、センサ42によって検知用治具35のエッジが検知されるまでロボット1を動作させるとともに、センサ42によって検知用治具35のエッジが検知されたときのロボット1の座標を特定し、
図5(D)に示すように、センサ43によって検知用治具35のエッジが検知されるまでロボット1を動作させるとともに、センサ43によって検知用治具35のエッジが検知されたときのロボット1の座標を特定する。
【0073】
また、その後の補正値算出工程において、座標特定工程で特定されたロボット1の座標に基づいて、エンコーダ24〜25の補正値を算出する。この変形例では、交換前のロボット1のハンドフォーク18に搭載された検知用治具35のエッジが3個のセンサ41〜43のそれぞれによって検知されるときのロボット1の座標が予め特定されて記憶されている。補正値算出工程では、座標特定工程で特定されたロボット1の座標と、交換前のロボット1において予め特定されて記憶されたロボット1の座標とに基づいて、交換前のロボット1の座標系と交換後のロボット1の座標系とのXYθ方向のずれを求める。また、補正値算出工程では、交換前のロボット1の座標系と交換後のロボット1の座標系とのXYθ方向のずれに基づく所定の演算を行って、エンコーダ24〜26の補正値を算出する。
【0074】
この変形例では、補正値算出工程において、座標特定工程で特定されたロボット1の座標と、交換前のロボット1において予め特定されて記憶されたロボット1の座標とに基づいて、交換前のロボット1の座標系と交換後のロボット1の座標系とのXYθ方向のずれを求めるとともに、求めたXYθ方向のずれに基づく所定の演算を行って、エンコーダ24〜26の補正値を算出している。
【0075】
そのため、この変形例でも、上述した形態と同様に、ロボット1が交換されたり、ロボット1のモータ21〜23が交換されたりしても、補正値算出工程で算出された補正値に基づいて、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正することが可能になる。また、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正することで、ロボット1が交換されたり、モータ21〜23が交換されたりしても、ロボット1の再教示作業を不要とすることができる。また、この変形例では、カメラ36、37に比べて安価なセンサ41〜43を使用しているため、低コストで補正値を算出することが可能になる。
【0076】
なお、センサ41〜43は、ロボット1の補正値の算出が終わってチャンバー6の中で実際に基板2の受渡しを行うときに、ハンドフォーク18、19および基板2等と、センサ41〜43とが干渉しないように、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置と上下方向でずれた位置に配置されている。
【0077】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0078】
上述した形態において、カメラ36、37は、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置に配置されるハンドフォーク18、19の長手方向にのみずれた状態で配置されていても良い。この場合には、
図4に示すように、検知用治具35の、角部35a、35bを除いた2個の角部のそれぞれを角部35c、35dとすると、カメラ36は、角部35aがカメラ36の視野内に配置されるように設置され、カメラ37は、角部35cがカメラ37の視野内に配置されるように設置されている。あるいは、カメラ36は、角部35dがカメラ36の視野内に配置されるように設置され、カメラ37は、角部35bがカメラ37の視野内に配置されるように設置されている。
【0079】
また、カメラ36、37は、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置に配置されるハンドフォーク18、19の長手方向に直交する方向にのみずれた状態で配置されていても良い。この場合には、カメラ36は、角部35aがカメラ36の視野内に配置されるように設置され、カメラ37は、角部35dがカメラ37の視野内に配置されるように設置されている。あるいは、カメラ36は、角部35cがカメラ36の視野内に配置されるように設置され、カメラ37は、角部35bがカメラ37の視野内に配置されるように設置されている。
【0080】
上述した形態において、カメラ36、37は、チャンバー7の内部に設置されていても良い。この場合であっても、排出用のチャンバーであるチャンバー7の内部に設置される機器は多くないため、チャンバー5の内部にカメラ36、37が設置されている場合と比較して、カメラ36、37を設置しやすくなる。
【0081】
また、上述した形態において、カメラ36、37は、チャンバー5の内部に配置されていても良い。ただし、この場合には、カメラ36、37が配置しにくくなる。また、チャンバー5の中で基板2に対して所定の処理を行う際の温度環境等の安定性を考慮して、一般に、チャンバー5の中の基板2の受渡し位置は、チャンバー6、7の中の基板2の受渡し位置によりも奥になる。そのため、チャンバー6、7の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18、19が移動したときよりも、チャンバー5の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18、19が移動したときの方が、アーム9が伸びた状態となる。したがって、カメラ36、37は、チャンバー5の内部に配置されている場合には、補正値算出工程において、ハンドフォーク18、19の長手方向のずれを精度良く求めにくくなる。
【0082】
上述した形態において、ロボット1は、原点センサ31〜33を備えていなくも良い。この場合には、所定の治具を用いて、第1アーム部15、第2アーム部16およびハンド基部17を原点位置に合わせれば良い。また、この場合には、ロボット動作工程において、エンコーダ24〜26の検知結果に基づいてモータ21〜23を駆動制御して、ロボット1を基準姿勢にする。
【0083】
上述した形態において、基準マーク38、39は、貫通穴でなくても良い。たとえば、基準マーク38、39は、基準マーク形成部材に形成された突起であっても良い。また、上述した形態において、チャンバー6の内部に、基準マーク38、39が設けられていなくても良い。この場合には、たとえば、カメラ36、37の内部で記憶されている原点位置を基準にして角部35a、35bの座標が特定される。
【0084】
上述した形態において、検知用治具35は、長方形以外の平板状に形成されていても良い。また、上述した形態において、ハンド8は、ハンドフォーク19を備えていなくても良い。さらに、上述した形態では、ロボット1によって搬送される搬送対象物は有機ELディスプレイ用の基板2であるが、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、液晶ディスプレイ用のガラス基板であっても良いし、半導体ウエハ等であっても良い。すなわち、ロボット1は、有機ELディスプレイの製造システム3以外の製造システムに組み込まれても良いし、製造システム以外の所定の処理システムに組み込まれても良い。また、上述した形態において、ロボット1は、大気圧となっている空間の中に配置されていても良い。