【実施例】
【0068】
本発明は、本発明の様々な実施形態を限定することを意図ことなく提示される、以下の実施例によって例示される。
【0069】
以下の実施例において、ゼオライト結晶の物理的特性は、当業者に知られている方法によって評価され、その主なものは以下に想起される。
【0070】
ゼオライト結晶の強熱減量
強熱減量は、規格NF EN 196−2(2006年4月)に記載されているように、950℃±25℃の温度で空気中で試料を焼成することにより、酸化性雰囲気下で測定される。測定された標準偏差は0.1%未満である。
【0071】
Dubinin−Raduskevitch容量
Dubinin−Raduskevitch容量は、その液化温度における窒素の吸着等温線の測定値から決定される。吸着の前に、ゼオライト系吸着剤を真空下(P<6.7×10
−4Pa)で300℃から450℃の間で9時間から16時間の間脱気する。次いで、吸着等温線の測定は、マイクロメリティクス社のASAP2020タイプの機器で行い、0.002から1の間の比P/P0の相対圧力で少なくとも35個の測定点を取る。微小孔容積は、得られた等温線からDubinin−Raduskevitchに従って、規格ISO 15901−3(2007)を適用することによって決定される。Dubinin−Raduskevitch方程式に従って、評価された微小孔容量は、ゼオライト1グラム当たりの液体吸着物のcm
3で表される。測定の不確実性は±0.003cm
3.g
−1である。
【0072】
結晶サイズおよび形態(SEM)
ナノ結晶およびゼオライトナノ結晶凝集体の数平均直径の評価は、走査型電子顕微鏡を用いた観察によって先に示されたように行われる。
【0073】
試料についてゼオライトナノ結晶のサイズを評価するために、少なくとも5000の倍率で1セットの画像を撮る。次いで、少なくとも200個の結晶の直径を、専用ソフトウェア、例えば、LoGraMiによって公開されたSmile View ソフトウェアを使用して測定する。精度は3%程度である。
【0074】
ナノ結晶およびゼオライトナノ結晶凝集体の形態は、観察された固体のサイズに適した倍率で取られたSEM写真から認定される。
【0075】
透過型電子顕微鏡(TEM)によるメソ細孔構造の観察
粉末をエタノール中に1分間超音波処理して分散させる。その溶液の1滴を顕微鏡のスライドグリッド上に置く。試料を外気中で乾燥させる。観測は透過型電子顕微鏡(FEIからのCM200)を用いて120kVの電圧で行う。
【0076】
×175000という得られた倍率(
図3および
図4参照)は、結晶内メソ細孔が存在しないことを確認することを可能にする。
【0077】
本発明において、「結晶内メソ細孔」という用語は、結晶内部に位置し、透過型電子顕微鏡で観察される2nmを超える直径を有する空洞を意味する。「結晶間メソ細孔」という用語は、(結晶内メソ多孔性を有さない)充填した結晶の凝集から生じる2nmを超える直径を有する空洞を意味する。
【0078】
t−プロット法を介する外部表面積(m
2.g
−1におけるS ext)の測定
t−プロット計算方法は、窒素吸着等温線データQ ads=f(P/P0)を利用し、微小孔表面積を計算することを可能にする。外部表面積は、m
2.g
−1で表される全細孔表面積を測定するBET表面積(S BET=S microp.+S ext.)との差を決定することにより、そこから推測することができる。
【0079】
t−プロット法を介して微小孔表面積(S microp.)を計算するために、曲線Q ads(cm
3.g
−1)を、t=参考の非多孔質固体上に形成されるであろう部分圧力P/P0に依存する層の厚さの関数としてプロットする(log P/P0のt関数:適用されるHarkins−Jura方程式(ISO規格15901−3:2007)):
[13.99/(0.034−log(P/P0))
1/2]、
ここで、0.35nmから0.5nmの間の間隔tにおいて、微小孔表面積を計算することを可能にする吸着されたインターセプトポイントQを定義する直線をプロットすることができる。固体が微孔質でない場合、この直線は0を通過する。
【0080】
元素化学分析およびX線蛍光によるSi/Al原子比の分析
固体(ナノ結晶、ナノ結晶凝集体、アグロメレート)の元素化学分析は、当業者に既知の様々な分析技術に従って実施することができる。これらの技術の中で、波長分散分光計(WDXRF)、例えば、Bruker社のTiger S8機上で、規格NF EN ISO 12677:2011に記載されているようなX線蛍光による化学分析の技術を挙げることができる。
【0081】
X線蛍光は、試料の元素組成を確立するために、X線範囲の原子の光ルミネセンスを利用する非破壊スペクトル技術である。一般にX線ビームを用いたまたは電子衝撃による原子の励起は、原子の基底状態に戻った後に特定の放射線を発生させる。X線蛍光スペクトルは元素の化学的組み合わせにはほとんど依存しないという利点を有し、そのことは定量的および定性的の両方で正確な測定を提供する。慣習的に、各酸化物の較正の後、0.4重量%未満の測定不確実性が得られる。
【0082】
これらの元素化学分析により、ゼオライトのSi/Al原子比を検査することが可能になり、Si/Al原子比の測定不確実性は±5%である。
【0083】
X線回折による定性および定量分析
この分析により、分析された固体中に存在する結晶相を同定することが可能になる。何故ならば、ゼオライト構造の各々は、回折ピークの位置およびそれらの相対強度によって定義される独特なディフラクトグラムを有するからである。
【0084】
ゼオライトナノ結晶凝集体を、単純な機械的圧縮によって試料ホルダー上に広げ、水平にする。Bruker D5000機器でディフラクトグラムを取得する条件は次のとおりである。
・ 40kV−30mAで使用されるCuチューブ;
・ スリットサイズ(発散、散乱および分析)= 0.6mm;
・ フィルター:Ni;
・ 15rpmで回転する試料装置;
・ 測定範囲:3°<2Θ<50°;
・ インクリメント:0.02°;
・ インクリメント毎の計測時間:2秒。
【0085】
得られたディフラクトグラムの解釈は、完全な結晶相を明らかにすることを可能にする2011年公開のICDD PDF−2ベースを使用する、相の同定を伴うEVAソフトウェアを用いて行う。
【0086】
ゼオライトX画分の量は、X線回折分析によって測定する。この分析は、Brukerブランドの機器で行い、その後、Bruker社のTOPASソフトウェアを使用して、ゼオライトXの画分の量を評価する。
【0087】
[比較例1]:
制御剤なしで核形成ゲルおよび成長ゲルを用いた合成
【0088】
a)アルキメデススクリューで攪拌した反応器中での成長ゲルの調製
加熱ジャケット、温度プローブおよび撹拌機を備えた3リットルのステンレス鋼製反応器中で、水酸化ナトリウム(NaOH)119g、アルミナ三水和物(Al
2O
3を65.2重量%含有するAl
2O
3・3H
2O)128gおよび水195.5gを含有するアルミン酸塩溶液を25℃で25分間にわたって300rpmの撹拌速度で、25℃の珪酸ナトリウム565.3g、NaOH55.3gおよび水1997.5gを含有する珪酸塩溶液と共に混合することにより、成長ゲルを調製する。
【0089】
成長ゲルの化学量論は以下の通りである。即ち、3.48Na
2O/Al
2O
3/3.07SiO
2/180H
2O。成長ゲルの均質化は、25℃で25分間、300rpmで攪拌しながら実施する。
【0090】
b)核形成ゲルの添加
成長ゲルと同様にして調製し、40℃で1時間熟成した組成12Na
2O/Al
2O
3/10SiO
2/180H
2Oの核形成ゲル61.2g(即ち、2重量%)を、25℃で300rpmで攪拌しながら成長ゲルに添加する。300rpmで5分間均質化した後、攪拌速度を100rpmに下げ、30分間攪拌を続ける。
【0091】
c)結晶化
攪拌速度を50rpmに下げ、反応媒体の温度が80分かけて75℃まで上昇するように反応器ジャケットを80℃の公称値に設定する。75℃の段階で22時間後、ジャケットに冷水を循環させることによって反応媒体を冷却し、結晶化を停止させる。
【0092】
d)ろ過/洗浄
固体を焼結体上で回収し、次いで脱イオン水で中性pHになるまで洗浄する。
【0093】
e)乾燥/焼成
生成物を特徴付けるために、オーブン中で90℃で8時間乾燥を行い、乾燥生成物の強熱減量は23重量%である。
【0094】
非常に大きな凝集体の形態で1.24に等しいSi/Al原子比を有するゼオライトXを得る。
【0095】
[比較例2]:
核形成ゲルを添加せずに、成長ゲルを添加し、制御剤を添加するゼオライトXの合成:SIP/Al
2O
3比=0.02
【0096】
a)アルキメデススクリューで攪拌した反応器中での成長ゲルの調製
加熱ジャケット、温度プローブおよび撹拌機を備えた3リットルのステンレス鋼製反応器中で、水酸化ナトリウム(NaOH)119g、アルミナ三水和物(Al
2O
3を65.2重量%含有するAl
2O
3・3H
2O)128gおよび水195.5gを含有するアルミン酸塩溶液を25℃で25分間にわたって300rpmの撹拌速度で、25℃の珪酸ナトリウム565.3g、NaOH55.3gおよび水1997.5gを含有する珪酸塩溶液と共に混合することにより、成長ゲルを調製する。
【0097】
成長ゲルの化学量論は以下の通りである。即ち、3.48Na
2O/Al
2O
3/3.07SiO
2/180H
2O。成長ゲルの均質化は、25℃で25分間、300rpmで攪拌しながら実施する。
【0098】
b)反応媒体への制御剤の導入
SIPの溶液4.4gを、300rpmの撹拌速度で反応媒体中に導入する(SIP/Al
2O
3モル比=0.02)。次いで、結晶化を開始する前に、熟成工程を25℃で1時間、300rpmで行う。
【0099】
c)結晶化
攪拌速度を50rpmに下げ、反応媒体の温度が80分かけて75℃まで上昇するように反応器ジャケットを80℃の公称値に設定する。75℃の段階で22時間後、ジャケットに冷水を循環させることによって反応媒体を冷却し、結晶化を停止させる。
【0100】
d)ろ過/洗浄
固体を焼結体上で回収し、次いで脱イオン水で中性pHになるまで洗浄する。
【0101】
e)乾燥/焼成
生成物を特徴付けるために、オーブン中で90℃で8時間乾燥を行い、乾燥生成物の強熱減量は23重量%である。
【0102】
わずかに凝集した大きな結晶の形態で1.24に等しいSi/Al原子比を有するゼオライトXを得る。
【0103】
[実施例3(本発明)]:
核形成ゲルおよび成長ゲルならびに制御剤を添加するゼオライトXの合成:SIP/Al
2O
3比=0.04
【0104】
a)アルキメデススクリューで攪拌した反応器中での成長ゲルの調製
加熱ジャケット、温度プローブおよび撹拌機を備えた3リットルのステンレス鋼製反応器中で、水酸化ナトリウム(NaOH)119g、アルミナ三水和物(Al
2O
3を65.2重量%含有するAl
2O
3・3H
2O)128gおよび水195.5gを含有するアルミン酸塩溶液を25℃で25分間にわたって300rpmの撹拌速度で、25℃の珪酸ナトリウム565.3g、NaOH55.3gおよび水1997.5gを含有する珪酸塩溶液と共に混合することにより、成長ゲルを調製する。
【0105】
成長ゲルの化学量論は以下の通りである。即ち、3.48Na
2O/Al
2O
3/3.07SiO
2/180H
2O。成長ゲルの均質化は、25℃で25分間、300rpmで攪拌しながら実施する。
【0106】
b)核形成ゲルの添加
成長ゲルと同様にして調製し、40℃で1時間熟成した組成12Na
2O/Al
2O
3/10SiO
2/180H
2Oの核形成ゲル61.2g(即ち、2重量%)を、25℃で300rpmで攪拌しながら成長ゲルに添加する。300rpmで5分間均質化した後、攪拌速度を100rpmに下げ、30分間攪拌を続ける。
【0107】
c)反応媒体への制御剤の導入
SIPの溶液8.8gを、300rpmの撹拌速度で反応媒体中に導入する(SIP/Al
2O
3モル比=0.04)。次いで、結晶化を開始する前に、熟成工程を25℃で1時間、300rpmで行う。
【0108】
d)結晶化
攪拌速度を50rpmに下げ、反応媒体の温度が80分かけて75℃まで上昇するように反応器ジャケットを80℃の公称値に設定する。75℃の段階で22時間後、ジャケットに冷水を循環させることによって反応媒体を冷却し、結晶化を停止させる。
【0109】
e)ろ過/洗浄
固体を焼結体上で回収し、次いで脱イオン水で中性pHになるまで洗浄する。
【0110】
f)乾燥/焼成
生成物を特徴付けるために、オーブン中で90℃で8時間乾燥を行い、乾燥生成物の強熱減量は23重量%である。
【0111】
ゼオライトXナノ結晶凝集体を得、その凝集体のSi/Al原子比は1.24に等しい。
【0112】
[実施例3ビス(本発明)]:
核形成ゲルおよび成長ゲルならびに制御剤を添加するゼオライトXの合成:SIP/Al
2O
3比=0.12
【0113】
実施例3と同様の操作を行うが、0.12に等しいSIP/Al
2O
3のモル比を得るために8.8gの代わりに26.4gのSIPを添加する。
【0114】
ゼオライトXナノ結晶凝集体を得、その凝集体のSi/Al原子比は1.24に等しい。
【0115】
図3は、実施例3ビスにおいて得られた本発明によるゼオライトのTEM画像を示す。結晶内メソ細孔のない充填した結晶が観察される。
【0116】
[実施例4(本発明による、
図1)]:
核形成ゲルおよび成長ゲルならびに制御剤を添加するゼオライトXの合成:TPOAC/Al
2O
3比=0.01
【0117】
a)アルキメデススクリューで攪拌した反応器中での成長ゲルの調製
加熱ジャケット、温度プローブおよび撹拌機を備えた50リットルのステンレス鋼製反応器中で、水酸化ナトリウム(NaOH)1810g、アルミナ三水和物(Al
2O
3を65.2重量%含有するAl
2O
3・3H
2O)1930gおよび水3000gを含有するアルミン酸塩溶液を25℃で25分間にわたって140rpmの撹拌速度で、25℃の珪酸ナトリウム8470g、NaOH835gおよび水30100gを含有する珪酸塩溶液と共に混合することにより、成長ゲルを調製する。
【0118】
成長ゲルの化学量論は以下の通りである。即ち、3.48Na
2O/Al
2O
3/3.07SiO
2/180H
2O。成長ゲルの均質化は、25℃で25分間、140rpmで攪拌しながら実施する。
【0119】
b)核形成ゲルの添加
成長ゲルと同様にして調製し、40℃で1時間熟成した組成12Na
2O/Al
2O
3/10SiO
2/180H
2Oの核形成ゲル923g(即ち、2重量%)を、25℃で140rpmで攪拌しながら成長ゲルに添加する。140rpmで5分間均質化した後、攪拌速度を50rpmに下げ、30分間攪拌を続ける。
【0120】
c)反応媒体への制御剤の導入
60%のTPOACメタノール(MeOH)溶液102gを、140rpmの撹拌速度で反応媒体中に導入する(TPOAC/Al
2O
3モル比=0.01)。次いで、結晶化を開始する前に、熟成工程を25℃で1時間、140rpmで行う。
【0121】
d)結晶化
攪拌速度を35rpmに下げ、反応媒体の温度が80分かけて75℃まで上昇するように反応器ジャケットを80℃の公称値に設定する。75℃の段階で22時間後、ジャケットに冷水を循環させることによって反応媒体を冷却し、結晶化を停止させる。
【0122】
e)ろ過/洗浄
固体を焼結体上で回収し、次いで脱イオン水で中性pHになるまで洗浄する。
【0123】
f)乾燥/焼成
生成物を特徴付けるために、オーブン中で90℃で8時間乾燥を行い、乾燥生成物の強熱減量は23重量%である。
【0124】
ゼオライトXナノ結晶凝集体を得、その凝集体のSi/Al原子比は1.24に等しい。
【0125】
[比較例5]:
核形成ゲルおよび成長ゲルならびに制御剤を添加するゼオライトXの合成:TPOAC/Al
2O
3比=0.02
【0126】
実施例4と同様の操作を行うが、0.02というTPOAC/Al
2O
3のモル比を得るために、60%のTPOACメタノール溶液102gの代わりに204gを添加する。
【0127】
大きなサイズのゼオライトX結晶凝集体を得、そのSi/Al原子比は1.24に等しい。
【0128】
図4はこのようにして得られたゼオライトのTEM画像を示す。結晶内部のメソ多孔性空洞の存在が観察される。
【0129】
[実施例6:(本発明、
図2)]
微結晶および成長ゲルならびに制御剤を添加するゼオライトXの合成:TPOAC/Al
2O
3比=0.014
【0130】
実施例4と同様の手順を実施するが、工程b)において、核生成ゲルを1重量%の微結晶(成長ゲルの総重量に対して)、即ち、ゼオライトX結晶の無水物等価物(特許出願WO2014/0907771号の合成例b)に記載されたように調整された、約0.8μmの体積平均直径を有する種結晶)462gの導入と置き換え、工程c)において、反応媒体中に導入される制御剤の量は142.8gである。
【0131】
ゼオライトXナノ結晶凝集体を得、その凝集体のSi/Al原子比は1.24に等しい。
【0132】
上記の実施例、比較例で得られた固体に関するデータを以下の表1にまとめる。
【0133】
【表1】