(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-142805(P2019-142805A)
(43)【公開日】2019年8月29日
(54)【発明の名称】リノール酸を含有する組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20190802BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20190802BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20190802BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20190802BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/36
A61Q19/02
A61K8/14
A61K8/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-28282(P2018-28282)
(22)【出願日】2018年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保地 秀一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC621
4C083AC622
4C083AC712
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD212
4C083AD572
4C083AD661
4C083AD662
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD39
4C083DD45
4C083EE01
4C083EE03
4C083FF05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リノール酸を含有する組成物における香気の経時安定性をより高め、異臭を発生させないだけでなく、香料の香立ちの低減を抑制した組成物の提供。
【解決手段】(A)トラネキサム酸及び(B)リノール酸を含むリポソーム、を含有する組成物であり、リノール酸の含有量が組成物全量に対して0.01〜1.0質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分を含有する組成物。
(A)トラネキサム酸
(B)リノール酸を含むリポソーム
【請求項2】
リノール酸の含有量が組成物全量に対して0.01〜1.0質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、トコフェロールを含有する、請求項1または2の何れか1項に記載の組成物。
【請求項4】
トコフェロールが、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、δ―トコフェロール、酢酸dl―α―トコフェロール、dl―α―トコフェロール、及び酢酸―d―α―トコフェロールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
トコフェロールの過半量がδ―トコフェロールである、請求項1〜4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
トラネキサム酸を含む組成物に、全量若しくは一部量のトコフェロールを配合し、均一にした後にリノール酸を含有するリポソームを配合する、リノール酸を含有するリポソームを配合した組成物の香気の経時安定性を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リノール酸を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リノール酸は美白効果などを期待して、外用組成物(例えば化粧品、外用医薬品等)に配合されている。しかし、リノール酸は経時安定性が悪いことが知られており、リノール酸を配合した組成物が着色したり、異臭が発生したりする場合がある。これまでに検討されたリノール酸などの多価不飽和脂肪酸の経時安定性を向上させる技術としては、例えば、オイゲノール、イソオイゲノール、ビタミンKなどを配合する技術(特許文献1)、多価不飽和脂肪酸類をエステル化して配合する技術(特許文献2〜4)、高度不飽和脂肪酸含有脂質を含む内容物を窒素ガスが封入されたエアゾールとする技術(特許文献5)L−アスコルビン酸の2−O−アルキルエーテル誘導体をリノール酸等に対して配合する技術(特許文献6)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−72654号公報
【特許文献2】特開2007−126438号公報
【特許文献3】特開2007−269683号公報
【特許文献4】特開2007−269684号公報
【特許文献5】特開平8−81326号公報
【特許文献6】特開2005−120023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、リノール酸を含有する組成物には保存中に異臭が発生したり、香料の香立ちが抑制されたりするという香気面での課題点が存在することを鑑み、リノール酸を含有する組成物における香気の経時安定性をより高め、異臭を発生させないだけでなく、香料の香立ちの低減を抑制した組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、リノール酸をリポソームに含有させた状態でトラネキサム酸と併用することにより、リノール酸を配合した場合の組成物と比較し、香気の経時安定性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の項に記載の組成物等を包含する。
項1.
下記(A)成分及び(B)成分を含有する組成物。
(A)トラネキサム酸
(B)リノール酸を含むリポソーム
項2.
リノール酸の含有量が組成物全量に対して0.01〜1.0質量%である、項1に記載の組成物。
項3.
さらに、トコフェロールを含有する、項1または項2の何れか1項に記載の組成物。
項4.
トコフェロールが、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、δ―トコフェロール、酢酸dl―α―トコフェロール、dl―α―トコフェロール、及び酢酸―d―α―トコフェロールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1〜3の何れか1項に記載の組成物。
項5.
トコフェロールの過半量がδ―トコフェロールである、項1〜4の何れか1項に記載の組成物。
項6.
トラネキサム酸を含む組成物に全量若しくは一部量のトコフェロールを配合し、均一にした後にリノール酸を含有するリポソームを配合する、リノール酸を含有するリポソームを配合した組成物の香気の経時安定性を向上させる方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、リノール酸を含有するリポソームを配合した組成物の香気経時安定性を、トラネキサム酸を併用することによりさらに向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の組成物は、以下の(A)成分及び(B)成分を含有する。
(A)トラネキサム酸
(B)リノール酸を含むリポソーム
そして、本発明の組成物は、(A)成分を含む分散媒(連続相)に(B)成分が分散してなる。つまり、本発明の組成物は分散系であり、成分(A)が分散媒に含まれており、成分(B)が分散質である。
【0009】
換言すれば、本発明の組成物は、上記(A)及び(B)成分を含有し、(A)成分を含む分散媒(連続相)に(B)成分が分散してなる、組成物である。
【0010】
本発明の組成物において、さらに(C)成分としてトコフェロールを含有することが好ましい。(C)成分は、少なくともリポソームを分散する連続相に含有される。また、連続相に含有されるだけでなく、リポソームにも含まれている方が好ましい。その場合、連続層に含まれるトコフェロールとリポソームに含まれるトコフェロールは同一である必要はないが、連続相に含まれる(C)成分としてはδ―トコフェロールが最も好ましい。なお、(C)成分は、リポソーム調製時に、リン脂質やリノール酸等と共に、リポソーム調製原料として用いることでリポソームへ含ませることができる。なお、本発明でいう「リノール酸を含むリポソーム」とは、主として脂質二重膜で形成された脂質小胞体(リポソーム)の構造体の中にリノール酸が包含される状態を意味する。脂質二重膜であるリポソーム膜で囲まれる空間に封入されている状態で存在することが好ましいが、リポソーム膜の構成成分とともに存在していてもよく、多重膜リポソームを構成する多重膜の間に存在していてもよく、リポソームを構成する脂質二重膜のうちの最も外側に位置する膜の表面に付着又は結合する形態で存在していても良く、それらの全てもしくは一部に存在しても良い。「リノール酸を含むリポソーム」は、本願において、「リポソーム化したリノール酸」、「リノール酸内包リポソーム」、「リノール酸含有リポソーム」、や単に「リポソーム化リノール酸」と表現することがある。
【0011】
トフェロールは、本発明の組成物の全量に対して0.005〜0.5質量%程度含有されることが好ましく、0.01〜0.1質量%程度含有されることがより好ましい。0.005質量%以上含有されることにより、本発明の効果がより一層奏されうる。また、0.5質量%以下含有される場合、効率的に効果が得られうる。(つまり、0.5質量%を超えて含有される場合は、配合量の割には奏される効果が小さい場合がありえる。)
【0012】
本発明においては、リノール酸がリポソームに含まれる。本発明に用いるリノール酸は、炭素数が18〜22(18、19、20、21、又は22)の多価不飽和脂肪酸の混合物でも良いが、リノール酸の含有量が高いものが好ましく、リノール酸が組成物に含まれる多価不飽和脂肪酸全量の99質量%以上であることが最も好ましい。また、二重結合を2〜6(2、3、4、5、又は6)個有する多価不飽和脂肪酸が好ましい。前記の多価不飽和脂肪酸は具体的には、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが例示される。
【0013】
リノール酸の含有量は、本発明の組成物の全量に対して0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましく、0.08〜0.2質量%がさらに好ましく、0.09〜0.11質量%がさらにより好ましい。リノール酸の含有量が0.01質量%以上であれば、本発明の組成物を用いることにより、美白効果がより一層効率よく得られ、一方、1質量%を超える場合、保管条件によっては経時で異臭が発生したり、香料の香立ちを著しく阻害したりするなどの問題を生じる可能性があるため、好ましくない。
【0014】
トラネキサム酸の含有量は、本発明の組成物全量に対して0 . 1 〜 10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。トラネキサム酸の含有量が0.1質量%以下であれば、本発明の効果を充分に得られない可能性があり、10質量%を越える場合、配合しただけの効果を得ることが出来ない恐れがあるため、好ましくない。
【0015】
本発明に用いるトコフェロールは、上記連続相に含まれる場合も、リポソームに含まれる場合も、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、δ―トコフェロール、酢酸dl―α―トコフェロール、dl―α―トコフェロール、酢酸―d―α―トコフェロールからなる群より選択されることが好ましい。これらトコフェロールは1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。天然に存在するトコフェロールである、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、δ―トコフェロールを1種又は2種以上含有されることがより好ましい。特に、δ―トコフェロールは高い効果が得られるためトコフェロールの中で最も好ましい。
【0016】
本発明に使用するリポソームは、レシチンを構成成分(特に膜構成成分)として含むものが好ましい。レシチンとしては、大豆レシチン、コーンレシチン、綿実油レシチン、卵黄レシチン、卵白レシチンなどが例示される。また、レシチンに代えて又は加えて、レシチン誘導体を用いることもできる。レシチン誘導体としては、水素添加レシチンや、前記例示のレシチン中のリン脂質にポリエチレングリコール、アミノグリカン類等を導入した化合物が例示できる。このうち、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチンが好ましく、特に大豆レシチン、卵黄レシチンが好ましい。また、レシチン中に存在するリン脂質(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン等)の純度を高めた精製レシチンも好ましく使用することができる。これらレシチン又はレシチン誘導体は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
本発明の組成物は、例えば、トラネキサム酸((A)成分)を含む組成物を製造し、リノール酸を含むリポソーム((B)成分)を配合して均一にすることにより、製造することができる。トコフェロールを配合する場合は、(A)成分に(B)成分を配合する前に、その全量若しくは一部量を配合することで製造することができる。一部量のトコフェロールを配合する場合は、残りのトコフェロールはリポソームの製造時にリポソームの構成成分の一部として配合し製造されるリポソーム分散液として組成物に配合することが最も好ましい。なお、リポソーム分散液の分散媒は通常水を用いることができる。
【0018】
リポソーム分散液の製造方法は特に限定されず、常法を用いることができる。例えば、(1)リン脂質、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体、その他含有させる成分などを均質に混合した後、pH調整剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で水和し、リポソームを形成させる方法;
(2)リン脂質、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体、その他含有させる成分をアルコール、多価アルコールなどに溶解し、pH調整剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で水和し、リポソームを調製する方法;
(3)超音波、フレンチプレスやホモジナイザーを用いて、リン脂質、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体、その他内含有させる成分を水中で複合化させ、リポソームを調製する方法;
(4)エタノールにリン脂質、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体、その他含有させる成分を混合溶解し、このエタノール溶液を塩化カリウム水溶液に添加した後にエタノールを除去しリポソームを調製する方法;
などが例示できる。
【0019】
当該リポソーム分散液には、高分子、蛋白質及びその加水分解物、ムコ多糖類などを配合することができる。つまり、高分子、蛋白質及びその加水分解物、ムコ多糖類などを材料として用いてリポソーム分散液を製造してもよい。リポソーム分散液に配合する高分子としては、例えばカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムなどが例示できるが、これらに限定されるものでもない。カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムが好ましく、特にキサンタンガムが好ましい。これら高分子等は1種または2種以上を組み合わせて使用できる。高分子の配合量は特に限定しないが、リポソーム分散液全体に対して0.001〜20質量%、好ましくは 0.01〜10質量%、特に好ましくは 0.05〜5質量%である。蛋白質及びその加水分解物としては、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、カゼイン等の蛋白質、これら蛋白質の加水分解物、当該加水分解物の塩、当該加水分解物のエステル、あるいは当該加水分解物が酵素処理されたものが挙げられる。蛋白質及びその加水分解物の配合量は特に限定しないが、リポソーム分散液全体に対して0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。ムコ多糖としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ムコイチン硫酸、ヘパリンとその誘導体、及びそれらの塩類などが挙げられるが、特にコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びこれらのナトリウム塩が好ましい。ムコ多糖の配合量は特に限定しないが、リポソーム分散液全体に対して0.0005〜5質量%、好ましくは0.001〜1質量%である。
【0020】
本発明の組成物は、上記の通り、(A)成分を含有する連続相へリポソーム分散液を配合することで製造することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分以外の成分も組成物に配合してもよい。
【0021】
例えば、上述したように、リポソーム分散液の分散媒が水であり、(C)成分として難水溶性の物質(トコフェロール)を用いるときは、界面活性剤をさらに加えて本発明の組成物の連続相(つまり、分散媒である水)へ溶解させることができる。
【0022】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル活性剤などが挙げられ、中でもヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノリノール酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステルなどのヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。これら界面活性剤は、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明を外用組成物として用いる場合、さらに、通常外用組成物の製造に用い得る成分を用いる(本発明の組成物の連続相に含ませる)こともできる。このような成分としては、保湿剤、水溶性高分子、油成分、着色剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、防腐剤、pH調整剤、清涼剤、香料、紫外線吸収・散乱剤、抗酸化剤、薬効成分などが例示できる。
【0024】
保湿剤としては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリンなどに代表される多価アルコール類、高分子多糖類、植物抽出エキス、微生物代謝物などが挙げられる。これら保湿剤は、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
水溶性高分子としては、セルロース誘導体、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸パルメス−25)コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸セテス−20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22))コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)クロスポリマー、寒天、ペクチン、ジェランガム、ゼラチン、粘土鉱物などが挙げられる。これら水溶性高分子は、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
油成分としては、動物油、植物油、鉱物油、炭化水素油、エステルオイル、ワックス類、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油及びその誘導体、ワセリン、精油などが挙げられる。これら油成分は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、本発明を外用組成物として用いる場合、リポソームの調製において、本発明の効果を損なわない範囲で、通常リポソームに含ませ得る成分を用いることもできる。例えば、アスコルビン酸などの抗酸化剤、乳酸、クエン酸などの有機酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、キトサン、フコイダン、ヒアルロン酸などの天然高分子、ポリエチレングリコールなどの合成高分子、トレハロース、ラクチュロース、マルチトールなどの糖質、グリセリンなどのポリオール等が例示される。
【0028】
本発明の組成物は、外用組成物(皮膚に適用する組成物)として用いることが好ましい。外用組成物としては、例えば医薬組成物、医薬部外品組成物、及び化粧品組成物が例示される。特に、肌の美白効果を有する外用組成物(すなわち、美白用外用組成物)として、医薬品や医薬部外品、化粧品として使用することが好ましい。剤形としては、特に限定するものではないが、フェイスパック、ペースト、軟膏、クリーム、ジェル、ローション、乳液、美容液、化粧水、スプレー剤などが挙げられる。
【0029】
本発明の組成物を外用組成物として用いる場合、適用対象は特に限定されないが、好ましくは肌の美白を望むヒトである。
【0030】
また、本発明は、上記本発明の組成物を対象の皮膚に適用する工程を含む、肌を美白にする方法(肌美白方法)も含む。当該方法は、例えば治療目的及び美容目的で用いられ得る。すなわち、当該肌美白方法は、肌美白治療方法及び肌美白美容方法を包含する。ここでの美白方法は、具体的には、例えばシミやくすみ、肝斑、炎症後色素沈着などの治療又は美容のために用いることができる。なお、適用対象や適用量は上述した通りである。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下特に断りのない限り「%」は「質量%」を示す。
【0032】
リノール酸を含むリポソームを配合した組成物の経時香気安定性試験
特開平11−1423の実施例3の方法に準じて、リノール酸含有リポソームの分散液(リノール酸含有リポソームA)の調製を行った。具体的には、大豆レシチン、リノール酸およびdl―α―トコフェロールを1,3−ブチレングリコールに均質に混合し、これに精製水を加え、フレンチプレスで処理してリポソーム分散液(リノール酸含量0.5%)を調製した。なお、当該リポソーム分散液全量に対して、大豆レシチンは4質量%、dl―α―トコフェロールは0.05質量%、1,3−ブチレングリコールは4質量%含まれるように、それぞれを調製時に用いた。
【0033】
そして、下記表1に示した処方の通り、各成分を混合して、各組成物(実施例及び比較例)を製造した。なお、表1における各成分の数値は配合量(質量%)を示す。
【0034】
比較例は、トラネキサム酸2質量%を配合する代わりにL−アスコルビン酸2−グリコシドを2質量%配合した例である。
【0035】
【表1】
【0036】
各組成物を製造後40℃で3ヶ月間放置した後の組成物の臭気安定性を、香り専門評価パネルの官能評価により実施した。対照品としては−5℃に同期間保存したものを使用した。その結果、実施例に関しては、40℃放置後でも異臭の発生を全く認めず、組成物に配合した香料の香立ちは比較例よりも強く対照と同等程度であった。また、特にフローラル系の香りに関してその効果は顕著であるとの結果も得た。
【0037】
以下、本発明の組成物の処方例を示す。なお、以下特に断りのない限り「%」は「質量%」を示す。また、リポソーム分散液に含まれる、リポソーム以外の成分は、全て連続相に含まれる。
【0038】
処方例1 美容液
成 分 配合量(%)
リノール酸内包リポソーム懸濁液 20
(リノール酸0.5%含有)
トラネキサム酸 5
d−δ−トコフェロール 0.01
オリーブ油 3
グリセリン 2
スクワラン 2
(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマー 1.5
メチルポリシロキサン 0.3
パラベン 0.1
水酸化カリウム 適 量
香料(フローラルグリーンタイプ) 0.05
精製水 残 部
合 計 100
【0039】
処方例2 乳液
成 分 配合量(%)
リノール酸内包リポソーム懸濁液 10
(リノール酸1.0%含有)
トラネキサム酸 2
天然ビタミンE 0.1
1,3−ブチレングリコール 5
オリーブ油 4
スクワラン 4
ポリオキシエチレンセチルエーテル 0.5
メチルポリシロキサン 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.2
パラベン 0.2
水酸化ナトリウム 適 量
香料(シトラスフローラルタイプ) 0.05
精製水 残 部
合 計 100
【0040】
処方例3 クリーム
成 分 配合量(%)
リノール酸内包リポソーム懸濁液 25
(リノール酸2.0%含有)
トラネキサム酸 1
酢酸dl―α―トコフェロール 0.5
グリセリン 10
メドフォーム油 8
スクワラン 6
ジプロピレングリコール 5
親油型モノステアリン酸グリセリン 2
セチルアルコール 2
モノステアリン酸ポリグリセリル 1
デカメチルシクロペンタシロキサン 1
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C−10〜30))
クロスポリマー 0.4
パラベン 0.05
水酸化ナトリウム 適 量
香料(フローラルブーケタイプ) 0.3
精製水 残 部
合 計 100
【0041】
処方例4 化粧水
成 分 配合量(%)
リノール酸内包リポソーム懸濁液 10
(リノール酸0.5%含有)
トラネキサム酸 0.1
dl―α―トコフェロール 0.005
濃グリセリン 10
トリメチルグリシン 3
カルボキシビニルポリマー 0.2
パラベン 0.2
水酸化ナトリウム 適 量
香料(フレッシュフローラルタイプ) 0.01
精製水 残 部
合 計 100
【0042】
処方例5 化粧水
成 分 配合量(%)
リノール酸内包リポソーム懸濁液 20
(リノール酸2%含有)
トラネキサム酸 10
δ―トコフェロール 0.3
エチルアルコール 5
濃グリセリン 4
トレハロース 1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.2
パラベン 0.1
クエン酸 0.08
クエン酸ナトリウム 0.08
香料(シングルフローラルタイプ) 0.01
精製水 残 部
合 計 100