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特開2019-143135(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-143135(P2019-143135A)
(43)【公開日】2019年8月29日
(54)【発明の名称】(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/30 20060101AFI20190802BHJP
   C08G 65/323 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   C08G65/30
   C08G65/323
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2019-26421(P2019-26421)
(22)【出願日】2019年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2018-28843(P2018-28843)
(32)【優先日】2018年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【弁理士】
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】中谷 英樹
(72)【発明者】
【氏名】平坂 岳臣
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】能勢 雅聡
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝史
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AB00
4J005BC00
4J005BD04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】収率を向上させた、(ポリ)エーテル基含有化合物からモノカルボン酸化合物を製造する方法の提供。
【解決手段】式(1)で表される(ポリ)エーテル基含有化合物、式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物、および、式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を含む組成物(a)を分離する工程(I)、および分離により得られる式(3)で表されるジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、式(2)で表されるモノカルボン酸化合物を含む混合物を得る工程(A)、を含む、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を製造する方法。



【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記式(1)で表される(ポリ)エーテル基含有化合物、下記式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物、および、下記式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を含む組成物(a)を、分離する工程(I)、および
上記分離により得られる式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を含む混合物を得る工程(A)、
を含む、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を製造する方法。
【化1】
【化2】
【化3】
[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、RO−CO−W−基、RO−CO−W−O−基、HO−W−基、HO−W−O−基、RO−W−基、RO−W−O−基、V−基、またはV−O−基を表し;
は、各出現においてそれぞれ独立して、アルキル基を表し;
Wは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Vは、各出現においてそれぞれ独立して、炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、Y−X−、またはY−X−O−を表し;
Yは、カルボン酸基を表し;
Xは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Pfは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
−(OC12−(OC10−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、Xは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)
で表される基である。]
【請求項2】
上記工程(I)の前に、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、組成物(a)を得る工程(Z)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(A)が、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理して得られた混合物から、少なくとも式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を、分離することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(A)が、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、少なくとも式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物と式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物とを含む混合物を得、該混合物から、式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物および式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を分離することを含み、
上記分離により得られる(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を含む混合物を得る工程(B)をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
工程(B)の後、さらに工程(B)で得られる混合物を、組成物(a)の少なくとも一部として用い、再度、前記組成物(a)を用いて工程(I)、工程(A)および工程(B)を行うことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(B)で得られる混合物を含む組成物(a)を用いる工程(I)、工程(A)および工程(B)のサイクルを複数回繰り返すことを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(A)が、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、少なくとも式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物と式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物とを含む混合物を得、該混合物から、少なくとも(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物と(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物とを、分離することを含み、
工程(A)で分離された(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を、工程(Z)における組成物(a)を形成するための原料である(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物の少なくとも一部として用い、再度、工程(Z)、工程(I)、および工程(A)を行うことを含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(Z)、工程(I)および工程(A)のサイクルを複数回繰り返すことを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
が、フッ素原子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物は、優れた撥水性、撥油性、防汚性、耐熱性、低温特性、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、潤滑性、低摩擦性、耐摩耗性、離型性などを提供し得ることが知られている。パーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物を含む機能性薄膜は、例えばガラス、プラスチック、繊維、金属、建築資材など種々多様な基材に使用されている。パーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物を含むフッ素系エラストマーは、例えば自動車、航空機、半導体、宇宙分野などの厳しい環境下において、耐久性、信頼性を保つ材料として使用されている。パーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物は、他にも、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、積層樹脂などの樹脂、および塗料、化粧品などの中間体化合物、または添加剤として使用することによって、優れた性能を付与させ発現させることが可能となる。そのため、様々な構造を有するパーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物を合成する手法の探索が精力的に行われている。このようなパーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物の合成において、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有カルボン酸化合物は、原料化合物または中間体として重要な化合物である。パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有カルボン酸化合物として、片末端のみにカルボン酸基を有する、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物と、両末端にカルボン酸基を有する、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物とが挙げられる。
【0003】
原料化合物または中間体は一般に、より高い純度を有していることが望まれる。より高い純度を有していることによって、反応によって得られた生成物の精製が容易となり、さらに、反応において生じうる副生成物・未同定物の生成を低減することができ、より良好な性能を有する目的物を得ることができるためである。このため、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物の原料化合物または中間体として用いられる化合物の分離方法として、これまでにも様々な検討が行われてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、分子末端にカルボン酸基を有しないパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有化合物、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物およびパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物から、それぞれの化合物を分離する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−164908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているパーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物のうち、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物が最も使用され得る化合物であり、その収率の向上が望まれる。
【0007】
本発明の目的は、フッ素原子を含有する(ポリ)エーテル基を有する化合物の中でも最も使用され得るフッ素原子を含有する(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の収率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨によれば、以下の方法が提供される。
少なくとも下記式(1)で表される(ポリ)エーテル基含有化合物、下記式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物、および、下記式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を含む組成物(a)を、分離する工程(I)、および
上記分離により得られる式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を含む混合物を得る工程(A)、
を含む、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を製造する方法。
【化1】
【化2】
【化3】
[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、RO−CO−W−基、RO−CO−W−O−基、HO−W−基、HO−W−O−基、RO−W−基、RO−W−O−基、V−基、またはV−O−基を表し;
は、各出現においてそれぞれ独立して、アルキル基を表し;
Wは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Vは、各出現においてそれぞれ独立して、炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、Y−X−、またはY−X−O−を表し;
Yは、カルボン酸基を表し;
Xは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Pfは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
−(OC12−(OC10−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、Xは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)
で表される基である。]
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の収率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】薄層クロマトグラフィーにより得られるクロマトグラムのモデル図である。
図2】本発明の一の実施態様に係る方法のフローチャートである。
図3】本発明の一の実施態様に係る方法のフローチャートである。
図4】本発明の一の実施態様に係る方法のフローチャートである。
図5】本発明の一の実施態様に係る方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において用いられる場合、「結合手」とは、原子などを有しない単なる結合を意味する。例えば、Zが−X−Y基である場合において、Xが結合手である場合、Zは−Y基を表すこととなる。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「2価の有機基」とは、炭素を含有する2価の基を意味する。かかる2価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0013】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、分子から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素数1〜4の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6−10アリール基および5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0015】
本明細書において、アルキル基およびフェニル基は、特記しない限り、非置換であっても、置換されていてもよい。かかる基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基およびC2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0016】
ポリエーテル基は、各出現において独立して、
−(OC12−(OC10−(OC−(OC−(OC−(OCF
で表される基である。本明細書において、上記(ポリ)エーテル基を、Pf基と称することがある。式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上100以下の整数である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfの和は5以上であり、より好ましくは10以上である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfの和は200以下であり、より好ましくは100以下であり、例えば10以上200以下であり、より具体的には10以上100以下である。また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。Xは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、好ましくはフッ素原子である。
【0017】
上記Pf基において、繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。例えば、−(OC12)−は、−(OCFCFCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCFCFCF)−、−(OCFCF(CF)CFCFCF)−、−(OCFCFCF(CF)CFCF)−、−(OCFCFCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCFCFCF(CF))−等であってもよいが、好ましくは−(OCFCFCFCFCFCF)−である。−(OC10)−は、−(OCFCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCFCF)−、−(OCFCF(CF)CFCF)−、−(OCFCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCFCF(CF))−等であってもよいが、好ましくは−(OCFCFCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCF)−、−(OCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCF(CF))−、−(OC(CFCF)−、−(OCFC(CF)−、−(OCF(CF)CF(CF))−、−(OCF(C)CF)−および−(OCFCF(C))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCFCF)−である。−(OC)−(即ち、Xはフッ素原子である。)は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−および−(OCFCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCF)−である。また、−(OC)−は、−(OCFCF)−および−(OCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。
【0018】
一の態様において、上記Pf基は、−(OC−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。好ましくは、Pf基は、−(OCFCFCF−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)または−(OCF(CF)CF−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。より好ましくは、Pf基は、−(OCFCFCF−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。
【0019】
別の態様において、Pf基は、−(OC−(OC−(OC−(OCF−(式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、c、d、eおよびfの和は少なくとも5以上、好ましくは10以上であり、添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)である。好ましくは、Pf基は、−(OCFCFCFCF−(OCFCFCF−(OCFCF−(OCF−である。一の態様において、Pf基は、−(OC−(OCF−(式中、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であってもよい。
【0020】
さらに別の態様において、Pf基は、−(R−R−で表される基である。式中、Rは、OCFまたはOCであり、好ましくはOCである。式中、Rは、OC、OC、OC、OC10およびOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。好ましくは、Rは、OC、OCおよびOCから選択される基であるか、OC、OC、OC10およびOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。OC、OCおよびOCから独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、および−OCOCOC−等が挙げられる。上記jは、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、100以下、好ましくは50以下の整数である。上記式中、OC、OC、OC、OC10およびOC12は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、Pf基は、好ましくは、−(OC−OC−または−(OC−OC−である。
【0021】
上記Pf基において、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1以上10以下であり、例えば、0.2以上5以下であり、具体的には、0.4以上2以下であり、より具体的には、0.6以上1.5以下であり、さらに具体的には、0.7以上1.4以下である。
【0022】
以下において、本発明のPf基含有モノカルボン酸化合物の製造方法を、図面を用いて説明する。
【0023】
(実施態様1)
図2に、本発明のPf基含有モノカルボン酸化合物を製造する方法の一態様を示す。
【0024】
本態様のPf基含有モノカルボン酸化合物を製造する方法は、
少なくとも下記式(1)で表されるPf基含有化合物、下記式(2)で表されるPf基含有モノカルボン酸化合物、および、下記式(3)で表されるPf基含有ジカルボン酸化合物を含む組成物(a1)を、分離する工程(I−1)、および
上記分離により得られる式(3)で表されるPf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、式(2)で表されるPf基含有モノカルボン酸化合物を含む混合物を得る工程(A1)、
を含む。なお、以下において、式(1)で表されるPf基含有化合物、式(2)で表されるPf基含有モノカルボン酸化合物、および、式(3)で表されるPf基含有ジカルボン酸化合物を、それぞれ「Pf基含有化合物」、「Pf基含有モノカルボン酸化合物」および「Pf基含有ジカルボン酸化合物」と称することがある。
【化4】
【化5】
【化6】
[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、RO−CO−W−基、RO−CO−W−O−基、HO−W−基、HO−W−O−基、RO−W−基、RO−W−O−基、V−基、またはV−O−基を表し;
は、各出現においてそれぞれ独立して、アルキル基を表し;
Wは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Vは、各出現においてそれぞれ独立して、炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、Y−X−、またはY−X−O−を表し;
Yは、カルボン酸基を表し;
Xは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Pfは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
−(OC12−(OC10−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、Xは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)
で表される基である。]
【0025】
上記工程(I−1)および上記工程(A1)は、それぞれ、工程(I)および工程(A)の一態様である。組成物(a1)は、組成物(a)に対応する。
【0026】
以下、各工程について説明する。
【0027】
まず、工程(I−1)に供する組成物(a1)を準備する。
【0028】
上記組成物(a1)は、特に限定されないが、例えば下記のような反応によって得ることができる。
・式(1−a)で表される化合物の加水分解反応
O−CO−W−Pf−O−W−CO−O−R ・・・(1−a)
(式中:
は、各出現においてそれぞれ独立して、アルキル基を表し;
Wは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Pfは、Pf基を表し;
好ましいRおよびWは後述のとおりである。)
・式(1−b)で表される化合物の酸化反応
HO−W−Pf−O−W−OH ・・・(1−b)
(式中、WおよびPfは、上記と同意義である。)
・式(3)で表されるPf基含有ジカルボン酸化合物のフッ素化反応
【化7】
(式中:
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、Y−X−、またはY−X−O−を表し;
Yは、カルボン酸基を表し;
Xは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Pfは、上記と同意義であり;
好ましいZ、YおよびXは後述のとおりである。)
・上記式(3)で表されるPf基含有ジカルボン酸の脱炭酸反応
・上記式(3)で表されるPf基含有ジカルボン酸の還元反応
・式(1−c)で表される化合物の分解反応
V−Pf−O−V ・・・(1−c)
(式中:
Vは、各出現においてそれぞれ独立して、炭素原子数1〜16のアルキル基を表し、好ましくは、C1−16パーフルオロアルキル基、または少なくとも1の水素原子が、フッ素原子および塩素原子からなる群より選ばれる少なくとも1の原子により置換された基、例えばHCF(CF−で表される基を表し(gは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜15の整数である);
Pfは、上記と同意義であり;
好ましいVおよびgは後述のとおりである。)
・テトラフルオロエチレンおよび酸素を用いた光酸化反応、これにより得られた過酸化物の分解反応および加水分解反応
・テトラフルオロオキセタンのオリゴメリ化反応、これにより得られたオキセタンポリマーのフッ素化反応および加水分解反応
・ポリエチレングリコールのフッ素化反応および加水分解反応
・ヘキサフルオロプロピレンオキサイドのオリゴメリ化反応、これにより得られた生成物の加水分解反応。
上記の混合物生成反応は、当業者において通常用いられる反応条件などにより、行うことができる。
【0029】
一の態様において、上記組成物(a1)は、式(1−a)で表される化合物の加水分解反応によって生成される。本態様では、式(1−a)で表される化合物を、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液の存在下で加水分解することが、より好ましい。
アルカリ金属水酸化物として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記水溶液は、アルカリ金属水酸化物に加えて、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化アンモニウムなどの他の塩基を含んでもよい。この加水分解において、上記式(1−a)で表される化合物 1モル(エステル基としては2当量)に対して、アルカリ金属水酸化物を含む塩基の当量数が0.1〜1.5となる量で用いるのが好ましい。塩基の当量数は0.2〜1.0であるのがより好ましく、0.3〜0.8であるのがさらに好ましい。
【0030】
上記加水分解は、必要に応じて、有機溶媒の存在下で行ってもよい。好ましい有機溶媒として、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。上記加水分解は、分散助剤がさらに存在する条件下で行ってもよい。ここで、分散助剤として、−10〜50℃において液状であって、水に対して難溶性または不溶性であるフッ素原子含有溶媒などが挙げられる。フッ素原子含有溶媒として、パーフルオロヘキサン、キシレンヘキサフルオリドなどがさらに好ましく用いられる。上記フッ素原子含有溶媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記加水分解は、例えば−10℃〜50℃で、0.5〜12時間撹拌して反応させるのが好ましい。
【0032】
別の態様においては、組成物(a1)は、Pf基含有ジカルボン酸化合物のフッ素化処理によって形成される。すなわち、本態様において、組成物(a1)は、
Pf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、組成物(a1)を得る工程(Z1)により得られる。
上記Pf基含有ジカルボン酸化合物は、式(1−a)で表される化合物の加水分解反応によって得られる化合物であり得る。
O−CO−W−Pf−O−W−CO−O−R ・・・(1−a)
(式中、R、W、およびPfは上記と同意義である)
上記式(1−a)で表される化合物は、数平均分子量が、例えば1,000〜10,000の範囲にあってもよく、具体的には3,000〜5,000の範囲にあってもよい。ここで、数平均分子量は、19F NMRによって求めた値である。
上記工程(Z1)は、工程(Z)の一態様である。
【0033】
好ましくは、組成物(a1)は、上記工程(Z1)により得られるものである。すなわち、組成物(a1)は、Pf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理して得られることが好ましい。
【0034】
上記フッ素化処理の条件は特に限定されない。フッ素化処理は、Pf基含有ジカルボン酸化合物(またはPf基含有ジカルボン酸化合物を含む組成物)とフッ素含有化合物とを接触させることにより行うことができる。
【0035】
上記フッ素含有化合物としては特に限定されないが、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源が挙げられる。上記フッ素ラジカル源としては、F、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、フッ化ハロゲン(例えばIF、ClF)等が挙げられる。
【0036】
上記F等のフッ素ラジカル源は、100%濃度のものであってもよいが、5〜50質量%に希釈して使用することが好ましく、15〜30質量%に希釈して使用することがより好ましい。例えば、上記フッ素ラジカル源が、不活性ガスと混合し得る場合(具体的には、上記フッ素ラジカル源がガス状である場合)には、安全性の面からフッ素ラジカル源を、不活性ガスと混合し5〜50質量%に希釈して使用することが好ましく、15〜30質量%に希釈して使用することがより好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられるが、経済的な面より窒素ガスが好ましい。
【0037】
上記フッ素化処理は、50℃〜200℃において行うことが好ましく、80℃〜150℃において行うことがより好ましい。上記フッ素化処理は、一般に0.5〜50時間、好ましくは1〜20時間行う。上記フッ素化処理は、100℃〜140℃にて、2〜10時間行うことが好ましい。
【0038】
以下、組成物(a1)に含まれる化合物について説明する。
【0039】
上記組成物(a1)は、少なくともPf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を含む。上記Pf基含有化合物、上記Pf基含有モノカルボン酸化合物、および上記Pf基含有ジカルボン酸化合物は、それぞれ、下記式(1)、(2)および(3)で表される。
【化8】
【化9】
【化10】
【0040】
式中、Aは、各出現においてそれぞれ独立して、RO−CO−W−基、RO−CO−W−O−基、HO−W−基、HO−W−O−基、RO−W−基、RO−W−O−基、V−基、またはV−O−基を表す。
【0041】
式中、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、アルキル基を表す。
【0042】
上記Rにおいて、アルキル基は、C1−4アルキル基であることが好ましい。C1−4アルキル基としては、直鎖状または分枝状C1−4アルキル基が挙げられる。C1−4アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。Rは、より好ましくは、メチル基またはエチル基である。なお、これらのアルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基として、例えば、フッ素原子または塩素原子などのハロゲン原子、アミノ基、スルホニル基、水酸基などが挙げられる。
【0043】
式中、Wは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表す。なお、Wとして記載している構造において、左側がRO−CO−で表される構造、HO−、またはRO−で表される構造に、右側がPf基、または−O−にそれぞれ結合する。
【0044】
上記Wにおいて、2価の有機基は、1〜4の炭素原子を含有することが好ましい。該2価の有機基は、少なくとも1の水素原子が、1またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。Wにおける上記置換基としては、フッ素原子または塩素原子を挙げることができる。
【0045】
上記1〜4の炭素原子を有する2価の有機基としては、C1−4アルキレン基、少なくとも1の水素原子が、フッ素原子および塩素原子よりなる群より選ばれる少なくとも1の原子により置換されたC1−4アルキレン基またはC1−4パーフルオロアルキレン基などが挙げられる。
【0046】
上記Wにおいて、上記C1−4アルキレン基としては、−CH−、−C−、−C−、−C−が挙げられる。ここで、−C−および−C−は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。上記少なくとも1の水素原子が、フッ素原子および塩素原子よりなる群より選ばれる少なくとも1の原子により置換されたC1−4アルキレン基としては、上記C1−4アルキレン基における水素原子の一部がフッ素原子に置換された基、C1−4アルキレン基における水素原子の一部が塩素原子に置換された基、またはC1−4アルキレン基における水素原子の一部が塩素原子およびフッ素原子に置換された基が挙げられる。上記C1−4パーフルオロアルキレン基として、上記C1−4アルキレン基における全ての水素原子がフッ素原子に置換された基が挙げられる。
【0047】
上記Wは、少なくとも1の水素原子が、フッ素原子および塩素原子からなる群より選ばれる少なくとも1の原子により置換された基であることが好ましい。
【0048】
一の態様において、上記Wは、各出現においてそれぞれ独立して、−CJ−、−CJCJ−、−CJCJCJ−、−CJ(CJ)CJ−または−CJCJ(CJ)−であるのが好ましい。Jは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。上記Jの少なくとも1がフッ素原子または塩素原子であることが好ましい。
【0049】
本態様において、上記Wは、各出現においてそれぞれ独立して、−CJ’−、−CJ’CJ’−、−CHCJ’−、−CJ’CH−、−CJ’(CJ’)CJ’−、−CJ’(CJ’)CH−、−CJ’CJ’CH−、−CHCJ’CJ’−または−CHCJ’(CJ’)−であるのが好ましい。J’は、各出現においてそれぞれ独立して、フッ素原子または塩素原子を表す。
【0050】
好ましい実施態様において、上記Wは、各出現においてそれぞれ独立して、−CF−、−CFCF−、−CHCF−、−CFCH−、−CFClCF−、−CFCFCl−、−CF(CF)CF−、−CF(CF)CH−、−CFCFCH−、−CHCFCF−または−CHCF(CF)−である。
【0051】
式中、Vは、各出現においてそれぞれ独立して、炭素原子数1〜16のアルキル基を表す。上記炭素原子数1〜16のアルキル基は、1またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。上記置換基としては、フッ素原子または塩素原子を挙げることができる。
【0052】
上記Vは、少なくとも1の水素原子が、フッ素原子および塩素原子からなる群より選ばれる少なくとも1の原子により置換された基であることが好ましい。
【0053】
1の態様において、上記Vは、J(CJ−で表される構造であることが好ましい。ここでnは1〜16の整数である。Jは、上記と同意義である。上記Jの少なくとも1がフッ素原子または塩素原子であることがより好ましい。
【0054】
好ましい態様において、Vは、C1−16パーフルオロアルキル基、HCF(CF−、またはClCF(CF−で表される基であり得る。
【0055】
上記C1−16パーフルオロアルキル基は、直鎖状または分枝状の炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基(アルキル基における全ての水素原子がフッ素原子に置換された基)であり、好ましくは直鎖状または分枝状の炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、より具体的にはCF−、CFCF−またはCFCFCF−である。
【0056】
上記gは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜15の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましい。
【0057】
式中、Zは、各出現においてそれぞれ独立して、Y−X−、またはY−X−O−を表す。
【0058】
上記Yは、カルボン酸基を表す。
【0059】
上記Xは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表す。結合手および2価の有機基については上記のとおりである。なお、Xとして記載している構造において、左側がYで表される構造に結合する。
【0060】
上記Xにおいて、2価の有機基は、1〜4の炭素原子を含有する基であることが好ましい。上記1〜4の炭素原子を含有する基においては、水素原子が、1またはそれ以上のフッ素原子または塩素原子により置換されていてもよい。1〜4の炭素原子を有する2価の有機基としては、C1−4アルキレン基、水素原子の一部が1またはそれ以上のフッ素原子および塩素原子からなる群より選ばれる少なくとも1の原子により置換されたC1−4アルキレン基またはC1−4パーフルオロアルキレン基などが挙げられる。
【0061】
上記C1−4アルキレン基としては、−CH−、−C−、−C−、−C−が挙げられる。ここで、−C−および−C−は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。上記水素原子の一部が1またはそれ以上のフッ素原子および塩素原子からなる群より選ばれる少なくとも1の原子により置換されたC1−4フルオロアルキレン基としては、上記C1−4アルキレン基における水素原子の一部がフッ素原子に置換された基、上記水素原子の一部が塩素原子により置換された基、上記水素原子の一部が塩素原子およびフッ素原子に置換された基が挙げられる。上記C1−4パーフルオロアルキレン基として、上記C1−4アルキレン基における全ての水素原子がフッ素原子に置換された基が挙げられる。
【0062】
上記Xは、各出現においてそれぞれ独立して、−CJ−、−CJCJ−、−CJ(CJ)CJ−、−CJCJCJ−、または−CJCJ(CJ)−であるのが好ましい。Jは上記と同意義である。上記Jの少なくとも1がフッ素原子または塩素原子であることが好ましい。
【0063】
上記Xは、各出現においてそれぞれ独立して、−CJ’−、−CJ’CJ’−、−CHCJ’−、−CJ’CH−、−CJ’(CJ’)CJ’−、−CJ’(CJ’)CH−、−CJ’CJ’CH−、−CHCJ’CJ’−または−CHCJ’(CJ’)−であるのがより好ましい。J’は上記と同意義である。
【0064】
好ましい態様において、上記Xは、各出現においてそれぞれ独立して、−CF−、−CFCF−、−CHCF−、−CFCH−、−CFClCF−、−CFCFCl−、−CF(CF)CF−、−CF(CF)CH−、−CFCFCH−、−CHCFCF−または−CHCF(CF)−である。
【0065】
式中、Pfは、Pf基を意味する。
【0066】
−Pf−部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500〜30,000、好ましくは1,500〜30,000、より好ましくは2,000〜10,000である。上記数平均分子量は、19F−NMRにより測定される値とする。
【0067】
別の態様において、−Pf−部分の数平均分子量は、500〜30,000、好ましくは1,000〜20,000、より好ましくは1,500〜15,000、さらにより好ましくは2,000〜10,000、例えば3,000〜5,000であり得る。
【0068】
別の態様において、−Pf−部分の数平均分子量は、4,000〜30,000、好ましくは5,000〜10,000、より好ましくは6,000〜10,000であり得る。
【0069】
上記Pf基含有化合物の好ましい具体例として、例えば、以下に示す化合物などが挙げられる。
【0070】
【表1】
【0071】
表1において、Pf、R、WおよびVは、上記定義と同様である。
【0072】
上記式(1−a)中、Rは、C1−4アルキル基であるのが好ましく、Wは、−CF−、−CFCF−、−CFClCF−、−CFCFCl−または−CF(CF)−であるのが好ましい。式(1−a)において、Wとして記載した構造は、左側が−CO−に結合し;Pf基は、左側がWで表される構造に、右側が−O−に、それぞれ結合する。
上記式(1−b)中、Wは、−CHCF−、−CFCH−、−CFClCF−、−CFCFCl−、−CFCFCH−、−CHCFCF−、−CF(CF)CH−または−CHCF(CF)−であるのが好ましい。式(1−b)において、Wとして記載した構造は、左側がHO−に結合し;Pf基は、左側がWで表される構造に、右側が−O−に、それぞれ結合する。
上記式(1−c)中、Vは、−CF、−CFCF、−CFClCF、−CFCFCl、−CFCFCF、−CFH、−CFCFHまたは−CFCFCFHであるのが好ましい。式(1−c)において、Pf基は、左側がVで表される構造に、右側が−O−に、それぞれ結合する。
上記式(1−d)中、Rは、C1−4アルキル基であるのが好ましく、Wは、−CF−、−CFCF−、−CFClCF−、−CFCFCl−、−CF(CF)CF−、−CHCF−、−CFCH−、−CFCFCH−、−CHCFCF−、−CF(CF)CH−または−CHCF(CF)−であるのが好ましい。式(1−d)において、Wとして記載した構造は、左側がR−O−で表される構造に結合し;Pf基は、左側がWで表される構造に、右側が−O−に、それぞれ結合する。
【0073】
上記式(2)で表されるPf基含有モノカルボン酸化合物の好ましい具体例として、例えば、以下に示す化合物などが挙げられる。
【0074】
【表2】
【0075】
表2において、Pf、R、W、V、XおよびYは、上記定義と同様である。
【0076】
上記式(2−a)中、Rは、C1−4アルキル基であるのが好ましく;Wは、−CF−、−CFCF−、−CFClCF−、−CFCFCl−または−CF(CF)−であるのが好ましく;Xは、−CF−、−CFCF−または−CF(CF)−であるのが好ましい。式(2−a)において、Wで表される構造は、左側が−CO−に、右側がPf基に、それぞれ結合し;Pf基は、左側がWで表される構造に、右側が−O−に、それぞれ結合し;Xで表される構造は、左側が−O−に、右側がYで表される構造に、それぞれ結合する。
上記式(2−b)中、Wは、−CHCF−、−CFClCF−、−CFCFCl−、−CHCFCF−または−CHCF(CF)−であるのが好ましく;Xは、−CF−、−CFCF−または−CF(CF)−であるのが好ましい。式(2−b)において、Wで表される構造は、左側がHO−に、右側がPf基に、それぞれ結合し;Pf基は、左側がWで表される構造に、右側が−O−に、それぞれ結合し;Xで表される構造は、左側が−O−に、右側がYで表される構造に、それぞれ結合する。
上記式(2−c)中、Vは、CF−、CFCF−、CFCFCF−、CFH−、HCFCF−またはHCFCFCF−であるのが好ましく;Xは、−CF−、−CFCF−、−CFClCF−、−CFCFCl−、または−CF(CF)−であるのが好ましい。式(2−c)において、Pf基は、左側がVで表される構造に、右側が−O−に、それぞれ結合し;Xで表される構造は、左側が−O−に、右側がYで表される構造に、それぞれ結合する。
上記式(2−d)中、Rは、C1−4アルキル基であるのが好ましく;Wは、−CF−、−CFCF−、−CFClCF−、−CFCFCl−、−CF(CF)CF−、−CHCF−、−CFCH−、−CFCFCH−、−CHCFCF−、−CF(CF)CH−または−CHCF(CF)−であるのが好ましく;Xは、−CF−、−CFCF−、−CFClCF−、−CFCFCl−、または−CF(CF)−であるのが好ましい。式(2−d)において、Wで表される構造は、左側が−O−に、右側がPf基に、それぞれ結合し;Pf基は、左側がWで表される構造に、右側が−O−に、それぞれ結合し;Xで表される構造は、左側が−O−に、右側がYで表される構造に、それぞれ結合する。
【0077】
上記組成物(a1)の末端CF基率は、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。上記末端CF基率は、80%以下であってもよく、具体的には60%以下である。組成物(a1)においては、上記末端CF基率は、組成物(a1)に含まれる化合物の両末端に存在する末端基のモル数(全末端モル数)に対する、上記化合物の末端に存在する−CF基のモル数の割合を意味する。上記化合物の両末端に存在する末端基としては、−CF、−COOF、−COF、−COOH等を挙げることができる。上記末端CF基率は、19F−NMRを用いて測定できる。
【0078】
組成物(a1)は、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物の合計100質量部に対して、Pf基含有化合物を、10〜90質量部、Pf基含有モノカルボン酸化合物を、20〜70質量部、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を、10〜90質量部含むことが好ましく;Pf基含有化合物を、10〜60質量部、Pf基含有モノカルボン酸化合物を、30〜60質量部、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を、10〜60質量部含むことがより好ましい。
【0079】
従来、Pf基含有モノカルボン酸化合物を含む組成物を分離することにより、Pf基含有モノカルボン酸化合物が得られてきた。従って、Pf基含有モノカルボン酸化合物の収率を高くするためには、上記分離前の組成物に含まれる、Pf基含有モノカルボン酸化合物の含有率が高いことが求められてきた。しかしながら、Pf基含有モノカルボン酸化合物の含有率の高い組成物の製造においては、フッ素化処理に時間を要していた。さらに、上記フッ素化処理において末端CF基率を高くすると、組成物中の末端にカルボン酸基を有しない化合物(Pf基含有化合物)の含有率が高くなり得ることから、目的とするPf基含有モノカルボン酸化合物の収率のみを高くすることは困難であった。
【0080】
これに対して、本発明の方法では、組成物(a1)を分離する工程(I−1)で得られるPf基含有ジカルボン酸化合物を、工程(I−1)の後に行う工程(A1)においてフッ素化処理し、Pf基含有モノカルボン酸化合物を形成する。本発明の方法では、組成物(a1)として、上記のようにPf基含有ジカルボン酸化合物の含有率の高い(末端CF基率の低い)組成物を用い得る。従って、本発明の方法によると、組成物(a1)の製造に要する時間を、上記のような従来法よりも短縮し得る。
【0081】
組成物(a1)に含まれるPf基含有モノカルボン酸化合物の数平均分子量は、500〜30,000の範囲にあることが好ましく、1,000〜20,000の範囲にあることがより好ましく、1,500〜15,000の範囲にあることがさらに好ましく、1,000〜10,000の範囲にあることが特に好ましく、3,000〜5,000の範囲にあることがより好ましい。本明細書において、数平均分子量は19F NMRにより測定された値とする。
【0082】
組成物(a1)に含まれるPf基含有モノカルボン酸化合物の分子量分布は、2.0以下にあることが好ましく、1.5以下にあることがより好ましく、1.3以下にあることがさらに好ましい。本明細書において、分子量分布は、重量平均分子量/数平均分子量で表されるものであり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した値を用いて計算したものである。
【0083】
以下、工程(I−1)について説明する。
【0084】
上記工程(I−1)は、組成物(a1)を、分離する工程である。上記組成物(a1)は、上記のように、少なくともPf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、および、Pf基含有ジカルボン酸化合物を含む。
【0085】
上記工程(I−1)は、好ましくは、組成物(a1)から、Pf基含有ジカルボン酸化合物、および、Pf基含有モノカルボン酸化合物を分離する工程である。上記工程(I−1)は、より好ましくは、組成物(a1)から、Pf基含有ジカルボン酸化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有化合物を分離する工程である。
【0086】
一の態様において、上記工程(I−1)により、組成物(a1)から、Pf基含有ジカルボン酸化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、および、Pf基含有化合物を分離する。本態様の工程(I−1)により得られるPf基含有モノカルボン酸化合物の収率は、工程(I−1)に供される組成物(a1)100質量部に対して、例えば、20〜60質量部であり得、具体的には35〜50質量部であり得る。
【0087】
上記組成物(a1)から、Pf基含有ジカルボン酸化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、および、Pf基含有化合物を分離する手段としては、ろ過、洗浄、抽出、ソックスレイ抽出、カラムクロマトグラフィなどが挙げられ、
この方法は、
組成物(a1);フッ素原子含有非極性溶媒;および極性固定相;を混合し、これをカラムに密に詰まるように投入する。さらに、フッ素原子含有非極性溶媒をカラムに投入し、その後、カラムに充填した極性固定相(例えばシリカゲル相)の上面と、該フッ素原子含有非極性溶媒相の上面とが接するように、該フッ素原子含有非極性溶媒を排出する。その後、組成物(a1)をカラムの上部から投入する。その後、さらに、フッ素原子含有非極性溶媒をカラムに投入し、
非極性移動相を用いて、上記分離手段により、極性固定相から、Pf基含有化合物を分離し、
次いでPf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を分離することを包含する。
上記方法は、Pf基含有化合物の分離後であって、Pf基含有ジカルボン酸化合物の分離前に、Pf基含有モノカルボン酸化合物を分離することを含み得る。
なお、分離されたPf基含有化合物は加水分解反応の原料として、再利用することができる。
【0088】
上記極性固定相は、酸化アルミニウム、シリカゲル、酸化マグネシウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート、化学修飾シリカゲル、珪藻土からなる群から選択されることが好ましく、その固定相表面に、−OH基、アミノ基、シアノ基、アルキル基、フルオロアルキル基などの極性基を有する固定相をいう。極性固定相であるシリカゲルとして、例えば、非修飾シリカゲル、アミノ基含有シリカゲル、シアノ基含有シリカゲルなどが挙げられる。
本発明において、極性固定相として、シリカゲルを用いるのが好ましい。このような態様は、得られるPf基含有モノカルボン酸化合物の分子量分布を狭くし得る観点から好ましい。また、シリカゲルを充填したカラムを用いることにより、分子量分布の制御が容易になり得る。これは、シリカゲル用いたカラムクロマトグラフィでは、分子量がカラム内の移動時間に影響することから、カラムから排出される溶液を分画し、分画された溶液を混合することによって、分子量分布の制御が可能となり得るためである。
【0089】
上記極性固定相は、市販品を用いてもよい。市販の極性固定相として、例えば、シリカゲルである、富士シリシア化学社製、クロマトレックス(PSQ−100B)、和光純薬工業株式会社製、Wakogel(商標)C−200、Merck社製、115111シリカゲル60などが挙げられる。
【0090】
上記分離方法においては、最初に非極性移動相を用い、次いで極性移動相を用いて、極性固定相からの化合物の分離を行うことが好ましい。Pf基含有化合物は、Pf基含有モノカルボン酸化合物またはPf基含有ジカルボン酸化合物と比べて極性が低い。そのため、Pf基含有化合物は、極性固定相に対する保持力が弱く、非極性移動相を用いた分離(例えばろ過など)において、溶出などによって分離し得る。
【0091】
上記非極性移動相としては、1またはそれ以上のフッ素原子含有非極性溶媒を含む非極性移動相を用いることができる。
【0092】
上記非極性移動相として、フッ素原子含有非極性溶媒であるハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロモノエーテル、フッ素原子含有芳香族溶媒、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロアルカン、ハイドロフルオロアルケン、パーフルオロポリエーテルから選択される少なくとも1種を用いるのがより好ましく、ハイドロフルオロモノエーテル、フッ素原子含有芳香族溶媒、ハイドロフルオロアルカンから選択される少なくとも1種を用いるのがさらに好ましい。
【0093】
上記極性移動相として、
・1またはそれ以上のフッ素原子含有極性溶媒を含む極性移動相、
・フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子含有極性溶媒の組み合わせを含む極性移動相、または、
・フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子非含有極性溶媒の組み合わせを含む極性移動相、
のいずれかを用いることができる。このような非極性移動相および極性移動相を用いることによって、Pf基含有化合物とPf基含有ジカルボン酸化合物、または、Pf基含有化合物とPf基含有モノカルボン酸化合物とPf基含有ジカルボン酸化合物とを、極性固定相からより良好に分離させることができ、そしてPf基含有ジカルボン酸化合物、または、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を、還流などの加熱操作を必要とすることなく、室温条件下でも取り出すことができる。
【0094】
上記極性移動相として、フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子含有極性溶媒の組み合わせ、または、フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子非含有極性溶媒の組み合わせを用いる場合は、これらの溶媒の濃度を変化させて(グラジエントをかけて)用いてもよい。
【0095】
本明細書において「フッ素原子含有非極性溶媒」とは、フッ素原子を含み、かつ、非極性または低極性である溶媒をいう。フッ素原子含有非極性溶媒として、例えば、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロモノエーテル、パーフルオロモノエーテル、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロアルカン、ハイドロフルオロアルケン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアミン、フッ素原子含有アルケン、フッ素原子含有芳香族溶媒、フッ素原子含有ケトン、フッ素原子含有エステルなどが挙げられる。
【0096】
上記クロロフルオロカーボンとして、例えば、R−113(CCl)、2,2,3,3−テトラクロロヘキサフルオロブタンなどの、炭素数2〜4のクロロフルオロカーボンが挙げられる。
上記ハイドロクロロフルオロカーボンとして、HCFC225(CFCFCHCl、CClFCFCHClF)などの、炭素数3〜6のハイドロクロロフルオロカーボンが挙げられる。
上記ハイドロフルオロモノエーテルとして、例えば、COCH、COCH、COC、CCF(OCH)C、CFCHOCFCHF、CHFCFCFCFCHOCH、CFCHFCFOCHCFCHF、CHFCFCHOCHFCF、CHFOCHCFCHFCF、CFCHFCFOCHCFCF、CHFOCHCFCHF、CFCHFCFOCHCF、CHFCFOCHCFCF、CFCHOCHCF、CFCHOCFCHF、CFCHFCFOCH、CHFOCHCFCF、HCFCFOCなどの、炭素数3〜7のハイドロフルオロモノエーテルが挙げられる。
上記パーフルオロモノエーテルとして、例えば、パーフルオロジプロピルエーテル、パーフルオロジブチルエーテル、パーフルオロ−2−トリフルオロメチル−4−オキサノナン、パーフルオロジペンチルエーテルなどの、炭素数6〜10のパーフルオロモノエーテルが挙げられる。
上記パーフルオロアルカンとして、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタンパーフルオロウンデカン、パーフルオロドデカンなどの、炭素数3〜12のパーフルオロアルカンが挙げられる。
上記ハイドロフルオロアルカンとして、例えば、CFCHCFCH、CFCHFCHFC、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、CFCFCFCFCHCH、CFCFCFCFCFCFCHCH、CFCFCFCFCFCHFなどの、炭素数3〜8のハイドロフルオロアルカンが挙げられる。
上記パーフルオロポリエーテルとして、例えば、Galden SV−90、HGalden ZV100、Galden HT55、Galden HT70、GaldenHT90、Galden HT110、Galden HT135、CFOCFCFOCF、CFOCFOCFCFOCF、CFOCFCFOCFCFOCF、CFOCFCFOCFOCFCFOCF、CFOCFOCFCFOCFCFOCFなどの、炭素数3〜10のパーフルオロポリエーテルが挙げられる。
上記パーフルオロアミンとして、例えば、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリアミルアミンなどの、炭素数3〜15のパーフルオロアミンが挙げられる。
上記フッ素原子含有アルケンとして、例えば、C13CH=CH、CCH=CH、C15CH=CHなどの、炭素数3〜10のフッ素原子含有アルケンが挙げられる。
上記フッ素原子含有芳香族溶媒として、例えば、m−キシレンヘキサフルオリド、パーフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、モノフルオロベンゼンなどの、炭素数6〜12のフッ素原子含有芳香族溶媒が挙げられる。
上記フッ素原子含有ケトンとして、例えば、メチルペンタデカフルオロヘプチルケトン、トリフルオロメチルエチルケトン、フェニルヘプタフルオロプロピルケトン、メチルヘプタフルオロプロピルケトン、フェニルトリフルオロメチルケトンなどの、炭素数2〜10のフッ素原子含有ケトンが挙げられる。
上記フッ素原子含有エステルとして、例えば、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、CFCFCOOCH、CFCFCOOCHCHなどの、炭素数3〜10のフッ素原子含有エステルが挙げられる。
【0097】
これらのフッ素原子含有非極性溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
上記フッ素原子含有非極性溶媒として市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、
3M社製、Novec(商標)シリーズのハイドロフルオロモノエーテル、例えばNovec(商標)7000(COCH)、Novec(商標)7100(COCH)、Novec(商標)7200(COC)、Novec(商標)7300(CCF(OCH)C)、Novec(商標)71IPAなど;
AGC旭硝子社製のハイドロフルオロエーテル、例えばAE−3000など;
AGC旭硝子社製のハイドロフルオロアルカン、例えばAC−6000(C13)、AC−2000(CFCFCFCFCFCHF)、AC−4000(CFCFCFCFCHCH)など;
Solvay社製のパーフルオロポリエーテル、例えばGaldenSV−90、HGalden ZV100、Galden HT55、Galden HT70、GaldenHT90、Galden HT110、Galden HT135など;
3M社製のパーフルオロアルカン、例えばパーフルオロヘキサン、Fluorinert(商標)FC−40、Fluorinert(商標)FC−72、Fluorinert(商標)FC−75、Fluorinert(商標)FC−77、Fluorinert(商標)FC−84、Fluorinert(商標)FC−104など;
上記のクロロフルオロカーボン(R−113)およびハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC225)など;
が挙げられる。上記市販品の中では、Novec(商標)7200(COC)、Novec(商標)、7300(CCF(OCH)C)、AC−6000(C13)、FC−72を用いることが好ましい。
【0099】
また、上記フッ素原子含有非極性溶媒は、沸点が20〜200℃の範囲内であるものがより好ましい。フッ素原子含有非極性溶媒の沸点が20〜200℃の範囲内であることによって、上記化合物を分離した後の溶媒留去操作を容易に行うことができる利点がある。
【0100】
本明細書において「フッ素原子含有極性溶媒」とは、フッ素原子を含み、かつ、極性を有する溶媒をいう。フッ素原子含有極性溶媒として、例えば、フッ素原子含有アルコール、フッ素原子含有カルボン酸、フッ素原子含有スルホン酸などの溶媒が挙げられる。
【0101】
上記フッ素原子含有アルコールとして、例えば、CFCHOH、CFCFCHOH、CFCFCFCHOH、ヘキサフルオロイソプロパノール、HCFCFCHOH、HCFCHOH、CFCFCFCFCHCHOH、CFCFCFCFCFCFCHCHOH、CFCFCFCH(OH)CH、CFOCFCFOCFCHOH、CFOCFCFOCFOCFCHOH、CFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH、CFOCF(CF)CFOCFOCF(CF)CHOH、CFOH、HOCH(CFCHOH、CCHCHCHOHなどの、炭素数2〜10のフッ素原子含有アルコールが挙げられる。
上記フッ素原子含有カルボン酸として、例えば、トリフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、クロロジフルオロ酢酸、CFCFCOH、CFCFCFCOH、HOC(CFCOH、HOC(CFCOH、H(CFCOH、CFOCFCFOCFCOH、CFOCFCFOCFOCFCOH、CFOCF(CF)CFOCF(CF)COH、CFOCF(CF)CFOCFOCF(CF)COHなどの、炭素数2〜10のフッ素原子含有カルボン酸が挙げられる。
上記フッ素原子含有スルホン酸として、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロエトキシエタンスルホン酸などの、炭素数1〜10のフッ素原子含有スルホン酸が挙げられる。
【0102】
これらのフッ素原子含有極性溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
上記フッ素原子含有極性溶媒は、沸点が20〜200℃の範囲内であるものがより好ましい。フッ素原子含有極性溶媒の沸点が20〜200℃の範囲内であることによって、上記化合物を分離した後の溶媒留去操作を容易に行うことができる利点がある。
【0104】
なお、フッ素原子含有極性溶媒において用いられるフッ素原子含有カルボン酸には、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物は含まれないものとする。
【0105】
本明細書において「フッ素原子非含有極性溶媒」とは、極性を有する溶媒であって、かつフッ素原子を含まない溶媒、すなわち、極性を有する溶媒であって上記フッ素原子含有極性溶媒に該当しないもの、をいう。フッ素原子非含有極性溶媒として、例えば、酢酸などのカルボン酸溶媒;フェノール、クレゾールなどのフェノール溶媒;メタンスルホン酸などのスルホン酸溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。これらのフッ素原子非含有極性溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
上記フッ素原子非含有極性溶媒として、カルボン酸溶媒およびスルホン酸溶媒からなる群から選択される溶媒を1種またはそれ以上で用いるのが好ましい。
【0107】
なお、上記フッ素原子非含有極性溶媒において、メタノールは含まれない。メタノールは、極性固定相を用いるカラムクロマトグラフィにおいて、極性移動相として一般的に用いられる溶出溶媒である。一方で、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物は、極性溶媒としてメタノールを含む極性移動相を用いる場合においては、極性固定相から分離させ溶出させることができない。そのため上記極性移動相として、1またはそれ以上のフッ素原子含有極性溶媒を含むか、フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子含有極性溶媒の組み合わせを含むか、または、フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子非含有極性溶媒(但しメタノールは含まれない)の組み合わせを含むものを用いることを特徴とする。
【0108】
好ましい態様において、上記極性移動相は、1またはそれ以上のフッ素原子含有極性溶媒を含むものであるか、または、フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子含有極性溶媒の組み合わせを含み、より好ましくは、フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子含有極性溶媒の組み合わせを含む。本態様において、上記フッ素原子含有非極性溶媒は、フッ素原子含有エステル、フッ素原子含有アルカン、およびフッ素原子含有エーテルからなる群より選ばれる少なくとも1であることが好ましく、上記フッ素原子含有極性溶媒は、フッ素原子含有アルコール、およびフッ素原子含有カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1であることが好ましい。
【0109】
別の好ましい態様において、上記極性移動相は、1またはそれ以上のフッ素原子含有極性溶媒を含むものであるか、または、フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子含有極性溶媒の組み合わせを含む。ここで、フッ素原子含有非極性溶媒は、ハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロモノエーテル、フッ素原子含有芳香族溶媒およびハイドロフルオロアルカンから選択される少なくとも1種であるのが好ましく、フッ素原子含有極性溶媒は、フッ素原子含有アルコールおよびフッ素原子含有カルボン酸から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。また上記極性移動相が、フッ素原子含有非極性溶媒およびフッ素原子非含有極性溶媒の組み合わせを含むものである場合は、フッ素原子含有非極性溶媒は、ハイドロフルオロモノエーテル、フッ素原子含有芳香族溶媒およびハイドロフルオロアルカンから選択される少なくとも1種であるのが好ましく、フッ素原子非含有極性溶媒がカルボン酸溶媒であるのが好ましい。
【0110】
上記極性移動相のより好ましい具体的な態様として、下記例が挙げられる。
【表3】
【0111】
上記工程(I−1)において用いられる極性移動相は、Pf基含有ジカルボン酸化合物、または、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を、シリカゲルを担体とする薄層クロマトグラフィーによって、極性移動相を展開溶媒として用いて展開した場合、上記Pf基含有ジカルボン酸化合物、または、上記Pf基含有モノカルボン酸化合物および上記Pf基含有ジカルボン酸化合物のRf値が0.1以上となる条件を満たすものであることが好ましい。
【0112】
上記薄層クロマトグラフィーは、支持体上に、薄い層状に設けられた微粉末を固定相とし、溶媒を移動相として用いて行う、クロマトグラフィーである。本明細書においては、薄層クロマトグラフィーに使用する固定相として、シリカゲルを用いる。シリカゲルとして、例えば、Merck社製、105715 TLCガラスプレートシリカゲル60F254などが挙げられる。
前記薄層クロマトグラフィーに使用する支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。支持体として、例えば、ガラス板、アルミシート、プラスチックシートなどが挙げられる。
【0113】
薄層クロマトグラフィーにおける具体的な手順の一例は、以下の通りである。薄層クロマトグラフィーの固定相として、縦方向5cmを有する、シリカゲル薄層プレートを準備する。Pf基含有モノカルボン酸化合物および/またはPf基含有ジカルボン酸化合物0.1gを、上述したフッ素原子含有非極性溶媒(例えば、m−キシレンヘキサフルオリド)1mlに溶解して、サンプル液を調製する。次いで、薄層プレートの下端から5mmの位置に、ガラスマイクロキャピラリを用いて、2〜10μlのサンプル液をスポットする。このスポット位置が、展開スタート地点(原点)となる。サンプル液をスポットした後、しばらく放置するなどして、薄層プレートを十分に乾燥させる。
薄層クロマトグラフィー用展開槽に、展開溶媒を、0.2〜3.5mmの深さになるまで予め入れておき、展開槽中において展開溶媒の蒸気が飽和するまで放置しておく。
サンプルをスポットした薄層プレートを、原点が展開溶媒に直接浸らないように静かに入れる。展開槽に蓋をし、薄層プレート上に上昇してくる溶媒の先端が、薄層プレートの上端から約5mmの位置に到達するまで静置する。
次いで、薄層プレートを展開槽から取りだし、その後、ホットプレート上で加熱し、展開溶媒を十分に乾燥させる。乾燥した薄層プレートを、5%過マンガン酸カリウム水溶液中に浸漬し、その後、ホットプレート上で再度加熱する。
5%過マンガン酸カリウム水溶液は赤紫色であるため、この水溶液中に薄層プレートを浸漬することによって、薄層プレート全体が赤紫色となる。その中で、この操作によって、Pf基含有モノカルボン酸化合物および/またはPf基含有ジカルボン酸化合物のスポットは白色となる。
図1は、薄層クロマトグラフィーにより得られるクロマトグラムのモデル図である。本明細書における、上記Rf値は、原点から、化合物のスポットの中心までの距離Lを、溶媒の展開距離Lで除した値である。
Rf値=L/L
【0114】
Pf基含有モノカルボン酸化合物、Pf基含有ジカルボン酸化合物の上記Rf値について、Rf値が0.1以上であれば、極性固定相からの分離が可能である。つまり、極性移動相を展開溶媒として用いて展開した場合において、Pf基含有モノカルボン酸化合物のRf値が0.1以上であることによって、Pf基含有モノカルボン酸化合物を、極性固定相から分離し取り出すことができる。また、Pf基含有ジカルボン酸化合物のRf値が0.1以上であることによって、Pf基含有ジカルボン酸化合物を、極性固定相から分離し取り出すことができる。なお上記Rf値は0.1〜0.8であるのがより好ましい。
【0115】
本発明において、例えば、極性移動相として、フッ素原子含有非極性溶媒であるハイドロフルオロモノエーテルとフッ素原子含有極性溶媒とを組み合わせて用いる場合は、フッ素原子含有極性溶媒を単独で極性移動相として用いる場合と比べて、Rf値がより大きくなることがある。これは、フッ素原子含有極性溶媒が、上記Pf基含有ジカルボン酸化合物、または、上記Pf基含有モノカルボン酸化合物および上記Pf基含有ジカルボン酸化合物の極性移動相からの脱離を促し、一方でフッ素原子含有非極性溶媒であるハイドロフルオロモノエーテルが、上記Pf基含有モノカルボン酸化合物および上記Pf基含有ジカルボン酸化合物との親和性が高いことから良好に溶解させるためであると考えられる。そしてこのような組み合わせの極性移動相を用いることによって、Pf基含有モノカルボン酸化合物、Pf基含有ジカルボン酸化合物をより良好に分離することができるという利点がある。
好ましい一態様として、Pf基含有ジカルボン酸化合物を、シリカゲルを担体とする薄層クロマトグラフィーによって、前記極性移動相を展開溶媒として用いて展開した場合、上記Pf基含有ジカルボン酸化合物のRf値が0.1以上となる条件を満たす態様が挙げられる。この条件を満たす極性移動相を用いることによって、上記Pf基含有ジカルボン酸化合物を、極性固定相から良好に分離し取り出すことができる。なお上記Rf値は0.1〜0.5であるのがより好ましく、0.1〜0.4であるのがさらに好ましい。
【0116】
好ましい他の一態様として、分離段階に応じて、用いる極性移動相を変える態様が挙げられる。例えば、極性移動相を展開溶媒として用いて展開した場合、Pf基含有モノカルボン酸化合物のRf値が0.1以上となり、かつ、Pf基含有ジカルボン酸化合物のRf値が0.1未満となる条件を満たす極性移動相を用いることによって、Pf基含有モノカルボン酸化合物をより良好に分離することができる。次いで、Pf基含有ジカルボン酸化合物のRf値が0.1以上となる極性移動相を用いることによって、Pf基含有ジカルボン酸化合物を得ることができる。
【0117】
本発明において、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を分離する、とは、下記に示す状態で取り出された状態をいう。例えば、Pf基含有モノカルボン酸化合物を分離し取り出すとは、本発明の方法によって、上記混合物から分離し取り出された状態において、Pf基含有モノカルボン酸化合物のモル比が、分離する前の状態よりも向上していることをいい、好ましくは、Pf基含有モノカルボン酸化合物:Pf基含有ジカルボン酸化合物=100:0〜90:10、より好ましくは100:0〜95:5、さらに好ましくは100:0〜98:2、特に好ましくは100:0〜99:1、より好ましくは100:0〜99.5:0.5、さらに好ましくは100:0〜99.9:0.1の範囲内である場合をいう。また例えば、Pf基含有ジカルボン酸化合物を分離し取り出すとは、本発明の方法によって上記混合物から分離し取り出された状態において、Pf基含有ジカルボン酸化合物のモル比が、分離する前の状態よりも向上している事をいい、好ましくは、Pf基含有モノカルボン酸化合物:Pf基含有ジカルボン酸化合物=0:100〜10:90、より好ましくは0:100〜5:95、さらに好ましくは0:100〜2:98、特に好ましくは0:100〜1:99、より好ましくは0:100〜0.5:99.5、さらに好ましくは0:100〜0.1:99.9の範囲内である場合をいう。
【0118】
以下、工程(A1)について説明する。
【0119】
上記工程(A1)は、上記工程(I−1)により分離されたPf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、Pf基含有モノカルボン酸を得る工程である。本態様においては、上記工程(A1)を行うことにより、Pf基含有モノカルボン酸化合物の収率が向上し得る。
【0120】
工程(A1)に供されるPf基含有ジカルボン酸化合物は、上記のように工程(I−1)により分離されたものである。すなわち、上記「Pf基含有ジカルボン酸化合物」は、Pf基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物、例えば、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物として供され得る。この場合、モル比で、好ましくは、Pf基含有モノカルボン酸化合物:Pf基含有ジカルボン酸化合物=0:100〜10:90、より好ましくは0:100〜5:95、さらに好ましくは0:100〜2:98、特に好ましくは0:100〜1:99、より好ましくは0:100〜0.5:99.5、さらに好ましくは0:100〜0.1:99.9の範囲内にある。
上記Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物において、末端CF基率は、1%以上であってもよく、10%以上であってもよい。上記末端CF基率は、50%以下であってもよく、30%以下であってもよい。上記末端CF基率は、例えば1%〜40%であり、具体的には10%〜30%である。
上記末端CF基率は、上記Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物においては、該混合物に含まれる、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物の両末端に存在する末端基の合計モル数に対するCF基のモル数の割合を意味する。
【0121】
上記フッ素化処理の条件は特に限定されない。フッ素化処理は、Pf基含有ジカルボン酸化合物(またはPf基含有ジカルボン酸化合物を含む組成物)とフッ素含有化合物とを接触させることにより行うことができる。
【0122】
上記フッ素含有化合物としては特に限定されないが、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源が挙げられる。上記フッ素ラジカル源としては、F、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、フッ化ハロゲン(例えばIF、ClF)等が挙げられる。
【0123】
上記F等のフッ素ラジカル源は、100%濃度のものであってもよいが、5〜50質量%に希釈して使用することが好ましく、15〜30質量%に希釈して使用することがより好ましい。例えば、上記フッ素ラジカル源が、不活性ガスと混合し得る場合(具体的には、上記フッ素ラジカル源がガス状である場合)には、安全性の面からフッ素ラジカル源を、不活性ガスと混合し5〜50質量%に希釈して使用することが好ましく、15〜30質量%に希釈して使用することがより好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられるが、経済的な面より窒素ガスが好ましい。
【0124】
上記フッ素化処理は、50℃〜200℃において行うことが好ましく、80℃〜150℃において行うことがより好ましい。上記フッ素化処理は、一般に0.5〜50時間、好ましくは1〜20時間行う。上記フッ素化処理は、100℃〜140℃にて、2〜10時間行うことが好ましい。
【0125】
上記工程(A1)のフッ素化処理によって、式(2)で表されるPf基含有モノカルボン酸化合物を含む混合物が得られる。工程(A1)のフッ素化処理によって得られる混合物の末端CF基率は、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。上記末端CF基率は、80%以下であってもよく、具体的には60%以下である。上記末端CF基率は、工程(A1)により得られる混合物において、該混合物に含まれる、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物の両末端に存在する末端基の合計モル数に対するCF基のモル数の割合を意味する。末端CF基率の測定条件については、それぞれ上記のとおりである。
【0126】
上記工程(A1)のフッ素化処理によって得られる混合物における末端CF基率は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。上記末端CF基率は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましく、45%以下であることが特に好ましい。上記末端CF基率は、20%〜50%であることが好ましく、25%〜45%であることがより好ましい。
上記CF基率は、工程(A1)により得られる混合物に含まれる、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物の両末端に存在する末端基の合計モル数に対するCF基のモル数の割合を意味する。
【0127】
上記工程(A1)によって得られる混合物に含まれるPf基含有モノカルボン酸化合物は、分子量分布が、2以下にあることが好ましく、1.5以下にあることがより好ましく、1.3以下にあることがさらに好ましい。
【0128】
上記工程(A1)によって得られる混合物に含まれるPf基含有モノカルボン酸化合物の数平均分子量は、500〜30,000の範囲にあることが好ましく、1,000〜20,000の範囲にあることがより好ましく、1,500〜15,000の範囲にあることがさらに好ましく、1,000〜10,000の範囲にあることが特に好ましく、3,000〜5,000の範囲にあることがより好ましい。
【0129】
上記工程(A1)のフッ素化処理では、工程(I−1)で分離されたPf基含有ジカルボン酸化合物(あるいはPf基含有ジカルボン酸化合物を含む組成物)を処理する。工程(I−1)の分離を行うことにより、高分子量あるいは低分子量を有する化合物の含有率が低くなる。その結果、工程(A1)において上記のような分子量分布または分子量を有する化合物が得られると考えられる。
【0130】
上記工程(A1)は、Pf基含有ジカルボン酸化合物(またはPf基含有ジカルボン酸化合物を含む組成物)をフッ素化処理して得られる混合物(例えば、Pf含有モノカルボン酸化合物およびPf含有ジカルボン酸化合物を含む混合物)から、少なくともPf含有モノカルボン酸化合物を、分離することをさらに含むことが好ましい。
【0131】
上記分離にはカラムクロマトグラフィを用いることが好ましい。カラムクロマトグラフィを用いる方法としては、工程(I−1)について記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0132】
本態様においては、工程(A1)後のPf基含有モノカルボン酸化合物の収率は、工程(I−1)に供した組成物(a1)100質量部に対して、70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、85質量部以上であることが特に好ましい。本態様において、工程(A1)後のPf基含有モノカルボン酸化合物の収率は、上記工程(I−1)に供した組成物(a1)100質量部に対して、70〜100質量部の範囲にあることが好ましく、85〜100質量部の範囲にあることがより好ましい。
【0133】
(実施態様2)
図3に、本発明のPf基含有モノカルボン酸化合物を製造する方法の一態様を示す。図3のエーテル基含有化合物、モノカルボン酸化合物、およびジカルボン酸化合物は、それぞれ、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を意味する。
【0134】
本態様のPf基含有モノカルボン酸化合物の製造方法は、
組成物(a2)を、分離する工程(I−2)、
上記分離により得られるPf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、少なくとも式(2)で表されるPf基含有モノカルボン酸化合物と式(3)で表されるPf基含有ジカルボン酸化合物とを含む混合物を得、該混合物から、式(2)で表されるPf基含有モノカルボン酸化合物および式(3)で表されるPf基含有ジカルボン酸化合物を分離することを含む工程(A2)、および
上記工程(A2)における分離により得られるPf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、式(2)で表されるPf基含有モノカルボン酸化合物を含む混合物を得る工程(B2)を含む。
【0135】
工程(I−2)、および工程(A2)は、それぞれ、工程(I)および工程(A)の一態様である。組成物(a2)は、組成物(a)に対応する。
【0136】
組成物(a2)は、Pf基含有ジカルボン酸化合物のフッ素化処理を行う工程により得られたものであってもよい。該工程は、工程(Z1)と同様に行うことができる。
【0137】
工程(I−2)は、工程(I−1)と同様に行うことができる。組成物(a2)は、組成物(a1)と同意義である。
【0138】
工程(I−2)における分離は、カラムクロマトグラフィを用いることが好ましい。カラムクロマトグラフィの条件は、上記のとおりである。
【0139】
上記工程(A2)において得られる組成物の末端CF基率は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。上記末端CF基率は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましく、45%以下であることが特に好ましい。上記末端CF基率は、25%〜50%であることが好ましく、30%〜45%であることがより好ましい。
上記末端CF基率は、工程(A2)において得られる組成物において、該組成物に含まれる、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物の両末端に存在する末端基の合計モル数に対するCF基のモル数の割合を意味する。
【0140】
工程(A2)は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0141】
工程(B2)に供されるPf基含有ジカルボン酸化合物は、上記のように工程(A2)により分離されたものである。すなわち、上記「Pf基含有ジカルボン酸化合物」は、Pf基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物、例えば、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物として供され得る。この場合、モル比で、好ましくは、Pf基含有モノカルボン酸化合物:Pf基含有ジカルボン酸化合物=0:100〜10:90、より好ましくは0:100〜5:95、さらに好ましくは0:100〜2:98、特に好ましくは0:100〜1:99、より好ましくは0:100〜0.5:99.5、さらに好ましくは0:100〜0.1:99.9の範囲内にある。
上記Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物において、末端CF基率は、1%以上であってもよく、10%以上であってもよい。上記末端CF基率は、50%以下であってもよく、30%以下であってもよい。上記末端CF基率は、例えば1%〜40%であり、具体的には10%〜30%である。
上記末端CF基率は、上記Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物において、該混合物に含まれる、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物の両末端に存在する末端基の合計モル数に対するCF基のモル数の割合を意味する。
【0142】
上記工程(B2)におけるフッ素化処理は、工程(A1)におけるフッ素化処理と同様に行うことができる。
【0143】
工程(B2)におけるフッ素化処理により得られる混合物に含まれるPf基含有モノカルボン酸化合物は、該混合物に対して、モル比で10%以上であることが好ましく、20%以上であることが好ましく;70%以下であってもよく、60%以下であってもよく、50%以下であってもよく、45%以下であってもよい。Pf基含有モノカルボン酸化合物は、該混合物に対して、モル比で、20%〜50%の範囲にあってもよく、25%〜45%の範囲にあってもよい。
【0144】
工程(B2)は、さらに、フッ素化処理後のPf基含有ジカルボン酸化合物を含む混合物から、少なくともPf基含有モノカルボン酸化合物を、分離することをさらに含むことが好ましい。工程(B2)における分離は、工程(A1)における分離と同様に行うことができ、例えば、カラムクロマトグラフィを用いることができる。
【0145】
本態様においては、工程(B2)を行うことにより、Pf基含有モノカルボン酸化合物の収率がさらに向上し得る。
【0146】
本態様によると、Pf基含有モノカルボン酸化合物の収率は、工程(I−2)に供される組成物(a2)100質量部に対して、70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、85質量部以上であることが特に好ましい。
【0147】
(実施態様3)
図4に、本発明のPf基含有モノカルボン酸化合物を製造する方法の一態様を示す。図4において、エーテル基含有化合物、モノカルボン酸化合物、およびジカルボン酸化合物は、それぞれ、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を意味する。
【0148】
本態様は、工程(B3)の後、さらに工程(B3)において得られる混合物を、組成物(a3)の少なくとも一部として用いて、再利用することを特徴とする。工程(B3)、組成物(a3)は、それぞれ工程(B)、組成物(a)に対応する。
【0149】
具体的には、本態様のPf基含有モノカルボン酸化合物の製造方法は、
組成物(a3)を、分離する工程(I−3)、
上記分離により得られるPf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、少なくともPf基含有モノカルボン酸化合物とPf基含有ジカルボン酸化合物とを含む混合物を得、該混合物から、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物を、分離することを含む工程(A3)、
上記工程(A3)における分離で得られるPf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理して、Pf基含有モノカルボン酸化合物を含む混合物を得る工程(B3)、および
上記工程(B3)の後、さらに工程(B3)で得られる混合物を、組成物(a3)の少なくとも一部として用い、再度、前記組成物(a3)を用いて工程(I−3)、工程(A3)および工程(B3)を行うことを含む。すなわち、本態様においては、工程(B3)で得られるPf基含有ジカルボン酸化合物を、組成物(a3)の一部として再利用することができる。
【0150】
工程(I−3)、および工程(A3)は、それぞれ、工程(I)および工程(A)の一態様である。組成物(a3)は、組成物(a)に対応する。
【0151】
工程(I−3)、工程(A3)、および工程(B3)は、それぞれ、工程(I−1)、工程(A1)、および工程(B2)と同様に行うことができる。組成物(a3)は、組成物(a1)と同意義である。
【0152】
工程(I−3)、工程(A3)における分離は、カラムクロマトグラフィを用いて行うことが好ましい。
【0153】
本態様においては、工程(B3)で得られる混合物を含む組成物(a3)を用いる工程(I−3)、工程(A3)および工程(B3)のサイクルを複数回行うことが好ましい。
【0154】
本態様によると、Pf基含有ジカルボン酸を再利用してPf基含有モノカルボン酸を得ることから、Pf基含有モノカルボン酸化合物の収率を向上し得る。
【0155】
組成物(a3)は、Pf基含有ジカルボン酸化合物のフッ素化処理により得られる組成物であってもよい。すなわち、本態様の方法は、Pf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、組成物(a3)を得る工程をさらに含んでいてもよい。この工程は、工程(Z1)と同様に行うことができる。
【0156】
(実施態様4)
図5に、本発明のPf基含有モノカルボン酸化合物を製造する方法の一態様を示す。図5において、エーテル基含有化合物、モノカルボン酸化合物、およびジカルボン酸化合物は、それぞれ、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を意味する。
【0157】
本態様は、Pf基含有ジカルボン酸化合物を、工程(Z4)おける組成物(a4)を形成するための原料であるPf基含有ジカルボン酸化合物の少なくとも一部として、再利用することを特徴とする。工程(Z4)は、工程(Z)の一態様である。組成物(a4)は、組成物(a)に対応する。
【0158】
具体的には、本態様のPf基含有モノカルボン酸化合物の製造方法は、
Pf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、組成物(a4)を得る工程(Z4)、
上記組成物(a4)を分離する工程(I−4)、
Pf基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、少なくともPf基含有モノカルボン酸化合物とPf基含有ジカルボン酸化合物とを含む混合物を得、該混合物から、少なくともPf基含有モノカルボン酸化合物とPf基含有ジカルボン酸化合物とを、分離することを含む工程(A4)、および
上記工程(A4)で分離されたPf基含有ジカルボン酸化合物を、工程(Z4)における組成物(a4)を形成するための原料であるPf基含有ジカルボン酸化合物の少なくとも一部として用い、再度工程(Z4)、工程(I−4)、および工程(A4)を行うことを含む。
【0159】
工程(I−4)、および工程(A4)は、それぞれ、工程(I)および工程(A)の一態様である。組成物(a4)は、組成物(a)に対応する。
【0160】
工程(Z4)、工程(I−4)、および工程(A4)は、それぞれ、工程(Z1)、工程(I−1)、および工程(A1)と同様に行うことができる。
【0161】
組成物(a4)は、少なくともPf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を含む。
【0162】
上記組成物(a4)の末端CF基率は、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。上記末端CF基率は、80%以下であってもよい。上記末端CF基率は、組成物(a4)において、該組成物(a4)に含まれる、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物およびPf基含有ジカルボン酸化合物の両末端に存在する末端基の合計モル数に対するCF基のモル数の割合を意味する。上記末端基としては、−CF、−COOF、−COF、−COOH等を挙げることができる。上記末端CF基率は、19F−NMRを用いて測定できる。
【0163】
上記組成物(a4)の末端CF基率は、20%〜80%の範囲にあることが好ましく、40%〜60%の範囲にあることがより好ましい。
【0164】
組成物(a4)は、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物の合計100質量部に対して、Pf基含有モノカルボン酸化合物を、30〜70質量部含むことが好ましく、40〜60質量部含むことがより好ましい。
【0165】
組成物(a4)は、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物の合計100質量部に対して、Pf基含有ジカルボン酸化合物を、10〜50質量部含むことが好ましく、15〜45質量部含むことがより好ましい。
【0166】
組成物(a4)は、Pf基含有化合物、Pf基含有モノカルボン酸化合物、およびPf基含有ジカルボン酸化合物の合計100質量部に対して、Pf基含有化合物を、10〜40質量部、Pf基含有モノカルボン酸化合物を、30〜70質量部、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を、10〜50質量部含むことが好ましく;Pf基含有化合物を、10〜40質量部、Pf基含有モノカルボン酸化合物を、40〜60質量部、およびPf基含有ジカルボン酸化合物を、15〜45質量部含むことがより好ましい。
【0167】
組成物(a4)に含まれるPf基含有モノカルボン酸化合物の数平均分子量は、500〜30,000の範囲にあることが好ましく、1,000〜20,000の範囲にあることがより好ましく、1,500〜15,000の範囲にあることがさらに好ましく、1,000〜10,000の範囲にあることが特に好ましく、3,000〜5,000の範囲にあることがより好ましい。本明細書において、数平均分子量は19F NMRにより測定された値とする。
【0168】
組成物(a4)に含まれるPf基含有モノカルボン酸化合物の分子量分布は、2.0以下にあることが好ましく、1.5以下にあることがより好ましく、1.3以下にあることがさらに好ましい。本明細書において、分子量分布は、重量平均分子量/数平均分子量で表されるものであり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した値を用いて計算したものである。
【0169】
工程(I−4)、および工程(A4)における分離は、カラムクロマトグラフィを用いて行うことが好ましい。
【0170】
本態様においては、工程(Z4)、工程(I−4)および工程(A4)のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0171】
本態様によると、Pf基含有ジカルボン酸を再利用してPf基含有モノカルボン酸を得ることができることから、Pf基含有モノカルボン酸化合物の収率を向上し得る。
【実施例】
【0172】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。なお、本実施例において、(ポリ)エーテルを構成する繰り返し単位(CFO)、(CFCFO)、(CF(CF)CFO)、(CFCFCFO)、(CFCF(CF)O)および(CFCFCFCFO)の存在順序は任意である。また、以下に示される化学式はすべて平均組成を示す。
【0173】
(分子量の測定方法)
数平均分子量は、19F NMRを用いて測定した。
【0174】
(分子量分布の測定方法)
以下の条件で、GPCを用いて分子量分布を求めた。
装置:GPCmax(HPLCシステム)および、TDA−302(Malvern Instruments社製)
カラム:Shodex GPC KF-806L×3(昭和電工製)
検出装置:RI 示差屈折計
流量:0.75mL/min
測定温度:30℃
【0175】
(末端CF基率の測定方法)
末端CF基率は、19F−NMRを用いて求めた。具体的には、式(1)で表されるPf基含有化合物、式(2)で表されるPf基含有モノカルボン酸化合物、および式(3)で表されるPf基含有ジカルボン酸化合物の末端基の全モル数に対する、末端のCF基のモル数の割合を求めた。

【化11】
【化12】
【化13】
【0176】
(実施例1)
(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物(D1)を120℃でフッ素化処理し、フッ素化処理後のサンプルの末端CF基率が19F−NMRにて50%になるように調製した。
【0177】
得られたフッ素化処理後のサンプルを、シリカゲルクロマトグラフィを用いて以下のとおり処理した。
14cm径のカラムに1500gのシリカゲル(PSQ100B;富士シリシア化学製:平均粒径:100μm、極性固定相)を入れ、HFE7200を通した。さらに500gのフッ素化処理後のサンプルを入れ、以下のように、3種類の溶媒を順次流通させ、留分を回収することにより、(ポリ)エーテル化合物、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を含むフッ素化処理後のサンプルを精製した。なお、上記(ポリ)エーテル基を含有する化合物は、(ポリ)エーテル化合物、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物の順にシリカゲルから分離されやすい。
【0178】
上記3種類の溶媒は、HFE7200(Novec(商標)7200;ハイドロフルオロエーテル C4F9OC2H5):8755g、HFE7200:5FP(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール)=9:1(体積基準):8000g、HFE7200:5FP=1:1(体積基準):8000gである。留分は、カラムの出口から留出した溶液を30分画に分けて回収した。得られた留分を、分画毎にロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、残った液体を19F−NMRを用いて測定し、各留分における(ポリ)エーテル基を有する化合物の種類、含有量、分子量の情報を得た。
【0179】
(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の含有率が90%以上になるように、分画および留去後に残った液体を混合し、調製した。調製後に得られた液体(混合物1)は、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を90%含み、残りは(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物であった。混合物1に含まれる(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の分子量は4370、該化合物の分子量分布は1.15であった。なお、D1に対する、混合物1に含まれる(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の収率は、40%であった(モル比)。
【0180】
上記分画以降に得られた混合物は、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物および(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を含み、該混合物中に含まれる(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の分子量は3840、該化合物の分子量分布は1.12であった。この混合物の末端CF基率は25%であった。
この混合物を120℃でフッ素化処理し、混合物に含まれる末端CF基率が19F−NMRにて50%になるように調製した。その後、上記と同様にカラムクロマトグラフィを用いて分離した。分離後に得られた混合物(混合物2)は、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を90%含み、残りは(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物であった。混合物に含まれる(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の分子量は4257、該化合物の分子量分布は1.12であった。なお、D1に対する、混合物2に含まれる(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物の収率は、40%であった(モル比)。
【0181】
本発明の開示は以下の態様を含む。
[1] 少なくとも下記式(1)で表される(ポリ)エーテル基含有化合物、下記式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物、および、下記式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を含む組成物(a)を、分離する工程(I)、および
上記分離により得られる式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を含む混合物を得る工程(A)、
を含む、(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を製造する方法。
【化14】
【化15】
【化16】
[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、RO−CO−W−基、RO−CO−W−O−基、HO−W−基、HO−W−O−基、RO−W−基、RO−W−O−基、V−基、またはV−O−基を表し;
は、各出現においてそれぞれ独立して、アルキル基を表し;
Wは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Vは、各出現においてそれぞれ独立して、炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、Y−X−、またはY−X−O−を表し;
Yは、カルボン酸基を表し;
Xは、各出現においてそれぞれ独立して、結合手または2価の有機基を表し;
Pfは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
−(OC12−(OC10−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、Xは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)
で表される基である。]
[2] 上記工程(I)の前に、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、組成物(a)を得る工程(Z)をさらに含む、[1]に記載の方法。
[3] 工程(A)が、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理して得られた混合物から、少なくとも式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を分離することをさらに含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 工程(A)が、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、少なくとも式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物と式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物とを含む混合物を得、該混合物から、式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物および式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を、分離することを含み、
上記分離により得られる(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物を含む混合物を得る工程(B)をさらに含む、[1]または[2]に記載の方法。
[5] 工程(B)の後、さらに工程(B)で得られる混合物を、組成物(a)の少なくとも一部として用い、再度、前記組成物(a)を用いて工程(I)、工程(A)および工程(B)を行うことを含む、[4]に記載の方法。
[6] 前記工程(B)で得られる混合物を含む組成物(a)を用いる工程(I)、工程(A)および工程(B)のサイクルを複数回繰り返すことを含む、[5]に記載の方法。
[7] 工程(A)が、(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物をフッ素化処理し、少なくとも式(2)で表される(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物と式(3)で表される(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物とを含む混合物を得、該混合物から、少なくとも(ポリ)エーテル基含有モノカルボン酸化合物と(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物とを、分離することを含み、
工程(A)で分離された(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物を、工程(Z)における組成物(a)を形成するための原料である(ポリ)エーテル基含有ジカルボン酸化合物の少なくとも一部として用い、再度、工程(Z)、工程(I)、および工程(A)を行うことを含む、[2]〜[6]のいずれか1に記載の方法。
[8] 前記工程(Z)、工程(I)および工程(A)のサイクルを複数回繰り返すことを含む、[7]に記載の方法。
[9] Xが、フッ素原子である、[1]〜[8]のいずれか1に記載の方法。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明によって、Pf基含有モノカルボン酸化合物の収率を比較的容易に向上し得る。本発明の方法は、Pf基含有モノカルボン酸化合物の製造コストの低減などに寄与し得る。上記Pf基含有モノカルボン酸化合物は、自動車、航空機、半導体、宇宙分野などの多くの分野において使用し得る化合物である。
図1
図2
図3
図4
図5