特開2019-143174(P2019-143174A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-143174(P2019-143174A)
(43)【公開日】2019年8月29日
(54)【発明の名称】ガイドローラ装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/06 20060101AFI20190802BHJP
   C25D 19/00 20060101ALI20190802BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   C25D7/06 E
   C25D19/00 A
   C25D7/06 L
   C25D17/00 G
   C25D7/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-26025(P2018-26025)
(22)【出願日】2018年2月16日
(71)【出願人】
【識別番号】508171228
【氏名又は名称】株式会社エリアデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 美智雄
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024BC01
4K024EA01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、メッキ槽、洗浄槽などのディップ槽からの液漏れ量を最小限にし、ワークをガイドするローラによるワークに傷がつくのを防止することのできるガイドローラ装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、メッキ槽、洗浄槽のようなディップ槽1に、ワーク送入スリット部2と、ワーク送出スリット部3を形成すると共に、ワーク送入スリット部2及びワーク送出スリット部3の外側に一対のワークガイドローラ$、5,6,7をそれぞれ設けたことを特徴とするメッキ装置において、前記一対のワークガイドローラ4,5,6,7の回転速度を、前記ワーク10の搬送速度Tsに対応させること、且つ、前記一対のワークガイドローラ4,5,6,7と前記ワーク10との間に所定のクリアランス40を設けたことにある。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ槽、洗浄槽のようなディップ槽に、ワーク送入スリット部と、ワーク送出スリット部を形成すると共に、ワーク送入スリット部及びワーク送出スリット部の外側に一対のワークガイドローラをそれぞれ設けたことを特徴とするメッキ装置において、
前記一対のワークガイドローラの回転速度を、前記ワークの搬送速度に対応させること、且つ、
前記一対のワークガイドローラと前記ワークとの間に所定のクリアランスを設けることを特徴とするガイドローラ装置。
【請求項2】
前記ワークガイドローラの回転速度は、ワークガイドローラの外周の周速が、前記ワークの搬送速度を一致するように設定されることを特徴とする請求項1記載のガイドローラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ槽内を垂直に保持されて移動する長尺ワークのメッキを行う垂直搬送型メッキ装置において、メッキ槽内を移動する長尺ワークを垂直に保持移動させるためのガイドローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2003−105597号公報)は、高濃度のビスマスを含有するメッキ液のビスマスを有効に使用して安定したビスマス濃度の錫−ビスマス合金メッキを施すことができ、さらに、槍状析出物の生成を抑えることを目的としたメッキ装置を開示する。この特許文献1で開示されるメッキ槽では、メッキ槽の長手方向両側の壁には、それぞれスリット部が設けられており、被メッキ体が、このメッキ槽の一方の壁に設けられたスリット部からメッキ槽内の幅方向略中央を長手方向にわたって搬送され、他方の壁に設けられたスリット部を介してメッキ槽の外側に搬送されるようになっている。また、引用文献1に開示される錫−ビスマス合金メッキ装置では、陰極(カソード)は、被メッキ体上に設けられた配線パターンなどの被メッキ部であり、この被メッキ部は、メッキ槽の外側に設けられたロール状のコンタクトロールを介して電源にそれぞれ接続されているものである。
【0003】
特許文献2(特開2007−119832号公報)は、内槽からの処理液の流出があっても、フープ材の送行速度を速くすることができ、メッキ処理槽の外部へ処理液の持ち出しが生じないメッキ処理槽及びメッキ処理装置を提供するものである。このメッキ処理槽は、所定のメッキ液が内部に満たされており、平面形状が方形であって、側壁にフープ材を送入する第一スリット部とフープ材を送出する第二スリット部を設けた内槽と、内部に前記内槽を備えており、平面形状が方形であって、側壁にフープ材を送入する第一スリット部とフープ材を送出する第二スリット部とを設けた外槽からなり、前記外槽の第二スリット部は、前記内槽の第二スリット部から前記フープ材を送出する方法の位置以外の位置に設けられており、前記外槽の内部であって前記内槽の第二スリット部近傍位置には、フープ材の送行方向を変更する少なくとも1つの走行方向転換用ローラを備えたことを特徴とするものである。また、内槽の第1スリット部と第二スリット部には、それぞれローラがガイドとして備えられていることが開示される。
【0004】
特許文献3(特開2017−160503号公報)は、メッキ液中において被メッキ材を搬送しながら行う電解メッキにおいて、特に被メッキ材の電気抵抗が大きい場合においても、好適な電解メッキを施すことができるメッキ装置及びメッキ方法並びに導電性パターンの製造方法を提供するものである。特許文献3に開示されるメッキ槽内は、メッキ液によって満たされており、このメッキ槽の一方の側面部には、長尺シートを導入するための導入孔が設けられており、さらにこの導入孔は、互いに平行に付き合わされた一対の入口シールロールにより閉蓋されており、メッキ槽内のメッキ液が漏出しないようになっているものである。また、長尺シートは、回転可能に支持された入口シールロールに挟まれて、これら入口シールロールを回転させながらメッキ槽内に導入されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−105597号公報
【特許文献2】特開2007−119832号公報
【特許文献3】特開2017−160503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、メッキ槽内において長尺ワークを移動させるために、メッキ槽の壁には、長尺ワークを送入するためのスリットが形成され、このスリットからメッキ液が漏洩するものであるが、この漏洩量に対応してスリットと長尺ワークとの間のクリアランスを設定することが知られている。また、特許文献2及び3に開示されているように、液のこぼれを軽減化するためのローラが、ワークの搬送方向入口側及び出口側に設けられるが、入口側は、搬送方向と漏出時の液の流れによる力とが逆行することになるため、ローラの回転速度とワックの搬送速度に差が生じるため、ワークとローラとの摩擦によって、ワークが柔らかい場合にはワークの表面に傷が付くという不具合が生じる。
【0007】
また、上述した不具合を解消するために、ローラ間の隙間を広くした場合には、メッキ液の漏洩量が多くなり、メッキ液を追加もしくは循環させる供給ポンプに負担を与えるという不具合が生じ、また、ローラを弾性材料によって形成し、クリアランスを0にした場合には、漏洩量は減少するものの、ローラにかかる力がワークの移動方向とメッキ液の漏洩方向とが逆方向となるため、ローラの回転が円滑でなくなることから、ワークの継ぎ目に引っかかるという不具合が生じ、またワークを2本のローラが挟み込んでしまうことから、ワークを蛇行させる要因となり、これによって搬送高さが変化するという不具合が生じる。
【0008】
さらに最近では、ワーク自体がより薄く且つ柔らかくデリケートになっており、さらにワーク巾も徐々に大きくなってきているため、メッキ液の漏洩量が増大したり、ローラの回転不具合が多発したりという不具合が生じている。さらにワークをクリップ搬送する場合には、ワーク下側がついてくることができず折れシワが生じるとする不具合が生じることがある。
【0009】
このため、本発明は、メッキ槽、洗浄槽などのディップ槽からの液漏れ量を最小限にし、ワークをガイドするローラによるワークに傷がつくのを防止することのできるガイドローラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、メッキ槽、洗浄槽のようなディップ槽に、ワーク送入スリット部と、ワーク送出スリット部を形成すると共に、ワーク送入スリット部及びワーク送出スリット部の外側に一対のワークガイドローラをそれぞれ設けたことを特徴とするメッキ装置において、前記一対のワークガイドローラの回転速度を、前記ワークの搬送速度に対応させること、且つ、前記一対のワークガイドローラと前記ワークとの間に所定のクリアランスを設けることにある。尚、前記ワークガイドローラは、例えばモータによって回転されると共に、前記モータはコントロールユニットによってワークの搬送速度やディップ槽からの液の漏洩量、ワークガイドローラとワークとの間のスリップ量等のパラメータに基づいて制御されることが望ましい。
【0011】
また、前記ワークガイドローラの回転速度は、ワークガイドローラの外周の周速が、前記ワークの搬送速度を一致するように設定されることが好ましいものである。
【0012】
このように、ワークは、ディップ槽に形成されたワーク送入スリット部を通過してディップ槽内に送入され、ディップ槽内で処理された後、ワーク送出スリット部を通過したディップ槽外に送出されて次の工程に移動するが、ワーク送入スリット部の上流側に配置された一対のワークガイドローラは、ワークの搬送速度に対応した回転速度で回転し、ワークガイドローラの外周の周速がワークの搬送速度を一致するようにしたことから、ワークガイドローラとワークとの間に流入する漏洩液による逆方向への力を強制的に相殺することができると共に、これによって例えワークがローラに接触した場合でも、両者の移動速度が一致するために、ワークへの傷の発生を防止できるものである。さらに、これによって、ワーク送入スリット部及びワーク送出スリット部からの液漏れ量も抑制できるものである。
【0013】
また、ワーク送出スリット部の下流側に配された一対のワークガイドローラは、ワークの搬送速度に対応した回転速度で回転し、ワークガイドローラの外周の周速がワークの搬送速度を一致するようにしたことから、ディップ槽から流出する液体によってワークに搬送方向への力がかかったとしても、ワークガイドローラによってワークの搬送速度が一定に保たれるもので、このワーク送出スリット部の下流側に配された一対のワークガイドローラにおいても、ワークがローラに接触した場合でも、両者の移動速度が一致するために、ワークへ傷がつくことを防止できるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワークガイドローラの外周の周速を、ワークの搬送速度を一致させるように、ワークガイドローラを強制的に回転させるようにしたことから、ディップ槽から漏洩する液体によってワークにかかる力による影響を抑制できると共に、これによって生じるワークへの傷の発生を防止できるものである。さらに、これによって、ワークを送入/送出するためのスリット部からの液漏れ量も抑制できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るガイドローラ装置を配したメッキ装置の一部を示した説明断面図であり、(a)はそれぞれのワークガイドローラをそれぞれに対応する電動モータで駆動する例を示し、(b)は対応するワークガイドローラを連結して1つの電動モータで駆動する例を示したものである。
図2】本発明に係るガイドローラ装置を配したメッキ装置の一部を示した説明側面図である。
図3】本発明に係るガイドローラ装置を配したメッキ装置の一部を示した説明平面図である。
図4】本発明に係るガイドローラ装置の上流側ワークガイドローラ部を示した説明図である。
図5】本発明に係るガイドローラ装置の下流側ワークガイドローラ部を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について、図面により説明する。
【実施例】
【0017】
本発明に係るメッキ装置は、例えば図1乃至図3にしめすようなメッキ槽、洗浄槽のようなディップ槽1に、ワーク送入スリット部2と、ワーク送出スリット部3が形成されており、ワーク送入スリット部2の上流側には上流側ワークガイドローラ4,5が、ワーク送出スリット部3の下流側には下流側ワークガイドローラ6,7が設けられる。これによって、図示しない搬送機構によって垂直に保持され所定の搬送速度Tsで搬送されるワーク10は、ワーク送入スリット部2からディップ槽1内に送入され、メッキもしくは洗浄などの処理をした後、ワーク送出スリット部3から次なる工程へ搬送される。
【0018】
また、図1(a)に示されるメッキ装置では、前記ワークガイドローラ4,5,6,7は、それぞれ電動モータ8と伝達機構9に介して連結され駆動回転される。また、図1(b)に示されるメッキ装置では、前記ワークガイドローラ4,6は、片側に配置された1つの電動モータ8と伝達機構9によって回転し、ワークガイドローラ4,6に対応するワークガイドローラ5,7は、連結歯車9aによって連動して駆動回転される。さらに、電動モータ8は図示しないコントロールユニットによって制御される。このコントロールユニットは、前記ワーク10の搬送速度Tsに基づいて、前記ワークガイドローラ4,5,6,7の回転速度Rsを設定するもので、特にワークガイドローラ4,5,6,7の外周の周速を前記ワーク10の搬送速度Tsと同一とするように設定するものである。尚、図1(a)で示すように、ワークガイドローラ4,5,6,7をそれぞれの電動モータ8で駆動する場合には、ワークガイドローラの上流側及び下流側のバランス、左右のワークガイドローラのバランスを独立して制御調整することが可能となる。また、図1(b)で示すように、左右のワークガイドローラを連結歯車9aによって連動させる場合には、ワークガイドローラの上流側及び下流側のバランスを独立して調整できると共に、電動モータ8の数を減少させることができるものである。
【0019】
尚、前記ワークガイドローラ4,5,6,7、前記伝達機構9、前記電動モータ8及びコントロールユニットによってガイドローラ装置が構成され、特に上流側ガイドローラ4,5、伝達機構9、前記電動モータ8及びコントロールユニットによって上流側ガイドローラ装置20が構成され、下流側ガイドローラ6,7、伝達機構9、前記電動モータ8及びコントロールユニットによって下流側ガイドローラ装置30が構成される。また、上流側ワークガイドローラ4,5の間の間隔D及び下流側ワークガイドローラ6,7の間の間隔Dは、ワーク10の厚さWよりも若干大きく形成される(D>W)。前記ワークガイドローラ4,5もしくはワークガイドローラ6,7とワーク10との間のクリアランス40は、この実施例では0.4〜1.0mmの範囲内であることが好ましく、特に0.5mmであることが好ましい。
【0020】
以上の構成により、本発明によれば、前記上流側ガイドローラ装置20において、図4に示すように、ワーク送入スリット部2を通過するワーク10には、ディップ槽1内のメッキ液もしくは洗浄水等の液体が漏洩するときに生じる付勢力が搬送方向と逆方向にかかり、さらに上流側ワークガイドローラ4,5とワーク10との間のクリアランス40にも同様に漏洩した液体によってワーク10の搬送方向とは逆方向に力が与えられる。しかしながら、上流側ワークガイドローラ4,5のワーク10側の周面が前記搬送速度Tsと一致する周速で搬送方向に移動するように所定の回転速度で回転することから、ワーク10は漏洩した液体による付勢力の存在にもかかわらず所望の搬送速度Tsを維持することができるものである。
【0021】
また、ワーク10の搬送速度Tsと上流側ワークガイドローラ4,5の外周の周速を一致させたことによって、ワーク10が例えば振動によって上流側ワークガイドローラ4,5のいずれかもしくは両方に接触した場合にも、ワーク10への傷の発生を防止できるという効果を有すると共に、ワーク送入スリット部2からの液漏れ量を抑制できるものである。
【0022】
さらに、下流側ガイドローラ装置30において、図5に示すように、ワーク送出スリット部3を通過するワーク10には、ディップ槽1内のメッキ液もしくは洗浄水等の液体が漏洩するときに生じる付勢力が搬送方向にかかり、さらに下流側ワークガイドローラ6,7とワーク10との間のクリアランス40にも同様に漏洩した液体によってワーク10の搬送方向に力が与えられる。このように、下流側ガイドローラ装置30では、ワーク10には漏洩する液体によって搬送速度Tsを上昇させる方向に力が加わるが、下流側ワークガイドローラ6,7が、ワーク10の搬送速度Tsに対応した所定の回転速度で回転するため、ワーク送出スリット部3から漏洩する液体を、ワーク送出スリット部3と下流側ワークガイドローラ6,7の間の空間に閉じ込めるため、ワーク10の搬送速度Tsの上昇を抑えられるものである。
【0023】
また、ワーク10の搬送速度Tsと下流側ワークガイドローラ6,7の外周の周速を一致させたことによって、ワーク10が例えば振動によって下流側ワークガイドローラ6,7のいずれかもしくは両方に接触した場合にも、ワーク10への傷の発生を防止できるという効果を有すると共に、ワーク送出スリット部3からの液漏れ量も抑制できるものである。
【0024】
尚、上述した実施例では、ワークガイドローラ4,5,6,7のそれぞれに電動モータ8及び伝達機構9からなる駆動機構を設けたものであるが、対応するワークガイドローラの一方に駆動機構を設け、他方をフリーにして対応することも可能である。また、上流側ガイドローラ装置20及び下流側ガイドローラ装置30の一方に起動機構を設け、他方をフリーにすることも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ディップ槽
2 ワーク送入スリット部
3 ワーク送出スリット部
4,5 上流側ワークガイドローラ
6,7 下流側ワークガイドローラ
8 電動モータ
9 伝達機構
10 ワーク
20 上流側ガイドローラ装置
30 下流側ガイドローラ装置
40 クリアランス
50 空間
図1
図2
図3
図4
図5