特開2019-143259(P2019-143259A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2019143259-膨張性シート 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-143259(P2019-143259A)
(43)【公開日】2019年8月29日
(54)【発明の名称】膨張性シート
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/79 20060101AFI20190802BHJP
   D01F 9/08 20060101ALN20190802BHJP
【FI】
   D06M11/79
   D01F9/08 B
   D01F9/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-27857(P2018-27857)
(22)【出願日】2018年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和久
【テーマコード(参考)】
4L031
4L037
【Fターム(参考)】
4L031AA24
4L031AB34
4L031BA19
4L037CS19
4L037CS20
4L037FA17
(57)【要約】
【課題】使用後の保形性が良好な膨張性シートを提供する。
【解決手段】膨張性バーミキュライトと無機繊維を含む膨張性シートにおいて、前記無機繊維が、シリカの含有量が70重量%以上である、第1の無機繊維と、平均繊維径が3.0μm以下である、シリカの含有量が60重量%以下である、第2の無機繊維とを含む膨張性シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張性バーミキュライトと無機繊維を含む膨張性シートにおいて、
前記無機繊維が、
シリカの含有量が70重量%以上である、第1の無機繊維と、
平均繊維径が3.0μm以下である、シリカの含有量が60重量%以下である、第2の無機繊維と、
を含む、膨張性シート。
【請求項2】
前記第1の無機繊維が、カルシア及びマグネシアから選択される1以上の金属酸化物を、15〜30重量%含む、請求項1に記載の膨張性シート。
【請求項3】
前記第2の無機繊維が、カルシア及びマグネシアから選択される1以上の金属酸化物を、25〜60重量%含む、請求項1又は2に記載の膨張性シート。
【請求項4】
前記第2の無機繊維が、ロックウールである、請求項1〜3のいずれかに記載の膨張性シート。
【請求項5】
前記第1の無機繊維と前記第2の無機繊維の重量の比率が以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の膨張性シート。
第1の無機繊維:第2の無機繊維=85:15〜55:45
【請求項6】
前記第1の無機繊維と前記第2の無機繊維の重量の比率が以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の膨張性シート。
第1の無機繊維:第2の無機繊維=75:25〜60:40
【請求項7】
前記第1の無機繊維の平均繊維径が3.0μm超8.0μm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の膨張性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱炉、内燃機関、燃焼器具等には、部材間の隙間や目地を塞ぐシール材として、バーミキュライトと無機繊維を含む膨張性シートが使用されている(特許文献1,2)。膨張性シートは、2つの部材間に挟んで設置し、加熱して膨張したときに厚みが増して部材間に密に装着される。
【0003】
このような膨張性シートには、無機繊維として耐熱性セラミック繊維(RCF)が使用されている。耐熱性セラミック繊維は通常シリカを40〜60重量%、アルミナを30〜60重量%含む無機繊維であり、耐熱性がアスベストより高く、健康上の問題はアスベストより低いと考えられているが、依然発がん性が疑われている。そこで、人体に吸入されても問題を起こさない又は起こし難い生体溶解性無機繊維に置き換えることが求められている。生体溶解性無機繊維として、ロックウールやアルカリアースシリケート(AES)ウールが知られている。一般的にアルカリアースシリケートウールは、シリカとマグネシア及び/又はカルシアを含む無機繊維であり、通常マグネシアとカルシアを合わせて15〜50重量%、シリカを50〜82重量%含む。
【0004】
AESウールは、一般に耐熱性や耐アルミナ反応性がRCFより劣る。生体溶解性を有しながら、RCFに匹敵する耐熱性及び耐アルミナ反応性を有する無機繊維が研究され開発されている(例えば特許文献3〜5)。これらのAESウールはシリカの含有量が70重量%以上と高く、従来のAESウールに比べ耐熱性が高く、耐熱温度がRCFと同様の1300℃まで達するものもある。
【0005】
しかしながら、無機繊維としてシリカの含有量が70重量%以上のAESウールを用いた膨張性シートは、使用後に新たなものと交換しようとするとき、形状が脆くて崩れ交換の作業性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−104769号公報
【特許文献2】特開昭59−21565号公報
【特許文献3】特表2005−515307号公報
【特許文献4】特表2005−514318号公報
【特許文献5】特開2016−37427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、使用後の保形性が良好な膨張性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
シリカを70重量%以上含む無機繊維は、製造の際、原料溶融液の粘度が高いため硬化時間が速く繊維径が太くなる。太い繊維を膨張性シートに使用すると、膨張性シートに含まれる繊維本数は少なくなる。本発明者らは、膨張性シートの形状が崩れる原因を、膨張性シートに含まれる繊維の数が少なく、繊維同士の接点数が減少して補強効果が弱くなると推察した。そして、膨張性シートに、繊維径の小さい無機繊維を混入することにより形状が維持できることを見い出し本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下の膨張性シートが提供される。
1.膨張性バーミキュライトと無機繊維を含む膨張性シートにおいて、
前記無機繊維が、
シリカの含有量が70重量%以上である、第1の無機繊維と、
平均繊維径が3.0μm以下である、シリカの含有量が60重量%以下である、第2の無機繊維と、
を含む、膨張性シート。
2.前記第1の無機繊維が、カルシア及びマグネシアから選択される1以上の金属酸化物を、15〜30重量%含む、1に記載の膨張性シート。
3.前記第2の無機繊維が、カルシア及びマグネシアから選択される1以上の金属酸化物を、25〜60重量%含む、1又は2に記載の膨張性シート。
4.前記第2の無機繊維が、ロックウールである、1〜3のいずれかに記載の膨張性シート。
5.前記第1の無機繊維と前記第2の無機繊維の重量の比率が以下である、1〜4のいずれかに記載の膨張性シート。
第1の無機繊維:第2の無機繊維=85:15〜55:45
6.前記第1の無機繊維と前記第2の無機繊維の重量の比率が以下である、1〜5のいずれかに記載の膨張性シート。
第1の無機繊維:第2の無機繊維=75:25〜60:40
7.前記第1の無機繊維の平均繊維径が3.0μm超8.0μm以下である、1〜6のいずれかに記載の膨張性シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用後の保形性が良好な膨張性シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実験例における圧縮加熱試験を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の膨張性シートは、膨張性バーミキュライトと無機繊維を含む。
無機繊維は、好ましくは生体溶解性繊維である。また、無機繊維は、好ましくはカルシア及びマグネシアから選択される1以上の金属酸化物と、シリカを含む無機繊維である。このような無機繊維は、2種以上の無機繊維を混合して用いることができる。
【0013】
さらに、無機繊維は、好ましくは、シリカの含有量が70重量%以上である第1の無機繊維と、シリカの含有量が60重量%以下である第2の無機繊維との混合である。
【0014】
第1の無機繊維は、好ましくはカルシア及びマグネシアから選択される1以上の金属酸化物と、シリカを含み、例えば、金属酸化物を15〜30重量%、シリカを70〜82重量%含む。
【0015】
第2の無機繊維は、好ましくはカルシア及びマグネシアから選択される1以上の金属酸化物と、シリカを含み、例えば、金属酸化物を25〜60重量%、シリカを30〜60重量%含む。また、第2の無機繊維は好ましくはロックウールである。
第2の無機繊維は、シリカの含有量が少ないため、工業的な製造方法において細い平均繊維径の繊維が得られる。
【0016】
第1及び第2の無機繊維は、シリカ、カルシア、マグネシア以外に他の酸化物を含むことができる。
第1の無機繊維も第2の無機繊維も、単一の種類の無機繊維でもよく、異なる種類の無機繊維の混合でもよい。
【0017】
第1の無機繊維は、好ましくは以下の成分を以下の含有量で含む。
SiO:70重量%〜82重量%
MgO及びCaOから選択される1以上:15重量%〜30重量%
Al、TiO及びZrOから選択される1以上:0重量%〜6重量%
【0018】
第1の無機繊維のSiOの含量は、好ましくは72重量%〜81重量%、より好ましくは73重量%〜80重量%、さらに好ましくは75重量%〜80重量%である。
第1の無機繊維のMgO及びCaOから選択される1以上の金属酸化物の含量は、好ましくは18重量%〜29重量%、より好ましくは19重量%〜28重量%である。
第1の無機繊維のAl、TiO及びZrOから選択される1以上の金属酸化物の含量は、好ましくは0重量%〜4重量%であり、例えば0重量%〜3重量%又は1重量%〜2重量%とできる。
【0019】
第1の無機繊維は、以下の成分を以下の含有量で含むことができる。
SiO 70重量%〜82重量%
CaO 0.5重量%〜9重量%
MgO 10重量%〜29.5重量%
Al 0重量%〜3重量%
【0020】
また、第1の無機繊維は、以下の成分を以下の含有量で含むことができる。
SiO 70重量%〜82重量%
CaO 15重量%〜30重量%
MgO 0重量%〜3重量%
Al 0重量%〜5重量%
【0021】
また、第1の無機繊維は、以下の成分を以下の含有量で含むことができる。この繊維は、耐熱性、耐アルミナ反応性、生体溶解性に優れる。
SiO:72重量%〜82重量%
MgO:8重量%〜22重量%
CaO:4重量%〜14重量%
Al:0重量%〜3重量%
SiO、MgO及びCaOの3成分を主成分とする。
主成分とは、無機繊維が含む全ての成分のうち最も含有量(重量%)の高い3成分(1番含有量が高い成分、2番目に含有量が高い成分、及び3番目に含有量が高い成分の3成分)がSiO、MgO及びCaOであることを意味する。
【0022】
また、第1の無機繊維は、以下の成分を以下の含有量で含むことができる。この繊維は、耐熱性、耐アルミナ反応性、生体溶解性に優れる。
SiO:73.6重量%〜82重量%
MgO:9.0重量%〜21.3重量%
CaO:5.1重量%〜12.4重量%
Al:0重量%以上2.3重量%未満
Fe:0重量%〜0.50重量%
SiO、MgO及びCaOの3成分を主成分とする。
【0023】
第1の無機繊維は、MgO及びCaOから選択される1以上とシリカを、好ましくは90重量%以上含み、例えば95重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、又は99重量%以上含むことができる。
【0024】
第2の無機繊維のSiOの含量は、60重量%以下であり、例えば55重量%以下又は50重量%以下とできる。
第2の無機繊維のMgO及びCaOから選択される1以上の金属酸化物を含むことができる。金属酸化物の含量は、例えば、25〜60重量%、30〜55重量%、又は30〜50重量%とできる。
【0025】
第2の無機繊維としてロックウールを用いることができる。
【0026】
第2の無機繊維は、例えば、以下の成分を以下の含有量で含む。
SiO 25〜55重量%
CaO 20〜50重量%
MgO 0〜20重量%
Al 0重量%〜30重量%
【0027】
第2の無機繊維は、例えば、以下の成分を以下の含有量で含む。
SiO 30〜50重量%
CaO 25〜45重量%
MgO 1〜15重量%
Al 5重量%〜25重量%
【0028】
第2の無機繊維は、例えば、以下の成分を以下の含有量で含む。
SiO 35〜45重量%
CaO 30〜40重量%
MgO 4〜8重量%
Al 10重量%〜20重量%
【0029】
第2の無機繊維は、MgO及びCaOから選択される1以上とシリカとアルミナを、好ましくは90重量%以上含み、例えば95重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、又は99重量%以上含むことができる。
【0030】
第1及び第2の無機繊維は、Sc,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y又はこれらの混合物から選択されるそれぞれの酸化物を含んでも含まなくてもよい。これらの酸化物の量を、それぞれ3.0重量%以下、2.0重量%以下、1.0重量%以下又は0.5重量%以下としてもよい。
【0031】
第1及び第2の無機繊維は、アルカリ金属酸化物(NaO、LiO、KO等)の各々を含んでも含まなくてもよく、これらはそれぞれ又は合計で、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、又は0.1重量%以下とすることができる。
【0032】
第1及び第2の無機繊維は、ZnO、B、P、SrO、Fe、BaO、Crの各々を含んでも含まなくてもよく、それぞれ、3.0重量%以下、2.0重量%以下、1.0重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%未満又は0.05重量%以下とすることができる。
【0033】
また、上記の各成分の量をそれぞれ任意に組み合わせてもよい。
【0034】
無機繊維の溶解速度定数は、好ましくは100ng/cm・h以上、150ng/cm・h以上、200ng/cm・h以上、500ng/cm・h以上、1000ng/cm・h以上、又は1500ng/cm・h以上である。溶解速度定数は、実施例に記載の方法で測定される。
【0035】
第1及び第2の無機繊維の加熱収縮率、特に第1の無機繊維の加熱収縮率は、実施例記載の方法で測定したとき、800℃3時間の加熱において、好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3.0%以下、最も好ましくは2.5%以下である。
【0036】
第1及び第2の無機繊維は溶融法等公知の方法で製造できる。
第1の無機繊維の平均繊維径は、通常3.0μm超であり、例えば3.2〜8.0μm、3.3〜7.0μm、3.4〜6.0μm又は3.5〜5.0μmとできる。第2の無機繊維の平均繊維径は細いことが好ましく、好ましくは3.0μm以下であり、例えば1.0〜2.9μm又は1.5〜2.8μmとできる。
【0037】
保形性の観点から、第1の無機繊維と第2の無機繊維の合計重量100%に対して、第2の無機繊維は、好ましくは25重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上を占める。
【0038】
保形性と耐熱性の観点から、第1の無機繊維と第2の無機繊維の重量%(トータルで100%)の比率は、好ましくは、第1の無機繊維:第2の無機繊維=85:15〜55:45であり、より好ましくは、第1の無機繊維:第2の無機繊維=75:25〜60:40であり、特に好ましくは、第1の無機繊維:第2の無機繊維=75:25〜65:35である。
【0039】
膨張性シートは、厚さの50%まで圧縮した状態で、600℃の雰囲気内で5時間保持した後、圧縮を解放したとき、触れても形状が崩れないことが好ましい。
【0040】
膨張性シートは、バーミキュライトを含む。本発明が含むバーミキュライトは膨張性である。
【0041】
膨張性シートは、無機繊維とバーミキュライトの他、有機バインダー、無機バインダー、凝集剤等を含むことができる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、通常使用されているものを使用できる。有機バインダーとして澱粉、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、パルプ、アクリルエマルジョン等が、無機バインダーとして、アニオン性のコロイダルシリカ、カチオン性のコロイダルシリカ等のコロイダルシリカ、アルミナゾル、ベントナイト、粘土鉱物等が例示できる。膨張性シートは、好ましくは90重量%以上、95重量%以上、又は98重量%以上を、無機繊維、バーミキュライト、バインダーから構成できる。
【0042】
膨張性シートは、一般に、各成分を含むスラリーを作製して、抄造して製造する。
【実施例】
【0043】
以下の実験例1,2で使用した無機繊維は以下の通りである。
尚、平均繊維径は、RCF工業会技術委員会が作成した「セラミックファイバーの繊維径測定方法」(2004年3月30日作成)に準拠し、ランダムに選択した400本以上の繊維を電子顕微鏡で観察・撮影した後、撮影した繊維について繊維径を測定し、平均値を求めて得た。生理食塩水溶解率は以下の方法で求めた。
【0044】
(生体溶解性測定方法)
繊維を、メンブレンフィルター上に置き、繊維上にマイクロポンプによりpH4.5又
はpH7.4の生理食塩水を滴下させ、繊維、フィルターを通った濾液を容器内に貯めた
。貯めた濾液を24時間経過後に取り出し、溶出成分をICP発光分析装置により定量し
、溶解度を算出した。測定元素は主要元素であるK、Mg、Al、Siの4元素とした。
平均繊維径を測定して単位表面積・単位時間当たりの溶出量である溶解速度定数(単位:
ng/cm・h)に換算した。
【0045】
(1)アルカリアースシリケート(AES)
組成:SiO含有量約77重量%、CaO含有量約9重量%、MgO含有量約13重量%、Al含有量約1重量%
平均繊維径:4.2μm
溶解速度定数(pH7.4): 約1000ng/cm・h
(2)ロックウールA(RW−A)
組成:SiO含有量約40重量%、CaO含有量約35重量%、MgO含有量約5重量%、Al含有量約13重量%
平均繊維径:2.6μm
溶解速度定数(pH4.5):2000〜4000ng/cm・h
(3)ロックウールB(RW−B)
組成:SiO含有量約40重量%、CaO含有量約40重量%、MgO含有量約5重量%、Al含有量約15重量%
平均繊維径:4.0μm
溶解速度定数(pH4.5):2000〜4000ng/cm・h
(4)アルミナシリカ繊維
組成:SiO含有量約50重量%、Al含有量約50重量%
平均繊維径:2.6μm
溶解速度定数(pH7.4):10ng/cm・h以下
(5)アルミナ繊維
組成:SiO含有量約70〜80重量%、Al含有量約20〜30重量%
平均繊維径:3.6μm
溶解速度定数(pH7.4):10ng/cm・h以下
【0046】
実験例1
上記のそれぞれの無機繊維100%から膨張性シートを作製した。具体的には、無機繊維100重量部、バーミキュライト125重量部、パルプ7.5重量部、アクリルエマルジョン40重量部、凝集剤5重量部を水に分散してスラリーを作製した。このスラリーを抄造して膨張性シートを作製した。
得られた膨張性シートと無機繊維について以下を評価した。結果を表1に示す。
【0047】
・圧縮加熱試験
図1に示すように、シート1を、初期の厚さの50%まで圧縮した状態で加熱装置に入れて、600℃の雰囲気で5時間そのまま保持した。5時間後に、取り出して、圧縮を解放したときの保形性(脆さ)を触診にて以下の基準で評価した。
◎:触れても崩れない
○:触れても崩れないが、軟らかく持ち上げたとき撓む
△:触れると少し崩れる
×:触れると崩れる
【0048】
・加熱膨張倍率
シートを圧縮しないで加熱装置に入れ、800℃の雰囲気で30分間保持して厚さ方向に膨張させた。膨張したシートの厚さの、加熱前の厚さに対する倍率を測定した。
【0049】
・加熱収縮率
シートを圧縮しないで加熱装置に入れ、800℃の雰囲気で3時間加熱し、加熱前後の長さを測定した。シートの収縮率を以下の式から算出した。
収縮率=(加熱前の長さ−加熱後の長さ)/加熱前の長さ×100
【0050】
【表1】
【0051】
実験例2
無機繊維として、アルカリアースシリケートとロックウールAを混合して用いた他は、実験例1と同様にして、膨張性シートを作製し、評価した。評価結果を表2に示す。比較として、無機繊維としてアルミナシリカ繊維100%を用いた膨張シートの結果も合わせて表2に記載する。
無機繊維全体を100重量部としたときの、アルカリアースシリケートとロックウールAの混合割合を、表2に示す。
尚、アルカリアースシリケートの一部をロックウールAに変えると、製造の際、毛布の上にムラなく均一に乗り、抄造性が改善された。
【0052】
表2から、アルカリアースシリケートの一部をロックウールAに変えると保形性が改善されることが分かる。また、ロックウールAの割合が高くなると耐熱性に劣ることが分かる。アルカリアースシリケートとロックウールAの重量部の比が、83:17〜58:42のとき、膨張性シートは、保形性と耐熱性に優れる。
【0053】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の膨張性シートは、長時間圧縮状態で加熱された後であっても形状が崩れ難く、アルミニウム溶融用等のシール材(パッキン等)、目地材、ケーブルラックや鉄骨等の被覆材として使用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 膨張性シート
図1