【解決手段】ドア閉時、ストライカが進入するストライカ進入溝21を有する合成樹脂製のボディ2と、ボディ2に形成した収容部22を覆う金属製のカバープレート3と、ストライカ進入溝21に進入したストライカに係合することにより、オープン位置からフルラッチ位置に回動するラッチ5と、ラッチ5に係合することにより、ラッチ5をフルラッチ位置に保持するポール6と、ボディ2に固定され、ラッチ5がオープン位置からフルラッチ位置の直前位置に達したときラッチ5に当接し、ラッチ5のフルラッチ位置への回動を許容し得るように弾性変形可能な弾性ストッパ7とを備える。
前記弾性ストッパは、前記ボディの収容部に設けた凹部と前記カバープレートの裏面との間に挟み込まれて固定されることを特徴とする請求項1記載の自動車用ドアラッチ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の自動車用ドアラッチ装置においては、ドア閉時、ラッチがフルラッチ位置を超えて過回動した際、ラッチの一部が金属製のカバープレートに折曲形成したストッパまたは樹脂ボディに勢いよく当接して、ラッチの過回動を規制する構成であるため、ドア閉時に高周波成分の音が多く含まれてドア閉まり音の印象を損ねる虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、ドア閉時、ドア閉まり音の印象を向上させることが可能な自動車用ドアラッチ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために、本発明における技術的手段は、ドア閉時、ストライカが進入するストライカ進入溝を有する合成樹脂製のボディと、前記ボディに形成した収容部を覆う金属製のカバープレートと、前記ボディの収容部内に枢支され、前記ストライカ進入溝に進入した前記ストライカに係合することにより、オープン位置からフルラッチ位置に回動するラッチと、前記ボディの収容部内に枢支され、前記ラッチに係合することにより、前記ラッチを前記フルラッチ位置に保持するポールと、前記ボディに固定され、前記ラッチが前記オープン位置から前記フルラッチ位置の直前位置に達したとき前記ラッチに当接し、前記ラッチの前記フルラッチ位置への回動を許容し得るように弾性変形可能な弾性ストッパと、を備えることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記弾性ストッパは、前記ボディの収容部に設けた凹部と前記カバープレートの裏面との間に挟み込まれて固定される。
【0009】
好ましくは、前記カバープレートは、前記ストライカ進入溝よりも奥部において前記ボディ側へ向けて折曲された折曲片を有し、前記弾性ストッパは、前記折曲片の内面に接触して固定される。
【0010】
好ましくは、前記ラッチは、金属製の芯材の表面に合成樹脂材を被覆することで形成され、前記合成樹脂材は、前記ラッチの外周より外方へ突出してカバープレートの裏面に接触することにより、前記ラッチの回転軸方向へのがた付きを抑止する弾性舌片部を有し、前記弾性ストッパは、前記カバープレートの裏面の間に隙間を形成する逃げ部を有し、前記弾性舌片部は、前記ラッチが回動した際、前記隙間を通過する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ドア閉時、ラッチがフルラッチ位置に達する直前位置で、ボディに固定した弾性ストッパに当接したあと、フルラッチ位置に達するので、ドア閉まり音の印象を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で用いる方位は、自動車用ドアラッチ装置1を車体の側面に設けられる図示略のスィング式のサイドドアに取り付けた状態での方位を指す。
【0014】
図1、2に示すように、自動車用ドアラッチ装置1は、後面が開口する箱状の合成樹脂製のボディ2と、ボディ2の後面を閉塞する金属製のカバープレート3とを含むハウジング(符号無し)を備える。ハウジングは、サイドドア(以下、「ドア」という)内に図示略の複数のボルトにより固定される。ボディ2及びカバープレート3は、上下方向のほぼ中央部にあって、車内側が開口するストライカ進入溝21及びストライカ進入切欠部31をそれぞれ有する。ストライカ進入溝21及びストライカ進入切欠部31には、ドア閉時、車体側に固定されるストライカSが車内側から進入する。
【0015】
ハウジング内(ボディ2の内側に設けられる収容部22内)には、前後方向を向くラッチ軸4により枢支されるラッチ5と、前後方向を向く軸部61により枢支されるポール6と、ゴム等の弾性部材により形成されラッチ5の過回動を規制する弾性ストッパ7とが配置される。なお、ポール6は、軸部61を一体形成する。さらに、ボディ2におけるストライカ進入溝21の奥部及び底部には、ドア閉時、ストライカ進入溝21及びストライカ進入切欠部31に進入したストライカSが当接することで、当該当接時の衝撃力を緩和するとともに、ラッチ5に係合しているストライカSのがた付きを抑止するゴム等の弾性部材により形成されるバンパラバー8が配置される。ボディ2の前面には、金属製のバックプレート11が固定される。
【0016】
ボディ2は、ストライカ進入溝21の他に、後面側が開口する収容部22と、上端に形成されるアッパフランジ部23と、車外側の側端に形成されるサイドフランジ部24と、ストライカ進入溝21の車外側斜め上方に設けられ、弾性ストッパ7が嵌合される凹部25とを有する。
【0017】
アッパフランジ部23は、ボディ2の上端の形状に沿って、収容部22の内面(カバープレート3の裏面に対向する面)よりも後方へ突出するように形成される。サイドフランジ部24は、車外側の側端の形状に沿って、収容部22の内面よりも後方へ突出するように形成される。凹部25は、収容部22の内面よりも前方へ凹むようにして形成される。
【0018】
カバープレート3は、車外側の端部で、かつストライカ進入切欠部31及びボディ2のストライカ進入溝21よりも奥部にあって、前向きに折曲形成された折曲片32を有し、
図7に示すように折曲片32がボディ2のサイドフランジ部24の内側面に接触した形態で、ボディ2の後面を閉塞するように固定される。
【0019】
ラッチ軸4は、ストライカ進入溝21及びストライカ進入切欠部31を境にしてその上側の領域の収容部22内にあって、後端がカバープレート3、前端がバックプレート11にそれぞれ回動可能に支持される。ポール6の軸部61は、ストライカ進入溝21及びストライカ進入切欠部31を境にしてその下側の領域の収容部22内にあって、後端がカバープレート3、前端がバックプレート11にそれぞれ回動可能に支持される。
【0020】
ラッチ5は、プレス加工により成形された金属製の芯材5A(
図7参照)の表面に合成樹脂材5B(
図7参照)を被覆することで形成される。ラッチ5は、ドアが開いているときには、ラッチ軸4に巻装されたスプリング9の付勢力により、
図4に示すオープン位置に保持され、ドア閉時、ストライカSがストライカ進入溝21及びストライカ進入切欠部31に進入することにより、オープン位置からスプリング9の付勢力に抗してラッチ軸4を中心に時計方向へ回動し、
図5に示すハーフラッチ位置を経て
図6に示すフルラッチ位置に回動する。また、ドアが勢いよく(通常速度の範囲内よりも速い閉速度)閉じられた場合には、フルラッチ位置を超えて一旦過回動するが、弾性ストッパ7及びバンパラバー8の弾性力によって過回動した位置からフルラッチ位置に戻る。
【0021】
ラッチ5には、
図5に示すハーフルラッチ位置においてポール6が係合可能なハーフラッチアーム部51と、
図6に示すフルラッチ位置においてポール6が係合可能なフルラッチアーム部52と、ハーフラッチアーム部51とフルラッチアーム部52間にあって、ストライカ進入溝21及びストライカ切欠部31に進入したストライカSに係合可能なストライカ係合溝53と、ラッチ5の軸方向へのがた付きを抑制する弾性舌片部54とが形成される。
【0022】
弾性舌片部54は、合成樹脂材5Bにより形成され、
図7に示すように、ラッチ5の後面側の外周より斜め外方へ突出するとともに、ラッチ軸4の軸方向へ弾性変形可能であって、カバープレート3の裏面に接触することで、弾性力によりラッチ5の軸方向へのがた付きを抑止する。なお、弾性舌片部54は、ラッチ5の全体形状を考慮して、ラッチ軸4を境にしてストライカ係合溝53と反対側であるラッチ5の上部外周に設けることが好ましい。したがって、
図4、5に示すように、ラッチ5がオープン位置及びハーフラッチ位置を含むオープン位置とハーフラッチ位置間にあるときには、弾性舌片部54は、弾性ストッパ7の後面に重なる位置にある。しかし、本実施形態においては、弾性ストッパ7を後述のような形状とすることで、弾性舌片部54が弾性ストッパ7に対して接触して、ラッチ5の回動に対して支障を及ぼすことがないように工夫されている。
【0023】
合成樹脂材5Bは、芯材5Aを被覆する厚みを他の領域の厚みよりも薄肉とした薄肉領域部55、56を形成する。薄肉領域部55、56は、ラッチ5の両面に設けられる。これにより、ラッチ5の軽量化を図ることで、ラッチ5が弾性ストッパ7における後述のストッパ部72aやカバープレート3の折曲片32に当接する際の衝撃を軽減できる。
【0024】
ポール6は、ボディ2の裏面側に支持されるスプリング10の付勢力により係合方向(
図4〜6において時計方向)へ付勢されることにより、ラッチ5のハーフラッチ位置においてハーフラッチアーム部51に係合してラッチ5のオープン方向(
図5において反時計方向)への回動を阻止し、同じくフルラッチ位置においてフルラッチアーム部52に係合してラッチ5のオープン方向(
図6において反時計方向)への回動を阻止する。
【0025】
さらに、ポール6は、ドアの車外側または車内側に設けられるドア開操作用の図示略のドアハンドルに図示略の各種リンクを介して連結されることにより、ドアハンドルの開操作に基づいて、スプリング10の付勢力に抗して、ハーフラッチアーム部51またはフルラッチアーム部52に係合した係合位置から解除方向(
図4〜6において反時計方向)へ回動することによって、ハーフラッチアーム部51またはフルラッチアーム部52から外れてドアの開きを可能にする。
【0026】
弾性ストッパ7は、ボディ2の凹部25に嵌合されるとともに、ボディ2とカバープレート3との間に挟み込まれて固定される。より詳しくは、
図8に示すように、弾性ストッパ7は、B矢視図において矩形形状を呈し、ボディ2の凹部25に後側から嵌合される嵌合部71と、当該嵌合部71からボディ2の内面22よりも後側へ向けて突出し、A矢視図において略横向き台形形状の基部72とを有して形成される。
【0027】
特に
図6及び
図8のA矢視図から理解できるように、弾性ストッパ7における基部72の斜め下面には、ストライカ進入溝21及びストライカ進入切欠部31へのストライカSの進入方向X(
図6参照)に対して傾斜したストッパ部72aが設けられる。
ストッパ部72aには、ラッチ5がハーフラッチ位置に超えてフルラッチ位置の直前位置に達した時点で、ラッチ5におけるハーフラッチアーム部51の車外側を向く外周縁51aが当接する。特に
図7及び
図8の斜視図、C矢視図から理解できるように、弾性ストッパ7における基部72の車外側略半部には、後面がカバープレート3の裏面に接触する突出部72bが形成され、同じく車内側略半部には、突出部72bよりも前方へ凹んで、カバープレート3の裏面との間に所定の隙間を形成する逃げ部72cが形成される。これにより、弾性舌片部54は、ラッチ5の回動に伴って、弾性ストッパ7における逃げ部72cとカバープレート3の裏面の間の隙間を通過可能となるため、弾性ストッパ7に対して接触することはないので、ラッチ5の回動に支障を及ぼすことはない。
【0028】
弾性ストッパ7がボディ2とカバープレート3との間に挟み込まれて固定される形態について詳細に説明すると、
図7に示すように、嵌合部71がボディ2の凹部25に嵌合し、突出部72bの後面がカバープレート3の裏面に当接し、逃げ部72cがカバープレート3の裏面に非当接で、嵌合部71の一部がカバープレート3の折曲片32の前端縁に当接した形態で、ボディ2とカバープレート3との間に挟み込まれて固定される。
【0029】
次に、本実施形態に係る自動車用ドアラッチ装置1におけるドア閉じ時の作用について説明する。
【0030】
ドアが開いている状態においては、
図4に示すように、ラッチ5は、オープン位置にあって、弾性舌片部54が弾性ストッパ7の逃げ部72cとカバープレート3の裏面との間の隙間に介在している。この状態からドアが閉じられると、車体側のストライカSがストライカ進入溝21及びストライカ進入切欠部31に車内側から進入してラッチ5のストライカ係合溝53に係合する。これにより、ラッチ5は、ドアの閉じ力をもって、スプリング9の付勢力に抗してラッチ軸4を中心に時計方向へ回動し、
図5に示すハーフラッチ位置を通過してさらにフルラッチ位置へ向けて時計方向へ回動する。
【0031】
ラッチ5がハーフラッチ位置を通過すると、ストライカSがストライカ進入溝21の奥部(
図5において左部)に位置するバンパラバー8のストッパ部81に当接する。このときのドアの閉じ速度が通常の速度の範囲内であれば、ストライカSは、バンパラバー8を弾性変形させつつストライカ進入溝21及びストライカ進入切欠部31の奥部へさらに進入するため、ラッチ5は、フルラッチ位置へ向けてさらに回動する。
【0032】
ラッチ5がフルラッチ位置の直前位置に達すると、今度は、ラッチ5におけるハーフラッチアーム部51の外周縁51aが弾性ストッパ7のストッパ部72aに当接する。これにより、弾性ストッパ7におけるストッパ部72aは、ラッチ5のフルラッチ位置への回動を許容し得るように弾性変形する。そして、ラッチ5は、ストッパ部72aを弾性変形させつつフルラッチ位置または当該フルラッチ位置を僅かに超えて過回動する。この場合、弾性ストッパ7におけるストッパ部72aの逃げ部72cがカバープレート3の裏面に接触していないため、ストッパ部72aの弾性変形を容易にする。これにより、ドア閉時、ラッチ5の回動を規制する衝撃を効果的に吸収して、ドア閉まり音の印象を高めることができる。
【0033】
なお、ドアの閉じ速度が通常の速度の範囲内を超えた≡速度の場合には、ラッチ5が勢いよく弾性ストッパ7のストッパ部72aに当接するため、ストッパ部72aが大きく弾性変形して、ラッチ5が上述よりもさらに過回動する場合がある。この場合には、ラッチ5におけるハーフラッチアーム部51の外周縁51aの下部がカバープレート3の折曲片32の内面に当接することで、それ以上の過回動は阻止される。
【0034】
ラッチ5がフルラッチ位置または過回動すると、その時点で、ポール6は、スプリング10の付勢力により係合位置に回動し、フルラッチアーム部52に対して係合する。これにより、ラッチ5がフルラッチ位置に拘束され、ドアは全閉位置に保持される。
【0035】
以上により、ドア閉時、ストライカSがバンパラバー8のストッパ部81に当接した後、ラッチ5がフルラッチ位置の直前位置で弾性ストッパ7のストッパ部72aに当接するため、ドア閉まり音の印象を高めることが可能となる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(a)ドアを車体側面に設けられるスライドドア又は車体後部に設けられる跳ね上げ式のバックドアとする。
(b)ラッチ5に弾性舌片部54を設けない場合には、弾性ストッパ7には逃げ部72cは必ずしも必要としない。
(c)弾性ストッパ7の取り付け位置を上記説明以外の位置とする。