【課題】ロックボルトの打設箇所における打設面からの突出を最大限抑制して、防水シートの損傷防止を図ることができると同時に、ロックボルトの引抜試験を行うことも可能にするロックボルト用プレートを提供する。
【解決手段】内側に雌ねじ23が形成されているナット部2と、ナット部2の基端部から外方に拡がるようにしてナット部2と一体形成され、ナット部2の突出する側が支圧面31になっている略平板状のフランジ部3を備え、雌ねじ23の長さが、所要の引抜耐力が得られるロックボルト6の雄ねじ62との螺合長と、引抜試験用のテンションバー81の取付に必要とされるテンションバー81の雄ねじ811との螺合長との合計以上の長さであるロックボルト用プレート1。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル等の地山にロックボルトを打設する場合、一般的にはトンネル空間の形状に倣う地山101の表面に一次覆工の吹付コンクリート102を設け、吹付コンクリート102と地山101に形成されたボアホール103にセメントモルタル等の定着材104を充填すると共にロックボルト105を挿入し、吹付コンクリート102の表面である打設面からロックボルト105の基端側の雄ねじ106を若干突出させ、この突出した雄ねじ106に荷重を受けるためのワッシャー107を介してナット108を締め付けて定着している(
図10参照)。その後、雄ねじ106の突出部分、ナット108及びワッシャー107を覆うようにして、防水シート109がトンネル空間の内側に敷設され、更に図示省略する覆工コンクリートが設けられる。
【0003】
更に、ロックボルトを打設する際には、ロックボルトの定着状態を確認するために、引抜力をかけて耐荷重を試験する場合がある。この引抜試験は、
図11に示すように、地山101に定着されたロックボルト105の雄ねじ106の突出部分にテンションバー110を取り付け、テンションバー110にセンターホールジャッキ111を取り付け、段階的に引抜力を載荷して変位計(図示省略)でロックボルト105の伸び量を読み取ることによって行われる。
【0004】
また、このような打設面から突出するロックボルト105の雄ねじ106やこれに螺合されるナット108は、内側に敷設される防水シート109が損傷する原因となることから、特許文献1の定着具が提案されている。この定着具は、座板のテーパ状の孔にナットのテーパ状の外周面を沿わせるようにして座板にナットを係合し、ロックボルトの基端側で打設面から一部突出する雄ねじにナットを螺合し、ナットをロックボルトと共にグラウト材で定着するものであり、定着状態において、座板の外面を基準にナットの外面及びロックボルトの基端側の端面をほぼ同一面に配置するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の定着具は、座板の外面、ナットの外面及びロックボルトの基端側の端面をほぼ同一面に配置することにより、防水シートの損傷防止を図っているが、ロックボルトの引抜試験を必要とする場合に対応することができない。即ち、この定着具の設置構造では、ナットがロックボルトと共にグラウト材で定着されるため、定着状態のロックボルトから固着したナットを取り外すことができず、引抜試験用のテンションバーをロックボルトの打設面からの突出部分に取り付けることが困難である。そのため、ロックボルトの打設箇所における打設面からの突出を最大限抑制して、防水シートの損傷防止を図ることができると同時に、ロックボルトの引抜試験を行うことも可能にすることが望まれている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、ロックボルトの打設箇所における打設面からの突出を最大限抑制して、防水シートの損傷防止を図ることができると同時に、ロックボルトの引抜試験を行うことも可能にするロックボルト用プレート及びそのロックボルト用プレートを用いるロックボルト設置構造、ロックボルトの載荷試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のロックボルト用プレートは、内側に雌ねじが形成されているナット部と、前記ナット部の基端部から外方に拡がるようにして前記ナット部と一体形成され、前記ナット部の突出する側が支圧面になっている略平板状のフランジ部を備え、前記雌ねじの長さが、所要の引抜耐力が得られるロックボルトの雄ねじとの螺合長と、引抜試験用のテンションバーの取付に必要とされる前記テンションバーの雄ねじとの螺合長との合計以上の長さであることを特徴とする。
これによれば、ロックボルト及びロックボルト用プレートを地山に設置した際に、ロックボルトの基端面をロックボルト用プレートから突出させずに、ロックボルトの打設箇所における打設面からの突出部分をロックボルト用プレートのナット部の基端部及びフランジ部に限定することができる。従って、ロックボルトの打設箇所における打設面からの突出を最大限抑制し、打設面からの突出部分を覆うように敷設される防水シートの損傷を防止することができる。更に、ナット部の基端部及び平板状のフランジ部の打設面からの突出量がかなり小さくなることから、防水シートを打設面に略倣うように敷設することができ、トンネル空間で防水シートの内側に打設される覆工コンクリートも周方向に全体に亘って略同一厚さで打設することも可能となる。また、ナット部の雌ねじには、ロックボルトの雄ねじとの螺合に必要とされる螺合長とは別に、引抜試験用のテンションバーの取付に必要とされるテンションバーの雄ねじとの螺合長が確保されていることから、ロックボルト及びロックボルト用プレートを地山に設置した際に、部材の取り外し等の手間を要せずに、テンションバーを取り付けてロックボルトの引抜試験を行うことが可能となる。
【0009】
本発明のロックボルト用プレートは、前記フランジ部の厚さ方向における前記支圧面と逆側の肩部が外側に凸のアール面で形成されていることを特徴とする。
これによれば、フランジ部の肩部の形状に起因する防水シートの損傷も防止し、打設面からの突出部分を覆うように敷設される防水シートの損傷をより確実に防止することができる。また、フランジ部の肩部の形状を外側に凸のアール面とすることにより、フランジ部の周端近くまで可能な限り厚さを大きくし、より高い支圧強度、土圧への支持力を発揮することができると共に、フランジ部の肩部周辺の形状が欠けることを防止することができる。
【0010】
本発明のロックボルト用プレートは、底板と周壁で形成され、前記底板の中央にロックボルトの挿通穴を有するキャップが、前記ナット部の先端側に外嵌され、前記ナット部の先端と前記キャップの前記底板との間に増し締め用の空隙が形成されていることを特徴とする。
これによれば、定着材で定着してロックボルト及びロックボルト用プレートを地山に設置した際に、定着材をキャップに付着させ、ナット部に付着することを防止でき、ナット部の先端とキャップの底板との間に増し締め用の空隙を確保しておくことができる。従って、施工後の地山の変位等によってロックボルト用プレートのフランジ部の支圧面と吹付コンクリートの表面等の打設面とが離れてしまった場合に、ロックボルト用プレートの増し締めを行うことができる。
【0011】
本発明のロックボルト用プレートは、前記ナット部の外周面が先端に向かって漸次縮径するテーパ面で形成されていることを特徴とする。
これによれば、定着材で定着してロックボルト及びロックボルト用プレートを地山に設置した際に、ナット部の外周のテーパ面でナット部を定着材から縁切りしやすくし、この縁切りにより、施工後の地山の変位等によってロックボルト用プレートのフランジ部の支圧面と吹付コンクリートの表面等の打設面とが離れてしまった場合に、ロックボルト用プレートの増し締めを行うことができる。
【0012】
本発明のロックボルト設置構造は、本発明のロックボルト用プレートの前記ナット部の前記雌ねじの先端側から前記雌ねじの途中位置までロックボルトの基端側の雄ねじが螺合され、前記ロックボルトが地山のボアホール内に打設されて定着材で定着され、前記フランジ部の支圧面で打設面が押圧され、前記ロックボルトの基端面が前記打設面よりも前記地山側に配置されることを特徴とする。
これによれば、ロックボルトの基端面をロックボルト用プレートから明らかに突出しない打設面より地山側に配置させ、ロックボルトの打設箇所における打設面からの突出部分をロックボルト用プレートのナット部の基端部及びフランジ部に確実に限定することができる。従って、ロックボルトの打設箇所における打設面からの突出を最大限抑制し、打設面からの突出部分を覆うように敷設される防水シートの損傷を防止することができる。更に、ナット部の基端部及び平板状のフランジ部の打設面からの突出量がかなり小さくなることから、防水シートを打設面に略倣うように敷設することができ、トンネル空間で防水シートの内側に打設される覆工コンクリートも周方向に全体に亘って略同一厚さで打設することも可能となる。また、ナット部の雌ねじには、ロックボルトの雄ねじとの螺合に必要とされる螺合長とは別に、引抜試験用のテンションバーの取付に必要とされるテンションバーの雄ねじとの螺合長が確保されていることから、部材の取り外し等の手間を要せずに、ロックボルト設置構造のロックボルト用プレートにそのままテンションバーを取り付けてロックボルトの引抜試験を行うことができる。
【0013】
本発明のロックボルトの載荷試験方法は、本発明のロックボルト設置構造における前記ナット部の前記雌ねじの基端側から前記雌ねじの途中位置まで前記テンションバーの雄ねじを螺合し、センターホールジャッキにより前記テンションバーを介して前記ロックボルトに段階的に引抜力を載荷することを特徴とする。
これによれば、部材の取り外し等の手間を要せずに、ロックボルト設置構造のロックボルト用プレートにそのままテンションバーを取り付けてロックボルトの引抜試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ロックボルトの打設箇所における打設面からの突出を最大限抑制して、防水シートの損傷防止を図ることができると同時に、ロックボルトの引抜試験を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は本発明による第1実施形態のロックボルト用プレートの正面図、(b)はその側面図、(c)は同図(a)のA−A断面図。
【
図2】(a)は第1実施形態のロックボルト用プレートとロックボルトが設置されたトンネルの概要説明図、(b)は同図(a)のB部の詳細を示す断面説明図。
【
図3】第1実施形態のロックボルト用プレートとロックボルトが設置された地山の一部を示す断面説明図。
【
図4】(a)はロックボルトが螺合された状態の第1実施形態のロックボルト用プレートとテンションバーを示す一部断面説明図、(b)は第1実施形態のロックボルト用プレートにロックボルトとテンションバーが螺合された状態を示す一部断面説明図。
【
図5】(a)はロックボルトが螺合された状態の第1実施形態のロックボルト用プレートとテンションバーを示す斜視図、(b)はロックボルトが螺合された状態の第1実施形態のロックボルト用プレートに載荷試験装置が取り付けられた状態の斜視図。
【
図6】第1実施形態のロックボルト用プレートとロックボルトが設置された地山におけるロックボルト用プレートの増し締めを説明する一部断面説明図。
【
図7】(a)は本発明による第2実施形態のロックボルト用プレートの正面図、(b)はその側面図、(c)は同図(a)のC−C断面図。
【
図8】第2実施形態のロックボルト用プレートとロックボルトが設置された
図2(b)に相当する部分の断面説明図。
【
図9】第2実施形態のロックボルト用プレートとロックボルトが設置された地山の一部を示す断面説明図。
【
図10】従来のロックボルトが設置されたトンネルの地山の一部を示す断面説明図。
【
図11】従来のトンネルの地山に設置されたロックボルトの引抜試験を説明する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態のロックボルト用プレート及びロックボルト設置構造〕
本発明による第1実施形態のロックボルト用プレート1は、
図1に示すように、ナット部2と、ナット部2の基端21から外方に拡がるようにしてナット部2と一体形成されているフランジ部3とから構成されている。図示例のナット部2、フランジ部3はそれぞれ鋼製である。
【0017】
ナット部2には、内側に雌ねじ23が形成され、雌ねじ23はナット部2の軸方向に先端22から形成されている。雌ねじ23は基端21に至る途中位置までナット部2の大部分の長さに形成されている。ナット部2の外周面24にはその根元周辺の一部に基端21に向かって拡がるようにテーパ面241が形成されている。また、ナット部2には、六角穴状の係合穴25が基端21から所定深さで形成され、係合穴25が基端21の中央で段差になるように形成されている。係合穴25はナット部2の内部で雌ねじ23と連通している。
【0018】
ナット部2の雌ねじ23の長さは、後述する所要の引抜耐力が得られるロックボルト6の雄ねじ62との螺合長と、引抜試験用のテンションバー81の取付に必要とされるテンションバー81の雄ねじ811との螺合長との合計以上の長さに設定されている。雌ねじ23の所要の引抜耐力が得られるロックボルト6の雄ねじ62との螺合長は、所要の引抜耐力に対応する引張荷重に耐えられる雌ねじ23とロックボルト6の雄ねじ62との螺合長である。また、雌ねじ23のテンションバー81の取付に必要とされるテンションバー81の雄ねじ811との螺合長は、少なくとも、前述のロックボルト6とロックボルト用プレート1に求められる所要の引抜耐力に対応する引張荷重に耐えられる雌ねじ23とテンションバー81の雄ねじ811との螺合長である。
【0019】
フランジ部3は、平板状に形成されており、図示例では略円盤状に形成されている。フランジ部3のナット部2が突出する側の面は略平らな支圧面31になっており、支圧面31はロックボルト用プレート1の設置時に後述するロックボルト6の打設面17を支圧するようになっている。また、フランジ部3の厚さ方向における支圧面31と逆側の肩部32は外側に凸のアール面となるように形成されている。
【0020】
更に、第1実施形態におけるナット部2には、プラスチック製のキャップ4が先端側に外嵌されている。キャップ4は底板41と周壁42で形成され、底板41の中央にロックボルトの挿通穴43が形成されている。キャップ4は、周壁42の底板41と逆側の端部をナット部2のテーパ面241の立ち上がり箇所近傍に引っ掛けるようにしてナット部2に外嵌され、配置されており、この位置に配置された状態で、ナット部2の先端22とキャップ4の底板41との間に増し締め用の空隙5が設けられている。
【0021】
第1実施形態のロックボルト用プレート1は、例えば
図2に示すトンネルにロックボルト6と併せて設置される。
図2において、11はトンネル空間、12はトンネルの地山、13は地山12の坑壁に沿って打設された吹付コンクリート、14は吹付コンクリート13の内周面に略倣うように敷設される防水シート、15は防水シート14の内側に打設される二次覆工の覆工コンクリートである。
【0022】
図2及び
図3に示すように、吹付コンクリート13と地山12には、坑壁と略直交する方向にボアホール16が形成されており、ボアホール16内にロックボルト6が打設され、セメントモルタル等の定着材7で定着されている。ロックボルト6は、本体61と、本体61の基端側に形成された雄ねじ62を有し、本体61の先端からボアホール16の奥側に挿入され、雄ねじ62がボアホール16の孔口側となるように配置される。打設されたロックボルト6の基端面である雄ねじ62の基端面621は、ボアホール16から外側に突出せずにボアホール16内に配置されており、ロックボルト6の打設面17よりも地山12側に配置されている。
【0023】
ロックボルト用プレート1は、そのナット部2及びキャップ4をボアホール16内に挿入するように配置されており、ボアホール16内において、ロックボルト6の雄ねじ62がキャップ4の挿通穴43に挿通され、ナット部2の雌ねじ23の先端側から雌ねじ23の途中位置まで雄ねじ62が螺合されている。また、ボアホール16内において、定着材7はロックボルト用プレート1のナット部2に基本的に付着せず、キャップ4の外周に付着するようになっている。ロックボルト6と共にボアホール16に設置されたロックボルト用プレート1のフランジ部3の支圧面31は、図示例では吹付コンクリート13の内側の表面である打設面17を押圧している。
【0024】
このロックボルト用プレート1とロックボルト6の設置構造を構築する際には、吹付コンクリート13及び地山12に形成したボアホール16内にセメントモルタル等の定着材7を充填し、定着材7が固結する前にロックボルト6をボアホール16内に挿入する。ロックボルト6の挿入時には、ロックボルト6の雄ねじ62にロックボルト用プレート1の雌ねじ23を所定長だけ螺合して予めロックボルト6にロックボルト用プレート1を取り付けておき、ロックボルト用プレート1が取り付けられたロックボルト6を挿入する。即ち、ロックボルト6の挿入に伴ってロックボルト用プレート1のナット部2もボアホール16内に設けられる。
【0025】
更に、ロックボルト6のボアホール16内への挿入により、ロックボルト用プレート1のフランジ部3の支圧面31は吹付コンクリート13の打設面17に当接される。そして、定着材7が充填されたボアホール16内に埋め込まれたロックボルト6及びこれに取り付けられているロックボルト用プレート1は、定着材7の固結によって所定位置で定着され、ロックボルト用プレート1の支圧面31は打設面17に当接して打設面17を付勢するようにして固着される。
【0026】
ロックボルト用プレート1とロックボルト6の設置構造において引抜力を載荷する載荷試験を行う際には、
図2、
図3及び
図4、
図5に示すように、ボアホール16に定着されたロックボルト用プレート1のナット部2の雌ねじ23に、雌ねじ23の基端側から雌ねじ23の途中位置までテンションバー81の雄ねじ811を螺合する。即ち、ロックボルト6の雄ねじ62が螺合された状態のナット部2の雌ねじ23に、ロックボルト6と逆側からテンションバー81の雄ねじ811を所要長で螺合する。
【0027】
そして、テンションバー81のフランジ部3からの突出部分にセンターホールジャッキ82を取り付ける。この状態で、油圧ジャッキ83で発生させる力をセンターホールジャッキ82に伝達し、センターホールジャッキ82によりテンションバー81に段階的に引抜力を載荷して、テンションバー81を介してロックボルト6に段階的に引抜力を載荷し、変位計84でロックボルト6の伸び量を読み取って載荷試験を行う。尚、
図5の85はセンターホールジャッキ82を受ける台座、86は打設面17に当接して台座85を打設面から浮かす調整脚である。
【0028】
第1実施形態によれば、ロックボルト6及びロックボルト用プレート1を地山12に設置した際に、ロックボルト6の基端面621をロックボルト用プレート1から突出させずに、ロックボルト6の打設箇所における打設面17からの突出部分をロックボルト用プレート1のナット部2の基端部及びフランジ部3に限定することができる。従って、ロックボルト6の打設箇所における打設面17からの突出を最大限抑制し、打設面17からの突出部分を覆うように敷設される防水シート14の損傷を防止することができる。
【0029】
更に、ナット部2の基端部及び平板状のフランジ部3の打設面17からの突出量がかなり小さくなることから、防水シート14を打設面17に略倣うように敷設することができ、トンネル空間11で防水シート14の内側に打設される覆工コンクリート15も周方向に全体に亘って略同一厚さで打設することも可能となる。また、防水シート14を打設面17に略倣うように敷設することができることから、覆工コンクリート15の背面に空洞が発生することも防止することができる。また、ナット部2の基端部及び平板状のフランジ部3の打設面17からの突出部分がかなり小さく、防水シート14を打設面17に略倣うように敷設することができることから、突出部分への覆工コンクリート15の拘束による覆工コンクリート15のひび割れの発生も防止することができる。
【0030】
また、ナット部2の雌ねじ23に、ロックボルト6の雄ねじ62との螺合に必要とされる螺合長とは別に、引抜試験用のテンションバー81の取付に必要とされるテンションバー81の雄ねじ811との螺合長が確保されていることから、ロックボルト6及びロックボルト用プレート1を地山12に設置した際に、部材の取り外し等の手間を要せずに、テンションバー81を取り付けてロックボルト6の引抜試験を行うことが可能となる。
【0031】
また、フランジ部3の肩部32の形状を外側に凸のアール面とすることにより、フランジ部3の肩部の形状に起因する防水シート14の損傷も防止し、打設面17からの突出部分を覆うように敷設される防水シート14の損傷をより確実に防止することができる。更に、フランジ部3の周端近くまで可能な限り厚さを大きくし、より高い支圧強度、土圧への支持力を発揮することができると共に、フランジ部3の肩部周辺の形状が欠けることを防止することができる。
【0032】
また、キャップ4をナット部2の先端側に外嵌し、増し締め用の空隙5を形成することにより、定着材7で定着してロックボルト6及びロックボルト用プレート1を地山12に設置した際に、定着材7をキャップ4の底板41等に付着させ、ナット部2の先端等に付着することを防止でき、ナット部2の先端とキャップ4の底板41との間に増し締め用の空隙5を確保しておくことができる。従って、
図6に示すように、施工後に地山12の変位等によってロックボルト用プレート1の支圧面31と吹付コンクリート13の打設面17が離れてしまった場合、六角穴状の係合穴25に工具9を入れて容易にロックボルト用プレート1の増し締めを行うことができる。
【0033】
また、第1実施形態のロックボルトの載荷試験方法によれば、部材の取り外し等の手間を要せずに、ロックボルト設置構造のロックボルト用プレート1にそのままテンションバー81を取り付けてロックボルト6の引抜試験を行うことができる。
【0034】
〔第2実施形態のロックボルト用プレート及びロックボルト設置構造〕
本発明による第2実施形態のロックボルト用プレート1aは、
図7に示すように、ナット部2aと、ナット部2aの基端21aから外方に拡がるようにしてナット部2aと一体形成されているフランジ部3aとから構成されている。図示例のナット部2a、フランジ部3aも第1実施形態のロックボルト用プレート1と同様にそれぞれ鋼製である。尚、ロックボルト用プレート1a以外の構成、例えばロックボルト6、テンションバー81等の構成は第1実施形態と同様である。
【0035】
ナット部2aには、内側に雌ねじ23aが形成され、雌ねじ23aはナット部2aの軸方向に先端22aから基端21aにかけて形成されている。ナット部2aの外周面24aはフランジ部3aの根元箇所から先端22aに向かって漸次縮径するテーパ面で形成されている。また、ナット部2aの雌ねじ23aの長さは、第1実施形態における雌ねじ23の長さと同様に、所要の引抜耐力が得られるロックボルト6の雄ねじ62との螺合長と、引抜試験用のテンションバー81の取付に必要とされるテンションバー81の雄ねじ811との螺合長との合計以上の長さに設定されている。
【0036】
フランジ部3aは、平板状に形成されており、図示例では略円盤状に形成されている。フランジ部3aのナット部2aが突出する側の面は略平らな支圧面31aになっており、支圧面31aはロックボルト用プレート1aの設置時にロックボルト6の打設面17を支圧するようになっている。また、フランジ部3aの厚さ方向における支圧面31aと逆側の肩部32aは第1実施形態の肩部32と同様、外側に凸のアール面となるように形成されている。
【0037】
第2実施形態のロックボルト用プレート1aには、工具係合箇所として、第1実施形態における六角穴状の係合穴25に代えて、フランジ部3aに回転用の係合穴33aが形成されている。係合穴33aは、フランジ部3aの半径方向の略中間位置に周方向に離間して複数設けられ、図示例では2カ所に設けられている。ロックボルト用プレート1aで増し締めを行う際には、係合穴33aに対応する位置に突起を有する工具を用い、工具の突起を係合穴33aに係合してロックボルト用プレート1aの増し締めを行うことが可能である。
【0038】
第2実施形態のロックボルト用プレート1aも、第1実施形態と同様、トンネルにロックボルト6と併せて設置される(
図8、
図9参照)。即ち、吹付コンクリート13と地山12に形成されたボアホール16内にロックボルト6が打設され、雄ねじ62がボアホール16の孔口側となるように配置されたロックボルト6がセメントモルタル等の定着材7で定着される。打設されたロックボルト6の基端面である雄ねじ62の基端面621は、ボアホール16から外側に突出せずにボアホール16内に配置され、ロックボルト6の打設面17よりも地山12側に配置される。
【0039】
ロックボルト用プレート1aは、ナット部2aをボアホール16内に挿入するように配置されており、ボアホール16内において、ロックボルト6の雄ねじ62がナット部2aの雌ねじ23aの先端側から雌ねじ23aの途中位置まで螺合されている。また、ボアホール16内において、定着材7はロックボルト用プレート1aのナット部2aのテーパ状の外周面24aに付着しているが、外周面24aがテーパ状のため定着材7との縁切りがしやすくなっている。ロックボルト6と共にボアホール16に設置されたロックボルト用プレート1aのフランジ部3aの支圧面31aは、吹付コンクリート13の内側の表面である打設面17を押圧している。
【0040】
この第2実施形態のロックボルト用プレート1aとロックボルト6の設置構造を構築する場合には、第1実施形態の設置構造と同様の工程により設置することができ、ロックボルト6の雄ねじ62にロックボルト用プレート1aの雌ねじ23aを所定長だけ螺合して予めロックボルト6にロックボルト用プレート1aを取り付けておき、ボアホール16内に充填した定着材7が固結する前に、ロックボルト用プレート1aが取り付けられたロックボルト6を挿入することにより構築される。
【0041】
更に、第2実施形態のロックボルト用プレート1aとロックボルト6の設置構造において引抜力を載荷する載荷試験を行う際にも、第1実施形態と同様の手順で行うことが可能である。即ち、ロックボルト6の雄ねじ62が螺合された状態のロックボルト用プレート1aのナット部2aの雌ねじ23aに、ロックボルト6と逆側からテンションバー81の雄ねじ811を所要長で螺合し、テンションバー81のフランジ部3aからの突出部分にセンターホールジャッキ82を取り付け、テンションバー81を介してロックボルト6に段階的に引抜力を載荷し、変位計84でロックボルト6の伸び量を読み取って載荷試験を行う。
【0042】
第2実施形態によれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。また、定着材7で定着してロックボルト6及びロックボルト用プレート1aを地山12に設置した際に、ナット部2aのテーパ状の外周面24aでナット部2aを定着材7から縁切りしやすくし、この縁切りにより、施工後の地山の変位等によってロックボルト用プレート1aのフランジ部3aの支圧面31aと打設面17とが離れてしまった場合に、ロックボルト用プレート1aの増し締めを行うことができる。
【0043】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0044】
例えば本発明のロックボルト用プレートには、雌ねじの長さが、所要の引抜耐力が得られるロックボルトの雄ねじとの螺合長と、引抜試験用のテンションバーの取付に必要とされるテンションバーの雄ねじとの螺合長との合計以上の長さである場合が包含されるが、ある程度の余裕を持たせ、又、寸法誤差等に対応するため、雌ねじの長さを、所要の引抜耐力が得られるロックボルトの雄ねじとの螺合長と、引抜試験用のテンションバーの取付に必要とされるテンションバーの雄ねじとの螺合長との合計を超える長さとし、前述の合計+例えば2ピッチ分等のプラスαの長さとすると好適である。
【0045】
また、本発明のロックボルト用プレートにおける、キャップをナット部の先端側に外嵌し、増し締め用の空隙を形成する構成は、第1実施形態のキャップ4の周壁端部をナット部2のテーパ面241の立ち上がり箇所近傍に引っ掛ける構成以外にも適宜であり、例えばキャップの周壁を底板に向かって漸次径が窄まるように形成し、このキャップをナット部の先端側に外嵌し、増し締め用の空隙が設けられる位置に配置する構成等とすることが可能である。尚、本発明におけるキャップの材料は、ナット部とフランジ部の材料或いはナット部の材料よりも、強度が低く、変形しやすい性質のものとすると良好である。
【0046】
また、ロックボルト用プレートのナット部の雌ねじの先端側から雌ねじの途中位置までロックボルトの基端側の雄ねじが螺合される本発明のロックボルト設置構造は、トンネルの吹付コンクリートの内周面全体などロックボルトの設置領域の全体に亘って設ける構成の他、ロックボルトの設置領域の引抜試験を実施する一部だけに設ける構成とすることも可能である。この場合、引抜試験を行わないロックボルトの設置個所では、本発明のロックボルト用プレートの雌ねじの全部にロックボルトの雄ねじを螺合させてもよい。