【解決手段】制御信号発生器110は、制御信号を生成する。駆動回路120は、プッシュプル形式の出力段122を有し、制御信号発生器110が生成した制御信号に応じた駆動電圧を静電容量Csに印加する。電流検出回路130は、駆動回路120の出力段122に流れる電流のレプリカである検出電流を生成する。積分回路140は、検出電流を積分し、検出電圧を生成する。
充電中に得られた前記検出電圧と、放電中に得られた前記検出電圧と、の差分を演算することにより、前記静電容量を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の容量検出回路。
一端が前記積分回路の入力に接続され、他端に前記制御信号に応じた補正信号が印加されるオフセット用キャパシタをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の容量検出回路。
充電中に得られた前記検出電圧と、放電中に得られた前記検出電圧と、の差分を演算するステップをさらに備えることを特徴とする請求項12または13に記載の検出方法。
充電中に得られた前記検出電流と、放電中に得られた前記検出電流と、を積分することにより、前記検出電圧を生成することを特徴とする請求項12または13に記載の検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、静電容量を測定する容量検出回路に関する。容量測定装置は、制御信号を生成する制御信号発生器と、プッシュプル形式の出力段を有し、制御信号に応じた駆動電圧を静電容量に印加する駆動回路と、駆動回路の出力段に流れる電流のレプリカである検出電流を生成する電流検出回路と、検出電流を積分し、検出電圧を生成する積分回路と、を備える。
【0023】
この実施の形態によれば、以下の少なくともひとつの利点を享受できる。
・出力段のトランジスタを、ダイオード接続する必要がなくなるため、ヘッドルームを小さくでき、容量検出の精度を高めることができる。
・駆動回路の応答遅れにより、静電容量の電圧をわずかに鈍らせることが可能である。これにより、充電電流、放電電流の急峻な変化を抑制できるため、信号の伝搬経路上の寄生容量の影響を低減できる。
・駆動回路は、プッシュプル動作が可能であるから、交流ノイズが入力したときに、交流ノイズの影響がそのまま検出電流に現れる。このノイズは、フィルタにより除去しやすく、また、1周期分を積分すればゼロとなるため、ノイズの耐性を高めることができる。
・充電動作と放電動作の両方をセンシングに割り当てることができるため、無駄な電力消費を低減できる。またセンシングの精度を高め、あるいはセンシングの周波数を高めることが可能となる。
【0024】
制御信号はパルス信号であり、駆動回路は、パルス信号を増幅するアンプを含んでもよい。アンプは、バッファ(ボルテージフォロア)、非反転アンプ、反転アンプのいずれであってもよい。
【0025】
積分回路は、充電中に得られた検出電流と、放電中に得られた検出電流と、を積分してもよい。
【0026】
充電中に得られた検出電圧と、放電中に得られた検出電圧と、の差分を演算することにより、静電容量を取得してもよい。
【0027】
駆動回路は、駆動回路の出力電圧に応じたフィードバック信号が、制御信号と一致するように、出力段のハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタを制御する差動入力段と、ハイサイドトランジスタと制御端子が共通に接続される第1トランジスタと、ローサイドトランジスタと制御端子が共通に接続される第2トランジスタと、を含んでもよい。検出電流は、第1トランジスタに流れる電流と第2トランジスタに流れる電流の差分に応じていてもよい。
【0028】
容量検出回路は、一端が積分回路の入力に接続されるオフセット用のキャパシタをさらに備えてもよい。オフセット用のキャパシタの他端に制御信号に応じた補正信号が印加されてもよい。これにより、検出信号をオフセットすることができる。
【0029】
容量検出回路は、ひとつの半導体集積回路上に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0030】
本明細書に開示される別の実施の形態は、複数の静電容量を測定可能な半導体装置に関する。半導体装置は、複数の静電容量が接続される複数のセンス端子と、複数のセンス端子に対応する、複数の容量検出回路と、を備えてもよい。
【0031】
半導体装置は、複数の容量検出回路において得られる複数の検出電流の平均電流を生成する電流平均化回路をさらに備えてもよい。各容量検出回路の積分回路は、対応する検出電流と平均電流の差分を積分してもよい。これにより、各静電容量の相対的な変化量を検出できる。
【0032】
本明細書に開示される別の実施の形態は、入力装置に関する。入力装置は、複数のセンサ電極を含み、ユーザの接触した座標近傍のセンサ電極の静電容量が変化するタッチ式センサと、複数のセンサ電極の容量を測定する半導体装置と、を備えてもよい。
【0033】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0034】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0035】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0036】
図3は、実施の形態に係る容量検出回路100の回路図である。容量検出回路100は自己容量(Self Capacitance)方式によって静電容量Csを測定し、静電容量Csを示す検出電圧V
OUTを生成する。容量検出回路100は、ひとつの半導体基板に集積化され、センス端子(センスピン)SNSに静電容量Csが接続される。
【0037】
制御信号発生器110は、制御信号S
CTRLを生成する。制御信号S
CTRLは、パルスを用いることができるがその限りでなく、台形波などを用いてもよい。
【0038】
駆動回路120は、プッシュプル形式の出力段122を有する。駆動回路120は、制御信号S
CTRLに応じた駆動電圧V
DRVを静電容量Csに印加する。出力段122には静電容量Csの電圧(センス端子の電圧)の変化に応じた駆動電流I
DRVが流れる。駆動電流I
DRVは、出力段122のハイサイドトランジスタ124に流れるソース電流I
SRCと、ローサイドトランジスタ126に流れるシンク電流I
SINKの差分である。
【0039】
駆動回路120は、前段の差動入力段128と後段の出力段122を含むオペアンプで構成することができる。差動入力段128は、駆動電圧V
DRVに応じたフィードバック信号V
FBが、制御信号S
CTRLと一致するように、出力段122のハイサイドトランジスタ124とローサイドトランジスタ126それぞれを制御する。
【0040】
図4(a)〜(c)は、駆動回路120の回路図である。
図4(a)の駆動回路120は、バッファアンプ(ボルテージフォロア)であり、オペアンプOPAMP1の出力と反転入力端子が接続され、非反転入力端子に制御信号S
CTRLが入力される。
【0041】
図4(b)の駆動回路120は非反転アンプであり、オペアンプOPAMP1に加えて、フィードバック抵抗R
1,R
2を含む。
図4(c)の駆動回路120は反転アンプであり、オペアンプOPAMP1に加えて、抵抗R
3,R
4を含む。なお、駆動回路120の構成はここで例示したものに限定されない。
【0042】
図3に戻る。電流検出回路130は、駆動回路120の出力段に流れる駆動電流I
DRVのレプリカである検出電流I
Sを生成する。検出電流I
Sは、駆動電流I
DRVと等しくてもよいし、スケーリングしてもよい。
【0043】
電流検出回路130は、第1トランジスタ132、第2トランジスタ134を含む。第1トランジスタ132は、ハイサイドトランジスタ124と同型のPチャンネルMOSトランジスタであり、制御端子(ゲート)が共通に接続される。第1トランジスタ132には、ハイサイドトランジスタ124に流れるソース電流I
SRCに比例した電流I
SRC’=k×I
SRCが流れる。第2トランジスタ134は、ローサイドトランジスタ126と同型であり、制御端子(ゲート)が共通に接続される。第2トランジスタ134には、ローサイドトランジスタ126に流れるシンク電流I
SINKに比例した電流I
SINK’=k×I
SINKが流れる。
【0044】
第1トランジスタ132のドレインと第2トランジスタ134のドレインは、電流検出回路130の出力ノードに接続される。電流検出回路130が生成する検出電流I
Sは、以下の式で表される。
I
S=I
SRC’−I
SINK’
【0045】
積分回路140は、検出電流I
Sを積分し、検出電圧V
OUTを生成する。積分回路140の構成は特に限定されないが、たとえば積分回路140は、積分用キャパシタC
INTと、オペアンプ142を含む。積分用キャパシタC
INTは、オペアンプ142の出力と反転入力端子の間に設けられる。
【0046】
以上が容量検出回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0047】
(第1の動作例)
図5は、
図3の容量検出回路100の第1の動作例を示す波形図である。第1の動作例では、充電中(放電中)に得られた検出電圧V
OUT[i]と、放電中(充電中)に得られた検出電圧V
OUT[i+1]と、の差分を演算することにより、静電容量Cs[i]を取得する。以下、詳しく説明する。
【0048】
制御信号S
CTRLは、ハイとローを繰り返すパルス信号である。駆動回路120は、制御信号S
CTRLに応じた駆動電圧V
DRVを、センス端子に発生させる。センス端子に生ずる駆動電圧V
DRVは、駆動回路120の応答遅れにより、制御信号S
CTRLより鈍った波形となりうる。
【0049】
駆動電圧V
DRVが上昇するとき、駆動回路120は、出力電流I
DRVをソースする(I
DRV>0)。駆動電圧V
DRVが低下するとき、駆動回路120は、出力電流I
DRVをシンクする(I
DRV<0)。
【0050】
電流検出回路130によって、出力電流I
DRVのレプリカである検出電流I
Sが生成される。検出電流I
Sは、後段の積分回路140によって積分され、検出電圧V
OUTに変換される。制御信号S
CTRLのエッジ毎に発生する検出電圧V
OUTの変化幅ΔV
OUTは、1回の充電動作(あるいは放電動作)において、静電容量Csに供給される電荷量Qを表す。
【0051】
一方で、1回の充電動作(あるいは放電動作)における駆動電圧V
DRVの変動幅ΔV
DRVは、ΔV
DRV=V
DD−V
HR−V
FRで表され、定数とみなすことができる。V
HRは主としてハイサイドトランジスタ124の飽和電圧で定まるヘッドルーム電圧であり、V
FRは主としてローサイドトランジスタ126の飽和電圧で定まるフットルーム電圧である。
【0052】
i回目の充電(あるいは放電)時における静電容量をCs[i]とするとき、充電電荷量(あるいは放電電荷量)Q[i]は、Q[i]=Cs[i]×ΔV
DRVである。i回目の充電(あるいは放電)において得られる出力電圧V
OUTの変化幅ΔV
OUT[i]は、充電電荷量(放電電荷量)を表すから、式(1)が成り立つ。
ΔV
OUT[i]=Cs[i]×ΔV
DRV …(1)
ΔV
DRVは定数であるから、ΔV
OUT[i]は、静電容量Cs[i]を表す。
【0053】
以上が容量検出回路100の第1の動作例である。
【0054】
続いて容量検出回路100の利点を説明する。
図6(a)、(b)は、電圧波形および電流波形の拡大図である。
【0055】
・第1の利点
図6(a)には、センス端子の駆動電圧V
DRVが示される。比較のために、
図1の容量検出回路10におけるセンス端子の電圧V
SNSを一点鎖線で示す。センス端子の電圧V
SNSのヘッドルーム電圧は、トランジスタM
1のゲートソース間電圧で規定され0.6V程度であり、電源電圧V
DDが1.5Vとすると、センス端子の電圧変化幅ΔV
SNSはV
DD−V
HR=0.9Vである。
【0056】
これに対して、
図3の容量検出回路100における駆動電圧V
DRVのヘッドルーム電圧V
HRは0.1V程度まで小さくできる。同程度のフットルーム電圧V
FRが導入されるが、それであっても駆動電圧V
DRVの変化幅ΔV
DRVは、V
DD−V
HR−V
FR=1.5V−0.1V−0.1V=1.3Vとなり、
図1に比べて拡大される。
【0057】
式(1)から明らかなように、静電容量Csの検出感度は、ΔV
DRVが大きいほど高くなる。したがって
図3の容量検出回路100によれば、検出感度を高めることができる。
【0058】
・第2の利点
図6(b)には、駆動電流I
DRVが示される。比較のために、
図1の充電回路20に流れる充電電流I
CHGを一点鎖線で示す。この充電電流I
CHGは非常に急峻であり、高い周波数成分を含む。高周波成分は、充電電流I
CHGを検出信号I
Sに変換し、さらに検出信号V
OUTに変換する過程において寄生のローパスフィルタによりフィルタリングされ、検出精度の低下を招く。
【0059】
一方、
図3の容量検出回路100では、駆動回路120の応答速度の影響で、駆動電圧V
DRVの変化速度(スルーレート)が制限されており、駆動電流I
DRVに含まれる周波数成分が、低周波数側にシフトしている。そのため、駆動電流I
DRVを検出信号I
Sに変換し、さらに検出信号V
OUTに変換する過程において、フィルタリングにより失われる成分が少なくなり、検出精度の低下を抑制することができる。なお、制御信号S
CTRLの傾きを制限することで、この効果をさらに高めてもよい。
【0060】
・第3の効果
図1では、充電回路20は充電動作のみ可能であり、非対称性を有する。この非対称性により、センス端子SNSに交流のノイズNが入力されたとき、検出電流I
Sは、ノイズのうち半波の影響を受けることとなり、したがって、検出電圧V
OUTにも、ノイズの半波分の影響が現れ、ノイズ成分のフィルタリングが難しくなる。
【0061】
これに対して、
図3では、駆動回路120は、プッシュプル動作が可能であるから、交流ノイズが入力したときに、交流ノイズの影響がそのまま検出電流I
Sに現れる。検出電流I
Sに含まれるノイズは、フィルタにより除去しやすく、また、1周期分を積分すればゼロとなる。したがって
図3の容量検出回路100によれば、ノイズの耐性を高めることができる。
【0062】
・第4の効果
図1の容量検出回路10では、放電はリセットに利用されており、無駄な電力を消費していた。これに対して、
図3の容量検出回路100によれば、
図5のように動作させることにより、充電動作と、放電動作それぞれにおいて、静電容量Csを検出できる。したがって、無駄な電力消費を低減できる。
【0063】
・第5の効果
また、充電と放電それぞれで静電容量Csを検出することにより、センシングの周波数を2倍に高めることが可能である。
【0064】
・第6の効果
駆動回路120の出力インピーダンスは、
図1の容量検出回路10における充電回路の出力インピーダンスよりも低くなる。これにより、ノイズ耐性を高めることが可能である。
【0065】
(第2の動作例)
図7は、
図3の容量検出回路100の第2の動作例を示す波形図である。第2の動作例では、充電と放電の1セットが、1回の検出サイクルとなる。積分回路140は、充電中の検出電流I
Sと、放電中の検出電流I
Sを、同じ極性で積分する。
【0066】
1回の充電と1回の放電によって発生する検出電圧V
OUTの変動幅ΔV
OUTは、静電容量Csを表す。この例では、1回の検出サイクルごとに、検出電圧V
OUTを変化させる方向を反転している。
【0067】
図8は、第2の動作例に対応する積分回路140の回路図である。積分回路140には、複数のスイッチSW
11〜SW
14が追加されている。スイッチSW
11〜SW
14は、積分用キャパシタC
INTと、オペアンプ142の接続を切りかえることができる。
【0068】
検出電圧V
OUTを増加させる検出サイクルでは、充電フェーズφ
1において、スイッチSW
11,SW
14がオンとなり、残りのスイッチSW
12,SW
13がオフとなる。反対に放電フェーズφ
2において、スイッチSW
11,SW
14がオフとなり、残りのスイッチSW
12,SW
13がオンとなる。
【0069】
検出電圧V
OUTを低下させる検出サイクルでは、スイッチの状態を逆とすればよい。
【0070】
図7では、1回の検出サイクルごとに、検出電圧V
OUTを変化させる方向を反転しているがその限りでない。1回の検出サイクルが完了するごとに、積分用キャパシタC
INTの電荷を初期化し、出力電圧V
OUTをゼロリセットすることで、検出電圧V
OUTを常に同じ方向に方向させることも可能である。
【0071】
図9は、変形例に係る容量検出回路100Aの回路図である。容量検出回路100Aは、
図3の容量検出回路100に加えて、オフセット用のキャパシタC
OFSをさらに備える。オフセット用キャパシタC
OFSの一端は、積分回路140の入力に接続され、その他端には、制御信号S
CTRLに応じた補正信号が印加される。
【0072】
オフセット用キャパシタC
OFSを設けることにより、検出信号V
OUTを、オフセット用キャパシタC
OFSに応じた電圧幅、オフセットすることができる。
【0073】
たとえば後述するタッチパネルのようなアプリケーションでは、静電容量Csの容量自体でなく、基準値からの変位量を取得したい場合がある。したがってオフセット用キャパシタC
OFSの容量値を、基準値に対応して規定することにより、変位量を示す検出信号V
OUTを得ることができる。
【0074】
あるいは、センス端子SNSには、静電容量Csのほか、寄生容量が接続され、その影響を除去したい場合がある。そこで寄生容量に応じてオフセット用キャパシタC
OFSの容量を規定することにより、寄生容量の影響を低減できる。
【0075】
図10は、容量検出回路を備える入力装置200を示す図である。入力装置200は、タッチ式センサ210と、半導体装置300を備える。たとえばタッチ式センサ210は、タッチパネルであり、半導体装置300は、タッチパネルコントローラであってもよい。
【0076】
タッチ式センサ210は、複数のセンサ電極212を含む。ユーザの接触した座標近傍のセンサ電極212の静電容量Csが変化する。半導体装置300は、複数のセンサ電極212それぞれの静電容量Csを測定し、タッチされたセンサ電極212を特定する。
【0077】
半導体装置300は、複数のセンス端子SNSと、複数の容量検出回路100Bと、A/Dコンバータ302を備える。
【0078】
容量検出回路100B_#(#=1〜N)は、対応する静電容量Cs#の容量を測定する。A/Dコンバータ302は、容量検出回路100Bの出力電圧V
OUT#をデジタル値に変換する。
【0079】
半導体装置300はさらに、電流平均化回路310を備える。電流平均化回路310は、複数の容量検出回路100Bにおいて得られる複数の検出電流I
Sの平均電流I
AVEを生成する。平均電流I
AVEは、複数の容量検出回路100Bに戻される。
【0080】
容量検出回路100B#の積分回路140は、対応する検出電流I
S#と平均電流I
AVEの差分を積分し、検出電圧V
OUT#を生成する。容量検出回路100Bは、
図3の容量検出回路100を基本と構成することができる。
【0081】
検出電圧V
OUT1〜V
OUTNは、A/Dコンバータ302によってデジタル値D
OUT1〜D
OUTNに変換される。A/Dコンバータ302の前段にマルチプレクサ304を配置し、時分割でチャンネルを切り替えることで、A/Dコンバータ302の個数を減らすことができる。
【0082】
以上が半導体装置300の構成である。チャンネル数Nが大きいとき、タッチの有無にかかわらず、複数のセンサ電極212の容量Cs1〜CsNの平均値は一定と近似することができ、したがってタッチの有無にかかわらず、平均電流I
AVEも一定とみなすことができる。したがって検出電流I
S#と平均電流I
AVEの差分は、静電容量Cs#の非タッチ状態における値(基準値)からの変動量に応じたものとなり、検出電圧V
OUT#は、静電容量Cs#の基準値からの変動量を示す。
【0083】
平均電流I
AVEを利用することにより、静電容量Csの変化量を、高精度に検出することができる。
【0084】
図11は、
図10の半導体装置300の一部の回路図である。電流平均化回路310は、駆動回路120のソース電流I
SRCの平均電流I
SRC(AVE)を生成する第1回路312と、シンク電流I
SINKの平均電流I
SINK(AVE)を生成する第2回路314と、を含む。
【0085】
第1回路312は、トランジスタM
11,M
12,M
13を含む。トランジスタM
11の制御端子は、ハイサイドトランジスタ124の制御端子と共通に接続され、ソース電流I
SRCに比例した検出電流I
SRC”を生成する。検出電流I
SRC”は、トランジスタM
12,M
13を含むカレントミラー回路313の入力側に供給される。カレントミラー回路313の制御端子(ゲート)は、他のチャンネルの対応する端子と共通に接続される。その結果、カレントミラー回路313の出力側のトランジスタM
13には、全チャンネルの検出電流I
SRC”の平均電流(ソース平均電流)I
SRC(AVE)が流れる。ソース平均電流I
SRC(AVE)は、電流検出回路130の出力ノードからシンクされる。
【0086】
第2回路314は、トランジスタM
21,M
22,M
23を含む。トランジスタM
21の制御端子は、ローサイドトランジスタ126の制御端子と共通に接続され、シンク電流I
SINKに比例した検出電流I
SINK”を生成する。検出電流I
SINK”は、トランジスタM
22,M
23を含むカレントミラー回路315の入力側に供給される。カレントミラー回路315の制御端子(ゲート)は、他のチャンネルの対応する端子と共通に接続される。その結果、カレントミラー回路315の出力側のトランジスタM
23には、全チャンネルの検出電流I
SINK”の平均電流(シンク平均電流)I
SINK(AVE)が流れる。シンク平均電流I
SINK(AVE)は、電流検出回路130の出力ノードにソースされる。
【0087】
電流検出回路130および電流平均化回路310により生成される差分電流I
S(DIFF)は、以下の式で与えられる。
I
S(DIFF)=(I
SRC’−I
SINK’)−(I
SRC(AVE)−I
SINK(AVE))
ここで、右辺第1項は、駆動電流I
DRVの検出電流I
S=I
SRC’−I
SRC’である。また右辺第2項は、検出電流I
Sの平均電流I
S(AVE)である。したがって、
図11の構成によれば、各チャンネルにおいて、検出電流I
Sと、全チャンネルの検出電流I
Sの平均値I
S(AVE)の差分電流I
S(DIFF)にもとづく容量検出が可能となる。
【0088】
図12は、
図10の入力装置200を備える電子機器900のブロック図である。電子機器600は、携帯電話端末、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、デジタルスチルカメラ、ポータブル音楽プレイヤ−、リモコンなど、が例示される。
【0089】
電子機器900は、入力装置200に加えて、DSP(Digital Signal Processor)902およびLCD(Liquid Crystal Display)904を備える。入力装置200は、タッチパネルであるタッチ式センサ210と、タッチパネルの制御ICである半導体装置300を備える。タッチ式センサ210は、規則的に配置された複数のセンサ電極(
図12には不図示)を含む。たとえばセンサ電極は、Y方向に伸び、X方向に隣接する複数のX側電極と、X方向に伸び、Y方向に隣接する複数のY側電極と、を含む。半導体装置300は、複数のX側電極の容量変化にもとづいて、タッチされた点のX座標を判定し、複数のY側電極の容量変化にもとづいて、タッチされた点のY座標を判定する。タッチされた点の座標情報はDSP902に供給される。
【0090】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0091】
実施の形態においては、容量検出回路100を静電容量の変化を利用した入力装置に適用した場合について説明したが、容量検出回路100の用途はこれに限定されるものではない。たとえば、キャパシタ型マイクロフォンなど、ダイアフラム電極とバックプレート電極によってキャパシタが形成され、音圧によりキャパシタの静電容量が変化するようなマイクロフォンに適用することができる。