【解決手段】船体10と、船体10に設けられた上甲板11と、上甲板11に形成された上面視円形状を呈する開口部11Aから上部が突出するように船体10に設けられた独立タンク12と、独立タンク12の上部を覆う独立カバー13と、船首尾方向に延びて上甲板11を下方から支持する縦通隔壁14と、上甲板11の下面における独立カバー13の下端に対応する位置から下方に向けて突出するとともに、少なくとも1つが、ホールド中央線L1を、船首尾方向に挟む位置に跨って周方向に延び、円弧状をなす複数の円弧状ガーダー16と、円弧状ガーダー16における縦通隔壁14に最も近接する部分を含む周方向の所定領域Kを除く部分に設けられて、縦通隔壁14と円弧状ガーダー16とを接続する複数の支持ブラケット17と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ブラケット部材が、上甲板の下面における独立カバーの下端に対応する位置に、独立カバーの下端に沿って断続的に設けられているので、独立カバーを支持する上甲板の強度に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、上甲板の強度を確保することができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明の一態様に係る船舶は、船体と、該船体に設けられた上甲板と、前記船体の上甲板に形成された上面視円形状を呈する開口部から上部が突出するように前記船体に設けられた独立タンクと、前記独立タンクの上部を覆うとともに、下端が前記開口部に沿って前記上甲板上に設けられた独立カバーと、前記船体内に設けられ、前記上甲板における前記開口部の船幅方向の外側で、船首尾方向に延びて前記上甲板を下方から支持する縦通隔壁と、前記上甲板の下面における前記独立カバーの下端に対応する位置から下方に向けて突出するとともに、上面視における前記独立タンクの中心を通り、かつ船幅方向に延びるホールド中央線を、船首尾方向に挟む位置に跨って前記開口部の周方向に延び、円弧状をなす円弧状ガーダーと、前記円弧状ガーダーにおける前記縦通隔壁に最も近接する部分を含む周方向の所定領域を除く部分に設けられて、前記縦通隔壁と前記円弧状ガーダーとを船幅方向に接続する複数の支持ブラケットと、を備えている。
【0007】
この構成によれば、円弧状ガーダーが、上甲板の下面における独立カバーの下端に対応する位置から下方に向けて突出するとともに、ホールド中央線を船首尾方向に挟む位置に跨って周方向に沿って円弧状に延びている。このため、独立カバーを支持する上甲板が上下方向に撓み変形するのを、円弧状ガーダーにより抑えることができる。これにより、上甲板および独立カバーの強度を確保することができる。
【0008】
また、上記の船舶は、前記円弧状ガーダーのうち、前記所定領域に位置する部分は、前記支持ブラケットが設けられた部分よりも、下方に向けた突出量が小さくてもよい。
【0009】
この構成によれば、円弧状ガーダーのうち、支持ブラケットが設けられず、独立カバーの荷重を直接支持することのない所定領域に位置する部分の下方に向けた突出量を小さくすることで、円弧状ガーダー全体の体積を小さくすることが可能になる。これにより、円弧状ガーダーにより上甲板の強度を確保しながら、船舶全体の重量が大きくなるのを抑えることができる。
【0010】
また、上記の船舶は、前記縦通隔壁に直交して接続され、かつ前記縦通隔壁に沿って上下方向に延びるとともに、船首尾方向に互いに間隔をあけて設けられた複数の支持フレームを備え、前記所定領域の船首尾方向の大きさは、互いに隣り合う前記支持フレーム同士の間の間隔の半分以上であってもよい。
【0011】
この構成によれば、所定領域の船首尾方向の大きさが、互いに隣り合う支持フレーム同士の間の間隔の半分以上となっているので、円弧状ガーダーのうち、縦通隔壁に最も近接する部分の周辺に支持ブラケットを設ける必要が無い。このため、縦通隔壁との船幅方向の距離が小さい部分に、例えば溶接作業等により支持ブラケットを接続する作業を行う必要が無く、支持ブラケットを円弧状ガーダーおよび縦通隔壁に接続する際の作業性を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の船舶によれば、上甲板の強度を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る船舶1は、船体10と、船体10に設けられた上甲板11と、船体10の上甲板11に形成された上面視円形状を呈する開口部11Aから上部が突出するように船体10に設けられた独立タンク12と、独立タンク12の上部を覆うとともに、下端が開口部11Aに沿って上甲板11上に設けられた独立カバー13と、を備えている。
【0015】
以下の説明において、船体10における船首10Aと船尾10Bとを結ぶ方向を船首尾方向X、上面視で船首尾方向Xと直交する方向を船幅方向Y、船首尾方向Xおよび船幅方向Yの双方と直交する方向を上下方向Zという。また、船首尾方向Xおよび船幅方向Yにおいて、船体10の外側を向く方向を外側といい、船体10の内側を向く方向を内側という。また、上面視で開口部11Aの各中心軸O1回りに周回する方向を周方向という。
【0016】
上甲板11の開口部11Aは、船体10における船幅方向Yの中央部に位置している。
独立タンク12は球体状を呈し、船体10に複数設けられている。図示の例では、船首尾方向Xに沿って3つの独立タンク12が船体10に配置されている。なお、独立タンク12は2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
独立カバー13は上面視で円形状を呈している。複数の独立カバー13は、複数の独立タンク12の上部を各別に覆っている。上面視で、独立タンク12および独立カバー13は、中心軸O1と同軸に配置されている。
【0017】
船体10内には、船首尾方向Xに延びる縦通隔壁14が設けられている。縦通隔壁14は、上甲板11における開口部11Aの船幅方向Yの外側で、上甲板11を支持している。縦通隔壁14は、上甲板11の下面と、例えば船体10の底部の上面と、を接続している。なお、縦通隔壁14は船体10内に設けられた中甲板等と接続されてもよい。
図2に示すように、縦通隔壁14は、船体10内のうち、上甲板11における開口部11Aの船幅方向Yの両外側に設けられている。縦通隔壁14の船幅方向Yの外側には、互いに船幅方向に間隔をあけて配置され、船首尾方向Xに延びる複数の縦通骨材18が設けられている。縦通隔壁14は、開口部11Aの船幅方向Yの両外側に各別に設けられている。
【0018】
縦通隔壁14には、縦通隔壁14に沿って上下方向Zに延びる支持フレーム15が接続されている。支持フレーム15は、縦通隔壁14に直交して接続されるとともに、船首尾方向Xに互いに間隔をあけて複数設けられている。
支持フレーム15は複数の縦通隔壁14それぞれに接続されるとともに、船体10における船側外板10Cに接続されている。複数の支持フレーム15は、船首尾方向Xに間隔をあけて配置されている。なお、複数の支持フレーム15同士の間は、互いに等間隔をなしてもよい。
【0019】
図2および
図3に示すように、上甲板11の下面における独立カバー13の下端に対応する部分には、下方に向けて突出する円弧状ガーダー16が設けられている。円弧状ガーダー16は、周方向に延び、円弧状をなしている。円弧状ガーダー16は、上面視で独立カバー13の下端の一部と重複する位置に設けられている。
円弧状ガーダー16は周方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、円弧状ガーダー16は2つ設けられ、上面視で中心軸O1を船幅方向Yに挟む位置に各別に配置されている。
円弧状ガーダー16は、上面視における独立タンク12の中心を通り、かつ船幅方向Yに延びるホールド中央線L1を船首尾方向Xに挟む位置に跨っている。円弧状ガーダー16の船首尾方向Xの中央部が、上面視でホールド中央線L1と重なっている。
【0020】
図2(b)に示すように、円弧状ガーダー16の下方に向けた突出量は、船首尾方向Xの位置により異なっている。円弧状ガーダー16は、船幅方向Yから見た側面視で、開口部11Aの中心軸O1を船首尾方向Xに挟んで対称な形状をなしている。円弧状ガーダー16の下方に向けた突出量は、前記側面視で、開口部11Aの中心軸O1と重なる船首尾方向Xの中央部分16Aで最も小さく、中心軸O1から船首尾方向Xの外側に向かうに従い、段階的に大きくなっている。
【0021】
円弧状ガーダー16のうち、船首尾方向Xの中央部分16Aに対して船首尾方向Xの両外側に位置する中間部分16Bの下方に向けた突出量、および船首尾方向Xの中間部分16Bに対して船首尾方向Xの両外側に位置する周端部分16Cの下方に向けた突出量はそれぞれ、中央部分16Aの下方に向けた突出量よりも大きくなっている。周端部分16Cの下方に向けた突出量は、中間部分16Bの下方に向けた突出量よりも大きくなっている。
本実施形態では、中央部分16Aの船首尾方向Xの大きさH1は、中間部分16Bの船首尾方向Xの大きさH2よりも大きくなっている。中間部分16Bおよび周端部分16Cそれぞれの船首尾方向Xの大きさH2、H3は、互いに同等となっている。
【0022】
円弧状ガーダー16の中央部分16Aにおいて、中間部分16Bとの接続部分の下端部は、前記側面視で上方に向けて窪む曲線状に形成されている。中間部分16Bにおいて、周端部分16Cとの接続部分の下端部は、前記側面視で上方に向けて窪む曲線状に形成されている。
なお、このような態様に限られず、円弧状ガーダー16の形状は任意に変更可能である。
【0023】
図2および
図4に示すように、船舶1は、縦通隔壁14と円弧状ガーダー16とを船幅方向Yに接続する複数の支持ブラケット17を備えている。支持ブラケット17は、1つの円弧状ガーダー16に対して船首尾方向Xに間隔をあけて複数設けられている。
支持ブラケット17は、円弧状ガーダー16における縦通隔壁14に最も近接する部分(以下、近接部P1という)を含む周方向の所定領域Kを除く部分に設けられている。近接部P1は、前記側面視でホールド中央線L1と重なる部分に位置している。図示の例では、所定領域Kが、前述した中央部分16Aと一致している。
【0024】
支持ブラケット17は、船幅方向Yの片側に位置する複数の縦通隔壁14のうち、船幅方向Yの内側に位置する縦通隔壁14に接続されている。
円弧状ガーダー16における所定領域Kは、近接部P1を中心として船首尾方向Xに延びている。なお、このような態様に限られず、所定領域Kは、中心軸O1を中心とせずに船首尾方向Xに延びてもよい。
【0025】
図4に示すように、支持ブラケット17は、表裏面が船首尾方向Xを向くとともに、船首尾方向Xから見た正面視で台形状をなす板状部材である。
支持ブラケット17の側縁部のうち、台形状の上底をなし、船幅方向Yの内側を向く内側縁部は、円弧状ガーダー16に溶接等により接続されている。支持ブラケット17の側縁部のうち、台形状の下底をなし、船幅方向Yの外側を向く外側縁部は、縦通隔壁14に溶接等により接続されている。
支持ブラケット17の側縁部のうち、台形状の脚をなし、上方を向く上側縁部は、上甲板11の下面に溶接等により接続されている。なお、台形状の脚をなし、下方を向く下側縁部は、前記正面視で下方に向けて突出する曲線状に形成されてもよい。
【0026】
図2(a)に示すように、複数の支持ブラケット17は、船首尾方向Xの位置により大きさが互いに異なっている。すなわち、上面視でホールド中央線L1から船首尾方向Xの外側に向けて、縦通隔壁14と円弧状ガーダー16との間の船幅方向Yの大きさが大きくなるのに伴って、支持ブラケット17の船幅方向Yの大きさが大きくなっている。複数の支持ブラケット17は、近接部P1(ホールド中央線L1)を船首尾方向Xに挟む位置に対称に配置されている。
【0027】
円弧状ガーダー16のうち、所定領域Kに位置する部分は、支持ブラケット17が設けられた部分よりも下方に向けた突出量が小さくなっている。
円弧状ガーダー16の所定領域Kの船首尾方向Xの大きさは、互いに隣り合う支持フレーム15同士の間の間隔の半分以上となっている。図示の例では、円弧状ガーダー16の中央部分16Aにおける船首尾方向Xの両端部に、支持フレーム15が各別に接続されている。すなわち、所定領域Kの船首尾方向Xの大きさと、互いに隣り合う支持フレーム15同士の間の間隔と、が互いに一致している。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る船舶1によれば、円弧状ガーダー16が、上甲板11の下面における独立カバー13の下端に対応する位置から下方に向けて突出するとともに、ホールド中央線L1を船首尾方向Xに挟む位置に跨って周方向に円弧状に延びている。このため、独立カバー13を支持する上甲板11が上下方向Zに撓み変形するのを、円弧状ガーダー16により抑えることができる。これにより、上甲板11および独立カバー13の強度を確保することができる。
【0029】
また、円弧状ガーダー16のうち、所定領域Kに位置する部分は、支持ブラケット17が設けられた部分よりも下方に向けた突出量が小さくなっている。このため、円弧状ガーダー16のうち、支持ブラケット17が設けらず、独立カバー13の荷重を直接支持することのない所定領域Kに位置する部分の下方に向けた突出量を小さくすることで、円弧状ガーダー16全体の体積を小さくすることが可能になる。これにより、円弧状ガーダー16により上甲板11の強度を確保しながら、船舶1全体の重量が大きくなるのを抑えることができる。
【0030】
また、所定領域Kの船首尾方向Xの大きさが、互いに隣り合う支持フレーム15同士の間の間隔の半分以上となっているので、円弧状ガーダー16のうち、縦通隔壁14に最も近接する近接部P1の周辺に支持ブラケット17を設ける必要が無い。このため、縦通隔壁14との船幅方向Yの距離が小さい部分に、例えば溶接作業等により支持ブラケット17を接続する作業を行う必要が無く、支持ブラケット17を円弧状ガーダー16および縦通隔壁14に接続する際の作業性を確保することができる。
また、縦通隔壁14との船幅方向Yの距離が小さいために、支持ブラケット17を設けることが難しい所定範囲K内においても、円弧状ガーダー16が下方に向けて突出していることにより、上甲板11のうち、所定範囲Kと上面視で重なる部分の強度を確実に確保することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態では、円弧状ガーダー16のうち、所定領域Kに位置する部分は、支持ブラケット17が設けられた部分よりも下方に向けた突出量が小さい構成を示したが、このような態様に限られない。円弧状ガーダー16のうち、所定領域Kに位置する部分は、支持ブラケット17が設けられた部分よりも下方に向けた突出量が大きくてもよいし、周方向の全域にわたって、下方に向けた突出量が同等であってもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、所定領域Kの船首尾方向Xの大きさが、互いに隣り合う支持フレーム同士の間の間隔の半分以上である構成を示したが、このような態様に限られない。
所定領域Kの船首尾方向Xの大きさは、互いに隣り合う支持フレーム同士の間の間隔の半分未満であってもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、円弧状ガーダー16が、上面視で中心軸O1を船幅方向Yに挟む位置に2つ設けられた構成を示したが、このような態様に限られない。円弧状ガーダー16は3つ以上設けられてもよい。