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特開2019-144751発電プラント運転データを用いた発電プラントの水質異常検出装置、及び水質異常検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-144751(P2019-144751A)
(43)【公開日】2019年8月29日
(54)【発明の名称】発電プラント運転データを用いた発電プラントの水質異常検出装置、及び水質異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20190802BHJP
【FI】
   G05B23/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-27108(P2018-27108)
(22)【出願日】2018年2月19日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】西 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】江口 和樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴行
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223AA03
3C223EB01
3C223EB05
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF23
3C223FF45
3C223GG03
(57)【要約】
【課題】より効果的に水質異常または異常の兆候を検出することのできる発電プラントの水質異常検出装置、発電プラント、及び水質異常検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】発電プラント1の水質異常検出装置15であって、発電プラント1の運転データと機器の内部状態を示す内部パラメータとに基づいて給水の水質に関する水質情報が演算可能なプラントモデルと、発電プラントが正常運転を行っている場合における内部パラメータを基準内部パラメータとして記憶する記憶部と、発電プラント1から運転データを取得する取得部と、運転データとプラントモデルより算出した水質情報に基づいて、機器における現在の内部状態に対応する内部パラメータを演算して運転内部パラメータとする演算部と、基準内部パラメータと運転内部パラメータとに基づいて、機器における異常または異常の兆候の有無を判定する判定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水が流通する発電プラントの水質異常検出装置であって、
前記発電プラントを構成する少なくとも1つの機器に対応して設けられており、前記発電プラントの運転データと前記機器の内部状態を示す内部パラメータとに基づいて給水の水質に関する水質情報が演算可能なプラントモデルと、
前記発電プラントが正常運転を行っている場合における前記内部パラメータを基準内部パラメータとして記憶する記憶部と、
前記発電プラントから前記運転データを取得する取得部と、
前記運転データと前記プラントモデルより算出した前記水質情報に基づいて、前記機器における現在の内部状態に対応する前記内部パラメータを演算して運転内部パラメータとする演算部と、
前記基準内部パラメータと前記運転内部パラメータとに基づいて、前記機器における異常または異常の兆候の有無を判定する判定部と、
を備える発電プラントの水質異常検出装置。
【請求項2】
前記発電プラントにおけるボイラで創出される主蒸気の状態に基づいて、前記発電プラントの運転状態が安定している期間を設定する期間設定部と、
前記取得部は、前記期間設定部により設定された前記期間における前記発電プラントの前記運転データを取得する請求項1に記載の発電プラントの水質異常検出装置。
【請求項3】
前記記憶部に記憶された前記基準内部パラメータを更新する更新部を備え、
前記記憶部は、前記演算部により演算された前記運転内部パラメータのうち、前記判定部によって異常または異常の兆候が無と判定された運転内部パラメータを過去正常内部パラメータとして蓄積し、
前記更新部は、現在から所定期間前までにおける過去正常内部パラメータに基づいて前記基準内部パラメータを更新する請求項1または2に記載の発電プラントの水質異常検出装置。
【請求項4】
前記記憶部に記憶された前記基準内部パラメータを更新する更新部を備え、
前記記憶部は、前記演算部により演算された前記運転内部パラメータのうち、前記判定部によって異常または異常の兆候が無と判定された運転内部パラメータを過去正常内部パラメータとして蓄積し、
前記過去正常内部パラメータに基づいて、各前記機器における前記内部パラメータの経年劣化許容幅を推定し、前記演算部により演算された前記運転内部パラメータと前記経年劣化許容幅とに基づいて、各前記機器における異常または異常の兆候の有無を判定する請求項1または2に記載の発電プラントの水質異常検出装置。
【請求項5】
ボイラと、
タービンと、
復水器と、
請求項1から4のいずれか1項に記載の発電プラントの水質異常検出装置と、
を備えた発電プラント。
【請求項6】
給水が流通する発電プラントの水質異常検出方法であって、
前記発電プラントを構成する少なくとも1つの機器に対応して設けられたプラントモデルを用い、前記発電プラントの運転データと前記機器の内部状態を示す内部パラメータとに基づいて給水の水質に関する水質情報を演算する水質情報演算工程と、
前記発電プラントが正常運転を行っている場合における前記内部パラメータを基準内部パラメータとして記憶する記憶工程と、
前記発電プラントから前記運転データを取得する取得工程と、
前記運転データと前記プラントモデルより算出した前記水質情報に基づいて、前記機器における現在の内部状態に対応する前記内部パラメータを演算して運転内部パラメータとする演算工程と、
前記基準内部パラメータと前記運転内部パラメータとに基づいて、前記機器における異常または異常の兆候の有無を判定する判定工程と、
を有する発電プラントの水質異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントの水質異常検出装置、発電プラント、及び水質異常検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電プラントとしては、ボイラと、蒸気タービン(タービン)と、復水器とを備えた火力発電プラントがあり、ボイラへの給水が循環する水循環系を有している。例えば、水循環系において、ボイラで生成した過熱蒸気はタービンへ供給され、過熱蒸気はタービンで膨張してタービンロータを回転駆動している。そして、仕事を終えた蒸気は復水され、ボイラに給水することで循環系統を構成している。水循環系を流れる給水の水質を維持しつつ、ボイラの伝熱管など各装置内での腐食を抑制するために、プラント水処理が実施されている。例えば、ボイラ給水の水処理は、酸素処理(OT:Oxygen Treatment)または揮発性物質処理(AVT:All Volatile Treatment)等がある。
【0003】
水循環系を流れるボイラ給水の水質が悪化した場合(例えば、復水器などからの海水混入や、補給水からの有機物の混入など)には、ボイラの伝熱管やタービンのロータ等の腐食を招く可能性がある。そして、水循環系に剥離した腐食スケールが蓄積したり、タービンへのキャリーオーバーが発生するなど、水循環系を構成する各装置が劣化して、発電プラントの運転継続を困難にしてしまう可能性がある。このため、発電プラントでは、専門知識を持つ専属の管理者により、水循環系を流れるボイラ給水の水質管理が行われている。
【0004】
また、特許文献1には、発電プラントにおける水循環系において、水質を計測する計測器(例えば、pH計測器)を設け、水質の計測結果と予め設定された警報値とを比較することによって、水質異常の判定を行うことが開示されている。なお、警報値とは、水質が異常状態であることが判定可能な閾値として設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3070999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、人手不足等に起因して、専門知識を持つ専属の管理者を発電プラント毎に常駐で配置させて、日常から水質の判断をすることが困難になってきている。このため、専門知識を持たない運転員により水質管理を行う場合が増えてきている。このような場合には、タイムリーで正確な水質診断を行うことや、水質異常の原因となる機器を特定することが困難であった。
【0007】
また、水循環系を流れる給水等をpH計や導電率計などの計測器によって監視して、水質に関する計測結果と予め設定された警報値とに基づいて水質異常の検出を行う場合には、警報値に達しない軽微な水質の変化(異常の予兆)を検知することができなかった。水質の計測時点では、警報値に達しない軽微な水質の変化段階であっても、時間をかけて徐々に変化して警報値に達することがある。このため、計測器により水質が異常状態であること示す警報値のみにより水質の異常を検出する場合には、発電プラントを構成する機器の故障発生等につながり、発電プラントを停止させる事象の兆候を見逃してしまうことがあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より効果的に水質異常または異常の兆候を検出することのできる発電プラントの水質異常検出装置、発電プラント、及び水質異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、給水が流通する発電プラントの水質異常検出装置であって、前記発電プラントを構成する少なくとも1つの機器に対応して設けられており、前記発電プラントの運転データと前記機器の内部状態を示す内部パラメータとに基づいて給水の水質に関する水質情報が演算可能なプラントモデルと、前記発電プラントが正常運転を行っている場合における前記内部パラメータを基準内部パラメータとして記憶する記憶部と、前記発電プラントから前記運転データを取得する取得部と、前記運転データと前記プラントモデルより算出した前記水質情報に基づいて、前記機器における現在の内部状態に対応する前記内部パラメータを演算して運転内部パラメータとする演算部と、前記基準内部パラメータと前記運転内部パラメータとに基づいて、前記機器における異常または異常の兆候の有無を判定する判定部と、を備える発電プラントの水質異常検出装置である。
【0010】
上記のような構成によれば、発電プラントを構成する各機器をシミュレーション可能なように対応するプラントモデルにおいて、発電プラントおよびこれを構成する各機器が所定の性能で運転されている正常運転時の状態にフィッテングする内部パラメータである基準内部パラメータと、各機器における現在の状態にフィッテングする内部パラメータである運転内部パラメータとの解離状態に基づいて、各機器における異常または異常の兆候の有無を判定することとした。従来において、発電プラントの水質管理は、専門知識を持つ専属の管理者を必要としており、人手不足等で専属の管理者を配置できない場合には、タイムリーで正確な水質診断を行うことが困難であった。また、従来において、計測器により給水の水質に関する計測値(例えば、pHの計測値)と予め設定された警報値とに基づいて水質良否の簡易判断を行うことも可能であるが、警報値に達しない軽微な水質の変化を検知することができず、発電プラントを構成する機器の故障等発電プラントの停止に至る事象の兆候を見逃してしまうことがあった。そこで、発電プラントを構成する各機器に対応したプラントモデルで計測値とフィッテングさせる内部パラメータ(例えば、伝達関数の係数)に着目した。内部パラメータとは、各プラントモデルに組み込まれた演算に対して、発電プラントの運転データからボイラ水の水質に関する情報を演算可能なパラメータである。すなわち、各機器のプラントモデルの内部パラメータは、例えばボイラ給水の水質に関する情報を演算する過程(各機器の状態)を表すものである。例えば、水質に大きな変動が表れていない場合でも、その内部パラメータ値の変動の過程を監視することで、機器の異常等によって大きく変化している場合がある。このように、内部パラメータに着目することで、水質の計測器(例えば、pHの計測値)には表れない機器の異常の兆候の発生を発見することが可能となる。このため、正常運転時の状態にフィッテングする内部パラメータである基準内部パラメータと、現在の状態の運転データにフィッテングするように算出された内部パラメータである運転内部パラメータとを比較することによって、専門知識を持つ専属の管理者が不在であっても、各機器における異常または異常の兆候の有無を効果的に判定することができる。すなわち、計測器の計測結果からは、異常状態となっていない機器に対しても、起因する軽微な水質異常または異常の兆候も検出することが可能となる。このため、発電プラントを構成する機器の故障等の発生を未然に防止することが可能となる。そしてさらに、発電プラントの稼働率向上も期待することができる。
【0011】
上記水質異常検出装置において、前記発電プラントにおけるボイラで創出される主蒸気の状態に基づいて、前記発電プラントの運転状態が安定している期間を設定する期間設定部と、前記取得部は、前記期間設定部により設定された前記期間における前記発電プラントの前記運転データを取得することとしてもよい。
【0012】
上記のような構成によれば、発電プラントの運転状態が安定している期間を設定する際に、発電プラントにおける主蒸気の状態(例えば、主蒸気の温度、圧力、流量等)に基づくこととした。そして、設定された期間における運転データを取得することとした。なお、発電プラントの運転状態が安定している期間とは、負荷変動中でない整定状態にある期間であり、例えば、発電プラントを流通するボイラ給水の流量やボイラへ供給する燃料入熱量などがほとんど変動していない期間や、発電プラントに負荷変動指令がない期間である。発電プラントにおける主蒸気の状態には、発電プラント全体の運転状態が総合的に反映されている。このため、発電プラント全体の運転状態が安定(定常状態)であるか否かを判断するものの一つとしては、発電プラントにおけるボイラが創出する主蒸気の状態によって効率的に判定することができる。このため、発電プラントにおける主蒸気の状態に基づくことで、より容易に運転状態が安定している期間を設定することができる。また、運転データは運転内部パラメータを演算するために用いるため、発電プラントの運転状態が安定している期間(定常状態)の運転データを用いることが好ましい。これは、負荷変動や外乱の影響が反映された運転データには特異なデータが含まれる可能性があるからである。このため、発電プラントにおける主蒸気の状態に基づいて設定された発電プラントの運転状態が安定している期間において運転データを取得することで、運転内部パラメータの算出において負荷変動や外乱の影響を抑制することができる。
【0013】
上記水質異常検出装置において、前記記憶部に記憶された前記基準内部パラメータを更新する更新部を備え、前記記憶部は、前記演算部により演算された前記運転内部パラメータのうち、前記判定部によって異常または異常の兆候が無と判定された運転内部パラメータを過去正常内部パラメータとして蓄積し、前記更新部は、現在から所定期間前までにおける過去正常内部パラメータに基づいて前記基準内部パラメータを更新することとしてもよい。
【0014】
上記のような構成によれば、水質異常または異常の兆候が無いと判定された運転内部パラメータを過去正常内部パラメータとして蓄積データベースに蓄積し、過去正常内部パラメータを用いて基準内部パラメータとして更新することした。各機器に対応するプラントモデルの運転内部パラメータは、各機器の経年劣化に伴って変化する。このため、基準内部パラメータに経年劣化の影響が反映されない場合には、経年劣化による極微小な水質の変化を、水質異常であると誤判定してしまう可能性がある。このため、水質異常または異常の兆候が無いと判定された運転内部パラメータを過去正常内部パラメータとして演算日と合せて蓄積データベースに蓄積しておき、現在から所定期間前の過去正常内部パラメータから更新用の過去正常内部パラメータを選定して(例えば所定期間前に最も近い時期に演算したもの、最大の値と最小の値の中央値となるもの、または平均値を更新用の過去正常内部パラメータとして選定など)、基準内部パラメータとして更新する。これにより、基準内部パラメータに機器の経年劣化の影響を反映させることができる。このため、機器が経年劣化したとしても、水質異常または異常の兆候の判断をより正確に行うことが可能となる。
【0015】
上記水質異常検出装置において、前記記憶部に記憶された前記基準内部パラメータを更新する更新部を備え、前記記憶部は、前記演算部により演算された前記運転内部パラメータのうち、前記判定部によって異常または異常の兆候が無と判定された運転内部パラメータを過去正常内部パラメータとして蓄積し、前記過去正常内部パラメータに基づいて、各前記機器における前記内部パラメータの経年劣化許容幅を推定し、前記演算部により演算された前記運転内部パラメータと前記経年劣化許容幅とに基づいて、各前記機器における異常または異常の兆候の有無を判定することとしてもよい。
【0016】
上記のような構成によれば、蓄積データベースに蓄積された、時系列で整理した過去正常内部パラメータの経年に対する値の変化状態に基づいて各機器における内部パラメータの経年に対する値の変化状態から経年劣化許容幅を推定することした。そして、運転内部パラメータと経年劣化許容幅とに基づいて、各機器における異常または異常の兆候の有無を判定することとした。すなわち、経年に対して、経年劣化として許容される内部パラメータの変化幅を経年劣化許容幅として推定し、演算された運転内部パラメータが経年劣化許容幅内であるか否かに応じて、運転内部パラメータの変化が、経年劣化によるものなのか、機器の異常または異常の兆候等によるものなのかをより効果的に判別することが可能となる。
【0017】
本発明の第2態様は、ボイラと、タービンと、復水器と、上記の発電プラントの水質異常検出装置と、を備えた発電プラントである。
【0018】
本発明の第3態様は、給水が流通する発電プラントの水質異常検出方法であって、前記発電プラントを構成する少なくとも1つの機器に対応して設けられたプラントモデルを用い、前記発電プラントの運転データと前記機器の内部状態を示す内部パラメータとに基づいて給水の水質に関する水質情報を演算する水質情報演算工程と、前記発電プラントが正常運転を行っている場合における前記内部パラメータを基準内部パラメータとして記憶する記憶工程と、前記発電プラントから前記運転データを取得する取得工程と、前記運転データと前記プラントモデルより算出した前記水質情報に基づいて、前記機器における現在の内部状態に対応する前記内部パラメータを演算して運転内部パラメータとする演算工程と、前記基準内部パラメータと前記運転内部パラメータとに基づいて、前記機器における異常または異常の兆候の有無を判定する判定工程と、を有する発電プラントの水質異常検出方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より効果的に水質異常または異常の兆候を検出することのできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る水質異常検出装置を備えた発電プラントの概略構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る水質異常検出装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る水質異常検出装置が備える演算部の処理の例を示した図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る水質異常検出装置における水質異常検出のフローチャートを示した図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る水質異常検出装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る水質異常検出装置における異常判定の例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明に係る発電プラント1の水質異常検出装置15、発電プラント1、及び水質異常検出方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る水質異常検出装置15を備えた発電プラント1の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る発電プラント1は、ボイラ2と、タービン3と、復水器4と、復水ポンプ5と、復水処理装置6と、復水ブースタポンプ7と、低圧給水加熱器8と、脱気器9と、給水ポンプ10と、高圧給水加熱器11と、複数の計測器(12a〜12d、13a〜13b、14a〜14b)と、水質異常検出装置15とを主な構成として備えている。なお、本実施形態では、一例として、ボイラ2、タービン3、復水器4、復水ポンプ5、復水処理装置6、復水ブースタポンプ7、低圧給水加熱器8、脱気器9、給水ポンプ10、及び高圧給水加熱器11により蒸気と復水と給水による水循環系が構成される場合について説明するが、水循環系の構成はこれに限定されずに適宜変更可能である。また、本実施形態では、水質異常検出装置15は発電プラント1における水循環系に設けられる場合について説明するが、水流系統(循環している場合に限られない)であれば様々な装置に適用可能である。
【0022】
ボイラ2は、給水ポンプ10から送られるボイラ給水(以下、「ボイラ水」という。)を蒸気(過熱蒸気)にしてタービン3へ供給する。具体的には、ボイラ2は、たとえば節炭器、蒸発器、過熱器等の熱交換器を備えて構成されている。ボイラ水は、まず節炭器にて予熱され、蒸発器でさらに加熱されて飽和蒸気となる。その後、過熱器でさらに過熱されることによって過熱蒸気となる。ボイラ2で生成された過熱蒸気は、タービン3へ供給される。なお、ボイラ2の構成は、燃料を供給して火炉で燃焼した燃焼ガスとボイラ2への給水と熱交換するもの、ガスタービンなどの高温排気ガスとボイラ2への給水と熱交換するもの等があり、上記に限られず様々な構成を採用可能である。
【0023】
タービン3では、ボイラ2にて生成された過熱蒸気が供給され、過熱蒸気が膨張して、タービン翼を回転駆動させている。すなわち、タービン3では、過熱蒸気のエネルギーを回転のエネルギーへ変換している。タービン3の構成としては、高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンの3段構成や、高圧タービンと中圧タービンの2段構成など様々な構成が適用可能である。なお、タービン3の回転軸は発電機(不図示)と接続され、発電機を回転駆動させて発電を行っている。
【0024】
復水器4は、タービン3において仕事をし終えた蒸気を冷却して水(液相)に戻している(復水)。具体的には、復水器4には、海水が供給される伝熱管が設けられ、タービン3より排出された蒸気と、海水との間で熱交換を行うことで、蒸気を冷却し、水に戻して復水としている。復水は復水器4のホットウェルに溜まり、復水ポンプ5を介して復水処理装置6に供給される。
【0025】
復水処理装置6は、例えばイオン交換樹脂を備えており、復水ポンプ5を介して復水をイオン交換樹脂に通すことで、復水中の不純物(例えば塩分など)を除去する。処理された復水は、復水ブースタポンプ7により加圧されて低圧給水加熱器8へ供給される。
【0026】
低圧給水加熱器8は、復水ブースタポンプ7を介して供給された復水を、タービン3から排出された蒸気の一部を用いて低圧条件で加熱する。そして、低圧加熱された復水はボイラ水として利用するため脱気器9へ供給される。
【0027】
脱気器9は、低圧加熱されたボイラ水に含まれる非凝縮性ガスをタービン3から排出された蒸気の一部を用いて除去(脱気)する。非凝縮性ガスとは、例えば、ボイラ水に含まれる溶存酸素や炭酸ガス等である。脱気されたボイラ水は、給水ポンプ10により高圧給水加熱器11に供給される。
【0028】
高圧給水加熱器11は、給水ポンプ10を介して供給された脱気後のボイラ水を高圧条件で加熱する。高圧給水加熱器11にて加熱されたボイラ水は、ボイラ2に供給(再循環)される。このようにして、ボイラ水は、水循環系を循環している。
【0029】
計測器(12a〜12d、13a〜13b、14a〜14b)は、水循環系を流れるボイラ水(および復水)の水質(例えば、酸電気伝導率、電気伝導率、pH)を計測している。具体的には、計測器は、図1に示されるように、水循環系の所定の位置に所定の計測内容の計測器が設けられている。なお、本実施形態における計測器の配置位置と計測内容は一例であり、計測器の種類及び配置位置は適宜変更可能である。本実施形態では、ボイラ水の酸電気伝導率を計測する酸電気伝導率計測計(12a〜12d)が、復水器4の下流側(12a)、復水ポンプ5の下流側(12b)、高圧給水加熱器11の下流側(12c)、及びボイラ2の下流側(12d)に設けられている。また、ボイラ水の電気伝導率を計測する電気伝導率計測計(13a〜13b)が、復水処理装置6の下流側(13a)、及び低圧給水加熱器8の下流側(13b)に設けられている。また、ボイラ水のpHを計測するpH計(14a〜14b)が、低圧給水加熱器8の下流側(14a)、及び高圧給水加熱器11の下流側(14b)に設けられている。例えば、計測器12aは上流側機器である復水器4から排出されたボイラ水の水質(酸電気伝導率)を計測するために設けられており、計測器14a及び13bは、上流側機器である低圧給水加熱器8から排出されたボイラ水の水質(電気伝導率及びpH)を計測するために設けられている。
【0030】
計測器は、上流側機器の状態(異常)によって変化すると推定される水質を計測可能なように設置されている。例えば、復水器4では、伝熱管周囲を流れる冷却水として海水を用いて復水を行なっているが、伝熱管の一部の腐食等によって海水が復水に混入し、復水処理装置6での脱塩処理能力を超えてボイラ給水へと混入すること(海水リーク)がある。このように、復水器4で異常が発生した場合には、海水リークによって、ボイラ水の酸電気伝導率に影響を与えると推定される。このため、復水器4の下流側には、酸電気伝導率計を設けている。
【0031】
水質異常検出装置15は、発電プラント1の運転データ(各計測器から取得した各状態の計測結果等)に基づいて、発電プラント1を構成する各機器をシミュレーション可能なように対応するプラントモデル41において、各機器における運転時の状態にフィッテングする現在の内部パラメータを演算し、演算した内部パラメータを用いて、水質異常の原因となっている機器の特定(及び水質異常の兆候の検知)を行っている。
【0032】
内部パラメータとは、発電プラント1の運転データ(現状の運転データ)に基づいてボイラ水の水質に関する情報(水質情報)が演算可能なパラメータであって、発電プラント1を構成する各機器の内部状態(水質に影響を与える機器の内部状態)を示すものである。このため、内部パラメータは、発電プラント1を構成する各機器(例えば、復水器4)をシミュレーション可能なように対応するプラントモデル41に対応して設けられている。具体的には、運転データにフィッテングするように内部パラメータを演算することによって、該内部パラメータは、対応する機器から排出されたボイラ水の水質に関する情報(例えば、pH等)を反映する内部パラメータとすることができる。また、運転データとは、内部パラメータを用いてボイラ水の水質に関する情報が算出可能なデータであって、例えば、状態量(温度、圧力、流量など)、酸モル濃度、塩基モル濃度、酸系平衡定数、塩基系平衡定数、水系平衡定数等を含んでおり、水循環系に設けた各種計測器(不図示)によって取得される。すなわち、各機器の内部パラメータは、それぞれの機器の入出力の関係を表しており、換言すると、ボイラ水の水質に関する情報を演算してフィッテングする係数(各機器が水質に与える影響)を表すものである。
【0033】
例えば、低圧給水加熱器のプラントモデルでの演算の一部として、低圧給水加熱器8から排出されたボイラ水の水質(pH)の算出には、酸モル濃度、塩基モル濃度、酸解離平衡定数、塩基解離平衡定数、水の解離度を用いて算出される。一例としては、以下の式から算出される。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、Kwは水の解離定数(水系平衡定数)であり、xは水素イオン濃度(pH)である。そして、Kj1、Kj2、Kj3は塩基の成分jの解離定数であり、内部パラメータとして設けてある。すなわち、低圧給水加熱器8のプラントモデル41においては、(1)式に対して、内部パラメータとしての塩基の成分の解離定数(Kj1、Kj2、Kj3)及び運転データ(温度)から得られる水の解離定数(Kw)を代入することで、水素イオン濃度xを求め、pHを算出することが可能となる。
【0036】
水質異常検出装置15は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等を備えている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0037】
図2は、水質異常検出装置15が備える機能を示した機能ブロック図である。図2に示されるように、水質異常検出装置15は、記憶部21と、期間設定部22と、取得部23と、シミュレーション部24と、演算部25と、判定部26と、を備えている。
【0038】
記憶部21は、発電プラント1およびこれを構成する各機器が所定の性能で運転されている正常の状態で、運転を行っている場合における発電プラント1を構成する各機器に対応したプラントモデル41において、運転データ(正常運転時の運転データ)にフィッテングするように演算で算出した内部パラメータ(以下、「基準内部パラメータ」という。)を記憶している。例えば、復水器4に対応した基準内部パラメータ、ボイラ2に対応した基準内部パラメータ等であり、各機器に対応して記憶されている。すなわち、基準内部パラメータとは、各機器が仕様性能を確保している状態(異常が発生していない状態)において、各機器が水質の算出に必要な係数を表したものである。このため、各機器において、基準内部パラメータの値から内部パラメータが変化した場合には、各機器において水質に影響する事象が発生していると見做すことができる。基準内部パラメータは、例えば、正常運転の状態における基準となるものとして、発電プラント1の竣工後の所定期間(一例として、調整運転終了後の初期運転期間に専門知識を持つ専属の管理者の確認を得た期間など)に取得された運転データ(基準運転データ)に基づいて設定される。または、基準内部パラメータは、発電プラント1が正常運転を行っている(発電プラント1の出力変動やボイラ水の水質の変動が小さいと見做せるもの、専門知識を持つ専属の管理者の確認を得たものなど)と推定される期間に取得された運転データ(基準運転データ)に基づいて設定されてもよい。例えば、低圧給水加熱器8のプラントモデルでは、正常運転の状態であり異常がない状態(仕様を確保状態)における塩基の成分jの解離定数(Kj1、Kj2、Kj3)を別途準備した関係式から算出するための係数などが基準内部パラメータとなる。
【0039】
期間設定部22は、発電プラント1における主蒸気(ボイラ2からタービン3へ供給される蒸気)の状態に基づいて、発電プラント1の運転状態が安定している期間(安定期間)を設定する。なお、発電プラント1の運転状態が安定している期間とは、負荷変動中でない整定状態(定常状態)にある期間であり、例えば、発電プラント1を流通するボイラ水の流量やボイラへ供給する燃料入熱量などがほとんど変動していない期間や、発電プラント1に負荷変動指令がない期間である。発電プラント1における主蒸気の状態には、発電プラント1全体の運転状態が総合的に反映されている。このため、発電プラント1全体の運転状態が安定(定常状態)であるか否かを判断するものの一つとしては、発電プラント1における主蒸気の状態によって容易に判定することができる。このため、期間設定部22では、主蒸気の状態量(温度、圧力、流量など)が発電プラント1として整定可能な所定の範囲内である場合に、発電プラント1の運転状態が安定(定常状態)であると判定し、発電プラント1の運転状態が安定している期間を設定する。そして、設定した期間を取得部23に出力する。発電プラント1における主蒸気の状態に基づいて判断することで、より容易に運転状態が安定している期間を設定することができる。
【0040】
取得部23は、発電プラント1から運転データを取得する。具体的には、取得部23は、期間設定部22により設定された安定期間において、発電プラント1に設けられている各種の計測器より、発電プラント1の運転状態(内部状態)を示す運転データを取得する。取得部23にて取得する運転データとは、例えば、図1に示されている各計測器から取得される計測結果(電気伝導率、酸電気伝導率、pHなど)や、他の計測器(不図示)から取得される運転状態の計測結果(温度、圧力、流量などの状態量等)であり、内部パラメータを用いた水質に関する情報の演算(例えば、(1)式)や、後述する運転内部パラメータの演算に用いるためのものである。
【0041】
シミュレーション部24は、プラントモデル41を備えている。基準内部パラメータと運転データに基づいて、各機器に対応するプラントモデル41より、水循環系における各機器の現在の水質を演算する。具体的には、シミュレーション部24は、記憶部21より各機器に対応した基準内部パラメータ取得し、また、取得部23より発電プラント1の現在の運転状態を表す運転データを取得する。そして、基準内部パラメータと運転データを用いて、それぞれの機器においてのプラントモデル41により、排出されるボイラ水の水質に関する情報(例えばpH)を演算する。
【0042】
例えば、シミュレーション部24は(1)式を有している。そして、低圧給水加熱器8に対してシミュレーションを行う場合には、(1)式に対して、記憶部21より取得した基準内部パラメータ(Kj1、Kj2、Kj3)及び取得部23から取得した運転データ(温度から選定されるKw)を代入して水素イオン濃度xを求め、pHを算出する。なお、低圧給水加熱器8以外の装置においても、シミュレーション部24は、基準内部パラメータと運転データをインプットすることによりボイラ水の水質に関する情報が演算可能なプラントモデル41を各装置に対応して格納している。
【0043】
また、シミュレーション部24で算出されるボイラ水の水質に関する情報(pHなど)は、水質の異常を直接に検知するためのものではない。すなわち、演算したボイラ水の水質に関する情報が、計測器の計測結果が管理基準の所定の管理値と乖離していない場合には、ボイラ水の水質が異常と判定されるほど悪化していることを示しているのではなく、機器において軽微な異常の兆候が発生している可能性があることを示すものである。
【0044】
なお、例えば(1)式より算出したpHと計測器14aにて計測したpHとを比較する場合においては、計測器14aによってpHを計測した時刻において低圧給水加熱器8から排出されたボイラ水のpHを算出することが好ましい。このため、水の解離定数Kwを計測した箇所が低圧給水加熱器8から離れている場合(水の解離定数Kwを計測した箇所が低圧給水加熱器8のすぐ上流側ではない場合)には、水の解離定数Kwの時間変動を考慮して、計測器14aによってpHを計測した時刻において低圧給水加熱器8に流入する水の解離定数Kwを用いて(すなわち、時間遅れ処理等を行って)、低圧給水加熱器8の下流側のpHを算出することが好ましい。
【0045】
演算部25は、主要な各機器について、もしくは各機器に異常または異常の兆候が発生している可能性を調査したい機器について、基準内部パラメータと運転データとに基づいて、プラントモデル41を用いて各機器における現在の内部パラメータ(以下、「運転内部パラメータ」という)を演算する。具体的には、演算部25は、主要な各機器について、もしくは異常または異常の兆候が発生している可能性がある機器について、ボイラ水の水質に関する情報として、例えば、計測器によって計測された水質(例えばpH(計測値))と略同一の水質(例えばpH(計算値))が算出されるような内部パラメータをフィッテング演算する。
【0046】
図3は、低圧給水加熱器8に対する演算部25の処理の例を示している。低圧給水加熱器8では、(1)式に示されるように、内部パラメータ(Kj1、Kj2、Kj3)及び運転データ(温度から選定されるKw)より、(1)式からpH(水素イオン濃度x)が算出可能となっている。すなわち、演算部25では、運転データとして水の解離定数Kwと計測器14aによる計測pHの値が入力され、入力された水の解離定数Kwを用いた場合に、計測器14aよる計測pHと(1)式よる算出pHとを比較し、計測pHの値と略同一となる算出pHの値が算出されるような内部パラメータ(運転内部パラメータ(Kj1´、Kj2´、Kj3´))をフィッテング演算で算出する。なお、他の機器(例えば復水器4等)でも、図3に示す低圧給水加熱器8の例と同様に、運転データを用いて計測された水質と略同一となる運転内部パラメータがフィッテング演算される。
【0047】
判定部26は、基準内部パラメータと演算された運転内部パラメータとに基づいて、各機器における異常の有無を判定する。具体的には、判定部26は、運転内部パラメータと基準内部パラメータとを比較し、運転内部パラメータと基準内部パラメータとが予め設定した所定値以上の差があるか否かに応じて機器の異常の兆候の発生有無を判定する。そして、判定部26によって異常兆候の発生が判定された場合には、発電プラント1の運転員に、異常兆候の発生が判定された機器を通知する。なお、異常兆候の発生が判定された機器を通知する場合には、機器の異常兆候の予想要因(例えば、海水リーク)についても同時に通知することとしてもよい。
【0048】
なお、所定値とは、各機器に軽微な異常が発生した場合に想定される内部パラメータの変化が検出可能なように予め設定されている。具体的には、所定値は、それぞれの機器において内部パラメータ毎に設定されており、それぞれの機器において軽微な異常(例えば、復水器4における微量の海水リーク、給水加熱器におけるヘマタイトが剥がれることによる鉄分混入など)が発生した場合に想定される水質の変化が検出可能なように設定される。例えば、復水器4の場合では、復水器4における微量の海水リークが発生したときに、復水器4から排出されるボイラ水の酸電気伝導率の軽微な変化が検出可能なように、酸電気伝導率を算出するプラントモデルの内部パラメータに対して所定値が設けられている。また、低圧給水加熱器8の場合では、低圧給水加熱器8から排出されるボイラ水のpHの軽微な変化が検出可能なように、解離定数(Kj1、Kj2、Kj3)に対して所定値が設けられている。
【0049】
例えば、低圧給水加熱器8の場合では、低圧給水加熱器8の基準内部パラメータ(Kj1、Kj2、Kj3)と、取得部23から取得した運転データ(温度から選定されるKw)を(1)式に代入して水素イオン濃度xを求め、算出pHを得る。演算部25により低圧給水加熱器8のボイラ水の水質に関する情報にフィッテングするように演算された運転内部パラメータ(Kj1´、Kj2´、Kj3´)とを比較し、基準内部パラメータと運転内部パラメータとの各値の差が所定値以上である場合に、低圧給水加熱器8に異常または異常の兆候があると判定する。具体的には、基準内部パラメータ(Kj1)と運転内部パラメータ(Kj1´)との差が所定値以上である場合、基準内部パラメータ(Kj2)と運転内部パラメータ(Kj2´)との差が所定値以上である場合、基準内部パラメータ(Kj3)と運転内部パラメータ(Kj3´)との差が所定値以上である場合の少なくともいずれか1つが満たされた場合に、低圧給水加熱器8に異常または異常の兆候が発生していると判定し、低圧給水加熱器8に異常または異常の兆候が発生していることを発電プラント1の運転員に通知する。
【0050】
各機器の内部パラメータは、ボイラ水の水質に関する情報を演算する過程(各機器の状態)を表すものである。例えば、水質自体(例えば、pH)に大きな変動が表れていない場合でも、機器の極軽微な異常の発生によって水質に軽微な変動が表れている場合がある。ボイラ水の水質に関する情報からフィッテング演算で算出した運転内部パラメータの値が基準内部パラメータの値から所定値以上乖離している場合には、計測器の計測結果が管理基準値から乖離してボイラ水の水質が異常と判定できない状態でも、機器において軽微な異常または異常の兆候が発生していることを示している。すなわち、水質自体に大きな変化が表れていなくても、機器の運転内部パラメータには機器の異常または異常の兆候が大きく表れている場合がある。このため、運転内部パラメータに着目することで、水質の計測器(例えば、pHの計測値)には表れない機器の異常または異常の兆候を発見することが可能となる。すなわち、運転内部パラメータと基準内部パラメータの差を算出することで水質の軽微な異常または異常の兆候についても検出することができる。
【0051】
次に、上述の水質異常検出装置15による水質異常検出について図4を参照して説明する。図4に示すフローは、発電プラント1が稼働している場合に所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0052】
まず、運転データを取得する(S101)。なお、取得される運転データは、期間設定部22によって設定された安定期間において、各計測器により計測されたデータである。
【0053】
次に、発電プラント1を構成する機器毎に、基準内部パラメータ(記憶部21に収納)と運転データ(S101で取得)に基づいて水質に関する情報を演算する(S102)。例えば、低圧給水加熱器8の場合では、(1)式に基準内部パラメータと運転データを代入し、水質に関する情報としてpHを算出する。
【0054】
次に、計測器の計測結果と演算したボイラ水の水質に関する情報とを比較し、計測結果の値と演算の値とが略同一となるようにフィッテング演算を行い、各機器についての運転内部パラメータを算出する(S104)。例えば、低圧給水加熱器8の場合では、(1)式を用いて算出されたpHと、計測器14aにより計測したpHとが略同一となるように、運転内部パラメータに対してフィッテング演算を行う。このようにして、低圧給水加熱器8の運転内部パラメータが算出される。
【0055】
次に、運転内部パラメータと基準内部パラメータについて、予め設定した所定値以上の差があるか否かを判定する(S105)。運転内部パラメータと基準内部パラメータについて、予め設定した所定値以上の差がない場合(S105のNO判定)には、対応する機器に異常が発生していないと推定して、図4のフローを終了する。
【0056】
運転内部パラメータと基準内部パラメータについて、予め設定した所定値以上の差がある場合(S105のYES判定)には、異常または異常の兆候が発生していると判断し、発電プラント1の運転員に、異常または異常の兆候が判定された機器を通知する(S106)。上記の処置は所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る発電プラント1の水質異常検出装置15、発電プラント1、及び水質異常検出方法によれば、発電プラント1を構成する各機器をシミュレーション可能なように対応するプラントモデルにおいて、発電プラント1およびこれを構成する各機器が所定の性能で運転されている正常運転時の状態にフィッテングする内部パラメータである基準内部パラメータと、各機器における現在の状態にフィッテングする内部パラメータである運転内部パラメータとの解離状況に基づいて、各機器における異常または異常の兆候の有無を判定することとした。従来において、発電プラント1の水質管理は、専門知識を持つ専属の管理者を必要としており、人手不足等で専属の管理者を配置できない場合には、タイムリーで正確な水質診断を行うことが困難であった。また、従来において計測器により給水の水質に関する計測値(例えば、pHの計測値)と予め設定された警報値とに基づいて水質の良否の簡易判断を行うことも可能であるが、警報値に達しない軽微な水質の変化を検知することができず、発電プラントを構成する機器の故障等発電プラントの停止に至る事象の兆候を見逃してしまうことがあった。
【0058】
そこで、発電プラント1を構成する各機器に対応したプラントモデルで計測値とフィッテングさせる内部パラメータ(例えば、伝達関数の係数)に着目した。内部パラメータとは、各プラントモデルに組み込まれた演算に対して、発電プラント1の運転データからボイラ水の水質に関する情報を演算可能なパラメータである。すなわち、各機器のプラントモデルの内部パラメータは、例えばボイラ水の水質に関する情報を演算する過程(各機器の状態)を表すものである。例えば、水質に大きな変動が表れていない場合でも、その内部パラメータ値の変動の過程を監視することで、機器の異常等によって大きく変化している場合がある。このように、内部パラメータに着目することで、水質の計測器(例えば、pHの計測値)には表れない機器の異常または異常の兆候を発見することが可能となる。このため、正常運転時の状態にフィッテングする内部パラメータである基準内部パラメータと、現在の状態の運転データにフィッテングするように算出された内部パラメータである運転内部パラメータとを比較することによって、専門知識を持つ専属の管理者が不在であっても、各機器における異常または異常の兆候の有無を効果的に判定することができる。
【0059】
すなわち、計測器の計測結果からは異常状態となっていない機器に対しても、起因する軽微な水質異常または異常の兆候を検出することが可能となる。このため、発電プラントを構成する機器の故障等の発生を未然に防止することが可能となる。そしてさらに、発電プラント1の稼働率向上も期待することができる。
【0060】
また、発電プラント1の運転状態が安定している期間を設定する際に、発電プラント1におけるボイラ2が創出する主蒸気の状態(例えば、主蒸気の温度、圧力、流量等)に基づくこととした。そして、設定された期間における運転データを取得することとした。なお、発電プラント1の運転状態が安定している期間とは、負荷変動中でない整定状態にある期間であり、例えば、発電プラント1を流通するボイラ水の流量やボイラ2へ供給する燃料入熱量などがほとんど変動していない期間や、発電プラント1に負荷変動指令がない期間である。発電プラント1における主蒸気の状態には、発電プラント1全体の運転状態が総合的に反映されている。このため、発電プラント1全体の運転状態が安定(定常状態)であるか否かを判断するものの一つとしては、発電プラント1における主蒸気の状態によって効率的に判定することができる。このため、発電プラント1における主蒸気の状態に基づくことで、より容易に運転状態が安定している期間を設定することができる。
【0061】
また、運転データは運転内部パラメータを演算するために用いるため、発電プラント1の運転状態が安定している期間(定常状態)の運転データを用いることが好ましい。これは、負荷変動や外乱の影響が反映された運転データには特異なデータが含まれる可能性があり、特異な状態の運転データにフィッテングするよう算出された運転内部パラメータは大きな変動を発生させて異常または異常の兆候があると判断するからである。このため、発電プラント1における主蒸気の状態に基づいて設定された発電プラント1の運転状態が安定している期間において運転データを取得することで、運転内部パラメータの算出において負荷変動や外乱の影響を抑制することができる。
【0062】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る発電プラント1の水質異常検出装置15、発電プラント1、及び水質異常検出方法について説明する。
上述した第1実施形態の構成に加えて、本実施形態では、各機器の経年劣化を考慮して、記憶部21に格納される基準内部パラメータを更新する。以下、本実施形態に係る水質異常検出装置15について、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0063】
発電プラント1を構成する各機器は、時が経つにつれて劣化する。すなわち、各機器に対応するプラントモデルの運転内部パラメータは、各機器の経年劣化に伴って変化する。このため、記憶部21に記憶された基準内部パラメータが設定時のまま長期間に渡り固定値として用いていると、機器の経年劣化による水質の許容可能な変化を誤検知して、機器の異常または異常の兆候がありと判断して異常または異常の兆候の発生を通知してしまう可能性がある。
【0064】
そこで、本実施形態における水質異常検出装置15では、図5に示すように、更新部31を更に備えている。また、記憶部21は、蓄積データベース42を有している。
【0065】
また、本実施形態に係る記憶部21は、演算部25により演算されたプラントモデル41の運転内部パラメータのうち、判定部26によって異常または異常の兆候が無いと判定された運転内部パラメータを、過去正常内部パラメータとして蓄積データベース42に記憶して蓄積する。具体的には、記憶部21は、各機器について異常または異常の兆候の可能性が認められなかった運転内部パラメータについて、各機器の経年劣化を判定することが可能なものとし、過去所定期間内に演算部25による演算された正常な運転内部パラメータを過去正常内部パラメータとして、演算日と合せて蓄積データベース42に記憶する。なお、過去所定期間とは、例えば10年である。すなわち、記憶部21の蓄積データベース42には、各装置の経年劣化が反映された運転内部パラメータ(正常な運転内部パラメータ)が過去正常内部パラメータとして時系列に格納されることとなる。
【0066】
更新部31は、現在から所定期間前における過去正常内部パラメータを基準内部パラメータとして更新する。現在から所定期間前とは、例えば、1年前や半年前、または1ヵ月等の期間であって任意に設定される。また、更新する過去正常内部パラメータは、例えば所定期間前に対して最も近い時期に演算(格納)した過去正常内部パラメータを選定してもよい。また、例えば、所定期間毎の代表的な過去正常内部パラメータを選定してもよい。代表的な過去正常内部パラメータとは、例えば、所定期間毎の最大の値と最小の値の中央値となるもの、または、所定期間前毎の平均値としてもよい。すなわち、更新部31は、例えば所定期間を1年間とした場合は、現在から1年前の間に演算(格納)された過去正常内部パラメータを記憶部21から読み出し、1年前に近い時期のもの、読み出した過去正常内部パラメータにおいて最大の値と最小の値の中央値となるもの、または、読み出した過去正常内部パラメータにおいて平均値となるものを更新する過去正常内部パラメータとして選定する。そして、記憶部21に現在記憶されている基準内部パラメータに替えて、更新用に選定した過去正常内部パラメータを新たな基準内部パラメータとして更新する。
【0067】
例えば、記憶部21の蓄積データベース42に、低圧給水加熱部に対応する基準内部パラメータ(Kj1、Kj2、Kj3)と、時系列で蓄積された過去正常内部パラメータ(Kj1´(t)、Kj2´(t)、Kj3´(t))が格納されている場合に、更新部31は、現在(tc)から1年前(tc−1)に演算(格納)された過去正常内部パラメータ(Kj1´(tc−1)、Kj2´(tc−1)、Kj3´(tc−1))を更新用として選定し、新たな基準内部パラメータとして更新する。すなわち、更新後は、記憶部21に記憶された基準内部パラメータは、(Kj1´(tc−1)、Kj2´(tc−1)、Kj3´(tc−1))となる。
【0068】
このように基準内部パラメータを更新することによって、各機器の経年劣化の影響を基準内部パラメータに反映させることが可能となる。
【0069】
また、本実施形態における判定部26は、上述した第1実施形態における判定部26の機能に加えて、または替えて、記憶部21の蓄積データベース42に格納された過去正常内部パラメータに基づいて、各機器における内部パラメータの経年劣化許容幅を推定し、演算部25により演算された運転内部パラメータと経年劣化許容幅とに基づいて、各機器における異常または異常の兆候の有無を判定する。具体的には、判定部26は、蓄積された過去正常内部パラメータより時間変化率を算出し、該変化率の許容上限と許容下限を設定するための所定の定数(例えば、変動許容幅が±20%の場合には、所定の定数は1.2及び0.8)を乗じた変化率を経年劣化許容幅として設定する。そして、演算部25により演算された運転内部パラメータの異常の有無を判定する場合に、演算部25により演算された運転内部パラメータと、設定した経年劣化許容幅とに基づいて各機器における異常または異常の兆候の有無を判定する。
【0070】
図6は、本実施形態に係る判定部26における異常判定の例を示したグラフである。図6において、横軸は時間を示しており、tcは現在を示し、tc−1、tc−2はそれぞれ、現在から1年前、2年前を示している。まず、判定部26は、tc−1及びtc−2の時刻において演算した運転内部パラメータ(過去正常内部パラメータ)より、変化率を算出する。図6の例では、2年前(tc−2)から1年前(tc−1)の1年間に過去正常内部パラメータがα変化しているため、変化率はαとなる。判定部26は、変化率αに所定の定数(例えば1.2)を乗じて、経年劣化許容幅を設定する。すなわち、判定部26は、新たに演算された運転内部パラメータの変動が、変化率1.2α以下であれば、該変化は機器の経年劣化によるものであると推定する。
【0071】
例えば、時刻tc(現在)において新たに演算された運転内部パラメータが、図6に示すように、A点またはB点であったとする。なお、A点は変化率が1.1αであり、B点は変化率が1.3αであるものとする。すなわち、時刻tcにおいてA点の運転内部パラメータが演算された場合には、変化率が経年劣化許容幅内(1.2α以下)であるため、該変化を機器の経年劣化によるものであると推定する。一方で、時刻tcにおいてB点の運転内部パラメータが演算された場合には、変化率が経年劣化許容幅を超えている(1.2α以上)ため、該変化を機器の経年劣化によるものではなく、機器の異常または異常の兆候によるものであると推定する。
【0072】
すなわち、本実施形態における判定部26では、過去の蓄積データ(過去正常内部パラメータ)より各機器の経年劣化の度合を推定し、運転内部パラメータの変化が機器の経年劣化によるものであるのか、機器の異常または異常の兆候によるものであるのかを判別することができる。なお、判定部26によって機器の異常または異常の兆候が判定されて場合には、発電プラント1の運転員に異常または異常の兆候が検出された機器を通知する。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る発電プラント1の水質異常検出装置15、発電プラント1、及び水質異常検出方法によれば、水質異常または異常の兆候が無いと判定された運転内部パラメータを過去正常内部パラメータとして蓄積データベース42に蓄積し、過去正常内部パラメータを用いて基準内部パラメータとして更新することした。各機器に対するプラントモデルの運転内部パラメータは、各機器の経年劣化に伴って変化する。このため、基準内部パラメータに経年劣化の影響が反映されない場合には、経年劣化による水質の極微小な変化を、水質異常または異常の兆候であると誤判定してしまう可能性がある。このため、水質異常または異常の兆候が無いと判定された運転内部パラメータを過去正常内部パラメータとして演算日と合せて蓄積データベース42に蓄積しておき、現在から所定期間前の過去正常内部パラメータから更新用の過去正常内部パラメータを選定して(例えば、所定期間前に最も近い時期に演算したもの、最大の値と最小の値の中央値となるもの、または平均値を更新用の過去正常内部パラメータとして選定など)、基準内部パラメータとして更新する。これにより、基準内部パラメータに機器の経年劣化の影響を反映させることができる。このため、機器が経年劣化したとしても、水質異常または異常の兆候の判断をより正確に行うことが可能となる。
【0074】
また、蓄積データベース42に蓄積され、時系列で整理した過去正常内部パラメータに基づいて各機器における内部パラメータの経年に対する値の変化状態から、経年劣化許容幅を推定することした。そして、運転内部パラメータと経年劣化許容幅とに基づいて、各機器における異常または異常の兆候の有無を判定することとした。すなわち、経年劣化として許容される内部パラメータの変化幅を経年劣化許容幅として推定し、演算された運転内部パラメータが経年劣化許容幅内であるか否かに応じて、運転内部パラメータの変化が、経年劣化によるものなのか、機器の異常等によるものなのかをより効果的に判別することが可能となる。
【0075】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 :発電プラント
2 :ボイラ
3 :タービン
4 :復水器
5 :復水ポンプ
6 :復水処理装置
7 :復水ブースタポンプ
8 :低圧給水加熱器
9 :脱気器
10 :給水ポンプ
11 :高圧給水加熱器
12a〜12d、13a〜13b、14a〜14b:計測器
15 :水質異常検出装置
21 :記憶部
22 :期間設定部
23 :取得部
24 :シミュレーション部
25 :演算部
26 :判定部
31 :更新部
41 :プラントモデル
42 :蓄積データベース
図1
図2
図3
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図5
図6