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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-145783(P2019-145783A)
(43)【公開日】2019年8月29日
(54)【発明の名称】磁気ビーズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/00 20060101AFI20190802BHJP
【FI】
   H01F1/00 154
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-237954(P2018-237954)
(22)【出願日】2018年12月20日
(31)【優先権主張番号】62/609,343
(32)【優先日】2017年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】陳 建安
(72)【発明者】
【氏名】陳 振泰
(72)【発明者】
【氏名】江 佩馨
【テーマコード(参考)】
5E040
【Fターム(参考)】
5E040AC08
5E040BC01
5E040CA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、表面積を増やすことができるこぶ状表面を有する磁気ビーズ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】磁気ビーズ100は、こぶ状コポリマーコア110、ポリマー層120、磁性体層130及びシリコンベース層140を含む。ここで、ポリマー層120は、こぶ状コポリマーコア110を覆い、ポリマー層120は、少なくとも一つの官能基を含む。磁性体層130は、ポリマー層120を覆い、シリコンベース層140は、磁性体層130を覆う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
こぶ状コポリマーコアと、
少なくとも一つの官能基を含み、前記こぶ状コポリマーコアを覆うポリマー層と、
前記ポリマー層を覆う磁性体層と、
前記磁性体層を覆うシリコンベース層と、を含む磁気ビーズ。
【請求項2】
前記磁気ビーズの平均直径は1μm〜50μmである請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項3】
前記こぶ状コポリマーコアは、表面に位置する複数の突起物を含み、前記突起物の平均高さは100nm〜5000nmである請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項4】
前記こぶ状コポリマーコアは、単官能モノマーと2官能モノマーを共重合させてなるコポリマーである請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項5】
前記単官能モノマーに対する前記2官能モノマーの体積百分率の割合は0.4%〜2%である請求項4に記載の磁気ビーズ。
【請求項6】
前記こぶ状コポリマーコアは、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、メチルメタクリレート/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー又はメチルメタクリレート/ジビニルベンゼンコポリマーを含む請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項7】
前記少なくとも一つの官能基は、カルボキシル基、アミノ基又はその組合せを含む請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項8】
前記磁性体層は、常磁性材料、超常磁性材料、強磁性材料、フェライト磁性材料又はその組合せを含む請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項9】
前記磁性体層の厚さは20nm〜200nmである請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項10】
前記シリコンベース層は、シロキサン、シリカガラズ、酸化ケイ素、ケイ酸塩又はその組合せを含む請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項11】
前記シリコンベース層の厚さは、少なくとも1nm〜50nmである請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項12】
少なくとも2種類のモノマーをコポリマーに重合してこぶ状コポリマーコアを形成することと、
前記こぶ状コポリマーコアを覆う少なくとも一つの官能基を含むポリマー層を形成することと、
前記ポリマー層が覆われた前記こぶ状コポリマーコアによって磁性体の前駆体を吸着して磁性体層を形成することと、
前記磁性体層を覆うシリコンベース層を形成することと、を含む磁気ビーズの製造方法。
【請求項13】
前記少なくとも2種類のモノマーは、単官能モノマーと2官能モノマーを含む請求項12に記載の磁気ビーズの製造方法。
【請求項14】
前記単官能モノマーに対する前記2官能モノマーの体積百分率の割合は0.4%〜2%である請求項13に記載の磁気ビーズの製造方法。
【請求項15】
前記コポリマーは、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、メチルメタクリレート/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー又はメチルメタクリレート/ジビニルベンゼンコポリマーを含む請求項13に記載の磁気ビーズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子及びその製造方法に関し、特に、磁気ビーズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロメートルスケールサイズの磁気ビーズは、生物医学分野に広く用いられており、例えば、免疫学的定量分析、精製分離または細胞刺激増幅等の技術に用いられる。しかしながら、現在市販の磁気ビーズはいずれも球体であり、球体は、等体積物体において最小の表面積しか提供できず、実際の使用状況において、バイオニック概念に適合するとは限らず、多くの使用において、最も理想的なものではない。したがって、大表面積で、バイオニック概念に適合する磁気ビーズの開発が極めて必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、表面積を増やすことができるこぶ状表面を有する磁気ビーズを提供する。
【0004】
本発明は、こぶ状表面を有する磁気ビーズの製造方法を別に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の磁気ビーズは、こぶ状コポリマーコア、ポリマー層、磁性体層及びシリコンベース層を含む。ここで、ポリマー層は、こぶ状コポリマーコアを覆い、ポリマー層は、少なくとも一つの官能基を含む。磁性体層は、ポリマー層を覆い、シリコンベース層は、磁性体層を覆う。
【0006】
本発明の実施形態において、上記磁気ビーズの直径は1μm〜50μmである。
【0007】
本発明の実施形態において、上記こぶ状コポリマーコアは、表面に位置する複数の突起物を含み、突起物の高さは100nm〜5000nmである。
【0008】
本発明の実施形態において、上記こぶ状コポリマーコアは、単官能モノマーと2官能モノマーを共重合させてなるコポリマーである。
【0009】
本発明の実施形態において、単官能モノマーに対する上記2官能モノマーの体積百分率の割合は0.4%〜2%である。
【0010】
本発明の実施形態において、上記こぶ状コポリマーコアは、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、メチルメタクリレート/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー又はメチルメタクリレート/ジビニルベンゼンコポリマーを含む。
【0011】
本発明の実施形態において、上記少なくとも一つの官能基は、カルボキシル基、アミノ基又はその組合せを含む。
【0012】
本発明の実施形態において、上記磁性体層は、常磁性(paramagnetic)材料、超常磁性(superpara magnetic)材料、強磁性(ferromagnetic)材料、フェライト磁性(ferritemagnetic)材料又はその組合せを含む。
【0013】
本発明の実施形態において、上記磁性体層の厚さは20nm〜200nmである。
【0014】
本発明の実施形態において、上記シリコンベース層は、シロキサン(siloxane)、シリカガラズ(silica glass)、酸化ケイ素(silicon oxide)、ケイ酸塩(silicate salt)又はその組合せを含む。
【0015】
本発明の実施形態において、上記シリコンベース層の厚さは、少なくとも1nm〜50nmである。
【0016】
本発明の磁気ビーズの製造方法は、以下の工程を含む。まず、少なくとも2種類のモノマーをコポリマーに重合して、こぶ状コポリマーコアを形成する。次いで、ポリマー層を形成して、こぶ状コポリマーコアを覆う。ここで、ポリマー層は、少なくとも一つの官能基を含む。それから、ポリマー層が覆われたこぶ状コポリマーコアによって磁性体の前駆体を吸着して、磁性体層を形成する。そして、シリコンベース層を更に形成して、磁性体層を覆うことができる。
【0017】
本発明の実施形態において、上記少なくとも2種類のモノマーは、単官能モノマーと2官能モノマーを含む。
【0018】
本発明の実施形態において、上記単官能モノマーに対する上記2官能モノマーの体積百分率の割合は0.4%〜2%である。
【0019】
本発明の実施形態において、上記コポリマーは、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、メチルメタクリレート/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー又はメチルメタクリレート/ジビニルベンゼンコポリマーを含む。
【発明の効果】
【0020】
上記に基づき、本発明の実施形態の磁気ビーズは、こぶ状表面を有することから、磁気ビーズの表面積を大幅に増やすことができ、磁気ビーズの密着堆積に有利である。更に、こぶ状ポリマー微粒子の表面に、少なくとも一つの官能基を含むポリマー層が形成され、且つ、この官能基は電荷を持つため、こぶ状ポリマー微粒子が更に多くの磁性体の前駆体を吸着するのに有利であり、高磁定量化の効果を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の上述した特徴と利点を更に明確化するために、以下に、実施例を挙げて図面と共に詳細な内容を説明する。
【0022】
図1】本発明の実施形態に基づく磁気ビーズの概略図である。
図2A】本発明の実験例1−1に基づくポリマー層が覆われたこぶ状コポリマーコアのSEM写真である。
図2B】本発明の実験例1−2に基づくポリマー層が覆われたこぶ状コポリマーコアのSEM写真である。
図2C】本発明の実験例1−3に基づくポリマー層が覆われたこぶ状コポリマーコアのSEM写真である。
図3】本発明の実験例2に基づく磁性体層とポリマー層が覆われたコポリマーコアのSEM写真である。
図4】本発明の実験例3に基づく磁気ビーズのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態に基づく磁気ビーズの概略図である。磁気ビーズ100は、内から外に、こぶ状コポリマーコア110、ポリマー層120、磁性体層130及びシリコンベース層140の順に含む。ここで、こぶ状コポリマーコア110は、球形であり、且つ、表面に複数の突起物112を有する。
【0024】
上記磁気ビーズ100は、平均直径Dを有し、即ち、磁気ビーズ100の最短直径(例えば、D)及び最長直径(例えば、D)の平均値の範囲は、1μm〜50μmであってもよい。実施形態において、磁気ビーズ100の平均直径は、2μm〜40μmであってもよい。別の実施形態において、磁気ビーズ100の平均直径は、3μm〜30μmであってもよい。他の実施形態において、磁気ビーズ100の平均直径は、4μm〜20μmであってもよい。
【0025】
また、上記突起物112の平均高さh、即ち、各突起物112の上端から各突起物112の二つの底部をつないだ線の垂直距離(例えば、高さh、h、h)の平均値の範囲は、100nm〜5000nmであってもよく、例えば、100nm〜500nm、500nm〜1000nm、1000nm〜1500nm、1500nm〜2000nm、2000nm〜2500nm、2500nm〜3000nm、3000nm〜3500nm、3500nm〜4000nm、4000nm〜4500nmまたは4500nm〜5000nmであってもよい。実施形態において、突起物112の平均高さhは、300nm〜4000nmであってもよい。別の実施形態において、突起物112の平均高さhは、500nm〜3000nmであってもよい。他の実施形態において、突起物112の平均高さhは、800nm〜2000nmであってもよい。更に他の実施形態において、突起物112の平均高さhは、1000nm〜1800nmであってもよい。
【0026】
上記磁気ビーズの実施形態において、突起物112は、表面に均一に分布しても、不均一に分布してもよく、全体で見ると、突起物112は、実質的に不規則な突起である。突起物112の形態は、乳頭状又は球状を含んでもよいが、これに限定しない。また、実施形態において、こぶ状コポリマーコア110の形成方法は、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法を含んでもよいが、これに限定しない。上記重合法によって少なくとも2種類のモノマーを共重合体に重合することを意味する。実施形態において、上記少なくとも2種類のモノマーは、脂溶性モノマーであって、且つ、単官能モノマーと2官能モノマーを含んでもよく、ここで、単官能モノマーに対する2官能モノマーの体積百分率の割合は0.4%〜2%であってもよく、例えば、0.5%〜1.8%または0.6%〜1.5%である。
【0027】
上記単官能モノマーは、モノビニルモノマーであってもよく、例えば、スチレン、メチルメタクリレート又はその他の単官能モノマーである。2官能モノマーは、ジビニルモノマーであってもよく、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート又はその他の2官能モノマーである。実施形態において、コポリマーは、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、メチルメタクリレート/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/トリエチレングリコールジメタクリレートコポリマー、スチレン/エチレングリコールジメタクリレートコポリマー又はメチルメタクリレート/ジビニルベンゼンコポリマーを含んでもよいが、これに限定しない。
【0028】
上記ポリマー層120は、こぶ状コポリマーコア110を覆うことができ、且つ、ポリマー層120は、少なくとも一つの官能基を含んでもよい。実施形態において、ポリマー層120の材料は、こぶ状コポリマーコア110と異なる。また、上記官能基は、帯電していてもよく、こぶ状コポリマーコア110の表面に電荷を持たせることができ、磁性体の前駆体(magnetic substance precursor)を後続において吸着して磁性体層130を形成するのに良い。また、実施形態において、官能基は、負に帯電してもよく、且つ、官能基は、カルボキシル基、アミノ基又はその組合せであってもよいが、これに限定しない
【0029】
特に言及することとして、図1のポリマー層120とこぶ状コポリマーコア110を区別できる膜層として図示しているが、ポリマー層120とこぶ状コポリマーコア110は、実質的に、明確な境界線は存在しない。更に、本発明では、ポリマー層によってこぶ状コポリマーコア表面に位置する官能基を有する膜層と総称しているが、実質的に、ポリマー層120は、官能基で修飾された(modification)こぶ状コポリマーコアの表面であって、一つの膜層を具体的に形成しなくてもよい。
【0030】
上記磁性体層130は、ポリマー層120を覆うことができる。実施形態において、ポリマー層120が覆われたこぶ状コポリマーコア110は、磁性体の前駆体を吸着して、ポリマー層120に磁性体層130を形成できる。実施形態において、磁性体の前駆体は、鉄イオン(Fe2+)、コバルトイオン(Co2+)、ニッケルイオン(Ni2+)又はその組合わせを含んでもよいが、これに限定しない。具体的には、磁性体の前駆体は、前記金属イオンの塩類であってもよく、例えば、塩化第一鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル等である。実施形態において、磁性体層130の表面は、小突起を有してもよく、粗面を有することを意味する。また、磁性体層130は、常磁性材料、超常磁性材料、強磁性材料、フェライト磁性材料又はその組合せを含んでもよいが、これに限定しない。実施形態において、磁性体層130は、強磁性材料であってもよい。また、実施形態において、磁性体層130は、実質的に均一な厚さを有してもよく、且つ、コポリマーコア110を全面的に覆うことができる。例を挙げると、磁性体層130の厚さは、20nm〜200nmであってもよく、また、30nm〜180nm、40nm〜150nmまたは50nm〜120nmであってもよい。
【0031】
上記シリコンベース層140は、磁性体層130を覆うことができる。実施形態において、シリコンベース層140の材料は、シロキサン、シリカガラズ、酸化ケイ素、ケイ酸塩又はその組合せを含んでもよいが、これに限定しない。具体的には、シリコンベース層140は、テトラメトキシシラン(tetramethoxysilane,TMOS)、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane,TEOS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−Aminopropyltriethoxysilane,APTES)または3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3−Glycidoxypropyltrimethoxysilane,GOPTS)等の材料を含んでもよいが、これに限定しない。また、実施形態において、シリコンベース層140の厚さは、1nm〜50nmであってもよく、また、5nm〜40nm、10nm〜35nmまたは15nm〜30nmであってもよい。
【0032】
特に言及することとして、こぶ状コポリマーコア110に順に形成されるポリマー層120、磁性体層130及びシリコンベース層140は、実質的に、こぶ状コポリマーコア110の形態を変えず、したがって、形成された磁気ビーズ100もこぶ状の外観を有する。このように、磁気ビーズ100の表面積を大幅に増やすことができ、磁気ビーズ100の密着堆積に有利である。更に、磁気ビーズ100を構成する材料は、実質的に、生体適合性を有することから、磁気ビーズ100を生物医学分野に広く用いることができる。
【0033】
実施形態において、磁気ビーズの製造は、以下の工程を含んでもよい。まず、こぶ状コポリマーコアを製造する。具体的には、脱イオン水、有機溶剤、親水性ポリマー、脂溶性開始剤、脂溶性モノビニルモノマー及び脂溶性ジビニルモノマーをリアクタに入れる。次いで、窒素雰囲気下で、上記混合物を60℃〜90℃で少なくとも20時間攪拌する。
【0034】
実施形態において、上記脱イオン水の添加量は、0〜10mlであってもよく、上記有機溶剤の添加量は、10ml〜70mlであってもよく、また、例えば、アルコール類、エーテル類等の有機溶剤である。例を挙げると、使用する有機溶剤は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、n−ヘキサノールまたはエチレングリコールメチルエーテルを含んでもよいが、これに限定しない。また、上記親水性ポリマーの添加量は、0.1g〜1gであってもよく、また、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酢酸ビニルとビニルアミンコポリマー、セルロースとその誘導体、多糖類、コラーゲン、ポリアミノ酸等の親水性ポリマーであるが、これに限定しない。また、上記脂溶性開始剤の添加量は、0.3g〜1.5gであってもよく、また、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(Azobisisobutyronitrile,AIBN)、過酸化ベンゾイル(Benzoyl peroxide,BPO)、過酸化ラウロイル(Lauroyl peroxide,LPO)等の脂溶性開始剤であるが、これに限定しない。更に、上記脂溶性モノビニルモノマー(monovinyl monomer)の添加量は、5ml〜15mlであってもよく、また、例えば、スチレン(Styrene)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate,MMA)等の脂溶性モノビニルモノマーであるが、これに限定しない。また、上記脂溶性ジビニルモノマー(divinyl monomer)の含有量は、脂溶性モノビニルモノマーの含有量の体積百分率の割合0.4%〜2%であってもよく、また、例えば、ジビニルベンゼン(Divinylbenzene,DVB)、エチレングリコールジメタクリレート(Ethyleneglycol dimethacrylate,EGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(Triethylene glycol dimethacrylate,TEDMA)等の脂溶性ジビニルモノマーであるが、これに限定しない。
【0035】
それから、こぶ状コポリマーコアにポリマー層を形成する。具体的には、帯電した水溶性モノビニルモノマー、脱イオン水及び水溶性開始剤を加えて、60℃〜90℃で少なくとも2時間攪拌し続ける。実施形態において、上記帯電した水溶性モノビニルモノマーの添加量は、0.1g〜1gであってもよく、また、例えば、アクリル酸(acrylic acid)、メタクリル酸(Methacrylic acid)、アリルアミン(3−Aminopropylene/Allylamine)、アリルスルホン酸ナトリウム(sodium allylsulfonate)等の帯電した水溶性モノビニルモノマーであるが、これに限定しない。また、上記脱イオン水の添加量は、5ml〜15mlであってもよい。上記水溶性開始剤の添加量は、0.02g〜0.1gであってもよく、また、例えば、過硫酸塩(persulfate)、過酸化水素(hydrogen peroxide)等の水溶性開始剤であるが、これに限定しない。
【0036】
次いで、室温に冷却して、反応完了後、脱イオン水で生成物を洗浄し、表面に帯電ポリマー層を有するこぶ状ポリマー微粒子が得られる。
【0037】
それから、表面に帯電ポリマー層を有するこぶ状ポリマー微粒子に磁性体層を形成する。具体的には、表面に帯電ポリマー層を有するこぶ状ポリマー微粒子、脱イオン水、エチレングリコール(ethylene glycol)及び磁性体の前駆体をリアクタに入れる。実施形態において、上記表面に帯電ポリマー層を有するこぶ状ポリマー微粒子の添加量は、0.5g〜2gであってもよい。また、上記脱イオン水の添加量は、200ml〜600mlであってもよい。上記エチレングリコールの添加量は、0〜100mlであってもよい。ここで、エチレングリコールの添加は、磁性体層が覆われた微粒子のサイズを制御するのに用いられてもよい。更に、上記磁性体の前駆体の添加量は、0.05g〜1gであってもよく、また、例えば、塩化第一鉄(ferrous chloride)、塩化コバルト(cobaltous chloride)、塩化ニッケル(nickel chloride)等の磁性体の前駆体であるが、これに限定しない。
【0038】
次いで、窒素雰囲気下で、上記混合物を攪拌し、50℃〜90℃に加熱し、脱イオン水に溶解した硝酸カリウム(KNO)及びヘキサメチレンテトラミン(hexamethylenetetramine,HMTA)の水溶液を加えた後、窒素雰囲気下で、50℃〜90℃で、攪拌し続けて、0.5時間以上反応させる。反応完了後、脱イオン水で生成物を洗浄し、磁性体層に被覆されたこぶ状ポリマー微粒子が得られる。実施形態において、上記硝酸カリウム及びヘキサメチレンテトラミンの水溶液の添加量は、20ml〜100mlの脱イオン水に溶解した0.2g〜3gの硝酸カリウム及び2g〜30gのヘキサメチレンテトラミンであってもよい。
【0039】
それから、磁性体層が表面に形成されたこぶ状ポリマー微粒子にシリコンベース層を形成する。具体的には、磁性体層が被覆されたこぶ状ポリマー微粒子、脱イオン水、エタノール、アンモニア水または酢酸及びシランをリアクタに入れる。ここで、アンモニア水または酢酸は、シランを加水分解するのに用いられることから、その他のシランを加水分解できる物質によってこれを置き換えることもできる。次いで、常温で、攪拌して0.5時間以上反応させて、反応完了後、脱イオン水で生成物を洗浄し、シリコンベース層に被覆された磁気ビーズが得られる。
【0040】
実施形態において、上記磁性体層が被覆されたこぶ状ポリマー微粒子の添加量は、0.3g〜2gであってもよい。また、上記脱イオン水の添加量は、0〜200mlであってもよい。また、上記エタノールの添加量は、0〜600mlであってもよい。ここで、必要に応じて、選擇添加脱イオン水とエタノールの少なくとも一つを選択して添加してもよい。上記アンモニア水または酢酸の添加量は、10ml〜50mlであってもよい。更に、上記シランの添加量は、0.1ml〜1mlであってもよい。また、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等であるが、これに限定しない。
【0041】
以下に、例を挙げて、特定の実験例によって、磁気ビーズの製造方法を具体的に説明する。
【0042】
実験例1
【0043】
それぞれ実験例1−1、1−2及び1−3によって、異なる配合比率のこぶ状スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーコア及びカルボキシル基ポリマー層の製造を説明する。
【0044】
実験例1−1では、1.5mlの脱イオン水、39mlのtert−ブタノール(tert−butanol)、0.34gのポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone,PVP)、0.92gの過酸化ベンゾイル、10mlのスチレン及び0.1mlのジビニルベンゼンをリアクタに入れて、窒素雰囲気下で、上記混合物を70℃で攪拌し、22時間反応させる。それから、0.3mlのメタクリル酸(methylacrylic acid,MAA)、10mlの脱イオン水及び0.05gのペルオキソ二硫酸カリウム(potassium peroxydisulfate,K)を加えて、70℃で攪拌し続けて2時間反応させ、次いで、室温に冷却する。反応完了後、脱イオン水で生成物を洗浄し、カルボキシル基ポリマー層付きのこぶ状スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーコアが得られる。それから、走査式電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM、メーカーFEI、型番Quanta 400F)を用いて、これらのこぶ状コポリマーコアの平均直径D及び突起物の平均高さhを観察並びに測定する。
【0045】
上記反応条件に基づき得られるポリマー層が覆われたこぶ状コポリマーコアのSEM写真(10000x)は、図2Aに示し、その外観は、こぶ状を示し、且つ、平均直径Dは約4.5μmであり、突起物の平均高さhは約1000nmである。
【0046】
実験例1−2では、2.57mlの脱イオン水、30mlのエタノール、0.34gのポリビニルピロリドン、0.92gの過酸化ベンゾイル、9.5mlのスチレン及び0.0666mlのジビニルベンゼンをリアクタに入れて、窒素雰囲気下で、上記混合物を70℃で攪拌して22時間反応させる。それから、0.6mlのメタクリル酸、10mlの脱イオン水及び0.05gのペルオキソ二硫酸カリウムを加えて、70℃で攪拌し続けて2時間反応させ、次いで、室温に冷却する。反応完了後、脱イオン水で生成物を洗浄し、カルボキシル基ポリマー層付きのこぶ状スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーコアが得られる。それから、走査式電子顕微鏡を用いて、これらのこぶ状コポリマーコアの平均直径D及び突起物の平均高さhを観察並びに測定する。
【0047】
上記反応条件に基づき得られるポリマー層が覆われたこぶ状コポリマーコアのSEM写真(10000x)は、図2Bに示し、その外観は、こぶ状を示し、且つ、平均直径Dは約2.5μmであり、突起物の平均高さhは約500nmである。特に言及することとして、図2Bからわかるように、磁気ビーズの平均直径Dが1μmより小さい時,こぶ状コポリマーコア表面積は非常に小さいことから、こぶ状コポリマーコア表面に成長する突起物は非常に限られ、実質的に、平均直径Dが1μmより小さい磁気ビーズを製造することは困難である。したがって、本願の磁気ビーズの平均直径Dは、例えば、1μmより大きい。
【0048】
実験例1−3では、15mlのエタノール、21mlのエチレングリコールメチルエーテル、0.75gのポリビニルピロリドン、0.5gの過酸化ベンゾイル、7.5mlのスチレン及び0.105mlのジビニルベンゼンをリアクタに入れて、窒素雰囲気下で、上記混合物を70℃で攪拌して22時間反応させる。それから、0.2mlのメタクリル酸、10mlの脱イオン水及び0.05gのペルオキソ二硫酸カリウムを加えて、70℃で攪拌し続けて2時間反応させ、次いで、室温に冷却する。反応完了後、脱イオン水で生成物を洗浄し、カルボキシル基ポリマー層付きのこぶ状スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーコアが得られる。それから、走査式電子顕微鏡を用いて、これらのこぶ状コポリマーコアの平均直径D及び突起物の平均高さhを観察並びに測定する。
【0049】
上記反応条件に基づき得られるポリマー層が覆われたこぶ状コポリマーコアのSEM写真(10000x)は、図2Cに示し、その外観は、こぶ状を示し、且つ、平均直径Dは約8.5μmであり、突起物の平均高さhは約900nmである。
【0050】
実験例2
【0051】
こぶ状コポリマーコアを覆う磁性体層の製造
【0052】
1gの実験例1−1で形成された微粒子、400mlの脱イオン水、50mlのエチレングリコール及び0.3gの塩化第一鉄(Iron(II) chloride,FeCl)をリアクタに入れて、窒素雰囲気下で、上記混合物を攪拌して、60℃に加熱する。次いで、50mlの脱イオン水に溶解した2gの硝酸カリウム及び20gのヘキサメチレンテトラミンの水溶液を加え、窒素雰囲気下で、60℃攪拌し続けて1時間反応させる。反応完了後、脱イオン水で生成物を洗浄し、酸化鉄磁性体層が覆われたカルボキシル基ポリマー層付きのこぶ状スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーコアが得られ、そのSEM写真(10000x)は、図3に示す。図3からわかるように、磁性体層は、実質的に、微粒子の表面形態及び直径に影響しない。
【0053】
実験例3
【0054】
磁性体層を覆うシリコンベース層の製造
【0055】
1gの実験例2で形成された磁気ビーズ、100mlの脱イオン水、500mlのエタノール、30mlのアンモニア水及び0.3mlのテトラエトキシシランをリアクタに入れて、常温で攪拌して2時間反応させる。反応完了後、脱イオン水で生成物を洗浄し、シリコンベース層が覆われた磁気ビーズが得られ、そのSEM写真(10000x)は、図4に示す。図4からわかるように、シリコンベース層は、実質的に、微粒子の表面形態及び直径に影響しない。
【0056】
以上より、本発明の磁気ビーズは、こぶ状表面を有し、且つ、内から外に、こぶ状コポリマーコア、ポリマー層、磁性体層及びシリコンベース層を含む。磁気ビーズは、こぶ状表面を有することから、磁気ビーズの表面積を大幅に増やすことができ、磁気ビーズの密着堆積に有利である。更に、こぶ状ポリマー微粒子の表面に、少なくとも一つの官能基を含むポリマー層が形成され、且つ、この官能基は電荷を持つため、こぶ状ポリマー微粒子が更に多くの磁性体の前駆体を吸着するのに有利であり、高磁定量化の効果を達成する。このようにして、磁気ビーズを免疫学的定量分析、精製分離または細胞刺激増幅等の生物医学分野に広く用いることに有利である。
【0057】
本文は以上の実施例のように示したが、本発明を限定するためのものではなく、当業者が本発明の精神の範囲から逸脱しない範囲において、変更又は修正することが可能であるが故に、本発明の保護範囲は後続の特許請求の範囲に定義しているものを基準とする。
【符号の説明】
【0058】
100磁気ビーズ
110こぶ状コポリマーコア
112突起物
120ポリマー層
130磁性体層
140シリコンベース層
、D 直径
、h、h 高さ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
【外国語明細書】
2019145783000001.pdf