【解決手段】発光素子1は、基板2の表面2Aに順に積層されたn型半導体層3、発光層4およびp型半導体層5を有する半導体積層構造部6と、半導体積層構造部6におけるp型半導体層側の表面の所定の電流注入領域に半導体積層構造部内に入り込むように形成され、かつp型半導体層5から半導体積層構造部内に延びた複数の凹部16と、p型半導体層側の表面における電流注入領域の一部に形成された第1絶縁膜12と、p型半導体層5の表面に形成され、p型半導体層側の表面における所定の電流注入領域の全域またはp型半導体層側の表面における所定の電流注入領域のほぼ全域を覆うと同時に第1絶縁膜12を覆うp側透明電極層と、p側透明電極層14におけるp型半導体層5とは反対側の表面における第1絶縁層12の表面と対向する位置に形成されたp側電極15とを含む。
前記複数の凹部は、前記p側透明電極層における前記導体積層構造部とは反対側の表面から掘り下げられて、前記半導体積層構造部内に延びている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光素子。
前記複数の凹部は、前記p側透明電極層における前記導体積層構造部とは反対側の表面から掘り下げられて、前記透明電極層、前記p型半導体層および前記発光層を貫通して前記n型半導体層の厚さ方向の途中に入り込んでいる、請求項5に記載の発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、第1発明および第2発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
[1]第1発明について
第1発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1発明の一実施形態に係る発光素子の模式的な平面図である。
図2は、
図1の発光素子の模式的な断面図である。
【0017】
発光素子1は、平面視四角形状のチップ状である。発光素子1は、表面2Aおよび裏面2Bを有する基板2と、基板2の表面2Aに順に積層されたn型導電型半導体層3、発光層4およびp型導電型半導体層5とを含む。以下、n型導電型半導体層3を「n型半導体層3」といい、p型導電型半導体層5を「p型半導体層5」という。基板2は、平面視で四角形状である。n型半導体層3における周縁部付近を除いた部分と、発光層4と、p型半導体層5とによって、半導体積層構造部6が構成されている。半導体積層構造部6は、平面視において、基板2とほぼ相似の四角形状であり、1つのコーナ部に切除部6Aを有している。切除部6Aの側面は、平面視において内方に向かって突出した湾曲面に形成されている。
【0018】
基板2は、発光層4の発光波長λ(たとえば450nm)に対して透明な材料(たとえば、サファイア、GaNまたはSiC)からなる。「発光波長に対して透明」とは、具体的には、たとえば、発光波長の透過率が60%以上の場合をいう。この実施形態では、基板2は、サファイア基板である。基板2の厚さは、たとえば、200μm〜300μmである。
【0019】
基板2の表面2Aには、n型半導体層3へ突出する複数の円錐台状の凸部7が形成されている。これらの凸部7は、
図3Aに示すように、離散配置されている。
図3Aには、平面視において、基板2の表面2Aの隣接する2つの辺のうち一方の辺に沿う方向をx方向として示し、他方の辺に沿う方向をy方向として示している。この実施形態では、平面視で、正六角形の集合体内の各正六角形の各頂点および中心(重心)に凸部7が配置されるようなパターンで、複数の凸部7が基板2の表面2Aに形成されている。言い換えれば、正六角形の集合体内の各正六角形を構成する6つの正三角形の各頂点に凸部7が配置されるようなパターンで、複数の凸部7が基板2の表面2Aに形成されている。この実施形態では、各凸部7は、SiNで形成されている。各凸部7は、基板2の表面2Aをエッチングすることにより、形成してもよい。
【0020】
複数の凸部7は、
図3Bに示すように、互いに間隔をあけて行列状に配置されていてもよい。
基板2の表面2Aに凸部7が形成されているので、基板2の表面2Aとn型半導体層3との界面において光が全反射するのを抑制することができる。これにより、光取り出し効率を向上させることができる。たとえば、基板2の裏面2Bで反射して、基板2とn型半導体層3との界面に対して様々な角度で入射する光が、当該界面において基板2の裏面2B側に全反射するのを抑制できる。これにより、光取り出し効率を向上させることができる。
【0021】
n型半導体層3は、基板2の表面2Aに積層されている。n型半導体層3は、基板2の表面2Aの全域を覆っている。n型半導体層3によって、全ての凸部7は覆われている。n型半導体層3は、n型のGaNからなり、発光層4の発光波長λに対して透明である。
n型半導体層3について、
図2において、基板2の表面2Aを覆う下面を裏面3Bといい、裏面3Bとは反対側の上面を表面3Aということにする。n型半導体層3の表面3Aには、大局的に見て、中央部の高位領域と、高位領域の周囲の高位領域より低い低位領域とが存在する。これにより、n型半導体層3の表面3Aには、高位領域と低位領域との境界部に段差が形成されている。
【0022】
高位領域におけるn型半導体層3が、半導体積層構造部6内のn型半導体層を構成している。低位領域におけるn型半導体層3を、半導体積層構造部6から引き出された引き出し部8ということにする。引き出し部8では、その側面が基板2の側面と面一に揃う位置まで外側に引き出されている。引き出し部8は、半導体積層構造部6の周囲を取り囲むように形成されている。
【0023】
引き出し部8の表面には、半導体積層構造部6の切除部6Aに対応する領域に、n側電極9が接触して形成されている。n側電極9は、引き出し部8の表面に形成されたn側透明電極層10と、n側透明電極層10上に形成されたn側パッド11とからなる。n側透明電極層10は、平面視で基板2の4辺と平行な4辺を有する四角形状であり、半導体積層構造部6の切除部6Aの側面に対向するコーナ部が外方に突出した湾曲面に形成されている。n側透明電極層10は、たとえば、発光層4の発光波長λに対して透明な材料(たとえば、ITO、ZnO)からなる。n側パッド11は、平面視で円形状である。n側パッド11は、たとえば、Cr、Auからなる。
【0024】
発光層4は、n型半導体層3上に積層されている。発光層4は、n型半導体層3の表面3Aにおける高位領域のほぼ全域を覆っている。発光層4は、この実施形態では、Inを含む窒化物半導体(たとえばInGaN)からなる。
p型半導体層5は、発光層4上に積層されている。p型半導体層5は、発光層4の表面のほぼ全域を覆っている。p型半導体層5は、p型のGaNからなり、発光層4の発光波長λに対して透明である。このように、n型半導体層3とp型半導体層5とで発光層4を挟んだ発光ダイオード構造(半導体積層構造部6)が形成されている。
【0025】
p型半導体層5における発光層4とは反対側の表面には、半導体積層構造部6の切除部6Aと対向するコーナ寄りの位置に、平面視で円形状の絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12は、たとえば、SiO
2からなる。
p型半導体層5の表面には、p側透明電極層14が形成されている。p側透明電極層14は、p型半導体層5の表面における所定の電流注入領域13のほぼ全域(電流注入領域13における後述する凹部16の第2部分16B以外の領域)を覆っている。この実施形態では、電流注入領域13は、p型半導体層5の表面の周縁部を除いた領域に設定されている。p型半導体層5の表面の絶縁膜12が形成されている領域は電流注入領域13に含まれており、絶縁膜12はp側透明電極層14によって覆われている。p側透明電極層14は、たとえば、発光層4の発光波長λに対して透明な材料(たとえば、ITO、ZnO)からなる。p側透明電極層14の厚さは、たとえば、100nm〜300nm程度である。
【0026】
p側透明電極層14におけるp型半導体層5とは反対側の表面には、絶縁膜12の表面と対向する位置(
図2では絶縁膜12の真上位置)に、p側電極(p側パッド)15が形成されている。p側電極15は、平面視で絶縁膜12より径の小さな円形状である。p側電極15は、たとえば、Cr、Auからなる。前述の絶縁膜12は、よく知られているように、半導体積層構造部6におけるp側電極15の直下以外に電流を流し、p側電極15によって遮られる光を低減させるために設けられている。
【0027】
p側透明電極層14におけるp型半導体層5とは反対側の表面には、p側透明電極層14を貫通し、半導体積層構造部6の内部に入り込んだ複数の凹部16が形成されている。各凹部16の内壁面(底面および内周面)には、SiO
2からなる絶縁膜17が形成されている。この実施形態では、各凹部16は、p側透明電極層14の表面からn型半導体層3の内部に達している。各凹部16は、p側透明電極層14を貫通している第1部分(貫通孔)16Aと、第1部分16Aに連通しかつ半導体積層構造部6の内部に入り込んだ第2部分(凹部)16Bとからなる。
【0028】
これらの凹部16は、
図4Aに示すように、離散配置されている。この実施形態では、基板2上に形成された各凸部7の中心の真上位置(各凸部7に対向する位置)と、複数の凸部7内の二次元的に隣接する3つの凸部7間の中心位置の真上位置(二次元的に隣接する3つの凸部7間の中心位置に対向する位置)とに、凹部16は形成されている。
図4Aに示すように、正六角形の集合体内の各正六角形を構成する6つの正三角形の各頂点に凸部7が配置されている場合には、各正三角形のそれぞれの重心が、二次元的に隣接する3つの凸部7間の中心位置となる。したがって、この場合には、各正六角形を構成する6つの正三角形の各頂点および各重心に凹部16が配置される。
【0029】
基板2上に形成された凸部7の中心の真上位置のみに凹部16を配置してもよい。つまり、
図4Aに示される各正六角形を構成する6つの正三角形の各頂点のみに凹部16を配置してもよい。
基板2上に形成された複数の凸部7内の二次元的に隣接する3つの凸部7間の中心位置の真上位置のみに、凹部16を形成してもよい。つまり、
図4Aに示される各正六角形を構成する6つの正三角形の各重心のみに凹部16を配置してもよい。
【0030】
凸部7が
図3Bに示すように行列状に配置されている場合には、たとえば、
図4Bに示すように、複数の凹部16は、平面視において、各凸部7の中心の真上位置(各凸部7に対向する位置)と、二次元的に隣接する4つの凸部7間の中心位置とに配置してもよい。
凸部7が
図3Bに示すように行列状に配置されている場合には、複数の凹部16は、平面視において、各凸部7の中心の真上位置のみに配置してもよく、二次元的に隣接する4つの凸部7間の中心位置の真上位置のみに配置してもよい。
【0031】
この実施形態では、凹部16は平面視で円形状である。また、この実施形態では、
図5Aに示すように、凹部16は、下方にいくほど横断面の面積が小さくなるような裾狭まりの形状を有している。したがって、凹部16の内壁面における側面(内周面)は、基板2の表面2Aに対して傾斜した傾斜面となる。
凹部16は、
図5Bに示すように、下方にいくほど横断面の面積が大きくなるような裾広がりの形状を有していてもよい。この場合にも、凹部16の内壁面における側面(内周面)は、基板2の表面2Aに対して傾斜面となる。
【0032】
図6A〜
図6Gは、
図1および
図2に示す発光素子の製造方法を示す模擬的な断面図である。
まず、
図6Aに示すように、基板2の表面2Aに、SiNからなる層(SiN)を形成し、レジストパターン(図示略)をマスクとするエッチングにより、このSiN層を、複数の凸部7に分離する。次に、
図6Bに示すように、基板2の表面2A上に、全ての凸部7を覆うように、n型のGaNからなる層(n−GaN層)を形成する。これにより、基板2の表面2Aに、n型半導体層3が形成される。
【0033】
次に、
図6Cに示すように、n型半導体層3の表面に、Inを含む窒化物半導体(たとえばInGaN層)を形成する。これにより、n型半導体層3の表面に発光層4が形成される。発光層4の発光波長λは、InまたはGaの組成を調整することで、440nm〜460nmに制御される。次に、発光層4の表面に、n型のGaNからなる層(n−GaN層)を形成する。これにより、発光層4の表面にp型半導体層5が形成される。
【0034】
次に、p型半導体層5上に、絶縁膜12を形成すべき領域に開口を有するレジストパターン(図示略)を形成する。そして、当該レジストパターンを介して、たとえば、スパッタ法またはプラズマCVD法により、
図6Dに示すように、SiO
2からなる絶縁膜12を形成する。
次に、p型半導体層5上に、p側透明電極層14を形成すべき領域(電流注入領域13)に開口を有するレジストパターン(図示略)を形成する。そして、当該レジストパターンを介して、たとえば、スパッタ法により、ITOからなる層(ITO層)を、p型半導体層5上に堆積する。そして、ITO材料の不要部分をレジストパターンとともにリフトオフする。これにより、
図6Eに示すように、p型半導体層5表面に、絶縁膜12を覆うp側透明電極層14が形成される。
【0035】
次に、レジストパターン(図示略)をマスクとするエッチングにより、
図6Fに示すように、p型半導体層5、発光層4およびn型半導体層3のそれぞれを選択的に除去する。これにより、半導体積層構造部6と半導体積層構造部6から引き出された引き出し部8とが形成される。
次に、p側透明電極層14の上に、凹部16を形成すべき領域に開口を有するレジストパターン(図示略)を形成する。そして、当該レジストパターンを介して、p側透明電極層14、p型半導体層5、発光層4およびn型半導体層3をエッチングすることにより、
図6Gに示すように、凹部16を形成する。次に、前記レジストパターンを残した状態で、レジストパターン上および凹部16の内壁面上にSiO
2層を形成する。そして、SiO
2層の不要部分をレジストパターンとともにリフトオフする。これにより、凹部16の内壁面(底面および側面)に、SiO
2からなる絶縁膜17が形成される。
【0036】
この後、引き出し部8(n型半導体層3)の表面にn側電極9を形成するとともに、p側透明電極層14の表面における絶縁膜12の真上の領域にp側電極15を形成する。これにより、
図1および
図2に示される発光素子が得られる。
この発光素子1では、n側電極9(n側パッド11)とp側電極(p側パッド)15との間に順方向電圧を印加すると、p側電極15からn側電極9へ向かって電流が流れる。電流は、p側電極15からn側電極9へ向かって、p側透明電極層14、p型半導体層5、発光層4およびn型半導体層3を、この順番で流れる。このように電流が流れることによって、n型半導体層3から発光層4に電子が注入され、p型半導体層5から発光層4に正孔が注入される。そして、これらの正孔および電子が発光層4で再結合することにより、発光層4から波長440nm〜460nmの光が発生する。この光は、p型半導体層5およびp側透明電極層14を透過して、p側透明電極層14の表面から取り出される。
【0037】
発光層4からn型半導体層3側に向かった光は、n型半導体層3を透過する。そして、この光の一部は、n型半導体層3と基板2との界面や、基板2の裏面等で反射する。反射した光は、n型半導体層3、発光層4、p型半導体層5およびp側透明電極層14をこの順で透過して、p側透明電極層14の表面から取り出される。
この実施形態では、p側透明電極層14の表面からp側透明電極層14を貫通し、半導体積層構造部6の内部に入り込んだ複数の凹部16が形成されている。これにより、半導体積層構造部6内を伝搬する光が、凹部16の内壁面における側面で反射されて、p側透明電極層14側へ光が取り出されるため、光取り出し効率を高めることができる。特に、この実施形態では、凹部16は、p側透明電極層14の内部に入り込んだ第2部分16Bを有しているので、p側透明電極層14のみに凹部を形成した場合に比べて、光取り出し効率を高めることができる。
【0038】
また、この実施形態では、凹部16はn型半導体層3に達している。凹部16の深さが深いほど、凹部16の内壁面における側面の面積が大きくなるので、凹部16がn型半導体層3に達していない場合に比べて、光取り出し効率を高めることができる。凹部16をn型半導体層3に達するまで形成した場合、発光層4を凹部16が貫通するため、発光層4の面積が減少する。しかし、発光層4で発生した光が発光層4内で吸収される前に、凹部16によってその光を発光層4外に取り出せるため、光の取出し効率を高めることができる。
【0039】
また、この実施形態では、基板2の表面2Aに複数の凸部7が形成されているので、光取り出し効率を高めることができる。
基板2の表面2Aに複数の凸部7が形成されている場合、n型半導体層3内の凸部7の中心の真上の領域においては、基板2上にn型半導体層3を結晶成長させる際に、横方向の成長が合わさるため、欠陥部が生じやすい。また、n型半導体層3内の複数の凸部7内の二次元的に隣接する複数の凸部7間の中心位置の真上の領域においては、基板2の欠陥を引き継ぎやすいため、欠陥部が生じやすい。n型半導体層3内に欠陥部が存在する場合、欠陥部の抵抗値は低いため、欠陥部に電流が集中して流れ、発光素子1が破壊するおそれがある。
【0040】
この実施形態では、各凸部7の中心位置の真上位置に凹部16が配置されているとともに、複数の凸部7内の二次元的に隣接する複数の凸部7間の中心位置の真上位置に凹部16が配置されている。つまり、n型半導体層3内の欠陥部が生じやすいに箇所の真上に凹部16が配置されている。これにより、n型半導体層3内の欠陥部が生じやすいに箇所に、p側透明電極層14からの電流が流れにくくなる。これにより、欠陥部に電流が集中して流れるのを抑制できるから、発光素子1の信頼性を高めることができる。さらに、この実施形態では、凹部16の内壁面に絶縁膜17が形成されているので、欠陥部が生じやすい箇所に電流をより流れにくくできるため、発光素子1の信頼性をより高めることができる。
【0041】
欠陥部に電流が集中して流れるのを抑制する効果は、凹部16が第2部分16Bのみから構成されている場合でも、達成することができる。つまり、半導体積層構造部6の表面に凹部が形成されていれば、p側透明電極層14に凹部が形成されていなくても、欠陥部に電流が集中して流れるのを抑制する効果が得られる。
図7は、発光素子パッケージの模式的な断面図である。
【0042】
発光素子パッケージ51は、発光素子1と、支持基板52と、樹脂パッケージ53とを含む。支持基板52は、発光素子1を支持する絶縁基板54と、絶縁基板54の両端から露出するように設けられた一対の電極55,56とを備えている。
発光素子1は、基板2の表面2Aが上を向くような姿勢で、支持基板52に支持されている。具体的には、発光素子1の基板2の裏面2Bが、絶縁基板54に接着剤層57を介して接合されている。つまり、発光素子1は、フェイスアップ実装されている。発光素子1のn側電極9(n側パッド11)と一方の電極55とが、ワイヤ58によって接続されている。発光素子1のp側電極15と他方の電極56とが、ワイヤ59よって接続されている。
【0043】
樹脂パッケージ53は、樹脂が充填されたケースであり、その内側に発光素子1を収容して(覆って)保護した状態で、支持基板52に固定されている。樹脂パッケージ53は、側方(発光素子1に向かい合う部分)の表面に、発光素子1から出射された光を反射させて外部に取り出すための反射部60を有している。反射部60は、たとえば、樹脂からなる。
【0044】
樹脂パッケージ53を構成する樹脂には、蛍光体や反射剤が含有されているものがある。たとえば、発光素子1が青色光を発光する場合には、当該樹脂に黄色蛍光体を含有させることで発光素子パッケージ51は白色光を発光することができる。発光素子パッケージ51は、多数が集まることによって、電球などの照明機材に用いることもでき、また液晶テレビのバックライトや自動車等のヘッドランプに用いることもできる。
【0045】
このような発光素子パッケージ51では、発光素子1の発光層4で発光した光は、直ちにp型半導体層5を透過してp側透明電極層14の表面から放出されたり、n型半導体層3を透過して一旦基板2の裏面2B等で反射された後に、p側透明電極層14の表面から放出されたりする。
図7に示すような発光素子パッケージを考慮した上で、光線追跡法(レイ・トレーシング(ray tracing))を用いたシミュレーションによって、表1に示す複数の仮想サンプル(以下、単に「サンプル」という。)S1〜S24の発光量を計算により求めた。
【0046】
【表1】
表1において、「下地凸部」とは、基板2の表面2Aに形成される凸部7を示している。「上部凹部」とは、p型透明電極層15の表面から半導体積層構造部6内部に達する凹部16を示している。「上部凹部形状」とは、凹部16の形状を示しており、
図5Aに示すような裾狭まりの形状を「形状A」で示し、
図5Bに示すような裾広がりの形状を「形状B」で示している。「上部凹部シフト量」の定義については、後述する。
【0047】
各サンプルS1〜S24は、前述した発光素子1を基本構造としているが、発光素子1とは異なる構造を有している。各サンプルS1およびS2は、比較例であり、サンプルS3〜S24は、実施例である。
まず、実施例のサンプルS3〜S24のうち、サンプルS5〜S24について説明する。これらのサンプルS5〜S24は、凸部7および凹部16を有している。ただし、凹部16全体のパターンおよび凸部7に対する凹部16の位置が、前述した発光素子1と異なっている。また、サンプルS5〜S14の凹部の形状は「形状A」であり、サンプルS15〜S24の凹部の形状は「形状B」である。
【0048】
サンプルS5〜S24の凹部16全体のパターンについて説明する。基板2の表面の凸部7は、
図3Aに示すパターンで配置されているものとした。凹部16全体のパターンは、凸部7全体のパターンと同じとした。サンプルS5〜S14間およびサンプルS15〜S24間においては、凸部7に対する凹部16の位置が異なる。
各凹部16が各凸部7の中心位置の真上に配置されている状態から、各凹部16が二次元的に隣接する3つの凸部7間の中心位置(
図3Aの各正三角形の重心位置)の真上に配置される状態まで、各凹部16の位置を対応する凸部7に対して少しずつずらすことにより、凸部7に対する凹部16の位置を変化させた。サンプルS5〜S14間およびサンプルS15〜S24間では、凸部7に対する凹部16の位置のずれ量が異なっている。
【0049】
凸部7に対する凹部18の位置のずれ量が表1に示される「上部凹部シフト量」である。「上部凹部シフト量」には、x方向シフト量およびy方向シフト量が含まれる。
図8に示すように、凸部7に対する凹部18のx方向(
図3Aのx方向と同じ)のずれ量(中心点間距離)Δxをx方向シフト量と定義し、y方向(
図3Aのy方向と同じ)のずれ量(中心点間距離)Δyをy方向シフト量と定義する。
【0050】
表1の「上部凹部シフト量」に用いられている「L」および「H」は、次のように定義される。
図3Aにおいて、六角形を構成する6つの正三角形の一辺の長さをL[μm]と定義し、それらの正三角形の高さをH[μm]と定義した。
たとえば、サンプルS5およびサンプルS15では、凹部18は、各凸部7の中心の真上位置のみに配置されている(Δx=Δy=0)。また、たとえば、サンプルS14およびサンプルS24では、凹部18は、二次元的に隣接する3つの凸部7間の中心位置の真上位置にのみに配置されている(Δx=L,Δy=H/3)。
【0051】
比較例のサンプルS1は、発光素子1に対して、凸部7および凹部16が存在していない発光素子である。比較例のサンプルS2は、発光素子1に対して、凸部7は存在しているが、凹部16が存在していない発光素子である。
実施例のサンプルS3は、凸部7は存在しないが、凹部16が存在している発光素子である。ただし、サンプルS3の凹部16のパターン、形状、大きさは、前述したサンプルS5と同じとした。実施例のサンプルS4は、凸部7は存在しないが、凹部16が存在している発光素子である。ただし、サンプルS4の凹部16のパターン、形状、大きさは、前述したサンプルS15と同じとした。
【0052】
図9は、シミュレーション結果を示すグラフである。
図9では、サンプルS2の発光量を100%として各サンプルS1〜S24の発光量を規格化した後の規格化発光量[%]を、棒グラフで示している。
図9から、サンプルS3およびS4の発光量は、サンプルS1およびS2の発光量より大きいことがわかる。つまり、凸部7が存在しなくても凹部16が存在する発光素子では、凸部7および凹部16の両方が存在しない発光素子や凸部7は存在するが凹部16が存在しない発光素子に比べて、発光素子の発光量(発光輝度)を高くできる。
【0053】
また、
図9から、サンプルS5〜S14の発光量は、サンプルS3の受光量より大きいことがわかる。同様に、サンプルS15〜S24の発光量は、サンプルS4の受光量より大きいことがわかる。つまり、凹部16の形状が同じである場合には、凹部16および凸部7のうち凹部16のみが存在している発光素子に比べて、凹部16および凸部7の両方が存在している発光素子の方が、発光素子の発光量(発光輝度)を高くできることがわかる。
【0054】
なお、このシミュレーションでは、n型半導体層3内の欠陥部は考慮されていないため、凹部16の配置位置による欠陥部に電流が流れるのを抑制する効果の影響は、シミュレーション結果には反映されていない。
図10は、発光素子パッケージの他の例を示す模式的な断面図である。
発光素子パッケージ71は、発光素子1と、支持基板72と、樹脂パッケージ73とを含む。支持基板72は、発光素子1を支持する絶縁基板74と、絶縁基板74の両端から露出するように設けられた一対の電極75,76と、樹脂パッケージ73内において、絶縁基板74の表面に形成されたn側電極層77およびp側電極層78と、n側電極層77およびp側電極層78それぞれの表面に形成されたn側接合層79およびp側接合層80とを備えている。n側電極層77は、一方の電極75に接続されている。p側電極層78は、他方の電極76に接続されている。
【0055】
発光素子1は、基板2の表面2Aが下を向くような姿勢で、支持基板72に支持されている。具体的には、発光素子1のn側電極9(n側パッド11)の表面がn側接合層79に接合され、発光素子1のp側電極15の表面がp側接合層80に接合されている。つまり、発光素子1は、フェイスダウン実装されている。絶縁基板74の表面の所要箇所には、発光素子1のp側透明電極層14を透過した光を反射するための反射部81が形成されている。反射部81は、たとえば、樹脂からなる。
【0056】
樹脂パッケージ73は、樹脂が充填されたケースであり、その内側に発光素子1を収容して(覆って)保護した状態で、支持基板72に固定されている。樹脂パッケージ73は、側方(発光素子1に向かい合う部分)の表面に、発光素子1から出射された光を反射させて外部に取り出すための反射部82を有している。反射部82は、たとえば、樹脂からなる。
【0057】
このような発光素子パッケージ71では、発光素子1の発光層4で発光した光は、直ちにn型半導体層3を透過して基板2の裏面2Bから放出されたり、p型半導体層5およびp側透明電極層14を透過してから反射部81で反射された後に、基板2の裏面2Bから放出されたりする。
以上、第1発明の実施形態について説明したが、第1発明はさらに他の形態で実施することができる。前記実施形態では、凹部16は、p側透明電極層14の表面からn型半導体層3の内部に達しているが、p側透明電極層14の表面からp型半導体層5内部に達する(発光層4に達しない)ものであってもよい。また、凹部16は半導体積層構造部6の表面(p型半導体層5の表面)に形成されている第2部分16Bのみから構成されていてもよい。つまり、p側透明電極層14に凹部16(第1部分16A)は形成されていなくてもよい。この場合には、p型半導体層5の表面における電流注入領域13の全域が、p側透明電極層14によって覆われることになる。
【0058】
また、前述の実施形態では、凹部16は、平面視で円形に形成されているが、平面視で多角形状(四角形、六角形等)に形成されていてもよい。
また、前述の実施形態では、n型半導体層3およびp型半導体層5を構成する窒化物半導体としてGaNを例示したが、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)などの他の窒化物半導体が用いられてもよい。窒化物半導体は、一般には、Al
xIn
yGa
(1−x−y)N(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)と表すことができる。また、窒化物半導体に限らず、GaAs等の他の化合物半導体や、化合物半導体以外の半導体材料(たとえばダイヤモンド)を用いた発光素子にこの発明を適用してもよい。
【0059】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
[2]第2発明について
第2発明は、次のような特徴を有している。
A1.表面および裏面を有する基板と、前記基板の表面に順に積層されたn型半導体層、発光層およびp型半導体層を有する半導体積層構造部と、前記p型半導体層における前記発光層とは反対側の表面の所定の電流注入領域内において、離散的に形成された複数の透明絶縁膜と、前記p型半導体層における前記発光層とは反対側の表面の前記電流注入領域に形成され、前記透明絶縁膜を覆う透明電極層と、前記透明電極層における前記p型半導体層とは反対側の表面に形成されたp側電極とを含む、発光素子。
【0060】
この構成では、半導体積層構造部内から透明電極層内に入射した光が、透明絶縁膜の側面で反射されて、透明電極層におけるp型半導体層とは反対側の表面から取り出されるため、光取り出し効率を高めることができる。
A2.前記n型半導体層に電気的に接続され、半導体積層構造部から前記基板に平行な方向に引き出された引き出し部と、前記引き出し部上に形成されたn側電極とをさらに含む、「A1.」に記載の発光素子。
【0061】
A3.前記基板の表面に前記n型半導体層に覆われた複数の凸部が形成されており、前記複数の透明絶縁膜は、前記n型半導体層内の欠陥が生じやすい箇所に対向して配置された透明絶縁膜を含んでいる、「A1.」または「A2.」に記載の発光素子。
この構成では、基板の表面に複数の凸部が形成されているので、基板とn型半導体層との界面で光が全反射するのを抑制できる。これにより、光の取出し効率を高めることができる。
【0062】
また、この構成では、複数の透明絶縁膜は、n型半導体層内の欠陥が生じやすい箇所に対向して配置された透明絶縁膜を含んでいる。これにより、n型半導体層内の欠陥部が生じやすいに箇所に、透明電極側からの電流が流れにくくなる。これにより、n型半導体層内の欠陥部に電流が集中して流れるのを抑制できるから、発光素子の信頼性を高めることができる。
【0063】
A4.前記複数の透明絶縁膜は、前記各凸部に対向して配置された透明絶縁膜を含んでいる、請求項3に記載の発光素子。
基板の表面に複数の凸部を形成した場合、n型半導体層内の凸部の中心の真上の領域においては、基板上にn型半導体層を結晶成長させる際に、横方向の成長が合わさるため、欠陥部が生じやすい。この構成では、複数の透明絶縁膜は、各凸部に対向して配置された透明絶縁膜を含んでいる。これにより、n型半導体層内の欠陥部が生じやすいに箇所に、透明電極側からの電流が流れにくくなる。これにより、n型半導体層内の欠陥部に電流が集中して流れるのを抑制できるから、発光素子の信頼性を高めることができる。
【0064】
A5.前記複数の透明絶縁膜は、前記複数の凸部内の二次元的に隣接する複数の凸部間の中心位置に対向して配置された透明絶縁膜を含んでいる、請求項3に記載の発光素子。
基板の表面に複数の凸部を形成した場合、n型半導体層内のうち、前記複数の凸部内の二次元的に隣接する複数の凸部間の中心位置の真上の領域においては、基板の欠陥を引き継ぎやすいため、欠陥部が生じやすい。この構成では、複数の透明絶縁膜は、複数の凸部内の二次元的に隣接する複数の凸部間の中心位置に対向して配置された透明絶縁膜を含んでいる。これにより、n型半導体層内の欠陥部が生じやすいに箇所に、透明電極側からの電流が流れにくくなる。これにより、n型半導体層内の欠陥部に電流が集中して流れるのを抑制できるから、発光素子の信頼性を高めることができる。
【0065】
A6.前記凸部は、前記基板の表面に形成された絶縁膜によって形成されている、請求項3〜5のいずれか一項に記載の発光素子。
A7.前記凸部は前記基板の表面をエッチングすることによって形成されている、請求項3〜5のいずれか一項に記載の発光素子。
A8.前記透明絶縁膜の厚さが、10nm以上5μm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光素子。
【0066】
A9.前記p型半導体層における前記発光層とは反対側の表面の前記p側電極と対向する位置に、電流遮断用絶縁膜が形成されており、前記透明絶縁膜が前記電流阻止用絶縁膜と同じ工程で形成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光素子。
第2発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図11は、第2発明の一実施形態に係る発光素子の模式的な平面図である。
図12は、
図11の発光素子の模式的な断面図である。
【0067】
発光素子101は、平面視四角形状のチップ状である。発光素子101は、表面102Aおよび裏面102Bを有する基板102と、基板102の表面102Aに順に積層されたn型導電型半導体層103、発光層104およびp型導電型半導体層105とを含む。以下、n型導電型半導体層103を「n型半導体層103」といい、p型導電型半導体層105を「p型半導体層105」という。基板102は、平面視で四角形状である。n型半導体層103における周縁部付近を除いた部分と、発光層104と、p型半導体層105とによって、半導体積層構造部106が構成されている。半導体積層構造部106は、平面視において、基板102とほぼ相似の四角形状であり、1つのコーナ部に切除部106Aを有している。切除部106Aの側面は、平面視において内方に向かって突出した湾曲面に形成されている。
【0068】
基板102は、発光層104の発光波長λ(たとえば450nm)に対して透明な材料(たとえば、サファイア、GaNまたはSiC)からなる。「発光波長に対して透明」とは、具体的には、たとえば、発光波長の透過率が60%以上の場合をいう。この実施形態では、基板102は、サファイア基板である。基板102の厚さは、たとえば、200μm〜300μmである。
【0069】
基板102の表面102Aには、n型半導体層103へ突出する複数の円錐台状の凸部107が形成されている。これらの凸部107は、
図13Aに示すように、離散配置されている。
図13Aには、平面視において、基板102の表面102Aの隣接する2つの辺のうち一方の辺に沿う方向をx方向として示し、他方の辺に沿う方向をy方向として示している。この実施形態では、平面視で、正六角形の集合体内の各正六角形の各頂点および中心(重心)に凸部107が配置されるようなパターンで、複数の凸部107が基板102の表面102Aに形成されている。言い換えれば、正六角形の集合体内の各正六角形を構成する6つの正三角形の各頂点に凸部107が配置されるようなパターンで、複数の凸部107が基板102の表面102Aに形成されている。この実施形態では、各凸部107は、SiNで形成されている。各凸部107は、基板102の表面102Aをエッチングすることにより、形成してもよい。
【0070】
複数の凸部107は、
図13Bに示すように、互いに間隔をあけて行列状に配置されていてもよい。
基板102の表面102Aに凸部107が形成されているので、基板102の表面102Aとn型半導体層103との界面において光が全反射するのを抑制することができる。これにより、光取り出し効率を向上させることができる。たとえば、基板102の裏面102Bで反射して、基板102とn型半導体層103との界面に対して様々な角度で入射する光が、当該界面において基板102の裏面102B側に全反射するのを抑制できる。これにより、光取り出し効率を向上させることができる。
【0071】
n型半導体層103は、基板102の表面102Aに積層されている。n型半導体層103は、基板102の表面102Aの全域を覆っている。n型半導体層103によって、全ての凸部107は覆われている。n型半導体層103は、n型のGaNからなり、発光層104の発光波長λに対して透明である。
n型半導体層103について、
図12において、基板102の表面102Aを覆う下面を裏面103Bといい、裏面103Bとは反対側の上面を表面103Aということにする。n型半導体層103の表面103Aには、中央部の高位領域と、高位領域の周囲の高位領域より低い低位領域とが存在する。これにより、n型半導体層103の表面103Aには、高位領域と低位領域との境界部に段差が形成されている。
【0072】
高位領域におけるn型半導体層103が、半導体積層構造部106内のn型半導体層を構成している。低位領域におけるn型半導体層103を、半導体積層構造部106から引き出された引き出し部108ということにする。引き出し部108では、その側面が基板102の側面と面一に揃う位置まで外側に引き出されている。引き出し部108は、半導体積層構造部106の周囲を取り囲むように形成されている。
【0073】
引き出し部108の表面には、半導体積層構造部106の切除部106Aに対応する領域に、n側電極109が接触して形成されている。n側電極109は、引き出し部108の表面に形成されたn側透明電極層110と、n側透明電極層110上に形成されたn側パッド111とからなる。n側透明電極層110は、平面視で基板102の4辺と平行な4辺を有する四角形状であり、半導体積層構造部106の切除部106Aの側面に対向するコーナ部が外方に突出した湾曲面に形成されている。n側透明電極層110は、たとえば、発光層104の発光波長λに対して透明な材料(たとえば、ITO、ZnO)からなる。n側パッド111は、平面視で円形状である。n側パッド111は、たとえば、Cr、Auからなる。
【0074】
発光層104は、n型半導体層103上に積層されている。発光層104は、n型半導体層103の表面103Aにおける高位領域の全域を覆っている。発光層104は、この実施形態では、Inを含む窒化物半導体(たとえばInGaN)からなる。
p型半導体層105は、発光層104上に積層されている。p型半導体層105は、発光層104の表面の全域を覆っている。p型半導体層105は、p型のGaNからなり、発光層104の発光波長λに対して透明である。このように、n型半導体層103とp型半導体層105とで発光層104を挟んだ発光ダイオード構造(半導体積層構造部106)が形成されている。
【0075】
p型半導体層105における発光層104とは反対側の表面には、半導体積層構造部106の切除部106Aと対向するコーナ寄りの位置に、平面視で円形状の第1絶縁膜(電流遮断用絶縁膜)112が形成されている。また、p型半導体層105の表面における所定の電流注入領域114内には、平面視で円形状の複数の第2絶縁膜(透明絶縁膜)113が形成されている。第1絶縁膜112および第2絶縁膜113は、たとえば、発光層104の発光波長λに対して透明なSiO
2からなる。この実施形態では、電流注入領域114は、p型半導体層105の表面の周縁部を除いた領域に設定されている。p型半導体層105の表面の第1絶縁膜112が形成されている領域は、電流注入領域114に含まれている。
【0076】
p型半導体層105の表面における電流注入領域114には、p側透明電極層115が形成されている。p側透明電極層115によって、第1絶縁膜112および第2絶縁膜113は覆われている。p側透明電極層115は、たとえば、発光層104の発光波長λに対して透明な材料(たとえば、ITO、ZnO)からなる。p側透明電極層115の厚さは、たとえば、100nm〜300nm程度である。第2絶縁膜113の厚さは、たとえば、10nm以上5000nm以下である。光取出し効果を高めるためには、第2絶縁膜113の厚さは、1500nm以上であることが好ましい。
【0077】
p側透明電極層115におけるp型半導体層105とは反対側の表面には、第1絶縁膜112の表面と対向する位置(
図12では第1絶縁膜112の真上位置)に、p側電極(p側パッド)116が形成されている。p側電極116は、平面視で第1絶縁膜112より径の小さな円形状である。p側電極116は、たとえば、Cr、Auからなる。前述の第1絶縁膜112は、よく知られているように、半導体積層構造部106におけるp側電極116の直下以外に電流を流し、p側電極116によって遮られる光を低減させるために設けられている。
【0078】
第2絶縁膜(透明絶縁膜)113は、
図14Aに示すように、離散配置されている。この実施形態では、基板102上に形成された各凸部107の中心の真上位置(各凸部107に対向する位置)と、複数の凸部107内の二次元的に隣接する複数の凸部107間の中心位置の真上位置(二次元的に隣接する3つの凸部107間の中心位置に対向する位置)とに、第2絶縁膜113は形成されている。
図14Aに示すように、正六角形の集合体内の各正六角形を構成する6つの正三角形の各頂点に凸部107が配置されている場合には、各正三角形のそれぞれの重心が、二次元的に隣接する3つの凸部107間の中心位置となる。したがって、この場合には、各正六角形を構成する6つの正三角形の各頂点および各重心に第2絶縁膜113が配置される。
【0079】
基板102上に形成された凸部107の中心の真上位置のみに第2絶縁膜113を配置してもよい。つまり、
図14Aに示される各正六角形を構成する6つの正三角形の各頂点のみに第2絶縁膜113を配置してもよい。
基板102上に形成された複数の凸部107内の二次元的に隣接する3つの凸部107間の中心位置の真上位置のみに、第2絶縁膜113を形成してもよい。つまり、
図14Aに示される各正六角形を構成する6つの正三角形の各重心のみに第2絶縁膜113を配置してもよい。
【0080】
凸部107が
図13Bに示すように行列状に配置されている場合には、たとえば、
図14Bに示すように、複数の第2絶縁膜113は、平面視において、各凸部107の中心の真上位置(各凸部107に対向する位置)と、二次元的に隣接する4つの凸部107間の中心位置とに配置してもよい。
凸部107が
図13Bに示すように行列状に配置されている場合には、複数の第2絶縁膜113は、平面視において、各凸部107の中心の真上位置のみに配置してもよく、二次元的に隣接する4つの凸部107間の中心位置の真上位置のみに配置してもよい。
【0081】
図15A〜
図15Fは、
図11および
図12に示す発光素子の製造方法を示す模擬的な断面図である。
まず、
図15Aに示すように、基板102の表面102Aに、SiNからなる層(SiN)を形成し、レジストパターン(図示略)をマスクとするエッチングにより、このSiN層を、複数の凸部107に分離する。次に、
図15Bに示すように、基板102の表面102A上に、全ての凸部107を覆うように、n型のGaNからなる層(n−GaN層)を形成する。これにより、基板102の表面102Aに、n型半導体層103が形成される。
【0082】
次に、
図15Cに示すように、n型半導体層103の表面に、Inを含む窒化物半導体(たとえばInGaN層)を形成する。これにより、n型半導体層103の表面に発光層104が形成される。発光層104の発光波長λは、InまたはGaの組成を調整することで、440nm〜460nmに制御される。次に、発光層104の表面に、n型のGaNからなる層(n−GaN層)を形成する。これにより、発光層104の表面にp型半導体層105が形成される。
【0083】
次に、p型半導体層105上に、第1絶縁膜112および第2絶縁膜113を形成すべき領域に開口を有するレジストパターン(図示略)を形成する。そして、当該レジストパターンを介して、たとえば、スパッタ法またはプラズマCVD法により、
図15Dに示すように、SiO
2からなる第1絶縁膜112および第2絶縁膜113を形成する。
次に、p型半導体層105上に、p側透明電極層115を形成すべき領域(電流注入領域114)に開口を有するレジストパターン(図示略)を形成する。そして、当該レジストパターンを介して、たとえば、スパッタ法により、ITOからなる層(ITO層)を、p型半導体層105上に堆積する。そして、ITO材料の不要部分をレジストパターンとともにリフトオフする。これにより、
図15Eに示すように、p型半導体層105表面に、第1絶縁膜112および第2絶縁膜113を覆うp側透明電極層115が形成される。
【0084】
次に、レジストパターン(図示略)をマスクとするエッチングにより、
図15Fに示すように、p型半導体層105、発光層104およびn型半導体層103のそれぞれを選択的に除去する。これにより、半導体積層構造部106と半導体積層構造部106から引き出された引き出し部108とが形成される。
この後、引き出し部108(n型半導体層103)の表面にn側電極109を形成するとともに、p側透明電極層115の表面における第1絶縁膜112の真上の領域にp側電極116を形成する。これにより、
図11および
図12に示される発光素子が得られる。
【0085】
この発光素子101では、n側電極109(n側パッド111)とp側電極(p側パッド)116との間に順方向電圧を印加すると、p側電極116からn側電極109へ向かって電流が流れる。電流は、p側電極116からn側電極109へ向かって、p側透明電極層115、p型半導体層105、発光層104およびn型半導体層103を、この順番で流れる。このように電流が流れることによって、n型半導体層103から発光層104に電子が注入され、p型半導体層105から発光層104に正孔が注入される。そして、これらの正孔および電子が発光層104で再結合することにより、発光層104から波長440nm〜460nmの光が発生する。この光は、p型半導体層105およびp側透明電極層115を透過して、p側透明電極層115の表面から取り出される。
【0086】
発光層104からn型半導体層103側に向かった光は、n型半導体層103を透過する。そして、この光の一部は、n型半導体層103と基板102との界面や、基板102の裏面等で反射する。反射した光は、n型半導体層103、発光層104、p型半導体層105およびp側透明電極層115をこの順で透過して、p側透明電極層115の表面から取り出される。
【0087】
この実施形態では、p型半導体層105の表面に複数の第2絶縁膜113が形成されている。これにより、半導体積層構造部106からp側透明電極層115内に入射した光が、第2絶縁膜113の側面で反射されて、p側透明電極層115におけるp型半導体層105とは反対側の表面から取り出されるため、光取り出し効率を高めることができる。
【0088】
また、この実施形態では、基板102の表面102Aに、複数の凸部107が形成されているので、光取り出し効率を高めることができる。
基板102の表面102Aに複数の凸部107が形成されている場合、n型半導体層103内の凸部107の中心の真上の領域においては、基板102上にn型半導体層103を結晶成長させる際に、横方向の成長が合わさるため、欠陥部が生じやすい。また、n型半導体層103内の複数の凸部107内の二次元的に隣接する複数の凸部107間の中心位置の真上の領域においては、基板102の欠陥を引き継ぎやすいため、欠陥部が生じやすい。n型半導体層103内に欠陥部が存在する場合、欠陥部の抵抗値は低いため、欠陥部に電流が集中して流れ、発光素子101が破壊するおそれがある。
【0089】
この実施形態では、各凸部107の中心位置の真上位置に第2絶縁膜113が配置されているとともに、複数の凸部107内の二次元的に隣接する複数の凸部107間の中心位置の真上位置に第2絶縁膜113が配置されている。つまり、n型半導体層103内の欠陥部が生じやすいに箇所の真上に第2絶縁膜113が配置されている。これにより、n型半導体層103内の欠陥部が生じやすいに箇所に、p側透明電極層115からの電流が流れにくくなる。これにより、欠陥部に電流が集中して流れるのを抑制できるから、発光素子101の信頼性を高めることができる。
【0090】
また、p型半導体層105の表層部における第2絶縁膜113との界面付近では、第2絶縁膜113の成膜時のダメージにより、n型キャリアが増加してp型キャリアが打ち消されるため、電気抵抗が大きくなっている。これにより、欠陥部が生じやすいに箇所に電流をより流れにくくできるため、発光素子101の信頼性をより高めることができる。
図16は、発光素子パッケージの模式的な断面図である。
【0091】
発光素子パッケージ151は、発光素子101と、支持基板152と、樹脂パッケージ153とを含む。支持基板152は、発光素子101を支持する絶縁基板154と、絶縁基板154の両端から露出するように設けられた一対の電極155,156とを備えている。
発光素子101は、基板102の表面102Aが上を向くような姿勢で、支持基板152に支持されている。具体的には、発光素子101の基板102の裏面102Bが、絶縁基板154に接着剤層157を介して接合されている。つまり、発光素子101は、フェイスアップ実装されている。発光素子101のn側電極109(n側パッド111)と一方の電極155とが、ワイヤ158によって接続されている。発光素子101のp側電極116と他方の電極156とが、ワイヤ159よって接続されている。
【0092】
樹脂パッケージ153は、樹脂が充填されたケースであり、その内側に発光素子101を収容して(覆って)保護した状態で、支持基板152に固定されている。樹脂パッケージ153は、側方(発光素子101に向かい合う部分)の表面に、発光素子101から出射された光を反射させて外部に取り出すための反射部160を有している。反射部160は、たとえば、樹脂からなる。
【0093】
樹脂パッケージ153を構成する樹脂には、蛍光体や反射剤が含有されているものがある。たとえば、発光素子101が青色光を発光する場合には、当該樹脂に黄色蛍光体を含有させることで発光素子パッケージ151は白色光を発光することができる。発光素子パッケージ151は、多数が集まることによって、電球などの照明機材に用いることもでき、また液晶テレビのバックライトや自動車等のヘッドランプに用いることもできる。
【0094】
このような発光素子パッケージ151では、発光素子101の発光層104で発光した光は、直ちにp型半導体層105を透過してp側透明電極層115の表面から放出されたり、n型半導体層103を透過して一旦基板102の裏面102B等で反射された後に、p側透明電極層115の表面から放出されたりする。
図17は、発光素子パッケージの他の例を示す模式的な断面図である。
【0095】
発光素子パッケージ171は、発光素子101と、支持基板172と、樹脂パッケージ173とを含む。支持基板172は、発光素子101を支持する絶縁基板174と、絶縁基板174の両端から露出するように設けられた一対の電極175,176と、樹脂パッケージ173内において、絶縁基板174の表面に形成されたn側電極層177およびp側電極層178と、n側電極層177およびp側電極層178それぞれの表面に形成されたn側接合層179およびp側接合層180とを備えている。n側電極層177は、一方の電極175に接続されている。p側電極層178は、他方の電極176に接続されている。
【0096】
発光素子101は、基板102の表面102Aが下を向くような姿勢で、支持基板172に支持されている。具体的には、発光素子101のn側電極109(n側パッド111)の表面がn側接合層179に接合され、発光素子101のp側電極116の表面がp側接合層180に接合されている。つまり、発光素子101は、フェイスダウン実装されている。絶縁基板174の表面の所要箇所には、発光素子101のp側透明電極層115を透過した光を反射するための反射部181が形成されている。反射部181は、たとえば、樹脂からなる。
【0097】
樹脂パッケージ173は、樹脂が充填されたケースであり、その内側に発光素子101を収容して(覆って)保護した状態で、支持基板172に固定されている。樹脂パッケージ173は、側方(発光素子101に向かい合う部分)の表面に、発光素子101から出射された光を反射させて外部に取り出すための反射部182を有している。反射部182は、たとえば、樹脂からなる。
【0098】
このような発光素子パッケージ171では、発光素子101の発光層104で発光した光は、直ちにn型半導体層103を透過して基板102の裏面102Bから放出されたり、p型半導体層105およびp側透明電極層115を透過してから反射部181で反射された後に、基板102の裏面102Bから放出されたりする。
以上、第2発明の実施形態について説明したが、第2発明はさらに他の形態で実施することができる。前記実施形態では、第2絶縁膜113は、平面視で円形に形成されているが、平面視で多角形状(四角形、六角形等)に形成されていてもよい。
【0099】
また、前述の実施形態では、n型半導体層103およびp型半導体層105を構成する窒化物半導体としてGaNを例示したが、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)などの他の窒化物半導体が用いられてもよい。窒化物半導体は、一般には、Al
xIn
yGa
(1−x−y)N(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)と表すことができる。また、窒化物半導体に限らず、GaAs等の他の化合物半導体や、化合物半導体以外の半導体材料(たとえばダイヤモンド)を用いた発光素子にこの発明を適用してもよい。