【課題】従来と同様のゼオライトの機能を有し、水中に入れた際に水のpHの変化が小さく、且つ所望の色に調整可能なゼオライトを得ることができるゼオライトの製造方法を提供する。
【解決手段】ゼオライト粉末を用意すること、ゼオライト粉末に、結晶格子中に着色金属イオンを固溶したジルコニア系、ジルコン系、アルミナ系、またはそれらの組み合わせを含む固溶体顔料を混合して混合物を得ること、混合物に、バインダーを添加して造粒し、造粒物を得ること、及び造粒物を680〜820℃で焼成して、バインダーを除去し、カラーゼオライトセラミックスを得ること、を含む、カラーゼオライトセラミックスの製造方法。
前記カラーゼオライトセラミックスをイオン交換処理して、銅イオン、銀イオン、またはそれらの組み合わせを含む金属イオンを吸着させることを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカラーゼオライトセラミックスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明においては、ゼオライト粉末と、ジルコニア系、ジルコン系、アルミナ系、またはそれらの組み合わせを含む固溶体顔料とを混合して混合物を得る。本願において、ゼオライト粉末は、前記固溶体顔料と混合可能なものであれば、一般的に利用可能なゼオライトであることができる。
【0015】
一般的なゼオライトは、式(1):
(MI,MII
1/2)m(Al
mSi
nO
2(m+n))・xH
2O (1)
(式中、MI,MIIは交換性のカチオンであり、MIは、Li
+、Na
+、K
+等であり、MIIは、Ca
2+、Mg
2+、Ba
2+等であり、0<m/n≦1である。)
で表される組成を有する。
【0016】
式(1)で表されるように、ケイ素がアルミニウムに置き換わっている分の電荷補償のため、異なる陽イオンが構成要素に含まれており、ゼオライトは陽イオン交換作用を示す。また、ゼオライトは結晶水を有するため吸放湿効果も有する。
【0017】
本発明の方法に使用するゼオライト粉末は、ISO−105J02に基づく白度が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは70以上、さらにより好ましくは80以上の白色のゼオライト粉末である。使用するゼオライト粉末の白度が前記範囲内であることにより、焼成したゼオライトの色あいを、より精度よく調節することができる。白度の測定は、JIS8715に規定されている白色度測定によって行うことができる。具体的には色差計によって測定可能である。
【0018】
ゼオライト粉末は、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトであることができる。ゼオライト粉末は、好ましくは、モルデナイト型またはクリノプチロライト型の天然ゼオライトである。
【0019】
ゼオライト粉末は、より好ましくは、山形県板谷地区のイタヤ・ゼオライト(天然ゼオライト)である。
【0020】
ゼオライト粉末の純度は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。使用するゼオライト粉末の純度が前記範囲内であることにより、焼成したゼオライトの色あいを、より精度よく調節することができる。
【0021】
ゼオライト粉末は、好ましくは5〜50μmの平均粒径(D50)を有する。本願におけるゼオライト粉末の平均粒径(D50)は、湿式粒度分布測定機によって測定され、メジアン径ともいう。前記範囲の平均粒径を有するゼオライト粉末を用いることにより、所望の形状を有する造粒物をより容易に得ることができる。
【0022】
本発明の方法に用いられる顔料は、結晶格子中に着色金属イオンを固溶したジルコニア系、ジルコン系、アルミナ系、またはそれらの組み合わせを含む。本発明の方法に用いられる顔料は、好ましくは、前記ジルコニア系、ジルコン系、アルミナ系、またはそれらの組み合わせの固溶体顔料からなる。着色金属イオンとしては、V、Mn、Fe、Co、Zr、及びPr等が挙げられる。
【0023】
本発明の方法に用いられる顔料は、より好ましくは、ピンク色、青色、黄色、またはそれらの組み合わせの色を呈する顔料を含む。本願では、ピンクの着色として用いた固溶体顔料を、ピンク色の固溶体顔料またはピンク色固溶体顔料ともいう。青色、黄色、またはその他の色についても同様である。すなわち、固溶体顔料は、より好ましくは、ピンク色固溶体顔料、青色固溶体顔料、黄色固溶体顔料、またはそれらの組み合わせを含む。
【0024】
ジルコニア系、ジルコン系、及びアルミナ系の固溶体顔料は、ゼオライトと混合して680〜820℃の温度範囲内で焼成を行っても変色しにくく、混色を容易に行うことができる。ジルコニア系、ジルコン系、及びアルミナ系の固溶体顔料としては、Cr及びCdを含まず低毒性のものであれば、焼き物(陶器)に従来用いられている顔料を用いることができる。
【0025】
ジルコニア系の黄色顔料は、好ましくはバナジウムジルコニウム黄(Pigment Yellow 160)である。
【0026】
ジルコン系のピンク色顔料は、好ましくはサーモンピンク(Pigment Red 232)である。ジルコン系の青色顔料は、好ましくはトルコ青(Pigment Blue 71)である。ジルコン系の黄色顔料は、好ましくはジルコニウムプラセオジム黄(Pigment Yellow 159)である。
【0027】
アルミナ系のピンク色顔料は、好ましくは陶試紅(Pigment Red 231)である。アルミナ系の青色顔料は、好ましくはコバルトブルー(Pigment Blue 72)または呉須(Pigment Blue 28)である。
【0028】
ピンク色、青色、及び黄色から選択される少なくとも1つの色を呈する固溶体顔料の配合比を変えることによって、所望の色を有するカラーゼオライトセラミックスを得ることができる。例えば、青色顔料と黄色顔料との配合量(質量%)を1:2にすることによって、緑色のカラーゼオライトセラミックスを得ることができる。
【0029】
上記固溶体顔料に加えて、白色を呈する顔料をさらに加えてもよい。白色顔料を加えることで、白色または白色の色味が強いゼオライトを得ることができる。白色顔料は、好ましくはチタン白(Pigment White 6)、ジルコン、またはアルミナ白(Pigment White 24)である。以下、特に説明がない場合は、固溶体顔料及び白色顔料を区別せずに顔料ともいう。
【0030】
ゼオライト粉末と混合する顔料の混合量は、ゼオライト粉末100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上50質量%未満である。前記範囲の量の顔料を混合することによって、所望の色を有するカラーゼオライトセラミックスをより安定して得ることができる。
図1に、本発明により得られた、試料瓶内に入れられたピンク色、青色、黄色、白色、緑色、及び青紫色のカラーゼオライトセラミックスの外観写真を示す。
【0031】
ゼオライト粉末に顔料を配合して得た混合物に、バインダーを添加して造粒し、造粒物を得る。
【0032】
バインダーの添加量は、ゼオライト粉末の粒径及び質量、顔料の粒径及び質量、並びにバインダーの濃度及び水分量に応じて、造粒可能な量に適宜調節すればよい。バインダーの添加量(固形分)は、ゼオライト粉末及び顔料の合計100質量%に対して、好ましくは0.005〜0.5質量%、より好ましくは、0.01〜0.1質量%であることができる。バインダーの添加量が前記範囲であることにより、より良好に造粒を行うことができる。
【0033】
バインダーは、好ましくは水溶性セルロース(CMC)溶液、α−でん粉、PVA(ポリビニルアルコール)、PAM(ポリアクリルアミド)、またはアルギン酸ナトリウムである。バインダーは水溶液であることが好ましい。バインダー水溶液の濃度は、好ましくは0.01〜1質量%である。バインダー水溶液の濃度が前記範囲であることにより、より良好に造粒を行うことができる。バインダー水溶液の添加量(mL)は、ゼオライト粉末の粒径及び質量、顔料の粒径及び質量、並びにバインダーの濃度及び水分量に応じて、造粒可能な量に適宜調節すればよい。バインダー水溶液の添加量(mL)は、ゼオライト粉末及び顔料の合計100gに対して、好ましくは10〜300mL、より好ましくは50〜150mLである。
【0034】
好ましくは、ゼオライト粉末に顔料を配合して得た混合物に、バインダーを添加しながら造粒する。バインダー水溶液を、ゼオライト粉末と顔料との混合物に添加しながら造粒することにより、より均一な造粒を行うことができる。さらに好ましくは、バインダー水溶液を噴霧により添加しながら造粒する。バインダー水溶液を、ゼオライト粉末と顔料との混合物に噴霧しながら造粒することにより、さらに均一な造粒を行うことができる。バインダー水溶液の添加量または噴霧量(mL/分)は、ゼオライト粉末の粒径及び質量、顔料の粒径及び質量、並びにバインダーの濃度及び水分量に応じて、造粒可能な量に適宜調節すればよい。バインダー水溶液の添加量または噴霧量(mL/分)は、ゼオライト粉末及び顔料の合計100g当たり、好ましくは0.5〜20mL/分、より好ましくは1〜10mL/分である。
【0035】
造粒においては、ゼオライト粉末と顔料との混合物にバインダーを添加し、回転パンで回しながら造粒して、金平糖形状または球形状のゼオライトを得ることができる。回転パンの回転速度は、好ましくは100〜1000rpmである。ゼオライト粉末の粒径及び質量、顔料の粒径及び質量、バインダーの濃度及び水分量、並びにパンの回転速度により、造粒されるゼオライトの形状及び粒径を調節することができる。
【0036】
金平糖形状のゼオライトは、ゼオライト粉末と顔料粉末とを混合し、バインダーを加えながら、好ましくは15〜300分間、回転パンを用いて造粒することによって得ることができる。金平糖形状のゼオライトは、好ましくは1〜50mmの平均粒径を有する。同様な手順で回転パンの回転時間を長くすることで、球形状のゼオライトを得ることができる。球形状のゼオライトを得る際の回転パンの回転時間は、好ましくは30〜420分間である。球形状のゼオライトは、好ましくは0.5〜150mmの平均粒径を有する。金平糖形状の平均粒径は、突起部分を含めた寸法である。造粒して得られる金平糖形状または球形状のゼオライトの平均粒径は、約10〜100個のゼオライトをノギスや顕微鏡を用いて測定し平均値を算出して得ることができる。
【0037】
本願において、金平糖形状とは、真球状や略球状のゼオライト粒子の表面に微小な突起を複数個有する形状をいい、好ましくは、真球状または略球状のゼオライト粒子の平均粒径に対する平均突起高さの比率が、3%以上、好ましくは5%以上である形状をいう。真球状または略球状のゼオライト粒子の平均粒径に対する平均突起高さの比率の上限は特に限定されないが、例えば100%以下であることができる。
【0038】
本願において、球形状とは、好ましくは、真球状または略球状のゼオライト粒子の平均粒径に対する平均突起高さの比率が3%未満の略球形状をいう。
【0039】
金平糖形状及び球形状のゼオライトについて、真球状または略球状のゼオライト粒子は、好ましくは長軸に対する短軸の比率が0.8〜1.0の球形状をいう。
【0040】
金平糖形状のゼオライトは、分離・吸着材としての機能を有しつつ、良好な美観も有し、特にパステルカラーの着色と組み合わせて優れた美観を有する。金平糖形状のゼオライトはまた、容器充填時に、ゼオライト間に空隙を比較的多く有するので、例えば、水処理剤に用いたときに、水の流れが良く良好な処理効果を得ることができる。
【0041】
得られた造粒物を、大気中、680〜820℃、好ましくは700〜800℃で焼成する。造粒物を上記温度範囲内で焼成することにより、ゼオライトセラミックスの変色を抑制しながら所望の色に着色しつつ、バインダーを除去し、非焼成時と同程度のイオン交換能力及び吸着能を有するカラーゼオライトセラミックスを得ることができる。焼成温度が上記温度範囲未満の場合、得られるゼオライトの強度が不足する。焼成温度が上記温度範囲超では、得られるゼオライトの吸着能が低下し、得られるゼオライトがベージュ色を呈し、所望の色に着色することができない。
【0042】
上記温度範囲の保持時間は、好ましくは1〜6時間、より好ましくは2〜4時間である。保持時間を前記範囲にすることにより、ゼオライトセラミックスの強度を向上しつつ、吸着能の低下及び変色をより抑制することができる。
【0043】
好ましくは、入手した天然または合成ゼオライト粉末(以下、第1のゼオライト粉末ともいう)に、水を加えながら回転パンを用いて造粒して種ゼオライトを得て、種ゼオライトに、第2のゼオライト粉末及び顔料を混合することにより、最終のカラーゼオライトセラミックスを作製する。種ゼオライトに第2のゼオライト粉末及び顔料を混合することにより、最終のカラーゼオライトセラミックスを効率良く作製することができる。第1のゼオライト粉末の粒径及び質量、水の添加量、所望によるバインダーの濃度、並びに回転パンの回転速度により、造粒される種ゼオライトの形状及び粒径を調節することができる。造粒により得られる種ゼオライトは、好ましくは1〜10mmの平均粒径を有する略球形状である。
【0044】
種ゼオライトを作製する際、水の添加量は、第1のゼオライト粉末の粒径及び量に応じて、造粒可能な量に適宜調節すればよい。水の添加量は、第1のゼオライト粉末100質量%に対して、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%であることができる。水の添加量が前記範囲であることにより、より良好に造粒を行うことができる。
【0045】
種ゼオライトを作製する際、好ましくは、1000gの第1のゼオライト粉末当たり、水を、好ましくは0.3〜20mL/分、より好ましくは1〜4mL/分で添加しながら、回転パンを用いて造粒することができる。水の添加は、より好ましくは噴霧により行われる。水を加えて回転パンで造粒する時間は、好ましくは5〜60分間、より好ましくは10〜30分間である。
【0046】
種ゼオライトを得る際に、水に加えてまたは水に代えてバインダーを添加してもよい。種ゼオライトを得る際に用い得るバインダーの添加量は、第1のゼオライト粉末の粒径及び量並びにバインダーの濃度及び水分量に応じて、造粒可能な量に適宜調節すればよい。種ゼオライトを得る際に用い得るバインダーの添加量(固形分)は、例えば、第1のゼオライト粉末の100質量%に対して、好ましくは0.005〜0.5質量%、より好ましくは、0.01〜0.1質量%であることができる。バインダーの添加量が前記範囲であることにより、より良好に種ゼオライトを作製することができる。
【0047】
種ゼオライトを得る際に用い得るバインダー種類、バインダー濃度、及び添加方法は、ゼオライト粉末と顔料とを混合して造粒物を得る際の上記バインダーに関する構成が適用され得る。
【0048】
第1のゼオライト粉末を造粒して種材として用いる種ゼオライトを得る場合、種ゼオライトに、さらに第2のゼオライト粉末と顔料とを混合して混合物を得て、混合物にバインダーを添加し造粒して造粒物を得て、造粒物を680〜820℃、好ましくは700〜800℃で焼成してバインダーを除去し、カラーゼオライトセラミックスを得ることができる。
【0049】
第2のゼオライト粉末は、第1のゼオライト粉末と同じゼオライト粉末であることができる。第2のゼオライト粉末の添加量は、種ゼオライトとの合計量が所望の量になるように調節すればよい。種ゼオライトに第2のゼオライト粉末と顔料とを混合しバインダーを添加して造粒物を得る際、金平糖形状のゼオライトは、バインダーを加えながら、好ましくは10〜60分間、回転パンを用いて造粒することによって得ることができる。球形状のゼオライトを得る際の回転パンの回転時間は、好ましくは15〜120分間である。種ゼオライトを用いるその他の造粒方法は、ゼオライト粉末と顔料とを混合して造粒物を得る際の上記構成が適用され得る。
【0050】
本発明により得られるカラーゼオライトセラミックスの色は、所望の色、特にピンク色、青色、黄色、白色、緑色、赤紫色、青紫色等の所望のパステルカラーであることができる。また、本発明によって得られるカラーゼオライトセラミックスは実質的に中性であり、水中に入れても水のpHの変化を従来よりも小さくすることができる。
【0051】
本発明に係る方法は、機能性を保持したままゼオライトセラミックスを所望の色に着色することができるので、汎用性があり、多方面での応用が考えられる。
【0052】
本発明によって得られたカラーゼオライトセラミックスに対して、イオン交換処理を行って金属イオンを吸着させることができる。金属イオンを吸着させることによって、カラーゼオライトセラミックスに抗菌・殺菌効果を付加させることができる。金属イオンは、好ましくは、銅イオン、銀イオン、またはそれらの組み合わせを含む。本発明によって得られるカラーゼオライトセラミックスに銅イオン、銀イオン、またはそれらの組み合わせを含む金属イオンを付加させると、アンモニウムイオンの吸着効果も向上することができる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
ISO−105J02に基づく白度が83.4、平均粒径(D50)が10μm、及び純度が80%の第1のゼオライト粉末(天然ゼオライト、ジークライト製、SGW)300kgに、水15Lを750mL/分で噴霧しながら回転パンを用いて造粒して、平均粒径が4mmの種ゼオライトを得た。
【0054】
種ゼオライト35gに、ISO−105J02に基づく白度が83.4、平均粒径(D50)が10μm、及び純度が80%の第2のゼオライト粉末(天然ゼオライト、ジークライト製、SGW)52gと、ピンク色顔料粉末の陶試紅(新日本造形製、Pigment Red 231)16gとを混合したものを加え、濃度が0.04質量%の水溶性セルロース(CMC)溶液100mLを5mL/分で噴霧しながら、20分間、回転速度が400rpmの回転パンを用いて造粒し、金平糖形状のゼオライトセラミックスを得た。
【0055】
造粒後のゼオライトを、大気雰囲気下の電気炉内で700℃、3時間焼成し、ピンク色を呈するカラーゼオライトセラミックスを作製した。
図2に、ピンクの着色として用いた固溶体顔料である陶試紅(新日本造形製、Pigment Red 231)を、粉末X線回折装置(リガク製、Ultima IV)により分析した粉末X線回折パターンを示す。
【0056】
(実施例2〜5)
実施例2〜5においてはそれぞれ、ピンク色固溶体顔料に代えて、青色及び黄色の固溶体顔料粉末、並びに白色顔料を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で、青色、黄色、緑色、及び白色を呈するカラーゼオライトセラミックスを作製した。実施例4においては、緑色を呈するカラーゼオライトセラミックスを作製したが、緑色顔料は、青色顔料と黄色顔料との配合量(質量%)を1:2にすることによって得た。青色、黄色、及び白色の顔料粉末は、それぞれ、トルコ青(新日本造形製、Pigment Blue 71)、バナジウムジルコニウム黄(新日本造形製、Pigment Yellow 160)、及びチタン白(新日本造形製、Pigment White 6)であった。
【0057】
(実施例6〜7)
実施例6〜7においては、ピンク色固溶体顔料に代えて、それぞれ、青紫色及び赤紫色の顔料を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で、カラーゼオライトセラミックスを作製した。青紫顔料は、ピンク色及び青色の固溶体顔料粉末を、50:50の質量比(%)でで混合することにより得た。赤紫色顔料は、ピンク色及び青色の固溶体顔料粉末を、64:36の質量比(%)で混合することにより得た。ピンク色及び青色の固溶体顔料粉末はそれぞれ、陶試紅(新日本造形製、Pigment Red 231)及びトルコ青(新日本造形製、Pigment Blue 71)であった。
【0058】
図1に、実施例1〜6で得られ試料瓶内に入れられたピンク色、青色、黄色、白色、緑色、及び青紫色のカラーゼオライトセラミックスの外観写真を示す。実施例1〜6で得られたピンク色、青色、黄色、白色、緑色、及び青紫色のカラーゼオライトセラミックスの平均粒径はそれぞれ、6.5mm、6.3mm、7.2mm、6.7mm、6.3mm、及び5.7mmであり、いずれも金平糖形状を有する。金平糖形状のゼオライトの上記寸法は、突起部分を含む寸法である。平均突起高さの比率は、突起の除くゼオライト粒子の平均粒径に対してそれぞれ6.0%、5.5%、5.9%、5.6%、5.5%、及び5.6%であった。突起の除くゼオライト粒子は、長軸に対する短軸の比率が0.8〜1.0の球形状であった。
図5に、実施例1で得られたピンク色のカラーゼオライトセラミックスの拡大した外観写真を示す。
【0059】
(比較例1)
顔料を添加しなかったこと以外は実施例1と同じ方法で、ゼオライトセラミックスを作製した。得られたゼオライトセラミックスはベージュ色であった。
【0060】
(比較例2〜3)
造粒後のゼオライトを、大気雰囲気下の電気炉内で800℃及び900℃で焼成したこと以外は比較例1と同じ方法で、ゼオライトセラミックスを作製した。得られたゼオライトセラミックスはベージュ色であった。
【0061】
(比較例4)
焼成せずに着色したゼオライトを以下の手順で作製した。種ゼオライト35gに、ISO−105J02に基づく白度が83.4、平均粒径(D50)が10μm、及び純度が80%の第2のゼオライト粉末(天然ゼオライト、ジークライト製、SGW)65gを加え、濃度が0.04質量%の水溶性セルロース(CMC)溶液100mLを5mL/分で噴霧しながら、20分間、回転速度が400rpmの回転パンを用いて造粒し、金平糖形状のゼオライトセラミックスを得た。
【0062】
(アンモニウムイオンの吸着効果の評価)
出発材料として用いた天然ゼオライトは、陽イオン交換吸着能を有するものであるが、得られたカラーゼオライトセラミックスでも同様のイオン交換性を有するかどうかを確認するため、アンモニウムイオンの除去性の評価を行った。
【0063】
100mLガラスビーカーに、25ppmの塩化アンモニウム(関東化学製)溶液100mLと、実施例及び比較例で作製したゼオライトセラミックス約1gとを入れて、マグネチックスターラで1時間撹拌した。その後、溶液の一部を分取し、孔径0.20μmのディスポフィルターでろ過した後に、イオンクロマトグラフィー(Dionex社製)により、アンモニウムイオン濃度(残存量)を測定した。
【0064】
表1及び
図3に、ゼオライトを用いなかった場合、実施例1〜7で得られたカラーゼオライトセラミックスを用いた場合、及び比較例1〜3で得られたゼオライトセラミックスを用いた場合の、溶液中のアンモニウムイオン濃度(残存量)を示す。ゼオライトを用いなかった場合を、比較対象としてブランクとして示した。
【0065】
【表1】
実施例1〜7及び比較例1の焼成温度は700℃。
【0066】
実施例1〜7で得られたカラーゼオライトセラミックスはいずれも、ゼオライトを用いなかったブランクに比べて、溶液中のアンモニウムイオンの濃度を低下させた。すなわち、実施例1〜7で得られたカラーゼオライトセラミックスはいずれも、アンモニウムイオンに対して吸着能を示した。カラーゼオライトセラミックス間でアンモニウムイオン吸着能に大きな差は見られなかった。
【0067】
比較例1及び2で得られたゼオライトセラミックスを用いた場合、溶液中のアンモニウムイオンの濃度は低下したが、比較例3で得られたゼオライトセラミックスを用いた場合、溶液中のアンモニウムイオンの濃度はあまり低下しなかった。これは、焼成温度が上がることで、ゼオライトの表面積が低下したためと考えられる。焼成温度が高すぎるとゼオライトの表面積が低下し、特に900℃付近になると、ゼオライト特有の細孔構造が崩れるため、吸着能が落ちたと考えられる。
【0068】
(アンモニウムガス脱臭効果の評価)
10μLの12%アンモニア溶液(メタノール中、ACROS製)に、純水90μLを加えた液を、10Lのテドラーバッグに入れてアンモニアを揮散させた。その中に、実施例及び比較例で作製したカラーゼオライトセラミックス約1gを入れて静置した。10分経過後に、テドラーバッグ内のアンモニアガス濃度を、検知管(ガステック製)により測定した。検知管での吸引は2回行い、測定した値の平均値をアンモニアガス残存濃度(ppm)として算出した。
【0069】
表2及び
図4に、ゼオライトを用いなかった場合、実施例1〜6で得られたカラーゼオライトセラミックスを用いた場合、及び比較例1で得られたゼオライトセラミックスを用いた場合の、テドラーバッグ内のアンモニアガス濃度を示す。比較対象として、ゼオライトを用いなかった場合を、ブランクとして示した。
【0070】
アンモニアガスのみをテドラーバッグに入れたブランクの場合に対して、実施例1〜6で得られたカラーゼオライトセラミックスを入れた場合、アンモニアガス濃度が低下しており、脱臭効果が確認された。実施例1〜6で得られたカラーゼオライトセラミックスは、顔料を添加していない比較例1で得られたゼオライトセラミックスと比較しても、ほぼ同程度の吸着能を有おり、カラーゼオライトセラミックス間で吸着能に大きな差は見られなかった。
【0071】
【表2】
【0072】
(イオン交換後のアンモニウムイオンの吸着能の評価)
実施例1及び2で得られたカラーゼオライトセラミックスについて、抗菌機能を付加するために銅イオンまたは銀イオンをイオン交換させた場合、本来有するアンモニウムイオン交換機能がどうなるかを評価した。
【0073】
実施例1及び2で得られたカラーゼオライトセラミックスを、その保有するイオン交換容量の1/10程度の銅イオンまたは銀イオンを含む水溶液に3時間含浸させ、次いでろ過し、さらに自然乾燥させて、銅イオンまたは銀イオンのイオン交換を行い、銅イオンまたは銀イオン交換カラーゼオライトセラミックスを得た。
【0074】
100mLガラスビーカーに、25ppmの塩化アンモニウム(関東化学製)溶液100mLと、銅イオンまたは銀イオン交換カラーゼオライトセラミックス約1gを入れて、マグネチックスターラで1時間撹拌した。その後、溶液の一部を分取し、孔径0.20μmのディスポフィルターでろ過した後に、イオンクロマトグラフィー(Dionex社製)でアンモニウムイオン濃度を測定した。
【0075】
表3に、実施例1及び2で得られたカラーゼオライトセラミックスについて、銅イオンのイオン交換有り及び無しの場合のアンモニウムイオン濃度を示す。イオン交換無しのカラーゼオライトセラミックスを用いた場合より、銅イオン交換を行ったカラーゼオライトセラミックスを用いた場合の方がアンモニウムイオンの濃度が低く、銅イオンを交換させたカラーゼオライトセラミックスのアンモニウムイオンの吸着能が高いことが確認された。
【0076】
表4に、実施例1及び2で得られたカラーゼオライトセラミックスについて、銀イオンのイオン交換有り及び無しの場合のアンモニウムイオン濃度を示す。イオン交換無しのカラーゼオライトセラミックスを用いた場合より、銀イオン交換を行ったカラーゼオライトセラミックスを用いた方がアンモニウムイオンの濃度が低く、銀イオンを交換させたカラーゼオライトセラミックスのアンモニウムイオンの吸着能が高いことが確認された。
【0077】
上記のように銅イオンまたは銀イオン交換を行ったカラーゼオライトセラミックスの方がアンモニウムイオンの吸着能が高くなる理由として、銅イオンまたは銀イオンがアンモニウムイオンと錯体を生成したため、その分、吸着量が増加したためと考えられる。このように、カラーゼオライトセラミックスに抗菌効果を付与させつつ、アンモニアの吸着能力も向上することができた。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
(水のpHへの影響評価)
pHが6.7の水道水30mLの中に、実施例及び比較例で作製したカラーゼオライトセラミックス約1gを入れて静置した。10分経過後に、水のpHを、堀場製作所製pHメーターF−22により測定した。表5に、10分経過後の水のpHの測定結果を示す。
【0081】
【表5】
【0082】
上記のように、本発明によれば、ゼオライトセラミックス本来の能力(脱臭、脱アンモニア、調湿等)の効果を低減させずに所望の色に着色させることが可能になる。また、本発明によれば、カラーゼオライトセラミックスに抗菌効果を付与させつつ、アンモニアの吸着能力も向上することも可能になる。
【0083】
本発明に係る方法は、機能性を保持したままゼオライトセラミックスを着色させる方法として汎用性があり、多方面での応用が考えられる。