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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-147776(P2019-147776A)
(43)【公開日】2019年9月5日
(54)【発明の名称】蛍光プローブ
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/02 20060101AFI20190809BHJP
   G01N 33/84 20060101ALI20190809BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20190809BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190809BHJP
【FI】
   C07D417/02CSP
   G01N33/84 Z
   C07D417/14
   C09K11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2018-34775(P2018-34775)
(22)【出願日】2018年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】591060289
【氏名又は名称】岐阜市
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永澤 秀子
(72)【発明者】
【氏名】平山 祐
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 正人
【テーマコード(参考)】
2G045
4C063
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045AA15
2G045AA25
2G045CA25
2G045CB03
2G045DA51
2G045DB11
2G045FB12
2G045GC15
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB01
4C063CC76
4C063DD62
4C063EE05
4C063EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヘム鉄を選択的かつ高感度で検出することができる化合物及び該化合物を含有する蛍光プローブの提供。
【解決手段】下式の化合物又はその塩。

(Rは、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はカルボン酸アミド基;R及びRは、同一又は異なるアルキル基、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成;Rは、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基;Yは、O又はS)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
は、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基である。
及びRは、同一又は異なって、アルキル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
は、置換基としてカルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していてもよいアルキル基である。
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
式(I)において、
が、式:−COORで表される基、又は式:−CONRで表される基であり、
が、置換基として式:−COORで表される基、及び式:−CONRで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していてもよいアルキル基であり、
当該Rが、
(A1)水素原子、又は
(A2)アルキル基であり、当該アルキル基は、下記(A2-1)〜(A2-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよく、
(A2-1)アルキルカルボニルオキシ基、
(A2-2)ホスホニウム残基、
(A2-3)アルキルオキシ基、
当該Rが、同一又は異なって、
(B1)水素原子、又は
(B2)アルキル基であり、当該アルキル基は、下記(B2-1)〜(B2-5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよく、
(B2-1)カルボキシル基、
(B2-2)アルキルオキシカルボニル基、
(B2-3)(アルキルカルボニルオキシ)アルキルオキシカルボニル基、
(B2-4)ホスホニウム残基、
(B2-5)(アルキルオキシ)アルキルオキシカルボニル基、
及びRが共に式:−COORで表される基を有する場合、Rは同一又は異なっていてもよく、
及びRが共に式:−CONRで表される基を有する場合、Rは同一又は異なっていてもよい、
請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
式(I)において、
【化2】
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表される基が、式(A):
【化3】
(式中、Zは、結合手、−O−、−CH−、又は−NR−であり。Rは、水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、又はアルキルオキシカルボニル基である。)
で表される基である、
請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
式(I)において、Yが−S−である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその塩を含む蛍光プローブ。
【請求項6】
請求項5に記載の蛍光プローブを用いてヘム鉄を検出する方法。
【請求項7】
(1)ヘム鉄を含む検体と、前記[5]に記載の蛍光プローブとを混合する工程、及び(2)得られた混合物の蛍光スペクトルを測定する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(I):
【化4】
(式中、
は、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基である。
及びRは、同一又は異なって、アルキル基である、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
は、置換基としてカルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していてもよいアルキル基である。
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、式(9):
【化5】
(式中、記号は前記に同じ。)
で表される化合物を酸化反応に付し、必要に応じて塩を形成することを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
式(I−B):
【化6】
(式中、
及びRは、同一又は異なって、アルキル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
alkはアルキレン基を示し、
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、式(I−A):
【化7】
(式中、R及びRは同一又は異なってアルキル基を示し、R、R、及びYは前記に同じ。)
で表される化合物を加水分解し、必要に応じて塩を形成することを特徴とする、製造方法。
【請求項10】
式(I−F):
【化8】
(式中、
及びRは、同一又は異なって、アルキル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
41はアルキル基を示し、
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、式(I−E):
【化9】
(式中、Rは同一又は異なってアルキル基を示し、R、R、及びYは前記に同じ。)
で表される化合物を加水分解し、必要に応じて塩を形成することを特徴とする、製造方法。
【請求項11】
式(9):
【化10】
(式中、
は、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基である。
及びRは、同一又は異なって、アルキル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
は、置換基としてカルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していてもよいアルキル基である。
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光プローブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄は人体中において最も多く含まれている遷移金属種であり、酸素運搬や呼吸器系における電子伝達などをはじめ、様々な生命現象に関与している。一方、体内における鉄の濃度異常はがん、アルツハイマー病、パーキンソン病などの重篤疾患に関与することが指摘されており、特に、生体内遊離鉄イオンの大半を占める鉄(II)イオンはその高い活性酸素種生成能のために、最近アスベスト発がんやC型肝炎においてもその関与が示唆されている。
【0003】
生細胞や生組織中において鉄(II)イオンを選択的に検知できかつ濃度変化を鋭敏に検知できる蛍光プローブとして、例えば、特許文献1及び2に報告例がある。
【0004】
また、鉄(II)イオンとポルフィリンの錯体であるヘムは、ヘムタンパク質の補欠分子族として、酸化還元、電子伝達、そして酸素運搬として機能しており、近年、動物、植物、微生物等において多様な生理作用を調節する細胞内シグナルとしての機能することが明らかとなってきている。
【0005】
しかしながら、細胞及び生体内においてヘム鉄がどのように輸送及び利用されるのか、またその生体内濃度はどのように調節されるのか等、生理的機能については不明な点が多く残されている。また、病原性細菌では宿主からのヘム鉄の獲得が感染及び病態発症の起点となる(非特許文献1及び2)ことから、感染過程におけるヘム鉄の機能及び挙動の解明は、こうした病原性細菌の感染予防の観点からも重要である。加えて、体内で起こる出血・溶血はヘモグロビンの分解とそれに伴うヘム鉄の放出を惹起し、これが酸化ストレスや炎症に関与する可能性も示唆されている(非特許文献3)。
【0006】
以上のように、ヘム鉄の生理的及び病理的機能の重要性は強く示唆されており、ヘム鉄を生細胞や生組織中で選択的に測定できる方法が開発できれば、ヘムが関与する病態や生命現象の研究、医薬品開発等においてに非常に重要な手法となり得る。しかしながら、現状では生体内及び細胞内においてヘム鉄を選択的に検出できるような手法は限られており、融合タンパク質を使った方法(非特許文献4及び5)のみが報告されている。これら手法では選択的にヘム鉄を検出できるものの、分子量5万を超える融合タンパク質を遺伝子的手法にて細胞及び生体に導入し、発現させる必要があり、その使用条件は限られる。そのため、ヘム鉄を選択的かつ高感度で検出できる試薬(蛍光プローブ)及びそれを用いた検出方法が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-193990号公報
【特許文献2】国際公開第2015/108172号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Mol. Biol. 2016, 428, 3408-3428
【非特許文献2】Frontiers in Cell. Infect. Microbiol., 2013, 3, 1-11
【非特許文献3】Nat. Immunology, 2016, 17, 1361-1372
【非特許文献4】ACS Chem. Biol., 2015, 10, 1610-1615
【非特許文献5】Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 2016, 113, 7539-7544
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ヘム鉄を選択的かつ高感度で検出することができる化合物及びその製造方法、その化合物を含むヘム鉄選択的な蛍光プローブ、並びにその蛍光プローブを用いたヘム鉄の検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、式(I)で表される化合物又はその塩(以下、本発明化合物とも表記する)が、ヘム鉄を選択的かつ高感度で検出又は測定できることを見出した。かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、下記の化合物及び蛍光プローブ(特に、ヘム鉄選択的蛍光プローブ)を提供する。
【0012】
[1]式(I):
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、
は、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基である。
【0015】
及びRは、同一又は異なって、アルキル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
【0016】
は、置換基としてカルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していてもよいアルキル基である。
【0017】
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩。
【0018】
[2]式(I)において、
が、式:−COORで表される基、又は式:−CONRで表される基であり、
が、置換基として式:−COORで表される基、及び式:−CONRで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していてもよいアルキル基であり、
当該Rが、
(A1)水素原子、又は
(A2)アルキル基であり、当該アルキル基は、下記(A2-1)〜(A2-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよく、
(A2-1)アルキルカルボニルオキシ基、
(A2-2)ホスホニウム残基、
(A2-3)アルキルオキシ基、
当該Rが、同一又は異なって、
(B1)水素原子、又は
(B2)アルキル基であり、当該アルキル基は、下記(B2-1)〜(B2-5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよく、
(B2-1)カルボキシル基、
(B2-2)アルキルオキシカルボニル基、
(B2-3)(アルキルカルボニルオキシ)アルキルオキシカルボニル基、
(B2-4)ホスホニウム残基、
(B2-5)(アルキルオキシ)アルキルオキシカルボニル基、
及びRが共に式:−COORで表される基を有する場合、Rは同一又は異なっていてもよく、
及びRが共に式:−CONRで表される基を有する場合、Rは同一又は異なっていてもよい、
前記[1]に記載の化合物又はその塩。
【0019】
[3]式(I)において、
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表される基が、式(A):
【0022】
【化3】
【0023】
(式中、Zは、結合手、−O−、−CH−、又は−NR−であり。Rは、水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、又はアルキルオキシカルボニル基である。)
で表される基である、
前記[1]又は[2]に記載の化合物又はその塩。
【0024】
[4]式(I)において、Yが−S−である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物又はその塩。
【0025】
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の化合物又はその塩を含む蛍光プローブ。
【0026】
[6]前記[5]に記載の蛍光プローブを用いてヘム鉄を検出する方法。
【0027】
[7](1)ヘム鉄を含む検体と、前記[5]に記載の蛍光プローブとを混合する工程、及び(2)得られた混合物の蛍光スペクトルを測定する工程を含む、前記[6]に記載の方法。
【0028】
[8]式(I):
【0029】
【化4】
【0030】
(式中、
は、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基である。
【0031】
及びRは、同一又は異なって、アルキル基である、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
【0032】
は、置換基としてカルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していてもよいアルキル基である。
【0033】
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、式(9):
【0034】
【化5】
【0035】
(式中、記号は前記に同じ。)
で表される化合物を酸化反応に付し、必要に応じて塩を形成することを特徴とする、製造方法。
【0036】
[9]式(I−B):
【0037】
【化6】
【0038】
(式中、
及びRは、同一又は異なって、アルキル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
【0039】
alkはアルキレン基を示し、
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、式(I−A):
【0040】
【化7】
【0041】
(式中、R及びRは同一又は異なってアルキル基を示し、R、R、及びYは前記に同じ。)
で表される化合物を加水分解し、必要に応じて塩を形成することを特徴とする、製造方法。
【0042】
[10]式(I−F):
【0043】
【化8】
【0044】
(式中、
及びRは、同一又は異なって、アルキル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
【0045】
41はアルキル基を示し、
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、式(I−E):
【0046】
【化9】
【0047】
(式中、Rは同一又は異なってアルキル基を示し、R、R、及びYは前記に同じ。)
で表される化合物を加水分解し、必要に応じて塩を形成することを特徴とする、製造方法。
【0048】
[11]式(9):
【0049】
【化10】
【0050】
(式中、
は、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基である。
【0051】
及びRは、同一又は異なって、アルキル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。
【0052】
は、置換基としてカルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していてもよいアルキル基である。
【0053】
は、−O−又は−S−である。)
で表される化合物又はその塩。
【発明の効果】
【0054】
本発明の化合物は、ヘム鉄を選択的かつ高感度で検出することができるため、ヘム鉄選択的な蛍光プローブとして用いることができる。本発明の蛍光プローブは、条件を調整することにより、ヘム鉄を定量的に測定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】ヘム鉄蛍光プローブ Fura-Nox類縁体(a-f)および二価鉄イオン蛍光プローブ(g-i)のヘミン(2 μM、黒太実線)あるいは二価鉄イオン(10 μM、黒実線)に対する蛍光応答の評価結果を示す。黒点線:反応前。灰色実線:1 mMグルタチオンのみ。ヘミン、二価鉄イオンとの反応時は1 mMグルタチオン存在下で反応。励起波長:365 nm (a-f)、540 nm (g,h)、630 nm (i)。
図2】(a) 各プローブのヘミン又は二価鉄イオンに対する蛍光応答性を比較した結果を示す。Fura-Nox-1からFura-Nox-6についてはそれぞれI(580)/I(430)、I(580)/I(430)、I(550)/I(425)、I(580)/I(430)、I(570)/I(430)、I(570)/I(430)の値を、プローブのみの場合を1として相対値をプロットした。ただし、I(x)はx nmにおける蛍光強度を示す。白色:プローブのみ、灰色:二価鉄イオン(10 μM)、黒色:ヘミン(2 μM)。実験条件は図1の実験と同様。(b) (a)におけるFura-Nox-1からFura-Nox-5の部分を拡大したもの。
図3】各種金属イオン種に対するFura-Noxシリーズの蛍光応答性を比較した結果を示す。金属イオン濃度:Na, K, Mg, Ca = 1 mM, 他の金属種 = 20 μM。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下本発明について詳細に説明する。
1.置換基の定義
本明細書における各置換基の定義は、特に断りのない限り、以下の通りである。
【0057】
「カルボン酸エステル基」とは、「C(=O)−O−C」で示される化学構造を有する基を意味する。
【0058】
「カルボン酸アミド基」とは、「C(=O)−N」で示される化学構造を有する基を意味する。
【0059】
「アルキル基」としては、鎖状又は分岐状のC1〜6のアルキル基が挙げられ、好ましくは鎖状又は分岐状のC1〜4のアルキル基であり、より好ましくは鎖状又は分岐状のC1〜3のアルキル基である。具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。このうちメチル基及びエチル基がより好ましい。
【0060】
「アルキルオキシ基」としては、鎖状又は分岐状のC1〜6のアルキルオキシ基が挙げられ、好ましくは鎖状又は分岐状のC1〜4のアルキルオキシ基であり、より好ましくは鎖状又は分岐状のC1〜3のアルキル基である。具体例として、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。このうちメチルオキシ基及びエチルオキシ基がより好ましい。
【0061】
「アルキルカルボニル基」としては、上記「アルキル基」がカルボニル基に結合した基であり、(アルキル)−C(=O)−と表すことができる。例えば、鎖状又は分岐状のC1〜6のアルキルカルボニル基が挙げられ、好ましくは鎖状又は分岐状のC1〜4のアルキルカルボニル基である。具体例として、アセチル基(Ac)、プロピオニル基等が挙げられる。
【0062】
「アルキルカルボニルオキシ基」としては、上記「アルキル基」がカルボニルオキシ基のカルボニル基に結合した基であり、(アルキル)−C(=O)−O−と表すことができる。例えば、鎖状又は分岐状のC1〜6のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられ、好ましくは鎖状又は分岐状のC1〜4のアルキルカルボニルオキシ基である。具体例として、アセチルオキシ基(AcO−)、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。
【0063】
「アルキルオキシカルボニル基」としては、上記「アルキル基」がオキシカルボニル基に結合した基であり、(アルキル)−O−C(=O)−と表すことができる。例えば、鎖状又は分岐状のC1〜6のアルキルオキシカルボニル基が挙げられ、好ましくは鎖状又は分岐状のC1〜4のアルキルオキシカルボニル基である。具体例として、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)等が挙げられる。
【0064】
「(アルキルカルボニルオキシ)アルキルオキシカルボニル基」としては、上記「アルキルカルボニルオキシ基」が上記「アルキルオキシカルボニル基」のアルキル基に結合した基であり、例えば、(アルキル)−C(=O)−O−(アルキレン)−O−C(=O)−と表すことができる。ここで、「アルキレン基」とは、上記「アルキル基」から1つの水素原子を除いて得られる2価の基を意味する。この「アルキレン基」としては、鎖状又は分岐状のC1〜6のアルキレン基が挙げられ、好ましくはC1〜4のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基(−CH−)、ジメチレン基(−CHCH−)である。「(アルキルカルボニルオキシ)アルキルオキシカルボニル基」として好ましくは、(C1〜4アルキル)−C(=O)−O−(C1〜4アルキレン)−O−C(=O)−であり、より好ましくは(C1〜4アルキル)−C(=O)−O−CH−O−C(=O)−である。
【0065】
「(アルキルオキシ)アルキルオキシカルボニル基」としては、上記「アルキルオキシ基」が上記「アルキルオキシカルボニル基」のアルキル基に結合した基であり、例えば、(アルキル)−O−(アルキレン)−O−C(=O)−と表すことができる。ここで、「アルキレン基」は前記に同じである。「(アルキルオキシ)アルキルオキシカルボニル基」として好ましくは、(C1〜4アルキル)−O−(C1〜4アルキレン)−O−C(=O)−である。
【0066】
「アリール基」としては、単環又は2以上の環が縮環したアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0067】
「アリールカルボニル基」としては、上記「アリール基」がカルボニル基に結合した基であり、例えば、(アリール)−C(=O)−と表すことができる。好ましくは、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0068】
「ヘテロアリール」としては、環にO、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含むヘテロアリール基であり、単環(5又は6員環)又は2以上の環が縮環したヘテロアリール基が挙げられる。具体例として、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジニル基、イソキノリニル基、キノリニル基等が挙げられる。好ましくは、(2−,3−又は4−)ピリジル基等である。
【0069】
「ヘテロアリールカルボニル基」としては、上記「ヘテロアリール基」がカルボニル基に結合した基であり、例えば、(ヘテロアリール)−C(=O)−と表すことができる。好ましくは、(2−,3−又は4−ピリジル)−C(=O)−が挙げられる。
【0070】
「ホスホニウム残基」としては、例えば、式:−(PR・(X(式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はアリール基であり、Xはアニオンである。)で示される基が挙げられる。
【0071】
で示される「アルキル基」としては、上記「アルキル基」から選択すること芽できる。例えば、鎖状又は分岐状のC1〜6のアルキル基が挙げられ、好ましくは鎖状又は分岐状のC1〜4のアルキル基である。具体的例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0072】
で示される「アリール基」としては、上記「アリール基」から選択すること芽できる。例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0073】
で示されるアニオンとは、電子を受け取って負の電荷を帯びた原子又は原子団を意味する。具体例として、ハロゲン化物イオン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のイオン)、6フッ化リン(PF)、リン酸二水素イオン(HPO)、酢酸イオン(AcO)、炭酸水素イオン(HCO)等が挙げられる。
【0074】
2.本発明化合物
本発明化合物は、式(I)で表される化合物及びその塩であり、分子内にN−オキシドを有することを特徴とする。
【0075】
【化11】
【0076】
(式中、R、R、R、R及びYは前記に同じ。)
は、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種(好ましくは1種)を有する基である。特にRとしては、式:−COORで表される基、又は式:−CONRで表される基が挙げられる。
【0077】
は、置換基としてカルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種(好ましくは1種)を有していてもよいアルキル基である。特にRとしては、置換基として式:−COORで表される基、及び式:−CONRで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種(好ましくは1種)を有していてもよいアルキル基が挙げられる。
【0078】
及びRにおける式:−COORで表される基のRは、同一又は異なって、
(A1)水素原子、又は
(A2)アルキル基であり、当該アルキル基は、下記(A2-1)〜(A2-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種(好ましくは1種)の基を有していてもよい、
(A2-1)アルキルカルボニルオキシ基、
(A2-2)ホスホニウム残基、
(A2-3)アルキルオキシ基。
【0079】
及びRにおける式:−CONRで表される基のRは、同一又は異なって、
(B1)水素原子、又は
(B2)アルキル基であり、当該アルキル基は、下記(B2-1)〜(B2-5)からなる群より選ばれる少なくとも1種(好ましくは1種)の基を有していてもよい、
(B2-1)カルボキシル基、
(B2-2)アルキルオキシカルボニル基、
(B2-3)(アルキルカルボニルオキシ)アルキルオキシカルボニル基、
(B2-4)ホスホニウム残基、
(B2-5)(アルキルオキシ)アルキルオキシカルボニル基。
【0080】
及びRにおいて、式:−COORで表される基の具体例としては、
−COOH、
−COO(C1〜4アルキル)(特に、−COOCH、−COOC、−COOtBu等)、
−COOCH−OC(=O)−(C1〜4アルキル)(特に、−COOCH−OAc等)、
−CHCH−(PPh・(X(Xは前記に同じ。)、
等が挙げられる。
【0081】
及びRにおいて、式:−CONRで表される基の具体例としては、
−CON(CH−COOH)
−CON(CH−COO(C1〜4アルキル))
−CON(CH−COO−CH−OC(=O)−(C1〜4アルキル))
−CONH(CHCH−(PPh・(X)(Xは前記に同じ。)、
等が挙げられる。
【0082】
として好ましくは、
−COOH、
−COOC(C1〜4アルキル)(特に、−COOCH、−COOC、−COOtBu等)、
−COOCH−OC(=O)−(C1〜4アルキル)、
−CONH(CHCH−(PPh・(X)(Xは前記に同じ。)、
である。
【0083】
として好ましくは、
C1〜3アルキル基(特に、メチル基)、
−CH−CON(CH−COOH)
−CH−CON(CH−COO(C1〜4アルキル))
−CH−CON(CH−COO−CH−OC(=O)−(C1〜4アルキル))
である。
【0084】
及びRが共に式:−COORで表される基を有する場合、R(2つのR)は同一又は異なっていてもよい。
【0085】
及びRが共に式:−CONRで表される基を有する場合、R(4つのR)は同一又は異なっていてもよい。
【0086】
及びRは同一又は異なって、アルキル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。当該置換基として、例えば、アルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、又はアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。好ましくは、後者のR及びRが互いに結合して隣接するN−オキシドの窒素原子(N)と共に環を形成している場合である。
【0087】
及びRの好ましい一態様として、
【0088】
【化12】
【0089】
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表される基が、式(A):
【0090】
【化13】
【0091】
(式中、Zは、結合手、−O−、−CH−、又は−NR−であり。Rは、水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、又はアルキルオキシカルボニル基である。)
で表される基であるものが挙げられる。
【0092】
Zとして好ましくは、−O−、−CH−、又は−NR−(Rは前記に同じ。)である。
【0093】
は、−O−又は−S−であり、好ましくは−S−である。
【0094】
本発明化合物は、式(I)で表される化合物の塩の形態も包含する。当該塩としては、本発明の効果を発揮できる限り特に限定されない。水溶性の塩であることが好ましい。例えば、分子内にカルボキシル基等の酸性の基を有する場合には、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等の塩)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等の塩)、アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、有機アミン(トリアルキルアミン等)との塩、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)との塩等が挙げられる。また、分子内にアミノ基、ピリジル基等の塩基性の基を有する場合には、例えば、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等)との塩、有機酸(酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸等)との塩、酸性アミノ酸(アスパラギン酸等)との塩等が挙げられる。
【0095】
本発明化合物の好ましい態様として、後述する反応式2及び3で示した、式(I−A)〜式(I−H)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0096】
本発明化合物の他の好ましい一態様として、式(I−1):
【0097】
【化14】
【0098】
(式中、R、R、Y及びZは前記に同じ。)
で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0099】
本発明化合物の他の好ましい一態様として、式(I−2):
【0100】
【化15】
【0101】
(式中、R、R及びZは前記に同じ。)
で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0102】
本発明化合物の他の好ましい一態様として、式(I−3):
【0103】
【化16】
【0104】
(式中、R41はアルキル基を示し、R及びZは前記に同じ。)
で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0105】
本発明化合物の他の好ましい一態様として、式(I−4):
【0106】
【化17】
【0107】
(式中、alkはアルキレン基を示し、R42は式:−COORで表される基、又は式:−CONRで表される基を示し、R、R、R及びZは前記に同じ。)
で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0108】
3.本発明化合物の製造方法
本発明化合物は、例えば次のようにして製造することができる。典型的な製造方法を反応式1に示す。
【0109】
【化18】
【0110】
(式中、Bnはベンジル基を示し、X、X及びXは同一又は異なって脱離基を示し、R、R、R、R及びYは前記に同じ。)
、X及びXで示される脱離基としては、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。
【0111】
式(1)で表される化合物は、公知の化合物であるか、又は公知の方法から容易に合成できる化合物であり、例えば、Tetrahedron Lett., 2012, 53, 2432.に記載の方法に従い又は準じて製造することができる。
(1)+(2)→(3):
式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物を、溶媒(例えば、DMF等)中、塩基(例えば、KCO等)の存在下に反応させることにより、式(3)で表される化合物を製造することができる。
(3)+(4)→(5):
式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物を、溶媒(例えば、THF、ジオキサン等)中、パラジウム触媒(例えば、Pd(PPh、Pddba、Pd(OAc)等)、配位子(例えば、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジイソプロポキシビフェニル(Ruphos)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1-1’-ビナフチル(BINAP)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(Xantphos)等)及び塩基(例えば、炭酸セシウム等)の存在下に反応(カップリング反応)させることにより、式(5)で表される化合物を製造することができる。
(5)→(6):
式(5)で表される化合物に、オキシ塩化リン(POCl)の存在下、DMFを反応させることにより、式(6)で表される化合物を製造することができる。
(6)→(7):
式(6)で表される化合物を、水素雰囲気下、溶媒(例えば、酢酸エチル等)中、水素化触媒(例えば、Pd/C等)の存在下に還元反応(脱ベンジル化)することにより、式(7)で表される化合物を製造することができる。
(7)+(8)→(9):
式(7)で表される化合物及び式(8)で表される化合物を、溶媒(例えば、DMF等)中、塩基(例えば、KCO等)の存在下に反応させることにより、式(9)で表される化合物を製造することができる。
(9)→(I):
式(9)で表される化合物を、溶媒(例えば、酢酸エチル等)中、塩基(例えば、炭酸水素ナトリウム等)の存在下、酸化剤(例えば、m−クロロ過安息香酸(mCPBA)、過酸化水素等)で酸化(N−オキシド化)することにより、式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0112】
上記反応式1で製造される式(I)で表される化合物のうち、Rが、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基であり、かつ、Rが、置換基としてカルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するアルキル基である化合物、具体的には、式(I−A)〜式(I−D)で表される化合物は、例えば、反応式2のようにして製造することができる。
【0113】
【化19】
【0114】
(式中、R及びRは同一又は異なってアルキル基を示し、alkはアルキレン基を示し、Xは脱離基を示し、R、R、R、R、Bn、X、X、X及びYは前記に同じ。)
及びRで示される「アルキル基」としては、鎖状又は分岐状のC1〜4のアルキル基が挙げられ、具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。このうちメチル基及びエチル基が好ましい。
【0115】
alkで示される「アルキレン基」としては、鎖状又は分岐状のC1〜6のアルキレン基が挙げられ、好ましくはC1〜4のアルキレン基である。具体例として、メチレン基(−CH−)、ジメチレン基(−CHCH−)、トリメチレン基(−CHCHCH−)等が挙げられる。より好ましくはメチレン基、ジメチレン基である。
【0116】
で示される「脱離基」としては、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。
(1)+(2a)→(3a):
式(1)で表される化合物及び式(2a)で表される化合物から、式(3a)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物から、式(3)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(3a)+(4)→(5a):
式(3a)で表される化合物及び式(4)で表される化合物から、式(5a)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物から、式(5)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(5a)→(6a):
式(5a)で表される化合物から、式(6a)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(5)で表される化合物から、式(6)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(6a)→(7a):
式(6a)で表される化合物から、式(7a)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(6)で表される化合物から、式(7)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(7a)+(8a)→(9a):
式(7a)で表される化合物及び式(8a)で表される化合物から、式(9a)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(7)で表される化合物及び式(8)で表される化合物から、式(9)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(9a)→(I−A):
式(9a)で表される化合物から、式(I−A)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(9)で表される化合物から、式(I)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(I−A)→(I−B):
式(I−A)で表される化合物を、溶媒(例えば、メタノール/水等)中、塩基(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)を用いて加水分解することにより、式(I−B)で表される化合物を製造することができる。
(9a)→(10a):
式(9a)で表される化合物から、式(10a)で表される化合物を製造する反応は、反応式2の式(I−A)で表される化合物から、式(I−B)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(10a)→(11a):
式(10a)で表される化合物及び式(13)で表される化合物を、溶媒(例えば、THF、DMF等)中、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等)の存在下で縮合(エステル化)させることにより、式(11a)で表される化合物を製造することができる。或いは、式(10a)で表される化合物及び式(14)で表される化合物を、溶媒(例えば、THF、DMF等)中、塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等)の存在下で反応(エステル化)させることにより、式(11a)で表される化合物を製造することができる。
(11a)→(I−C):
式(11a)で表される化合物から、式(I−C)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(9)で表される化合物から、式(I)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(10a)+(15)→(12a):
式(10a)で表される化合物及び式(15)で表される化合物を、溶媒(例えば、THF、DMF等)中、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム クロリド(DMT-MM)等)の存在下で縮合(アミド化)させることにより、式(12a)で表される化合物を製造することができる。
(12a)→(I−D):
式(12a)で表される化合物から、式(I−D)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(9)で表される化合物から、式(I)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
【0117】
上記反応式1で製造される式(I)で表される化合物のうち、Rが、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基であり、かつ、Rがアルキル基である(以下、「R41」と表記する。)化合物、具体的には、式(I−E)〜式(I−H)で表される化合物は、例えば反応式3のようにして製造することができる。
【0118】
【化20】
【0119】
(式中、R41はアルキル基を示し、R、R、R、R、R、Bn、X、X、X、X及びYは前記に同じ。))
41で示される「アルキル基」としては、鎖状又は分岐状のC1〜4のアルキル基が挙げられ、具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。このうちメチル基及びエチル基が好ましい。
(1)+(2b)→(3b):
式(1)で表される化合物及び式(2b)で表される化合物から、式(3b)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物から、式(3)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(3b)+(4)→(5b):
式(3b)で表される化合物及び式(4)で表される化合物から、式(5b)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物から、式(5)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(5b)→(6b):
式(5b)で表される化合物から、式(6b)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(5)で表される化合物から、式(6)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(6b)→(7b):
式(6b)で表される化合物から、式(7b)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(6)で表される化合物から、式(7)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(7b)+(8a)→(9b):
式(7b)で表される化合物及び式(8a)で表される化合物から、式(9b)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(7)で表される化合物及び式(8)で表される化合物から、式(9)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(9b)→(I−E):
式(9b)で表される化合物から、式(I−E)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(9)で表される化合物から、式(I)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(I−E)→(I−F):
式(I−E)で表される化合物から、式(I−F)で表される化合物を製造する反応は、反応式2の式(I−A)で表される化合物から、式(I−B)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(9b)→(10b):
式(9b)で表される化合物から、式(10b)で表される化合物を製造する反応は、反応式2の式(9a)で表される化合物から、式(10a)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(10b)→(11b):
式(10b)で表される化合物から、式(11b)で表される化合物を製造する反応は、反応式2の式(10a)で表される化合物から、式(11a)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(11b)→(I−G):
式(11b)で表される化合物から、式(I−G)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(9)で表される化合物から、式(I)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(10b)+(15)→(12b):
式(10b)で表される化合物から、式(12b)で表される化合物を製造する反応は、反応式2の式(11a)で表される化合物から、式(12a)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
(12b)→(I−H):
式(12b)で表される化合物から、式(I−H)で表される化合物を製造する反応は、反応式1の式(9)で表される化合物から、式(I)で表される化合物を製造する反応に従い実施することができる。
【0120】
上記反応式1〜3における各製造工程の反応条件は、上記で説明した条件に限定されず、当業者が公知の方法に基づいて実施できるあらゆる条件を包含する。各反応において、必要であれば、反応に関与しない官能基を保護した後に反応を行い、反応後に当該保護基を除去(脱保護)することができる。この操作は、当業者は、公知の方法(例えば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 5th edition等)の記載に従い又は準じて適宜選択して実施できる。
【0121】
また、式(I)で表される化合物は、公知の方法に従い又は準じて所望の塩の形態に変換することができる。
【0122】
4.用途
本発明化合物(式(I)で表される化合物又はその塩)は、ヘム鉄を高選択的かつ高感度で検出できる蛍光特性を有している。ここで、ヘム鉄とは、二価鉄イオン(Fe(II)2+)とポルフィリンからなる錯体である。本発明化合物は、分子内にN−オキシド部位を有し、このN−オキシド部位がヘム鉄と選択的に反応してアミノ基に還元され、得られたアミノ基含有化合物が強い蛍光を発すると考えられる。本発明化合物は、ヘム鉄と選択的に反応し、鉄イオン以外の金属イオン及び遊離の鉄イオン(Fe(II)イオン、Fe(III)イオン等)とは反応しない又は極めて反応性が低いという特徴を有している。結果として、ヘム鉄を高選択的かつ高感度で検出できる。
【0123】
本発明化合物は、上記特性を利用して、ヘム鉄を選択的に検出又は測定することができる蛍光プローブ(蛍光試薬)として利用することができる。本発明はまた、上記蛍光プローブを含むヘム鉄蛍光検出薬、ヘム鉄蛍光検出キット等として利用することができる。
【0124】
本発明の蛍光プローブを用いてヘム鉄を測定又は検出することができる。その方法は、例えば、(1)ヘム鉄を含む検体と、本発明の蛍光プローブとを混合する工程、及び(2)得られた混合物の蛍光スペクトルを測定する工程を含む。具体的には、適当な緩衝液中で、ヘム鉄を含む検体及び本発明の蛍光プローブを混合しインキュベートした後、この混合物に励起光を当てて蛍光を測定することでヘム鉄を測定できる。
【0125】
緩衝液としては特に限定はなく、例えば、HEPES緩衝液(pH 7.4)等の公知のものを用いることができる。
【0126】
緩衝液中の蛍光プローブ(式(I)で表される化合物又はその塩)の濃度は特に限定はなく、通常、0.1μM〜1mM程度、好ましくは1μM〜0.1mM程度、より好ましくは5μM〜20μM程度である。
【0127】
インキュベーションの温度及び時間は、特に限定されず、例えば、0〜40℃程度で10分〜2時間程度である。検体が細胞又は組織である場合には、その培養に適した温度(例えば、ヒト由来の細胞又は組織であれば約37℃)であることが好ましい。
【0128】
蛍光の測定は、市販の蛍光計を用いることができる。細胞内のヘム鉄の動態を調べる場合には、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡等の公知の方法を用いて観察することができる。
【0129】
本発明の方法を採用することで、選択的かつ高感度にヘム鉄の蛍光検出が可能となる。具体的には、細胞および組織染色でのヘム鉄を蛍光検出したり、血液中、尿中等においてヘム鉄を定量して溶血を検出したりすることができる。
【実施例】
【0130】
以下、具体的な実施態様を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定される訳ではない。
【0131】
実施例1(Fura-Nox-1の合成)
(1)化合物2の合成
【0132】
【化21】
【0133】
4-ベンジルオキシ-2-ブロモフェノール (54 mg, 0.19 mmol)(Tetrahedron Lett., 2012, 53, 2432.を参照)をジメチルホルムアミド(3 mL)に溶解し、そこに炭酸カリウム(40 mg, 0.29 mmol)およびブロモ酢酸エチル(36 mg, 0.21 mmol)を加えた。窒素置換し、室温にて2時間攪拌後、反応液に酢酸エチルを(20 mL)加えた。反応混合液を水(10 mL×3)、飽和食塩水(10 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル : ヘキサン= 1 : 20 ; 1 : 10)で精製し、化合物2 を白色固体として得た(61 mg, 86%)。
【0134】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 7.45-7.29 (m, 5H), 7.22 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.90-6.77 (m, 2H), 5.00 (s, 2H), 4.63 (s, 2H), 4.26 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.29 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 168.7, 154.2, 149.1, 136.5, 128.6, 128.1, 127.5, 120.1, 115.7, 114.6, 113.2, 70.7, 67.5, 61.4, 14.1; HRMS (ESI+): m/z calculated for C17H17BrNaO4+: 387.0202, found : 387.0176.
【0135】
(2)化合物3の合成
【0136】
【化22】
【0137】
乾燥させた試験管にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) (2.5 mg, 0.0029 mmol)、Ruphos (6.4 mg, 0.014 mmol)、炭酸セシウム(89 mg, 0.27 mmol)、脱水1,4-ジオキサン(2 mL)、化合物2(50 mg, 0.14 mmol)、モルホリン(13 μL, 0.15 mmol)を加えた。アルゴンに置換し、100 ℃で24時間攪拌した。セライトを用いた濾過により不溶性の沈殿を除去した後、反応溶媒を減圧化留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル: ヘキサン = 1 : 10 ; 1 : 3)で精製し、化合物3を淡黄色油状物質として得た(49 mg, 96%)。
【0138】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.46-7.29 (m, 5H), 6.76 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 6.53 (dd, J = 8.7, 2.9 Hz, 1H), 5.00 (s, 2H), 4.63 (s, 2H), 4.26 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.88 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.12 (t, J = 4.3 Hz, 4H), 1.31 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 169.1, 154.5, 144.7, 143.0, 136.9, 128.5, 127.9, 127.5, 115.3, 107.0, 106.4, 70.4, 67.2, 66.4, 61.2, 50.8, 14.1; HRMS (ESI+): m/z calculated for C21H25NO5+: 372.1805, found : 372.1815.
【0139】
(3)化合物4の合成
【0140】
【化23】
【0141】
オキシ塩化リン(39 μL, 0.40 mmol)と脱水ジメチルホルムアミド(1 mL)を氷冷下で混和し、窒素雰囲気下、室温で30分間攪拌した。脱水ジメチルホルムアミド(1 mL)に溶解した化合物3 (49 mg, 0.13 mmol)を加え、窒素雰囲気下、45 ℃で4時間攪拌した。室温まで放冷した後、反応溶液を氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30 mL)に加え、酢酸エチル(20 mL×2)で抽出した。混合した有機層を水(20 mL×3)と飽和食塩水(20 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、化合物4を淡黄色固体として得た(46 mg, 88%)。
【0142】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.3 (s, 1H), 7.51-7.31 (m, 5H), 7.22 (s, 1H), 6.48 (s, 1H), 5.16 (s, 2H), 4.65 (s, 2H), 4.27 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.88 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.26 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 1.32 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 187.8, 168.3, 157.9, 148.6, 144.2, 136.1, 128.7, 128.3, 127.3, 118.6, 110.7, 103.3, 71.2, 66.8, 65.6, 61.4, 50.3, 14.1; HRMS (ESI+): m/z calculated for C22H26NO6+: 400.1755, found : 400.1783.
【0143】
(4)化合物5の合成
【0144】
【化24】
【0145】
化合物4 (46 mg, 0.12 mmol)を酢酸エチル(3 mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(3.0 mg)を加えた。水素雰囲気下、室温で21時間撹拌した後、セライトを用いた濾過を行ない、触媒を除去した。濾液を減圧下濃縮し、化合物5を茶色固体として得た(27 mg, 86%)。
【0146】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ: 11.2 (s, 1H), 9.65 (s, 1H), 6.90 (s, 1H), 6.41 (s, 1H), 4.62 (s, 2H), 4.29 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.88 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 3.31 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 1.32 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 193.6, 168.5, 159.4, 150.6, 143.0, 117.3, 113.6, 105.8, 66.8, 66.4, 61.5, 50.2, 14.2; HRMS (ESI+): m/z calculated for C15H19NNaO6+: 332.1105, found : 332.1134.
【0147】
(5)化合物6の合成
【0148】
【化25】
【0149】
化合物5 (690 mg, 2.23 mmol)および2-ブロモメチルチアゾール5-カルボン酸エチル(893 mg, 3.57 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(15 mL)に溶解し、炭酸カリウムを加え、100 ℃で1.5時間撹拌した。放冷後、反応液を100 mLの水に注ぎ、得られた黄色懸濁液に1 M塩酸を滴下し、液性を酸性にした。そこに酢酸エチル:ジエチルエーテル = 1 : 1の混合溶媒を加え、抽出操作を行なった(100 mL×2)。混合した有機層を飽和食塩水(50 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル: ヘキサン = 1 : 5 ; 1 : 2)で精製し、化合物6を黄色固体として得た(808 mg, 79%)。
【0150】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.42 (s, 1H), 7.37 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 7.01 (s, 1H), 4.73 (s, 2H), 4.40 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.30 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.94 (t, J = 4.3 Hz, 4H), 3.21 (m, 4H), 1.41 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.33 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 168.6, 162.6, 161.3, 151.8, 149.4, 149.2, 148.5, 142.7, 128.7, 122.1, 107.1, 105.3, 101.6, 67.1, 66.2, 61.7, 61.4, 51.4, 14.3, 14.2; HRMS (ESI+): m/z calculated for C22H25N2O7S+: 461.1377, found : 461.1398.
【0151】
(6)Fura-N-1の合成
【0152】
【化26】
【0153】
化合物6 (30 mg, 0.065 mmol)をメタノール(2 mL)に溶解し、そこに1.2 M水酸化カリウム水溶液(272 μL, 0.33 mmol)を滴下した。室温で2時間撹拌後、1.2 M水酸化カリウム水溶液(272 μL, 0.326 mmol)を追加し、室温でさらに2時間撹拌した。反応液を0 ℃に冷却した後、1 M塩酸を滴下し、液性を酸性とした。減圧下メタノールを留去し、得られた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過し、黄色固体を回収した。これを減圧下乾燥し、Fura-N-1を黄色固体として得た(23 mg, 89%)。
【0154】
1H-NMR (500 MHz, D2O) δ: 7.58 (s, 1H), 6.69-6.58 (m, 2H), 6.42 (s, 1H), 4.15 (s, 2H), 3.72 (s, 4H), 2.81 (s, 4H); 13C-NMR (D2O, 125 MHz) δ 176.6, 167.2, 160.2, 149.8, 148.2, 147.9, 144.9, 140.3, 136.4, 122.7, 106.5, 103.2, 101.6, 66.9, 66.3, 51.1; HRMS (ESI-): m/z calculated for C18H15N2O7S-: 403.0605, found : 403.0603
【0155】
(7)Fura-N-1-AMの合成
【0156】
【化27】
【0157】
Fura-N-1 (19 mg, 0.047 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(2 mL)に溶解し、そこにジイソプロピルエチルアミン(8 μL, 0.47 mmol)を加えた後に窒素置換し、混合溶液を0 ℃に冷却した。そこに酢酸ブロモメチル(23 μL, 0.235 mmol)を滴下し、窒素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを(30 mL)加え、反応混合液を水(20 mL×3)および飽和食塩水(20 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル : ヘキサン= 1 : 3 ; 1 :1)で精製し、Fura-N-1-AM(AMはアセトキシメチル基を表す。以下同じ。)を黄色固体として得た(16 mg, 64%)。
【0158】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ: 8.49 (s, 1H), 7.41 (s, 1H), 7.14 (s, 1H), 7.05 (s, 1H), 5.97 (s, 2H), 5.86 (s, 2H), 4.79 (s, 2H), 3.93 (t, J = 4.3 Hz, 4H), 3.20 (t, J = 4.0 Hz, 4H), 2.17 (s, 3H), 2.13 (s, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.5, 169.4, 167.5, 163.6, 159.9, 152.0, 150.8, 149.0, 148.3, 143.1, 127.0, 122.0, 107.7, 106.0, 101.8, 79.5, 79.3, 67.1, 65.9, 51.4, 20.7, 20.6; HRMS (ESI+): m/z calculated for C24H25N2O11S+: 549.1174, found : 549.1194.
【0159】
(8)Fura-Nox-1-AMの合成
【0160】
【化28】
【0161】
Fura-N-1-AM(14 mg, 0.026 mmol)を酢酸エチル(2 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した後に炭酸水素ナトリウム(2.4 mg, 0.029 mmol)とメタクロロ過安息香酸(7.0 mg, 0.029 mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール= 1 : 0 ; 20 : 1)で精製し、Fura-Nox-1-AMを淡黄色固体として得た(15 mg, 100%)。
【0162】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 9.24 (s, 1H), 8.54 (s, 1H), 7.49 (s, 1H), 7.09 (s, 1H), 5.98 (s, 2H), 5.88 (s, 2H), 4.97 (s, 2H), 4.92 (td, J = 11.2, 3.8 Hz, 2H), 4.75 (t, J = 10.9 Hz, 2H), 3.97-3.85 (m, 2H), 2.99 (d, J = 10.9 Hz, 2H), 2.17 (s, 3H), 2.12 (s, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.5, 169.4, 166.4, 162.7, 159.7, 152.0, 150.7, 150.1, 145.9, 142.6, 129.1, 128.4, 110.1, 106.3, 103.7, 79.62, 79.61, 65.1, 64.8, 62.5, 20.7, 20.6; HRMS (ESI+): m/z calculated for C24H25N2O12S+: 565.1123, found : 565.1134.
【0163】
(9)化合物7の合成
【0164】
【化29】
【0165】
化合物6 (59 mg, 0.13 mmol)を酢酸エチル(4 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した後に炭酸水素ナトリウム(12 mg, 0.14 mmol)とメタクロロ過安息香酸(35 mg, 0.14 mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 1 : 0 ; 30 : 1)で精製し、7を淡黄色固体として得た(51 mg, 83%)。
【0166】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 9.25 (s, 1H), 8.48 (s, 1H), 7.45 (s, 1H), 7.09 (s, 1H), 4.98 (td, J = 11.6, 3.8 Hz, 2H), 4.91 (s, 2H), 4.77 (t, J = 11.2 Hz, 2H), 4.41 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.33 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.90 (dd, J = 11.7, 3.2 Hz, 2H), 2.96 (d, J = 11.5 Hz, 2H), 1.42 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.34 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 167.4, 161.7, 161.0, 152.1, 149.9, 149.4, 146.2, 142.6, 129.9, 129.1, 109.9, 105.8, 103.6, 65.5, 64.8, 62.6, 62.0, 61.9, 14.2, 14.1; HRMS (ESI+): m/z calculated for C24H25N2O11S+: 477.1326, found : 477.1327.
【0167】
(10)Fura-Nox-1の合成
【0168】
【化30】
【0169】
化合物7 (51 mg, 0.11 mmol)をメタノール(5 mL)に溶解し、そこに1.2 M水酸化カリウム水溶液(0.89 mL, 1.1 mmol)を滴下した。室温で1時間撹拌後、減圧下メタノールを留去し、1 M塩酸を滴下し、液性を酸性とした。生じた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過し、淡黄色固体を回収した。これを減圧下乾燥し、Fura-Nox-1を淡黄色固体として得た(39 mg, 88%)。
【0170】
1H-NMR (5% NaOD in D2O, 500 MHz) δ 8.39 (s, 1H), 7.69 (s, 1H), 6.99 (s, 1H), 6.88 (s, 1H), 4.60-4.36 (m, 4H), 4.04 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 3.08 (d, J = 12.0 Hz, 2H); 13C-NMR (5% NaOD in D2O, 125 MHz) δ 176.6, 167.2, 160.2, 149.8, 148.2, 147.9, 144.9, 140.3, 136.4, 122.7, 106.4, 103.2, 101.6, 66.9, 66.3, 51.2; HRMS (ESI-): m/z calculated for C24H25N2O11S-: 419.0555, found : 419.0579.
【0171】
実施例2(Fura-Nox-2の合成)
(1)化合物8の合成
【0172】
【化31】
【0173】
Fura-N-1(147 mg, 0.36 mmol)とイミノ二酢酸ジ-tert-ブチル(197 mg, 0.80 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(4 mL)に溶解し、0 ℃でDMT-MM(222 mg, 0.80 mmol)を加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液に酢酸エチルを(30 mL)加え、反応混合液を水(20 mL×3)および飽和食塩水(20 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル : ヘキサン= 1 : 2 ; 1 : 1)で精製し、化合物8を黄色固体として得た(184 mg, 59%)。
【0174】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ: 8.00 (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.11 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 4.82 (s, 2H), 4.28 (s, 2H), 4.19 (s, 2H), 4.16 (s, 2H), 4.13 (s, 2H), 3.92 (t, J = 4.3 Hz, 4H), 3.19 (m, 4H), 1.53 (s, 9H), 1.51 (s, 9H), 1.47 (s, 9H), 1.46 (s, 9H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 168.2, 168.1, 167.9, 167.8, 167.7, 162.9, 161.0, 151.8, 148.9, 148.8, 144.7, 142.8, 131.2, 122.2, 106.8, 106.4, 101.6, 83.2, 83.0, 82.3, 82.2, 67.6, 67.1, 55.9, 52.7, 51.5, 50.2, 49.4, 49.0, 28.0, 28.0; HRMS (ESI+): m/z calculated for C42H59N4O13S+: 859.3794, found : 859.3784.
【0175】
(2)Fura-N-2の合成
【0176】
【化32】
【0177】
化合物8 (75 mg, 0.087 mmol)をジクロロメタン(1 mL)に溶解し、0 ℃でトリフルオロ酢酸(1 mL)を滴下した。室温で7時間撹拌後、反応液をジエチルエーテル(10 mL)に加えた。生じた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過し、得られた黄色固体を減圧下乾燥し、Fura-N-2を黄色固体として得た(40 mg, 72%)。
【0178】
1H-NMR (CD3OD, 500 MHz) δ: 8.09 (s, 1H), 7.48 (s, 2H), 7.46 (s, 1H), 7.37 (s, 1H), 5.06 (s, 2H), 4.47 (s, 2H), 4.36 (s, 2H), 4.30 (s, 2H), 4.21 (s, 2H), 4.06-3.86 (m, 4H), 3.37-3.33 (m, 4H); 13C-NMR (CD3OD, 125 MHz) δ 172.36, 172.35, 172.2, 172.0, 171.9, 171.8, 164.8, 162.1, 152.9, 151.0, 150.9, 150.2, 146.0, 133.0, 109.4, 108.4, 103.6, 69.4, 67.5, 53.6, 53.2, 50.2; HRMS (ESI-): m/z calculated for C26H25N4O13S-: 633.1144, found : 633.1118.
【0179】
(3)Fura-N-2-AMの合成
【0180】
【化33】
【0181】
Fura-N-2(34 mg, 0.054 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(2 mL)に溶解し、そこにジイソプロピルエチルアミン(150 μL, 0.86 mmol)を加えた後に窒素置換し、混合溶液を0 ℃に冷却した。そこに酢酸ブロモメチル(42 μL, 0.43 mmol)を滴下し、窒素雰囲気下、室温で6時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを(50 mL)加え、反応混合液を水(20 mL×3)および飽和食塩水(20 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル : ヘキサン= 1 : 1 ; 3 :1)で精製し、Fura-N-2-AMを黄色固体として得た(28 mg, 56%)。
【0182】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ: 8.00 (s, 1H), 7.38 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 7.10 (s, 1H), 5.84 (brs, 4H), 5.78 (s, 2H), 5.77 (s, 2H), 4.84 (s, 2H), 4.47 (brs, 2H), 4.41 (s, 2H), 4.35 (brs, 2H), 4.30 (s, 2H), 3.90 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.16 (m, 4H), 2.16 (s, 6H), 2.13 (s, 3H), 2.06 (s, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.5, 169.4, 168.4, 167.6, 167.5, 163.2, 161.4, 151.9, 148.9, 148.5, 145.3, 142.9, 130.0, 122.2, 107.1, 106.8, 101.8, 79.8, 79.4, 67.9, 67.0, 51.4, 49.2, 48.1, 20.7, 20.5; HRMS (ESI+): m/z calculated for C38H43N4O21S+: 923.2135, found : 923.2150.
【0183】
(4)Nox-2-AMの合成
【0184】
【化34】
【0185】
Fura-N-2-AM (24 mg, 0.026 mmol)を酢酸エチル(2 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した後に炭酸水素ナトリウム(2.4 mg, 0.029 mmol)とメタクロロ過安息香酸(7.1 mg, 0.029 mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール= 100 : 1 ; 15 : 1)で精製し、Fura-Nox-2-AMを淡黄色固体として得た(25 mg, 100%)。
【0186】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 9.13 (s, 1H), 8.07 (s, 1H), 7.45 (s, 1H), 7.17 (s, 1H), 5.88 (s, 2H), 5.84 (m, 4H), 5.76 (s, 2H), 5.10 (s, 2H), 4.96 (td, J = 11.5, 3.1 Hz, 2H), 4.73 (t, J = 11.2 Hz, 2H), 4.56-4.17 (m, 8H), 3.90 (dd, J = 11.7, 3.2 Hz, 2H), 3.06 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 2.16 (m, 9H), 2.12 (s, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.5, 169.4, 167.5, 167.2, 167.1, 162.9, 160.4, 151.7, 149.9, 146.2, 145.6, 131.0, 129.3, 109.5, 106.1, 104.4, 80.2, 79.5, 65.3, 64.6, 62.6, 49.1, 48.4, 48.1, 20.7; HRMS (ESI+): m/z calculated for C38H42N4NaO22S+: 961.1904, found : 961.1892.
【0187】
(5)化合物9の合成
【0188】
【化35】
【0189】
化合物8 (55 mg, 0.064 mmol)を酢酸エチル(2 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した後に炭酸水素ナトリウム(5.9 mg, 0.0704 mmol)とメタクロロ過安息香酸(17 mg, 0.0704 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール= 100 :1 ; 20 :1)で精製し、化合物9を淡黄色固体として得た(49 mg, 87%)。
【0190】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 9.20 (s, 1H), 8.12 (s, 1H), 7.41 (s, 1H), 7.17 (s, 1H), 5.05 (s, 2H), 5.00 (td, J = 11.5, 2.9 Hz, 2H), 4.75 (t, J = 11.5 Hz, 2H), 4.26 (s, 2H), 4.20 (s, 2H), 4.13 (s, 2H), 4.08 (s, 2H), 3.89 (dd, J = 12.0 Hz, 2.9 Hz, 2H), 2.96 (d, J = 11.5 Hz, 2H), 1.55 (s, 9H), 1.53 (s, 9H), 1.51 (s, 9H), 1.46 (s, 9H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 168.0, 167.7, 167.6, 166.9, 162.7, 160.1, 151.6, 149.8, 146.5, 145.6, 142.3, 131.7, 129.2, 109.5, 105.7, 104.1, 83.7, 83.3, 82.5, 82.4, 65.3, 64.8, 62.6, 52.6, 50.1, 49.4, 49.0, 28.0, 28.0; HRMS (ESI+): m/z calculated for C42H59N4O14S+: 875.3743, found : 875.3737.
【0191】
(6)Fura-Nox-2の合成
【0192】
【化36】
【0193】
化合物9 (48 mg, 0.055 mmol)をジクロロメタン(1.5 mL)に溶解し、0 ℃でトリフルオロ酢酸(1.5 mL)を滴下した。室温で4時間撹拌後、反応液をジエチルエーテル(50 mL)に加えた。生じた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過し、得られた黄色固体を減圧下乾燥し、Fura-Nox-2を淡黄色固体として得た(24 mg, 67%)。
【0194】
1H-NMR (1% NaOD in CD3OD, 400 MHz) δ: 8.77 (s, 1H), 8.23 (s, 1H), 7.67 (s, 1H), 7.63 (s, 1H), 5.24-5.03 (m, 4H), 4.53 (t, J = 11.6 Hz, 2H), 4.16 (s, 4H), 4.10-3.85 (m, 6H), 3.01 (d, J = 12.1 Hz, 2H); 13C-NMR (1% NaOD in CD3OD, 100 MHz) δ 176.7, 176.2, 176.0, 175.7, 169.5, 164.4, 160.8, 153.2, 150.6, 148.4, 146.0, 142.1, 135.4, 131.2, 108.4, 107.6, 107.2, 65.7, 63.5, 56.0, 52.98, 52.96, 52.87, 52.84, 52.30, 52.28; HRMS (ESI-): m/z calculated for C26H25N4O14S-: 649.1093, found : 649.1072.
【0195】
実施例3(Fura-Nox-3の合成)
(1)化合物10の合成
【0196】
【化37】
【0197】
よく乾燥させたフラスコにビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) (75 mg, 0.082 mmol)、Ruphos (192 mg, 0.42 mmol)、炭酸セシウム(2.68 g, 8.23 mmol)、脱水1,4-ジオキサン(40 mL)、化合物2 (1.50 g, 4.12 mmol)、N-Boc-ピペラジン(843 mg, 4.53 mmol)を加えた。アルゴンに置換し、100 ℃で26時間攪拌した。セライトを用いた濾過により不溶性の沈殿を除去した後、反応溶媒を減圧化留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル: ヘキサン = 1 : 10 to 1 : 5)で精製し、化合物10を茶色油状物質として得た(1.39 g, 72%)。
【0198】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 7.50-7.35 (m, 4H), 7.33 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 6.76 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 6.53 (dd, J = 8.6, 2.9 Hz, 1H), 4.99 (s, 2H), 4.62 (s, 2H), 4.26 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 3.59 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.04 (t, J = 4.9 Hz, 4H), 1.48 (s, 9H), 1.31 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.1, 154.8, 154.5, 144.8, 143.1, 137.0, 128.6, 128.0, 127.6, 115.1, 107.4, 106.7, 79.7, 70.5, 66.4, 61.2, 50.5, 28.4, 14.2; HRMS (DART +): m/z calculated for C28H35N2O6+: 471.2490, found : 471.2462.
【0199】
(2)化合物11の合成
【0200】
【化38】
【0201】
化合物10 (579 mg, 1.23 mmol)を酢酸エチル(4 mL)に溶解し、0 ℃で4 M塩酸/酢酸エチル(4 mL)を滴下した。室温で4時間撹拌後、反応液にヘキサンを加え、生じた懸濁液を桐山ロートで濾過した。得られた茶色固体とピコリン酸(151 mg, 1.23 mmol)を脱水ジメチルホルムアミドに溶解し、0 ℃でトリエチルアミン(343 μL, 2.46 mmol)とDMT-MM (340 mg, 1.23 mmol)を加えた。窒素置換した後、混合液を室温で23時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを(50 mL)加え、反応混合液を水(50 mL×3)および飽和食塩水(50 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル : ヘキサン= 1 : 3 ; 2 : 1)で精製し、化合物11を茶色油状物質として得た(357 mg, 61%)。
【0202】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ: 8.61 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.81 (td, J = 7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.67 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.49-7.29 (m, 6H), 6.75 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 6.55 (dd, J = 9.2, 2.9 Hz, 1H), 4.99 (s, 2H), 4.63 (s, 2H), 4.26 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 3.99 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.77 (t, J = 4.6 Hz, 2H), 3.21 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.13 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 1.30 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.0, 167.5, 154.4, 154.0, 148.3, 144.7, 142.6, 137.1, 136.9, 128.6, 127.9, 127.5, 124.4, 123.9, 114.9, 107.5, 107.0, 70.4, 66.4, 61.2, 50.9, 50.3, 47.5, 42.6, 14.2; HRMS (ESI+): m/z calculated for C27H29N3O5+: 498.1999, found : 498.2027.
【0203】
(3)化合物12の合成
【0204】
【化39】
【0205】
オキシ塩化リン(368 μL, 3.76 mmol)と脱水ジメチルホルムアミド(2 mL)を氷冷下で混和し、窒素雰囲気下、室温で30分間攪拌した。脱水ジメチルホルムアミド(3 mL)に溶解した化合物12 (357 mg, 0.75 mmol)を加え、窒素雰囲気下、45 ℃で4時間攪拌した。室温まで放冷した後、反応溶液を氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)に加え、酢酸エチル(50 mL×2)で抽出した。混合した有機層を水(50 mL×5)と飽和食塩水(50 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、化合物12を淡黄色固体として得た(294 mg, 78%)。
【0206】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.4 (s, 1H), 8.61 (d, J = 4.3 Hz, 1H), 7.83 (td, J = 7.7, 1.9 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.52-7.32 (m, 6H), 6.50 (s, 1H), 5.15 (s, 2H), 4.66 (s, 2H), 4.26 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.00 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.86-3.70 (m, 2H), 3.39-3.21 (m, 4H), 1.31 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 187.7, 168.3, 167.5, 157.8, 153.8, 148.33, 148.28, 144.2, 137.1, 136.1, 128.7, 128.3, 127.3, 124.6, 124.1, 118.8, 110.6, 103.8, 71.2, 65.6, 61.4, 50.5, 49.7, 47.2, 42.3, 14.1; HRMS (ESI+): m/z calculated for C28H30N3O6+: 504.2129, found : 504.2100.
【0207】
(4)化合物13の合成
【0208】
【化40】
【0209】
化合物12 (294 mg, 0.58 mmol)をエタノール(6 mL)とジクロロメタン(3 mL)の混合溶媒に溶解し、10%パラジウム炭素(30 mg)を加えた。水素雰囲気下、室温で46時間撹拌した後、セライトを用いた濾過を行ない、触媒を除去した。濾液を減圧下濃縮し、化合物13を淡茶色固体として得た(240 mg, 99%)。
【0210】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ: 11.2 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 9.66 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.61 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 7.83 (td, J = 7.7, 1.9 Hz, 1H), 7.77-7.62 (m, 1H), 7.40-7.36 (m, 1H), 6.90 (s, 1H), 6.42 (s, 1H), 4.71-4.55 (m, 2H), 4.28 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.00 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.86-3.79 (m, 2H), 3.42 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.34 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 1.32 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 193.6, 168.4, 167.5, 159.2, 153.7, 150.2, 148.3, 143.0, 137.2, 124.7, 124.1, 116.9, 113.8, 106.3, 66.4, 61.5, 50.2, 49.6, 47.1, 42.3, 14.2; HRMS (DART+): m/z calculated for C21H24N3O6+: 414.1660, found : 414.1689.
【0211】
(5)化合物14の合成
【0212】
【化41】
【0213】
化合物13 (240 mg, 0.58 mmol)および2-ブロモメチルチアゾール5-カルボン酸エチル(218 mg, 0.87 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(15 mL)に溶解し、炭酸カリウム(361 mg, 2.62 mmol)を加え、100 ℃で1.5時間撹拌した。放冷後、反応液を.100 mLの水に注ぎ、得られた黄色懸濁液に1 M塩酸を滴下し、液性を酸性にした。そこに酢酸エチルを加え、抽出操作を行なった(50 mL×3)。混合した有機層を水(50 mL×3)と飽和食塩水(50 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル: ヘキサン = 1 : 3 ; 3 : 1)で精製し、化合物14を黄色固体として得た(158 mg, 48%)。
【0214】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 8.62 (m, 1H), 8.42 (s, 1H), 7.83 (td, J = 7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.71 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.45-7.32 (m, 2H), 7.13 (s, 1H), 7.02 (s, 1H), 4.73 (s, 2H), 4.40 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.29 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.06 (t, J = 4.6 Hz, 2H), 3.85 (t, J = 4.6 Hz, 2H), 3.31 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.22 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 1.41 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.32 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 168.5, 167.6, 162.5, 161.3, 153.9, 151.6, 149.4, 149.3, 148.5, 148.3, 142.3, 137.1, 128.7, 124.5, 124.0, 122.4, 107.1, 104.9, 102.1, 66.1, 61.7, 61.5, 51.4, 50.8, 47.4, 42.5, 14.3, 14.2; HRMS (ESI+): m/z calculated for C28H29N4O7S+: 565.1751, found : 565.1721.
【0215】
(6)化合物15の合成
【0216】
【化42】
【0217】
化合物14 (158 mg, 0.28 mmol)をメタノール(2 mL)とテトラヒドロフラン(3 mL)の混合溶媒に溶解し、そこに1.2 M水酸化カリウム水溶液(1.17 mL, 1.40 mmol)を滴下した。室温で2時間撹拌後、減圧下メタノールを留去し、1 M塩酸を滴下し、液性を酸性とした。生じた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過した。得られた黄色固体とイミノ二酢酸ジ-tert-ブチル(172 mg, 0.70 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(4 mL)に溶解し、0 ℃でDMT-MM(193 mg, 0.70 mmol)を加えた。室温で7時間撹拌した後、反応液に酢酸エチルを(50 mL)加え、反応混合液を水(30 mL×3)および飽和食塩水(30 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル : ヘキサン= 1 : 1 ; 3 :1)で精製し、化合物15を黄色固体として得た(217 mg, 81%)。
【0218】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ: 8.00 (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.11 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 4.82 (s, 2H), 4.28 (s, 2H), 4.19 (s, 2H), 4.16 (s, 2H), 4.13 (s, 2H), 4.05 (m, 4H), 3.81 (t, J = 4.6 Hz, 2H), 3.19 (m, 4H), 3.28 (t, J = 4.6 Hz, 2H), 3.21 (t, J = 4.3 Hz, 2H), 1.53 (s, 9H), 1.51 (s, 9H), 1.47 (s, 9H), 1.45 (s, 9H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 168.2, 167.9, 167.8, 167.6, 162.9, 160.9, 154.0, 151.6, 149.0, 148.8, 148.3, 144.8, 142.4, 137.0, 131.2, 124.4, 123.9, 122.5, 106.8, 106.2, 102.0, 83.2, 83.0, 82.3, 82.2, 67.6, 55.9, 52.7, 51.6, 50.7, 50.2, 49.4, 49.0, 47.5, 42.5, 28.0; HRMS (ESI+): m/z calculated for C48H62N6NaO13S+: 985.3988, found : 985.3991.
【0219】
(7)Fura-N-3の合成
【0220】
【化43】
【0221】
化合物15 (105 mg, 0.11 mmol) をジクロロメタン(1.5 mL)に溶解し、0 ℃でトリフルオロ酢酸(1.5 mL)を滴下した。室温で4時間撹拌後、反応液をジエチルエーテル(30 mL)に加えた。生じた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過し、得られた黄色固体を減圧下乾燥し、Fura-N-3を黄色固体として得た(64 mg, 80%)。
【0222】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 8.62 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 8.03 (s, 1H), 7.99 (td, J = 7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.53 (dd, J = 6.9, 5.2 Hz, 1H), 7.37 (s, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.26 (s, 1H), 4.97 (s, 2H), 4.45 (s, 2H), 4.35 (s, 2H), 4.28 (s, 2H), 4.19 (s, 2H), 4.13-3.92 (m, 2H), 3.82-3.62 (m, 2H), 3.43-3.32 (m, 2H), 3.27-3.12 (m, 2H); 13C-NMR (CD3OD, 125 MHz) δ 172.3, 172.2, 172.1, 171.9, 171.5, 169.1, 164.8, 162.1, 154.4, 152.8, 150.6, 150.2, 149.6, 145.9, 141.9, 139.5, 132.8, 126.5, 125.2, 124.8, 108.7, 108.1, 103.7, 69.1, 53.1, 53.0, 52.5, 50.3, 50.2, 43.2; HRMS (ESI-); m/z calculated for C32H29N6O13S-: 737.1519, found : 737.1520.
【0223】
(8)Fura-N-3-AMの合成
【0224】
【化44】
【0225】
Fura-N-3 (45 mg, 0.061 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(2 mL)に溶解し、そこにジイソプロピルエチルアミン(171 μL, 0.98 mmol)を加えた後に窒素置換し、混合溶液を0 ℃に冷却した。そこに酢酸ブロモメチル(48 μL, 0.49 mmol)を滴下し、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを(50 mL)加え、反応混合液を水(30 mL×5)および飽和食塩水(30 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール= 50 : 1)で精製し、Fura-N-3-AMを黄色固体として得た(45 mg, 72%)。
【0226】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 8.62 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.83 (td, J = 7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.43-7.31 (m, 2H), 7.13 (s, 1H), 7.11 (s, 1H), 7.17-7.06 (m, 2H), 5.84 (brs, 4H), 5.78 (s, 2H), 5.72 (s, 2H), 4.85 (s, 2H), 4.56-4.16 (m, 8H), 4.03 (m, 2H), 3.81 (m, 2H), 3.26 (t, J = 4.6 Hz, 2H), 3.18 (t, J = 4.3 Hz, 2H), 2.16 (s, 6H), 2.12 (s, 3H), 2.05 (s, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.5, 169.4, 168.3, 167.6, 167.5, 167.5, 163.1, 161.3, 153.9, 151.8, 148.9, 148.5, 148.3, 145.3, 142.5, 137.1, 130.1, 124.5, 123.9, 122.5, 107.1, 106.5, 102.2, 79.8, 79.4, 67.8, 51.6, 50.8, 49.2, 48.1, 47.4, 42.4, 20.6, 20.5; HRMS (ESI+): m/z calculated for C44H47N6O21S+: 1027.2509, found : 1027.2479.
【0227】
(9)Fura-Nox-3-AMの合成
【0228】
【化45】
【0229】
Fura-N-3-AM (38 mg, 0.037 mmol)を酢酸エチル(2 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した後に炭酸水素ナトリウム(3.4 mg, 0.041 mmol)とメタクロロ過安息香酸(10 mg, 0.041 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール= 100 :1 ; 20 :1)で精製し、Fura-Nox-3-AMを淡黄色固体として得た(36.8 mg, 96%)。
【0230】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 9.13 (s, 1H), 8.60 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 8.07 (s, 1H), 7.85 (td, J = 7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.80 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.45 (s, 1H), 7.42-7.35 (m, 1H), 7.19 (s, 1H), 5.96-5.79 (m, 6H), 5.79-5.70 (m, 2H), 5.19-4.94 (m, 3H), 4.94-4.82 (m, 1H), 4.82-4.71 (m, 1H), 4.57-4.21 (m, 9H), 4.20-4.05 (m, 2H), 3.33-3.15 (m, 1H), 3.15-3.04 (m, 1H), 2.17 (s, 6H), 2.15 (s, 3H), 2.09 (s, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.5, 169.4, 167.5, 167.4, 167.2, 167.1, 163.0, 160.4, 153.5, 151.7, 149.9, 148.3, 146.3, 145.6, 137.2, 131.1, 129.4, 124.8, 124.2, 109.3, 106.1, 104.7, 80.2, 79.5, 65.7, 65.1, 64.8, 49.2, 48.2, 42.8, 38.2, 20.67, 20.65; HRMS (ESI+): m/z calculated for C44H47N6O22S+: 1043.2464, found : 1043.2455.
【0231】
(10)化合物16の合成
【0232】
【化46】
【0233】
化合物15 (51 mg, 0.053 mmol)を酢酸エチル(3 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した後に炭酸水素ナトリウム(4.9 mg, 0.058 mmol)とメタクロロ過安息香酸(14 mg, 0.058 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール= 100 : 1 ; 20 : 1)で精製し、化合物16を淡黄色固体として得た(37 mg, 96%)。
【0234】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 9.17 (s, 1H), 8.60 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 8.11 (s, 1H), 7.88-7.76 (m, 2H), 7.41 (s, 1H), 7.39-7.33 (m, 1H), 7.18 (s, 1H), 5.15-4.96 (m, 3H), 4.96-4.85 (m, 1H), 4.78 (d, J = 13.7 Hz, 1H), 4.46 (t, J = 12.9 Hz, 1H), 4.35-3.99 (m, 10H), 3.19 (d, J = 11.5 Hz, 1H), 3.03 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 1.56-1.49 (m, 27H), 1.46 (s, 9H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 167.9, 167.7, 167.6, 167.5, 166.8, 162.7, 160.0, 153.4, 151.7, 149.7, 148.3, 146.4, 145.6, 142.0, 137.1, 131.8, 129.3, 124.7, 124.2, 109.2, 105.7, 104.4, 83.6, 83.3, 82.5, 82.4, 65.5, 65.1, 64.8, 52.6, 50.1, 49.4, 49.0, 42.7, 38.2, 28.0; HRMS (ESI+): m/z calculated for C48H62N6NaO14S+: 979.4117, found : 979.4126.
【0235】
(11)Fura-Nox-3の合成
【0236】
【化47】
【0237】
化合物16 (50 mg, 0.051 mmol)をジクロロメタン(1 mL)に溶解し、0 ℃でトリフルオロ酢酸(1 mL)を滴下した。室温で3時間撹拌後、反応液をジエチルエーテル(50 mL)に加えた。生じた淡黄色懸濁液を桐山ロートで濾過し、得られた淡黄色固体を減圧下乾燥し、Fura-Nox-3を18 mg、37%の収率で淡黄色固体として得た(18 mg, 37%)。
【0238】
1H-NMR (5% NaOD/D2O, 500 MHz) δ 8.68-8.58 (m, 2H), 8.12 (s, 1H), 8.10-8.04 (m, 1H), 7.80 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.66-7.57 (m, 2H), 7.50 (s, 1H), 5.16 (s, 2H), 5.11-4.92 (m, 3H), 4.70 (d, J = 13.2 Hz, 1H), 4.28-4.16 (m, 3H), 4.16-3.91 (m, 8H), 3.84 (d, J = 14.3 Hz, 1H), 3.39-3.31 (m, 1H), 3.10 (d, J = 12.0 Hz, 1H); HRMS (ESI-): m/z calculated for C32H29N6O14S-: 753.1468, found : 753.1456.
【0239】
実施例4(Fura-Nox-4の合成)
(1)化合物17の合成
【0240】
【化48】
【0241】
オキシ塩化リン(662 μL, 6.8 mmol)と脱水ジメチルホルムアミド(5 mL)を氷冷下で混和し、窒素雰囲気下、室温で30分間攪拌した。脱水ジメチルホルムアミド(5 mL)に溶解した化合物10 (635 mg, 1.4 mmol)を加え、窒素雰囲気下、45 ℃で4時間攪拌した。室温まで放冷した後、反応溶液を氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)に加え、酢酸エチル(100 mL×2)で抽出した。混合した有機層を水(100 mL×3)と飽和食塩水(100 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、化合物17を淡黄色固体として得た(568 mg, 84%)。
【0242】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 10.3 (s, 1H), 7.49-7.31 (m, 6H), 7.22 (s, 1H), 6.48 (s, 1H), 5.15 (s, 2H), 4.65 (s, 3H), 4.27 (q, J = 7.3 Hz, 3H), 3.61 (t, J = 4.9 Hz, 5H), 3.27-3.12 (m, 4H), 1.66 (s, 1H), 1.49 (s, 9H), 1.32 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 187.8, 168.3, 157.8, 154.7, 148.7, 144.2, 136.1, 128.7, 128.3, 127.3, 118.6, 110.6, 103.7, 79.9, 71.2, 65.6, 61.4, 49.9, 49.8, 28.4, 14.2; HRMS (DART+): m/z calculated for C27H35N2O7+: 499.2439, found : 499.2441.
【0243】
(2)化合物18の合成
【0244】
【化49】
【0245】
化合物17 (568 mg, 1.14 mmol)をエタノール(15 mL)とジクロロメタン(3 mL)の混合溶媒に溶解し、10%パラジウム炭素(30 mg)を加えた。水素雰囲気下、室温で46時間撹拌した後、セライトを用いた濾過を行ない、触媒を除去した。濾液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1 : 20 ;1 : 10)で精製し、化合物18を白色固体として得た(173 mg, 37%)。
【0246】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 11.2 (s, 1H), 9.64 (s, 1H), 6.90 (s, 1H), 6.41 (s, 1H), 4.62 (s, 2H), 4.27 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 3.61 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 3.25 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 1.48 (s, 9H), 1.31 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 193.6, 168.5, 159.3, 154.7, 150.6, 143.0, 117.1, 113.7, 106.2, 80.0, 66.4, 61.5, 49.7, 28.4, 14.2; HRMS (DART+): m/z calculated for C20H29N2O7+: 409.1969, found : 409.1955.
【0247】
(3)化合物19の合成
【0248】
【化50】
【0249】
化合物18 (135 mg, 0.33 mmol)および2-ブロモメチルチアゾール5-カルボン酸エチル(122 mg, 0.49 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(5 mL)に溶解し、炭酸カリウム(206 mg, 1.49 mmol)を加え、100 ℃で1.5時間撹拌した。放冷後、反応液を.50 mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、そこに酢酸エチルを加え、抽出操作を行なった(50 mL)。有機層を水(50 mL×3)と飽和食塩水(50 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル: ヘキサン = 1 :5 ; 1 : 3)で精製し、化合物19を黄色固体として得た(127 mg, 48%)。
【0250】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 8.42 (s, 1H), 7.38 (s, 1H), 7.12 (s, 1H), 7.02 (s, 1H), 4.72 (s, 2H), 4.41 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.29 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.66 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.14 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 1.50 (s, 9H), 1.41 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.33 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 168.6, 162.6, 161.3, 154.8, 151.6, 149.4, 149.2, 148.5, 142.7, 128.7, 122.2, 107.2, 105.1, 102.0, 79.8, 66.2, 61.7, 61.4, 50.9, 28.4, 14.3, 14.2; HRMS (ESI+): m/z calculated for C27H34N3O8S+: 560.2061, found : 560.2085.
【0251】
(4)化合物20の合成
【0252】
【化51】
【0253】
化合物19 (147 mg, 0.26 mmol)をメタノール(1 mL)とテトラヒドロフラン(3 mL)の混合溶媒に溶解し、そこに1.2 M水酸化カリウム水溶液(1.32 mL, 1.32 mmol)を滴下した。室温で1時間撹拌後、減圧下メタノールを留去し、飽和塩化アンモニウム水溶液を滴下し、反応液を中和した。生じた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過した。得られた黄色固体とイミノ二酢酸ジ-tert-ブチル(142 mg, 0.58 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(4 mL)に溶解し、0 ℃でEt3N (183 μL, 1.32 mmol)とDMT-MM (100 mg, 0.58 mmol)を加えた。室温で8時間撹拌した後、反応液に酢酸エチルを(50 mL)加え、反応混合液を水(30 mL×3)および飽和食塩水(50 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル : ヘキサン= 1 : 5 ; 1 : 1)で精製し、化合物20を黄色固体として得た(154 mg, 61%)。
【0254】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ: 8.00 (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.10 (s, 1H), 7.09 (s, 1H), 4.92 (s, 2H), 4.27 (s, 2H), 4.19 (s, 2H), 4.16 (s, 2H), 4.13 (s, 2H), 4.05 (m, 6H), 3.76-3.47 (m, 4H), 3.11 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 1.56-1.48 (m, 27H), 1.47 (s, 9H), 1.46 (s, 9H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 174.0, 171.1, 168.2, 168.1, 167.9, 167.8, 167.7, 162.9, 161.0, 154.8, 151.7, 148.8, 148.9, 144.7, 142.8, 131.2, 122.4, 106.8, 106.4, 101.9, 83.2, 83.1, 82.4, 82.2, 79.7, 67.6, 55.9, 52.7, 51.0, 50.2, 49.4, 49.0, 28.4, 28.03, 28.00; HRMS (ESI+): m/z calculated for C47H67N5NaO14S+: 980.4297, found : 980.4284.
【0255】
(5)Fura-N-4-AMの合成
【0256】
【化52】
【0257】
化合物20 (154 mg, 0.16 mmol)をジクロロメタン(2 mL)に溶解し、0 ℃でトリフルオロ酢酸(2 mL)を滴下した。室温で2時間撹拌後、反応液をジエチルエーテル(10 mL)に加えた。生じた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過した。得られた黄色固体を脱水ジメチルホルムアミド(2 mL)に溶解し、そこにジイソプロピルエチルアミン(65 μL, 0.37 mmol)と脱水ジメチルホルムアミド(1 mL)に溶解した二炭酸ジ-tert-ブチル(81 mg, 0.37 mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。減圧下、反応溶媒の残量が0.5 mLとなるまで濃縮した後、濃縮した反応液を30 mLのジエチルエーテルへと加えた。生じた橙色懸濁液を桐山ロートを用いて濾過し、沈殿を集めた。得られた黄色固体を脱水ジメチルホルムアミド(3 mL)に溶解し、そこにジイソプロピルエチルアミン(347 μL, 1.98 mmol)を加えた後に窒素置換し、混合溶液を0 ℃に冷却した。そこに酢酸ブロモメチル(97 μL, 0.99 mmol)を滴下し、窒素雰囲気下、室温で18時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを(50 mL)加え、反応混合液を水(50 mL×5)および飽和食塩水(50 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル : ヘキサン= 1 : 2 ; 4 : 1)で精製し、Fura-N-4-AMを黄色固体として得た(43 mg, 34%)。
【0258】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ: 8.00 (s, 1H), 7.38 (s, 1H), 7.11 (s, 1H), 5.84 (brs, 4H), 5.78 (s, 2H), 5.77 (s, 2H), 4.85 (s, 2H), 4.48 (brs, 2H), 4.40 (s, 4.40), 4.36 (s, 2H), 4.30 (s, 2H), 3.71-3.53 (m, 4H), 3.19-2.97 (m, 4H), 2.17 (s, 6H), 2.13 (s, 3H), 2.06 (s, 3H), 1.50 (s, 9H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.4, 169.3, 168.4, 167.6, 167.5, 163.1, 161.3, 154.7, 151.8, 148.8, 148.4, 145.3, 142.9, 130.0, 122.3, 107.0, 106.7, 102.0, 79.7, 79.4, 67.9, 50.9, 49.2, 48.0, 28.3, 20.6, 20.4; HRMS (ESI+): m/z calculated for C43H52N5O22S+: 1022.2819, found : 1022.2797.
【0259】
(6)Fura-Nox-4-AMの合成
【0260】
【化53】
【0261】
Fura-N-4-AM(20.6 mg, 0.020 mmol)を酢酸エチル(2 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した後に炭酸水素ナトリウム(1.9 mg, 0.022 mmol)とメタクロロ過安息香酸(6.4 mg, 0.022 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール= 100 : 1 ; 30 : 1)で精製し、Fura-Nox-4-AMを淡黄色固体として得た(16 mg, 78%)。
【0262】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ: 9.15 (s, 1H), 8.07 (s, 1H), 7.47 (s, 1H), 7.16 (s, 1H), 6.07-5.81 (m, 6H), 5.77 (s, 2H), 5.03 (s, 2H), 4.77 (s, 2H), 4.46 (s, 2H), 4.36 (s, 2H), 4.29 (s, 2H), 4.23 (s, 2H), 4.20-3.90 (m, 4H), 3.06 (d, J = 10.3 Hz, 2H), 2.16 (s, 9H), 2.12 (s, 3H), 1.52 (s, 9H); 13C-NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 169.5, 169.48, 169.45, 167.5, 167.2, 167.0, 163.0, 160.5, 154.6, 151.8, 150.0, 146.3, 145.7, 131.1, 129.4, 109.5, 106.2, 104.5, 80.4, 80.2, 79.8, 79.5, 65.4, 64.4, 51.6, 49.0, 48.4, 48.1, 28.4, 20.7; HRMS (ESI+): m/z calculated for C43H52N5O23S+: 1038.2768, found : 1038.2772.
【0263】
(7)Fura-Nox-4の合成
【0264】
【化54】
【0265】
Fura-Nox-4-AM (15 mg, 0.015 mmol)をメタノール(1 mL)に溶解し、そこに水(1 mL)に溶解した炭酸カリウム(44 mg, 0.32 mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、反応溶媒を減圧下留去し、残渣を逆相Sep-Packカートリッジ(C18, 10 g, H2O : MeCN = 1 : 0 ; 3 : 1)を用いて精製し、Fura-Nox-4を無色固体として得た(10 mg, 93%)。
【0266】
1H-NMR (CD3OD, 500 MHz) δ: 8.75 (s, 1H), 8.21 (s, 1H), 7.67 (s, 1H), 7.61 (s, 1H), 5.18 (s, 2H), 5.03-4.94 (m, 2H), 4.19-4.08 (m, 6H), 4.03 (s, 2H), 3.96 (s, 2H), 3.91-3.70 (m, 2H), 3.13-3.02 (m, 2H), 1.52 (s, 9H); 13C-NMR (CD3OD, 100 MHz) δ 176.5, 175.9, 175.6, 169.3, 164.3, 161.4, 160.7, 156.1, 153.4, 150.6, 148.4, 145.9, 141.9, 135.6, 131.4, 108.2, 107.6, 107.5, 82.0, 67.5, 65.3, 55.9, 52.8, 52.7, 52.1, 30.8, 28.7, 24.3; HRMS (ESI-): m/z calculated for C31H34N5O15S-: 748.1778, found : 748.1791.
【0267】
(8)Fura-N-4の合成
【0268】
【化55】
【0269】
Fura-N-4-AM(19 mg, 0.019 mmol)をメタノール(1.5 mL)に溶解し、そこに水(1 mL)に溶解した炭酸カリウム(53 mg, 0.38 mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、反応溶媒を減圧下留去し、残渣を逆相Sep-Packカートリッジ(C18, 10 g, H2O : MeCN = 1 : 0 ; 3 : 1)を用いて精製し、Fura-N-4を黄色固体として得た(12 mg, 89%)。
【0270】
1H-NMR (CD3OD, 500 MHz) δ: 7.46 (s, 1H), 7.36 (s, 1H), 7.20 (s, 1H), 4.97 (s, 2H), 4.16 (s, 4H), 4.06 (s, 2H), 3.96 (s, 2H), 3.70-3.53 (m, 4H), 3.19-3.06 (m, 4H), 1.48 (s, 9H); 13C-NMR (CD3OD, 125 MHz) δ 175.4, 174.7, 174.3, 169.3, 163.2, 160.5, 160.1, 155.2, 151.4, 149.4, 148.8, 144.2, 142.6, 132.9, 122.7, 106.6, 106.1, 101.3, 79.8, 66.6, 54.6, 51.5, 51.4, 51.34, 51.32, 50.9, 50.8, 50.7, 27.3; HRMS (ESI-): m/z calculated for C31H34N5O14S-: 732.1828, found : 732.1825.
【0271】
実施例5(Fura-Nox-5の合成)
(1)化合物22の合成
【0272】
【化56】
【0273】
化合物21 (277 mg, 1.17 mmol)(J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1 1981, No. 0, 2120.を参照)及び2-ブロモメチルチアゾール5-カルボン酸エチル(380 mg, 1.52 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(7 mL)に溶解し、炭酸カリウムを加え、100 ℃で1.5時間撹拌した。放冷後、反応液を100 mLの水に注ぎ、得られた黄色懸濁液に1 M塩酸を滴下し、液性を酸性にした。そこに酢酸エチル(100 mL)を加え、抽出操作を行なった。混合した有機層を飽和食塩水(50 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル: ヘキサン = 1 : 5 ; 1 : 2)で精製し、化合物22を黄色固体として得た(353 mg, 78%)。
【0274】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.42 (s, 1H), 7.40 (s, 1H), 7.12 (s, 1H), 7.05 (s, 1H), 4.40 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.04-3.85 (7H), 3.21-2.97 (4H), 1.50-1.29 (3H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 162.8, 161.3, 151.0, 150.5, 149.4, 148.9, 142.3, 128.6, 122.3, 107.2, 102.6, 101.4, 67.1, 61.7, 55.9, 51.4, 14.3; HRMS (ESI+): m/z calculated for C19H21N2O5S+: 389.1166, found : 389.1138.
【0275】
(2)化合物23の合成
【0276】
【化57】
【0277】
化合物22 (13 mg, 0.034 mmol)を酢酸エチル(2 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した後に炭酸水素ナトリウム(3.1 mg, 0.037 mmol)とメタクロロ過安息香酸(9.8 mg, 0.037 mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール= 1 : 0 ; 20 :1)で精製し、化合物23を淡黄色沈殿として得た(13 mg, 96%)。
【0278】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 9.19 (s, 1H), 8.48 (s, 1H), 7.47 (s, 1H), 7.22 (s, 1H), 4.97-4.62 (m, 4H), 4.41 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.88 (d, J = 9.7 Hz, 2H), 2.93 (d, J = 9.7 Hz, 2H), 1.43 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 161.9, 161.1, 152.0, 149.6, 149.5, 148.1, 142.5, 129.9, 129.2, 109.4, 105.9, 103.6, 64.7, 62.6, 61.9, 56.3, 14.3; HRMS (ESI+): m/z calculated for C19H20N2NaO6S+: 427.0934, found : 427.0959.
【0279】
(3)Fura-Nox-5の合成
【0280】
【化58】
【0281】
化合物23 (12 mg, 0.030 mmol)をメタノール(2 mL)に溶解し、そこに1 M水酸化カリウム水溶液(297 μL, 0.30 mmol)を滴下した。室温で1時間撹拌後、反応液を0 ℃に冷却し、6 M塩酸を滴下して液性を酸性とした。減圧下メタノールを留去し、得られた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過し、黄色固体を回収した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=1:0;2:1)により精製し、Fura-Nox-5を淡黄色固体として得た(7.5 mg, 67%)。
【0282】
1H-NMR (D2O, 500 MHz) δ 8.11 (s, 1H), 7.34 (s, 1H), 6.52 (s, 1H), 6.49 (s, 1H), 4.64 (t, J = 10.0 Hz, 2H), 4.42 (t, J = 11.7 Hz, 2H), 3.97 (d, J = 10.9 Hz, 2H), 3.64 (s, 3H), 2.90 (d, J = 12.0 Hz, 2H); 13C-NMR (NaOD/D2O, 100 MHz) δ 171.6, 169.1, 161.9, 153.1, 150.9, 150.4, 142.4, 140.9, 131.9, 109.2, 108.4, 107.5, 66.9, 65.1, 62.3, 58.8.
【0283】
(4)Fura-N-5の合成
【0284】
【化59】
【0285】
化合物22 (353 mg, 0.91 mmol)をメタノール(10 mL)とテトラヒドロフラン(5 mL)の混合溶媒に溶解し、そこに1 M水酸化ナトリウム水溶液(4.55 mL, 4.55 mmol)を滴下した。室温で6時間撹拌後、反応液を0 ℃に冷却し、1 M塩酸を滴下して液性を酸性とした。減圧下メタノールを留去し、得られた黄色懸濁液を桐山ロートで濾過し、黄色固体を回収した。これを減圧下乾燥し、Fura-N-5を黄色固体として得た(258 mg, 79%)。
【0286】
1H-NMR (C5D5N, 400 MHz) δ 8.89 (s, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.18 (s, 2H), 3.93 (t, J = 4.3 Hz, 4H), 3.83 (s, 3H), 3.16 (t, J = 4.3 Hz, 4H); 13C-NMR (C5D5N, 100 MHz) δ 164.2, 162.3, 151.5, 151.2, 149.8, 149.5, 143.0, 132.3, 122.6, 107.5, 103.8, 101.7, 67.2, 56.1, 51.7.
【0287】
実施例6(Fura-Nox-6の合成)
(1)化合物24の合成
【0288】
【化60】
【0289】
4-ベンジルオキシ-2-ブロモフェノール (1.41 g, 5.00 mmol)(Tetrahedron Lett., 2012, 53, 2432を参照)をジメチルホルムアミド (15 mL)に溶解し、そこに炭酸カリウム(1.04 g, 7.5 mmol)およびブロモ酢酸-tert-ブチル(807 μL, 5.5 mmol)を加えた。窒素置換し、室温にて2時間攪拌後、反応液に酢酸エチルを(100 mL)加えた。反応混合液を水(50 mL×3)、飽和食塩水(50 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル : ヘキサン= 1 : 20 ; 1 : 10)で精製し、化合物24を無色油状物質として得た(1.60 g, 81%)。
【0290】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 7.48-7.29 (m, 5H), 7.22 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 6.85 (dd, J = 9.2, 2.9 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 4.99 (s, 2H), 4.52 (s, 2H), 1.47 (s, 9H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 167.7, 153.9, 149.1, 136.5, 128.6, 128.1, 127.5, 120.1, 114.9, 114.5, 112.9, 82.4, 70.7, 67.5, 28.0; HRMS (DART+): m/z calculated for C19H22BrO4+: 393.0702, found : 397.0717.
【0291】
(2)化合物25の合成
【0292】
【化61】
【0293】
よく乾燥させたフラスコにビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) (75 mg, 0.0814 mmol)、Ruphos (190 mg, 0.407 mmol)、炭酸セシウム(2.65 mg, 8.14 mmol)、脱水1,4-ジオキサン(2 mL)、化合物24 (1.60 g, 4.07 mmol)、モルホリン(423 μL, 4.88 mmol)を加えた。アルゴンに置換し、100 ℃で20時間攪拌した。セライトを用いた濾過により不溶性の沈殿を除去した後、反応溶媒を減圧化留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル: ヘキサン = 1 : 10 ; 1 : 3)で精製し、化合物25を淡黄色油状物質として得た(794 mg, 49%)。
【0294】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.46-7.29 (m, 5H), 6.76 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 6.53 (dd, J = 8.7, 2.9 Hz, 1H), 5.00 (s, 2H), 4.63 (s, 2H), 4.26 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.88 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.12 (t, J = 4.3 Hz, 4H), 1.31 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ 169.1, 154.5, 144.7, 143.0, 136.9, 128.5, 127.9, 127.5, 115.3, 107.0, 106.4, 70.4, 67.2, 66.4, 61.2, 50.8, 14.1; HRMS (DART+): m/z calculated for C23H30NO5+: 400.2118, found : 400.2133.
【0295】
(3)化合物26の合成
【0296】
【化62】
【0297】
オキシ塩化リン(70 μL, 0.751 mmol)と脱水ジメチルホルムアミド(1 mL)を氷冷下で混和し、窒素雰囲気下、室温で30分間攪拌した。脱水ジメチルホルムアミド (1 mL)に溶解した化合物25 (100 mg, 0.250 mmol)を加え、窒素雰囲気下、45 ℃で4時間攪拌した。室温まで放冷した後、反応溶液を氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40 mL)に加え、酢酸エチル(30 mL×2)で抽出した。混合した有機層を水(20 mL×3)と飽和食塩水(20 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、化合物26を淡黄色固体として得た(53 mg, 50%)。
【0298】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 10.35 (s, 1H), 7.48-7.32 (m, 5H), 7.20 (s, 1H), 6.48 (s, 1H), 5.16 (s, 2H), 4.54 (s, 2H), 3.88 (t, J = 4.6 Hz, 5H), 3.25 (t, J = 4.6 Hz, 5H), 1.50 (s, 9H);13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 187.7, 167.4, 157.7, 148.5, 144.2, 136.2, 128.7, 128.3, 127.4, 118.6, 110.3, 103.3, 82.5, 71.2, 66.9, 65.9, 50.3, 28.0; HRMS (DART+): m/z calculated for C24H30NO6+: 428.2068, found : 428.2044.
【0299】
(4)化合物27の合成
【0300】
【化63】
【0301】
化合物26 (847 mg, 1.98 mmol)を酢酸エチル(40 mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(20 mg)を加えた。水素雰囲気下、室温で24時間撹拌した後、セライトを用いた濾過を行ない、触媒を除去した。濾液を減圧下濃縮し、化合物27を黄色油状物質として得た(74 mg, quant.)。
【0302】
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ: 11.20 (s, 1H), 9.63 (s, 1H), 6.86 (s, 1H), 6.41 (s, 1H), 4.51 (s, 2H), 3.99-3.74 (m, 4H), 3.32 (t, J = 4.9 Hz, 4H), 1.50 (s, 9H); 13C-NMR (125 MHz, CDCl3) δ: 193.5, 167.5, 159.2, 150.4, 143.1, 116.7, 113.6, 105.8, 82.6, 66.8, 66.7, 50.1, 28.1; HRMS (DART+): m/z calculated for C17H24NO6+: 338.1598, found : 338.1591.
【0303】
(5)化合物28の合成
【0304】
【化64】
【0305】
化合物27 (570 mg, 1.69 mmol)および2-ブロモメチルチアゾール5-カルボン酸エチル(634 mg, 2.54 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(8 mL)に溶解し、炭酸カリウム(1.05 g, 7.61 mmol)を加え、100 ℃で1.5時間撹拌した。放冷後、反応液を.100 mLの水に注ぎ、得られた黄色懸濁液に1 M塩酸を滴下し、液性を酸性にした。そこに酢酸エチル(100 mL)を加え、抽出操作を行なった。有機層を水(50 mL×3)および飽和食塩水(50 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル: ヘキサン = 1 : 10 ; 1 : 3)で精製し、化合物28を黄色固体として得た(692 mg, 84%)。
【0306】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 8.42 (s, 1H), 7.37 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 6.98 (s, 1H), 4.62 (s, 2H), 4.40 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 3.94 (t, J = 4.6 Hz, 5H), 3.21 (t, J = 4.0 Hz, 4H), 1.51 (s, 9H), 1.41 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C-NMR (125 MHz, CDCl3) δ: 167.6, 162.7, 161.3, 151.6, 149.1, 148.5, 142.6, 128.6, 122.1, 107.2, 104.7, 101.6, 82.5, 67.1, 66.5, 61.7, 51.3, 28.1, 14.3; HRMS (ESI+): m/z calculated for C24H29N2O7S+: 489.1690, found : 489.1676.
【0307】
(6)Fura-N-6の合成
【0308】
【化65】
【0309】
化合物28 (30 mg, 0.0615 mmol)をエタノール(1.5 mL)と水(1.5 mL)の混合溶媒に溶解し、そこに1.2 M水酸化カリウム水溶液(61.5 μL, 0.0615 mmol)を滴下した。室温で6時間撹拌した後、Amberlite CG Type-Iを加え、反応溶液を中和した。反応液を濾過し、濾液を減圧化濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール = 1 : 0 ; 50 : 1)で精製し、黄色固体の化合物29を得た(9.0 mg, 24%)。
【0310】
得られた化合物29 (9.0 mg)と2-アミノエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(9.4 mg, 0.0215 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(2 mL)に溶解し、0 ℃でDMT-MM(5.9 mg, 0.0215 mmol)を加えた。室温で15時間撹拌した後、反応液にヘキサフルオロリン酸カリウム(36 mg, 0.195 mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、酢酸エチルを(20 mL)加え、反応混合液を水(20 mL×3)および飽和食塩水(20 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール= 1 : 0 ;30 :1)で精製し、Fura-N-6を黄色固体として得た(6.8 mg, 39%)。
【0311】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ: 8.27 (s, 1H), 7.88-7.79 (m, 3H), 7.79-7.65 (m, 12H), 7.62-7.52 (m, 1H), 7.33 (s, 1H), 7.27 (s, 2H), 7.13 (s, 1H), 6.97 (s, 1H), 4.61 (s, 2H), 3.94 (t, J = 4.3 Hz, 4H), 3.90-3.79 (m, 2H), 3.68-3.51 (m, 2H), 3.29-3.11 (m, 4H), 1.50 (s, 9H); HRMS (ESI+): m/z calculated for C42H43N3O6PS+: 748.2605, found : 748.2624.
【0312】
(7)Fura-Nox-6の合成
【0313】
【化66】
【0314】
Fura-N-6 (6.1 mg, 0.0068 mmol)をジクロロメタン(2 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した後に炭酸水素ナトリウム(0.63 mg, 0.0075 mmol)とメタクロロ過安息香酸(1.9 mg, 0.0075 mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール= 1 : 0 ; 20 :1)で精製し、Fura-Nox-6を淡黄色沈殿として得た(3.3 mg, 53%)。
【0315】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 8.79 (s, 1H), 8.25 (s, 1H), 7.94-7.85 (m, 9H), 7.84-7.71 (m, 6H), 7.61 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 7.50 (s, 1H), 5.23-5.00 (m, 2H), 4.54 (t, J = 10.9 Hz, 2H), 4.05-3.88 (m, 2H), 3.88-3.68 (m, 4H), 3.10-2.98 (m, 2H), 1.53 (s, 9H); HRMS (ESI+): m/z calculated for C42H43N3O7PS+: 764.2554, found : 764.2544.427.0959.
【0316】
試験例1(各種分光学的測定)
各種Fura-Noxのヘム鉄応答性を蛍光分光光度計(日本分光、FP-6600)にて調査した。測定は全て50 mM HEPES緩衝液中pH 7.4にて実施した。また、Fura-Noxの濃度は2 μM(1 mM DMSO溶液をストック溶液とした)とし、ヘミン 2 μM(1 mM DMSO溶液をストック溶液とした)とグルタチオン(1 mM、100 mM水溶液をストック溶液とした)を添加し、一時間後における蛍光スペクトル変化を測定し、スペクトル変化前後における極大蛍光波長における蛍光強度比を算出した(表1参照)。
【0317】
【表1】
【0318】
(1)ヘム鉄選択性の評価
ヘム鉄選択性について確認するため、10 μM二価鉄イオン(FeSO4)とグルタチオン(1 mM)を2 μMのFura-Nox誘導体と混合し、同様に一時間後の蛍光スペクトル変化および蛍光強度比を算出した。また、励起波長は365 nmとした(図1)。
【0319】
比較対象化合物として、二価鉄イオン応答性プローブであるRhoNox-1 (Chem. Sci. 2013, 4, 1250)、HMRhoNox-M (Org. Biomol. Chem. 2014, 12, 6590)、SiRhoNox-1 (Chem. Sci. 2017, 8, 4598)についても同条件にてヘミン又は二価鉄イオンと混合し、それぞれのプローブに対応する波長での蛍光スペクトル測定を実施した。
【0320】
【化67】
【0321】
図1(a-i)に、ヘム鉄蛍光プローブ Fura-Nox類縁体(a-f)及び二価鉄イオン蛍光プローブ(g-i)における、ヘミン(2 μM、黒太線)又は二価鉄イオン(10 μM、黒実線)に対する蛍光応答の結果を示す。各グラフにおいて、黒点線は反応前の蛍光応答を、灰色実線は1 mMグルタチオンのみの場合の蛍光応答を示す。ヘミン、二価鉄イオンとの反応時は1 mMグルタチオン存在下で反応した。励起波長は、(a-f)では365 nm、(g,h)では540 nm、(i)では630 nmとした。
【0322】
図2(a)に、各プローブのヘミン又は二価鉄イオンに対する蛍光応答性を比較した結果を示す。Fura-Nox-1からFura-Nox-6についてはそれぞれI(580)/I(430)、I(580)/I(430)、I(550)/I(425)、I(580)/I(430)、I(570)/I(430)、I(570)/I(430)の値を、プローブのみの場合を1として相対値をプロットした。但し、I(x)はx nmにおける蛍光強度を示す。棒グラフの白色はプローブのみ、灰色は二価鉄イオン(10 μM)、黒色はヘミン(2 μM)の結果を示す。実験条件は図1の実験と同様である。
【0323】
図2(b)は、図2(a)におけるFura-Nox-1からFura-Nox-5の部分を拡大したものである。
【0324】
図1及び図2に示す結果から、全てのFura-Noxシリーズについて、二価鉄イオンの応答に比較してヘム鉄であるヘミンに対してのみ顕著な蛍光強度変化を示した。
【0325】
また、同条件における二価鉄イオンに対するヘム鉄に対する選択性は表2のとおりである。特に、Fura-Nox-2からFura-Nox-6のFura-Noxシリーズについては、10倍以上の高い選択性を示し、良好なヘム鉄選択性が確認できた。
【0326】
比較対象化合物である公知のキサンテン系色素を母核としたN−オキシド型二価鉄イオン蛍光プローブであるRhoNox-1、HMRhoNox-M、及びSiRhoNox-1は、二価鉄イオン及びヘム鉄の両方に対し反応し、ヘム鉄に対する選択性がほとんどないことがわかる。
【0327】
従って、本発明のFura-Noxシリーズは、公知のキサンテン系色素を母核としたN−オキシド型二価鉄イオン蛍光プローブとは化学構造が大きく異なると共に、ヘム鉄に対する高い選択性(応答性)を示すことから全く異なる挙動を示すことが分かった。
【0328】
【表2】
【0329】
(2)金属イオン選択性の評価
金属イオン選択性試験については、金属種としてMnSO4、CoSO4、NiSO4、FeSO4、FeCl3、CuSO4、ZnSO4、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2を用い、遷移金属イオンについては10 mMのストック溶液を、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンは1 Mのストック溶液を作成し、これらを使用した。銅(I)については10 mM の[Cu(CH3CN)4]PF4のアセトニトリル溶液を作成し、これを用いた。上記のストック溶液を用いて20 μMの遷移金属イオンおよび1 mMのアルカリ、アルカリ土類金属イオンを2 μMのFura-Nox誘導体に添加し、一時間後の575 nmにおける蛍光強度を比較した。その結果を、図3に示す。
【0330】
図3は、各種金属イオン種に対するFura-Noxシリーズの蛍光応答性を比較した結果である。金属イオン濃度は、Na, K, Mg, Caイオンは、いずれも1 mMとし、他の金属イオンは、20 μMとした。
【0331】
図3の結果より、Fura-Noxシリーズは、ヘム鉄に対する高い選択性を示すが、遊離の二価鉄イオン、及びその他の遷移金属イオンに対しては全く応答しないことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0332】
本発明化合物は、ヘム鉄に対する高い選択性を有するため、ヘム鉄選択的蛍光プローブとして有用である。
図1
図2
図3