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特開2019-147951活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-147951(P2019-147951A)
(43)【公開日】2019年9月5日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/00 20060101AFI20190809BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20190809BHJP
【FI】
   C08F290/00
   C08F299/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-32479(P2019-32479)
(22)【出願日】2019年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2018-32625(P2018-32625)
(32)【優先日】2018年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮本 佳介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴士
(72)【発明者】
【氏名】辻村 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和徳
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB032
4J127BB041
4J127BB091
4J127BB112
4J127BB131
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC022
4J127BC061
4J127BD301
4J127BD311
4J127BD321
4J127BD331
4J127BD442
4J127BD462
4J127BE211
4J127BE21Y
4J127BE241
4J127BE242
4J127BE24Y
4J127BE441
4J127BE44Y
4J127BF011
4J127BF01X
4J127BF021
4J127BF02X
4J127BF142
4J127BF14X
4J127BF471
4J127BF47Y
4J127BF622
4J127BF62X
4J127BF711
4J127BF71X
4J127BG042
4J127BG04X
4J127BG092
4J127BG09X
4J127BG171
4J127BG172
4J127BG17Y
4J127BG251
4J127BG25Y
4J127BG272
4J127BG27Y
4J127BG282
4J127BG28X
4J127BG381
4J127BG38X
4J127CB151
4J127CB281
4J127CC021
4J127DA46
4J127FA01
(57)【要約】
【課題】耐擦傷性、延伸性及び耐薬品性に優れる硬化物を与える活性エネルギー線硬化性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】無機酸化物(A)と1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)と炭素数1〜4のアルコキシ基を2つ以上有するシリコンアルコキシド(a)とを反応させてなる有機無機複合フィラーを含み、前記反応に用いる前記(b)と前記(a)との重量比率が1:6〜1:1である活性エネルギー線硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物(A)と1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)と炭素数1〜4のアルコキシ基を2つ以上有するシリコンアルコキシド(a)とを反応させてなる有機無機複合フィラーを含み、前記反応に用いる前記(b)と前記(a)との重量比率が1:6〜1:1である活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
更にポリウレタン(メタ)アクリレート(D)及び/又はラジカル重合性二重結合含有(メタ)アクリル重合体(E)を含む請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記(D)の数平均分子量が1,000〜20,000である請求項2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
無機酸化物(A)がシリカである請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化性樹脂、各種基材へのコーティング、ハードコート剤、接着剤、粘着剤、シール剤、インキ等広く使用されることが期待されているが、様々なニーズに合わせた化合物の構造設計や期待特性に向けた組成物配合の調整が十分に進まず、大きな問題となっている。即ち、強靭性、伸張性、高硬度、高密着性等の物性と、活性エネルギー線硬化に係る硬化の速さ、硬化後の表面乾燥性や表面硬度、耐擦傷性、硬化収縮性等の物性とのバランスを取ることが極めて困難である。
近年自動車の軽量化のニーズから内装材の樹脂化の動きが高まってきている。内装材料にはデザイン付与のため、インモールド工法により樹脂を一旦延伸して成型する手法が取られている。環境負荷の観点から本材料に活性エネルギー線硬化性樹脂の使用が検討されているが、前述の理由により延伸性、耐擦傷性、耐薬品性の両立をターゲットとする場合、要求されている高性能には満足できるものがない現状である。
【0003】
このため、硬度の高いシリカ微粒子をフィラーとして配合した活性エネルギー線硬化樹脂を主成分とするハードコート層を形成させる方法が知られているが、層の延伸性が低下するため十分な量を配合することができず、耐擦傷性が不十分であるという課題がある。
そこで、耐擦傷性を付与するためにシリルアクリレート改質シリカを含有させた組成物が知られている(特許文献1)。さらに、特許文献2によれば、(A)アルコキシシリル基及び(メタ)アクリロイル基を有する樹脂と、コロイダルシリカ及び/又はシリケートとを加水分解縮合させてなる有機無機複合体と、(B)紫外線吸収剤及び/又は(C)光安定剤を含有する活性エネルギー線硬化性組成物が開示されており、この組成物には(D)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有させてよいことが記載されている。
また、特許文献3には、コロイダルシリカをラジカル重合性シラン化合物又はその加水分解物で化学修飾した紫外線硬化性シリコーンと、特定の構造を有する〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕イソシアヌレートと、1分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、脂式骨格を有するウレタンポリ(メタ)アクリレートと、光重合開始剤を含有する耐摩耗性被覆形成組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4750914号公報
【特許文献2】特開2005−171216号公報
【特許文献3】特許第3747065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシリカ微粒子をフィラーとして配合した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物は、耐擦傷性、延伸性、耐薬品性が不十分であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、耐擦傷性、延伸性及び耐薬品性に優れる硬化物を与える活性エネルギー線硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、無機酸化物(A)と1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)と炭素数1〜4のアルコキシ基を2つ以上有するシリコンアルコキシド(a)とを反応させてなる有機無機複合フィラーを含み、前記反応に用いる前記(b)と前記(a)との重量比率が1:6〜1:1である活性エネルギー線硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物は、耐擦傷性、延伸性及び耐薬品性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
有機無機複合フィラー(C)を構成する無機酸化物(A)は、特に制限されないが、珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムの酸化物等並びにこれら金属の複合酸化物が好ましく、具体的には、珪素の酸化物(シリカともいう)、アルミニウムの酸化物(アルミナともいう)、珪素−アルミニウムの複合酸化物、ジルコニウムの酸化物(ジルコニアともいう)、チタンの酸化物(チタニアともいう)、酸化亜鉛、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウム−錫複合酸化物(ITOと略されることもある)及び酸化セリウム等を挙げることができる。なかでもシリカが好ましい。
無機酸化物の形状は、塗料用に用いられる公知のフィラーの形状であれば特に制限されないが、粒子状(球状粒子、中空粒子、多孔質粒子及び不定形粒子等)、棒状、繊維状及び板状等の形状があげられ、なかでも粒子状が好ましく、球状が特に好ましい。
なかでも、粒子状の無機酸化物(以下、粒子状の無機酸化物を金属酸化物粒子という)が粒子状のシリカである場合に好ましいものとしては、乾式シリカ(フュームドシリカ等)及び湿式シリカ(沈降法シリカ、ゲル法シリカ及びコロイダルシリカ等)等が挙げられる。
無機酸化物が無機酸化物粒子である場合、その一次粒子径は1〜100nmが好ましい。一次粒子径が1nm未満であると、耐傷つき性や硬度の向上効果が小さく、一方100nm以上であると、二次凝集を起こしやすく、透明性等が失われやすくなるため好ましくない。無機酸化物粒子が二次凝集を起こしているか否かは、無機酸化物粒子を電子顕微鏡等で拡大観察することで確認することができ、二次凝集している無機酸化物粒子の一次粒子径は拡大写真を画像解析装置等にかけて拡大写真に投影された一次粒子の数平均粒子径を算出することで得ることができ、無機酸化物粒子が二次凝集していない場合には、無機酸化物粒子の一次粒子径は、BET法、動的光散乱法、遠心沈降法及びレーザー散乱法等により測定できる。
なかでも、好ましい無機酸化物粒子である粒子状のシリカのうち、コロイダルシリカについてはBET法で求められる。
これら無機酸化物粒子は乾燥状態での粉末及び水又は有機溶剤に分散した状態で入手可能である。
これらのうち、優れた透明性を発現するためには有機溶剤に分散したコロイド状無機酸化物を無機酸化物粒子として利用することが好ましい。有機溶剤に分散したコロイド状無機酸化物としては、水酸基(以下、OH基と略記することがある。)を有する有機溶媒(メタノール及びイソプロパノール等)及びケトン基を有する有機溶媒(メチルイソブチルケトン及びメチルエチルケトン等)に分散したオルガノシリカゾルを用いることが好ましい。これらのオルガノシリカゾルは市場から入手することも出来、市販品としては、IPA−ST(IPA分散オルガノシリカゾル、日産化学社製)、MEK−ST(MEK分散オルガノシリカゾル、日産化学社製)及びMIBK−ST(MIBK分散オルガノシリカゾル、日産化学社製)等がある。また、これらのオリガノシリカゾルの有機溶媒を他のOH基を有する有機溶媒(例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル)に置換したゾルを使用することもできる。
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる有機無機複合フィラー(C)は、無機酸化物(A)と1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)と炭素数1〜4のアルコキシ基を2つ以上有するシリコンアルコキシド(a)とを反応させてなる有機無機複合フィラーを含み、前記反応に用いる前記(b)と前記(a)との重量比率が1:6〜1:1である活性エネルギー線硬化性組成物。である。
【0011】
シリコンアルコキシド(a)同士が縮合してなる数は、2〜10個であり、延伸性の観点から好ましくは2〜5個である。
【0012】
本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイルあるいはアクリロイルを意味する。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、メタクリルあるいはアクリルを意味する。
【0013】
炭素数1〜4のアルコキシ基を2つ以上有するシリコンアルコキシド(a)は、炭素数1〜4のアルコキシ基を2つ以上有するシリコンアルコキシドである。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等が挙げられる。
シリコンアルコキシド(a)としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン及びテトラプロポキシシラン等が挙げられる。
反応性の観点から好ましくはテトラエトキシシラン及びテトラメトキシシランであり、更に好ましくはテトラエトキシシランである。
【0014】
前記1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)が有する前記活性水素基としては、水酸基、アミノ基及びチオール基等が挙げられる。
これらの内、反応性の観点から好ましくは水酸基及びアミノ基であり、更に好ましくは水酸基である。
【0015】
1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)のうち、1つの水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b1)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート及び2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)のうち、1つのアミノ基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b2)としては、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸−N−プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−エチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N−フェニルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸−N−シクロヘキシルアミノエチル等が挙げられる。
【0017】
1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)のうち、1つのチオール基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b3)としては、N−(2−メルカプトエチル)アクリルアミド、N−(2−メルカプト−1−カルボキシエチル)アクリルアミド、N−(2−メルカプトエチル)メタクリルアミド、N−(4−メルカプトフェニル)アクリルアミド、N−(7−メルカプトナフチル)アクリルアミド、マレイン酸モノ2−メルカプトエチルアミド、(メタ)アクリル酸2−メルカプトエチル及び(メタ)アクリル酸2−メルカプト−1−カルボキシエチル等が挙げられる。
【0018】
1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)のうち分散性及び耐擦傷性の観点から好ましくは1つの水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b1)であり、更に好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加物、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートであり、更に好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加物及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートである。
【0019】
有機無機複合フィラー(C)は、無機酸化物(A)、シリコンアルコキシド(a)及び1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)とを反応させて得ることができる。
反応に用いるシリコンアルコキシド(a)と無機酸化物(A)との重量比は好ましくは3:1〜10:1であり、更に好ましくは4:1〜8:1である。
単量体(b)シリコンアルコキシド(a)との重量比は好ましくは1:6〜1:1であり、更に好ましくは1:5〜1:1である。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる有機無機複合フィラー(C)の重量割合は、耐擦傷等の観点から、活性エネルギー線硬化性組成物の合計に基づいて好ましくは2重量%〜50重量%であり、更に好ましくは5重量%〜30重量%である。
【0021】
有機無機複合フィラー(C)は、炭素数1〜4のアルコキシ基を2つ以上有するシリコンアルコキシ(a)と、無機酸化物(A)の表面に存在する水酸基とをカップリング反応させ、更に残存するアルコキシ基に対してシリコンアルコキシド(a)を脱水縮合反応させる。その後、更に1つの活性水素基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b)を付加させることにより得ることが出来る。
そして例えば、イソプロピルアルコール中に30重量%の濃度で一次粒子径10nmのコロイダルシリカを分散したコロイドシリカゾル中に、前記の好ましい割合の前記シリコンアルコキシド(a)を溶解し、60〜70℃で0.5〜5時間撹拌してコロイダルシリカ表面に存在する水酸基と前記シリコンアルコキシド(a)とをカップリング反応しコロイダルシリカと前記シリコンアルコキシド(a)との反応物が得られる。さらに本反応物に対して前記の好ましい割合の単量体(b)を加えて50〜80℃で2時間撹拌反応することで残存するアルコキシドと単量体(b)の活性水素基が脱水縮合することで有機無機複合フィラー(C)を得ることができる。このとき、反応に用いる有機溶媒を留去する工程を行ってもよい。
有機無機複合フィラー(C)が、無機酸化物(A)及び単量体(b)とシリコンアルコキシド(a)との反応物である(無機酸化物(A)と単量体(b)とがシリコンアルコキシド(a)を介して結合していること)ことは、反応物をTG−DTA及び熱分解GC−MSを用いて分析することで確認することが出来る。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、ポリウレタン(メタ)アクリレート(D)、ラジカル重合性二重結合含有(メタ)アクリル重合体(E)、ポリエステル(メタ)アクリレート(F)及びエポキシ(メタ)アクリレート(G)からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有していてもよい。硬化性組成物の延伸性、耐擦傷性の観点からポリウレタン(メタ)アクリレート(D)を含有することが好ましい。
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含有することができるポリウレタン(メタ)アクリレート(D)としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とウレタン基を有する単量体であり、有機ポリイソシアネート(c)、多価アルコール(d)及び水酸基を有する(メタ)アクリレート(e)を公知の方法(特開2016−20489号公報等に記載の方法)で反応させることにより得られる反応物を用いることができる。
【0024】
有機ポリイソシアネート(c)としては、炭素数4〜20の脂肪族ポリイソシアネート(c1)、炭素数6〜17の脂環式ポリイソシアネート(c2)、炭素数10〜17の芳香脂肪族ポリイソシアネート(c3)、炭素数8〜22の芳香族ポリイソシアネート(c4)等が挙げられる。
炭素数4〜20の脂肪族ポリイソシアネート(c1)としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
炭素数6〜17の脂環式ポリイソシアネート(c2)としては、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシネート等が挙げられる。
炭素数10〜17の芳香脂肪族ポリイソシアネート(c3)としては、m−又はp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
炭素数8〜22の芳香族ポリイソシアネート(c4)としては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,5−ナフタレンジイソシアネート及び4,4’、4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
多価アルコール(d)としては、炭素数2〜20の脂肪族多価アルコール(d1)、炭素数6〜20の脂環式多価アルコール(d2)、炭素数8〜16の芳香脂肪族多価アルコール(d3)、炭素数6〜15の芳香族多価アルコール(d4)及びこれらのアルコールに炭素数2〜8のアルキレンオキシドをブロック状及び/又はランダム状に付加したアルコール(d5)等が挙げられる。
【0026】
炭素数2〜20の脂肪族多価アルコール(d1)としては、炭素数2〜12の鎖状脂肪族2価アルコール[直鎖ジオール(エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−ドデカンジオール等)、及び分岐ジオール(1,2−、1,3−又は2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等)]、炭素数5〜20の4〜8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等)、糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)]等が挙げられる。
【0027】
炭素数6〜20の脂環式多価アルコール(d2)としては、インデン、ナフタレン、アズレン、アントラセン等をヒドロキシアルキル化した化合物が挙げられ、炭素数6〜20の脂環式2価アルコール{ビシクロ[5,3,0]デカンジメタノール、ビシクロ[4,4,0]デカンジメタノール、ビシクロ[4,3,0]ノナンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール(1,3−ジヒドロキシトリシクロ[3,3,1,13,7]デカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、イソソルバイド、水添ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール及び1,2−シクロヘキサンジメタノール}及び炭素数3〜20の3価アルコール[1,3,5−シクロヘキサントリオール等]等が挙げられる。
脂環式多価アルコール(d2)のうち、硬度、透明性、耐候性及び活性エネルギー線での硬化性の観点から、好ましくはトリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール及び1,2−シクロヘキサンジメタノールである。
【0028】
炭素数8〜16の芳香脂肪族多価アルコール(d3)としては、ジメチロールフェノール等が挙げられる。
【0029】
炭素数6〜15の芳香族多価アルコール(d4)としては、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等が挙げられる。
【0030】
アルコール(d5)において付加する炭素数2〜8のアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、1,2−又は1,3−プロピレンオキシド、1,2−、2,3−又は1,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン及びスチレンオキシド等が挙げられる。
炭素数2〜12の脂肪族多価アルコール(d1)、炭素数6〜20の脂環式多価アルコール(d2)、炭素数7〜16の芳香脂肪族多価アルコール(d3)又は炭素数6〜15の芳香族多価アルコール(d4)1モルへ付加する炭素数2〜8のアルキレンオキシドの付加モル数は、相溶性の観点から1〜400モルであることが好ましい。
【0031】
多価アルコール(d)としては、前記(d1)〜(d5)の内1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
水酸基を有する(メタ)アクリレート(e)としては、前記の1つの水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する単量体(b1)と同じもの及び2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、得られるポリウレタン(メタ)アクリレート(D)の水酸基価が高くなる点で、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルアクリレートが好ましい。ポリウレタン(メタ)アクリレート(D)の水酸基価が高いと活性エネルギー線硬化性組成物の水酸基も高くなり、有機無機複合フィラー(C)に対する分散能が向上するため好ましい。
【0033】
ポリウレタン(メタ)アクリレート(D)は市場から入手できるものを用いても良く、市販品としては、日本合成化学工業社製(商品名:柴光)UV−1700B(重量平均分子量:2,000、官能基数:10)、UV−6300B(重量平均分子量:3,700、官能基数:7)、UV−7550B(重量平均分子量:2,400、官能基数:3)及びUV−7600B(重量平均分子量:1,400、官能基数:6)等が挙げられる。
【0034】
ポリウレタン(メタ)アクリレート(D)の重量平均分子量は、延伸性及び耐擦傷性の観点から好ましくは1,000〜20,000であり、更に好ましくは2,000〜10,000である。
【0035】
本発明における数平均分子量測定は、HLC−8320GPC(東ソー(株)製)を使用し、THF溶媒、TSK標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を基準物質として、測定温度:40℃、カラム:Alliance(ウォーターズ製)、検出装置:屈折率検出器で測定した。また、解析ソフトとしてGPCワークステーションEcoSEC−WS(東ソー(株)製)を使用した。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含有することができるラジカル重合性二重結合含有(メタ)アクリル重合体(E)は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含む単量体組成物の重合体から構成されたラジカル重合性二重結合を有する重合体である。
(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含む単量体組成物を構成するモノマーとして(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、窒素含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドモノマー及びグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ラジカル重合性二重結合含有(メタ)アクリル重合体(E)は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含む単量体組成物の重合体の分子鎖の途中、末端又はその両方にラジカル重合性二重結合を有する化合物を公知の方法で付加することで得られる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、前記の水酸基を有する(メタ)アクリレート(e)と同様の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
窒素含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリルアミドモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
前記の(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、窒素含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドモノマー及びグリシジル(メタ)アクリレートは1種のみを用いても2種以上を混合して用いてもよく、更に他のエチレン性不飽和単量体(ビニルエーテル及びビニルエステル等)を併用してもよい。
【0043】
ラジカル重合性二重結合含有(メタ)アクリル重合体(E)としては市場から入手できるものを用いることができ、市販品としては、8KX−078(重量平均分子量:約40,000、二重結合等量:3)及び8KX−089(重量平均分子量:約100,000、二重結合等量:930)(大成ファインケミカル(株)社製)等が挙げられる。
【0044】
ラジカル重合性二重結合含有(メタ)アクリル重合体(E)の重量平均分子量は、延伸性及び耐薬品性の観点から好ましくは10,000〜200,000であり、更に好ましくは50,000〜150,000である。
【0045】
ポリエステル(メタ)アクリレート(F)としては、多価カルボン酸、多価アルコール及び分子内に必ず1個以上の(メタ)アクリロイル基と少なくとも水酸基又はカルボキシル基を含有する化合物とのエステル化により得られる化合物が挙げられ、2個以上のエステル結合と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステルアクリレートが挙げられる。
【0046】
上記の多価カルボン酸としては、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸、及びセバシン酸等)、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、及びグルタコン酸等)、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸等)、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、及びピロメリット酸等)及び炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)等が挙げられる。
【0047】
上記ポリオールとしては、ポリウレタン(メタ)アクリレート(D)において例示した多価アルコール(d)と同じものを用いることができる。
分子内に必ず1個以上の(メタ)アクリロイル基と少なくとも水酸基又はカルボキシル基を含有する化合物としては、ポリウレタン(メタ)アクリレート(D)において例示した水酸基を有する(メタ)アクリレート(e)及び(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0048】
ポリエステル(メタ)アクリレート(F)としては市場から入手できるものを用いることができ、市販品としては、ダイセルオルテクス(株)社製EBECRYL450(重量平均分子量:1,600、官能基数:6)、EBECRYL800(重量平均分子量:810、官能基数:4)及びEBECRYL810(重量平均分子量:1,000、官能基数:4)等が挙げられる。
【0049】
ポリエステル(メタ)アクリレート(F)の重量平均分子量は、延伸性及び耐薬品性の観点から好ましくは1000〜20,000であり、更に好ましくは1500〜15,000である。
【0050】
エポキシ(メタ)アクリレート(G)は、エポキシ樹脂と(メタ)アクリレートとの反応生成物である。エポキシ(メタ)アクリレート(G)としては市場から入手できるものを用いることができ、市販品としては、ケーエスエム(株)社製 BAEA−100(官能基数:2)、BAEM−100(官能基数:2)、BAEM−50(官能基数:2)及びBFEA−50(官能基数:2)等が挙げられる。
【0051】
エポキシ(メタ)アクリレート(G)の数平均分子量は、延伸性及び耐薬品性の観点から好ましくは1,000〜20,000であり、更に好ましくは2,000〜10,000である。
【0052】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるポリウレタン(メタ)アクリレート(D)、ラジカル重合性二重結合含有(メタ)アクリル重合体(E)、ポリエステル(メタ)アクリレート(F)及びエポキシ(メタ)アクリレート(G)の合計重量割合は、延伸性等の観点から、硬化性組成物の合計に基づいて好ましくは30重量%〜90重量%であり、更に好ましくは40重量%〜80重量%である。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、更に反応性希釈剤(H)を含有していてもよい。
反応性希釈剤(H)としては、後述の光重合開始剤(I)によってラジカル重合反応を開始する低分子化合物であれば特に限定されない。好ましい反応性希釈剤(H)としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、長鎖脂肪族アクリレート、アリルアクレート、シクロヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン及びテトラクロロテレフタル酸ジメチル等が例示される。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
耐薬品性の観点から好ましくはイソボルニルアクリレート、テトラクロロテレフタル酸ジメチル及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、であり、更に好ましくはイソボルニルアクリレート及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレートである。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる反応性希釈剤(H)の重量割合は、耐擦傷性等の観点から、硬化性組成物の合計に基づいて好ましくは5重量%〜40重量%であり、更に好ましくは10重量%〜30重量%である。
【0055】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、更に光重合開始剤(I)を含有していてもよい。
光重合開始剤(I)としては、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら光重合開始剤のうち、硬化性の観点から好ましくは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、であり、更に好ましくは2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドである。
【0056】
組成物中における光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物の合計重量に対し、硬化性の観点から好ましくは0.5〜10重量%であり、更に好ましくは1〜7重量%である。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、更に溶剤(J)を含有していてもよい。
溶剤(J)としては、活性水素基を有しない溶剤であれば何ら制限は無く、単独でも、複数の溶媒を混合しても良い。具体的にはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、セロソルブ、酢酸エチル及び酢酸ブチル等が挙げられる。
樹脂の溶解性の観点から好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びメチルエチルケトンであり、更に好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0058】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる溶剤(J)の重量割合は、塗工性等の観点から、有機無機複合フィラー(C)並びに必要に応じて用いる(D)、(E)、(F)、(G)、(H)及び(I)の合計重量に基づいて好ましくは100重量%〜500重量%であり、更に好ましくは200重量%〜400重量%である。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、前記有機無機複合フィラー(C)、必要により用いるポリウレタン(メタ)アクリレート(D)、ラジカル重合性二重結合含有(メタ)アクリル重合体(E)、ポリエステル(メタ)アクリレート(F)及びエポキシ(メタ)アクリレート(G)、必要による用いる反応性希釈剤(H)、必要により用いる光重合開始剤(I)並びに必要により用いる溶剤(J)を公知の混合機で均一に混合することで得ることができる。
【0060】
本発明の硬化物は、前記の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物であり、前記の活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギーを照射すること反応し、硬化して得られるものが含まれる。
【0061】
本発明の硬化物は、活性エネルギー線硬化性組成物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより得ることができ、これによって本発明の硬化物である硬化膜を有するハードコート被覆物等を得ることができる。
塗工には、公知の塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター及びブレードコーター等]が使用できる。
塗工膜厚は、硬化乾燥後の好ましい膜厚として、0.5〜300μmである。乾燥性、硬化性の観点から好ましい上限は250μmであり、耐摩耗性、耐溶剤性及び耐汚染性の観点から好ましい下限は1μmである。
【0062】
上記の基材としては、メチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリトリアセチルセルロース及びポリシクロオレフィン等の樹脂からなるものが挙げられる。
【0063】
活性エネルギー線硬化性組成物が溶剤を含む場合には、塗工後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、公知の熱風乾燥機(ドライヤー等)等を用いる方法等が挙げられる。
熱風乾燥機による乾燥温度は、10〜200℃が好ましく、なかでも塗膜の平滑性及び外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0064】
硬化に用いる活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化の観点から好ましいのは紫外線及び電子線である。
【0065】
活性エネルギー線硬化性組成物を紫外線により硬化させる場合は、公知の紫外線照射装置[例えば、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]を使用できる。
紫外線照射装置に使用するランプとしては、高圧水銀灯及びメタルハライドランプ等が挙げられる。紫外線の照射量は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000mJ/cm、更に好ましくは100〜5,000mJ/cmである。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
<製造例1>
撹拌機、冷却管、吹込み管及び温度計を備えた反応容器に、シリカ粒子[商品名:コロイダルシリカIPA−ST(コロイダルシリカ濃度30重量%のイソプロピルアルコール分散液)、日産化学工業(株)製]30重量部及びシリコンアルコキシドであるテトラエトキシシラン(a−1)[商品名:TEOS、東京化成工業(株)製]35重量部を仕込み30分間撹拌した後、ギ酸2.36重量部を仕込み、65℃で2時間反応させた。反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間トッピングし、シリカとシリコンアルコキシドとの脱水縮合物による分散液を得た。
更に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加物(b−1)[商品名:FA−4DT、ダイセル化学工業(株)製]を20重量部仕込み、30分間撹拌した後、パラトルエンスルホン酸2.36重量部を仕込み、65℃で2時間反応させた。反応容器を減圧にし、空気を吹き込みながら、70℃で2時間縮合反応をさせ、シリカ及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加物とシリコンアルコキシドとの反応物である有機無機複合フィラー(C−1)の分散液を得た。
得られた(C−1)を70℃で2時間トッピングした後の溶液からイソプロピルアルコールを留去し、残留した固形分を熱分解GC−MSにより分析し、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加物がシリコンアルコキシドの重縮合物を介してシリカ粒子に結合した有機無機複合フィラーであることを確認した。得られた有機無機複合フィラー(C−1)は、シリコンアルコキシド(a)同士が3個縮合してなるシロキサン結合を有していた。
【0068】
<製造例2>
製造例1において、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加物20重量部に代えて、ヒドロキシエチルアクリルアミド[商品名:HEAA、KJケミカルズ(株)性]20重量部とした以外は製造例1と同様にして、ヒドロキシエチルアクリルアミドがシリコンアルコキシドの重縮合物を介してシリカ粒子に結合した有機無機複合フィラー(C−2)を得た。
【0069】
<製造例3>
製造例2において、シリカ粒子30重量部に代えて、ジルコニア粒子[商品名:SZR−CMH(コロイダルジルコニア濃度30重量%のメタノール分散液)、堺化学工業(株)製]30重量部とした以外は製造例2と同様にして、ヒドロキシエチルアクリルアミドがシリコンアルコキシドの重縮合物を介してジルコニア粒子に結合した有機無機複合フィラー(C−3)を得た。
【0070】
<製造例3 ポリウレタンアクリレート製造例>
撹拌装置及び温度計を取り付けたガラス製の反応容器に、トリシクロデカンジメタノール[商品名:TCD alcohol DM、OXEA製]14.9重量部、シクロヘキサンジメタノールとヘキサンジオールのモル比が,1:1のポリカーボネートジオール[商品名:ETERNACOLL UM−90(1:1)、宇部興産(株)製]17.1重量部及びプロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート[商品名:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、三協化学(株)製]を35.0重量部仕込み、撹拌して均一溶液とした。次いで、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート[商品名:デスモジュールW、住化バイエルウレタン(株)製]30.3重量部、触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)の2−エチルヘキサン酸50重量%溶液[商品名:ネオスタンU−600、日東化成(株)製]を0.1重量部仕込み、撹拌して均一溶液とした後、80℃で6時間反応させた。
イソシアネート含有量が1.65%以下になったのを確認した後、酸素濃度を8体積%に調整した窒素と酸素の混合気体を液中に通気しながら、2−ヒドロキシエチルアクリレートを2.7重量部加え、75℃で更に反応を2時間行った。イソシアネート含有量が0.01%以下になったのを確認した後、60℃に冷却し、ポリウレタンアクリレート(D−1)を得た。(D−1)のMnは3,000であった。
【0071】
<実施例1>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、製造例1で得られた有機無機複合体(C−1)溶液を30.0重量部、製造例2で得られたウレタンアクリレート(D−1)を70.0重量部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(I−2)3.0重量部、イソボルニルアクリレート18重量部を加え、65℃で均一になるまで混合撹拌し、活性エネルギー線硬化性組成物(X−1)を得た。
【0072】
<実施例2〜6及び比較例1〜4>
表1に記載した部数(重量部)にしたがった以外は、実施例1と同様の操作を行い、各活性エネルギー線硬化性組成物(X−2)〜(X−6)及び(比X−1)〜(比X−4)を得た。
【0073】
【表1】
【0074】
なお、表1中で使用した原料は以下の通りである。
(C’−1):アルキルシランカップリング剤変性シリカ微粒子[商品名「コロイダルシリカMEK−ST」一次粒径10−15nm MEK40重量%溶液、日産化学工業(株)製]
(C’−2):アクリレート含有シランカップリング剤変性シリカ微粒子[商品名「MEK−AC−2140Z」一次粒径10−15nm MEK46重量%溶液、表面改質グレード(アクリルコンポジット用)日産化学工業(株)製]
(E−1):UV硬化型高分子量アクリレートポリマー(重量平均分子量:約100,000、二重結合等量:930)[商品名「8KX−089」大成ファインケミカル(株)製]
(H−1)イソボルニルアクリレート:[商品名「ライトアクリレートIBX−A」、共栄社化学(株)製]
(H−2)トリシクロデカンジメタノールジアクリレート:[商品名「A−DCP」、新中村工業(株)製]
(I−1):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名「ルシリンTPO」、BASF(株)製]
(I−2):2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン[商品名「イルガキュア907」、BASF(株)製]
(I−3):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、BASF(株)製]
(J−1):2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(I−2)[商品名「イルガキュア907」、BASF社製]
【0075】
以下に、ヘイズ、全光線透過率、鉛筆硬度の性能評価の方法を説明する。
【0076】
<硬化フィルム作成法>
活性エネルギー線硬化性組成物(X−1)〜(X−4)及び(比X−1)〜(比X−4)をそれぞれディスパーザーを用いてメチルエチルケトンで希釈し、不揮発分30重量%に調製する。
厚さ100μmのPETフィルム[商品名「コスモシャインA4300」、東洋紡績(株)製]基材の片面にバーコーターを用い、乾燥硬化後の膜厚が5μmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製。以下同じ。]により、紫外線を300mJ/cm照射し、基材フィルム表面に硬化膜を有するフィルムを作成した。
得られたフィルムについて下記の方法で性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0077】
[ヘイズの測定]
JIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−gard
dual」BYK gardner(株)製]を用いてヘイズを測定した。
【0078】
[全光線透過率(フィルムの透明性)の測定]
前記テストピースを、JIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−garddual」、BYK gardner(株)製]を用いて全光線透過率(%)を測定した。
【0079】
[耐擦傷性の測定]
作成した硬化膜について、スチールウール[商品名「BON STAR No.0000」日本スチールウール(株)製]に1N/cmとなるように荷重をかけ、硬化膜面を学振摩耗試験機で10往復擦り、直後に測定したヘイズ値(H2)と試験前に測定したヘイズ値(H1)との差を求めた。なおヘイズ値は上記の全光透過率測定装置にて測定した。
【0080】
[延伸性の測定]
前記テストピースをオートグラフにて130℃、10mm/minの速度で引張り、破断した時点での伸びを測定した。
【0081】
[耐薬品性の測定]
前記テストピース上にSPF45の日焼け止めクリームを塗布し、80℃4時間後クリームを拭き取った後の状態を観察した。
1:膜剥がれ発生
2:膜が白濁
3:膜にやや跡残りあり
4:膜変化なし
【0082】
表1の結果から、本発明の実施例1〜6の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて得られた硬化膜は、無機酸化物の微粒子を多量に含有しても透明性が損なわれず、かつ耐擦傷性に優れた効果を与えることがわかる。また無機酸化物に直接反応性基が結合されているため、耐薬品性にも優れる。
一方、反応性基を有さない無機酸化物を使用している比較例1及び比較例3は実施例と比較して耐擦傷性及び耐薬品性が劣る。また、反応性基を粒子表面に付与した無機酸化物を使用した比較例2及び4は耐擦傷性及び延伸性に劣る。
結果的に、本発明の方法で製造していない市販の変性シリカ微粒子では、透明性、耐擦傷性及び耐薬品性を両立することができない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて得られるコーティング膜を有するフィルムは、延伸性、耐擦傷性、及び耐薬品性に優れているためインモールド工法による加飾フィルム用として自動車内装材等の用途に最適である。