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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-148045(P2019-148045A)
(43)【公開日】2019年9月5日
(54)【発明の名称】紡績機
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/22 20060101AFI20190809BHJP
   D01H 5/82 20060101ALI20190809BHJP
   D01H 5/86 20060101ALI20190809BHJP
   F16D 3/58 20060101ALI20190809BHJP
【FI】
   D01H1/22
   D01H5/82
   D01H5/86 A
   F16D3/58 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-35243(P2018-35243)
(22)【出願日】2018年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】森 秀茂
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA01
4L056BA05
4L056BB01
4L056BB04
4L056BC02
4L056BC23
4L056BC24
4L056CA06
4L056DA28
(57)【要約】
【課題】ドラフト速度の高速化及び糸品質の向上が可能な紡績機を提供する。
【解決手段】紡績機1は、繊維束Sを延伸するフロントボトムローラ17aを有する複数のドラフト装置6と、ドラフト装置6のフロントボトムローラ17aを構成する複数のボトムローラ軸40と、複数のボトムローラ軸40における一のボトムローラ軸40Aと当該一のボトムローラ軸40に隣接する他のボトムローラ軸40Bとを連結するローラ軸カップリング50と、を備える。ローラ軸カップリング50は、一のボトムローラ軸40Aの端部が挿入された第1被挿入部51と、他のボトムローラ軸40Bの端部が挿入された第2被挿入部52と、第1被挿入部51と第2被挿入部52との間に設けられた第1板バネ部53と、を含む。第1被挿入部51と第2被挿入部52とは、第1板バネ部53を介して一体的に形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束を延伸するローラを有する複数のドラフト装置と、
前記ドラフト装置の前記ローラを構成する複数のローラ軸と、
複数の前記ローラ軸における一のローラ軸と当該一のローラ軸に隣接する他のローラ軸とを連結する第1カップリングと、を備え、
前記第1カップリングは、
前記一のローラ軸の端部が挿入された第1被挿入部と、
前記他のローラ軸の端部が挿入された第2被挿入部と、
前記第1被挿入部と前記第2被挿入部との間に設けられた第1板バネ部と、を含み、
前記第1被挿入部と前記第2被挿入部とは、前記第1板バネ部を介して一体的に形成されている、紡績機。
【請求項2】
前記ドラフト装置でドラフトされた繊維束に旋回空気流によって撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置を備える、請求項1に記載の紡績機。
【請求項3】
前記第1カップリングを収容する収容空間を有するハウジングを備える、請求項1又は2に記載の紡績機。
【請求項4】
前記第1カップリングは、前記収容空間において、前記ローラ軸の軸方向の中央に対して当該軸方向にオフセットした状態で配置されている、請求項3に記載の紡績機。
【請求項5】
前記ローラ軸の軸方向において、前記第2被挿入部と前記収容空間の内面との間には、前記第1カップリングを当該内面側へ所定距離移動可能とする隙間が形成され、
前記所定距離は、前記一のローラ軸の端部のうち前記第1被挿入部に挿入された部分の軸長以上の距離である、請求項3又は4に記載の紡績機。
【請求項6】
前記第1カップリングは、
前記第1板バネ部と前記第2被挿入部との間に設けられた第1スペーサと、
前記第1スペーサと前記第2被挿入部との間に設けられた第2板バネ部と、を含み、
前記第1被挿入部と前記第2被挿入部とは、前記第1板バネ部、前記第1スペーサ及び前記第2板バネ部を介して一体的に形成されている、請求項1〜5の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項7】
前記ローラ軸を回転駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動軸と、前記駆動軸に隣接する前記ローラ軸又は当該ローラ軸に連結された中間軸と、を連結する第2カップリングと、を備え、
前記第2カップリングは、
前記駆動軸の端部が挿入された第3被挿入部と、
前記駆動軸に隣接するローラ軸の端部又は前記中間軸の端部が挿入された第4被挿入部と、
前記第3被挿入部と前記第4被挿入部との間に設けられた第3板バネ部と、
前記第3板バネ部と前記第4被挿入部との間に設けられた第2スペーサと、
前記第2スペーサと前記第4被挿入部との間に設けられた第4板バネ部と、を有し、
前記第3被挿入部と前記第4被挿入部とは、前記第3板バネ部、前記第2スペーサ及び前記第4板バネ部を介して一体的に形成され、
前記ローラ軸の軸方向において、前記第2スペーサは、前記第1スペーサよりも長い、請求項6に記載の紡績機。
【請求項8】
前記第1被挿入部は、挿入された前記一のローラ軸の端部を着脱可能に固定する第1締結具を含み、
前記第2被挿入部は、挿入された前記他のローラ軸の端部を着脱可能に固定する第2締結具を含む、請求項1〜7の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項9】
前記ローラは、フロントローラである、請求項1〜8の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項10】
前記ローラ軸の単位時間当たりの回転数は、2000rpm以上である、請求項1〜9の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項11】
前記第1カップリングを複数備え、
複数の前記第1カップリングは、複数の前記ローラ軸の全てにおける隣接する一対の前記ローラ軸を連結し、
複数の前記第1カップリングで連結された当該複数のローラ軸は、同期回転するラインシャフトを構成する、請求項1〜10の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項12】
前記ローラは、ボトムローラであり、表面がゴムで形成されたトップローラに接触した状態で回転する、請求項1〜11の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項13】
前記一のローラ軸の端部及び前記他のローラ軸の端部の何れかが挿入され、前記第1カップリングで前記一のローラ軸と前記他のローラ軸とが連結された状態において当該第1カップリングに当接する位置決め用筒状部品を備える、請求項1〜12の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項14】
前記ローラ軸を回転支持するベアリングを備え、
前記ベアリングの外輪と内輪との間の前記第1カップリング側は、シール部材でシールされている、請求項1〜13の何れか一項に記載の紡績機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、複数の紡績ユニットから構成される紡績機が知られている。このような紡績機は、ドラフト装置のボトムローラを構成するボトムローラ軸を複数備えている。隣接する一対のボトムローラ軸の各端部には、ギア部材が固定されている。各ギア部材は、内歯車状に形成された可撓性弾性材からなるカップリングを介して連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−15784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記紡績機では、前述のように、隣接する一対のボトムローラ軸がカップリングを介して連結されているものの、当該一対のローラ軸間の偏角等に十分に対応できず、ドラフト速度の高速化及び糸品質の向上を図る上で未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、ドラフト速度の高速化及び糸品質の向上が可能な紡績機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る紡績機は、繊維束を延伸するローラを有する複数のドラフト装置と、ドラフト装置のローラを構成する複数のローラ軸と、複数のローラ軸における一のローラ軸と当該一のローラ軸に隣接する他のローラ軸とを連結する第1カップリングと、を備え、第1カップリングは、一のローラ軸の端部が挿入された第1被挿入部と、他のローラ軸の端部が挿入された第2被挿入部と、第1被挿入部と第2被挿入部との間に設けられた第1板バネ部と、を含み、第1被挿入部と第2被挿入部とは、第1板バネ部を介して一体的に形成されている。
【0007】
この紡績機では、一のローラ軸と他のローラ軸とを連結する第1カップリングが、第1被挿入部、第2被挿入部及び第1板バネ部を有する。一のローラ軸と他のローラ軸との間の偏角を当該第1カップリングにより十分に吸収できる。また、第1被挿入部と第2被挿入部とが一体的に形成されていることから、一のローラ軸と他のローラ軸との間において応答性のよい動力伝達が実現可能である。したがって、ドラフト速度の高速化及び糸品質の向上が可能となる。
【0008】
本発明に係る紡績機は、ドラフト装置でドラフトされた繊維束に旋回空気流によって撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置を備えていてもよい。このような紡績機では、ドラフト装置のローラ軸が高速回転することから、第1カップリングを用いることにより、ドラフト速度が高速である場合でも糸品質を向上することができる。
【0009】
本発明に係る紡績機は、第1カップリングを収容する収容空間を有するハウジングを備えていてもよい。この構成によれば、ハウジングの収容空間を利用して、一のローラ軸と他のローラ軸とを第1カップリングにより連結できる。
【0010】
本発明に係る紡績機では、第1カップリングは、収容空間において、ローラ軸の軸方向の中央に対して当該軸方向にオフセットした状態で配置されていてもよい。この構成によれば、例えばオフセットした状態と反対方向に第1カップリングを少なくとも移動させることでき、第1カップリング及びローラ軸の少なくとも何れかを容易に着脱することが可能となる。
【0011】
本発明に係る紡績機では、ローラ軸の軸方向において、第2被挿入部と収容空間の内面との間には、第1カップリングを当該内面側へ所定距離移動可能とする隙間が形成され、所定距離は、一のローラ軸の端部のうち第1被挿入部に挿入された部分の軸長以上の距離であってもよい。この構成によれば、収容空間内において、一のローラ軸の端部が第1カップリングから外れるようにローラ軸の軸方向(以下、単に「軸方向」という)へ第1カップリングを移動させることができる。第1カップリング及びローラ軸の少なくとも何れかを容易に着脱することが可能となる。
【0012】
本発明に係る紡績機では、第1カップリングは、第1板バネ部と第2被挿入部との間に設けられた第1スペーサと、第1スペーサと第2被挿入部との間に設けられた第2板バネ部と、を含み、第1被挿入部と第2被挿入部とは、第1板バネ部、第1スペーサ及び第2板バネ部を介して一体的に形成されていてもよい。この構成によれば、一のローラ軸と他のローラ軸との間の偏角及び偏芯を第1カップリングにより十分に吸収できる。
【0013】
本発明に係る紡績機は、ローラ軸を回転駆動する駆動部と、駆動部の駆動軸と、駆動軸に隣接するローラ軸又は当該ローラ軸に連結された中間軸と、を連結する第2カップリングと、を備え、第2カップリングは、駆動軸の端部が挿入された第3被挿入部と、駆動軸に隣接するローラ軸又は中間軸の端部が挿入された第4被挿入部と、第3被挿入部と第4被挿入部との間に設けられた第3板バネ部と、第3板バネ部と第4被挿入部との間に設けられた第2スペーサと、第2スペーサと第4被挿入部との間に設けられた第4板バネ部と、を有し、第3被挿入部と第4被挿入部とは、第3板バネ部、第2スペーサ及び第4板バネ部を介して一体的に形成され、ローラ軸の軸方向において、第2スペーサは、第1スペーサよりも長くてもよい。
【0014】
この構成によれば、駆動軸とローラ軸又は中間軸との間の偏角及び偏芯を、第2カップリングにより十分に吸収できる。第3被挿入部と第4被挿入部とが一体的に形成されており、駆動軸とローラ軸又は中間軸との間において応答性のよい動力伝達が実現可能である。さらに、駆動軸に加わる負荷が大きいことから、ローラ軸の軸方向において第2スペーサを第1スペーサよりも長くすることにより、当該大きい負荷に応じた大きな偏芯を第2カップリングにより吸収できる。
【0015】
本発明に係る紡績機では、第1被挿入部は、挿入された一のローラ軸の端部を着脱可能に固定する第1締結具を含み、第2被挿入部は、挿入された他のローラ軸の端部を着脱可能に固定する第2締結具を含んでいてもよい。この構成によれば、第1締結具及び第2締結具の締結及び当該締結の解除により、第1カップリング及びローラ軸の少なくとも何れかを容易に着脱することが可能となる。
【0016】
本発明に係る紡績機では、ローラは、フロントローラであってもよい。この場合、ドラフト装置においてローラ軸が最も高速で回転することから、第1カップリングを用いることにより、ドラフト速度が高速である場合でも糸品質を向上することができる。
【0017】
本発明に係る紡績機では、ローラ軸の単位時間当たりの回転数は、2000rpm以上であってもよい。2000rpm以上の回転数でローラ軸が高速回転することから、第1カップリングを用いることにより、ドラフト速度が高速である場合でも糸品質を向上することができる。
【0018】
本発明に係る紡績機は、第1カップリングを複数備え、複数の第1カップリングは、複数のローラ軸の全てにおける隣接する一対のローラ軸を連結し、複数の第1カップリングで連結された当該複数のローラ軸は、同期回転するラインシャフトを構成してもよい。この場合、複数のローラ軸間における偏角は顕著であることから、第1カップリングを用いることにより、ドラフト速度が高速化しても、糸品質を向上することができる。
【0019】
本発明に係る紡績機では、ローラは、ボトムローラであり、表面がゴムで形成されたトップローラに接触した状態で回転してもよい。トップローラのバッフィング精度が低い場合であっても、ボトムローラを構成するローラ軸間の偏角は第1カップリングにより十分に吸収されることから、当該低いバッフィング精度による糸品質への悪影響(ドラフト斑)を軽減することができる。
【0020】
本発明に係る紡績機は、一のローラ軸の端部及び他のローラ軸の端部の何れかが挿入され、第1カップリングで一のローラ軸と他のローラ軸とが連結された状態において当該第1カップリングに当接する位置決め用筒状部品を備えていてもよい。この構成によれば、第1カップリングの取付けの際、第1カップリングを位置決め用筒状部品に当接することによって、軸方向における第1カップリングの位置決めが可能となる。
【0021】
本発明に係る紡績機は、ローラ軸を回転支持するベアリングを備え、ベアリングの外輪と内輪との間の第1カップリング側は、シール部材でシールされていてもよい。第1カップリングは潤滑剤が不要なドライ環境で使用されるところ、シール部材によってベアリングの潤滑剤が第1カップリング側へ漏れ出るのを防止でき、第1カップリングのドライ環境を維持できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ドラフト速度の高速化及び糸品質の向上が可能な紡績機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態に係る紡績機を示す正面図である。
図2図1の紡績ユニットを示す側面図である。
図3図1のボトムローラ軸の周辺構成を示す図である。
図4図3のローラ軸カップリングの周辺構成を示す図である。
図5図3のローラ軸カップリングの周辺構成を示す断面斜視図である。
図6図3のローラ軸カップリングを示す斜視図である。
図7図3のローラ軸カップリングの取外時を説明する図である。
図8図3の駆動軸カップリングの周辺構成を示す図である。
図9図3の駆動軸カップリングの周辺構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
図1に示されるように、一実施形態に係る紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、玉揚台車(図示省略)と、第一エンドフレーム4と、第二エンドフレーム5と、を備える。複数の紡績ユニット2は、一列に並設されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2で糸継動作を行う。玉揚台車は、ある紡績ユニット2でパッケージPが満巻になった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。
【0026】
第一エンドフレーム4には、紡績ユニット2で発生した風綿(繊維屑又は糸屑等)を回収する回収装置等が収容されている。第二エンドフレーム5には、紡績機1に供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して紡績機1の各部に空気を供給する空気供給部、及び紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。第二エンドフレーム5には、機台制御装置100と、表示画面102と、入力キー104と、が設けられている。機台制御装置100は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。表示画面102は、紡績ユニット2の設定内容及び状態の少なくとも何れかに関する情報等を表示することができる。作業者が入力キー104を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。なお、表示画面102をタッチパネルディスプレイとし、入力キー104の代わりにタッチパネルディスプレイを操作する構成としてもよい。
【0027】
図1及び図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、空気紡績装置7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置11と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備える。ユニットコントローラ10は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0028】
ドラフト装置6は、空気紡績装置7に供給される繊維束(スライバ)Sを延伸(ドラフト)する。ドラフト装置6は、紡績ユニット2が並設されているのに応じて、一列に並設されている。ドラフト装置6は、繊維束Sの走行方向において上流側から順に、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有する。
【0029】
バックローラ対14は、バックボトムローラ14a及びバックトップローラ14bを含む。バックボトムローラ14a及びバックトップローラ14bは、繊維束Sを延伸するローラであり、繊維束Sを走行させる走行経路(以下、単に「走行経路」という)を挟んで互いに対向する。サードローラ対15は、サードボトムローラ15a及びサードトップローラ15bを含む。サードボトムローラ15a及びサードトップローラ15bは、繊維束Sを延伸するローラであり、走行経路を挟んで互いに対向する。ミドルローラ対16は、ミドルボトムローラ16a及びミドルトップローラ16bを含む。ミドルボトムローラ16a及びミドルトップローラ16bは、繊維束Sを延伸するローラであり、走行経路を挟んで互いに対向する。フロントローラ対17は、フロントボトムローラ(ボトムローラ,フロントローラ,ローラ)17a及びフロントトップローラ(トップローラ)17bを含む。フロントボトムローラ17a及びフロントトップローラ17bは、繊維束Sを延伸するローラであり、走行経路を挟んで互いに対向する。
【0030】
バックボトムローラ14a及びサードボトムローラ15aは、紡績ユニット2毎に設けられた駆動モータにより回転させられる。ミドルボトムローラ16a及びフロントボトムローラ17aは、第二エンドフレーム5内の駆動モータにより回転させられる。第二エンドフレーム5内には、複数の紡績ユニット2のミドルボトムローラ16aを一斉に駆動する1つの駆動モータ及びフロントボトムローラ17aを一斉に駆動する駆動モータ80(後述)が設けられている。バックボトムローラ14a、サードボトムローラ15a、ミドルボトムローラ16a及びフロントボトムローラ17aは、下流側のローラほど速くなるように互いに異なる回転速度で回転させられる。ミドルボトムローラ16aに対しては、エプロンベルト18aが設けられている。ミドルトップローラ16bに対しては、エプロンベルト18bが設けられている。
【0031】
バックトップローラ14b、サードトップローラ15b、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bは、ドラフトクレードル(不図示)に回転可能に支持されている。バックトップローラ14b、サードトップローラ15b、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bは、その表面がゴムで形成されている。バックトップローラ14b、サードトップローラ15b、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bのそれぞれは、バックボトムローラ14a、サードボトムローラ15a、ミドルボトムローラ16a及びフロントボトムローラ17aのそれぞれに所定圧力で接触させられて従動回転させられる。つまり、バックボトムローラ14a、サードボトムローラ15a、ミドルボトムローラ16a及びフロントボトムローラ17aのそれぞれは、バックトップローラ14b、サードトップローラ15b、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bのそれぞれに接触した状態で回転する。
【0032】
図1及び図2に示されるように、空気紡績装置7は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。空気紡績装置7は、紡績時における繊維束F及び糸Yの走行方向におけるドラフト装置6の下流に配置されている。
【0033】
糸監視装置8は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8は、糸欠陥として、例えば、糸Yの糸切れ、糸Yの太さ異常、又は糸Yに含有されている異物を検出する。テンションセンサ9は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及びテンションセンサ9の少なくとも何れかの検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。
【0034】
糸貯留装置11は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置11は、空気紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能を有しており、空気紡績装置7から糸Yを引き出す引出装置を構成する。また、糸貯留装置11は、糸継台車3による糸継動作時等に空気紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置11よりも下流側の糸Yのテンションの変動が空気紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有する。ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
【0035】
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有する。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。第二エンドフレーム5に設けられた駆動モータ(図示省略)が、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム22を一斉に駆動する。トラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフト25に設けられている。第二エンドフレーム5の駆動モータがシャフト25を巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動することによって、トラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0036】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、糸継装置26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28と、を有する。サクションパイプ27は、支軸27aによって回動可能に支持されており、空気紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、支軸27bによって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。糸継装置26は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置26は、圧縮空気を用いるスプライサ、又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。
【0037】
次に、紡績機1の要部について、詳細に説明する。
【0038】
図3に示されるように、紡績機1は、ボトムローラ軸(ローラ軸)40、中間軸45、ローラ軸カップリング(第1カップリング)50、中間軸カップリング60、支持部70、駆動モータ(駆動部)80、及び、駆動軸カップリング(第2カップリング)90を備える。
【0039】
ボトムローラ軸40は、隣接する少なくとも2つ(本実施形態では2つ)のドラフト装置6におけるフロントボトムローラ17aを構成する(図3参照)。ボトムローラ軸40は、隣接する少なくとも2つのドラフト装置6毎に設けられている。ボトムローラ軸40は、紡績機1に複数設けられている。複数のボトムローラ軸40は、同軸に配置されている。複数のボトムローラ軸40は、ドラフト装置6が並設される方向(以下、単に「並設方向」ともいう)に沿って直線状に延びるように並べられている。ボトムローラ軸40は、断面円形の軸体である。例えばボトムローラ軸40の直径(縮径部でない部分の直径)は、32mmである。
【0040】
中間軸45は、ボトムローラ軸40と駆動モータ80の駆動軸81(後述)との間に介在されたシャフトである。中間軸45は、複数のボトムローラ軸40と同軸に配置されている。中間軸45は、断面円形の軸体である。
【0041】
ローラ軸カップリング50は、複数のボトムローラ軸40における、一のボトムローラ軸40Aと当該一のボトムローラ軸40Aに隣接する他のボトムローラ軸40Bとを連結する。なお、連結する一対のボトムローラ軸40について、一のボトムローラ軸40A及び他のボトムローラ軸40Bと称しているが、一のボトムローラ軸40Aと他のボトムローラ軸40Bとの構成は同じである。連結する一対のボトムローラ軸40のうちの何れか任意の一方が一のボトムローラ軸40Aであり、その他方が他のボトムローラ軸40Bである。
【0042】
複数のローラ軸カップリング50は、複数のボトムローラ軸40の全てにおける隣接する一対のボトムローラ軸40を連結する。これにより、複数のローラ軸カップリング50で連結された当該複数のボトムローラ軸40は、機台全長(全ての紡績ユニット2の並設方向の長さ)にわたり且つ同期回転するラインシャフトを構成する。中間軸カップリング60は、複数のボトムローラ軸40のうち最も端に位置するボトムローラ軸40と中間軸45とを連結する。
【0043】
支持部70は、ベアリング71を有し、ベアリング71を介してボトムローラ軸40の端部を回転可能に支持する。支持部70は、紡績機1に複数設けられている。複数の支持部70のうち並設方向における最も外側(第二エンドフレーム5に最も近い側)に位置する支持部70Eは、ベアリング71を介して、ボトムローラ軸40の端部と中間軸45の端部とを回転可能に支持する。複数の支持部70は、パイプ部材72を介して紡績機1のフレーム(不図示)に固定されている。
【0044】
図4及び図5に示されるように、支持部70は、収容空間Rを有するハウジング73を含む。支持部70E以外のハウジング73の収容空間Rは、一対のベアリング71とローラ軸カップリング50とを収容する。支持部70Eのハウジング73の収容空間Rは、一対のベアリング71と中間軸カップリング60とを収容する。
【0045】
一対のベアリング71は、並設方向における収容空間R内の両端部それぞれに設けられている。ベアリング71としては、ボールベアリングが用いられている。ベアリング71には、ボトムローラ軸40の端部が挿入されている。また、支持部70Eが有する一対のベアリング71の一方には、中間軸45の端部が挿入されている。支持部70E以外におけるハウジング73の収容空間Rでは、一対のベアリング71の間にローラ軸カップリング50が配置されている。支持部70Eにおけるハウジング73の収容空間Rでは、一対のベアリング71の間に中間軸カップリング60が配置されている。
【0046】
ベアリング71の外輪71xと内輪71yとの間におけるローラ軸カップリング50側(内側)は、円環板状の内側シール部材(シール部材)75でシールされている。内側シール部材75は、外輪71xと内輪71yとの間に嵌め込まれるように設けられている。ベアリング71の外輪71xと内輪71yとの間におけるローラ軸カップリング50側とは反対側(外側)は、円環板状の外側シール部材76でシールされている。外側シール部材76は、外輪71xと内輪71yとの間を外側から覆うように、ベアリング71の外側の端面に当接する。
【0047】
駆動モータ80は、ボトムローラ軸40を回転駆動する。駆動モータ80は、駆動軸81を有する。駆動軸81は、中間軸45と同軸に配置されている。駆動軸81は、断面円形の軸体である。駆動モータ80により回転駆動されたボトムローラ軸40の単位時間当たりの回転数は、2000rpm以上である。例えば、ボトムローラ軸40の単位時間当たりの回転数は、紡績機1が600m/minで紡績する場合、5800rpmである。ボトムローラ軸40の単位時間当たりの回転数は、紡績機1が400m/minで紡績する場合、3840rpmである。駆動軸カップリング90は、駆動軸81と中間軸45とを連結する。
【0048】
次に、ローラ軸カップリング50、中間軸カップリング60、及び駆動軸カップリング90について、具体的に説明する。
【0049】
カップリング50,60,90は、軸と軸を繋ぎ、動力を伝達する機械要素部品である。カップリング50,60,90は、連結する両軸間の誤差(ミスアラインメント)を許容する。カップリング50,60,90は、連結する一方の軸から他方の軸へ伝わる衝撃及び振動を吸収する。カップリング50,60,90は、連結する両軸間の少なくとも偏角を許容するフレキシブルカップリングである。本実施形態のカップリング50,60,90は、連結する両軸間の偏角及び偏芯を許容するフレキシブルカップリングである。カップリング50,60,90は、可撓性を有する。カップリング50,60,90は、グリス等の潤滑剤が不要なドライ環境で使用できる。
【0050】
図4図5及び図6に示されるように、ローラ軸カップリング50は、第1被挿入部51と、第2被挿入部52と、第1板バネ部53と、第1スペーサ54と、第2板バネ部55と、を含む。第1被挿入部51は、概略円筒状を呈し、ボトムローラ軸40の端部の外径に対応する内径を有する。第1被挿入部51は、ハブと称される部位である。第1被挿入部51内には、隣接する一対のボトムローラ軸40のうちのボトムローラ軸40Aの端部が挿入されている。第1被挿入部51は、挿入されたボトムローラ軸40Aの端部を着脱可能に固定するねじ(第1締結具)51Nを含む。第1被挿入部51は、軸方向から見て、C字形状に形成されており、当該C字形状の開口をねじ51Nが跨ぐように設けられている。ねじ51Nを締め付けることで、当該C字形状の開口ひいては第1被挿入部51の内径が狭まり、挿入されたボトムローラ軸40Aの端部がクランプされて固定される。
【0051】
第2被挿入部52は、第1被挿入部51と同形の概略円筒状を呈し、ボトムローラ軸40の端部の外径に対応する内径を有する。第2被挿入部52は、ハブと称される部位である。第2被挿入部52は、第1被挿入部51と同軸で配置されている。第2被挿入部52内には、隣接する一対のボトムローラ軸40のうちのボトムローラ軸40Bの端部が挿入されている。第2被挿入部52は、挿入されたボトムローラ軸40Bの端部を着脱可能に固定するねじ(第2締結具)52Nを含む。第2被挿入部52は、軸方向から見て、C字形状に形成されており、当該C字形状の開口をねじ52Nが跨ぐように設けられている。ねじ52Nを締め付けることで、当該C字形状の開口ひいては第2被挿入部52の内径が狭まり、挿入されたボトムローラ軸40Bの端部がクランプされて固定される。
【0052】
第1板バネ部53は、第1被挿入部51と第2被挿入部52との間に設けられている。本実施形態では、第1板バネ部53は、第1被挿入部51と第1スペーサ54との間に配置されている。第1板バネ部53は、矩形板状を呈し、ボトムローラ軸40の端部の外径以上の貫通孔53Hを有する。第1板バネ部53は、エレメント又は緩衝材と称される部位である。第1板バネ部53の4隅部分のうち対角の一対の隅部は、ボルトB11により第1被挿入部51に固定されている。第1板バネ部53の4隅部分のうち他の一対の隅部は、ボルトB12により第1スペーサ54に固定されている。
【0053】
第1スペーサ54は、第1板バネ部53と第2被挿入部52との間に設けられている。第1スペーサ54は、円筒状を呈し、ボトムローラ軸40の端部の外径以上の内径を有する。第1スペーサ54は、第1被挿入部51及び第2被挿入部52と等しい外径を有する。第1スペーサ54は、第1被挿入部51及び第2被挿入部52と同軸で配置されている。
【0054】
第2板バネ部55は、第1スペーサ54と第2被挿入部52との間に設けられている。第2板バネ部55は、矩形板状を呈し、ボトムローラ軸40の端部の外径以上の貫通孔55Hを有する。第2板バネ部55は、エレメント又は緩衝材と称される部位である。第2板バネ部55の4隅部分のうち対角の一対の隅部は、ボルトB21により第2被挿入部52に固定されている。第2板バネ部55の4隅部分のうち他の一対の隅部は、ボルトB22により第1スペーサ54に固定されている。
【0055】
ローラ軸カップリング50は、一体式のカップリングである。ローラ軸カップリング50では、上述した構成により、第1被挿入部51と第2被挿入部52とは、第1板バネ部53、第1スペーサ54及び第2板バネ部55を介して一体的に形成されている。「一体的に形成」とは、第1被挿入部51と第2被挿入部52との間にバックラッシュが生じないように構成されていること(いわゆる、ノンバックラッシュ又はバックラッシュゼロの構成)を意味する。ローラ軸カップリング50には、その軸方向の一端から他端にわたる全域で、ボトムローラ軸40の端部が挿通可能となっている。
【0056】
ローラ軸カップリング50は、収容空間Rにおいて、ボトムローラ軸40の軸方向(並設方向)の中央に対して、当該軸方向にオフセットした状態で配置されている。本実施形態では、ローラ軸カップリング50は、収容空間Rの中央からボトムローラ軸40A側にオフセットした状態で取り付けられている。ボトムローラ軸40の軸方向において、第2被挿入部52と収容空間Rの内面との間には、ローラ軸カップリング50を当該内面側へ所定距離移動可能とする隙間Gが形成されている。所定距離は、ボトムローラ軸40Aの端部のうち第1被挿入部51に挿入された部分の軸長LA以上の距離である。
【0057】
収容空間R内における一方のベアリング71とローラ軸カップリング50との間には、カラー56が配置されている。カラー56は、ローラ軸カップリング50を位置決めする位置決め用筒状部品である。カラー56は、円筒状を呈し、ボトムローラ軸40の端部の外径よりも大きい内径を有する。カラー56内には、ボトムローラ軸40の端部が挿入されている。カラー56の一端面は、ベアリング71に当接すると共に、カラー56の他端面は、ローラ軸カップリング50の第1被挿入部51に当接する。
【0058】
このようなローラ軸カップリング50を取り外す場合、ハウジング73のカバー74(図3参照)を外し、収容空間Rを露出させる。第1被挿入部51のねじ51Nと第2被挿入部52のねじ52Nとを弛め、ローラ軸カップリング50を他のボトムローラ軸40B側へ移動させ、一のボトムローラ軸40Aの端部を第1被挿入部51から軸方向に抜き出す(図7参照)。そして、一のボトムローラ軸40Aの端部が、そのラジアル方向に抜かれる。
【0059】
一方、ローラ軸カップリング50の取付けは、取り外す場合の手順とは逆の手順で実施される。すなわち、一のボトムローラ軸40Aの端部を、収容空間R内へラジアル方向から収容させる。ローラ軸カップリング50を一のボトムローラ軸40A側へカラー56に突き当たるまで移動させ、一のボトムローラ軸40Aの端部を第1被挿入部51に挿入する。第1被挿入部51のねじ51Nと第2被挿入部52のねじ52Nとを締め付ける。これにより、一のボトムローラ軸40Aと他のボトムローラ軸40Bとが、ローラ軸カップリング50で連結される。そして、ハウジング73のカバー74(図3参照)を取り付け、収容空間Rを閉じる。
【0060】
中間軸カップリング60は、上記ローラ軸カップリング50と同様に構成されている。中間軸カップリング60は、第1被挿入部51と同様な第1被挿入部、第2被挿入部52と同様な第2被挿入部、第1板バネ部53と同様な第1板バネ部、第1スペーサ54と同様な第1スペーサ、及び、第2板バネ部55と同様な第2板バネ部を含む。中間軸カップリング60は、第1被挿入部51に中間軸45の端部が挿入されている以外は、上記ローラ軸カップリング50と同様である。
【0061】
図8及び図9に示されるように、駆動軸カップリング90は、第3被挿入部91と、第4被挿入部92と、第3板バネ部93と、第2スペーサ94と、第4板バネ部95と、を含む。第3被挿入部91には、駆動軸81の端部が挿入されている。第3被挿入部91のその他の構成は、上記第1被挿入部51と同様である。第4被挿入部92には、中間軸45の端部が挿入されている。第4被挿入部92のその他の構成は、上記第2被挿入部52と同様である。第3板バネ部93は、第3被挿入部91と第4被挿入部92部との間に設けられている。第3板バネ部93のその他の構成は、上記第1板バネ部53と同様である。第2スペーサ94は、第3板バネ部93と第4被挿入部92との間に設けられている。第2スペーサ94は、ボトムローラ軸40の軸方向において上記第1スペーサ54よりも長い。第2スペーサ94のその他の構成は、上記第1スペーサ54と同様である。第4板バネ部95は、第2スペーサ94と第4被挿入部92との間に設けられている。第4板バネ部95のその他の構成は、上記第2板バネ部55と同様である。
【0062】
駆動軸カップリング90は、一体式のカップリングである。駆動軸カップリング90では、第3被挿入部91と第4被挿入部92とは、第3板バネ部93、第2スペーサ94及び第4板バネ部95を介して一体的に形成されている。「一体的に形成」とは、第3被挿入部91と第4被挿入部92との間にバックラッシュが生じないように構成されていることを意味する。
【0063】
駆動軸カップリング90とハウジング73との間には、カラー96が配置されている。カラー96は、駆動軸カップリング90を位置決めする位置決め用筒状部品である。カラー96は、円筒状を呈し、中間軸45の端部の外径よりも大きい内径を有する。カラー96内には、中間軸45の端部が挿入されている。カラー96の一端面は、駆動軸カップリング90の第4被挿入部92に当接すると共に、カラー96の他端面は、ハウジング73の外面に当接する。駆動軸カップリング90の取付けの際、第4被挿入部92がカラー56に突き当たるまで駆動軸カップリング90をハウジング73側へ移動させることで、駆動軸カップリング90を位置決めすることが可能となる。
【0064】
以上、紡績機1では、一のボトムローラ軸40Aと他のボトムローラ軸40Bとがローラ軸カップリング50により連結されており、一のボトムローラ軸40Aと他のボトムローラ軸40Bとの間の偏角を当該ローラ軸カップリング50により十分に吸収できる。また、第1被挿入部51と第2被挿入部52とが一体的に形成されていることから、一のボトムローラ軸40Aと他のボトムローラ軸40Bとの間において応答性のよい動力伝達が実現可能である。したがって、ボトムローラ軸40を高速に回転しつつ当該回転を安定して維持できる。ドラフト速度の高速化及び糸品質の向上が可能となる。
【0065】
紡績機1は、空気紡績装置7を備えている。このような紡績機1では、ドラフト装置6のボトムローラ軸40が高速回転することから、ローラ軸カップリング50を用いることにより、ドラフト速度が高速である場合でも糸品質を向上することができる。
【0066】
紡績機1は、ローラ軸カップリング50を収容する収容空間Rを有するハウジング73を備える。この構成によれば、ハウジング73の収容空間Rを利用して、一のボトムローラ軸70Aと他のボトムローラ軸70Bとをローラ軸カップリング50により連結できる。
【0067】
紡績機1では、ローラ軸カップリング50は、収容空間Rにおいて、ボトムローラ軸40の軸方向の中央に対して当該軸方向にオフセットした状態で配置されている。この構成によれば、例えばオフセットした状態と反対方向に収容空間R内でローラ軸カップリング50を少なくとも移動させることができ、ボトムローラ軸40及びローラ軸カップリング50の少なくとも何れかを容易に着脱することが可能となる。
【0068】
紡績機1では、軸方向において第2被挿入部42と収容空間Rの内面との間には、ローラ軸カップリング50を当該内面側へ所定距離移動可能とする隙間Gが形成されている。所定距離は、一のボトムローラ軸40Aの端部のうち第1被挿入部51に挿入された部分の軸長LA以上の距離である。この構成によれば、収容空間R内において、一のボトムローラ軸40Aの端部がローラ軸カップリング50から外れるように軸方向にローラ軸カップリング50を移動することができる。ボトムローラ軸40及びローラ軸カップリング50の少なくとも何れかを容易に着脱することが可能となる。
【0069】
紡績機1では、ローラ軸カップリング50は、第1板バネ部53と第2被挿入部52との間に設けられた第1スペーサ54と、第1スペーサ54と第2被挿入部52との間に設けられた第2板バネ部55と、を含む。第1被挿入部51と第2被挿入部52とは、第1板バネ部53、第1スペーサ54及び第2板バネ部55を介して一体的に形成されている。この構成によれば、一のボトムローラ軸40Aと他のボトムローラ軸40Bとの間の偏角及び偏芯を、ローラ軸カップリング50により十分に吸収できる。
【0070】
紡績機1は、駆動モータ80の駆動軸81と中間軸45とを連結する駆動軸カップリング90を備える。駆動軸カップリング90によれば、駆動軸81と中間軸45との間の偏角及び偏芯を十分に吸収できる。駆動軸カップリング90では、第3被挿入部91と第4被挿入部92とが一体的に形成されており、駆動軸81と中間軸45との間において応答性のよい動力伝達が実現可能である。さらに、駆動軸カップリング90では、駆動軸81に加わる負荷が大きいことから、軸方向において第2スペーサ94を第1スペーサ54よりも長くすることにより、当該大きい負荷に応じた大きな偏芯を駆動軸カップリング90により吸収できる。
【0071】
紡績機1では、第1被挿入部51は、挿入された一のボトムローラ軸40Aの端部を着脱可能に固定するねじ51Nを含む。第2被挿入部52は、挿入された他のボトムローラ軸40Bの端部を着脱可能に固定するねじ52Nを含む。この構成によれば、ねじ51N及びねじ52Nの締結及び当該締結の解除により、ローラ軸カップリング50を容易に着脱することが可能となる。
【0072】
紡績機1では、ボトムローラ軸40がフロントボトムローラ17aを構成する。フロントボトムローラ17aは、ドラフト装置6の複数のローラのうち最も高速で回転することから、ボトムローラ軸40をローラ軸カップリング50で連結することで、ドラフト速度が高速である場合でも糸品質を向上することができる。
【0073】
紡績機1では、ボトムローラ軸40の単位時間当たりの回転数は、2000rpm以上である。2000rpm以上の回転数でボトムローラ軸40が高速回転することから、ローラ軸カップリング50を用いることにより、ドラフト速度が高速である場合でも糸品質を向上することができる。
【0074】
紡績機1は、複数のローラ軸カップリング50を複数備える。紡績機1では、複数のローラ軸カップリング50は、複数のボトムローラ軸40の全てにおける隣接する一対のボトムローラ軸40を連結する。複数のローラ軸カップリング50で連結された当該複数のボトムローラ軸40は、同期回転するラインシャフトを構成する。この場合、複数のボトムローラ軸40の間における偏角は顕著であることから、ローラ軸カップリング50を用いることにより、ドラフト速度が高速化しても、糸品質を向上することができる。
【0075】
紡績機1では、フロントボトムローラ17aは、表面がゴムで形成されたフロントトップローラ17bに接触した状態で回転する。フロントトップローラ17bのバッフィング精度が低い場合であっても、フロントボトムローラ17aを構成するボトムローラ軸40間の偏角はローラ軸カップリング50により十分に吸収されることから、当該低いバッフィング精度による糸品質への悪影響(ドラフト斑)を軽減することができる。
【0076】
紡績機1は、一のボトムローラ軸40Aの端部及び他のボトムローラ軸40Bの端部の何れかが挿入され、ローラ軸カップリング50で一対のボトムローラ軸40が連結された状態において当該ローラ軸カップリング50に当接するカラー56を備える。この構成によれば、ローラ軸カップリング50の取付けの際、ローラ軸カップリング50をカラー56に当接することによって、軸方向におけるローラ軸カップリング50の位置決めが可能となる。
【0077】
紡績機1は、ボトムローラ軸40を回転支持するベアリング71を備える。ベアリング71の外輪71xと内輪71yとの間のローラ軸カップリング50側は、内側シール部材75でシールされていてもよい。ローラ軸カップリング50は潤滑剤が不要なドライ環境で使用されるところ、内側シール部材75によってベアリング71の潤滑剤がローラ軸カップリング50側へ漏れ出るのを防止でき、ローラ軸カップリング50のドライ環境を維持できる。
【0078】
以上、本発明の一形態は、上記実施形態に限定されない。
【0079】
上記実施形態は、第1カップリングで連結するローラ軸として、フロントボトムローラ17aを構成するボトムローラ軸40を備えたが、これに限定されない。第1カップリングで連結するローラ軸は、ボトムローラを構成してもよいし、フロントローラを構成してもよい。第1カップリングで連結するローラ軸は、バックローラ、サードローラ、ミドルローラの何れかを構成してもよい。
【0080】
上記実施形態では、ボトムローラ軸40は、3つ以上のドラフト装置6のフロントボトムローラ17aを構成してもよいし、1つのドラフト装置6のフロントボトムローラ17aを構成してもよい。
【0081】
上記実施形態では、ローラ軸カップリング50は、第1スペーサ54及び第2板バネ部55を備えずに構成されていてもよい。この場合でも、一のボトムローラ軸40Aと他のボトムローラ軸40Bとの間の偏角を十分に吸収できる。同様に、駆動軸カップリング90は、第2スペーサ94及び第4板バネ部95を備えずに構成されていてもよい。この場合でも、駆動軸81と中間軸45との間の偏角を十分に吸収できる。
【0082】
上記実施形態では、駆動軸カップリング90は、駆動軸81と中間軸45とを連結したが、中間軸45を備えない場合には、駆動軸81と駆動軸81に隣接するボトムローラ軸40とを連結してもよい。
【0083】
上記実施形態では、糸貯留装置11が空気紡績装置7から糸Yを引き出す機能を有していたが、デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yが引き出されてもよい。デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yを引き出す場合、糸貯留装置11の代わりに、吸引空気流で糸Yの弛みを吸収するスラックチューブ又は機械的なコンペンセータ等を設けてもよい。
【0084】
上記実施形態では、糸継装置26により2つの糸端を接続する構成に代えて、パッケージPからの糸Yを空気紡績装置7に挿入し、ドラフト装置6のドラフト動作と空気紡績装置7の紡績動作を開始することにより、空気紡績装置7からの糸YとパッケージPの糸Yとを接続(ピーシング)してもよい。
【0085】
上記実施形態では、ローラ軸カップリング50は、収容空間Rにおける中央からボトムローラ軸40A側(図4の左側)にオフセットした状態で固定されているが、収容空間Rにおける中央からボトムローラ軸40B側(図4の右側)にオフセットした状態で固定されていてもよい。
【0086】
糸Yの走行方向において、テンションセンサ9が糸監視装置8の上流側に配置されてもよい。ユニットコントローラ10は、1つ紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。紡績ユニット2において、ワキシング装置12、テンションセンサ9及び糸監視装置8は、省略されてもよい。糸Yにワックスを付与しない場合には、ワキシング装置12を省略せずに、ワキシング装置12からワックスのみを取り外してもよい。
【0087】
図1では、紡績機1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージを巻き取ることも可能である。コーン形状のパッケージの場合、糸Yのトラバースにより糸Yの弛みが発生するが、当該弛みは、糸貯留装置11で吸収することができる。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【0088】
各板バネ部には、1枚又は積層された複数枚の板バネが設けられている。板バネは、鉄であってもよく、樹脂等その他の材質であってもよい。各カップリングにおいて、シール方法は適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…紡績機、6…ドラフト装置、7…空気紡績装置、17a…フロントボトムローラ(ボトムローラ,ローラ)、17b…フロントトップローラ(トップローラ)、40…ボトムローラ軸(ローラ軸)、40A…一のボトムローラ軸(一のローラ軸)、40B…他のボトムローラ軸(他のローラ軸)、45…中間軸、50…ローラ軸カップリング(第1カップリング)、51…第1被挿入部、51N…ねじ(第1締結具)、52…第2被挿入部、52N…ねじ(第2締結具)、53…第1板バネ部、54…第1スペーサ、55…第2板バネ部、56…カラー(位置決め用筒状部品)、71…ベアリング、71x…外輪、71y…内輪、73…ハウジング、75…内側シール部材(シール部材)、80…駆動モータ(駆動部)、81…駆動軸、90…駆動軸カップリング(第2カップリング)、91…第3被挿入部、92…第4被挿入部、93…第3板バネ部、94…第2スペーサ、95…第4板バネ部、G…隙間、LA…軸長、R…収容空間、S…繊維束、Y…糸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9