特開2019-148300(P2019-148300A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-148300(P2019-148300A)
(43)【公開日】2019年9月5日
(54)【発明の名称】摺動部品
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20190809BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20190809BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20190809BHJP
【FI】
   F16J15/34 G
   F04B39/00 104A
   F16J15/34 H
   F16C17/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-33302(P2018-33302)
(22)【出願日】2018年2月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】中原 信雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 真司
(72)【発明者】
【氏名】北畠 晃一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩
(72)【発明者】
【氏名】橘 諒
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
(72)【発明者】
【氏名】神徳 哲行
(72)【発明者】
【氏名】深沼 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 亮
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 淳志
(72)【発明者】
【氏名】肥田 直樹
【テーマコード(参考)】
3H003
3J011
3J041
【Fターム(参考)】
3H003AC03
3H003AD00
3H003BC01
3J011AA07
3J011AA12
3J011BA09
3J011CA01
3J011JA02
3J011KA03
3J011MA05
3J011PA02
3J041AA01
3J041BC03
3J041BC10
3J041DA06
(57)【要約】
【課題】高圧の被密封流体の漏れが少なくかつ低トルクの自動車空調用コンプレッサのメカニカルシールの摺動部品を提供する。
【解決手段】円環状の固定密封環20の摺動面21と、円環状の回転密封環10の摺動面11とを相対回転させることにより冷媒ガスである二酸化炭素ガスを軸封する自動車空調用コンプレッサのメカニカルシールの摺動部品10,20において、一方の摺動面11には、径方向に沿って配置された複数のディンプル12からなる第1のディンプル列120Aと、第1のディンプル列120Aのディンプル12とは径方向に異なる位置で径方向に沿ってそれぞれ配置された複数のディンプル12からなる第2のディンプル列120Bとが周方向にこの順に複数配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の固定密封環の摺動面と、円環状の回転密封環の摺動面とを相対回転させることにより冷媒ガスである二酸化炭素ガスを軸封する自動車空調用コンプレッサのメカニカルシールの摺動部品において、
一方の前記摺動面には、径方向に沿って配置された複数のディンプルからなる第1のディンプル列と、前記第1のディンプル列のディンプルとは径方向に異なる位置で径方向に沿ってそれぞれ配置された複数のディンプルからなる第2のディンプル列とが周方向にこの順に複数配置されていることを特徴とする摺動部品。
【請求項2】
前記ディンプルの前記摺動面に対する開口面積率が3〜40%に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の摺動部品。
【請求項3】
前記ディンプルの開口径が、10〜150μmの範囲に設定され、
前記ディンプルの深さが、1〜50μmの範囲に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部品。
【請求項4】
前記ディンプルは、前記摺動面内のみに配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項5】
前記ディンプルは、正面視円形であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項6】
前記固定密封環と前記回転密封環との間における中高量は、0.05〜0.15μmの範囲に設定されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項7】
他方の前記摺動面は、平坦面または一方の前記摺動面とは異なる配置のディンプルが配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項8】
一方の前記摺動面の軸心に対する全ての同心円上に周方向に複数配置される前記第1のディンプル列のディンプルおよび前記第2のディンプル列のディンプルの少なくとも1つが配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の摺動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車空調用コンプレッサのメカニカルシールに用いられる摺動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車空調の冷媒にはフロンガス(例えばR−134a)が使用されており、自動車空調用コンプレッサの回転軸に対するシール装置として、例えば、密封性に優れたゴムリップと耐圧性に優れた樹脂リップとを組み合わせたリップシールが用いられている。
【0003】
近年、環境負荷を低減する目的から自動車空調の冷媒をフロンガスから二酸化炭素(CO)ガスに変更する動きがある。自動車空調用コンプレッサにおける二酸化炭素ガスの圧縮には、フロンガス使用時の5〜10倍の圧力が必要であり、リップシールでは自動車空調用コンプレッサの回転軸を安定してシールすることが難しく、代わりにメカニカルシールが用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示されているメカニカルシールは、自動車空調用コンプレッサの回転軸とともに回転される回転密封環と、ハウジングに固定される固定密封環とを備え、スプリングにより回転密封環を固定密封環側に付勢することにより、固定密封環の摺動面と回転密封環の摺動面とを互いに密接させた状態で相対回転させ、摺動時において摺動面間に流体膜を形成して被密封流体を軸封できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4958445号(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、メカニカルシールにおいて、密封性を長期的に維持させるためには、「密封」と「潤滑」という相反する条件を両立させなければならない。しかしながら、特許文献1のメカニカルシールは、回転密封環の摺動面と固定密封環の摺動面が平坦面であるため、密封性を高めるために摺動面間を密接させると高トルクとなり、一方、潤滑性を高めるために摺動面間を広げると被密封流体の漏れが多くなってしまうという問題があった。これらの問題は、被密封流体の圧力が高圧となるほど顕著であった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、高圧の被密封流体の漏れが少なくかつ低トルクの自動車空調用コンプレッサのメカニカルシールの摺動部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の摺動部品は、
円環状の固定密封環の摺動面と、円環状の回転密封環の摺動面とを相対回転させることにより冷媒ガスである二酸化炭素ガスを軸封する自動車空調用コンプレッサのメカニカルシールの摺動部品において、
一方の前記摺動面には、径方向に沿って配置された複数のディンプルからなる第1のディンプル列と、前記第1のディンプル列のディンプルとは径方向に異なる位置で径方向に沿ってそれぞれ配置された複数のディンプルからなる第2のディンプル列とが周方向にこの順に複数配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1のディンプル列のディンプルは、第2のディンプル列のディンプル列のディンプルと径方向に異なる位置で配置されていることから、摺動時において流体膜の形成作用が均等になるため、潤滑性と安定性が高く、高圧の二酸化炭素ガスの漏れが少なくかつ低トルクの摺動部品を得ることができる。
【0009】
前記ディンプルの前記摺動面に対する開口面積率が3〜40%に設定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、摺動時において流体膜の形成作用が均等になりやすく、潤滑性と安定性をより高めることができる。
【0010】
前記ディンプルの開口径が、10〜150μmの範囲に設定され、
前記ディンプルの深さが、1〜50μmの範囲に設定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、摺動時において流体膜の形成作用が均等になりやすく、潤滑性と安定性をより高めることができる。
【0011】
前記ディンプルは、前記摺動面内のみに配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、摺動面内にディンプルが全形を保持した状態で配置されることにより、摺動時において、ディンプルがさらに流体膜の形成作用を発揮することができ、潤滑性と安定性をより高めることができる。
【0012】
前記ディンプルは、正面視円形であることを特徴としている。
この特徴によれば、ディンプルにおいて発生する圧力を滑らかに立ち上がらせることができる。
【0013】
前記固定密封環と前記回転密封環との間における中高量は、0.05〜0.15μmの範囲に設定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、摺動時においてさらに流体膜の形成作用を発揮することができ、潤滑性と安定性をより高めることができる。
【0014】
他方の前記摺動面は、平坦面または一方の前記摺動面とは異なる配置のディンプルが配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、開口径、深さ、開口面積率が好適に設定されたディンプルが摺動面の全周に径方向に整列して千鳥配置されることにより、固定密封環と回転密封環との相対回転時に、摺動面間に亘って均等に機能するため、潤滑性と安定性が高く、高圧の二酸化炭素ガスの漏れが少なくかつ低トルクの摺動部品を得ることができる。
【0015】
一方の前記摺動面の軸心に対する全ての同心円上に周方向に複数配置される前記第1のディンプル列および前記第2のディンプル列の中の少なくとも1つディンプルが配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、摺動時において周方向に複数配置される第1のディンプル列および第2のディンプル列の中の少なくとも1つディンプルが摺動面の摺動方向に配置されることにより、摺動時において流体膜の形成作用がより均等になるため、潤滑性と安定性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る自動車空調用コンプレッサのメカニカルシールの一例を示す断面図である。
図2】本発明の実施例に係るディンプルが形成されたシールリングの摺動面の一部を示す平面図および第1のディンプル列と第2のディンプル列との位置関係を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る摺動部品を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0018】
実施例に係る摺動部品につき、図1および図2を参照して説明する。尚、メカニカルシールを構成する摺動部品の外周側を被密封流体側、内周側を大気側として説明する。
【0019】
図1に示される自動車空調用コンプレッサのメカニカルシールは、摺動面の外周側から内周側に向かって漏れようとする被密封流体である二酸化炭素ガスを密封するインサイド形のものであって、自動車空調用コンプレッサの回転軸1側にホルダ2を介して回転軸1と一体的に回転可能かつ軸方向移動可能な状態で設けられた円環状のシールリング10(摺動部品,回転密封環)と、自動車空調用コンプレッサのハウジング4に固定されたガスケット5に非回転状態で設けられた円環状のメイティングリング20(摺動部品,固定密封環)と、から主に構成され、ホルダ2内に保持されるコイルスプリング7によって押圧部材3を介してシールリング10が軸方向に付勢されることにより、ラッピング等により鏡面仕上げされたシールリング10の摺動面11(一方の摺動面)とメイティングリング20の摺動面21(他方の摺動面)とが互いに密接摺動するようになっている。尚、本実施例における二酸化炭素ガスの使用圧力は、1〜10MPa absに設定されることが好ましい。
【0020】
シールリング10およびメイティングリング20は、代表的にはSiC(硬質材料)同士またはSiC(硬質材料)とカーボン(軟質材料)の組み合わせで形成されるが、これに限らず、摺動材料はメカニカルシール用摺動材料として使用されているものであれば適用可能である。尚、SiCとしては、ボロン、アルミニウム、カーボン等を焼結助剤とした焼結体をはじめ、成分、組成の異なる2種類以上の相からなる材料、例えば、黒鉛粒子の分散したSiC、SiCとSiからなる反応焼結SiC、SiC−TiC、SiC−TiN等があり、カーボンとしては、炭素質と黒鉛質の混合したカーボンをはじめ、樹脂成形カーボン、焼結カーボン等が利用できる。また、上記摺動材料以外では、金属材料、樹脂材料、表面改質材料(コーティング材料)、複合材料等も適用可能である。
【0021】
図1に示されるように、シールリング10は、外周側に切り欠き状の挿入部10aが形成され、この挿入部10aに回転軸1に固定される円環状のホルダ2から軸方向に延びるドライブプレート2aが挿入されることにより、回転軸1と一体的に回転可能となっている。また、シールリング10は、内周側に挿嵌凹部10bが形成され、この挿嵌凹部10bにOリング8が挿嵌されることにより、シールリング10の内周面と回転軸1の外周面との間における被密封流体の漏れが防止されている。
【0022】
図2に示されるように、シールリング10は、軸方向一端に軸方向から見た正面視において環状の摺動面11を有している。摺動面11は、平坦面であって、円周方向に複数のディンプル12が全周に亘って形成されている。尚、摺動面11の平坦部分は、ディンプル12に対してランド部とも言える。
【0023】
ディンプル12は、軸方向から見た正面視において円形状に形成されている。尚、説明の便宜上、図示を省略するが、ディンプル12全体の形状は、円柱状、円錐状、半球形状、半回転楕円体形状等に適宜形成されてよい。
【0024】
また、ディンプル12は、摺動面11の全面において、径方向に沿って一定のピッチで等間隔に整列して配置された複数(全16個)のディンプル12からなる第1のディンプル列120Aと、第1のディンプル列120Aを構成するディンプル12とは径方向に半ピッチずれた異なる位置で径方向に沿って等間隔に整列してそれぞれ配置された複数(全15個)のディンプル12からなる第2のディンプル列120Bとが周方向にこの順に複数配置されている。すなわち、ディンプル12は、摺動面11の全面に千鳥配置されている。尚、摺動面11の全面とは、摺動面21との実質的に摺動する領域のことを示している。さらに尚、本実施例のディンプル12は、レーザ加工により形成されているが、これに限らず、他の方法で形成されてもよい。
【0025】
また、ディンプル12は、摺動面11内のみに配置されている。すなわち、ディンプル12は、第1のディンプル列120Aおよび第2のディンプル列120Bにおいて摺動面11の外径側および内径側に配置されるものにおいても、その一部が欠けることなく全形を保持した状態で形成されている。
【0026】
また、ディンプル12は、最外径部分および最内径部分を除く摺動面11内において、摺動面11(シールリング10)の軸心に対する全ての同心円上に第1のディンプル列120Aおよび第2のディンプル列120Bの中の少なくとも1つディンプル12が配置されている。尚、周方向に隣り合って配置される第1のディンプル列120Aのディンプル12および第2のディンプル列120Bのディンプル12が共に同心円上に配置されていることが好ましい。
【0027】
また、ディンプル12の摺動面11に対する開口面積率は、3〜40%、好ましくは10〜30%に設定されている。尚、本実施例におけるディンプル12の摺動面11に対する開口面積率とは、シールリング10の摺動面11の面積(平坦部分とディンプル12の開口部分の総和面積)に対する個々のディンプル12の開口部分の総面積の割合のことである。
【0028】
さらに、ディンプル12の開口径は、10〜150μmの範囲に設定され、ディンプル12の軸方向の深さは、1〜50μmの範囲に設定されている。
【0029】
図1に示されるように、メイティングリング20は、ハウジング4の取付部4aに固定されたガスケット5の挿嵌段部5aに挿嵌されることにより非回転状態で固定される。このとき、ガスケット5の外周面がハウジング4の取付部4aの内周面に対して押し付けられることにより、ガスケット5の外周面とハウジング4の取付部4aの内周面との間における被密封流体の漏れが防止されている。尚、ガスケット5は、内部に断面視L字状の保持環6がインサート成形されることにより形成されている。さらに尚、ガスケット5は、弾性体からなるものであれば、素材はゴムに限らず樹脂等であってもよい。
【0030】
また、メイティングリング20は、シールリング10の摺動面11と軸方向に対向する環状の対向面を有し、対向面の一部がシールリング10の摺動面11と摺動する摺動面21を構成している。摺動面21は、平坦面として形成されている。尚、摺動面21は、平坦面として形成されるものに限らず、シールリング10の摺動面11とは異なる配置で複数のディンプルが形成されてもよい。
【0031】
また、メイティングリング20の対向面の径方向の長さは、シールリング10の摺動面11の径方向の長さよりも長く形成されている(図1参照)。
【0032】
また、説明の便宜上、図示を省略するが、シールリング10の摺動面11およびメイティングリング20の対向面は、僅かに中高(中凸)の曲面、詳しくは、曲率半径がきわめて大きい凸球面として形成され、シールリング10とメイティングリング20との間における中高量(シールリング10の摺動面11とメイティングリング20の対向面の各最外径側と最内径側との間における軸方向の寸法差)は、0.05〜0.15μmの範囲に設定されている。尚、シールリング10とメイティングリング20との間における中高量を0.05μm以下に構成した場合、被密封流体の漏れが少なくなりすぎるため、潤滑性が低下して焼き付き不具合が発生する虞がある。
【0033】
次いで、摺動面11,21間における動圧発生について説明する。シールリング10とメイティングリング20とが相対回転すると、摺動時において複数のディンプル12の作用によって動圧が発生することにより、摺動面11,21間に冷媒である二酸化炭素ガスや冷媒とともに使用される潤滑油による流体膜が形成され、被密封流体を軸封できるようになっている。
【0034】
このとき、シールリング10の摺動面11の全面には、径方向に沿って等間隔に整列して配置された複数のディンプル12からなる第1のディンプル列120Aと、第1のディンプル列120Aのディンプル12とは径方向に異なる位置で径方向に沿ってそれぞれ等間隔に整列して配置された複数のディンプル12からなる第2のディンプル列120Bとが周方向にこの順に複数配置されている。また、メイティングリング20の摺動面21は、平坦面として形成されている。
【0035】
これによれば、開口径、深さ、開口面積率が好適に設定されたディンプル12がシールリング10の摺動面11の全面に径方向に整列して千鳥配置されることにより、シールリング10とメイティングリング20とが相対回転することで、摺動時においてディンプル12による流体膜の形成作用が摺動面11,21間に亘って均等になるため、潤滑性と安定性が高く、高圧の二酸化炭素ガスの漏れが少なくかつ低トルクの摺動部品を得ることができる。さらに、低トルクとなることにより、摺動面11、21の面荒れを抑えることができる。
【0036】
また、ディンプル12は、摺動面11内のみに配置されているため、摺動時において摺動面11に形成される全てのディンプル12がさらに流体膜の形成作用を発揮することができ、潤滑性と安定性をより高めることができる。
【0037】
また、ディンプル12は、軸方向から見た正面視において円形状に形成されているため、ディンプル12において発生する圧力(動圧)を滑らかに立ち上がらせることができる。
【0038】
また、シールリング10とメイティングリング20との間における中高量は、0.05〜0.15μmの範囲に設定されているため、摺動時においてさらに流体膜の形成作用を発揮することができ、潤滑性と安定性をより高めることができる。
【0039】
また、ディンプル12は、最外径部分および最内径部分を除く摺動面11内において、摺動面11(シールリング10)の軸心に対する全ての同心円上に第1のディンプル列120Aおよび第2のディンプル列120Bの中の少なくとも1つディンプルが配置されているため、摺動時において摺動方向に周方向に複数配置される第1のディンプル列120Aおよび第2のディンプル列120Bの中の少なくとも1つディンプル12が摺動面11の摺動方向に配置されることにより、摺動時において流体膜の形成作用がより均等になるため、潤滑性と安定性をより高めることができる。
【0040】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではない。
【0041】
例えば、前記実施例では、摺動部品が適用されるメカニカルシールは、インサイド形のものとして説明したが、アウトサイド形のものであってもよい。
【0042】
また、前記実施例では、ディンプル12は、シールリング10の摺動面11のみに設ける例について説明したが、ディンプル12は、メイティングリング20の摺動面21のみに設けられていてもよく、この場合、シールリング10の摺動面11は、平坦面またはメイティングリング20の摺動面21とは異なる配置のディンプルが配置されることが好ましい。
【0043】
また、前記実施例では、第1のディンプル列120Aは、径方向に沿って等間隔に整列した16個のディンプル12から構成され、第2のディンプル列120Bは、径方向に沿って等間隔に整列した15個のディンプル12から構成されるものとして説明したが、これに限らず、第1のディンプル列および第2のディンプル列をそれぞれ構成するディンプル12の数や間隔は、使用環境等に応じて適宜設定されてよい。尚、ディンプル12は、第1のディンプル列および第2のディンプル列により、摺動面の全面において均等に配置されることが好ましい。
【0044】
また、第1のディンプル列および第2のディンプル列を構成する複数のディンプル12は、径方向に沿って直線状に整列するものに限らず、摺動面の全面において均等に配置されるものであれば、径方向に沿ってスパイラル状に整列していてもよい。
【0045】
また、第1のディンプル列のディンプルおよび第2のディンプル列のディンプルとは、径方向に異なる位置で径方向に沿ってそれぞれ配置された複数のディンプルからなる第3ディンプル列が配置されていてもよい。この場合、第1のディンプル列、第2のディンプル列および第3のディンプル列が周方向にこの順に複数配置される。尚、ディンプル列は4列以上に構成されてもよい。
【0046】
また、前記実施例では、ディンプル12は、摺動面11内のみに配置され、摺動面11の最外径部分および最内径部分にディンプル12が配置されないものとして説明したが、これに限らず、摺動面11の最外径部分および最内径部分にディンプルが配置されているものであってもよく、この場合、最外径部分および最内径部分に配置されるディンプルは、その一部が欠けていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 回転軸
2 ホルダ
3 押圧部材
4 ハウジング
5 ガスケット
6 保持環
7 コイルスプリング
8 Oリング
10 シールリング(摺動部品,回転密封環)
10a 挿入部
10b 挿嵌凹部
11 摺動面(一方の摺動面)
12 ディンプル
20 メイティングリング(摺動部品,固定密封環)
21 摺動面(他方の摺動面)
120A 第1のディンプル列
120B 第2のディンプル列
図1
図2