(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-148489(P2019-148489A)
(43)【公開日】2019年9月5日
(54)【発明の名称】波形表示装置および波形表示方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/30 20060101AFI20190809BHJP
G01D 7/00 20060101ALI20190809BHJP
【FI】
G01R13/30 D
G01D7/00 S
G01D7/00 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-33076(P2018-33076)
(22)【出願日】2018年2月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】布施 直也
(72)【発明者】
【氏名】服部 好樹
(57)【要約】
【課題】 波形表示装置で信号波形とともにグリッドを表示しているときに、グリッドの間隔の値を表示して、観測者が信号波形を観測し易くする波形表示装置および方法を提供する。
【解決手段】 測定データに基づく信号波形とともにグリッドを表示部に表示している際に、制御部は、指定されたグリッドの一つの枡目の間隔の値を示す情報を表示して、観測者がグリッドの枡目の間隔を認識し易くし、信号波形の観測を支援する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定データに基づく信号波形とともにグリッドを表示部に表示させる制御部を備えた波形表示装置であって、
前記制御部は、前記グリッドの特定の位置が指定されたとき、当該グリッドの枡目の間隔の値を示す情報を表示させるグリッドスケール表示手段を備えた
ことを特徴とする波形表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の波形表示装置であって、
前記グリッドスケール表示手段は、前記情報として、前記枡目の辺の少なくとも一部に矢印を表示させるとともに前記辺の近傍に前記枠の間隔の値を示す文字列を表示させる手段を含む
ことを特徴とする波形表示装置。
【請求項3】
測定データに基づく信号波形とともにグリッドを表示部に表示させる制御部を備えた波形表示装置の波形表示方法において、
前記制御部が、前記グリッドの特定の位置が指定されると、当該グリッドの枡目の間隔の値を示す情報を表示させる
ことを特徴とする波形表示方法。
【請求項4】
請求項3に記載の波形表示方法であって、
前記制御部が、前記情報として、前記枡目の辺の少なくとも一部に矢印を表示させるとともに前記辺の近傍に前記枠の間隔の値を示す文字列を表示させる
ことを特徴とする波形表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定データに基づく信号波形を表示部に表示する波形表示装置および波形表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定データに基づく信号波形を表示部に表示する波形表示装置は、測定波形の波形データとともに、波形データを観測しやすいように、表示画面を区切る格子状のグリッドを表示画面に表示する。
この信号波形の表示例を
図7に示す。
図7は、信号波形の電圧表示例であり、波形データの表示領域である波形表示ウィンドウに横軸を時間、縦軸を電圧として表示している。この信号波形に合せて、グリッドを表示しており、グリッドは、時間、電圧のきりのよい値のところに縦および横のグリッド線を引いて表示している。例えば、画面の横方向は時間軸として、500μ秒ごとに縦のグリッド線を引き、画面の上下方向は、横軸を電圧レベルとして、0Vを中心にして、上下に100mVごとにグリッド線を引いている。そして、グリッド線がどの値であるかを示す数値として、表示ウィンドウの下部に、横方向に、左から500μs、1ms、1.5ms、2msというように、縦グリッド線が表示ウィンドウの下部と交わる位置にその縦グリッド線の値を表示する。また、電圧レベルは、横グリッド線が表示ウィンドウの左端と交わる位置に、0V、上方に、100mV、200mV、下方に、−100mV、−200mVというように、横グリッド線がどの電圧値であるかを表示している。
【0003】
なお、
図7は、表示ウィンドウの左端および下端のグリッドの表示画面内にグリッド線の値を表示しているが、表示ウィンドウの左側や、下側の波形の表示画面外に時間や電圧レベルを表示することが可能である。
信号波形とともに、グリッドとグリッド線の値を表示する技術の例として、特許文献1(特開2009−115569号公報)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−115569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の波形表示装置は、表示した信号波形の時間軸および表示レベルを自由に拡大縮小できる機能を有している。例えば、タッチパネル方式であれば、
図7の信号波形も表示画面を指で操作することで、信号波形の時間軸や表示レベルを上下左右に拡大縮小することができる。
図8のように、タッチパネルを操作することで、時間軸幅、表示レベル幅を拡大することができる。また、上下あるいは左右に波形をスクロールすることもできる。この場合、グリッドも拡大縮小に合せて、グリッドの幅が拡大、縮小し、拡大するときは、新たに中間の値のグリッド線を入れ、縮小するときは、グリッド線を消す表示がされる。
【0006】
このように、操作により、グリッドを拡大、縮小する操作をしていると、グリッド線がつくる枡目の幅がいまどの値になっているかを知りたいことがある。枡目の幅の値は、表示ウィンドウの左端、下端に表示されているグリッド線の値をみて、その差分をとって、一つのグリッドの枡目は、時間として、何μs、電圧として何mVであるかを確認する動作になる。
【0007】
しかし、表示画面にタッチすることで、信号波形を自由に拡大縮小、スクロールができるので、その操作の途中で、グリッドの枡目がどんな値であるかの目安を知りたいときに、いちいち表示ウィンドウの左端、下端の表示値から差分をとって確認することは煩わしい。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するもので、波形表示装置の波形表示を拡大縮小しているときなどに、グリッドの枡目の間隔がどのような値であるかを簡単に表示して、信号波形の観測作業の煩わしさを低減できる波形表示装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、波形表示装置であり、測定データに基づく信号波形とともにグリッドを表示部に表示させる制御部を備えた波形表示装置であって、制御部は、グリッドの特定の位置が指定されたとき、当該グリッドの枡目の間隔の値を示す情報を表示させるグリッドスケール表示手段を備えることを特徴とする。
【0010】
なお、グリッドスケール表示手段は、情報として、枠の辺の少なくとも一部に矢印を表示させるとともに辺の近傍に枡目の間隔の値を示す文字列を表示させる手段を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の他の側面は、波形表示方法であり、測定データに基づく信号波形とともにグリッドを表示部に表示させる制御部を備えた波形表示装置の波形表示方法において、制御部が、グリッドの特定の位置が指定されると、当該グリッドの枡目の間隔の値を示す情報を表示させることを特徴とする。
【0012】
なお、制御部が、情報として、枡目の辺の少なくとも一部に矢印を表示させるとともに辺の近傍に枡目の間隔の値を示す文字列を表示させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
グリッドの枡目の幅が変化しても、指示されたところに当該グリッドの枡目の間隔がどのような値であるかが表示されるので、観測者の信号波形の観測における作業の煩わしさが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】波形表示装置1の構成を示すブロック図である。
【
図2】信号表示画面で指示したグリッドの枡目に間隔の値が表示された様子を示す図である。
【
図4】
図2の枡目に表示する値を説明する図である。
【
図5】本発明の表示を実行する動作を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の表示を実行する動作を説明するフローチャートである。
【
図7】従来の波形表示装置の表示例を示す図である。
【
図8】グリッドを拡大したときの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る波形表示装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示す波形表示装置1は、入力信号の信号波形を表示させる装置の一例であって、測定部2、操作部3、表示部4、記憶部5および制御部6を備えて構成されている。測定部2は、アンプ、A/D変換部、トリガ検出部およびバッファメモリ等(いずれも図示せず)を備えて構成され、制御部6の制御にしたがって入力信号をアナログ−デジタル変換し、入力信号の電気パラメータ(例えば、電圧値、電流値、周波数、位相など)を示すサンプリングデータ(本発明における測定データ)を生成する。この場合、波形表示装置1では、上記の測定部2が複数の測定チャンネルを備えて、測定チャンネルごとに入力信号のサンプリングデータを生成することができる。
【0016】
操作部3は、測定条件や信号波形の表示条件等を設定あるいは指示するための各種操作入力を行う。操作部3は、タッチパネル方式であり、表示画面上での指示が可能である。また、操作スイッチ等を備えて、スイッチ操作、マウス操作により各種操作入力が可能である。これらの操作入力は、制御部6に出力される。
【0017】
表示部4は、制御部6から出力された表示用データに基づき、
図2に示す信号波形表示画面10を表示する。記憶部5は、一例として、RAM(Random Access Memory )、リムーバブルメモリ(メモリーカード)、HDD (Hard Disc Drive)などで構成されており、制御部6の制御によって、測定部2から出力された所定時間分のサンプリングデータを記憶する。制御部6は、波形表示装置1を統括的に制御する。例えば、制御部6は、操作部3から出力された操作信号やあらかじめ設定された動作条件にしたがい、測定部2による測定処理を制御するとともに、測定部から出力されたサンプリングデータを記憶部5に記憶させる。また、制御部6は、記憶部5に記憶させたサンプリングデータに基づいて信号波形Wを表示するための表示用データを生成する。この表示用データとして、信号表示画面に、描画する波形表示ともに表示するグリッド線のデータを生成する。このグリッド線の生成については、後述する。
【0018】
図2は、信号波形Wの表示例を示す図であり、信号波形表示画面10の波形表示領域11にグリッドとともに信号波形Wを表示した例である。信号波形表示画面10は、サンプリング速度や、ポイント数、あるいは、ズーム処理等、信号波形Wの表示条件や操作の内容等を表示する処理表示領域13が波形表示領域11の上下左右に並んで表示されている(表示内容は図示せず)。
【0019】
波形表示領域11には、信号波形Wとともに、縦グリッド線11a、横グリッド線11bが表示されている。ここで、この
図2は、電圧表示の例であり、図面で左右方向が時間軸方向、上下方向が電圧軸方向であり、縦グリッド線11aの下端には、時間を表すように、500μs、1ms、1.5ms、2msという表示が時間軸に沿って、縦グリッド線が波形表示領域11の下端と交わる位置に表示される。また、図面には表示されていないが、波形表示の当初には、波形表示領域11の左端に横グリッド線11bが交わる位置に、電圧レベルの数値が表示され、中央の横グリッド線11bの交点を0V、上側に順に100mV、200mV、下側には、−100mV、−200mV、−300mVのように、電圧レベルの値が表示される。
【0020】
そして、本実施の形態では、信号波形表示画面10は、タッチパネル方式により、波形表示領域11にタッチすることで、信号波形Wの時間軸および電圧レベルの表示を拡大縮小することができる。すなわち、観測者は、表示条件で波形表示の拡大縮小を可能な状態に設定してあるときは、表示画面の操作部に指を当てることで、信号波形Wの時間軸や電圧レベルの表示の拡大縮小を指示することができる。このような拡大縮小指示を行うと、信号波形Wの拡大縮小とともに縦グリッド線11a、横グリッド11bも合せて拡大縮小をする。
【0021】
このとき、本実施の形態では、表示されているグリッド線11a、11bの枡目のひとつの位置を長押しすると、枡目の下辺に、矢印12bが表示され、この枡目が示す時間間隔である500μsの文字列が表示され、また、枡目の右辺に、矢印12aが表示され、枡目の縦方向の電圧レベル間隔である100mVが表示される。すなわち、グリッドの枡目の間隔を示すスケール(目盛)が表示されることになる(以下では、この表示をグリッドスケールともいう)。
【0022】
なお、100mVの表示とともに表示している信号波形のチャンネルを示す「CH1−1」の文字も表示することもできる。
図3は、表示された部分を拡大した図であり、グリッド線上に矢印をグリッド線より太く表し、グリッド線に沿って、時間、電圧の値およびチャンネルを表示している。
【0023】
図4は、本実施の形態のグリッド表示を概念化して表したものであり、枡目Aの位置が指示されたときの矢印の表示と、表示された枡目が示す間隔(差分)を示している。すなわち、枡目Aの時間表示の間隔は、tb−ta(t4−t3)、電圧表示の間隔は、vb−va(v3−v2)となる。
これらの間隔の値は、指示された枡目の位置により、制御部6のグリッドスケール表示手段が、グリッド線が表している時間値、電圧値によりそれぞれ差分を計算して、求めた差分の値を文字列に変換して表示する。
【0024】
次に、
図5、
図6のフローチャートに基づいて、指示された位置のグリッドスケールとしての枡目の矢印と間隔の値を示す文字列の表示の動作を説明する。
図5は、信号波形Wの表示におけるグリッド線の描画動作を示すフローチャートであり、従来の波形表示装置でのグリッド線の描画動作に相当する。
図6が、グリッド線の枡目が指示されたときの枡目の間隔の値を示す文字列の描画動作に相当する。
【0025】
まず、
図5のグリッド線の描画動作を説明する。
時間軸方向の表示開始位置・倍率から、時間軸方向の表示範囲(T1〜T2)を算出する(ステップS1)。これは波形表示領域11の横方向に相当する。そして、T1〜T2間の切りのよい時間値となる位置を数点算出して(t1,t2,・・・tn)、縦グリッド線11aを描画する(ステップS2)。
図2では、500μs、1ms、1.5ms、2.0mの位置に、縦グリッド線11aを描画している。また、時間軸方向の表示開始位置・倍率から、電圧軸方向の表示範囲(V1〜V2)を算出する(ステップS3)。波形表示領域11の縦方向に相当する。そして、V1〜V2間の、切りよい電圧値となる位置を数点算出して(v1,v2,・・・vn)の横グリッド線11bを描画する(ステップS4)。例えば、−300mV、−200mV、−100mV、0V:100mV、200mVの位置に横グリッド線11bを描画する。そして、(T1,V1)〜(T2,V2)の範囲に信号波形Wを表示する(ステップS5)。
【0026】
次に
図6に基づいて説明する。グリッド線11a、11bを描画して信号波形Wを表示しているときに、タッチパネルへの入力を待機している状態において(ステップS11)、タッチパネルへの入力があった場合、当該入力がドラッグまたは、ピッチイン・アウトジェスチャーか否かを判定する(ステップS12)。ドラッグは、信号波形の移動、ピッチイン・アウトは、信号波形の拡大縮小を指示するものであり、この指示は、表示画面上で指をスライドする動作などで指示される。このようなドラッグ、ピッチイン・アウトの指示があった場合は、指示のとおりに信号波形Wおよびグリッド線11a、11bを表示するため、新たな表示開始位置・倍率を算出して、もとのグリッド線11a、11bの描画開始位置に戻る(ステップS13)。以上のところまでは、従来の波形表示装置での信号波形の表示動作である。
【0027】
ここで、タッチパネルへの入力が長押しであるかを判定し(ステップS14)、長押しである場合、縦と横のグリッド線11a、11bで区切られた升目のなかで、長押しされた位置にあるものの(
図4のAの範囲にある)位置を算出する。この位置は、
図4では、Aの範囲で、(ta,va)〜(tb,vb)の領域になる。この指示された枡目Aの下辺、右辺に矢印を描画する(ステップS15)。また、枡目の幅(tb−ta)の時間を算出して時間文字列を描画する(ステップS16)。さらに、枡目の高さ(vb−va)の電圧値を算出して電圧値文字列を描画する(ステップS15)。
図2、
図3に示す例では、時間文字列は、「500μs」であり、電圧値文字列は、「100mV」である。
以上のステップS14〜S18により、グリッド線11a、11bの枡目に、枡目の時間幅、電圧値幅が表示される。
【0028】
次に、表示されたグリッド線11a、11bの枡目に矢印、文字列が表示されている場合(グリッドスケール表示)、表示画面の他の枡目がタッチされたか、あるいは表示された升目が単にタッチされ長押しされていないか否かを判定し(ステップS14)、他の枡目がタッチされ、あるいは長押しではない場合、表示されたグリッドスケールを消去する(ステップS14、ステップS19、ステップS20)。そして、もとのタッチパネルへの入力の待機に戻る。
【0029】
(効果の説明)
以上のように、信号波形とともにグリッドが表示され、自由に、ドラッグあるいはピッチイン・アウト操作を行うことで、信号波形およびグリッドの大きさ、位置を変更しながら、信号波形を観測している状態で、表示画面にタッチして指示することで、グリッドの枡目に文字列が表示されて枡目の物理量がわかるので、いちいち、画面の端にある表示値をみることなく、信号波形を観測することが可能となる。また、その表示の消去も、指示と同様にタッチパネルで簡単に消去できるので、操作に煩わしさを感じさせない利点がある。
【0030】
上記実施の形態は、時間表示とともに電圧値の表示を行う例で説明したが、電流値、周波数、位相などの電気的パラメータだけでなく、入力された測定データが温度、湿度、風力などのパラメータを電圧値に変換された物理量である測定データを表示する場合も含まれる。
また、上述の実施の形態では、タッチパネルの表示位置を長押しすることで、グリッドスケールの表示を指示することとしたが、マウスを用いて波形表示領域の任意の位置をクリック操作することで、グリッドスケールの表示を指示し、また、消去の指示をすることができる。さらに、このようなグリッドスケールを画面の端等に観測の邪魔にならないように、常に表示させてもよい。
【0031】
また、上述の実施の形態では、表示される信号波形は、1チャンネルの信号入力を表示する例で説明しているが、一般に、波形表示装置は、複数チャンネルの信号入力を同時に表示することができ、そのときは、表示する信号波形のチャンネルを表示する。
【符号の説明】
【0032】
1 波形表示装置
2 測定部
3 操作部
4 表示部
5 記憶部
6 制御部
10 信号波形表示画面
11 波形表示領域
11a 縦グリッド線
11b 横グリッド線
12a、12c 矢印
12b、12d 文字列
13 処理表示領域
W 信号波形