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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-148912(P2019-148912A)
(43)【公開日】2019年9月5日
(54)【発明の名称】遠隔操縦システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20060101AFI20190809BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20190809BHJP
【FI】
   G05D1/00 B
   G05D1/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-32314(P2018-32314)
(22)【出願日】2018年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】坂野 肇
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA03
5H301BB06
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH01
5H301HH13
5H301KK02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】移動体を所望の分岐路へ確実に進入させることができる遠隔操縦システムを提供する。
【解決手段】使用者により操作可能な遠隔操縦装置3と、移動体に搭載され、前記遠隔操縦装置と無線通信することで前記移動体の動作を制御する制御装置2と、前記移動体に搭載され、前記移動体の周囲の障害物との距離を計測する計測装置11と、を備え、前記制御装置は、前記計測装置が計測したデータに基づいて環境地図を作成する環境地図作成部231と、前記移動体の移動に伴って前記環境地図上を移動するオブジェクトを生成するオブジェクト生成部232と、前記オブジェクト生成部が生成した前記オブジェクトが前記遠隔操縦装置により選択された場合には、選択された前記オブジェクトの方向に曲がるための移動径路を生成する移動経路生成部233と、前記移動経路生成部により生成された移動経路に沿って前記移動体を移動させる移動制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の動作を遠隔制御する遠隔操縦システムであって、
使用者により操作可能な遠隔操縦装置と、
移動体に搭載され、前記遠隔操縦装置と無線通信することで前記移動体の動作を制御する制御装置と、
前記移動体に搭載され、前記移動体の周囲の障害物との距離を計測する計測装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記計測装置が計測したデータに基づいて環境地図を作成する環境地図作成部と、
前記移動体の移動に伴って前記環境地図上を移動するオブジェクトを生成するオブジェクト生成部と、
前記オブジェクト生成部が生成した前記オブジェクトが前記遠隔操縦装置により選択された場合には、選択された前記オブジェクトの方向に曲がるための移動径路を生成する移動経路生成部と、
前記移動経路生成部により生成された移動経路に沿って前記移動体を移動させる移動制御部と、
を備えることを特徴とする遠隔操縦システム。
【請求項2】
前記移動経路生成部は、前記障害物の影響により前記移動経路を生成できなかった場合には、前記遠隔操縦装置に通知することを特徴とする請求項1に記載の遠隔操縦システム。
【請求項3】
前記オブジェクト生成部は、前記環境地図上において、前記移動体の移動方向における任意の位置から所定の方向に一定距離だけ離れた位置に前記オブジェクトを生成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の遠隔操縦システム。
【請求項4】
前記オブジェクト生成部は、前記環境地図上において、前記移動体の移動方向における任意の位置から複数の異なる方向に一定距離だけ離れたそれぞれの位置に前記オブジェクトを生成することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の遠隔操縦システム。
【請求項5】
前記遠隔操縦装置は、前記移動体の前方画像を表示する表示装置を備え、
前記表示装置は、前記オブジェクト生成部により生成された前記オブジェクトを、前記前方画像に重ねて表示することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の遠隔操縦システム。
【請求項6】
前記遠隔操縦装置は、
使用者の操作により前記表示装置に表示された前記オブジェクトを選択可能な選択部と、
前記選択部により選択された前記オブジェクトの情報を前記制御装置に無線送信する送信部と、
を備え、
前記移動経路生成部は、前記送信部により無線送信された前記情報に基づいて前記選択部で選択された前記オブジェクトの方向に曲がるための移動径路を生成することを特徴とする、請求項5に記載の遠隔操縦システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操縦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1,2には、遠隔操縦用のカメラが搭載された無人移動体(例えば、車両)の動作を遠隔制御する制御方法が開示されている。具体的には、上記無人移動体には、当該無人移動体の前方を撮像するカメラと、分岐路を認識するための複数のセンサが搭載されており、操縦者側に設けられた表示装置の表示画面に、複数のセンサで認識した分岐路と上記カメラが撮像した前方画像とが重畳表示される。したがって、操縦者は、無人移動体を進入させたい分岐路を上記表示画面において選択するだけで、無人移動体を所望の分岐路に進入させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5647905号公報
【特許文献2】特許第5969903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記センサでは、障害物間の開口部を検出することで分岐路を認識しているため、そのセンサの性能によっては分岐路を認識することができない場合がある。したがって、無人移動体を所望の分岐路に進入させることができない場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、無人移動体を所望の分岐路へ確実に進入させることができる遠隔操縦システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、移動体の動作を遠隔制御する遠隔操縦システムであって、使用者により操作可能な遠隔操縦装置と、移動体に搭載され、前記遠隔操縦装置と無線通信することで前記移動体の動作を制御する制御装置と、前記移動体に搭載され、前記移動体の周囲の障害物との距離を計測する計測装置と、を備え、前記制御装置は、前記計測装置が計測したデータに基づいて環境地図を作成する環境地図作成部と、前記移動体の移動に伴って前記環境地図上を移動するオブジェクトを生成するオブジェクト生成部と、前記オブジェクト生成部が生成した前記オブジェクトが前記遠隔操縦装置により選択された場合には、選択された前記オブジェクトの方向に曲がるための移動径路を生成する移動経路生成部と、前記移動経路生成部により生成された移動経路に沿って前記移動体を移動させる移動制御部と、を備えることを特徴とする遠隔操縦システムである。
【0007】
本発明の一態様は、上述の遠隔操縦システムであって、前記移動経路生成部は、前記障害物の影響により前記移動経路を生成できなかった場合には、前記遠隔操縦装置に通知する。
【0008】
本発明の一態様は、上述の遠隔操縦システムであって、前記オブジェクト生成部は、前記環境地図上において、前記移動体の移動方向における任意の位置から所定の方向に一定距離だけ離れた位置に前記オブジェクトを生成する。
【0009】
本発明の一態様は、上述の遠隔操縦システムであって、前記オブジェクト生成部は、前記環境地図上において、前記移動体の移動方向における任意の位置から複数の異なる方向に一定距離だけ離れたそれぞれの位置に前記オブジェクトを生成する。
【0010】
本発明の一態様は、上述の遠隔操縦システムであって、前記遠隔操縦装置は、前記移動体の前方画像を表示する表示装置を備え、前記表示装置は、前記オブジェクト生成部により生成された前記オブジェクトを、前記前方画像に重ねて表示する。
【0011】
本発明の一態様は、上述の遠隔操縦システムであって、前記遠隔操縦装置は、使用者の操作により前記表示装置に表示された前記オブジェクトを選択可能な選択部と、前記選択部により選択された前記オブジェクトの情報を前記制御装置に無線送信する送信部と、を備え、前記移動経路生成部は、前記送信部により無線送信された前記情報に基づいて前記選択部で選択された前記オブジェクトの方向に曲がるための移動径路を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、無人移動体を所望の分岐路へ確実に進入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る遠隔操縦システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制御装置2及び遠隔操縦装置3の具体的な構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る制御部23が作成した環境地図を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る移動経路生成部233の移動経路の生成方法を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態に係る分岐路モードにおける制御部23の動作の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る遠隔操縦システムAを、図面を用いて説明する。
【0015】
本発明の一実施形態に係る遠隔操縦システムAは、無人移動体Mを遠隔操縦するためのシステムである。本実施形態では、無人移動体Mが車両である場合について説明するが、これに限定されない。例えば、無人移動体Mは、ロボットであってもよい。また、上記車両とは、一般車両であってもよいし、土木工事や建築工事に使用されるショベルカー、ブルドーザあるいはクレーン車等の建設機械であってもよい。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る遠隔操縦システムの概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、遠隔操縦システムAは、撮像装置1、制御装置2、及び遠隔操縦装置3を備える。
【0017】
撮像装置1は、無人移動体Mに搭載されている。撮像装置1は、カメラ10及び距離センサ11(計測装置)を備える。
【0018】
カメラ10は、少なくとも無人移動体Mの前方の画像(以下、「前方画像」という。)を撮像する。カメラ10は、前方画像を制御装置2に送信する。
【0019】
距離センサ11は、無人移動体Mの周囲の障害物までの距離を計測する。例えば、距離センサ11は、レーザレンジファインダ(LRF)又はレーザレーダ等の二次元又は三次元の計測装置であって、無人移動体Mの周囲の形状を計測する。この周囲の形状とは、例えば、通行路の地面や周囲に存在する構造物の立体形状である。より具体的には、例えば、距離センサ11は、計測範囲に対してレーザ光を水平方向及び垂直方向に走査し、そのレーザ光の反射光から当該計測範囲内における複数の計測点の三次元座標値を取得することで、無人移動体Mの周囲を三次元計測する。距離センサ11は、計測データを制御装置2に送信する。
【0020】
制御装置2は、無人移動体Mに搭載されており、遠隔操縦装置3と無線通信することで無人移動体Mの動作を制御する。
以下に、本発明の一実施形態に係る制御装置2の構成について、具体的に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る制御装置2及び遠隔操縦装置3の具体的な構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、制御装置2は、第1無線通信部21、位置情報取得部22、及び制御部23を備える。
【0022】
第1無線通信部21は、遠隔操縦装置3と無線通信することで、遠隔操縦装置3と情報を送受する。遠隔操縦装置3と無線通信する通信方式は、例えば、携帯電話回線網などの移動体通信網、無線パケット通信網、特定小電力無線、又は無線LANによる通信方式である。なお、第1無線通信部21は、遠隔操縦装置3と無線通信するための無線アンテナを含む。
【0023】
位置情報取得部22は、無人移動体Mの現在位置の情報(以下、「位置情報」という。)を取得する、例えば、GNSS/IMU装置である。具体的には、位置情報取得部22は、無人移動体Mの位置情報をグローバル座標で取得する。例えば、位置情報取得部22は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて、無人移動体Mの現在位置をグローバル座標で取得する。そして、位置情報取得部22は、取得した無人移動体Mの位置情報を制御部23に出力する。
【0024】
制御部23は、カメラ10が撮像した前方画像と、距離センサ11が計測した計測データとを、第1無線通信部21を介して遠隔操縦装置3に送信する。
【0025】
制御部23は、第1無線通信部21を介して遠隔操縦装置3から遠隔操縦モード信号を取得した場合には、遠隔操縦モードに移行する。この遠隔操縦モードとは、遠隔操作部32により無人移動体Mを遠隔操縦するモードである。
【0026】
制御部23は、遠隔操縦モードに移行した場合には、第1無線通信部21を介して遠隔操縦装置3から取得した遠隔操縦指令に基づいて、無人移動体Mの走行を制御する。例えば、制御部23は、無人移動体Mの操縦室に設けられた操作ボタンや操作レバー等の操作機器が接続されているCANに接続し、その接続したCANを介して上記操作機器を操作することで、無人移動体Mの走行を制御する。
【0027】
一方、制御部23は、第1無線通信部21を介して遠隔操縦装置3から分岐路モード信号を取得した場合には、分岐路モードに移行する。この分岐路モードとは、無人移動体Mを分岐路に進入させるモードである。
【0028】
制御部23は、分岐路モードに移行すると、第1無線通信部21を介して遠隔操縦装置3から指示された方向に無人移動体Mを進入させる。
【0029】
以下に、本発明の一実施形態に係る制御部23における分岐路モードでの動作を実行するための機能について説明する。
【0030】
図2に示すように、制御部23は、環境地図作成部231、オブジェクト生成部232、移動経路生成部233、及び移動制御部234を備える。
【0031】
環境地図作成部231は、距離センサ11からの計測データに基づいて、無人移動体Mの周囲における2次元又は3次元の環境地図を作成する。図3は、本発明の一実施形態に係る制御部23が作成した環境地図を示す図である。
【0032】
オブジェクト生成部232は、図3に示すように、位置情報取得部22からの位置情報に基づいて、環境地図上における任意の位置に仮想的なオブジェクトPを生成する。例えば、このオブジェクトPとは、環境地図上において、ある位置を示すものであればよく、点であってもよいし、ある面積(例えば、円形状や多角形状)を有するものであってもよい。
【0033】
本実施形態では、オブジェクトPは、無人移動体Mの移動方向(走行方向)における任意の位置Oから所定の方向に一定距離だけ離れた位置に配置される。この所定の方向とは、現在の走行方向以外の方向であって、例えば、予め使用者が設定することができる。ここで、分岐路とは本線から無人移動体Mを分岐させるための道路である。
【0034】
オブジェクト生成部232は、環境地図上において、無人移動体Mの移動方向における任意の位置から複数の異なる方向に一定距離だけ離れたそれぞれの位置にオブジェクトPを生成してもよい。本実施形態では、分岐路として十字路を仮定し、所定の方向として、右折方向と左折方向との二つの方向にオブジェクトPが設定されているとする。したがって、図3に示すように、オブジェクト生成部232は、環境地図上において、位置Oから右方向に一定距離d1だけ離れた位置にオブジェクトP1及び位置Oから左方向に一定距離d1だけ離れた位置にオブジェクトP2を配置する。
【0035】
なお、オブジェクト生成部232は、位置Oと無人移動体Mとを結ぶ線(第1基準線)R1と、位置Oと各オブジェクトP1,P2とを結ぶ線(第2基準線)R2とを生成してもよい。この場合には、第2基準線R2の長さが上記一定距離d1となる。なお、第1基準線R1の長さは、任意に設定され、特に限定されない。
【0036】
このオブジェクトP1,P2は、無人移動体Mの移動に伴って移動する。例えば、オブジェクトP1,P2は、無人移動体Mの移動速度と同じ速度で、且つ無人移動体の移動方向と同じ方向に移動することになる。したがって、図3に示すように、オブジェクトP1,P2が第1基準線R1と第2基準線R2とからなるT字型の基準線を介して無人移動体Mの先頭に仮想的に固定されている状態となる。
【0037】
オブジェクト生成部232は、生成したオブジェクトP1,P2の情報を第1無線通信部21を介して一定周期ごとに遠隔操縦装置3に送信する。オブジェクトP1,P2の情報とは、例えば、オブジェクトP1,P2の位置情報や、オブジェクトP1,P2のそれぞれを識別する識別情報(以下、「オブジェクト識別情報」という。)である。
【0038】
移動経路生成部233は、オブジェクト生成部232が生成したオブジェクトP1,P2のうち、いずれかのオブジェクトが遠隔操縦装置3により選択された場合には、その選択されたオブジェクトの方向に曲がるための移動径路を生成する。
以下に、本発明の一実施形態に係る移動経路生成部233の移動経路の生成方法について、図を用いて説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る移動経路生成部233の移動経路の生成方法を説明する図である。
【0039】
例えば、オブジェクトP1,P2と分岐路とが重なった場合に(例えば、オブジェクトP1,P2が十字路に進入したときに)、オブジェクト生成部232が生成したオブジェクトP1,P2のうち、遠隔操縦装置3によりオブジェクトP1が選択されたとする。この場合には、移動経路生成部233は、選択されたオブジェクトP1の方向に曲がるための移動径路MPを生成する。より具体的には、移動経路生成部233は、選択されたオブジェクトP1のさらに一定距離d2だけ右方向に離れた点Psに向かう経路を移動径路MPとして生成する。これは、左方向に曲がる場合にも同様であって、例えば、移動経路生成部233は、オブジェクトP2が選択された場合には、その選択されたオブジェクトP2のさらに一定距離d2だけ左方向に離れた点に向かう経路を移動径路MPとして生成する。
【0040】
ただし、移動径路MPの生成には、移動径路MP上において、障害物Gが存在しないことが条件である。例えば、移動経路生成部233は、点Psに向かう経路を生成した場合に、その経路上に障害物Gが存在している場合には、移動経路MPを生成することができない。これは、例えば、遠隔操縦装置3によりオブジェクトPが選択されたタイミングが、オブジェクトP1,P2と分岐路とが重なったときではない場合が想定される。すなわち、環境地図上において、オブジェクトPの位置には分岐路が存在していないことを示す。
移動経路生成部233は、障害物の影響により移動経路MPを生成できなかった場合には、遠隔操縦装置3にその旨を通知する。
【0041】
移動制御部234は、移動経路生成部233により生成された移動経路MPに沿って無人移動体Mを移動させる。一方、移動制御部234は、移動経路生成部233により移動経路MPが生成されない場合には、無人移動体Mを分岐路に進入させることができないため、現在の無人移動体Mの走行状態を維持する。
【0042】
なお、制御部23は、移動経路MPに沿って無人移動体Mを移動させた後は、分岐路モードを脱出し、遠隔操縦モードに移行させる。また、制御部23は、移動経路MPが生成されなかった場合には、分岐路モードを脱出して遠隔操縦モードに移行させてもよいし、移動経路MPが生成されるまでは分岐路モードを継続してもよい。
【0043】
遠隔操縦装置3は、操縦者(使用者)により操作可能であって、無人移動体Mの動作を遠隔制御する。
【0044】
以下に、本発明の一実施形態に係る遠隔操縦装置3の構成について、具体的に説明する。遠隔操縦装置3は、第2無線通信部31(送信部)、遠隔操作部32、モード切替部33、及び表示装置34を備える。
【0045】
第2無線通信部31は、制御装置2と無線通信することで、制御装置2と情報を送受する。なお、第2無線通信部31は、制御装置2と無線通信するための無線アンテナを含む。
【0046】
遠隔操作部32は、制御装置2と無線通信することで無人移動体Mを遠隔操縦する。具体的には、遠隔操作部32は、操縦者の操作に応じた指令信号を遠隔操縦指令として、第2無線通信部31を介して制御装置2に無線送信する。この遠隔操縦指令は、無人移動体Mを遠隔操縦するための制御指令が情報として含まれている信号である。これにより、遠隔操作部32は、無人移動体Mを所望の方向に動かすことができる。例えば、遠隔操作部32は、ハンドルやジョイスティックである。
【0047】
モード切替部33は、無人移動体Mを遠隔操作するモードとして、上記遠隔操縦モードと上記分岐路モードとのいずれかに切り替え可能である。モード切替部33は、例えば、押ボタン等である。モード切替部33は、遠隔操縦モードに切り替えられた場合には、遠隔操縦モードを示す遠隔操縦モード信号を、第2無線通信部31を介して制御装置2に無線送信する。一方、モード切替部33は、分岐路モードに切り替えられた場合には、分岐路モードを示す分岐路モード信号を、第2無線通信部31を介して制御装置2に無線送信する。
【0048】
表示装置34は、表示部341、選択部342、及び出力部343を備える。
【0049】
表示部341は、第2無線通信部31を介して制御部23から取得した前方画像及び計測データを統合して表示画面に表示する。また、表示部341は、オブジェクト生成部232により生成されたオブジェクトP1,P2を、前方画像に重ねて表示する。なお、表示部341は、オブジェクト生成部232により生成されたオブジェクトP1,P2を、図3に示す環境地図上に重ねて表示してもよい。すなわち、表示部341は、オブジェクト生成部232により送信された、又は制御部23により送信されたオブジェクトP1,P2の情報に基づいて、そのオブジェクトP1,P2を、前方画像や環境地図に重ねて表示する。なお、表示部341は、オブジェクトP1,P2を、前方画像や環境地図に重ねて表示する場合には、そのオブジェクトP1,P2のそれぞれを、使用者が認識可能な程度に拡大又は縮小して表示してもよい。なお、表示部341に表示するオブジェクトP1,P2の形状と、環境地図上のオブジェクトP1,P2とは同一の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。また、環境地図上のオブジェクトP1,P2は点であり、表示部341に表示されるオブジェクトP1,P2は円形状等のある形状を有する図形であってもよい。
【0050】
選択部342は、分岐路モードにおいて、使用者の操作により表示部341に表示されたオブジェクトP1,P2(他多数)のそれぞれを選択可能である。例えば、選択部342は、タッチパネルであって、タッチペンや指などで押下された表示画面上のオブジェクトRを特定する。
【0051】
出力部343は、選択部342により特定された(使用者の操作により選択された)オブジェクトRの情報を、第2無線通信部31を介して第1無線通信部21に送信する。なお、オブジェクトRの情報とは、例えば、使用者の操作により選択されたオブジェクトRのオブジェクト識別情報である。
【0052】
次に、本発明の一実施形態に係る分岐路モードにおける制御部23の動作について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る分岐路モードにおける制御部23の動作の流れを示す図である。なお、初期条件として無人移動体Mは直進していると仮定する。
【0053】
まず、制御部23は、距離センサ11からの計測データに基づいて、無人移動体Mの周囲の環境地図を作成する(ステップS101)。ただし、本発明はこれに限定されず、制御部23は、分岐路モードに移行する前において環境地図を作成していてもよい。なお、この環境地図は一定周期ごとに更新される。
【0054】
オブジェクト生成部232は、環境地図上において、無人移動体Mの前方に配置され、且つ当該無人移動体Mの移動に伴って移動するオブジェクトPを生成する。このオブジェクトPの位置は、無人移動体Mの位置や環境地図の更新に伴って一定周期ごとに更新される。制御部23は、生成したオブジェクトPの情報を表示装置34に無線送信する(ステップS102)。
【0055】
表示装置34は、オブジェクト生成部232により送信されたオブジェクトP1,P2の情報に基づいて、そのオブジェクトP1,P2を、前方画像に重ねて表示部341に表示する。そして、使用者は、表示部341の表示画面を確認しながら、進入したい分岐路とオブジェクトPとがちょうど重なった時に、オブジェクトP1,P2のどちらかのオブジェクトを表示画面上において押下する。例えば、使用者は、所望の分岐路において無人移動体Mを右方向に移動させたい場合には、その分岐路とオブジェクトP1,P2とが重なったタイミングで、オブジェクトP1をタッチ操作する。これにより、選択部342は、使用者が選択したオブジェクトを特定することで選択することができる。このように、使用者は、無人移動体Mを進入させたい分岐路の方向に存在するオブジェクトPを選択部342を介して選択することで、無人移動体Mを移動させる方向と移動させるタイミングとを指定することができる。
【0056】
選択部342は、使用者が選択したオブジェクトを特定することで選択し、選択したオブジェクトの情報を制御装置2に無線送信する。
【0057】
制御部23は、遠隔操縦装置3によりオブジェクトが選択されたか否かを判定する(ステップS103)。例えば、制御部23は、遠隔操縦装置3の選択部342により選択されたオブジェクトの情報を取得した場合には、遠隔操縦装置3によりオブジェクトが選択されたと判定する。このステップ103の処理は、遠隔操縦装置3によりオブジェクトが選択されたと判定されるまで継続される。
【0058】
制御部23は、は、オブジェクト生成部232が生成したオブジェクトP1,P2のうち、遠隔操縦装置3から送信されたオブジェクトの情報に基づいて、選択部342により選択されたオブジェクトPを環境地図上において特定する。そして、制御部23は、特定したオブジェクトPの方向に曲がるための移動径路MPの生成を開始する(ステップS104)。
【0059】
制御部23は、移動径路MPの生成において、移動径路MP上に障害物を検知したか否かを判定する(ステップS105)。そして、制御部23は、生成した移動径路MP上において、障害物を検知していない場合には、移動経路MPの生成に成功したと判定する(ステップS106)。制御部23は、移動経路MPの生成に成功したと判定した場合には、その移動経路MPに沿って無人移動体を移動させる(ステップS107)。そして、制御部23は、分岐路モードを脱出して、遠隔操縦モードに移行する(ステップS108)。
【0060】
一方、制御部23は、ステップS105において、障害物を検知した場合には、移動経路MPの生成に失敗したと判定する(ステップS109)。制御部23は、移動経路MPの生成に失敗したと判定した場合には、その旨を遠隔操縦装置3に通知する(ステップS110)。これにより、遠隔操縦装置3は、制御部23から上記通知を受信した場合には、その通知に基づいて報知する。この報知とは、ブザーでもよいし、音声でもよいし、LED(Light Emitting Diode)の点灯又は点滅であってもよい。また、この報知とは、表示部341の表示画面にその旨の表示を行うことであってもよい。
【0061】
制御部23は、ステップS110において遠隔操縦装置3に通知した後、分岐路モードを脱出して、遠隔操縦モードに移行する(ステップS108)。
【0062】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0063】
(変形例1)上記実施形態では、位置Oは任意の位置としたが、例えば、無人移動体Mの移動速度に応じて設定されてよい。例えば、無人移動体Mの移動速度が速くなるにつれて、第1基準線R1の長さが長くなるように設定される。
【0064】
(変形例2)上記実施形態では、撮像装置1は、カメラ10と距離センサ11とを備えているが、これに限定されない。例えば、表示装置34が距離センサ11で計測した計測データに基づいて無人移動体Mの前方を画像表示可能であれば、撮像装置1は、カメラ10を備える必要がない。
【0065】
(変形例3)上記実施形態において、遠隔操縦装置3は、設置型であってもよいし、携帯型であってもよい。例えば、遠隔操縦装置3は、操縦者に装着して使用される。
【0066】
(変形例4)上記実施形態において、選択部342は、タッチパネルである場合として説明したが、これに限定されず、例えば、ボタンやジョイスティック等であってもよい。
【0067】
(変形例5)上記実施形態において、移動制御部234は、移動経路生成部233により移動経路MPが生成されない場合には、選択前の直進していた経路に戻るように無人移動体Mの走行を制御してもよい。また、移動制御部234は、分岐路モードにおいて、使用者の操作により選択部342を介してオブジェクトP1又はP2が選択された後に、当該選択がキャンセルされた場合には、キャンセルされた選択の前に直進していた経路に戻るように無人移動体Mの走行を制御してもよい。なお、本発明は上記選択をキャンセルする操作には特に限定されないが、例えば、長押しや複数回押下等がある。
【0068】
上述したように、本実施形態に係る遠隔操縦システムAは、無人移動体Mの移動に伴って環境地図上を移動するオブジェクトを生成し、その生成したオブジェクトが遠隔操縦装置3により選択された場合には、選択されたオブジェクトの方向に曲がるための移動径路に沿って無人移動体Mを移動させる。
【0069】
このように構成すれば、分岐路に進入する際にセンサ情報に基づく分岐路認識が不要になる。そのため、センサ性能に左右されずに、無人移動体Mを所望の分岐路へ確実に進入させることができる。
また、本実施形態に係る遠隔操縦システムAは、従来のような環境地図から分岐路を抽出する処理が不要となり、制御部23の処理負荷が低減される。
【0070】
また、従来では、センサにより障害物間の開口部を検出することで分岐路を認識しているため、障害物でなく白線で分岐路が規定されている場合には、その分岐路を認識することができない場合がある。また、通行路において障害物が散在している場合には、多数の開口部が検出され、その結果、多数の分岐路が検出されてしまう。
一方、本実施形態では、センサを用いる必要がないため、白線で分岐路が規定されている場合であっても、その分岐路に無人移動体Mを進入させることができる。また、本実施形態では、障害物間の開口部を検出していないため、通行路において障害物が散在している場合であっても、多数の分岐路が検出されることがない。
【符号の説明】
【0071】
A 遠隔操縦システム
M 無人移動体
1 撮像装置
2 制御装置
3 遠隔操縦装置
11 距離センサ(計測装置)
23 制御部
31 第2無線通信部
32 遠隔操作部
34 表示装置
231 環境地図作成部
232 オブジェクト生成部
233 移動経路生成部
342 選択部
図1
図2
図3
図4
図5