【解決手段】電気的に接続された複数の光発電部26と、複数の光発電部26間の電流経路上に設けられた保護素子2と、保護素子2を作動させるスイッチ3とを備え、保護素子2は、光発電部26の電流経路を不可逆的に遮断する。
上記保護素子は、上記スイッチと接続され上記発熱体へ通電させる制御経路と、上記光発電部の電流経路と接続され上記可溶導体が接続された作動経路とを有し、上記制御経路と上記作動経路とが電気的に分離され、熱的に接続されている請求項7に記載の保護回路。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術が適用された保護回路について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
[保護回路1]
本発明が適用された保護回路1は、発電システムに用いられ、特に太陽光発電システムに好適に用いられるものであり、発電部位からの通電経路を遮断することで、火災等の異常時に強制的に発電電流の送電を停止し、感電や出火等の二次災害を防止するものである。以下では、本発明が適用された保護回路1が用いられる発電システムとして太陽光発電システムを例に説明する。
【0014】
[太陽光発電システム]
太陽光発電システム10は、一例として
図1に示すように、太陽電池アレイ11、接続箱12、パワーコンディショナ13、漏電遮断器14、分電盤15、電力量計16、各部をつなぐ配線等から構成されている。
【0015】
出力で見ると、メガソーラー発電所は文字通り数MW〜数十MWで、住宅用太陽光発電システムは数kWである。太陽電池が発生する電力を集め作り出された直流電圧は、メガソーラー発電所が600〜1000Vなのに対し、住宅用太陽光発電システムは250〜300Vである。
【0016】
[太陽電池アレイ]
図2に示すように、太陽電池アレイ11は、日射等を受けて光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池セル21と、複数の太陽電池セル21が直列に接続された太陽電池モジュール22と、複数の太陽電池モジュール22が直列に接続されたストリング23から構成されている。通常、太陽電池モジュール22が1枚の太陽電池パネルを構成する。なお、太陽電池モジュール22の中はいくつかのクラスタ24に分かれていて、不具合のある太陽電池セル21に電流が流れ込まないようにするためのバイパスダイオード25がクラスタ24毎に組み込まれている(
図4)。
【0017】
本出願では、太陽電池アレイ11を構成する、光電変換により発電を行うこれら太陽電池セル21、太陽電池モジュール22、ストリング23、及びクラスタ24を総称して光発電部26と称する。
【0018】
太陽電池アレイ11は、太陽電池モジュール22が直列に接続されたストリング23が、複数並列されることで、所定の電圧及び所定の電流量を確保している。例えば住宅用太陽光発電システムでは、電圧約30V、電流約10Aの太陽電池モジュール22を用いて、出力約250〜300Wの太陽光発電システムを構築する。
【0019】
太陽電池セル21は、結晶シリコン系、薄膜シリコン系、化合物半導体等があり、製造コスト、発電効率、波長特性、電池の厚さ等を考慮して選択される。
図3に、太陽電池セル21の構造の一例として、結晶シリコン系太陽電池セル21Aを用いた太陽電池モジュール22Aと、化合物半導体系太陽電池セル21Bを用いた太陽電池モジュール22Bの断面構造を示す。
【0020】
図3(A)に示すように、結晶シリコン系太陽電池セル21Aは、太陽光の当たる表面に設けられた強化ガラス30、セルを固定する樹脂製の封止材31、裏面保護用の耐候性のあるバックシート32で構成されている。
図3(B)に示すように、化合物半導体系太陽電池セル21Bは、太陽光の当たる表面に設けられた強化ガラス30、樹脂製の封止材31、太陽電池が蒸着されている基板ガラス33、裏面保護用のバックシート32で構成されている。
【0021】
封止材31は、一般的にEVA(Ethylene-vinyl acetate copolymer)が用いられる。バックシート32は、一般的にPVF(Polyvinyl fluoride)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、PET(Polyethylene terephthalate)、アルミシート等が用いられる。
【0022】
接続箱12は、並列に構成された複数のストリング23の出力を合成し太陽電池アレイ11の出力としてパワーコンディショナ13へ送り出すための接続端子が内蔵されている。接続箱12は、電圧の高いストリング23から低いストリング23に電流が逆流するのを防止するためのブロッキングダイオードや、電路を遮断する開閉器、雷対策としての避雷器が内蔵されている。
【0023】
パワーコンディショナ13は、接続箱12より供給されてくる電流と電圧を制御して最大の直流電力が得られるようにするとともに、直流電力を交流電力に変換し、住宅内コンセントへの供給や売電を行う。また、商用電力網に悪影響を及ぼさないように連係保護装置を内蔵している。なお、パワーコンディショナ13に接続箱12の機能を併用させてもよい。
【0024】
漏電遮断器14は、電力系統から漏電があった場合に電力を遮断する。分電盤15は、電力をコンセント等の電気機器に分配するものであり、太陽光発電システム1専用のブレーカを持つ。電力量計16は、電力会社へ売った電力の積算や、電力会社から購入した電力の積算を行う。その他に、発電状況や売電状況を表示する外部モニタ、発電した電力を貯めておくための蓄電池及び充電装置、太陽の日射をモニタリングする日射計等を付加してもよい。
【0025】
[保護回路1]
図5は、本発明が適用された保護回路を示す回路図である。
図5に示すように、本発明が適用された保護回路1は、光発電部26と、光発電部26の電流経路上に設けられた保護素子2と、保護素子2を作動させるスイッチ3とを備える。保護回路1は、スイッチ3の動作に応じて光発電部26の電流経路上に設けられた保護素子2を作動させ、光発電部26の電流経路を遮断するものである。これにより、保護回路1は、火災等の異常時に強制的に光発電部26により発電された電流の送電を停止し、感電等の二次災害を防止することができる。
【0026】
保護回路1は、光発電部26の電流経路上に保護素子2が設けられ、好ましくは、
図5に示すように、各太陽電池モジュール22間に設けられる。これにより、各太陽電池モジュール22間を分断し、複数の太陽電池モジュール22が接続されることにより給電経路に流れる電力の増大を防止できる。また、電流経路の遮断時には太陽電池モジュール22より保護素子2に電力が供給されるが、各保護素子2に印加される電圧は太陽電池モジュール22で発電した電圧(例えば30V前後)となるため、太陽電池モジュール22の定格と同程度の定格を有する保護素子2を用いることができる。
【0027】
なお、保護回路1は、複数の太陽電池モジュール22が直列に接続された給電経路に複数の太陽電池モジュール22間毎に間欠的に設けてもよく、太陽電池セル21毎、クラスタ24毎、あるいはストリング23毎に設けてもよい。また、保護素子2を設ける間隔は、保護素子2の作動時に光発電部26から保護素子2に流れる電力の許容量、光発電部26を構成する太陽電池モジュール22等の数や出力等に応じて適宜設計することができ、複数の光発電部26毎に保護素子2を設けてもよく、例えば2つの太陽電池モジュール22につき1つの保護素子2を設けてもよい。
【0028】
以下の説明では、
図5に示すように、保護素子2を各太陽電池モジュール22間に設けた保護回路1を例に説明する。
図6に示すように、保護素子2は、太陽電池モジュール22の電流経路に直列に接続された第1、第2の電極41,42と、第1、第2の電極41,42間に接続されたヒューズ43と、スイッチ3により導通が制御される発熱体44とを有する。
【0029】
発熱体44は、通電により発熱することによりヒューズ43を溶断させ太陽電池モジュール22の電流経路を遮断するものであり、一端を太陽電池モジュール22間の電流経路に接続され、他端をスイッチ3に接続されている。
【0030】
スイッチ3は、例えばFETにより形成され、火災などの緊急時に光発電部26の電流経路を一斉に遮断する制御回路45と接続されるとともに、発熱体44と太陽電池モジュール22間の電流経路との間に設けられている。そして、スイッチ3は、正常時には太陽電池モジュール22で発生した電気の発熱体44への通電を停止しており、制御回路45から出力される太陽光発電システム10の遮断信号を受信すると太陽電池モジュール22で発生した電気を発熱体44に通電させる。
【0031】
制御回路45は、太陽光発電システム10の電流経路の遮断を一元的に管理するための回路であり、緊急時に操作されることによりスイッチ3を発熱体44が通電されるように切り替える。この制御回路45の操作は、太陽光発電システム10の非常停止ボタンの操作等の非常停止動作や、ネットワークを介した遠隔操作等により行ってもよく、熱・煙・震度等に応じて駆動するスイッチに連動するようにしてもよい。
【0032】
[保護素子2の具体例]
次いで、保護素子2の具体例について説明する。
図7に示すように、保護素子2は、絶縁基板50と、絶縁基板50に設けられ、光発電部26の電流経路に直列に接続された第1、第2の電極41,42と、絶縁基板50に設けられ、スイッチ3により導通が制御される発熱体44と、絶縁基板50上に発熱体44と重畳するように積層され、発熱体44に電気的に接続された発熱体引出電極56と、両端が第1、第2の電極41,42にそれぞれ接続され、中央部が発熱体引出電極56に接続された可溶導体54(ヒューズ43)とを備える。また、保護素子2は、絶縁基板50上に内部を保護するカバー部材(図示せず)が取り付けられている。保護素子2は、発熱体44の発熱で可溶導体54を溶断させることにより、光発電部26の電流経路を遮断することができる。
【0033】
絶縁基板50は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアな
どの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、絶縁基板50は、ガラス
エポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0034】
絶縁基板50の相対向する両端部には、第1、第2の電極41,42が形成されている。第1、第2の電極41,42は、それぞれ、AgやCu配線等の導電パターンによって形成することができる。また、第1、第2の電極41,42は、絶縁基板50の表面50aより、キャスタレーションを介して裏面50bに形成された第1、第2の外部接続電極41a,42aと連続されている。保護素子2は、裏面50bに形成された第1、第2の外部接続電極41a,42aが、保護素子2が実装される回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0035】
発熱体44は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体44は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合してペースト状にしたものを、絶縁基板50上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0036】
また、保護素子2は、発熱体44が絶縁部材58によって被覆され、絶縁部材58を介して発熱体44と対向するように発熱体引出電極56が形成されている。発熱体引出電極56は可溶導体54が接続され、これにより発熱体44は、絶縁部材58及び発熱体引出電極56を介して可溶導体54と重畳される。絶縁部材58は、発熱体44の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体44の熱を効率よく可溶導体54へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。
【0037】
なお、発熱体44は、絶縁基板50に積層された絶縁部材58の内部に形成してもよい。また、発熱体44は、第1、第2の電極41,42が形成された絶縁基板50の表面50aと反対側の裏面50bに形成してもよく、あるいは、絶縁基板50の表面50aに第1、第2の電極41,42と隣接して形成してもよい。また、発熱体44は、絶縁基板50の内部に形成してもよい。
【0038】
また、発熱体44は、一端が第1の発熱体電極59と接続されるとともに第1の発熱体電極59を介して発熱体引出電極56と接続され、他端が第2の発熱体電極60と接続されている。発熱体引出電極56は、絶縁基板50の表面50a上に形成されるとともに発熱体44と接続された第1の発熱体電極59と接続され、発熱体44と対向して絶縁部材58上に積層されるとともに可溶導体54と接続される。これにより、発熱体44は、発熱体引出電極56を介して可溶導体54と電気的に接続されている。なお、発熱体引出電極56は、絶縁部材58を介して発熱体44に対向配置されることにより、可溶導体54を溶融させるとともに、溶融導体を凝集しやすくすることができる。
【0039】
第2の発熱体電極60は、絶縁基板50の表面50a上に形成され、キャスタレーションを介して絶縁基板50の裏面50bに形成された発熱体給電電極と連続されている。
【0040】
保護素子2は、第1の電極41から発熱体引出電極56を介して第2の電極42にわたって可溶導体54が接続されている。可溶導体54は、接続用ハンダ等の接続材料を介して第1、第2の電極41,42及び発熱体引出電極56上に接続されている。
【0041】
可溶導体54は、例えば、全体の厚さが略100μm程度の略矩形板状に形成され、
図8に示すように、第1、第2の電極41,42及び発熱体引出電極56にハンダ接続されている。可溶導体54は、内層を構成する低融点金属層63と、低融点金属層63よりも融点が高く外層を構成する高融点金属層64とを有する。
【0042】
低融点金属層63は、例えばSn又はSnを主成分とする合金でPbフリーハンダと一般的に呼ばれる材料、その他の低融点金属が好適に用いられる。低融点金属層2の融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。また、低融点金属層2は、さらに低い120℃〜140℃程度で溶融するBi、In又はBi若しくはInを含む合金を用いてもよい。
【0043】
高融点金属層64は、例えば、Ag、Cu又はAg若しくはCuを主成分とする合金が好適に用いられ、可溶導体54をリフロー炉によって絶縁基板50上に実装を行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0044】
このような可溶導体54は、
図7(B)に示すように、保護素子2の絶縁基板50に設けられた第1、第2の電極41,42間にわたって搭載された後、リフロー加熱される。これにより、可溶導体54は、接続用ハンダを介して第1、第2の電極41,42にハンダ接続される。
【0045】
また、可溶導体54は、低抵抗の高融点金属層64が積層されて構成されているため、従来の鉛系高融点ハンダを用いた可溶導体に比べ、導体抵抗を大幅に低減することができ、同一サイズの従来のチップヒューズ等に比して、電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化を図ることができる。
【0046】
さらに、可溶導体54は、高融点金属層64よりも融点の低い低融点金属層63を備えているため、発熱体44の通電による発熱により、低融点金属層63の融点から溶融を開始し、速やかに溶断させることができる。例えば、低融点金属層63をSn‐Bi系合金やIn‐Sn系合金などで構成した場合、可溶導体54は、140℃や120℃前後という低温度から溶融を開始する。そして、溶融した低融点金属層63が高融点金属層64を浸食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層64が自身の融点よりも低い温度で溶融する。したがって、可溶導体54は、低融点金属層63による高融点金属層64の浸食作用を利用して、更に速やかに溶断させることができる。
【0047】
[フラックス]
また、保護素子2は、高融点金属層64又は低融点金属層63の酸化防止と、溶断時の酸化物除去及びハンダの流動性向上のために、可溶導体54の表面や裏面にフラックス65をコーティングしてもよい。フラックス65をコーティングすることにより、保護素子2の実使用時において、低融点金属層2(例えばハンダ)の濡れ性を高めるとともに、低融点金属が溶解している間の酸化物を除去し、高融点金属(例えばAg)への浸食作用を用いて溶断特性を向上させることができる。
【0048】
また、フラックス65をコーティングすることにより、最外層の高融点金属層64の表面に、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の酸化防止膜を形成した場合にも、当該酸化防止膜の酸化物を除去することができ、高融点金属層64の酸化を効果的に防止し、溶断特性を維持、向上することができる。
【0049】
なお、第1、第2の電極41,42、発熱体引出電極56及び第1、第2の発熱体電極59,60は、例えばAgやCu等の導電パターンによって形成され、適宜、表面にSnメッキ、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の保護層が形成されていることが好ましい。これにより、表面の酸化を防止するとともに、可溶導体54の接続用ハンダ等の接続材料による第1、第2の電極41,42及び発熱体引出電極56の浸食を抑制することができる。
【0050】
[保護回路の動作]
[回路図]
本技術が適用された保護素子2は、
図9に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子2は、発熱体引出電極56を介して第1、第2の電極41,42間にわたって直列接続された可溶導体54(ヒューズ43)と、可溶導体54の接続点を介して通電して発熱させることによって可溶導体54を溶融する発熱体44とからなる回路構成である。そして、保護素子2は、第1、第2の電極41,42及び第2の発熱体電極60とそれぞれ接続された第1、第2の外部接続電極41a,42a及び発熱体給電電極が、外部回路基板に接続される。これにより、保護素子2は、可溶導体54が第1、第2の電極41,42を介して太陽電池モジュール22の電流経路上に直列接続され、発熱体44が第2の発熱体電極60を介してスイッチ3と接続される。
【0051】
[溶断工程]
このような回路構成からなる保護素子2は、太陽光発電システム10の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられたスイッチ3によって発熱体44が通電される。
【0052】
ここで、保護素子2を各太陽電池モジュール22間に設けた保護回路1では、
図5に示すように、各保護素子2の第2の発熱体電極60が発熱体給電電極を介してそれぞれスイッチ3に接続されている。また、
図5に示す保護回路1では、各スイッチ3は、制御回路45に接続され、制御回路45により統一的にスイッチ3のオンとオフが制御され、正常時においては各保護素子2の作動が停止されている。そして、火災等の太陽電池モジュール22の電流経路を遮断する必要が生じた場合には、非常停止ボタンの操作等に応じて制御回路45により各スイッチ3へ作動信号が出力される。各スイッチ3は、制御回路45の作動信号を受信することにより、発熱体44への通電を可能とする。
【0053】
これにより、保護素子2は、発熱体44の発熱により、光発電部26の電流経路上に組み込まれた可溶導体54が溶融され、
図10に示すように、可溶導体54の溶融導体が、濡れ性の高い発熱体引出電極56及び第1、第2の電極41,42に引き寄せられることにより可溶導体54が溶断される。これにより、可溶導体54は、確実に第1の電極41〜発熱体引出電極56〜第2の電極42の間を溶断させ(
図9(B))、太陽電池モジュール22間の電流経路を遮断することができる。また、可溶導体54が溶断することにより、発熱体44への給電も停止される。
【0054】
このとき、可溶導体54は、発熱体44の発熱により、高融点金属層64よりも融点の低い低融点金属層63の融点から溶融を開始し、高融点金属層64を浸食し始める。したがって、可溶導体54は、低融点金属層63による高融点金属層64の浸食作用を利用することにより、高融点金属層64が溶融温度よりも低い温度で溶融され、速やかに太陽電池モジュール22の電流経路を遮断することができる。
【0055】
そして、
図5に示す保護回路1は、太陽電池モジュール22間に設けた各保護素子2が作動することにより、太陽電池モジュール22間の電流経路が遮断されるため、太陽電池モジュール22の送電を強制的に停止することができ、電圧が30V程度、電流が10A程度の太陽電池モジュール22が複数直並列されることにより生み出される大きな電力による感電事故や出火等の二次災害を防止することができる。
【0056】
また、保護回路1は、保護素子2の可溶導体54が溶断することにより不可逆的に電流経路を遮断するため、消火後の温度が下がったとき等においても太陽電池モジュール22間の接続が復帰し、大電流が流れることもない。
【0057】
[保護回路の変形例1(リレースイッチ)]
また、本技術が適用された保護回路は、保護素子2を作動させるスイッチを、リレースイッチによって構成してもよい。なお、以下の説明において、上述した保護回路1、及び保護素子2と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細を省略する。
【0058】
図11に示す保護回路70は、スイッチとしてリレースイッチ71を用いている点を除き、上記保護回路1と同じ構成を有する。保護回路70は、保護素子2の発熱体44がリレースイッチ71を経て太陽電池モジュール22の電流経路と接続されている。リレースイッチ71は、オフとオンが切り替えられる出力系が太陽電池モジュール22と並列されるとともに上記発熱体44と接続されている。また、リレースイッチ71は、出力系を切り替える入力系が制御回路45と接続されている。そして、リレースイッチ71は、入力系が制御回路45から作動信号を受信すると発熱体44への給電経路を閉じるように出力系が切り替えられる。
【0059】
保護回路70は、スイッチとしてリレースイッチ71を用いているため、制御回路45からの入力系の定格電圧を太陽電池モジュール22の電圧と切り離して設定することができる。したがって、保護回路70は、定格の大きなデバイスを用いることなく簡易かつ安価に構成することができる。
【0060】
[保護回路の変形例2(電気・熱分離)]
また、本技術が適用された保護回路は、太陽電池モジュール22の電流経路を遮断する保護素子として、電流経路に接続され可溶導体を有する作動経路と、スイッチと接続されるとともに可溶導体を溶断する発熱体を備える制御経路とを有し、作動経路と制御経路とが電気的に独立して形成されている保護素子を用いてもよい。なお、以下の説明において、上述した保護回路1、及び保護素子2と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細を省略する。
【0061】
図12に示す保護回路80は、光発電部26の電流経路上に接続される保護素子81と、保護素子81を駆動させるスイッチ3とを備える。
図13に示すように、保護素子81は、光発電部26の電流経路に接続され第1のヒューズ82(第1の可溶導体97)を有する作動経路83と、スイッチ3と接続されるとともに第1のヒューズ82を溶断する発熱体44を備える制御経路84とを有する。作動経路83は、第1のヒューズ82によって接続された第1、第2の電極41,42が光発電部26の電流経路に直列に接続されている。制御経路84は、発熱体44の一端がスイッチ3を介して外部電源86と接続され、発熱体44の他端がアース105に接続されている。なお制御経路84は、第2のヒューズ85が設けられ、発熱体44の熱により第1のヒューズ82の遮断後に第2のヒューズ85が発熱体44の熱によって遮断され、外部電源86からの給電が停止される。
【0062】
保護素子81は、スイッチ3によって発熱体44への通電が制御されるとともに、発熱体44の近傍に第1のヒューズ82が設けられ、発熱体44が通電発熱すると第1のヒューズ82が溶融遮断される。すなわち、保護素子81は、作動経路83と制御経路84とが電気的に独立し、熱的に接続されている。
【0063】
このような保護素子81を備える保護回路80によれば、光発電部26の電流経路上に組み込まれる作動経路83と、作動経路83を遮断させる制御経路84とが、電気的に独立しているため、光発電部26の定格によらず、発熱体44に対して第1のヒューズ82を溶断させるのに十分な発熱量を得る電力を供給することができる。
【0064】
[保護素子81]
次いで、保護素子81の構成例について説明する。保護素子81は、
図14に示すように、絶縁基板90と、絶縁基板90に形成され、作動経路83を構成する第1の電極91及び第2の電極92と、絶縁基板90に形成され、制御経路84を構成する第3の電極93、第4の電極94及び第5の電極95と、第1及び第2の電極91,92間にわたって搭載された第1の可溶導体97(第1のヒューズ82)と、第3及び第4の電極93,94間に接続された発熱体44と、第4及び第5の電極94,95間にわたって搭載された第2の可溶導体(第2のヒューズ85)99とを備える。
図14(A)は、保護素子81の平面図であり、
図14(B)は、A−A‘断面図であり、
図14(C)は断面図である。
【0065】
絶縁基板90は、上述した絶縁基板50と同じ部材によって形成することができる。
【0066】
[第1及び第2の電極:作動経路]
第1及び第2の電極91,92は、絶縁基板90の表面90a上に形成されるとともに、後述する絶縁部材101上に積層されている。また、第1及び第2の電極91,92は、スルーホール100を介して絶縁基板90の裏面90bに形成された外部接続端子91a,92aと連続され、外部接続端子91a,92aを介して光発電部26の電流経路上に接続されている。
【0067】
第1及び第2の電極91,92は、第1の可溶導体97が搭載されることにより電気的に接続されている。これにより、保護素子81は、第1の電極91〜第1の可溶導体97〜第2の電極92に至る作動経路83を構成し、作動経路83は、保護素子81が実装される回路基板上に形成された太陽電池モジュール22の電流経路の一部に組み込まれる。
【0068】
[発熱体]
発熱体44は、絶縁基板90の表面90aに積層され、絶縁部材101に覆われている。発熱体44は、一端が第3の電極93と接続され、他端が第4の電極94と接続されている。
【0069】
発熱体44を覆うように絶縁部材101が配置され、この絶縁部材101を介して発熱体44と重畳するように第1の電極91、第2の電極92、第4の電極94及び第5の電極95が積層されている。絶縁部材101としては、例えばガラスを用いることができる。なお、保護素子81は、発熱体44の熱を効率良く第1の可溶導体97に伝えるために、発熱体44と絶縁基板90の間にも絶縁部材を積層し、発熱体44を絶縁基板90の表面に形成された絶縁部材101の内部に設けても良い。
【0070】
[第3〜第5の電極:制御経路]
第3の電極93は、絶縁基板90の表面90a上に形成され、発熱体44の一端と接続されている。第4の電極94は、絶縁基板90の表面90a上に形成されることにより発熱体44の他端と接続されるとともに、絶縁部材101上に積層されている。第5の電極95は、絶縁部材90の表面90a上に形成されるとともに、絶縁部材101上に積層されている。なお、第3の電極93及び第5の電極95は、スルーホール100を介して絶縁基板90の裏面90bに形成された外部接続端子93a,95aと連続されている。制御経路84は、外部接続端子93a,95aを介して一端がスイッチ3と接続され、他端がアース105と接続されている。
【0071】
第4及び第5の電極94,95は、絶縁部材101上において、第2の可溶導体99が搭載されることにより電気的に接続されている。これにより、第3〜第5の電極93〜95は、上記作動経路83と電気的に独立した制御経路84を構成する。制御経路84は、作動経路83の第1の可溶導体97を加熱、溶断するための回路であり、第1の可溶導体97を溶断し作動経路83を遮断した後は、第2の可溶導体99を溶断することで自身も遮断し、発熱体44への給電を停止する。
【0072】
[可溶導体]
第1、第2の可溶導体97,99は、上述した可溶導体54と同じ材料、構成により形成することができる。
【0073】
なお、第1、第2の可溶導体97,99は、第1及び第2の電極91,92上、第4及び第5の電極94,95上へ、ハンダ等を用いて接続されている。また、第1の可溶導体97の外層として、高周波特性の良好な銀メッキ層を形成することが好ましい。これにより、第1の可溶導体97は、表皮効果による低抵抗化を図り高周波特性を向上させるとともに、瞬間的な大電流が流れた際にも外層の銀メッキ層を流れ、自己発熱による溶断を防止する耐パルス性を向上させることができる。
【0074】
[第1の可溶導体の先溶融]
ここで、保護素子81は、作動経路83の第1の可溶導体97が、制御経路84の第2の可溶導体99よりも先に溶断するように形成されている。第1の可溶導体97よりも先に第2の可溶導体99が溶断すると、発熱体44への給電が停止され、第1の可溶導体97を溶断することができなくなるからである。
【0075】
そこで、保護素子81は、発熱体44が発熱すると、第1の可溶導体97が先に溶断するように形成されている。具体的に、保護素子81の第1の可溶導体97は、第2の可溶導体99よりも、発熱体44の発熱中心に近い位置に搭載されている。
【0076】
ここで、発熱体44の発熱中心とは、発熱体44が発熱することにより発現する熱分布のうち、発熱初期の段階で最も高温となる領域をいう。発熱体44より発せされる熱は絶縁基板90からの放熱量が最も多く、絶縁基板90を、耐熱衝撃性に優れるが熱伝導率も高いセラミックス材料により形成した場合などには、絶縁基板90に熱が拡散してしまう。そのため、発熱体44は通電が開始された発熱初期の段階では、絶縁基板90と接する外縁から最も遠い中心が最も熱く、絶縁基板90と接する外縁に向かうにつれて放熱されて温度が上がりにくくなる。
【0077】
そこで、保護素子81は、第1の可溶導体97を、第2の可溶導体99よりも、発熱体44の発熱初期において最も高温となる発熱中心に近い位置に搭載することにより、第2の可溶導体99よりも早く熱が伝わり、溶断するようにする。第2の可溶導体99は、第1の可溶導体97より遅れて加熱されるため、第1の可溶導体97が溶断した後に溶断される。
【0078】
また、保護素子81は、第1、第2の可溶導体97,99の形状を変えることにより、第1の可溶導体97が先に溶断するようにしてもよい。例えば、第1、第2の可溶導体97,99は、断面積が小さいほど溶断が容易となることから、保護素子81は、第1の可溶導体97の断面積を第2の可溶導体99の断面積よりも小さくすることにより、第2の可溶導体99よりも先に溶断させることができる。
【0079】
また、保護素子81は、第1の可溶導体97を第1、第2の電極91,92間の電流経路に沿って幅狭かつ長く形成し、第2の可溶導体99を第4,第5の電極94,95間の電流経路に沿って幅広かつ短く形成してもよい。これにより、第1の可溶導体97は、第2の可溶導体99よりも相対的に溶断しやすい形状となり、発熱体44の発熱により、第2の可溶導体99よりも先に溶断する。
【0080】
また、保護素子81は、第1の可溶導体97の材料として、第2の可溶導体99の材料よりも融点の低いもので形成してもよい。これによっても、発熱体44の発熱により第1の可溶導体97を第2の可溶導体99よりも溶断しやすくし、確実に第1の可溶導体97を第2の可溶導体99よりも先に溶断させることができる。
【0081】
その他にも、保護素子81は、第1の可溶導体97と第2の可溶導体99の層構造を変えることによって融点に差を設け、相対的に第1の可溶導体97を第2の可溶導体99よりも溶断しやすくし、発熱体44の発熱により、第1の可溶導体97を第2の可溶導体99よりも先に溶断させるようにしてもよい。
【0082】
[その他]
なお、第1、第2の可溶導体97,99の酸化防止、及び第1、第2の可溶導体97,99の溶融時における濡れ性を向上させるために、第1、第2の可溶導体97,99の上にはフラックス102が塗布されている。
【0083】
また、保護素子81は、絶縁基板90がカバー部材103に覆われることによりその内部が保護されている。カバー部材103は、上記絶縁基板90と同様に、たとえば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成されている。
【0084】
[回路構成]
保護素子81を各太陽電池モジュール22間に設けた保護回路80は、
図12に示すように、各保護素子81の外部接続端子95aがそれぞれスイッチ3に接続されている。また、保護回路80は、各スイッチ3が制御回路45に接続され、制御回路45により統一的にスイッチ3のオンとオフが制御され、正常時においては各保護素子81の作動が停止されている。そして、火災等の太陽電池モジュール22の電流経路を遮断する必要が生じた場合には、非常停止ボタンの操作等に応じて制御回路45により各スイッチ3へ作動信号が出力される。各スイッチ3は、制御回路45の作動信号を受信することにより、発熱体44への通電を可能とする。
【0085】
これにより、保護素子81は、発熱体44の発熱により、太陽電池モジュール22の電流経路上に組み込まれた第1の可溶導体97が溶融され、
図15に示すように、第1の可溶導体97の溶融導体が、濡れ性の高い第1、第2の電極91,92に引き寄せられることにより第1の可溶導体97が溶断される。これにより、第1の可溶導体97は、確実に第1の電極91〜第2の電極92間の作動経路83を溶断させ(
図15(B))、太陽電池モジュール22間の電流経路を遮断することができる。
【0086】
また、第1の可溶導体97が第2の可溶導体99よりも先に溶断されるため、制御経路84は、作動経路83が遮断するまで確実に発熱体44に給電し、発熱させることができる。発熱体44は、第1の可溶導体97の溶断後も発熱を続けるが、第1の可溶導体97に続き第2の可溶導体99も溶断することにより、制御経路84も遮断される(
図16(A)(B)(C))。これにより、発熱体44への給電も停止される。
【0087】
このような保護回路80によれば、光発電部26の電流経路に組み込まれる作動経路83と、作動経路83を遮断させる制御経路84とが、電気的に独立しているため、光発電部26の定格によらず、発熱体44に対して第1の可溶導体97を溶断させるのに十分な発熱量を得る電力を供給することができる。したがって、保護回路80によれば、発熱体44への給電を制御するスイッチ3を、作動経路83の定格に関わらず、発熱体44の定格に応じて選択することができ、定格の大きなデバイスを用いることなく簡易かつ安価に制御経路84を構成することができる。