特開2019-150796(P2019-150796A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-150796(P2019-150796A)
(43)【公開日】2019年9月12日
(54)【発明の名称】脱硫装置の運転監視システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20190816BHJP
   B01D 53/77 20060101ALI20190816BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20190816BHJP
【FI】
   B01D53/50 245
   B01D53/77ZAB
   B01D53/14 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-39286(P2018-39286)
(22)【出願日】2018年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】神山 直行
(72)【発明者】
【氏名】香川 晴治
(72)【発明者】
【氏名】牛久 哲
(72)【発明者】
【氏名】盛 祥悟
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA14
4D002CA01
4D002DA05
4D002DA16
4D002EA12
4D002FA03
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB06
4D002GB08
4D002GB09
4D002GB20
4D020AA06
4D020BA02
4D020BA09
4D020BB03
4D020BC05
4D020CB25
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB03
4D020DB05
4D020DB07
4D020DB08
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】脱硫装置の性能低下を精度よく且つ早期に検知可能な脱硫装置の運転監視システムを提供する。
【解決手段】吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転監視システムは、脱硫装置の運転データに基づいて脱硫性能に関する解析性能を算出するとともに、対応する実測性能を取得する。そして解析性能と実測性能との比率である性能比を算出することにより、脱硫性能を評価する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転監視システムであって、
前記脱硫装置の運転データを取得する運転データの入力・取得部と、
前記運転データの入力・取得部で取得された前記運転データに基づいて、前記脱硫装置の脱硫性能に関する少なくとも一つの解析性能を算出する解析性能算出部と、
前記解析性能の実測性能を取得する実測性能取得部と、
前記解析性能算出部で算出された前記解析性能と、前記実測性能取得部で取得された前記実測性能との比率である性能比を算出する性能比算出部と、
を備える、脱硫装置の運転監視システム。
【請求項2】
前記脱硫装置を監視することにより前記運転データを測定及び/又は入力可能なローカル監視システムと、
前記ローカル監視システムとネットワークを介して通信可能であり、前記運転データの入力・取得部、前記解析性能算出部、前記実測性能取得部、及び、前記性能比算出部を含む遠隔監視システムと、
を備える、請求項1に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項3】
前記遠隔監視システムは、前記性能比算出部で算出された前記性能比に基づく評価結果を選択的に前記ローカル監視システムに送信可能である、請求項2に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項4】
前記運転データは前記吸収剤の量を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項5】
前記性能比は、前記解析性能の対数値と前記実測性能の対数値との比率である、請求項1から4のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項6】
前記解析性能は、前記脱硫装置の構造パラメータ又は前記吸収剤の化学反応パラメータの少なくとも一方に基づいて算出される、請求項1から5のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項7】
前記性能比算出部で算出された前記性能比を予め用意された閾値と比較することにより、前記脱硫装置の性能低下の有無を判定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項8】
前記閾値は、前記脱硫装置が設置されるプラントの固有性能に基づいて設定される、請求項7に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項9】
前記性能比算出部は、前記解析性能算出部で算出される複数の前記解析性能の各々について前記性能比を算出する、請求項1から8のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項10】
前記性能比算出部で算出された前記性能比の経時的変化に基づいて、前記脱硫装置の性能低下の有無を判定する、請求項1から9のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項11】
前記運転データの入力・取得部で取得された前記運転データに含まれる複数のパラメータ間の相関に基づいて前記脱硫装置の性能低下の有無を判定する、請求項1から10のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項12】
前記解析性能に基づいて前記脱硫装置に前記性能低下が有ると判定された場合、前記運転データの正常値と実測性能とを比較する分析用データを作成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項13】
前記遠隔監視システムは、プラント毎に設置された前記ローカル監視システムの各々と前記ネットワークを介して通信可能であり、前記ローカル監視システムの各々に固有な前記性能比に関する判定基準を有する、請求項2から12のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項14】
前記性能比算出部で算出された前記性能比に基づいて前記脱硫装置の性能低下が有ると判定された場合、アラームを報知する、請求項1から13のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【請求項15】
前記性能比算出部で算出された前記性能比に基づいて前記脱硫装置の性能低下が有ると判定された場合、前記性能低下に対する運転改善メニューを作成する、請求項1から14のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料の燃焼を伴うプラントで発生する排ガスの処理設備として、当該排ガス中に含まれるSOを除去するための脱硫装置を備えるものがある。湿式石灰石膏法を採用する脱硫装置では、吸収剤として石灰石粉体を懸濁状にスラリー化した吸収液が用いられるが、燃料種変更による共存微量成分の影響(石灰石粉体の溶解阻害や酸化阻害など)や設備閉塞のような要因によって、SOの除去性能が低下することがある。
【0003】
このような脱硫装置の性能低下を検出する方法に関して、例えば特許文献1及び2がある。特許文献1では、脱硫装置の運転状況に基づいて石灰石粉体の溶解度が反映された石灰活性化係数を算出し、当該係数を基準値である閾値と比較することで、性能低下の有無を判定している。また特許文献2では、吸収液中における未反応の吸収剤濃度が反映された吸収液のpHを測定し、当該吸収液のpHを基準値である閾値と比較することで、性能低下の有無を判定している。
【0004】
また特許文献3には、吸収液中における吸収剤濃度が所定濃度になるように、吸収液への吸収剤の投入量を制御することに関する開示がある。また特許文献4には、脱硫装置の性能低下の有無について具体的な判定内容について記載がないものの、性能低下のような異常が有ると判定された場合に、原因や対応操作ガイドを推論することでプラントユーザの運転支援を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−110440号公報
【特許文献2】特許第3757549号公報
【特許文献3】特許第3675986号公報
【特許文献4】特開平1−127027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
脱硫装置の性能低下は、そのまま放置すると症状が重篤化し、プラント設備の停止や運転負荷制限を余儀なくされ、プラント設備のユーザの操業に支障をきたすおそれがある。そのため、脱硫装置の性能低下を予兆段階で検知し重篤化する前に対策処置を行うことが好ましい。上記特許文献1及び2では、脱硫装置の性能を評価するための指標を基準値である閾値と比較することで性能低下の有無を判定しているため、性能低下が当該指標に反映される段階でなければ検知できず、予兆段階での判断は難しい。
【0007】
また、このようなプラント設備における性能監視は、プラント設備から地理的に離れたプラントメーカの管理施設等から遠隔的に行われることがある。このような場合、現場の脱硫装置に性能低下が起きている状況であっても、プラントユーザの裁量によって、吸収剤の投入量や吸収液の供給量が過大に設定されることで、見かけ上は、十分な脱硫性能が発揮されるように見える場合がある。上記特許文献1及び2のような指標に基づく判定では、このような見かけ上判断が難しい真の性能低下を検知することが難しく、脱硫装置の性能低下の発見が遅れることがある。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、脱硫装置の性能低下を精度よく且つ早期に検知可能な脱硫装置の運転監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硫装置の運転監視システムは上記課題を解決するために、
吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転監視システムであって、
前記脱硫装置の運転データ(定常的な分析データのデータベースへの入力値を含む。以下「運転データ」と称す。)を入力・取得する運転データの入力・取得部と、
前記運転データの入力・取得部で取得された前記運転データに基づいて、前記脱硫装置の脱硫性能に関するあるべき解析性能に基づく性能を算出する解析性能算出部と、
前記解析性能算出時の実測性能(DCS(分散制御システム)から自動で得られるもののみならず、分析の結果手動入力されるものを含む。以下「実測性能」と称す。)を取得する実測性能取得部と、
前記解析性能に基づく性能算出部で算出された前記解析性能に対する、前記実測性能取得部で取得された前記実測性能との比率である性能比を算出する性能比算出部と、
を備える。
【0010】
上記(1)の構成によれば、脱硫装置に関する運転データに基づいて算出される解析性能が演算的に求められる。当該解析性能式は、運転データに基づく、吸収剤残留濃度、SO吸収量、pH、共存成分液性状等の化学反応に関する構成要素式や、排ガス量と吸収液量の比率L/G、吸収液反応有効高さ、装置構造等の物理的な気液接触に関する構成要素式から成り、算出される。
このような解析性能式として、例えば以下の(A)、(B)を用いることができる。
SO2out=f(G,YSO2in,[CaCO],L,k) (A)
ηSO2=g(G,YSO2in,[CaCO],L,k) (B)
ここで、YSO2outは脱硫装置出口SO濃度、YSO2inは脱硫装置入口SO濃度、Gは処理ガス量、[CaCO]は吸収塔スラリー中のCaCO濃度、Lはスラリー循環流量、f,gは脱硫装置特性を表す関数、ηSO2は脱硫率、kは吸収剤の活性値(溶解速度)である。すなわち、脱硫装置出口SO濃度は、上記入力値に対して関数fを介して求めることができる。この関数fは、特開昭59−199021号或いは特開昭63−229126号公報に示されるような化学反応モデルにより実現してもよく、また制御対象となる脱硫装置実機について種々の運転条件における特性を計測し、これを統計処理等の方法によりモデル化することも可能である。
性能比算出部では、このような解析性能と、それに対応する実測性能との比率である性能比が算出される。このように算出される性能比は、脱硫装置に関する運転条件に基づく脱硫性能の真の性能低下度合を絶対的に評価可能であり、予兆段階を含めた健全性を精度よく評価できる。そのため、ユーザ側の裁量で、吸収剤の投入量や吸収液の供給量が過大になり見掛け上の性能が閾値を満足している場合であっても、前記性能比に基づいて性能低下を精度よく且つ早期に検知できる。
尚、本願明細書において「解析性能」とは、運転データを解析性能式(例えばシミュレーションモデル)に入力して算出可能な性能に対応するパラメータを広く含む。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、
前記脱硫装置を監視することにより前記運転データを測定及び/又は入力可能なローカル監視システムと、
前記ローカル監視システムとネットワークを介して通信可能であり、前記運転データの入力・取得部、前記解析性能算出部、前記実測性能取得部、及び、前記性能比算出部を含む遠隔監視システムと、
を備える。
【0012】
上記(2)の構成によれば、運転監視システムは、脱硫装置がある現場に設置されたローカル監視システムと、ローカル監視システムから地理的に離れて設置された遠隔監視システムと、を備え、互いにネットワークを介して通信可能に構成される。遠隔監視システム側では、ローカル監視システムで測定された運転データを取得することにより、現場から離れた位置において、脱硫装置の健全性をリアルタイム的に監視できる。また遠隔監視システムにおける評価結果は、ネットワークを介してローカル監視システムに送信できるため、性能低下が発生した際に早期の対応が可能となる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では上記(2)の構成において、
前記遠隔監視システムは、前記性能比算出部で算出された前記性能比に基づく評価結果を選択的に前記ローカル監視システムに送信可能である。
【0014】
上記(3)の構成によれば、遠隔監視システムでは性能比に基づいて脱硫装置の健全性評価が行われ、その評価結果は、選択的にローカル監視システムに送られる。遠隔監視システムは、例えば、ローカル監視システムが設置されたプラントユーザから地理的に離れたプラント設備メーカに設置されるが、この場合、性能比に基づく健全性評価にはプラント設備メーカが保有する各種ノウハウ等の機密事項が用いられることがある。本構成では、遠隔監視システムからローカル監視システムに送るべき情報内容を遠隔監視システム側で選択的に管理できるため、プラント設備メーカが保有する機密事項のプラントユーザ側への流出を防止しながら、必要に応じた情報提供を行うことでプラント設備ユーザのサポートを行うことができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか1つの構成において、
前記運転データは前記吸収剤の量を含む。
【0016】
上記(4)の構成によれば、解析性能の算出に用いられる運転データとしての変数評価パラメータは、例えば、吸収剤の量である。ここで吸収剤の量とは、脱硫装置の吸収液に対する吸収剤の投入量であってもよいし、吸収液中に残存する吸収剤の量であってもよい。更に前者の場合、投入量は、排ガス中のSOを中和するための必要十分な量であってもよいし、必要十分な量に対してマージンとして加えられるプラスαの量であってもよい。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、
前記性能比は、前記解析性能に対する対数値前記実測性能の対数値との比率である。
【0018】
上記(5)の構成によれば、高い脱硫性能を有する脱硫装置(すなわち、入口と出口におけるSO濃度差が大きい脱硫装置)では、性能比として線形比を用いるとピーキーな特性になるため、このように対数比を用いることで高い感度で的確な診断ができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では上記(1)から(5)のいずれか1つの構成において、
前記解析性能は、前記脱硫装置の構造パラメータ又は前記吸収剤の化学反応パラメータの少なくとも一方に基づいて算出される。
【0020】
上記(6)の構成によれば、脱硫性能を構造的又は化学反応的な側面から精度よく算定できる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では上記(1)から(6)のいずれか1つの構成において、
前記性能比算出部で算出された前記性能比を予め用意された閾値と比較することにより、前記脱硫装置の真の性能低下の有無を判定する。
【0022】
上記(7)の構成によれば、性能比算出部で算出された性能比を閾値と比較することで当該性能比を算出した時点の運転条件に応じた真の性能低下の有無を判定できる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では上記(7)の構成において、
前記閾値は、前記脱硫装置が設置されるプラントの固有性能に基づいて設定される。
【0024】
上記(8)の構成によれば、性能低下の判定基準となる閾値を脱硫装置が設置されるプラントの固有性能に基づいて設定することで、脱硫装置が設置されるプラントの個体差に応じた固有性能を考慮した精度のよい健全性診断が可能となる。
【0025】
(9)幾つかの実施形態では上記(1)から(8)のいずれか1つの構成において、
前記性能比算出部は、前記解析性能算出部で算出される複数の前記解析性能の各々について前記性能比を算出する。
【0026】
上記(9)の構成によれば、複数の解析性能に対して性能比を算出することで、異なる観点に基づいた多角的な健全性診断が可能となる。また性能低下が反映された性能比に対応する解析性能の種類を特定することで、性能低下の要因も推察できる。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では上記(1)から(9)のいずれか1つの構成において、
前記性能比算出部で算出された前記性能比の経時的変化に基づいて、前記脱硫装置の性能低下の有無を判定する。
【0028】
上記(10)の構成によれば、性能比の経時的変化に基づいた性能低下の診断が可能となる。
【0029】
(11)幾つかの実施形態では上記(1)から(10)のいずれか1つの構成において、
前記運転データの入力・取得部で取得された前記運転データに含まれる複数のパラメータ間の相関に基づいて前記脱硫装置の性能低下の有無を判定する。
【0030】
上記(11)の構成によれば、運転データに含まれる複数のパラメータ間における相関を評価することで、真の性能低下の有無を判定できる。
【0031】
(12)幾つかの実施形態では上記(1)から(11)のいずれか1つの構成において、
前記解析性能に基づいて前記脱硫装置に前記性能低下が有ると判定された場合、前記運転データの正常値と実測性能とを比較する分析用データを作成する。
【0032】
上記(12)の構成によれば、運転データの正常値と実測性能とを比較する分析用データを作成することで、性能低下の有無やその要因に関する評価支援が可能となる。これにより、健全性評価を行う作業員の経験による評価結果のバラツキを抑えるとともに、分析用データを参照する作業員に健全性の最終的な評価決定の裁量を残すことで、熟練者の経験を生かした評価精度向上も期待できる。
尚、正常値とは、脱硫装置に性能低下が無い場合に想定される運転データであり、脱硫装置の仕様や過去の運転データを採用可能である。
【0033】
(13)幾つかの実施形態では上記(2)から(12)のいずれか1つの構成において、
前記遠隔監視システムは、プラント毎に設置された前記ローカル監視システムの各々と前記ネットワークを介して通信可能であり、前記ローカル監視システムの各々に固有な前記性能比に関する判定基準を有する。
【0034】
上記(13)の構成によれば、遠隔監視システムと通信可能なローカル監視システムが複数存在する場合に、各ローカル監視システムが設置されているプラント毎の個体差を考慮した、精度のよい評価が可能となる。
【0035】
(14)幾つかの実施形態では上記(1)から(13)のいずれか1つの構成において、
前記性能比算出部で算出された前記性能比に基づいて前記脱硫装置の性能低下が有ると判定された場合、アラームを報知する。
【0036】
上記(14)の構成によれば、上記構成によって脱硫装置に性能低下が有ると判定された場合には、アラームを報知することにより、性能低下の事実を早期に知らしめ、迅速な対応が可能となる。
【0037】
(15)幾つかの実施形態では上記(1)から(14)のいずれか1つの構成において、
前記性能比算出部で算出された前記性能比に基づいて前記脱硫装置の性能低下が有ると判定された場合、前記性能低下に対する運転改善メニューを作成する。
【0038】
上記(15)の構成によれば、上記構成によって脱硫装置に性能低下が有ると判定された場合には、性能低下に対する運転改善メニューを作成することにより、改善に向けた迅速な対応が可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、脱硫装置の性能低下を精度よく且つ早期に検知可能な脱硫装置の運転監視システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態に係る脱硫装置の運転監視システムの全体構成を示す模式図である。
図2図1のローカル監視システム、ネットワーク及び遠隔監視システムの構成レイアウトの一例を示す模式図である。
図3図2の遠隔監視システムにおける中央サーバの内部構成を機能的に示すブロック図である。
図4図3の中央サーバで実施される性能低下判定方法を工程毎に示すフローチャートである。
図5】性能比と吸収液中の石灰石濃度の時間的変化の一例を示すグラフである。
図6図4のステップS8で作成される分析用データの一例である。
図7図4のステップS8で作成される分析用データの他の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0042】
図1は本発明の一実施形態に係る脱硫装置1の運転監視システム100の全体構成を示す模式図である。運転監視システム100では、所定のプラント設備に含まれる脱硫装置1を監視対象とし、以下の実施形態では、プラント設備から地理的に離れた地点で遠隔監視する場合を例に説明する。
【0043】
脱硫装置1は、火力発電所などのプラント設備のボイラ(不図示)に付随して設置され、ボイラの排気通路3aを流れる排ガスG0に含まれる微粒子を収集する集塵装置2と、集塵装置2の下流側において、集塵装置2を通過した排ガスG1が流れる排気通路3bに設置された吸収塔4と、を備える。
【0044】
集塵装置2は、ケーシング内に供給された排ガスG0に対してコロナ放電を行うことで、排ガスG0に含まれる微粒子を帯電させ、正負に荷電させた付着部に対して電気的吸引力によって付着させることで集塵する電気集塵器である。集塵装置2によって集塵処理が行われた排ガスG1は、排気通路3bを介して吸収塔4に供給される。
【0045】
吸収塔4は、集塵装置2で集塵処理が行われた排ガスG1に対して、石灰石10を含む吸収液6を接触させることで排ガスG1中のSO(二酸化硫黄)を吸収することにより、脱硫処理を行う。吸収塔4の底部には吸収液6が貯留されている。吸収液6は、吸収塔4の外部に設けられた石灰石フィーダ8から供給される石灰石10が、吸収塔4の底部に供給される水12と混合されることで生成される。
【0046】
吸収塔4の底部に貯留された吸収液6は、吸収液循環ポンプ14により圧送され、吸収塔4の外部に設けられた吸収液ヘッダ16を介して、吸収塔4の上部に供給される。このように吸収塔4の上部に供給された吸収液6は、吸収塔4内の上部に設けられたノズル18から散布されて落下する過程において、吸収塔4内を上昇する排ガスG1と接触する。これにより、排ガスG1に含まれるSOが吸収液6中の石灰石10と反応し、脱硫処理が行われる。
【0047】
下記(1)式は、吸収塔4で実施される脱硫処理の化学反応式である。脱硫反応では石灰石10と排ガスG1に含まれるSOとが反応することで石膏24(CaCO・2HO)が副産物として生成される。SOが除去された排ガスG2は、吸収塔4の頂部から脱硫排ガス管25を介して外部に排出される。
SO+1/2O+CaCO+2HO→CaCO・2HO+CO (1)
【0048】
また、吸収塔4の底部に貯留された吸収液6の一部は、吸収液循環ポンプ14により圧送されつつ吸収塔4の外部の吸収液ヘッダ16から分岐した抜出管20を経て脱水器22に送られる。脱水器22は、例えば、ベルトフィルタで構成され、当該ベルトフィルタで搬送される過程で吸収液6を脱水処理し、生成された石膏24が系外に排出される。
尚、脱水器22の脱水処理で生じたろ過液の一部は、水12として吸収塔4の底部に供給されることで再利用される。
【0049】
また吸収塔4の底部には、酸化用空気26が供給される。これにより、吸収液6には酸化用空気26が含まれることでSOが排ガスから吸収液6中に移行し生成した亜硫酸基から硫酸基への酸化が促進され、この結果として排ガス中のSO吸収効率も向上する。
【0050】
尚、集塵装置2と吸収塔4との間を接続する通気ダクト3bには、吸収塔4に取り込まれる排ガスG1のSO濃度(入口側SO濃度)を検出するための入口側SO濃度センサ28が設置されている。また脱硫排ガス出口ダクト25には、吸収塔4から排出される排ガスG2のSO濃度(出口側SO濃度)を検出するための出口側SO2濃度センサ30が設置されている。また吸収液ヘッダ16には吸収塔4内における吸収液6の石灰石濃度を検出するための石灰石濃度センサ32や、pH値を検出するためのpHセンサ34が設置されている。
【0051】
これら各センサの検出値は、脱硫装置1のコントロールユニット(不図示)に入力されることにより、脱硫装置1の動作制御に利用される。具体的には、各センサの検出値が所定の範囲になるように石灰石フィーダ8や吸収液循環ポンプ14の動作、酸化用空気26の供給が調整されることで、所望の脱硫性能が発揮されるように脱硫装置1の制御がなされる。
【0052】
このような構成を有する脱硫装置1が設置されたプラント設備には、脱硫装置1を監視するためのローカル監視システム200が備えられている。ローカル監視システム200は、監視対象となる脱硫装置1と同じ現場(プラント設備の敷地内)に設置されており、ネットワーク300を介して、地理的に離れた遠隔監視システム400と通信可能に構成される。
【0053】
尚、図1に示されるように、遠隔監視システム400は、ネットワーク300を介して複数のプラント設備にそれぞれ設置された複数のローカル監視システム200と通信可能に構成される。以下の説明では、主に特定の一つのローカル監視システム200について言及するが、特段の記載がない限りにおいて、他のローカル監視システム200についても同様である。
【0054】
図2図1のローカル監視システム200、ネットワーク300及び遠隔監視システム400の構成レイアウトの一例を示す模式図である。
【0055】
ローカル監視システム200は、脱硫装置1に関する運転データを収集するための監視用サーバ202と、ローカル監視システム200内で取り扱われる各種情報をネットワーク300を介して遠隔監視システム400と通信するためのローカルサーバ204と、ローカルサーバ204にアクセス可能なクライアント端末206と、を備える。
【0056】
監視用サーバ202では、脱硫装置1の設置現場において所定の計器類によって脱硫装置1に関する運転データが収集される。運転データには、例えば、図1に示される各センサの検出値(具体的には、入口側SO濃度センサ28で検出される入口側SO濃度、出口側SO濃度センサ30で検出される出口側SO濃度、石灰石濃度センサ32で検出される吸収液6の石灰石濃度、pHセンサ34で検出される吸収液6のpH値など)や、石灰石フィーダ8、吸収液循環ポンプ14及び酸化用空気26の供給装置(不図示)への制御信号が含まれる。尚、運転データには、前記各センサの検出値のみならず、分析の結果手動入力される値を含んでいてもよい。監視用サーバ202で収集されたこれらの運転データは、ローカルネットワークを介して、ローカルサーバ204に送られる。
【0057】
ローカルサーバ204で監視用サーバ202から受信した運転データは、リアルタイムデータとして、ネットワーク300を介して遠隔監視システム400に送信される。ネットワーク300は例えば専用回線(Virtual Private Network:VPN)を通じ、ローカルサーバ204はVPNルータ208を介してネットワーク300に接続されている。
【0058】
尚、ローカルサーバ204は、監視用サーバ202から取得した運転データをヒストリカルデータとして所定周期で所定期間保存してもよい。この場合、ローカルサーバ204はヒストリカルデータを所定周期のデータに加工したものを、リアルタイムデータとして遠隔監視システム400に送信してもよい。
【0059】
遠隔監視システム400は、ローカル監視システム200から地理的に離れた位置、例えば脱硫装置1を含むプラント設備の製造元であるプラントメーカの敷地内に設置されており、VPNルータ402を介してネットワーク300に接続されることで、ローカル監視システム200と通信可能に構成される。遠隔監視システム400は、遠隔監視システム400内で取り扱われる各種情報をネットワーク300を介してローカル監視システム200と通信可能な中央サーバ404と、中央サーバ404にアクセス可能な監視用端末406と、を備える。中央サーバ404及び監視用端末406は、ローカルネットワークを介して互いに通信可能に構成されている。
【0060】
遠隔監視システム400では、ローカル監視システム200からネットワーク300を介して受信した運転データに基づいて、脱硫装置1の遠隔監視が行われる。尚、中央サーバ404で受信した運転データは、遠隔監視システム400内のデータ保管用サーバ(不図示)に保管されてもよい。
【0061】
中央サーバ404に送られた運転データは、監視用端末406から適宜アクセス可能であり、監視用端末406を操作するオペレータ(例えば、遠隔監視システム400に駐在しているプラントメーカ保守専門家)が常時確認できるようになっている。
【0062】
オペレータは監視用端末406を用いて中央サーバ404に送られた運転データに基づいた解析を実施し、必要に応じて、解析結果をプラント設備のユーザ(ローカル監視システム200側)に送信する。ここでユーザに送信すべき解析結果は、監視用端末406上における監視結果の少なくとも一部を選択可能となっている。遠隔監視システム400側で行われる解析には、プラントメーカが保有する各種ノウハウ等の機密事項が用いられることがある。本構成では、遠隔監視システム400で得られた解析結果を選択的にローカル監視システム200に送信することで、プラントメーカが保有する機密事項のクライアント側への流出を防止しながら、適切なサポートが可能となっている。
【0063】
ローカル監視システム200では、ネットワーク300を介して遠隔監視システム400から送信された解析結果が受信される。ローカル監視システム200で受信した解析結果は、ローカルサーバ204を介してクライアント端末206上で、ユーザが適宜確認可能となっている。
【0064】
続いて図3図2の遠隔監視システム400における中央サーバ404の内部構成を機能的に示すブロック図であり、図4図3の中央サーバ404で実施される性能低下判定方法を工程毎に示すフローチャートである。
尚、図3に示される中央サーバ404の内部構成の少なくとも一部は、遠隔監視システム400を構成する監視用端末406に分配されていてもよいし、クラウドサーバ内に構築されていてもよい。
【0065】
遠隔監視システム400の中央サーバ404は、脱硫装置1の運転データを取得するための運転データの入力・取得部410と、解析性能Pを算出するための解析性能算出部412と、解析性能P取得時の実測性能Pmを取得するための実測性能取得部414と、解析性能Pに対する実測性能Pmの性能比Rを算出するための性能比算出部416と、性能比Rの判定基準である基準値R0を設定するための基準値設定部418と、性能比Rと基準値R0とを比較することで性能低下の有無を判定するための判定部420と、を備える。
【0066】
まず運転データの入力・取得部410は、脱硫装置1の運転データを取得する(ステップS1)。このような運転データの入力・取得部410における運転データの取得は、上述したように、ネットワーク300を介して、ローカル監視システム200から送信されるリアルタイムデータを受信することで行われる。
【0067】
運転データの入力・取得部410で取得される運転データには、少なくとも吸収剤の量が含まれる。ここで吸収剤の量とは、例えば、石灰石フィーダ8からの石灰石10の供給量であり、脱硫装置1における石灰石フィーダ8への制御信号を運転データに含めることで取得可能である。この場合、運転データに含まれる石灰石10の供給量は、吸収液6に接触させられる排ガスG1中のSO(二酸化硫黄)を中和するのに必要十分な量であってもよいし、排ガスG1中のSO(二酸化硫黄)を十分に中和するために必要十分量に対して加算されるマージン量を含んだ量であってもよい。
【0068】
また運転データに含まれる吸収剤の量は、吸収液6中に残存する吸収剤(石灰石10)の量であってもよい。この場合、吸収剤の残存量は、例えば、石灰石濃度センサ32で検出される吸収液6の石灰石濃度として取得可能である。
【0069】
尚、運転データの入力・取得部410で取得される運転データには、上述したように、各センサの検出値(具体的には、入口側SO濃度センサ28で検出される入口側SO濃度、出口側SO濃度センサ30で検出される出口側SO濃度、石灰石濃度センサ32で検出される吸収液6の石灰石濃度、pHセンサ34で検出される吸収液6のpH値)や、石灰石フィーダ8、吸収液循環ポンプ14及び酸化用空気26の供給装置(不図示)への制御信号を広く含めることができる。
【0070】
続いて解析性能算出部412は、運転データの入力・取得部410で取得された運転データに基づいて、少なくとも一つの解析性能Pを算出する(ステップS2)。ここで解析性能Pは、脱硫装置1の脱硫性能に関するパラメータとして演算的に算出され、当該解析性能式は、運転データに基づく、吸収剤残留濃度、SO吸収量、pH、共存成分液性状等の化学反応に関する構成要素式や、排ガス量と吸収液量の比率L/G、吸収液反応有効高さ、装置構造等の物理的な気液接触に関する構成要素式から成り、例えば上述の吸収剤の量に対して脱硫性能に影響を与えうる要素を総合的に勘案して設定される。
【0071】
ステップS2で解析性能Pを求めるために用いられる演算式は、運転データの入力・取得部410で取得した運転データに含まれる各パラメータを変数とする関数によって規定され、運転データに含まれる実測性能に基づいたパラメータ評価が可能である。このような関数は、解析性能Pと各変数との相関を、理論的、実験的又はシミュレーション的手法によって評価することによって規定される。このような演算式は、遠隔監視システム400の記憶装置(不図示)に予め記憶しておいてもよいし、遠隔監視システム400のオペレータが適宜入力するようにしてもよい。
【0072】
解析性能Pは脱硫性能に関する任意のパラメータであってよいが、例えば、脱硫率を採用できる。解析性能Pとして脱硫率を採用すると、脱硫装置1の健全度を包括的、簡便且つ正確に評価できるため好ましい。尚、このような解析性能は、脱硫装置1の構造パラメータ又は吸収剤(石灰石10など)の化学反応パラメータの少なくとも一方に基づいて算出されるとよい。これにより、脱硫性能を構造的又は化学反応的な側面から解析性能を精度よく算定できる。
【0073】
続いて実測性能取得部414は、解析性能算出部412で算出された解析性能Pに対応する実測性能Pmを取得する(ステップS3)。例えば、上述のように解析性能Pが脱硫率に対応する場合、実測性能取得部414では、入口側SO濃度センサ28で検出される入口側SO濃度、出口側SO濃度センサ30で検出される出口側SO濃度を用いて、脱硫率の実測性能Pmが取得される。
【0074】
続いて性能比算出部416は、解析性能算出部412で算出された解析性能Pと、実測性能取得部414で取得された実測性能Pmとの比率である性能比Rを算出する(ステップS4)。このように算出された性能比Rは、脱硫装置1の運用状態に関わらず(例えばユーザ側で石灰石10の供給量を過大に設定することで、見かけ上の脱硫率がよいように振舞っている場合であっても)、脱硫性能を絶対的に評価可能な指標となる。
【0075】
尚、性能比Rは、解析性能Pの対数値と実測性能Pmの対数値との比率であってもよい。高い脱硫性能を有する脱硫装置1(すなわち、入口と出口におけるSO濃度差が大きい脱硫装置)では、性能比Rとして線形比を用いるとピーキーな特性になるため、このように対数比を用いることで高い感度で的確な診断が可能となる。
【0076】
続いて基準値設定部418は、性能比Rの評価基準である基準値R0を設定する(ステップS5)。ここで基準値R0は、評価対象となる脱硫装置1の仕様に応じて設定される。遠隔監視システム400は、図1に示されるようにネットワーク300を介して、異なる複数の脱硫装置1と接続されている。これらの各脱硫装置1は、それぞれ固有の特性(くせ)を少なからず有する。このような固有の特性は、予めデータベース500に格納されており、基準値設定部418は、データベース500にアクセスすることによって、評価対象となる脱硫装置1に対応する基準値R0を取得する。
尚、このような各脱硫装置1の固有な特性(くせ)としては、初期特性だけでなく、経時的変化(灰汚れ、炭種変更、ポンプ摩耗など)により性能評価結果が変化することも含まれてもよい。
【0077】
例えば、データベース500には複数の脱硫装置1に共通する標準的な基準値R0baseと、各脱硫装置1にそれぞれ対応する特性パラメータαとが予め格納されており、基準値設定部418は、評価対象とする特定の脱硫装置1に対応する特性パラメータαを標準的な基準値R0baseに乗算することにより、基準値R0を設定してもよい。これにより、各脱硫装置1の固有な特性(くせ)を考慮した判定が可能となる。
【0078】
続いて判定部420は、性能比算出部416で算出された性能比Rを、基準値設定部418で設定された基準値R0と比較することにより、脱硫装置1について性能低下の有無を判定する(ステップS6)。脱硫装置1の性能が正常に発揮されている場合には、解析性能Pと実測性能Pmとは互いに等しくなるため、性能比Rは「1」となる。一方、何らかの性能低下が有る場合には、解析性能Pと実測性能Pmとの間には少なからず差が生じるため、性能比Rは「1」からずれた値となる。
【0079】
ステップS6の判定基準となる基準値R0は、性能比Rが正常値「1」からどの程度ずれた場合に、性能低下が有ると判定すべきかを判断するための閾値として設定される。例えば、正常値「1」からマイナス20%の誤差まで許容するように基準値R0を設定した場合、性能比Rが0.8未満の場合には運転条件に基づく真の性能が明らかに低下し健全でない状態と判定される。
【0080】
ここで図5は性能比Rと吸収液6中の石灰石濃度の時間的変化の一例を示すグラフである。図5(a)では、性能比Rの時間的変化が示されており、縦軸には性能比Rの正常値である「1」を中心として、基準値R0によって規定される許容範囲(下限値R0aと上限値R0bとの間)が示されている。時刻t0からt1では性能比Rが許容範囲内を示しているため性能低下は生じていないが、時刻t1から時刻t2では性能比Rが下限値R0aを下回っているため、性能低下が生じていることがわかる。
【0081】
尚、この例では、時刻t2において、性能低下の原因特定と所定の回復操作が行われており、時刻t2以降では、再び性能比Rが許容範囲内に回復して健全運転に復旧する様子が示されている。
【0082】
一方で図5(b)は図5(a)に対応する吸収液6中の石灰石濃度の時間的変化が、見かけ上の脱硫率とともに示されている。ここで見かけ上の脱硫率は、例えば、入口側SO濃度センサ28で検出される入口側SO濃度、出口側SO濃度センサ30で検出される出口側SO濃度のみに基づいて算出される。性能比Rで性能低下が検出される時刻t1からt2に着目すると、この例では、ユーザ側で石灰石10の供給量を一時的に増加させることで、見かけ上の脱硫率が正常値を維持する運用がなされている。このような場合、見かけ上の脱硫率をモニタリングしているだけでは正常値を維持しているため真の性能低下を検出することは困難である。その点、図5(a)に示される性能比Rに基づいた判定を行うことで、このように見かけ上の脱硫率では検知困難な性能低下を的確に判定することができる。
【0083】
このような性能比Rに基づく判定は、経時的な変化が把握しやすく、また脱硫装置1の運転条件が変動した場合であっても、同じ基準値R0に基づいて精度の良い健全性評価ができる。
【0084】
また判定部420では、図5(a)に示されるように性能比Rを経時的に追跡することで、その経時的変化から早期に性能低下を判定してもよい。例えば、性能比Rの過去の時間的変化に基づいて、将来の変化傾向を予測し、基準値R0を逸脱する可能性が高い場合には性能低下の予兆があると判定してもよい。
【0085】
また本実施形態では、単一の解析性能Pに対応する性能比Rに基づいて判定を行う場合を例示しているが、解析性能算出部412で複数の解析性能Pを算出し、性能比算出部416は各解析性能Pに対応する性能比Rを算出することで、複数の性能比Rに基づいた判定を行ってもよい。この場合、複数の解析性能Pに対して性能比Rを算出することで、異なる観点に基づいた多角的な健全性診断が可能となる。また性能低下が反映された性能比Rに対応する解析性能Pの種類を特定することで、性能低下の要因も推察できる。
【0086】
判定部420で性能低下が有ると判定された場合(ステップS6:YES)、遠隔監視システム400では、脱硫装置1の性能低下に対応するための各種処理が実施される。本実施形態では、このような各種処理を行うために、遠隔監視システム400は、ユーザ側(ローカル監視システム200側)に設置されたアラームを制御するためのアラーム制御部422と、性能低下に関して詳細分析を実施するための分析用データを作成するための分析用データ作成部424と、ユーザ側に開示可能な開示用データを作成するための開示用データ作成部426と、性能低下を改善するために必要な情報を含む運転改善メニューを作成するための運転改善メニュー作成部428と、を更に備える。
【0087】
ステップS7では、脱硫装置1で性能低下が有る旨をユーザに報知するために、アラーム制御部422によって、ユーザ側(ローカル監視システム200側)に設置されたアラームが作動するように制御される。これにより、ユーザ側では脱硫装置1で性能低下があった旨を迅速に把握することができる。上述のように、ユーザ側の現場では独自の判断で運用がなされた結果、見かけ上の性能だけが正常であって、実質的に性能低下が生じている状態で脱硫装置1が継続的に使用される場合があるが、このような遠隔監視システム400側からのアラーム報知によって、深刻な状態に陥る前に性能が低下している実情を確実に把握することができる。
【0088】
尚、ステップS7では、このようなユーザ側へのアラーム報知に先立って、遠隔監視システム400のオペレータに対してアラームを報知し、その後、オペレータによって性能低下の存在が確実なものと判断された場合に、ユーザ側のアラーム報知が実施されるようにしてもよい。この場合、遠隔監視システム400側ではオペレータによる性能低下の二重判定がなされるので、ユーザへの誤報を防止し、プラント運用への支障を抑えることができる。
【0089】
ステップS8では、分析用データ作成部424によって、性能低下に関する詳細分析を実施するための分析用データが作成される。ステップS6では性能比Rと基準値R0との比較による性能低下の有無に関する判定がなされたが、遠隔監視システム400のオペレータが参照可能な分析用データを作成することで、更に詳細な分析が可能となる。
【0090】
図6図4のステップS8で作成される分析用データの一例である。この例の分析用データは、ステップS4で算出された性能比Rが縦軸に示されるとともに、ステップS1で取得された運転データに含まれる他の指標が横軸に示される二次元グラフとして作成されている。他の指標として、図6(a)では、排気通路3bを流れる排ガスG1の流速が採用されており、図6(b)では吸収液6における石灰石濃度が採用されており、図6(c)では吸収液循環ポンプ14による循環流量が採用されている。図6(a)〜図6(c)では、性能比Rが健全範囲(基準値R0の範囲内)にあるデータを示すシンボル〇と、性能比Rが健全範囲外(基準値R0の範囲外)にあるデータを示すシンボル×とが、区別可能に示されている。
【0091】
図6(a)では、ガス流速が比較的低い部分負荷領域からガス流速が最大となる最大負荷領域の近傍にかけて性能比Rが略一定に維持されているが、最大負荷領域では性能比Rが低下することにより、性能低下が示唆されている。一方、図6(b)及び図6(c)に示されるように、石灰石濃度や吸収液循環ポンプ14の循環流量では、最大負荷領域においても性能比Rの低下は見られず、他の領域と同様に一定に維持されている。これらの結果から、性能比Rの低下に見られる予兆は、ガス流速に起因することが疑われることとなる。
【0092】
このように性能比Rと他の指標とを組み合わせた評価解析を行うことで、性能低下が検出された場合に、その要因の解析を詳細に行うことができる。図6では、他の指標としてガス流速を採用した図6(a)のみで異常が出現した場合を例示したが、石灰石濃度又は吸収液循環ポンプ14の循環量を他の指標として選定した場合に異常が出現した場合も、同様に、異常が出現した指標に関して性能低下が生じていることを推察することができる。特に複数の指標に関して性能低下がみられた場合には、これら指標の組み合わせを用いて、より詳細な要因特定が可能となる。
【0093】
尚、図6のような分析用データは、監視用端末406に表示されることでオペレータに認識される際に、オペレータの認識が容易になるように、シンボルごとに特徴的な形状や色彩を付与してもよい。
【0094】
図7図4のステップS8で作成される分析用データの他の一例である。この例では、分析用データとして、ステップS1で取得される運転データに含まれる各種パラメータを変数とする分析用グラフが作成される。このような分析用グラフの一例として、図7(a)には、吸収液6のpH値(pHセンサ34の検出値)と、SO吸収量(入口側SO濃度センサ28で検出される入口側SO濃度、及び、出口側SO濃度センサ30で検出される出口側SO濃度に基づいて算出される値)との相関が示されており、図7(b)には、石灰石フィーダ8からの石灰石10の供給量と、SO吸収量(入口側SO濃度センサ28で検出される入口側SO濃度、及び、出口側SO濃度センサ30で検出される出口側SO濃度に基づいて算出される値)との相関が示されている。これらの分析用グラフには、漸近線430の周囲に分布する健全状態に対応する参考データ(点線△シンボル)が示されており、運転データに基づく実測データ(実線〇シンボル)と比較可能になっている。参考データと実測データとの乖離が少ない場合には健全な運転がなされていると判断されるが、一方で、参考データと実測データとの乖離が大きい場合には性能低下が疑われる。
【0095】
図7(a)では、参考データに比べて低pH側に実測データが乖離して分布しているため、吸収液6のpHが上がりにくく、活性が低下している状況が表されており、性能低下が生じている様子がわかる。一方の図7(b)では、参考データに比べて石灰石供給量が増える方向に実測データが乖離して分布しているため、石灰石供給量が過剰になっている状況が表されており、性能低下が生じている様子がわかる。
【0096】
尚、分析用グラフにおける参考データは実測データと区別可能な形状又は色彩を有するシンボルとして表示されることで、オペレータの視認性を向上させてもよい。また参考データからの乖離量が所定値を超えることにより性能低下を示唆する実測データは、他の健全状態に対応する実測データに対して区別可能なようにシンボルの形状や色彩を変更したり、付加的な表示を行ってもよい。
【0097】
続いてステップS9では、運転改善メニュー作成部428によって、性能低下を改善するための運転改善メニューが作成される。図7のような分析用グラフにおいて性能低下の存在が確かなものとなった場合には、健全状態に対応する参考データに対する実測データの分布傾向を評価することで、性能低下の発生要因分析を行うことができる。図7の例では、参考データと実測データとを比較することにより、上記のように、吸収液6における石灰石10の活性が低下していることが示唆されている。そのため、運転改善メニュー作成部428は、このような性能低下を改善するための対策として、アルカリ(苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、消石灰、生石灰など)の一時的な供給を行う、または、吸収塔4の吸収液6の一部を抜いて新水を投入する運転改善メニューを作成する。
【0098】
続いてステップS10では、開示用データ作成部426によって、ユーザ側に開示可能な開示用データが作成される。遠隔監視システム400側では、ステップS6における性能低下の有無、ステップS8における分析用データの作成、ステップS9における運転改善メニューの作成を含む詳細な解析処理が行われるが、このような解析処理にはプラントメーカ側のノウハウが含まれることがある。このようなノウハウは、プラントメーカにとって重要な財産でもあるため外部流出を防ぐ必要がある。そこで、ステップS10では、これら解析結果のうちユーザ側に開示可能な情報を選別することにより、開示用データが作成される。
【0099】
そしてステップS10で作成された開示用データがネットワーク300を介して、ユーザ側(ローカル監視システム200)に送信される(ステップS11)。ローカル監視システム200では、開示用データが受信され、その内容はクライアント端末によって適宜参照される。これにより、遠隔監視システム400における解析結果を必要な範囲内においてユーザに迅速に開示できるため、性能低下の予兆が現れた場合に、ユーザに対して迅速に報知できる。
【0100】
従来では、脱硫装置1に性能低下が発見された場合であっても、脱硫装置1が設置された現場に専門家が訪問して実地検査を実施した後に、運転改善メニューの提案をしていたため、実際に性能低下を改善するための処置を行うまでに長い時間を要していた。そのため、このような時間が経過する間に性能低下が重篤化する場合もあり得た。その点、本実施形態では、遠隔監視によって専門家が現地訪問するまでもなく、ネットワーク300を介して取得した運転データに基づいて解析を行い、専門家が遠隔地にいながらも、ユーザ側に対して早期且つ適切な支援を行うことができる。
【0101】
特に、遠隔監視システム400側で性能低下を評価する際には、ネットワーク300を介して取得した運転データを用いて、実験や運用実績に基づく経験則を含めた性能評価式を構築するなど、専門的且つ機密的情報が用いられる。このような情報は、プラントメーカ側にとってはユーザ側への漏出を防止する必要があるが、上述のように、ユーザへの開示内容は遠隔監視システム400側のプラントメーカの裁量によって選択的にコントロールすることができるので、秘匿性を確保しながら有用な支援を行うことができる。
【0102】
以上説明したように上記実施形態によれば、脱硫装置の性能低下を精度よく且つ早期に検知可能な脱硫装置の運転監視システム100を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の少なくとも一実施形態は、吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転監視システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 脱硫装置
2 集塵装置
3a,3b 排気通路
4 吸収塔
6 吸収液
8 石灰石フィーダ
10 石灰石
12 水
14 吸収液循環ポンプ
16 吸収液ヘッダ
18 ノズル
20 抜出管
22 脱水器
24 石膏
25 脱硫排ガス管
26 酸化用空気
100 運転監視システム
200 ローカル監視システム
202 監視用サーバ
204 ローカルサーバ
206 クライアント端末
208,402 ルータ
300 ネットワーク
400 遠隔監視システム
404 中央サーバ
406 監視用端末
410 運転データの入力・取得部
412 解析性能算出部
414 実測性能取得部
416 性能比算出部
418 基準値設定部
420 判定部
422 アラーム制御部
424 分析用データ作成部
426 開示用データ作成部
428 運転改善メニュー作成部
430 漸近線
500 データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7