【解決手段】胴部に、減圧吸収パネル部33と、胴部基準面34と、を備えるプラスチックボトルであって、減圧吸収パネル部33は、胴部の上下方向に延在し、かつ、当該ボトルの中心軸を中心として周方向にねじれる形状で設けられており、第一凹部33aは、胴部基準面34から当該ボトルの内側に向けて陥没し、第二凹部33bは、第一凹部33aの周方向の中央に、第一凹部33aからさらに陥没するように設けられ、凸部33cは、第一凹部33aの上下方向の両端部に、第一凹部33aから外側に向かって凸となる湾曲面が形成されたものであり、凸部33cの上下方向の幅は、周方向の両端部において最も小さく中央部において最も大きいことを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなプラスチックボトルに設けられている減圧吸収部は、ボトル成形時に収縮による凹み(いわゆるヒケ)を起こしやすい、プラスチックボトルに飲料を充填するために加圧する際に径方向外側へ変形しやすい、などの点で、強度上の課題を有していた。そのため、このような変形不具合が生じないように、プラスチックボトルの成形および飲料の充填の工程における生産条件に制約が生じる場合があった。かかる制約は、プラスチックボトルの生産および飲料の生産において、生産性を損なう要因となるおそれがあった。
【0006】
そこで、減圧吸収機能を有すると同時に高い強度を有するプラスチックボトルの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプラスチックボトルは、胴部に、減圧吸収パネル部と、当該減圧吸収パネル部の周囲に形成された胴部基準面と、を備えるプラスチックボトルであって、前記減圧吸収パネル部は、前記胴部の上下方向に延在し、かつ、前記プラスチックボトルの中心軸を中心として周方向にねじれる形状で設けられており、前記減圧吸収パネル部は、第一凹部と、第二凹部と、凸部と、を有し、前記第一凹部は、前記胴部基準面から前記プラスチックボトルの内側に向けて陥没し、前記第二凹部は、前記第一凹部の周方向の中央に、前記第一凹部から前記プラスチックボトルの内側に向けてさらに陥没するように設けられ、前記凸部は、前記第一凹部の上下方向の両端部に、前記第一凹部の周方向の全幅にわたって、前記第一凹部から前記プラスチックボトルの外側に向かって凸となる湾曲面が形成されたものであり、前記凸部の上下方向の幅は、前記凸部の周方向の両端部において最も小さく、前記凸部の周方向の中央部において最も大きいことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第一凹部と第二凹部が共同的に作用して良好な減圧吸収機能を発現するとともに、減圧パネル部がねじれる形状で設けられていることによって上下方向に高い強度を実現することができる。また、減圧吸収パネル部が凸状部を有することで、第一凹部および第二凹部の変形を抑制することができ、成形時のヒケを生じさせにくくするとともに、充填時に加圧された場合においても変形しにくくすることができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0010】
本発明に係るプラスチックボトルは、一態様として、隣接する二つの前記減圧吸収パネル部から延長する二つの前記胴部基準面が会合する部分に峰状部を形成し、前記胴部基準面の前記中心軸からの距離は、前記峰状部で最大となることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、減圧パネル部とともに峰状部がねじれる形状で設けられていることによって、上下方向にさらに高い強度を実現することができる。
【0012】
本発明に係るプラスチックボトルは、一態様として、前記第一凹部は平面状であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第一凹部による減圧吸収作用をさらに高めることができる。
【0014】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るプラスチックボトルの実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るプラスチックボトル100は、
図1に示すように、液体の注ぎ口としての口部1と、口部1と連続し底面方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部2と、肩部2と連続する円筒状の胴部3と、プラスチックボトル100の底となる底部4と、から構成されている。なお、以下の説明において、プラスチックボトル100の表面に設けられる各構造物の「深さ」を、プラスチックボトル100の表面から内部へと突入する深さであるものと定義する。
【0017】
なお、本実施形態に係るプラスチックボトル100は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を主材料として、二軸延伸ブロー成形などの延伸成形法によって一体的に成形することができる。プラスチックボトル100の容量は特に限定されず、一般的に流通している280mL、350mL、500mLなど、200mL〜2L程度とすることができる。また、プラスチックボトル100に充填させる液体は特に限定されず、たとえば、飲料水、茶、果汁、コーヒー、ココア、清涼飲料水、アルコール飲料、乳飲料、スープなどの飲料や、ソースや醤油などの液体調味料など、が挙げられる。
【0018】
〔リブ構造〕
胴部3の上部領域3aには、凹状の主周リブ31が設けられている。また、胴部3の上部領域3aおよび下部領域3cには、凹状の副周リブ32が設けられている。
図2に示すように、主周リブ31は、副周リブ32に比べて、深さおよび上下方向の幅が大きくなるように形成されている。
【0019】
図3に示すように、主周リブ31は、プラスチックボトル100の周方向に沿って深さが連続的に変化する波状の水平断面形状を有し、その深さは、最大値が4.5mmであり、最小値が3.5mmである。主周リブ31には、深さが最大値を取る点31aと、深さが最小値を取る点31bと、が、それぞれ7箇所ずつあり、主周リブ31の水平断面形状は、深さが最大値を取る点31aと深さが最小値を取る点31bとを交互に滑らかに結んだ波状の形状である。すなわち、当該水平断面形状は、深さが最大値を取る点31aの周辺において前記プラスチックボトルの外側方向に凸であり、深さが最小値を取る点31bの周辺において前記プラスチックボトルの内側方向に凸であり、深さが最大値を取る点31aと深さが最小値を取る点31bとの間に変曲点を有する閉曲線である。
【0020】
主周リブ31の上下方向の幅は、深さが最大値を取る点31aにおいて8.0mmであり、深さが最小値を取る点31bにおいて7.2mmである。
【0021】
図1、2に示すように、副周リブ32は複数設けられてよく、本実施形態では副周リブ32が、上部領域3aに三つ、下部領域3cに二つ、それぞれ設けられている。また、本実施形態では、副周リブ32は円状の水平断面形状を有し、深さが1.5mmであり、上下方向の幅が4.9mmである。
【0022】
プラスチックボトル100に水平方向の荷重が加わると、当該荷重はプラスチックボトル100の水平断面形状が楕円形上に変形しうる。しかし、本実施形態に係るプラスチックボトル100は、主周リブ31が波状の水平断面形状を有することにより荷重が集中しにくい構造を実現しているので、プラスチックボトル100の変形が起こりにくい。
【0023】
また、プラスチックボトル100に上下方向の荷重が加わった場合も、プラスチックボトルが上下方向に変形しうる。しかし、本実施形態に係るプラスチックボトル100は、深さおよび幅が異なる主周リブ31と副周リブ32とを備えることで、これらのリブが共同してバネ状に働き、上下方向の荷重を緩和する作用を発現するので、プラスチックボトル100の変形が起こりにくい。
【0024】
〔パネル構造〕
胴部3の中部領域3bには、径方向に窪んだパネル33(減圧吸収パネル部の例)が、中部領域3bの周方向に並んで複数(本実施形態では六つ)等間隔で形成されている。
図5に示すように、パネル33は、中部領域3bの上下方向に延びる形状であって、プラスチックボトル100の中心軸を中心として周方向にねじれる形状で設けられている。また、パネル33の周囲には胴部基準面34が形成されている。
【0025】
図5〜7に示すように、パネル33は、パネル第一凹部33a(第一凹部の例)、パネル第二凹部33b(第二凹部の例)、および、パネル凸部33c(凸部の例)、を有する。パネル第一凹部33aは平面状の形状を有し、胴部基準面34からプラスチックボトル100の内側に向けて陥没するように設けられている。パネル第二凹部33bは、パネル第一凹部33aの周方向の中央に、パネル第一凹部33aからさらにプラスチックボトル100の内側に向けて陥没するように設けられている。
【0026】
パネル凸部33cは、パネル第一凹部33aの上下方向の両端部が、パネル第一凹部33aの周方向の全幅にわたって、パネル第一凹部33aからプラスチックボトル100の外側に向かって凸となる湾曲面として形成されている。なお、パネル凸部33cの上下方向の幅は、パネル凸部33cの周方向の両端部において最も小さく、パネル凸部33cの周方向の中央部において最も大きい。
【0027】
二つのパネル第一凹部33aから延長する二つの胴部基準面34が会合する部分に、峰状部34aが形成される。胴部基準面34の、プラスチックボトル100の中心軸からの距離は、峰状部34aにおいて最大となる。
【0028】
本実施形態に係るプラスチックボトル100は、パネル凸部33cを有することでパネル33の補強を実現している。そのため、ボトルに飲料を充填するために加圧する際に生じる径方向外側への変形や、ボトル成形時に収縮により発生する凹み(いわゆるヒケ)、などの変形による不具合が起こりにくい。
【0029】
〔底部構造〕
図5、8、9に示すように、底部4には、机などの設置面に対して接地する接地部41と、接地部41から径方向内側に向かうにつれてプラスチックボトル100の内側(
図5における上方)に突入するドーム部42と、が形成されている。ドーム部42の中央部にはドーム部42よりさらにプラスチックボトル100の内側に突入するドーム中央部421が設けられ、ドーム中央部421の周囲には複数の底部凹部422が設けられている。
【0030】
図9に示すように、底部凹部422は、平面視において、内角が70°である四つの凸頂点422aと、内角が220°である二つの凹頂点422bと、を有する凹六角形状(いわゆるボウタイ状)の形状を有する。ここで、凸頂点422aに隣接する二つの頂点は凸頂点422aおよび凹頂点422bであり、凹頂点422bに隣接する二つの頂点は二つの凸頂点422aである。なお、当該凹六角形の各辺はいずれも3mmであり、当該凹六角形の対角線のうち長さが最大の対角線の長さは6mmである。また、底部凹部422の深さは1.2mmである。
【0031】
図8、9に示すように、底部凹部422は、複数の底部凹部422が列状に配置された底部凹部列423を形成する。底部凹部列423において、複数の底部凹部422は、二つの凸頂点422aに挟まれる二つの辺の中心点どうしを結ぶ中心線C
Lの延長である中心軸C
Aに沿って、中心軸C
Aを一致させるように、互いに隣接して配置されている。
【0032】
図8、9に示すように、複数の底部凹部列423は、それぞれの中心軸C
Aが互いに平行に並ぶように配置されている。また、互いに隣接する二つの底部凹部列423a、423bは、中心軸C
Aに沿って互いにオフセットされて配置されており、そのオフセットの幅は中心線C
Lの長さ(5.2mm)の半分に相当する2.6mmである。なお、ここで「オフセット」の用語は、一方の底部凹部列423aに属する底部凹部422の2つの凹頂点422bどうしを結ぶ直線が隣接する他方の底部凹部列423bに属する底部凹部422の2つの凹頂点422bどうしを結ぶ直線と一致しないように、複数の底部凹部列423を中心軸C
Aに沿ってずらして配置することを表し、「オフセットの幅」の用語は、当該直線どうしの離間距離を表す。
【0033】
さらに、互いに隣接する三つの底部凹部422が、二つの凸頂点422aと、一つの凹頂点422bと、を近接させる態様で配置されている。換言すれば、底部凹部列423aに属する隣接する二つの底部凹部422の隣接する一つずつの凸頂点422aが、底部凹部列423bに属する底部凹部422の凹頂点422bの平面視における外側に、平面視において嵌入するように配置されている(
図9のA部)。かかる嵌入構造は、三つの底部凹部422が隣接する全ての場所に形成されている。
【0034】
従来のプラスチック製のボトルは、ボトルに飲料を充填するために加圧する際に、その底部が内圧によって下方向に押し出される態様でボトルが変形する場合があった。本実施形態に係るプラスチックボトル100は、底部凹部422が上述のごとく互いに嵌入する構造を有することによって、底部凹部422の底面に沿う方向の運動が規制され、その結果、底部4の変形が妨げられる。これによってプラスチックボトル100は変形を起こしうる荷重に対する耐力を獲得し、プラスチックボトル100の全体が変形しにくくなる効果が得られる。
【0035】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るプラスチックボトルのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0036】
上記の実施形態では、主周リブ31が一つ設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係るプラスチックボトルは複数の周リブを備えていてもよい。ただし、上下方向の荷重を緩和する作用を有効に発現する観点から、上記の実施形態のように、主周リブを一つ有することが好ましく、主周リブに加えて少なくとも一つの副周リブを有することが好ましく、主周リブに加えて少なくとも五つの副周リブを有することがさらに好ましい。
【0037】
上記の実施形態では、主周リブ31が、深さが最大値を取る点31aと、深さが最小値を取る点31bと、を、それぞれ7箇所ずつ有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、主周リブの深さが最大値を取る点と最小値を取る点とは、同数かつ複数であれば任意の数であってよい。ただし、水平方向の荷重の集中を避ける作用を良好に発言できることから、主周リブの深さが最大値を取る点と最小値を取る点とを、それぞれ6〜9箇所ずつ有することが好ましい。
【0038】
上記の実施形態では、主周リブ31の深さの最大値が4.5mmであり、最小値が3.5mmである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、周リブの深さの最大値は4.0〜5.5mmであってよく、最小値は最大値より0.5〜1.5mm小さくてよい。なお、周リブの深さの最大値は4.1〜5.2mmであることが好ましく、4.2〜5.0mmであることがさらに好ましい。また、周リブの深さの最小値は最大値より0.6〜1.4mm小さいことが好ましく、0.7〜1.3mm小さいことがさらに好ましい。
【0039】
上記の実施形態では、主周リブ31の上下方向の幅が、深さが最大値を取る点31aにおいて8.0mmであり、深さが最小値を取る点31bにおいて7.2mmである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、周リブの上下方向の幅は、6〜9mmであってよい。なお、周リブの上下方向の幅は、6.2〜8.8mmであることが好ましく、6.5〜8.5mmであることがさらに好ましい。
【0040】
上記の実施形態では、二つのパネル第一凹部33aから延長する二つの胴部基準面34が会合する部分に、峰状部34aが形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、たとえば、二つの胴部基準面が会合する領域に平面状の接続部を設けてもよい。
【0041】
上記の実施形態では、パネル第一凹部33aが平面状の形状を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、たとえば、第一凹部は減圧吸収のためのリブを有していてもよい。
【0042】
上記の実施形態では、凸頂点422aの内角が70°であり、凹頂点422bの内角が220°である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、凸頂点の内角は60°を越え80°以下であってよい。なお、凸頂点の内角は63°以上87°以下であることが好ましく、65°以上75°以下であることがさらに好ましい。
【0043】
上記の実施形態では、凹六角形の対角線のうち長さが最大の対角線の長さが6mmである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、当該対角線の長さは3〜8mmであってよい。なお、当該対角線の長さは4〜7mmであることが好ましく、5〜7mmであることがさらに好ましい。
【0044】
上記の実施形態では、底部凹部422の深さが1.2mmである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、底部凹部の深さは0.6〜2.4mmであってよい。なお、底部凹部の深さは0.5〜2.5mmであることが好ましく、0.7〜2.3mmであることがより好ましい。
【0045】
上記の実施形態では、互いに隣接する二つの底部凹部列423a、423bのオフセット幅が2.6mmであり、中心線C
Lの長さ(5.2mm)の半分である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、オフセットの幅は中心線の長さの40〜60%であってよい。なお、オフセットの幅は中心線の長さの45〜55%であることが好ましく、48〜52%であることがより好ましく、50%であることが特に好ましい。
【0046】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。