ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(B)40〜75質量部、錫酸亜鉛(C)5〜20質量部、及び熱膨張性マイクロカプセル(D)1〜20質量部を含有することを特徴とする発泡樹脂シート用樹脂組成物。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(B)40〜75質量部、錫酸亜鉛(C)5〜20質量部、及び熱膨張性マイクロカプセル(D)1〜20質量部を含有することを特徴とする発泡樹脂シート用樹脂組成物。
前記可塑剤(B)が、フタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、および、アジピン酸系可塑剤からなる群から選ばれる一種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡樹脂シート用樹脂組成物。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡樹脂シート用樹脂組成物を加熱成形して得られる発泡樹脂シートであって、前記加熱成形の際に加えられる熱により熱膨張した前記熱膨張マイクロカプセル(D)を有している、発泡樹脂シート。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(B)40〜75質量部、錫酸亜鉛(C)を5〜20質量部を含有してなるマトリックス中に、熱膨張マイクロカプセル(D)に起因する独立気泡を有し、みかけ密度が0.1〜0.85g/cm3である、発泡樹脂シート。
前記可塑剤(B)が、フタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、および、アジピン酸系可塑剤からなる群から選ばれる一種以上である、請求項5〜9のいずれかに記載の発泡樹脂シート。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡樹脂シート用樹脂組成物を加熱成形する工程を備え、該加熱成形の際に加えられる熱により前記熱膨張マイクロカプセル(D)を膨張させる、発泡樹脂シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の一例としての発泡樹脂シートについて説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、数値AおよびBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
【0026】
[発泡樹脂シート用樹脂組成物]
本発明の発泡樹脂シートに用いる樹脂組成物(発泡樹脂シート用樹脂組成物)は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(B)40〜75質量部、錫酸亜鉛(C)5〜20質量部、及び熱膨張性マイクロカプセル(D)1〜20質量部を含有する。さらに、前記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、金属水酸化物(E)を5〜15質量部含有することが好ましい。以下、本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0027】
<ポリ塩化ビニル系樹脂(A)>
本発明に用いるポリ塩化ビニル系樹脂(A)としては、任意の平均重合度のポリ塩化ビニル系樹脂を用いることができる。好ましくは、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度は、600〜3,000である。平均重合度が600以上であれば、十分な機械強度を得ることができる。一方、平均重合度が3,000を超えると、加工性(流動性)の低下が著しくなる割には機械的物性の向上がなく実用的でない。
【0028】
よって、このような観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度は、前述の範囲の中でも特に800以上、2,900以下であることがより好ましく、その中でも900以上、2,800以下であることがさらに好ましい。
【0029】
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)としては、ポリ塩化ビニルの単独重合体(「ポリ塩化ビニル系単独重合体」と称する)のほか、ポリ塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、「ポリ塩化ビニル系共重合体」とする)、このポリ塩化ビニル系共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体(以下、ポリ塩化ビニル系グラフト共重合体)などを挙げることができる。
【0030】
ポリ塩化ビニル系共重合体は、共重合体中のポリ塩化ビニル以外の構成単位の含有量が多くなると機械的特性が低下するため、ポリ塩化ビニル系共重合体中に占める塩化ビニルの割合が60〜99質量%であることが好ましい。
【0031】
なお、ポリ塩化ビニル系単独重合体、および、ポリ塩化ビニル系共重合体は、任意の方法、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで重合することができる。
【0032】
ここで、ポリ塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、分子中に反応性二重結合を有するものであればよい。例えば、プロピレン、ブチレンなどのα−オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド類などを挙げることができ、これらは単独、または、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0033】
ポリ塩化ビニル系共重合体以外の重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよい。例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどを挙げることができ、これらを単独、または、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0034】
<可塑剤(B)>
本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物は、可塑剤(B)を含有することで、発泡樹脂シートの製膜性を向上できる。
【0035】
本発明に使用できる可塑剤(B)は、特に限定することは無く公知の可塑剤を使用することができる。たとえば、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸系可塑剤、アジピン酸−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−2−デシルなどのアジピン酸系可塑剤、セバチン酸ジブチル、セバチン酸−2−エチルヘキシルなどのセバチン酸系可塑剤、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸系可塑剤、アジピン酸系ポリエステル可塑剤、フタル酸系ポリエステル可塑剤などのポリエステル系可塑剤、テレフタル酸系可塑剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油、エポキシ化落花生油、エポキシ化紅花油、エポキシ化ブドウ種子油等のエポキシ化植物油(エポキシ系可塑剤)等があげられる。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
中でも、本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物では、フタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、および、アジピン酸系可塑剤からなる群から選ばれる一種以上、を使用することが好ましい。該可塑剤を使用することにより、発砲樹脂シート用樹脂組成物中における熱膨張性マイクロカプセルの分散性が良好となり、製造した発泡樹脂シートの発泡性が良好となり、シートの外観が良好となる。
可塑剤としては、経済性、汎用性があり、ポリ塩化ビニル系樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルを均一に分散させる効果に優れたフタル酸系可塑剤を使用することが好ましい。また、フタル酸系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、および、フタル酸ジイソノニル(DINP)を挙げることができるが、環境適合性の観点から、フタル酸ジイソノニル(DINP)を使用することが好ましい。
【0037】
本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物においては、可塑剤として、リン系の可塑剤を含まないことが好ましい。リン系可塑剤を含んでいると、発砲樹脂シート用樹脂組成物中における熱膨張性マイクロカプセルの分散性が不良となり、製造した発泡樹脂シートの発泡性、および、シートの外観が不良となる場合がある。
リン系可塑剤としては、公知の芳香族リン酸エステル系難燃剤を挙げることができ、例えば、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、2−ナフチルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート等が挙げられる。
【0038】
<錫酸亜鉛(C)>
本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物は、錫酸亜鉛(C)を含有することで、発泡樹脂シート用樹脂組成物に難燃性を付与することができる。
【0039】
錫酸亜鉛(C)としては、例えば、三酸化錫亜鉛、六水酸化錫亜鉛が挙げられる。六水酸化錫亜鉛の分解温度は約200℃で、発泡樹脂シートの成形温度に近いため成形中に分解してしまう惧れがある。一方、三酸化錫亜鉛の分解温度は約400℃で、実際の燃焼温度に近いことから、本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物においては、より難燃効果が見込まれる三酸化錫亜鉛を使用することが好ましい。
【0040】
<熱膨張マイクロカプセル(D)>
本発明で使用する熱膨張マイクロカプセル(D)は、アクリロニトリル・メタアクリロニトリル・酢酸ビニル共重合体からなるシェルと、このシェル中に封入されたブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の揮発性液体とからなるカプセルであり、膨張を開始する温度(膨張開始温度)が100〜155℃であることが好ましく、110〜155℃であることがより好ましく、130〜155℃であることがさらに好ましい。膨張を開始する温度を100℃以上とすることで、ポリ塩化ビニル系樹脂を使用して成形する際、樹脂を押出し成形機に投入した直後などにおいて、熱膨張マイクロカプセル(D)は膨張しにくいため安定した成形を可能とすることができる。また、膨張を開始する温度を155℃以下とすることで、使用するポリ塩化ビニル系樹脂の成形温度において該熱膨張マイクロカプセル(D)が口金内で膨張し始める温度が適度となる。
【0041】
本発明で使用する熱膨張マイクロカプセル(D)は、最大に膨張する温度(最大膨張温度)が160〜230℃であることが好ましく、160〜220℃であることがより好ましく、160〜210℃であることがさらに好ましい。最大に膨張する温度を160℃以上とすることで、成形機から吐出される前後のタイミングで適度な膨張が得られる。また、最大に膨張する温度を230℃以下とすることで、使用するポリ塩化ビニル系樹脂の成形温度において熱膨張マイクロカプセル(D)が最大に膨張する温度が適度となり効率の良い発泡状態を得ることができる。
【0042】
本発明に使用する熱膨張マイクロカプセル(D)としては、松本油脂製薬社製「マツモトマイクロスフェアー」シリーズ、アクゾノーベル社製「EXPANCEL」シリーズや積水化学工業社製「ADVANCELL」シリーズなどが挙げられる。
【0043】
<金属水酸化物(E)>
本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物は、さらに、金属水酸化物(E)を含有することが好ましい。該金属水酸化物(E)は難燃助剤として機能する。金属水酸化物(E)としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、を挙げることができる。これらを配合することで、難燃性能をより効率よく向上させることができる。また、水酸化マグネシウムは難燃助剤としての効果以外に、成形時の外観をよりよいものとすることができる。
【0044】
<その他の成分>
(エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂)
本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物は、更に、α−オレフィン類であるエチレンを塩化ビニルと共重合させた、エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂を1〜30質量部含有することが好ましい。エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂を含有することで、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)と、熱膨張マイクロカプセル(D)との親和性が向上し、溶融加工時におけるプレートアウトの発生を抑制することで外観が特に良好な発泡樹脂シートが得られる。
エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂の配合量は1〜30質量部であることが好ましい。また、配合量の下限は、1.5質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。また、配合量の上限は、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。
【0045】
(加工助剤、熱安定剤)
また、本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物は、更に、加工助剤としてPMMA、目やに防止剤を含んでいてもよく、また、熱安定剤として、例えば、Ba−Zn系熱安定剤を含んでいてもよい。
【0046】
本発明に使用する、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)、可塑剤(B)、錫酸亜鉛(C)、熱膨張マイクロカプセル(D)、及び、好ましく含有させることができる金属水酸化物(E)を混合する方法は、特に限定されることはなく、一般的な攪拌機を用いて混合することができる。
【0047】
<各成分の含有割合>
上記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対する可塑剤(B)の配合量は、40〜75質量部であることが好ましい。可塑剤(B)の配合量を40質量部以上とすることで、発泡樹脂シートを製造する際のサージングを防止することができ、安定してシート製膜が可能となる。一方、可塑剤(B)の配合量を75量部以下とすることで、発泡樹脂シートからの可塑剤がブリードアウトすることなく、十分な成形性や加工性を有することができる。また、難燃性能の低下を招くことなく、より好ましい難燃性能を付与することができる。
【0048】
可塑剤(B)の配合量の下限は、45質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましい。また、可塑剤(E)の配合量の上限は、70質量部以下であることが好ましく、65質量部以下であることがより好ましい。
【0049】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対する錫酸亜鉛(C)の配合量は、5〜20質量部であることが重要である。錫酸亜鉛(C)の配合量が5質量部以上であれば、難燃性に優れる発泡樹脂シートが得られる。一方、錫酸亜鉛(C)の配合量が20質量部以下であれば、実用上十分な難燃性を有する発泡樹脂シートが得られ、加工時の溶融張力が下がりすぎることなく容易に製膜が可能となる。錫酸亜鉛(C)の配合量の下限は、7質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましい。また、錫酸亜鉛(C)の配合量の上限は、18質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
【0050】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対する熱膨張マイクロカプセル(D)の配合量は、1〜20質量部であることが重要である。熱膨張マイクロカプセル(D)の配合量を1質量部以上とすることで、得られる発泡樹脂シートに十分な断熱性を付与ことができ、また、発泡樹脂シートの軽量化を図ることが可能となる。一方、熱膨張マイクロカプセル(D)の配合量を20質量部以下とすることで、機械強度が低下することを抑制することができ、より好ましい外観とすることができる。
熱膨張マイクロカプセル(D)の配合量の下限は、2質量部以上であることが好ましく、2.5質量部以上であることがより好ましい。また、熱膨張マイクロカプセル(D)の配合量の上限は、17質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
【0051】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対する金属水酸化物(E)の配合量は、5〜15質量部であることが好ましい。金属水酸化物(E)の配合量を5質量部以上とすることにより、難燃効果を上げることができ、また、配合量を15質量部以下とすることにより、機械的物性の低下しないシートとすることができる。また、金属水酸化物(E)の配合量の下限は、6質量部以上がより好ましく、上限は12質量部以下がより好ましい。
【0052】
なお、本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料などの添加剤を含有することもできる。
【0053】
[発泡樹脂シート]
本発明の発泡樹脂シートは、上記の発泡樹脂シート用樹脂組成物を加熱成形して得られる発泡樹脂シートであって、前記加熱成形の際に加えられる熱により熱膨張した前記熱膨張マイクロカプセル(D)を有していることを特徴とする。
【0054】
発泡樹脂シートは、マトリックスおよび気泡から構成されている。マトリックスは、上記したポリ塩化ビニル系樹脂(A)、可塑剤(B)、および、錫酸亜鉛(C)を含んでおり、場合によっては、さらに、金属水酸化物(E)を含んでいてもよい。各成分の含有割合は上記した通りである。
【0055】
気泡は、発泡樹脂シート用樹脂組成物を加熱成形する際に、熱膨張マイクロカプセルが熱膨張することにより形成される。熱膨張マイクロカプセルを構成するシェルは、熱膨張により破壊させることはないので、気泡とマトリックスとの間には、該シェルが膨張した状態にて存在していることになる。また、各気泡はマトリクス中にて互いに独立した状態で存在している。また、本発明の気泡には、シート冷却後シェル内部に揮発性液体が残存している場合があり、このような場合も気泡として含む意味である。
【0056】
発泡樹脂シート用樹脂組成物に使用される熱膨張マイクロカプセル(D)の平均粒子径は、5〜50μm、好ましくは10〜40μmであり、これが成形時の熱により膨張し、得られる発泡シート中では60〜200μm、好ましくは80〜150μmの気泡となる。
【0057】
本発明の発泡樹脂シートは、JIS K7127に基づき測定した引張破断伸度が50%以上であることが好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、100%以上が特に好ましい。引張破断伸度を50%以上とすることで、建築材料である床材や壁材などに使用する場合、例えば合板などに、発泡樹脂シートを貼り付ける際、シートの破断を防止することができる。
【0058】
本発明の発泡樹脂シートは、JIS K7127に基づき測定した引張破断強度が1.20MPa以上が好ましく、1.40MPa以上がより好ましく、1.70MPa以上がさらに好ましい。引張破断強度を1.20MPa以上とすることで、建築材料である床材や壁材などに使用する場合、例えば合板などに、発泡樹脂シートを貼り付ける際、シートの破断を防止することができる。
【0059】
また、本発明の発泡樹脂シートのみかけ密度は、0.10〜0.0.85g/cm
3であることが好ましく、0.15〜0.80g/cm
3であることがより好ましい。発泡樹脂シートの密度を0.10g/cm
3以上とすることで、シートの過剰な強度低下を抑制することができる。一方、発泡樹脂シートの密度を0.85g/cm
3以下とすることで、シートの軽量化を図ることができ、発泡樹脂シート中において、通常、樹脂よりも熱伝導率が低い空気の占める割合を高めることにより、断熱性を良好とすることができる。なお、上記密度は、JIS K7222(2005)に準拠して測定した見かけ密度である。
【0060】
本発明の発泡樹脂シートは、JIS K7201に基づいて測定した酸素指数が、23%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。酸素指数を23%以上とすることにより、発砲樹脂シートを例えば建材用途に使用する場合における難燃性として十分なものとすることができる。
【0061】
本発明の発泡樹脂シートは、シートの発泡状態が良好であり、シートの外観が良好である。得られたシートの観察表面に金属を蒸着し、該蒸着面をSEM観察することにより、シートの外観が観察できるが、本発明の発泡樹脂シートは、発砲粒子がマトリックス中において分散されており、粒子の大きさが揃っており、また、マトリックス樹脂に対して発泡粒子の割合が多いことが観察できる。
【0062】
[発泡樹脂シートの製造方法]
本発明の発泡樹脂シートの製造方法は、特に限定されることはないが、上記発泡樹脂シート用樹脂組成物を加熱成形することにより得ることができる。発泡樹脂シート用組成物の原料を攪拌機でブレンドし、バンバリーミキサー、単軸押出機、ロール、ニーダー等の公知の混練り機を用いて加熱溶融状態で混練りすることによって発泡樹脂シート用溶融樹脂組成物を得る。発泡樹脂シート用樹脂組成物の溶融温度は、樹脂の種類、混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜決定されるが、溶融温度の下限は、例えば150℃以上、好ましくは、170℃以上であり、また、溶融温度の上限は、例えば220℃以下、好ましくは200℃以下である。かかる溶融温度の範囲内で成形することにより、ポリ塩化ビニル系樹脂の熱劣化を生じることなく、外観良好な発泡樹脂シートを成形することができる。
【0063】
発泡樹脂シート用樹脂組成物を溶融混練することにより、溶融樹脂組成物を得る。次に、得られた発泡樹脂シート用溶融樹脂組成物をカレンダーロールや、Tダイ成形機でシート状に成形することによって発泡樹脂シートを得ることができる。
【0064】
押出成形では、例えば、Tダイなどの金型を用いて、溶融樹脂組成物を押出成形する。押出成形された溶融樹脂組成物を冷却するには、例えば、冷却されたキャストロールなどの冷却機に、溶融樹脂組成物を接触させ、急冷する。これにより、溶融樹脂組成物が固化され、無延伸シートが得られる。冷却温度は、溶融温度よりも低温であれば限定されないが、冷却温度の上限は、例えば90℃以下、好ましくは、60℃以下であり、また、冷却温度の下限は、例えば0℃以上、好ましくは、10℃以上である。
【0065】
なお、無延伸シートとは、シートの強度を高める目的で、積極的に延伸しないシートであるが、ここでは、押出成形時に延伸ロールによって2倍未満に延伸されたシートも無延伸シートに含むものとする。
【0066】
本発明の発泡樹脂シートの厚みは、特に限定されることはないが、使用する用途により適宜設定できる。一般的には15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、7mm以下であることが更に好ましく、5mm以下であることが更に好ましく、2.5mm以下であることが特に好ましい。また、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることが更に好ましく、1.7mm以上であることが特に好ましい。
発泡樹脂シートの厚みを上記の範囲とすることで、シートをロール状に巻き取る作業性により優れたものとなり効率的な生産が可能となる。また、難燃性能や他の物性値をより好ましいものとすることができる。
また、本発明の発泡樹脂シートは、単層であってもよく、多層であってもよい。
【0067】
[積層シート]
本発明のもう一つの態様は、本発明の発泡樹脂シートを少なくとも1層含む積層シートであり、より好ましくは、本発明の発泡樹脂シートを中間層として有する積層シートである。
【0068】
本発明の発泡樹脂シートを中間層とし、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)やその他の樹脂を使用して積層シートとすることができる。たとえば、発泡樹脂シートの表面層および/または裏面層にポリ塩化ビニル系樹脂(A)層を設けることができる。
【0069】
本発明の発泡樹脂シートは、たとえばシート表面の外観性能に優れる性能が必要である用途に使用する場合などは、表面層にポリ塩化ビニル系樹脂(A)層を設けることで、発泡による外観の不具合を抑制することができる。
【0070】
この場合、特に積層シートの表面層および/または裏面層には、熱膨張マイクロカプセル(D)を含有しないことがより好ましい。なお、「熱膨張マイクロカプセルを含有しない」ことには、熱膨張マイクロカプセルの発泡作用により外観が損なわれない程度のごくわずかな量を含有することも含まれる。
【0071】
また、発泡樹脂シートを中間層とし、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)やその他の樹脂を使用して積層シートとする場合、可塑剤と難燃剤は、その他の樹脂に適した難燃性を付与し得るものを含有させることができる。好ましくは中間層と表/裏面層が同一の樹脂、可塑剤、難燃剤で作製することであるが、本発明の発泡樹脂シートはこれに限定されず、例えば、可塑剤としてリン酸系可塑剤やその他の樹脂に最適な難燃剤を使用することもできる。このような構成とすることで、より難燃性を向上させることができる。表/裏面層に難燃剤を配合する場合の配合量は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)等の母材100質量部に対して、好ましくは20〜55質量部、より好ましくは25〜50質量部、さらに好ましくは30〜45質量部である。
積層シートの表面層および裏面層は、熱膨張マイクロカプセル(D)を含まないので、リン系可塑剤を含んでいたとしても、熱膨張マイクロカプセル(D)の分散性不良に基づく外観不良が生じることがない。
【0072】
本発明の発泡樹脂シートは、必要に応じて片面および/または両面にプライマー層を形成してもよい。
【0073】
本発明の発泡樹脂シートには、耐候性やその他必要な目的に応じて別の樹脂層を設けることもできる。この樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等を積層またはコーティングすることにより形成できる。また、この樹脂層にエンボス加工を施すこともできる。
【0074】
本発明の発泡樹脂シートを用いて積層シートを製造する方法としては、(1)発泡樹脂シートとその他のフィルム層を予め調製し、その後、発泡樹脂シートとその他のフィルム層を積層する方法、(2)発泡樹脂シートとその他のフィルム層を直接形成させる方法が挙げられる。
(1)の方法の場合は、発泡樹脂シートとその他のフィルム層を押出して加圧ロールによりラミネートする押し出しラミネート法を用いることができる。
(2)の方法の場合は、発泡樹脂シートとその他のフィルム層を、Tダイ押出し成形法等の押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の成形方法により調製することができる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。以下に示す実施例の数値は、上記の実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
【0076】
[使用した材料]
<ポリ塩化ビニル系樹脂(A)>
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)としては、A−1[カネカ社の商品名「S1001」(平均重合度1000)]、A−2[大洋塩ビ社の商品名「TH−2500」(平均重合度2,500)]を使用した。
【0077】
<可塑剤(B)>
フタル酸系可塑剤としては、B−1[ジェイプラス社の商品名「DOP」(フタル酸ジオクチル)]、および、B−2[「DINP」(フタル酸ジイソノニル)]を使用した。
リン系可塑剤としては、B−3[味の素ファインテクノ社の商品名「レオフォス」]を使用した。
エポキシ系可塑剤としては、B−4[DIC社の商品名「M−6」]を使用した。
【0078】
<錫酸亜鉛(C)>
錫酸亜鉛(C)としては、C−1[日本軽金属社の三酸化錫亜鉛「Flamtard S」]を使用した。
【0079】
<熱膨張マイクロカプセル(D)>
熱膨張マイクロカプセル(D)としては、D−1[商品名「EXPANCEL930DU120」(膨張開始温度:122〜132℃)]、及びD−2[アクゾノーベル社の商品名「EXPANCEL951DU120」(膨張開始温度:132〜142℃)]を使用した。
【0080】
<金属水酸化物(E)>
金属水酸化物(E)としては、E−1[共和化学社の水酸化マグネシウム「KISUMA 5B」]、及びE−2[水酸化アルミニウム「BF 013」]を使用した。
【0081】
<エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(目やに防止剤)>
エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(目やに防止剤)としては、F−1[大洋塩ビ社の商品名「TE−1050」(平均重合度1,050、エチレン含有率1.3質量%)]を使用した。
【0082】
<難燃剤>
難燃剤としては、G−1[鈴裕化学社の三酸化アンチモン(AT−3)]、G−2[キクチカラー社のモリブデン酸アンモニウム/水酸化アルミニウム化合物「SRK−803」]、G−3[JX金属商事社のモリブデン酸カルシウム亜鉛化合物「Kemgard 911A」]、G−4[水澤化学工業社のホウ酸亜鉛「ALCANEX FRC−500」]を使用した。
【0083】
<熱安定剤>
熱安定剤としては、2種のH−1及びH−2[勝田化工社のBa−Zn系熱安定剤]を使用した。
【0084】
<加工助剤、目やに防止剤>
加工助剤としては、I−1[三菱ケミカル社のPMMA「P530A」]を使用した。目やに防止剤としては、J−1[三菱ケミカル社の「P700」]を使用した。
【0085】
[評価方法]
各実施例および各比較例の発泡樹脂シートを以下の方法により評価した。ここで、Tダイから発泡樹脂シートが押し出されてくる流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とする。
【0086】
<引張破断伸度および引張破断強度>
得られた発泡樹脂シートの縦方向について、測定部分が10mm幅のダンベル試験片を使用し、JIS K7127に基づき、温度23℃、チャック間を40mm、引張速度300mm/minの条件で測定を行い、引張破断伸度(%)を算出した。引張破断伸度が50%以上、および、引張破断強度が1.20MPa以上であれば、機械特性に優れているといえる。
<見かけ密度>
みかけ密度は、JIS K7222(2005)により測定した。密度が0.90g/cm
3以下であれば、軽量性に優れているといえる。
【0087】
<シート外観>
得られたシートの観察表面に金属を蒸着し、該蒸着面をSEM観察することにより、シートの外観を評価した。観察は、日本電子社製の走査型電子顕微鏡(JSM−6390)を使用し、加速電圧10kV、観察倍率30倍(最低倍率)にて行った。
なお、評価は以下の基準に基づいて行った。
○:発泡状態がよく、粒子が揃っているもの、
△:○と×の中間、
×:発泡状態が悪く、表層に肌荒れが発生しているもの、
本評価が「○」又は「△」であればシート外観に優れているといえる。
【0088】
<難燃性>
(酸素指数による燃焼性の試験(JIS K7201))
得られたシート(幅35m、長さ150mm)の酸素指数を、JIS K7201−2(手順B−伝ぱ点火法)に基づいて測定した。酸素濃度が23%、25%、および27%の三種類において、以下の基準により評価を行った。
○:燃えなかった。
×:燃えた。
−:測定せず。
酸素指数が23%以上であれば、難燃性が十分だといえる。
【0089】
(実施例および比較例)
表1に示す配合割合となるように調整した原料を、ヘンシェルミキサーを用いてブレンドした後、得られた混合物を、Tダイを装着したΦ40mm単軸押出機に投入し、樹脂温度180℃で各厚みとなるように押出成形して、実施例、比較例に係る発泡樹脂シートを得た。
得られたシートについて、上記評価方法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
[結果]
表1より、実施例1〜6に係る発泡樹脂シートはいずれも、破断強度、破断伸びが所定値以上であるので、良好な機械的強度を備えている。また、みかけ密度が所定範囲であるので、軽量性を備えている。また、酸素指数が所定値以上であるので、難燃性を備えている。さらに、外観特性が良好である。
これに対して、比較例1〜6のシートは、いずれも錫酸亜鉛を含んでいない。比較例1、2のシートは、難燃剤であるリン系可塑剤を含んでいるので、難燃性を備えているが、外観不良が生じていた。比較例3、4、6のシートは、いずれも難燃性が無かった。比較例5のシートは、難燃性を示してはいるが、外観不良を生じた。比較例7のシートは、錫酸亜鉛を含んでいないと共に、可塑剤の量が多すぎるため、難燃性を示さなかった。比較例8、9のシートは、熱膨張性マイクロカプセルおよび錫酸亜鉛を含んでいない。よって、みかけ密度が大きく、軽量性を備えていなかった。また、比較例9のシートは、可塑剤の量が多すぎるため、難燃性を示さなかった。
【0092】
また、
図1に、実施例5、6、比較例2のシートの外観分析結果(SEM画像)を示した。(a)が実施例5、(b)が実施例6、(c)が比較例2のSEM画像である。実施例5、6のシートは、発泡粒子がマトリックス中において分散されており、粒子の大きさ揃っており、また、マトリックス樹脂に対して発泡粒子の割合が多いことが観察できた。