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特開2019-151898CVD装置の支持機構、セラミック被覆体の製造方法およびCVD装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-151898(P2019-151898A)
(43)【公開日】2019年9月12日
(54)【発明の名称】CVD装置の支持機構、セラミック被覆体の製造方法およびCVD装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20190816BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20190816BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20190816BHJP
【FI】
   C23C16/44 G
   H01L21/205
   H01L21/31 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-38772(P2018-38772)
(22)【出願日】2018年3月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野呂 匡志
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA10
4K030BA37
4K030CA17
4K030FA10
4K030GA02
4K030GA06
5F045AA03
5F045AC03
5F045AC07
5F045AD18
5F045BB01
5F045DP03
5F045DP27
5F045EF02
5F045EM06
5F045EM10
(57)【要約】
【課題】基材においてセラミック層の露出部の発生を抑え、セラミック層のバラツキを抑える。
【解決手段】各々回転する複数のクランク機構を備えるCVD装置の支持機構であって、 各クランク機構は、所定の軸を中心として軸回転するクランク軸と、クランク軸に取り付けられ、当該クランク軸の軸回転に従い旋回するクランクアームと、クランクアームに取り付けられ、クランクアームの旋回に従い所定の軌道に沿って移動しながら基材を支持可能なクランクピンと、を備え、各クランク機構の各クランクピンが互いに同期して移動する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々回転する複数のクランク機構を備えるCVD装置の支持機構であって、
各クランク機構は、
所定の軸を中心として軸回転するクランク軸と、
前記クランク軸に取り付けられ、当該クランク軸の軸回転に従い旋回するクランクアームと、
前記クランクアームに取り付けられ、前記クランクアームの旋回に従い所定の軌道に沿って移動しながら基材を支持可能なクランクピンと、を備え、
各クランク機構の各クランクピンが互いに同期して移動する、
CVD装置の支持機構。
【請求項2】
前記クランクピンは、先端部において前記基材の端部を支持する支持部を有する、請求項1に記載のCVD装置の支持機構。
【請求項3】
前記クランクピンは、前記支持部を形成する鍔を有する、請求項2に記載のCVD装置の支持機構。
【請求項4】
各クランク機構における前記クランク軸と前記クランクピンの間の距離は、対向するクランク軸の間の距離であるPCD(Pitch Circle Diameter)の5〜30%である、請求項1または2に記載のCVD装置の支持機構。
【請求項5】
請求項1に記載のCVD装置の支持機構に前記基材を搭載し、前記クランク機構を回転させることにより前記基材を揺動させながらセラミック層を被覆するセラミック被覆体の製造方法。
【請求項6】
前記クランクピンは、先端部において前記基材の端部を支持する支持部を有し、前記支持部により前記基材を支持するともに、前記基材を揺動および回転させながら前記セラミック層を被覆する、請求項5に記載のセラミック被覆体の製造方法。
【請求項7】
前記クランク機構は間欠的に回転する、請求項5または6に記載のセラミック被覆体の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載のCVD装置の支持機構を備えるCVD装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD装置の支持機構、セラミック被覆体およびCVD装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカーボン(黒鉛)やSiCを基材にした半導体用熱処理部材(以下、これをワークともいう。)は、熱処理中において基材自身に含まれる不純物が漏出しないように、また高い耐蝕性を得るなどの目的のために、その全面にCVD−SiCコーティングを実施する場合がある。ワークに対してCVDコーティングを施す場合には、ワークをCVD炉内において支持するための支持部材が必要であり、ワークと支持部材とは接触した状態になる。
【0003】
したがって、前記支持部材に接触したワークの表面には反応ガスが接触せず、当該箇所にはCVD膜がほとんど形成されないという問題が発生する。そこで、CVD膜の非形成面積をより小さくさせるために、支持部材の先端部を針状に形成させるなどの工夫がなされているものの、いずれにしてもワーク表面の一部にCVD膜が形成されない箇所が存在することにより、ワーク基材に含まれる不純物が漏出するといった問題が発生する。
【0004】
そのために、ワークに対してCVDコーティングを実行した後、一旦、CVD炉を室温に戻し、炉内を開けて支持部材によるワークの支持位置をずらせてセットし直した後、再びCVDコーティングを実行するといった対処が考えられている。この様な手段を採用した場合には、CVD炉の温度を再び上昇させるための余分なリードタイムを確保しなければならず、生産性を低下させると共にコストを上昇させるという問題が発生する。
【0005】
このような問題を解決するために特許文献1には、CVD炉内に配置されたワーク支持部材によってワークを吊り下げる形態で支持すると共に、CVD処理中において、水平方向に回転可能になされたワーク支持部材に対して間欠的に回転駆動動作を与え、ワーク支持部材の水平方向への回転および停止に伴うワークに作用する遠心力の働きの変化により、ワークに対するワーク支持部材の接触位置が変更されるようにしたCVDコーティング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−89819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記記載された発明は、1回のコーティングでセラミック被膜を形成しているので、原料ガスの流れの疎密に伴って発生するセラミック被膜のバラツキが、解消されにくい。特に中心部分と周囲との間に生じる差は解消できない。
【0008】
本発明では、1回のコーティングで基材の支持に伴うセラミック層の露出部が生じることなく、セラミック層のバラツキの生じにくいCVD装置の支持機構、セラミック被覆体の製造方法およびCVD装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明のCVD装置の支持機構は、以下のものである。
【0010】
(1)各々回転する複数のクランク機構を備えるCVD装置の支持機構であって、各クランク機構は、所定の軸を中心として軸回転するクランク軸と、前記クランク軸に取り付けられ、当該クランク軸の軸回転に従い旋回するクランクアームと、前記クランクアームに取り付けられ、前記クランクアームの旋回に従い所定の軌道に沿って移動しながら基材を支持可能なクランクピンと、を備え、各クランク機構の各クランクピンが互いに同期して移動する。
【0011】
本発明のCVD装置の支持機構によれば、複数のクランクピンで基材を支持するとともに、クランク機構によって基材を揺動させるので、基材にコーティングされるセラミック層(セラミックコート)のバラツキを小さくすることができる。また基材の位置が変わるのでそれに伴って原料ガスの流れが変わりセラミック層を均一化する作用が働く。
また、基材がクランク機構によって移動するクランクピンで支持されるため、回転する中で基材の支持点が振動、熱膨張差によって少しずつ動き、セラミック層がコーティングされていない基材の露出した部分の発生を防止することができる。
【0012】
また、本発明のCVD装置の支持機構は次の態様であることが好ましい。
【0013】
(2)前記クランクピンは、先端部において前記基材の端部を支持する支持部を有する。
【0014】
クランクピンが支持部を有していると、支持部の上に基材を搭載させ、クランク機構の回転とともに基材と支持部が相対的に移動する。このため、支持に伴うセラミック層の露出部分が形成されない。
【0015】
(3)前記クランクピンは、前記支持部を形成する鍔を有する。
【0016】
クランクピンが鍔を有していると、鍔の上に基材を搭載させ、クランク機構の回転とともに基材と鍔が相対的に移動する。このため、支持に伴うセラミック層の露出部分が形成されない。
【0017】
(4)各クランク機構における前記クランク軸と前記クランクピンの間の距離は、対向するクランク軸の間の距離であるPCD(Pitch Circle Diameter)の5〜30%である。
【0018】
クランク軸とクランクピンの中心軸の間の距離Lの2倍が、揺動するストロークである。L/PCDが5%以上であると基材が充分に揺動するので、セラミック層の位置によるバラツキを解消することができる。基材の移動範囲は基材の面積に対して(L/PCD+1)倍となる。L/PCDが30%以下であると、基材の移動範囲は基材の1.69倍に抑えられるため、CVD装置内で効率よくスペースを利用することができる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明のセラミック被覆体の製造方法は以下のものである。
【0020】
(5)前記記載のCVD装置の支持機構に前記基材を搭載し、前記クランク機構を回転させることにより前記基材を揺動させながらセラミック層を被覆する。
【0021】
本発明のセラミック被覆体の製造方法によれば、複数のクランクピンで基材を支持するとともに、クランク機構によって基材を揺動させるので、基材にコーティングされるセラミック層のバラツキを小さくすることができる。また基材の位置が変わるのでそれに伴って原料ガスの流れが変わりセラミック層を均一化する作用が働く。
【0022】
また、基材がクランク機構によって移動するクランクピンで支持されるため、回転する中で基材の支持点が振動、熱膨張差によって少しずつ動き、セラミック層がコーティングされていない基材の露出した部分の発生を防止することができる。
【0023】
また、本発明のセラミック被覆体の製造方法は次の態様であることが好ましい。
【0024】
(6)前記クランクピンは、先端部において前記基材の端部を支持する支持部を有し、前記支持部により前記基材を支持するともに、前記基材を揺動および回転させながら前記セラミック層を被覆する。
【0025】
クランクピンが支持部を有していると、支持部の上に基材を搭載させ、クランク機構の回転とともに基材と支持部が相対的に移動する。このため、支持に伴うセラミック層の露出部分が形成されない。
【0026】
(7)前記クランク機構は間欠的に回転する。
【0027】
発明のクランク機構によれば、間欠的に回転するので、セラミック層を被覆する基材に対し、常時機械的な力を付与することを抑制することができる。セラミック層が被覆されている間は、クランクピンと基材との間でセラミック層によって接合しようとする作用が働いている。クランク機構を間欠的に回転させることにより、接合したセラミック層を剥がそうとする作用が限られた位置で行われることになり、欠陥の少ないセラミック被覆体を得ることができる。
【0028】
(8)また、上記課題を解決するための本発明のCVD装置は、前記記載のCVD装置の支持機構を備える。
【0029】
本発明のCVD装置によれば、複数のクランクピンで基材を支持するとともにクランク機構によって揺動するので、基材にコーティングされるセラミック層のバラツキを小さくすることができる。
【0030】
また、回転するクランクピンで支持されているので、回転する中で支持点が振動、熱膨張差によって少しずつ動き、基材の露出した部分の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、基材にコーティングされるセラミック層のバラツキを抑制するとともに、セラミック層がコーティングされていない基材の露出した部分の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態のCVD炉の側面視における断面図。
図2図1における支持機構の一部であるクランク機構と基材の部分の側面格大図。
図3図1の支持機構の平面図。
図4図1の支持機構と基材の平面図。
図5】実施の形態の支持機構にリング状の基材を搭載した状態を示す平面図。
図6図4の支持機構と基材の動作を示し、90度毎に回転した状態を説明する説明図。
図7図6の基材の動作を破線で重ね合わせて示す説明図。
図8】(a)〜(d)は先端に支持部を有するクランクピンの変形例。
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明のCVD装置の支持機構は、各々回転する複数のクランク機構を備えるCVD装置の支持機構であって、各クランク機構は、所定の軸を中心として軸回転するクランク軸と、前記クランク軸に取り付けられ、当該クランク軸の軸回転に従い旋回するクランクアームと、前記クランクアームに取り付けられ、前記クランクアームの旋回に従い所定の軌道に沿って移動しながら基材を支持可能なクランクピンと、を備え、各クランク機構の各クランクピンが互いに同期して移動する。
【0034】
本発明のCVD装置の支持機構によれば、複数のクランクピンで基材を支持するとともに、クランク機構によって基材を揺動させるので、基材にコーティングされるセラミック層(セラミックコート)のバラツキを小さくすることができる。
また、基材がクランク機構によって移動するクランクピンで支持されるため、回転する中で基材の支持点が振動、熱膨張差によって少しずつ動き、セラミック層がコーティングされていない基材の露出した部分の発生を防止することができる。また基材の位置が変わるのでそれに伴って原料ガスの流れが変わりセラミック層を均一化する作用が働く。
【0035】
また、本発明のCVD装置の支持機構は次の態様であることが好ましい。
【0036】
前記クランクピンは、先端部において前記基材の端部を支持する支持部を有する。
【0037】
クランクピンが支持部を有していると、支持部の上に基材を搭載させ、クランク機構の回転とともに基材が回転し、基材と支持部が相対的に移動する。このため、支持に伴うセラミック層の露出部分が形成されない。
【0038】
前記クランクピンは、前記支持部を形成する鍔を有する。
【0039】
クランクピンが鍔を有していると、鍔の上に基材を搭載させ、クランク機構の回転とともに基材が回転し、基材と鍔が相対的に移動する。このため、支持に伴うセラミック層の露出部分が形成されない。
【0040】
各クランク機構における前記クランク軸と前記クランクピンの間の距離は、対向するクランク軸の間の距離であるPCD(Pitch Circle Diameter)の5〜30%である。
【0041】
クランク軸とクランクピンの中心軸の間の距離Lの2倍が、揺動するストロークである。L/PCDが5%以上であると基材が充分に揺動するので、セラミック層の位置によるバラツキを解消することができる。基材の移動範囲は基材の面積に対して(L/PCD+1)倍となる。L/PCDが30%以下であると、基材の移動範囲は基材の1.69倍に抑えられるため、CVD装置内で効率よくスペースを利用することができる。
【0042】
本発明のセラミック被覆体の製造方法は以下のものである。
【0043】
前記記載のCVD装置の支持機構に前記基材を搭載し、前記クランク機構を回転させることにより前記基材を揺動させながらセラミック層を被覆する。
【0044】
本発明のセラミック被覆体の製造方法によれば、複数のクランクピンで基材を支持するとともに、クランク機構によって基材を揺動させるので、基材にコーティングされるセラミック層のバラツキを小さくすることができる。また基材の位置が変わるのでそれに伴って原料ガスの流れが変わりセラミック層を均一化する作用が働く。
【0045】
また、基材がクランク機構によって移動するクランクピンで支持されるため、回転する中で基材の支持点が振動、熱膨張差によって少しずつ動き、セラミック層がコーティングされていない基材の露出した部分の発生を防止することができる。
【0046】
また、本発明のセラミック被覆体の製造方法は次の態様であることが好ましい。
【0047】
前記クランクピンは、先端部において前記基材の端部を支持する支持部を有し、前記支持部により前記基材を支持するともに、前記基材を揺動および回転させながら前記セラミック層を被覆する。
【0048】
クランクピンが支持部を有していると、支持部の上に基材を搭載させ、クランク機構の回転とともに基材が回転し、基材と支持部が相対的に移動する。このため、支持に伴うセラミック層の露出部分が形成されない。
【0049】
前記クランク機構は間欠的に回転する。
【0050】
発明のクランク機構によれば、間欠的に回転するので、セラミック層を被覆する基材に対し、常時機械的な力を付与することを抑制することができる。セラミック層が被覆されている間は、クランクピンと基材との間でセラミック層によって接合しようとする作用が働いている。クランク機構を間欠的に回転させることにより、接合したセラミック層を剥がそうとする作用が限られた位置で行われることになり、欠陥の少ないセラミック被覆体を得ることができる。
【0051】
また、本発明のCVD装置は、前記記載のCVD装置の支持機構を備える。
【0052】
本発明のCVD装置によれば、複数のクランクピンで基材を支持するとともにクランク機構によって揺動するので、基材にコーティングされるセラミック層のバラツキを小さくすることができる。
【0053】
また、回転するクランクピンで支持されているので、回転する中で支持点が振動、熱膨張差によって少しずつ動き、基材の露出した部分の発生を防止することができる。
【0054】
(発明を実施するための形態)
図1は、本発明の一実施の形態のCVD炉(CVD装置)100の側面視における断面図である。CVD炉100は本体104と、本体104の上部開口を覆う蓋102と、蓋102の中央に設けられたノズル106とを備える。さらに本体104の内部下面には、円板状の基材Bを搭載可能な支持機構10が設けられる。基材Bはカーボン(黒鉛)やSiC等から構成される。
【0055】
基材Bを支持機構10に搭載した後、本体104に蓋102を取り付けてCVD炉100の内部空間Sを密閉状態にする。その後、外部からノズル106を介してCVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着)用の原料ガスを内部空間Sに導入する。これにより、基材Bの表面にセラミック層(セラミックコート)を施すことができる。
【0056】
図2は、図1における支持機構10の一部であるクランク機構11の側面図である。実施の形態では、支持機構10は各々回転する4つのクランク機構11からなる(図3参照)。支持機構10を構成する複数のクランク機構11の数は特に限定されないが、クランク機構11の数は3以上であることが好ましい。この数が3以上であると安定して基材Bを支持することができる。
【0057】
各クランク機構11は、クランク軸18と、クランクアーム16と、クランクピン14とを備える。クランク軸18は、モータなどの図示せぬ動力源に電気的に接続され、その長手方向に沿った所定の軸を中心として軸回転(自転)する。
【0058】
クランクアーム16は、クランク軸18に取り付けられ、クランク軸18の軸回転に従い旋回する。本実施形態では、クランクアーム16は平面視で円板状を呈し(図3参照)、いわば旋回する旋回板の形状を持っており、長手方向を持ついわゆるアーム形状を有しない。しかしながら、後述するように、クランクアーム16は、クランク軸18を中心にして回転可能であり、クランクアーム16に取り付けられた別の軸であるクランクピン14も所定の軌道に沿って移動するため、機能的にはいわゆる機構学分野におけるクランクアームとして作用する。すなわち、クランクアーム16は、クランク軸18の中心とクランクピン14の中心を機械的に接続さえしていればよく、棒状である必要性はない。例えば実施形態の様な円板状や、渦巻状であってもクランクアーム16として定義することができる。
【0059】
クランクピン14はクランクアーム16の上面に取り付けられ、クランクアーム16の旋回に従い所定の軌道に沿って移動しながら基材Bを支持可能である。後述するように、4つのクランク機構の各クランクピンは互いに同期して移動する。
【0060】
本実施形態において、クランクピン14は、先端部において柱状の突起14aが形成され、突起14aが形成されていない先端部の面が、基材Bの端部を支持する支持部14bを画定している。クランクピン14の形状は特に限定されないが、その先端部において基材Bの端部を支持する支持部を有することにより、基材Bを容易に支持することができる。
【0061】
クランクピン14の先端部の形状は、先が尖ったものや、鍔を有するもの等が利用可能である。先が尖ったものは、点で基材Bを支持するとともに、支持機構10が回転する。よって、振動あるいは熱膨張で基材Bが少しずつ動き、基材Bを支持する支持点の位置が移動し、セラミック層が形成されずに基材Bが露出した部分が形成されにくくなる。また、クランクピン14が鍔を有すると、能動的に基材Bを回転させることができるので、動揺に支持点の位置が移動し、基材が露出した部分を形成するのを抑制することができる。クランクピン14の変形例は、後に図8を用いて詳述する。
【0062】
図3に示すように本実施形態の支持機構10では、矢印に示した時計回り方向にクランク機構11すなわちクランク軸18が軸回転し、これに伴いクランクアーム16が旋回し、クランクピン14も移動、明確にはクランクピン14は円軌道に沿って移動する。また、支持機構10では、各クランク機構11の中心(クランク軸18の位置)が配置される仮想円Cを定義した上で、当該仮想円Cを外形として有している。ここで、仮想円Cの直径をPCD(Pitch Circle Diameter)として定義し、各クランク機構11の中心と、クランクピン14の中心との距離をLと定義する。すなわち、PCDは対向するクランク軸の間の距離に相当し、距離Lは、各クランク機構11におけるクランク軸18とクランクピン14の間の距離に相当する。
【0063】
この場合、距離Lの2倍が、クランクピン14が揺動するストロークに相当する。そして、距離LはPCDの5〜30%に設定することが望ましい(5%≦L/PCD≦30%)。L/PCDが5%以上であると基材Bが充分に揺動するので、セラミック層の位置によるバラツキを解消することができる。基材Bの移動範囲は基材Bの面積に対して(L/PCD+1)倍となる。L/PCDが30%以下であると、基材Bの移動範囲は基材Bの1.69倍に抑えられるため、CVD炉100内で効率よくスペースを利用することができる。
【0064】
図4は支持機構10に円板状の基材Bを搭載した平面図を示している。一方、図5に示すように円板状に限らず、リング状の基材Bも搭載することができる。図5においては、リングの内周面をクランクピン14が支持している。尚、鍔のあるクランクピンを用いて円板状の基材を搭載する場合には、内側に位置する鍔の縁に基材を搭載し、リング状の基材を搭載する場合には、外側に位置する鍔の縁に基材を搭載することになる。
【0065】
図6は、本実施の形態の支持機構10と基材の動作を示し、クランク機構11が90度毎に回転した状態を個別に示した説明図である。図3における矢印に示した方向に、4つのクランク機構11における4本のクランクピン14が同じ位相となるように同期して回転しているので、4本のクランクピン14の移動軌跡が作る仮想円は、常に同じ直径となり、安定して基材Bを支持することができる。また、支持機構10の回転に当たって、ギヤの遊びなどにより、振動や、わずかの位相のずれが生じているので、先の尖ったクランクピン4を用いても支持点の位置が移動し、セラミック層の形成されない基材Bが露出した部分が形成されにくくできる。
【0066】
図7は、本実施形態の支持機構10を用いて円板状の基材Bの支持した際の基材Bが揺動する動きを重ね合わせて示しており、4つの破線は、図6の各々の状態における基材Bの位置を示している。基材Bは、支持機構10に支持されつつ、揺動しながら回転しているので、セラミック層のムラの発生を緩和することができる。
【0067】
図8はクランクピン14の変形例を示している。図8(a)は図2に示した例と同じものを示し、クランクピン14の先端部に細い柱状の突起14aが形成され、突起14aが形成されていない先端部の面が、基材Bの端部を支持する支持部14bを画定している。
図8(b)は先が尖った構造を有するクランクピン14を示し、尖った部分が基材Bの端部を支持するテーパーの支持部14cを画定している。また、尖った先端部に基材を載せてもよい。先端に載せた場合には、支持機構10の回転に伴って、ギヤの遊びなどにより、振動や、わずかの位相のずれが生じているので、先の尖ったクランクピン4を用いても支持点の位置が移動し、セラミック層の形成されない基材Bが露出した部分が形成されにくくできる。
【0068】
図8(c)は先端部に鍔14dが形成され、この鍔14dが基材Bの端部を支持する支持部14cを画定している。図8(d)も鍔14eを有するが、鍔14eの上面がテーパー面になっており、このテーパー面が基材Bの端部を支持する支持部14cを画定している。図8(d)の構造では、基材Bの端部を点支持とすることができ、かつ支持部が能動的に移動するため、基材Bが露出した部分を形成しにくくすることができる。
【0069】
支持機構を構成する各部材の材質は特に限定されない。黒鉛、アルミナ、SiC、Siなどが利用できる。中でも黒鉛は加工が容易であるので、歯車など精度よく加工することができる。
【0070】
本発明の支持機構においてCVDの対象となる基材Bの種類は特に限定されない。SiC、TaC、熱分解炭素等の基材Bを利用することができる。基材Bの適用用途も特に限定はされない。
【0071】
次に実施例として、CVD炉の中に上向きに配置された4本の黒鉛製のクランク機構を配置して支持機構を構成した。各クランク機構はCVD炉の外から回転を伝達するクランク軸とクランク軸の上端には円板状のクランクアームが備えられ、クランクアームの端にはクランクピンが備えられている。
【0072】
4本のクランク機構のつくるPCDは380mm、クランク軸とクランクピンの中心軸間距離Lは34mm、クランクピンの太さφ5.3mmであった。また、L/PCDは、8.9%であった。
【0073】
クランクピンは鍔を有しており、鍔の上面で円板状の基材を支持し、4本のクランク機構が同期しながら回転し、CH、SiClの原料ガスを流し基材の表面にSiCからなるセラミック層を被覆した。なお、CVDの条件は以下である。
【0074】
製膜温度 1450℃
製膜時間 4時間
クランクピン回転数 36rpm
【0075】
一方、CVD炉の中心に実施例1と同じ基材を配置し、クランク機構を用いることなく同様にセラミック層を被覆し、比較例としてのセラミック被覆体を得た。
【0076】
比較例で得られたセラミック被覆体では、同心円状にセラミック層の色ムラが生じていた。一方、実施例では、CVD時に揺動が加わっているので、同心円状のムラがなくなっていることが確認された。
【0077】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、不純物の漏出を防止し、高い耐蝕性を持つ優れた基材を提供し得るため、種々の産業分野にて応用が可能となる。
【符号の説明】
【0079】
10 支持機構
11 クランク機構
14 クランクピン
16 クランクアーム(旋回板)
18 クランク軸
100 CVD炉(CVD装置)
B 基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8