【課題】作業の工程を少なくして作業の手間を減らすことにより、作業時間を大幅に短縮するとともに、作業に用いる装置も大掛かりな装置になることなく、単純な装置で行えるようにし、作業のコストを抑える。
【解決手段】長手方向に延在する複数の長孔10を備え、複数の長孔10にそれぞれ連通した開口部15を、長孔10の延在方向において互いに間隔を空けて設けるとともに、非通水性の材料で形成された板状の地下水採取ボード1を、地盤中に設置する第1工程と、地盤中に設置した地下水採取ボード1の長孔10に連通した開口部15より地下水を長孔10内に流入させて、所定の深度毎の地下水を採取する第2工程と、を有する地下水の採水方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、土木工事現場や建設工事現場及びその周辺、工場や廃棄物処理場及びその周辺などにおいて、地盤の環境調査が行われている。
地盤の環境調査では、例えば、地下水の汚染状況を把握するために、地盤中の地下水を採取して、地下水の水質検査を行っている。
【0003】
図11は、従来の地下水の採水方法を説明する概略図である。
従来、地盤中の所定の深度の地下水を採取する地下水の採水方法は、図示のように、ボーリングマシーンやオーガーなどにより地盤に地下水採取用の孔51を掘削する。孔51を掘削したのち、孔51の内壁の崩壊を防ぐための円筒管52を孔51内に嵌入する。円筒管52には、その内部に地下水が流入するための流入孔53を所定の間隔を空けて複数設けている。これにより、異なる深度の地下水が、複数の流入孔53より円筒管52の内部に流入する。
【0004】
続いて、孔51内に採水装置55を設置する。採水装置55は、先端に取水口56を備えた長さの異なる複数(ここでは3個)の採取管57と、吸水により膨張する複数(ここでは3個)の区画用シール材58とを有する。区画用シール材58は、長さの異なる複数の採取管57の先端の取水口56が、それぞれの深度毎の地下水を採取できるようにするために、複数の採取管57の取水口56の間に配置される。
【0005】
孔51内に設置した採水装置55では、円筒管52の流入孔53より内部に流入してきた地下水により、区画用シール材58が膨張する。膨張した区画用シール材58は、円筒管52の内面に密接して、水(地下水)を通さなくする。これにより、孔51内は、区画用シール材58によって所定の深度毎に区画(ここでは3つに区画)される。
【0006】
但し、採水装置55において、ポンプ(図示せず)により、各採取管57の取水口56より地下水をそれぞれ採取する際に、区画用シール材58が膨張して円筒管52の内面に密接するまでは、孔51内が完全に区画されないことから、円筒管52の内部に流入した地下水が混じりあう。そのために、最初に採取した地下水を、すべて捨てる必要があった。地下水を捨てた後、孔51内が区画用シール材58により完全に区画された状態になってから流入してきた新たな地下水を、各採取管57の取水口56よりそれぞれ採取する。これにより、それぞれの深度毎の地下水を採取することができる(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、従来の地下水の採水方法では、地盤に地下水採取用の孔51を掘削する工程、掘削した孔51内に円筒管52を嵌入する工程、孔51の内部に採水装置55を設置する工程、それから所定の深度毎の地下水を採取する工程、さらには地下水を採取するときに最初に採取した地下水を捨てる工程というように多数の工程が必要になる。そのため、作業に手間がかかり、作業時間が大幅に増大してしまうという問題がある。また、採水装置55なども大掛かりな装置になることで、作業コストが非常に高くなるという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の地下水の採水方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る地下水の採水方法(以下、単に本採水方法という)は、長手方向に延在する複数の長孔を備える板状の地下水採取ボードを地盤中に設置し、地下水採取ボードの長孔内に地下水を流入して吸い上げることにより、地盤中の所定の深度毎の地下水を採取する方法である。ここでは、複数の異なる深度の地下水を採取する例で説明するが、深度は必ずしも複数に限られるものではなく、1ヶ所の深度の地下水を採取するようにしてもよい。また、地下水採取ボードの地盤中への設置は、ボード挿入管を用いて行われる。
【0014】
図1は、本採水方法において用いる地下水採取ボード1を設置した状態の斜視図である。
図2Aは、地下水採取ボード1の正面図、
図2Bは、地下水採取ボード1の正面図である。
図3Aは、
図2AのA−A断面図、
図3Bは、
図3AのB部の拡大図である。
地下水採取ボード1は、
図1に示すように、剛性が低くかつ非通水性の材料で形成された細長い板状で、その長手方向に延在する複数の長孔10を板厚内に備えている。ここで、剛性が低くかつ非通水性の材料は、例えば、ポリオレフィン樹脂である。ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。
【0015】
具体的には、地下水採取ボード1は、
図2A、
図2B、
図3A、
図3Bに示すように、横幅方向(
図2A及び
図3Aでの左右方向)に断面が凹凸状になるポリオレフィン樹脂製の芯材11と、芯材11の表裏面(
図3Aにおける上下に断面で示す)側を挟持して一体化するポリオレフィン樹脂製のシート材12からなる。芯材11及びシート材12は、その長手方向に延在する。
なお、芯材11及びシート材12の延在方向(長手方向)は、芯材11及びシート材12の横幅方向と直交する縦方向(
図2A及び
図2Bでの上下方向)である。
【0016】
地下水採取ボード1は、全体として細長い板状であり、断面が凹凸状の芯材11とその両側のシート材12により区画されることで、板厚内にその長手方向に延在する長孔10を横幅方向に沿って複数備える。ここでは複数の長孔10の数は6個であるが、数はこれに限定されない。
地下水採取ボード1において、横幅方向の寸法(
図2Aにおいて左右方向に示す)は3〜15cm程度、板厚の寸法(
図2Bにおいて左右方向に示す)は0.5〜2cm程度である。ただし、寸法は、これに限定されるものではない。
なお、地下水採取ボード1は、その先端において折り返して、そこにアンカー14を取り付けている。
【0017】
地下水採取ボード1には、
図2Aに示すように、各長孔10に連通する地下水流入用の開口部15をそれぞれ設ける。
開口部15は、地下水採取ボード1を構成する断面凹凸状の芯材11の凹状部ではシート材12に、また、芯材11の凸状部ではその凸状部とシート材12の両方に穴を空けることで形成される。開口部15は、
図3Bに示すように、芯材11及びシート材12の地下水採取ボード1の表裏面側のいずれか一方の面に設けられ、長孔10内に地下水を流入可能にする。ただし、開口部15は、これに限定されるものではなく、芯材11及びシート材12の両方の面に設けるようにしてもよい。
【0018】
開口部15には、
図3A、
図3Bに示すように、フィルター13を配置する。フィルター13は、不織布であって、開口部15に貼着する。不織布は、安価な材料であるため、地下水採取ボード1のコストの削減を図ることができる。ただし、フィルター13は不織布に限定されない。これにより、長孔10内に地下水を流入する際に、長孔10内に地盤中の土砂等が流入するのをフィルター13で防止し、地下水のみが流入する。
【0019】
開口部15は、地下水採取ボード1に備えた複数の長孔10毎に設ける。例えば、1つの長孔10に連通した開口部15を1つ設ける。このとき、各長孔10に連通した開口部15は、地下水採取ボード1の長手方向に所定の間隔を空けて設ける。即ち、複数の長孔10にそれぞれ連通した開口部15は、長孔10の延在方向において互いに間隔を空けて設けている。
また、複数の長孔10にそれぞれ連通した開口部15は、地下水採取ボード1を地盤中に設置したときに、それぞれの地下水の深度に合うような所定の位置に設ける。これにより、複数の異なる深度毎の地下水を的確に採取することができる。なお、地下水の深度は、事前に行う適宜の地盤調査にて把握することができる。
【0020】
長孔10内には、
図2Aに示すように、長孔10内を長手方向(
図2Aでの上下方向)で遮断する遮断部材17を設ける。遮断部材17は、その形状を長孔10の断面形状に合わせた四角柱状にし、長孔10内において、開口部15を設けた箇所の下側に長孔10内を塞ぐように嵌入する。これにより、長孔10内では、例えば、遮断部材17によって下端より流入した地下水などが遮られて、開口部15より流入した地下水のみが流れる。
【0021】
図4Aは、別の遮断部材17の斜視図、
図4Bも、別の遮断部材17の斜視図である。
遮断部材17は、前記の部材に限定されるものではない。例えば、遮断部材17は、
図4Aに示すように、底面部41と、底面部41の左右に立設する両側面部42とからU字状の箱型にしたもの、あるいは、
図4Bに示すように、底面部41と、底面部41の左右に立設する両側面部42と、底面部41の後側(
図4Bで示す奥側)に立設する後面部43とから箱型にしたものでもよい。この場合、遮断部材17は、開口部15より長孔10内に嵌入し、必要に応じて接着剤等で長孔10内に固着して、長孔10内を塞ぐ。また、箱型の遮断部材17では、その内部にフィルター13(不織布)を配置することも可能で、それにより、開口部15へのフィルター13の貼着を不要にして、地下水採取ボード1を容易に製作できる。
【0022】
図5は、ボード挿入管2の斜視図である。
図6は、ボード挿入管2の拡大した上面図である。
ボード挿入管2は、
図5、
図6に示すように縦長の長方形筒状で、その内部に、細長い板状の地下水採取ボード1を縦向きに収容するため、上下端を開放して出し入れ口21、22が形成されている。ボード挿入管2の内部に地下水採取ボード1を収容したとき、地下水採取ボード1は、その先端(下端)の折り返しがボード挿入管2の下端の出し入れ口22より飛び出し、その部分に取り付けたアンカー14(
図2に示す)がボード挿入管2の下端の出し入れ口22に掛止される。
【0023】
ボード挿入管2には、その左右の両側に材料投入管23をそれぞれ取り付ける(材料投入管23の数は2つ)。ここでの左右方向(
図6での左右方向)とは、地下水採取ボード1の横幅方向に相当する。なお、材料投入管23のボード挿入管2への取り付け位置は、これに限定されない。また、取り付ける材料投入管23の数も2つに限定されない。
材料投入管23は、縦長のボード挿入管2に沿うように縦に延びる円筒状の管であり、その下端を材料投入のための投入口24にするとともに、上端に材料供給機(図示せず)の供給ホース26を接続する。
【0024】
次に、地下水採取ボード1を用いた本採水方法について説明する。
本採水方法は、長手方向に延在する複数の長孔10を備え、複数の長孔10にそれぞれ連通した開口部15を長孔10の延在方向において互いに間隔を空けて設けるとともに、非通水性の材料で形成された板状の地下水採取ボード1を地盤中に設置する第1工程と、地盤中に設置した地下水採取ボード1の長孔10に連通した開口部15より地下水を長孔10内に流入させて、所定の深度毎の地下水を採取する第2工程と、を有する。
【0025】
(第1工程)
第1工程では、地下水を採取するための地下水採取ボード1を地盤中に設置する作業を行う。
地下水採取ボード1を設置する作業は、内部に地下水採取ボード1が収容可能なボード挿入管2と、ボード挿入管2の地盤中への挿入又は引き抜きを行う機械を用いて行われる。機械は、例えば、建設機械3である。ただし、機械は、建設機械3に限定されない。
【0026】
図7Aは、建設機械3にボード挿入管2及び地下水採取ボード1を取り付けた状態を示す図、
図7Bは、建設機械3でボード挿入管2及び地下水採取ボード1を地盤中に挿入した状態を示す図、
図7Cは、ボード挿入管2を引き抜いて地盤中に地下水採取ボード1を設置した状態を示す図である。
建設機械3は、
図7Aに示すように、運転席を備えた自走可能な機体31を有し、機体31にブーム32を装着して、ブーム32の先端にアタッチメント33を有する。建設機械3の先端のアタッチメント33には、内部に地下水採取ボード1を収容したボード挿入管2が取り付けられる。
続いて、
図7Bに示すように、建設機械3でボード挿入管2を地下水採取ボード1とともに地盤中の所定の深度まで挿入する。
【0027】
次に、ボード挿入管2及び地下水採取ボード1を挿入した後、
図7Cに示すように、建設機械3でボード挿入管2を引き抜く。このとき、ボード挿入管2は地下水採取ボード1の先端に取り付けたアンカー14から離れるため、地下水採取ボード1がボード挿入管2とともに引き抜かれることがなく、地盤中に地下水採取ボード1のみが残置されて、地盤中に地下水採取ボード1が設置される。
【0028】
また、ボード挿入管2を引き抜く際は、地盤中からボード挿入管2が引き抜かれることで、地下水採取ボード1と地盤の間(ボード挿入管2があった部分)に隙間ができるが、この隙間には、材料を投入する。材料の投入は、ボード挿入管2に取り付けた材料投入管23を用いて行う。材料投入管23は、材料供給機(図示せず)から材料が供給され、その内部を通って下端の投入口24より材料が隙間に投入される。
【0029】
投入する材料は、遮水性材料と透水性材料Pの二種類である。遮水性材料は、ベントナイトBである。ベントナイトBは、水と接触すると膨張して固化し、固化した状態では水を通すことなく遮るようになる。ただし、遮水性材料は、ベントナイトBに限定されない。透水性材料Pは、例えば、砂や礫、人工ドレーン材などであり、水を通すものである。ただし、透水性材料Pも、これらに限定されない。
【0030】
図8は、ボード挿入管2を引き抜く際の材料の投入状態を示す図であり、
図8Aは、ボード挿入管2の引き抜き初期の段階で、未だ地下水採取ボード1の開口部15が露出していない状態を示し、
図8Bは、ボード挿入管2を引き抜いて地下水採取ボード1の開口部15が露出した状態を示す。
図9Aは、ボード挿入管2を
図8Bの状態よりもさらに引き抜いた状態を示す図であり、
図9Bは、材料投入後の状態を示す図である。
材料の投入は、ボード挿入管2を引き抜く際、
図8Aに示すように、最初にボード挿入管2を所定の高さ引き抜くとともに、材料投入管23の投入口24より、引き抜いたボード挿入管2分のベントナイトB(遮水性材料)を投入して、隙間を埋める。
【0031】
次に、
図8Bに示すように、地下水採取ボード1における開口部15を設けた箇所では、材料投入管23の投入口24より、引き抜いたボード挿入管2分の透水性材料Pを投入して、隙間を埋める。
続いて、
図9Aに示すように、地下水採取ボード1における開口部15を設けていない箇所(上下に位置する2つの開口部15の間)では、材料投入管23の投入口24より、引き抜いたボード挿入管2分のベントナイトBを投入して、隙間を埋める。これを繰り返して、
図9Bに示すように、例えば、地表面まで、ベントナイトBと透水性材料Pの二種類の材料を交互に投入する。
【0032】
これにより、地下水採取ボード1における開口部15を設けた箇所には、投入した透水性材料Pの層が形成される。また、地下水採取ボード1における上下に位置する2つの開口部15の間には、投入したベントナイトBの層が形成され、ベントナイトBの層によって、地下水(水)の通りぬけを防ぐことができ、深度の異なる地下水が混じり合うのを防止する。従って、所定の深度毎に区画することができ、それぞれの深度毎の地下水を、地下水採取ボード1に備えた各長孔10内に開口部15より流入できるようにしている。
【0033】
第1工程では、建設機械によって、内部に地下水採取ボード1を収容したボード挿入管2を地盤中に挿入し、挿入後、ボード挿入管2だけを引き抜いて、地盤中に地下水採取ボード1のみを残置して設置している。このことから、地下水採取ボード1の設置は、建設機械によるボード挿入管2の挿入及び引き抜きという極めて簡単な作業で行うことができ、これにより、地下水採取ボード1を効率よく設置できる。
【0034】
(第2工程)
第2工程では、地盤中に設置した地下水採取ボード1により地盤中の所定の深度の地下水(複数の異なる深度の地下水)を採取する作業を行う。
地盤中の所定の深度の地下水を採取する作業は、第1工程で地盤中に設置した地下水採取ボード1において、各長孔10に連通した開口部15より複数の異なる深度の地下水を各長孔10内にそれぞれ流入する。次に、
図1に示すように、地盤中に設置した地下水採取ボード1の各長孔10に、吸水ポンプ(図示せず)に接続した複数の吸水ホース16をそれぞれ上部から挿入する。続いて、吸水ポンプを用いて、地下水採取ボード1の各長孔10内に流入した地下水を長孔10を通して上方に吸い上げて、吸水ホース16を通して地上のタンク(図示せず)に集めて、地下水を採取する。
【0035】
地下水を採取するときは、複数の異なる深度の地下水を、地下水採取ボード1に備えた複数の長孔10によって別々に吸い上げる。続いて、地下水採取ボード1において別々に吸い上げた地下水を、地上のタンクに分けて集めることで、複数の異なる深度の地下水を別々に採取できるようにする。
【0036】
以上説明したように、本採水方法によれば、複数の長孔10を備える板状の地下水採取ボード1を地盤中に設置する第1工程と、地下水採取ボード1を用いて所定の深度毎の地下水を採取する第2工程の2つの工程によって、地盤中の所定の深度毎の地下水を的確に採取することができる。これにより、作業の工程を少なくして、作業の手間を減らすことにより、作業時間の大幅な短縮を図ることができる。また、作業に用いる装置も、従来のような円筒管や採水装置などの大掛かりな装置ではなく、複数の長孔を備える板状の地下水採取ボード1という極めて単純な構造のものを用いることで、装置自体を安価にして、作業のコストを抑えることができる。
【0037】
また、地下水採取ボード1は、剛性が低くかつ非通水性の材料であるポリオレフィン樹脂で形成されていることから、接続や切断などの加工が極めて容易である。そのことから、例えば、地下水採取ボード1において、その長手方向に切断して横幅方向の寸法を変更するなどの加工を容易に施すことができ、それぞれの現場に応じた最適な地下水採取ボード1を提供することができる。
【0038】
また、前述の第1工程において、深度の異なる地下水が混じり合うのを防止するために、地盤中からボード挿入管2を引き抜く際、地下水採取ボード1と地盤の間にできた隙間に、二種類の材料(遮水性材料と透水性材料P)を交互に投入し、所定の深度毎に区画して、それぞれの深度毎の地下水を採取していたが、この所定の深度毎に区画する方法を別の方法で行うようにしてもよい。
【0039】
深度の異なる地下水が混じり合うのを防止するために地盤中において所定の深度毎に区画する別の方法について説明する。
なお、ここでは、前述の地下水の層が細かく分かれて存在するのではなく、例えば、上下に1つ又は2つの地下水の層が存在している場合である。
ここで用いるボード挿入管2は、前述のボード挿入管2と同様、縦長の長方形筒状で、その内部に地下水採取ボード1を縦向きに収容可能にするものであるが、ボード挿入管2の左右の両側には材料投入管23を取り付けない。
また、地盤中に投入する材料は一種類である。投入する材料は、地盤注入材Tである。地盤注入材Tは、セメントミルク、ベントナイト、その他の材料、あるいはこれらを混合した材料である。
地盤注入材Tは、地下水採取ボード1の複数の長孔12のうちの例えば2つを使用する。即ち、地下水採取ボード1の2つの長孔12内に地盤注入材Tを流し、長孔12に連通した開口部15から地盤中に地盤注入材Tを噴射する。なお、その他の長孔12及び開口部15は、第2工程での地下水の採取に使用する。
【0040】
図10Aは、ボード挿入管2を引き抜いて地盤中に地盤注入材Tを噴射した状態を示す図、
図10Bは、ボード挿入管2をさらに引き抜いて地盤中に地盤注入材Tを噴射した状態を示す図である。
地盤注入材Tの噴射は、ボード挿入管2を引き抜く際、
図10Aに示すように、所定の開口部15(2つの開口部15のうちの下側の開口部15)の上までボード挿入管2を引き抜いたときに、開口部15から地盤中に地盤注入材Tを噴射する。地盤注入材Tは、地下水採取ボード1と地盤の間にできた隙間に流れるのではなく、地盤中に浸透して、地下水(水)が通りぬけない層Sを地盤中に形成する。
【0041】
続いて、ボード挿入管2を引き抜いて、
図10Bに示すように、所定の開口部15(2つの開口部15のうちの上側の開口部15)の上までボード挿入管2を引き抜いたときに、開口部15から地盤中に地盤注入材Tを噴射して、地下水が通りぬけない層Sを地盤中に形成する。
これにより、地盤中の所定の位置(深度)に地下水が通りぬけない層Sを形成して、地盤中において所定の深度毎に区画することができる。
【0042】
この所定の深度毎に区画する方法では、地盤中に投入する材料が地盤注入材Tの一種類だけであるから、作業が容易である。また、地盤注入材Tの地盤中への噴射も、地下水採取ボード1の長孔12及び開口部15を使用することから、極めて簡単に行うことができる。
【0043】
なお、所定の開口部15(2つの開口部15)から地盤中に地盤注入材Tを噴射する場合、ボード挿入管2を引き抜きながら行っていたが、これに限定されるものではなく、ボード挿入管2の引き抜き完了後(ボード挿入管2を地上に引く抜いた後)に所定の開口部15から地盤注入材Tを噴射するようにしてもよい。
また、地盤注入材Tの地盤中への噴射は、地下水採取ボード1の長孔12及び開口部15を使用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ボード挿入管2において、ボード挿入管2の左右の両側に材料投入管23を取り付け、材料投入管23を使用して、ここから地盤注入材Tを地盤中に噴射するようにしてもよい。