【解決手段】処理構造体と、前記処理構造体を収容するケーシングとを備えた気体処理装置において、前記処理構造体と前記ケーシングとの間に配置される無機繊維からなる保持材であって、前記保持材を、その嵩密度が所定の圧縮時嵩密度になるまで圧縮して10秒維持し、その後、前記保持材を、その嵩密度が前記圧縮時嵩密度より12%小さい開放時嵩密度になるまで開放するサイクルを繰り返す試験において、前記サイクルを2500回繰り返した時点の前記保持材の開放時面圧と前記圧縮時嵩密度とが、次の関係を満たすことを特徴とする気体処理装置用保持材。P≧17.10×D−1.62(Pは前記開放時面圧(N/cm
処理構造体と、前記処理構造体を収容するケーシングとを備えた気体処理装置において、前記処理構造体と前記ケーシングとの間に配置される無機繊維からなる保持材であって、
前記保持材を、その嵩密度が所定の圧縮時嵩密度になるまで圧縮して10秒維持し、その後、前記保持材を、その嵩密度が前記圧縮時嵩密度より12%小さい開放時嵩密度になるまで開放するサイクルを繰り返す試験において、前記サイクルを2500回繰り返した時点の前記保持材の開放時面圧と前記圧縮時嵩密度とが、次の関係を満たす
ことを特徴とする気体処理装置用保持材。
P≧17.10×D−1.62
(Pは前記開放時面圧(N/cm2)を表し、Dは前記圧縮時嵩密度(g/cm3)を表す。)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る気体処理装置1の一例を示す説明図である。
図1に示すように、気体処理装置1は、処理構造体20と、当該処理構造体20を収容するケーシング30と、当該処理構造体20と当該ケーシング30との間に配置された保持材10とを備えている。
図1においては、説明の便宜のため、ケーシング30の一部を省略して、当該ケーシング30に収容されている処理構造体20及び保持材10を露出させて示している。
【0010】
図2は、気体処理装置1を、矢印Xの指す方向に切断した断面の一例を示す説明図である。この矢印Xの指す方向は、気体処理装置1の処理構造体20内を、処理対象となる気体が流通する方向(気体流通方向)である。
【0011】
気体処理装置1は、気体の浄化等、気体を処理するために使用される。すなわち、気体処理装置1は、例えば、気体に含まれる有害物質及び/又は粒子を除去するために使用される。
【0012】
具体的に、気体処理装置1は、例えば、排気ガスを浄化する排気ガス処理装置である。この場合、気体処理装置1は、例えば、自動車等の車両において、内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)から排出される排気ガスに含まれる有害物質及び/又は粒子を除去するために設けられる。
【0013】
すなわち、気体処理装置1は、例えば、ガソリンエンジンの排気ガスに含まれる有害物質を除去するために使用される触媒コンバータである。また、気体処理装置1は、例えば、ディールエンジンの排気ガスに含まれる粒子を除去するために使用されるDPF(Diesel Particulate Filter)である。
【0014】
気体処理装置1を使用した気体の処理方法においては、処理の対象となる気体を、当該気体処理装置1の処理構造体20の内部に流通させることにより、当該気体を処理する。すなわち、
図1及び
図2に示す気体処理装置1においては、矢印Xで示す方向に、排気ガス等の気体がケーシング30の一方端から流入し、当該気体は処理構造体20の内部を流通する間に浄化され、浄化された気体は当該ケーシング30の他方端から当該気体処理装置1外に流出する。
【0015】
なお、自動車等の車両に配置された気体処理装置1の一方端及び他方端には、排気ガス等の気体を上流側から当該気体処理装置1に導く配管、及び浄化された気体を当該気体処理装置1から下流側に導く配管がそれぞれ接続される。
【0016】
処理構造体20は、気体を処理する機能を有する構造体である。すなわち、気体処理装置1が触媒コンバータである場合、処理構造体20は、気体を浄化するための触媒と、当該触媒を担持する担体とを有する触媒担体である。触媒は、例えば、排気ガス等の気体に含まれる有害物質(一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等)を除去するための触媒である。より具体的に、触媒は、例えば、貴金属触媒等の金属触媒である。触媒を担持する担体は、例えば、セラミックス(コージェライト等)製の無機材料製の筒状成形体(例えば、円筒状のハニカム状成形体)である。
【0017】
また、気体処理装置1が、DPF等の気体に含まれる粒子を除去するための装置である場合には、処理構造体20は、当該気体中の当該粒子を捕捉するフィルターを有する構造体である。この場合、処理構造体20は、触媒をさらに含むこととしてもよいし、触媒を含まないこととしてもよい。
【0018】
ケーシング30は、その内部に処理構造体20を収容可能な空間が形成された筒状体である。ケーシング30は、例えば、金属製である。ケーシング30を構成する金属は、特に限られないが、例えば、ステンレス、鉄及びアルミニウムからなる群より選択される。
【0019】
また、ケーシング30は、複数の部分に分割可能であることとしてもよいし、分割可能でない一体型であることとしてもよい。本実施形態において、ケーシング30は、分割されない一体型の筒状体である。
【0020】
保持材10は、処理構造体20をケーシング30内に保持するために使用される。すなわち、保持材10は、処理構造体20とケーシング30との間隙において圧縮された状態で配置されることにより、当該処理構造体20を当該ケーシング30内に安定して保持する。
【0021】
保持材10には、例えば、気体処理装置1において振動等により処理構造体20がケーシング30に衝突して破損することを回避するよう当該ケーシング30内で当該処理構造体20を安全に保持する機能と、未だ浄化されていない気体が当該処理構造体20とケーシング30との間隙から下流側に漏出しないよう当該間隙を封止する機能と、を兼ね備えることが要求される。また、気体処理装置1内に排気ガス等の高温(例えば、200〜900℃)の気体が流通する場合、保持材10には、耐熱性及び断熱性を備えることが要求される。
【0022】
このため、保持材10は、無機繊維製の成形体である。すなわち、保持材10は、無機繊維を主成分として含む。具体的に、保持材10は、例えば、無機繊維を90重量%以上含む。
【0023】
保持材10を構成する無機繊維は、気体処理装置1の使用において劣化しない又は劣化しにくい無機繊維が好ましく、70重量%〜75重量%のアルミナと30重量%〜25重量%のシリカからなるアルミナ繊維を用いることができる。好ましくは、72重量%〜74重量%のアルミナと28重量%〜26重量%のシリカからなる繊維である。多結晶質繊維であってもよい。
【0024】
また、無機繊維は、例えば、当該無機繊維製の保持材10を、その嵩密度が圧縮時嵩密度0.5(g/cm
3)になるまで圧縮して10秒維持し、その後、その嵩密度が当該圧縮時嵩密度より12%小さい開放時嵩密度0.44(g/cm
3)になるまで開放するサイクルを繰り返す試験において、当該サイクルを1000回繰り返した時点の当該保持材10の開放時面圧が8.5(N/cm
2)以上となるような無機繊維であることが好ましい。なお、この場合、保持材10は、後述する湿式法により製造されたものであることとしてもよい。
【0025】
本発明の保持材に用いることのできる無機繊維は、真密度が高いことが望ましく、3.02g/cm
3以上又は3.03g/cm
3以上である。上限は限定されないが、3.50g/cm
3以下、3.30g/cm
3以下、3.10g/cm
3以下、3.08g/cm
3以下、3.07g/cm
3以下、又は3.0.6g/cm
3以下としてよい。
【0026】
また、真密度は、理論値の86.9%以上であることが好ましく、87.0%以上、又は87.1%以上が好ましい。上限は限定されないが、88.2%以下、88.0%以下、又は87.9以下としてよい。
真密度が理論値に近いことは、繊維に含まれる空隙が少ないことを意味する。焼成の条件を変えることにより空孔量を低減することができる。真密度の理論値は、無機繊維が2以上の成分からなる場合、各成分の密度とその組成割合から求める。具体的に、無機繊維がアルミナとシリカからなる場合、下記式で求める。
真密度の理論値=(アルミナの密度)×(アルミナの組成割合)+(シリカの密度)×(シリカの組成割合)
【0027】
保持材10は、無機繊維に加えて、バインダーを含むこととしてもよい。バインダーは、特に限られず、有機バインダー及び/又は無機バインダーが使用される。すなわち、例えば、保持材10は、無機繊維製であって、有機バインダーを含むこととしてもよい。
【0028】
保持材は、無機繊維及び任意成分としてバインダーの合計を95重量%以上、98重量%以上、又は99重量%以上とすることができる。また、不可避不純物を含んでもよく、100重量%としてもよい。
【0029】
保持材10の形状は、処理構造体20をケーシング30内に保持できれば特に限られない。すなわち、保持材10は、例えば、板状体(フィルム、シート、ブランケット、マット等)であることとしてもよく、筒状体であることとしてもよい。
【0030】
保持材10が板状体である場合、当該保持材10の一方端と他方端とは嵌合可能な対応する形状に形成されることとしてもよい。すなわち、
図1に示す例において、板状の保持材10の一方端及び他方端は、対応する凸状及び凹状にそれぞれ形成され、当該保持材10が処理構造体20の外周面に巻き付けられた状態で、当該一方端と他方端とは嵌合される。
【0031】
保持材10を製造する方法は、特に限られないが、当該保持材10は、湿式法又は乾式法により製造された保持材であることとしてもよい。湿式法においては、例えば、まず、所定の形状を有する脱水成形用型内に、保持材10を構成するための無機繊維と、有機バインダー(例えば、ゴム、水溶性有機高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等)とを含む水性スラリーを流し込む。次いで、脱水成形を行うことにより、型の形状に対応する形状の無機繊維製の成形体(湿式成形体)を得る。その後、湿式成形体を、その嵩密度等の特性が所望の範囲となるように圧縮し、乾燥することにより、最終的に無機繊維製の成形体である保持材10が得られる。
【0032】
また、保持材10は、上述の乾燥後の成形体を焼成して得られることとしてもよい。この場合、焼成温度は、特に限られないが、例えば、乾燥後の成形体に含まれる有機バインダーが消失する温度であることとしてもよい。
【0033】
具体的に、焼成温度は、例えば、300℃以上であることとしてもよく、500℃以上であることとしてもよい。焼成温度の上限値は、特に限られないが、当該焼成温度は、例えば、900℃以下であることとしてもよい。
【0034】
乾式法においては、例えば、集綿された無機繊維をニードリング加工することにより、当該無機繊維製の成形体である保持材10が得られる。すなわち、乾式法により製造された保持材10は、いわゆるニードルマットであることとしてもよい。
【0035】
そして、本発明において特徴的なことの一つは、保持材10を、その嵩密度が所定の圧縮時嵩密度になるまで圧縮して10秒維持し、その後、当該保持材10を、その嵩密度が当該圧縮時嵩密度より12%小さい開放時嵩密度(当該圧縮時嵩密度の0.88倍である開放時嵩密度)になるまで開放するサイクルを繰り返す試験において、当該サイクルを2500回繰り返した時点の当該保持材10の開放時面圧と当該圧縮時嵩密度とが、次の関係を満たすことである:P≧17.10×D−1.62(ただし、当該関係において、Pは当該開放時面圧(N/cm
2)を表し、Dは当該圧縮時嵩密度(g/cm
3)を表す。)。
所定の圧縮時嵩密度を、0.30g/cm
3、0.40g/cm
3及び/又は0.50g/cm
3とすることができる。
【0036】
図3は、この圧縮時嵩密度と開放時面圧との関係を示す説明図である。
図3において、横軸は、保持材の圧縮時の嵩密度(g/cm
3)を示し、縦軸は、2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧(N/cm
2)を示し、3つの黒塗り三角印は、後述する実施例1において測定された、保持材10の2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧を示す。
【0037】
また、
図3において、破線L0は、黒塗り三角印で示される3つの実測値を直線近似して得られる直線である。この破線L0は、圧縮時嵩密度をD(g/cm
3)で表し、2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧をP(N/cm
2)で表す場合、次のように表される:P=22.42×D−2.31。そして、同様に、
図3において、実線L1は、次のように表される:P=17.10×D−1.62。
【0038】
すなわち、上述の関係(P≧17.10×D−1.62)を満たす保持材10の2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧P(N/cm
2)は、
図3において実線L1及び当該実線L1より上の領域にプロットされることとなる。
【0039】
また、上記繰り返し圧縮試験において、保持材10の2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧P(N/cm
2)と圧縮時嵩密度D(g/cm
3)とは、例えば、次の関係を満たすこととしてもよい:P≧19.54×D−1.85。なお、この関係に関する直線(P=19.54×D−1.85)は、
図3において破線L0と実線L1との間にプロットされる。
【0040】
また、上記繰り返し圧縮試験において、保持材10の2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧P(N/cm
2)と圧縮時嵩密度D(g/cm
3)とは、例えば、次の関係を満たすこととしてもよい:P≧21.98×D−2.08。なお、この関係に関する直線(P=21.98×D−2.08)は、
図3において、破線L0と、前段落の上記直線(P=19.54×D−1.85)との間にプロットされる。
【0041】
また、上記繰り返し圧縮試験において、保持材10の2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧P(N/cm
2)と圧縮時嵩密度D(g/cm
3)とは、例えば、次の2つの関係を満たすこととしてもよい:P≧17.10×D−1.62、且つP≦31.75×D−3.00。なお、
図3において、実線L2は、次のように表される:P=31.75×D−3.00。
図3において、実線L2は、破線L0に対して、実線L1と対称に図示される。
【0042】
また、上記繰り返し圧縮試験において、保持材10の2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧P(N/cm
2)と圧縮時嵩密度D(g/cm
3)とは、例えば、次の2つの関係を満たすこととしてもよい:P≧19.54×D−1.85、且つP≦29.31×D−2.77。なお、後者の関係に関する直線(P=29.31×D−2.77)は、
図3において、破線L0に対して、前者の関係に関する直線(P=19.54×D−1.85)と対称に図示される。
【0043】
また、上記繰り返し圧縮試験において、保持材10の2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧P(N/cm
2)と圧縮時嵩密度D(g/cm
3)とは、例えば、次の2つの関係を満たすこととしてもよい:P≧21.98×D−2.08、且つP≦26.86×D−2.54。なお、後者の関係に関する直線(P=26.86×D−2.54)は、
図3において、破線L0に対して、前者の関係に関する直線(P=21.98×D−2.08)と対称に図示される。
【0044】
また、上述した保持材10の2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧P(N/cm
2)と圧縮時嵩密度D(g/cm
3)との関係において、当該圧縮時嵩密度Dは、例えば、0.25g/cm
3以上、0.55g/cm
3以下であることとしてもよく、0.30g/cm
3以上、0.55g/cm
3以下であることとしてもよく、0.30g/cm
3以上、0.50g/cm
3以下であることとしてもよい。
【0045】
また、後述する実施例では初期面圧として評価されている、保持材10を、その嵩密度が所定の圧縮時嵩密度となるまで圧縮した場合に当該保持材10が示す面圧は、例えば、圧縮時嵩密度が0.30g/cm
3である場合には21N/cm
2以上であり、圧縮時嵩密度が0.35g/cm
3である場合には33N/cm
2以上であり、圧縮時嵩密度が0.40g/cm
3である場合には46N/cm
2以上であり、圧縮時嵩密度が0.45g/cm
3である場合には60N/cm
2以上であり、圧縮時嵩密度が0.50g/cm
3である場合には73N/cm
2以上であることとしてもよい。
【0046】
また、この保持材10の初期面圧は、例えば、圧縮時嵩密度が0.30g/cm
3である場合には22N/cm
2以上であり、圧縮時嵩密度が0.35g/cm
3である場合には36N/cm
2以上であり、圧縮時嵩密度が0.40g/cm
3である場合には53N/cm
2以上であり、圧縮時嵩密度が0.45g/cm
3である場合には70N/cm
2以上であり、圧縮時嵩密度が0.50g/cm
3である場合には86N/cm
2以上であることとしてもよい。
【0047】
また、上述したいずれかの場合において、保持材10の初期面圧は、例えば、圧縮時嵩密度が0.30g/cm
3である場合には30N/cm
2以下であり、圧縮時嵩密度が0.35g/cm
3である場合には50N/cm
2以下であり、圧縮時嵩密度が0.40g/cm
3である場合には80N/cm
2以下であり、圧縮時嵩密度が0.45g/cm
3である場合には110N/cm
2以下であり、圧縮時嵩密度が0.50g/cm
3である場合には150N/cm
2以下であることとしてもよい。
【0048】
また、保持材10のウェットボリュームは、特に限られないが、例えば、750mL/5g以上であることとしてもよく、800mL/5g以上であることとしてもよく、850mL/5g以上であることとしてもよく、900mL/5g以上であることとしてもよく、950mL/5g以上であることとしてもよい。
【0049】
さらに、保持材10のウェットボリュームは、例えば、1000mL/5g以上であることとしてもよく、1050mL/5g以上であることが好ましく、1100mL/5g以上であることがより好ましい。
【0050】
本実施形態に係る保持材10は、上述のとおり、繰り返し圧縮後においても、その高い保持力を維持することができる。このため、例えば、保持材10の効果的な軽量化が可能となる。すなわち、例えば、保持材10の幅(気体処理装置1の気体処理方向の長さ)及び/又は坪量(g/m
2)を従来製品に比べて低減することにより、その重量を低減することができる。
【0051】
具体的に、例えば、処理構造体20の外側表面21の面積に対する保持材10の内側表面11の面積の割合は、80%以下であることとしてもよく、70%以下であることとしてもよく、60%以下であることとしてもよい。
【0052】
これらの場合、処理構造体20の外側表面21の面積に対する保持材10の内側表面11の面積の割合の下限値は、気体処理装置1において当該保持材10が所望の役割を果たす範囲であれば特に限られないが、例えば、40%以上であることとしてもよい。
【0053】
気体処理装置1は、処理構造体20と、当該処理構造体20を収容するケーシング30と、当該処理構造体20と当該ケーシング30との間に配置された、上述した保持材10と、を備える。
【0054】
上述のとおり、この保持材10は、繰り返し圧縮後においても、高い保持力を維持することができる。したがって、この保持材10を備える気体処理装置1においては、加熱及び冷却を伴う長期間の使用において、当該保持材10の保持力を効果的に維持することができる。
【0055】
また、上述のとおり、保持材10の幅(気体処理装置1の気体処理方向の長さ)を低減することにより、当該保持材10の重量を低減する場合には、例えば、処理構造体20の外側表面21の面積に対する、当該保持材10により覆われている当該外側表面21の部分の面積の割合は、80%以下であることとしてもよく、70%以下であることとしてもよく、60%以下であることとしてもよい。また、この処理構造体20の外側表面21の面積に対する、当該保持材10により覆われている当該外側表面21の部分の面積の割合は、例えば、40%以上であることとしてもよい。
【0056】
気体処理装置1は、処理構造体20とケーシング30との間に、上述した保持材10を配置することを含む方法により製造される。すなわち、ケーシング30が、分割されない一体型である場合、例えば、まず、処理構造体20の外側表面21に保持材10を巻きつけ、次いで、当該保持材10で覆われた当該処理構造体20を、当該ケーシング30に挿入することにより、気体処理装置1を組立てる(いわゆるスタッフィング方式)。
【0057】
また、ケーシング30が分割可能である場合、まず、処理構造体20の外側表面21に保持材10を巻きつけ、次いで、当該保持材10で覆われた当該処理構造体20を、分割された当該ケーシング30の一部と他の一部とで挟み、その後、当該ケーシング30の一部と他の一部とを一体化する(いわゆるクラムシェル方式)。この一体化は、例えば、ボルト及びナット等の締付け部材の使用及び/又は溶接により行われる。
【0058】
気体処理装置1においては、
図1及び
図2に示すように、保持材10の内側表面11は、処理構造体20の外側表面21と接し、当該保持材10の外側表面12は、ケーシング30の内側表面31と接する。また、気体処理装置1において、保持材10は、処理構造体20とケーシング30との間に配置される前よりも圧縮された状態で、当該処理構造体20と当該ケーシング30との間に配置される。
【実施例】
【0059】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
実施例1
無機繊維製の保持材10を湿式法(脱水成形法)により製造した。すなわち、まず、無機繊維100質量部と、有機バインダー(アクリル樹脂)3質量部とを水に分散させることにより、水性スラリーを調製した。
この無機繊維は、73.0重量%のAl
2O
3及び27.0重量%のSiO
2からなるアルミナ繊維であり、真密度の測定値が3.06g/cm
3であった。真密度の測定値は理論値(3.48g/cm
3)の87.9%であった。
【0060】
次いで、金網を有する脱水成形型に水性スラリーを流し込み、脱水成形することにより、湿潤成形体を得た。さらに、湿潤成形体の全体を、その厚さが均一となるように圧縮しながら、105℃で乾燥して成形体を得た。
【0061】
成形体を円板形状に加工し、700℃で1時間加熱して焼成することにより、直径が50.8mm、厚さが10.0mmの円板形状であって、嵩密度が0.15g/cm
3である無機繊維製マットを、実施例1に係る保持材として得た。
【0062】
実施例2
無機繊維として、73.0重量%のAl
2O
3及び27.0重量%のSiO
2からなり、真密度の測定値が3.03g/cm
3である無機繊維を用いた他は、実施例1と同様にして保持材を製造した。この無機繊維は、真密度の測定値が理論値(3.48g/cm
3)の87.1%であった。
【0063】
比較例1
無機繊維として、96.0重量%のAl
2O
3及び4.0重量%のSiO
2からなり、真密度の測定値が3.23g/cm
3である無機繊維を用いた他は、実施例1と同様にして保持材を製造した。この無機繊維は、真密度の測定値が理論値(3.88g/cm
3)の83.2%であった。
【0064】
比較例2
無機繊維として、80.0重量%のAl
2O
3及び20.0重量%のSiO
2からなり、真密度の測定値が3.07g/cm
3である無機繊維を用いた他は、実施例1と同様にして保持材を製造した。この無機繊維は、真密度の測定値が理論値(3.60g/cm
3)の85.3%であった。
【0065】
評価例1[繰り返し圧縮後の面圧の測定]
図4に示す試験装置40を使用して、保持材の繰り返し圧縮試験を行い、当該保持材の面圧を測定した。試験装置40は、インコネル(登録商標)製の円板(直径100mm、厚さ30mm)である第一治具41(触媒担体等の処理構造体に相当する部材)と、当該第一治具41に対向して配置されるインコネル(登録商標)製の円板(直径100mm、厚さ30mm)である第二治具42(ケーシングに相当する部材)とを備えていた。
【0066】
この試験装置40においては、上述のようにして製造した保持材を、第一治具41と第二治具42とによって、当該第一治具41と当該第二治具42との距離(すなわち、第一治具41と第二治具42とに挟まれている保持材の厚さ)が10mmとなるように挟んだ。
【0067】
そして、第一治具41と第二治具とで保持材を挟んだ状態で、当該第一治具41と当該第二治具42との距離の低減及び増加を繰り返すことにより当該保持材を繰り返し圧縮及び開放する試験を開始した。
【0068】
すなわち、まず、第一治具41と第二治具42との距離を10mm/分の速度で低減することにより、保持材を、その嵩密度が所定の圧縮時嵩密度(0.30g/cm
3、0.40g/cm
3又は0.50g/cm
3)になるまで当該10mm/分の速度で圧縮した。次いで、保持材を圧縮状態(当該保持材の嵩密度が上記圧縮時嵩密度に維持された状態)で10秒間維持した。
【0069】
その後、第一治具41と第二治具42との距離を10mm/分の速度で増加させることにより、保持材を、その嵩密度が上記圧縮時嵩密度より12%小さい開放時嵩密度(上記圧縮時嵩密度0.30g/cm
3、0.40g/cm
3及び0.50g/cm
3にそれぞれ対応する開放時嵩密度0.27g/cm
3、0.36g/cm
3及び0.44g/cm
3)になるまで当該10mm/分の速度で開放した。さらに、この圧縮及び開放からなるサイクルを2500回繰り返した。
【0070】
そして、上記サイクルを2500回繰り返した時点の開放時面圧を測定した。すなわち、2500回目のサイクルが終了した時点において、第一治具41と第二治具とに挟まれた開放状態の保持材(嵩密度が開放時嵩密度である保持材)から当該第一治具41が受ける単位面積当たりの反発力を、2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧(N/cm
2)として測定した。
【0071】
図5には、繰り返し圧縮後の面圧を測定した結果を示す。
図5において、横軸は、保持材の圧縮時の嵩密度(g/cm
3)を示し、縦軸は、2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧(N/cm
2)を示す。
図5において、黒塗り三角印は実施例1に係る保持材の結果を示し、黒塗り丸印は実施例2に係る保持材の結果を示し、白抜き菱形印は比較例1に係る保持材の結果を示し、白抜き四角印は比較例2に係る保持材の結果を示す。
【0072】
図5に示すように、圧縮時嵩密度が0.30g/cm
3、0.40g/cm
3及び0.50g/cm
3のいずれの場合においても、実施例1、2に係る保持材の開放時面圧は、比較例1、2に係る保持材のそれよりも顕著に大きかった。
【0073】
また、
図5に示す3つの黒塗り三角印を直線近似すると、得られた近似直線は、圧縮時嵩密度をD(g/cm
3)で表し、2500回繰り返し圧縮後の開放時面圧をP(N/cm
2)で表す場合、次のように表された:P=24.42×D−2.31(R
2=9.62)。なお、この近似直線は、上述のとおり、
図3に示した破線L0と一致する。また、
図5に示す比較例1、2で測定された開放時面圧は、
図3において、実線L1(P=17.10×D−1.62)より下方にプロットされる。
【0074】
評価例2[初期面圧の測定]
上述した繰り返し圧縮後の面圧の場合と同様、
図4に示す試験装置40を使用して、保持材の初期面圧を測定した。すなわち、まず、上述のようにして製造した保持材を、試験装置40の第一治具41と第二治具42とで挟んだ。
【0075】
次いで、第一治具41と第二治具とで保持材を挟んだ状態で、当該第一治具41と当該第二治具42との距離を10mm/分の速度で低減することにより、当該保持材を、その嵩密度が0.25g/cm
3から0.50g/cm
3に増加するまで圧縮した。
【0076】
そして、圧縮の過程において、嵩密度が所定の圧縮時嵩密度である保持材から第一治具41が受ける単位面積当たりの反発力を、当該圧縮時嵩密度に対応する初期面圧(N/cm
2)として測定した。
【0077】
図6には、初期面圧を測定した結果を示す。
図6において、横軸は、保持材の嵩密度(g/cm
3)を示し、縦軸は、初期面圧(N/cm
2)を示す。
図6において、実線は実施例1に係る保持材の結果を示し、破線は比較例1に係る保持材の結果を示し、一点鎖線は比較例2に係る保持材の結果を示す。
【0078】
図6に示すように、広い嵩密度範囲(特に、嵩密度が0.30g/cm
3以上、0.50g/cm
3以下の範囲)において、実施例1に係る保持材の初期面圧は、比較例1、2に係る保持材のそれよりも顕著に大きかった。
【0079】
すなわち、比較例2に係る保持材の嵩密度が0.30g/cm
3、0.35g/cm
3、0.40g/cm
3、0.45g/cm
3及び0.50g/cm
3の場合における当該保持材の初期面圧は、それぞれ20N/cm
2、31N/cm
2、42N/cm
2、54N/cm
2及び66N/cm
2であった。
これに対し、実施例1に係る保持材の嵩密度が0.30g/cm
3、0.35g/cm
3、0.40g/cm
3、0.45g/cm
3及び0.50g/cm
3の場合における当該保持材の初期面圧は、それぞれ23N/cm
2、39N/cm
2、58N/cm
2、81N/cm
2及び106N/cm
2であった。
【0080】
評価例3[ウェットボリュームの測定]
保持材のウェットボリュームを測定した。すなわち、まず、保持材の一部(実施例1、2については2g、比較例1、2については5g)をサンプルとして採取し、当該サンプルを容積500mLの容器内の水道水中で撹拌することにより、当該サンプルを構成する無機繊維を分散させた。
【0081】
次いで、分散された無機繊維を含む溶液を、1000mL用メスシリンダーに移し、撹拌により当該無機繊維を分散させながら、当該溶液の体積が1000mLになるまで水道水を加えた。
【0082】
メスシリンダーを30分以上静置することにより、1000mLの溶液中で無機繊維を沈降させた。沈降した無機繊維塊の上端面の位置に相当する、メスシリンダーの目盛(mL)を読み取った。そして、読み取られた目盛に対応する体積(mL)を、保持材5gあたりのウェットボリューム(mL/5g)として得た。なお、実施例1、2については、5gのサンプルを使用すると溶液の体積が1000mLを超えるため、2gのサンプルを使用して得られた値を、5gあたりの値に換算して、ウェットボリューム(mL/5g)を算出した。
【0083】
その結果、実施例1に係る保持材のウェットボリュームは、1500mL/5gであった。実施例2に係る保持材のウェットボリュームは、1500mL/5gであった。一方、比較例1に係る保持材のウェットボリュームは、700mL/5gであった。比較例2に係る保持材のウェットボリュームは、600mL/5gであった。
処理構造体と、前記処理構造体を収容するケーシングとを備えた気体処理装置において、前記処理構造体と前記ケーシングとの間に配置される無機繊維からなる保持材であって、
前記無機繊維が、70重量%〜75重量%のアルミナと30重量%〜25重量%のシリカからなるアルミナ繊維のみであり、
前記保持材を、その圧縮時嵩密度が0.3g/cm3になるまで圧縮して10秒維持し、その後、前記保持材を、その嵩密度が前記圧縮時嵩密度より12%小さい開放時嵩密度になるまで開放するサイクルを繰り返す試験において、前記サイクルを2500回繰り返した時点の前記保持材の開放時面圧Pが3.51N/cm2以上、6.525N/cm2以下であることを特徴とする気体処理装置用保持材。