特開2019-152303(P2019-152303A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-152303(P2019-152303A)
(43)【公開日】2019年9月12日
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 47/02 20060101AFI20190816BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20190816BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20190816BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20190816BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20190816BHJP
   F16K 1/38 20060101ALI20190816BHJP
   F16K 1/34 20060101ALI20190816BHJP
【FI】
   F16K47/02 D
   F16K31/04 Z
   F16K1/42 G
   F16K27/00 C
   F25B41/06 U
   F16K1/38 Z
   F16K1/34 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-39422(P2018-39422)
(22)【出願日】2018年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 一也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓也
【テーマコード(参考)】
3H051
3H052
3H062
3H066
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051BB10
3H051CC15
3H051DD01
3H051FF15
3H052AA01
3H052BA33
3H052CA02
3H052CC09
3H052CD02
3H052EA11
3H052EA16
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB33
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF39
3H062HH04
3H062HH08
3H066AA01
3H066BA32
3H066BA33
3H066EA15
(57)【要約】
【課題】的確に静音性を維持することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】弁体部が最も弁座部に近接した状態において、弁軸ホルダの下端よりも前記弁座部側で最も大径となる前記弁体部の最大外径が前記弁座部の天面に形成された環状の弁座平面部の外径よりも大きく、かつ前記弁座平面部の弁中心軸方向における位置が、第1弁ポートの内径のロータと最も遠い位置を成す最下端よりも前記ロータ側に位置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ送り機構により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体部を前記弁体部の中心軸である弁中心軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体内に形成された空間である弁室と、
前記弁本体の側面に設けられ、前記弁室側の出入口となる第1弁ポートと、
前記弁体部の直下において前記弁本体と同軸方向に設けられ、前記弁体部が近接または離間可能な第2弁ポートと、
前記第2弁ポートが前記ロータ側に形成された筒状の弁座部と、
前記弁体部を前記弁中心軸方向に案内する弁軸ホルダと、
を備え、
前記弁体部が最も前記弁座部に近接した状態において、前記弁軸ホルダの下端よりも前記弁座部側で最も大径となる前記弁体部の最大外径が
前記弁座部の天面に形成された環状の弁座平面部の外径よりも大きく、
かつ前記弁座平面部の前記弁中心軸方向における位置が、前記第1弁ポートの内径の前記ロータと最も遠い位置を成す最下端よりも前記ロータ側に位置することを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁体部は、
前記第2弁ポートを通過する流体の流量を調整する弁体と、
前記弁体を前記弁座部側に保持し前記弁軸ホルダに対して摺動可能に配置された弁ガイドと
を含み、
前記弁体は前記弁ガイドに固定されていることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項3】
前記弁体は、
最も前記第2弁ポートと近接する部分であるニードル部と、
前記ニードル部の基端の外周に位置する環状の平面部と
を備えることを特徴とする請求項2記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁体部の最大外径の下端縁を成す肩部を備え、
前記肩部の前記弁中心軸方向の位置は、前記弁体部が最も前記弁座部に近接した状態において、前記第1弁ポートの内径の前記ロータと最も近い位置を成す最上端よりも前記ロータ側に位置することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弁座部は、前記ロータ側に向かって外径が小さくなるテーパー部を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項6】
前記第1弁ポートの前記最下端が、前記弁本体内の内部底面よりも前記ロータ側に位置することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項7】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1〜6の何れか一項に記載の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図8に示すような構造を有する電動弁が知られている(たとえば、特許文献1参照)。すなわち、ステッピングモータが駆動してロータ103が回転すると、雌ネジ131aと雄ネジ121aのネジ送り作用により、弁体114が弁体114の中心軸である弁中心軸L方向に移動する。これにより、弁ポート130bの開度調整がなされ、管継手111から流入して管継手112から流出する流体の流量、または、管継手112から流入して管継手111から流出する流体の流量が制御される。
【0003】
ここで、各種流体の流量制御を行うにあたっては、流体通過音が発生するという問題があるため、静音化が要求される。また、冷媒を用いた家庭用空調機や業務用空調機の冷凍サイクルの室内機において、電動弁100にて冷媒流量を制御する場合は、弁ポート130b通過前後で液冷媒が気液混合二相流となるため、特に、多彩な冷媒状態、運転状況でも静音性を発揮することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−089870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の電動弁100は、図示しない流体配管に管継手111、管継手112を介して固定されており、流路内に弁体部120と弁座130の弁ポート130bが露出している。ここで、弁体部120は、弁ガイド118の下端に弁体114を備えた部品を指している。なお、弁ガイド118は、下端で弁体114を保持し弁体114と共に弁中心軸L方向に移動する。
【0006】
このため、電動弁100において、弁ポート130bの入り口側と出口側の間に高い圧力差が生じた場合などで、特に管継手111から管継手112に流れる場合には、図9に示すように、管継手111から流入した冷媒などの流体が弁体部120に当たり、その衝突力によって弁体部120が径方向(C)に振動することがある。この振動による音が発生すると、電動弁100の静音性を維持できなくなる場合がある。
【0007】
そこで、図10に示すように、弁座130の天面130aの位置を高くすることにより、管継手111から弁室121に流入する流体が直接弁体部120に当たらない構造にすることが考えられる。しかしこの場合、管継手111から流入した流体が弁座130に衝突することで生じた上昇流が、弁体部120の傾きや動きを拘束するガイド部132に侵入し、弁体部120を振動させ、騒音を生じることがある。したがって、この場合もまた、静音性を維持することが困難になる。
【0008】
本発明の目的は、的確に静音性を維持することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の電動弁は、
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ送り機構により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体部を前記弁体部の中心軸である弁中心軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体内に形成された空間である弁室と、
前記弁本体の側面に設けられ、前記弁室側の出入口となる第1弁ポートと、
前記弁体部の直下において前記弁本体と同軸方向に設けられ、前記弁体部が近接または離間可能な第2弁ポートと、
前記第2弁ポートが前記ロータ側に形成された筒状の弁座部と、
前記弁体部を前記弁中心軸方向に案内する弁軸ホルダと、
を備え、
前記弁体部が最も前記弁座部に近接した状態において、前記弁軸ホルダの下端よりも前記弁座部側で最も大径となる前記弁体部の最大外径が
前記弁座部の天面に形成された環状の弁座平面部の外径よりも大きく、
かつ前記弁座平面部の前記弁中心軸方向における位置が、前記第1弁ポートの内径の前記ロータと最も遠い位置を成す最下端よりも前記ロータ側に位置することを特徴とする。
このように、弁体部の最大外径を弁座平面部の外径よりも大きく形成することにより、流体が弁体部に妨げられて弁体部と弁体部を収容する収容室の間のクリアランスに流入することが防止され、弁体部が振動して生じる騒音を緩和することができ、的確に静音性を維持することができる。
【0010】
[2]また、本発明の電動弁は、
前記弁体部は、
前記第2弁ポートを通過する流体の流量を調整する弁体と、
前記弁体を前記弁座部側に保持し前記弁軸ホルダに対して摺動可能に配置された弁ガイドと
を含み、
前記弁体は前記弁ガイドに固定されていることを特徴とする。
このように、弁体が弁ガイドに固定されることにより、流体によって弁体が弁ガイドの中で振動することがなくなり、静音性を維持することができる。
【0011】
[3]また、本発明の電動弁は、
前記弁体は、
最も前記第2弁ポートと近接する部分であるニードル部と、
前記ニードル部の基端の外周に位置する環状の平面部と
を備えることを特徴とする。
これにより、平面部に衝突した流体によって弁体部が上方に付勢され、ネジ送り機構における雄ネジと雌ネジとのネジ山の接触面を一定に保つことができネジガタが生じることを抑制することができる。したがって、的確に電動弁の静音性を維持することができる。
【0012】
[4]また、本発明の電動弁は、
前記弁体部の最大外径の下端縁を成す肩部を備え、
前記肩部の前記弁中心軸方向の位置は、前記弁体部が最も前記弁座部に近接した状態において、前記第1弁ポートの内径の前記ロータと最も近い位置を成す最上端よりも前記ロータ側に位置することを特徴とする。
これにより、第1弁ポートから流体が流入する場合は、弁体部が最も前記弁座部に近接した状態においても流体が弁体部に衝突することが軽減され、かつ上昇流が肩部に妨げられることで弁体部と弁体部を収容する収容室の間のクリアランスに流入することが防止される。
【0013】
[5]また、本発明の電動弁は、
前記弁座部は、前記ロータ側に向かって外径が小さくなるテーパー部を有することを特徴とする。
このテーパー部によって流体が弁体部の最大外径よりも内側に誘導されるため、さらに的確に流体が弁体部と弁体部を収容する収容室の間のクリアランスに流入することが回避され、電動弁の静音性が維持される。
【0014】
[6]また、本発明の電動弁は、
前記第1弁ポートの前記最下端が、前記弁本体内の内部底面よりも前記ロータ側に位置することを特徴とする。
これにより、上昇しない流体を弁本体内の内部底面近傍の下方空間に流すことができ、流体が弁体部と弁体部を収容する収容室の間のクリアランスに流れ込むことを防止することができる。
【0015】
[7]また、本発明の冷凍サイクルシステムは、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む冷凍サイクルシステムであって、上述の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、的確に静音性を維持することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る電動弁の概略断面図である。
図2】実施の形態に係る電動弁の要部拡大図である。
図3】実施の形態に係る電動弁において、弁体部が最も弁座部に近接した状態における要部拡大図である。
図4】他の実施の形態に係る、弁座部にテーパー部を設けた電動弁の要部拡大図である。
図5】他の実施の形態に係る、弁座部が弁本体と一体の電動弁の要部拡大図である。
図6】他の実施の形態に係る、第1弁ポートが弁本体の側面に形成された電動弁の要部拡大図である。
図7】他の実施の形態に係る、弁体部のニードル部に平面部が形成されていない電動弁の要部拡大図である。
図8】従来の電動弁の概略断面図である。
図9】従来の電動弁の要部拡大図である。
図10】比較例としての電動弁の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電動弁について説明する。図1は、実施の形態に係る電動弁2を示した概略断面図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁体17より上方に位置している。
【0019】
この電動弁2では、金属により筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下方に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
ここで、弁本体30は、たとえばステンレス等の金属から成り、内部に形成された空間である弁室11を有している。また、弁本体30の側面には、弁室11に直接連通するたとえばステンレス製や銅製の第1管継手12が固定装着されている。この第1管継手12の弁室11側には、流体の出入口となる断面円形の第1弁ポート12aが形成されている。さらに、弁本体30の内部底面30aには、断面円形の第2弁ポート16aが上方に形成された弁座部16が内部底面30aから突出するようにして組み込まれている。なお、第2弁ポート16aは、弁体17の直下において弁体17と同軸方向に設けられている。弁座部16には、第2弁ポート16a、弁室11を介して第1管継手12に連通するたとえばステンレス製や銅製の第2管継手15が固定装着されている。
【0020】
ケース60の内周には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、ブッシュ部材33を介して弁軸41が配置されている。なお、ロータ4は、磁性粉を含有する樹脂材料やフェライト磁石等の磁性を有する素材で形成されている。ブッシュ部材33と弁軸41は、共にたとえばステンレス等の金属で形成されており、ブッシュ部材33で結合された弁軸41とロータ4とは、回転しながら上下方向に一体的に移動する。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。本実施の形態では、弁軸41が雄ネジ部材として機能している。また、弁体17は第2弁ポート16aに対して近接又は離間可能となっている。
【0021】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
弁軸41のブッシュ部材33より下方には、後述するように弁軸41との間でネジ送り機構Aを構成するとともに弁軸41の傾きを抑制する機能を有する弁軸ホルダ6が、弁本体30に対して相対的に回転不能に固定されている。
【0022】
この弁軸ホルダ6は、上部側の筒状小径部6aと下部側の筒状大径部6bと弁本体30の内周部側に収容される嵌合部6cとリング状のフランジ部6fとからなる。そして、弁軸ホルダ6のフランジ部6fは、弁本体30の上端に溶接などで固定されている。また、弁軸ホルダ6の内部には、後述する弁ガイド18を収容する収容室6hが形成されている。なお、弁軸ホルダ6は、金属のフランジ部6f以外が樹脂材料で形成されている。
【0023】
また、この弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの上部開口部6gから所定の深さまで下方に向かって雌ネジ6dが形成されている。このため、本実施の形態では、弁軸ホルダ6が雌ネジ部材として機能している。そして、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの内周に形成された雌ネジ6dとにより、ネジ送り機構Aが構成されている。
【0024】
さらに、弁軸ホルダ6の筒状大径部6bの側面には、均圧孔51が穿設され、この均圧孔51により、筒状大径部6b内の収容室6hと、ロータ収容室67(第2の背圧室)との間が連通している。このように均圧孔51を設けることにより、ケース60のロータ4を収容する空間と、弁軸ホルダ6内の空間とを連通することにより、弁体17の移動動作をスムーズに行うことができる。
【0025】
また、弁軸41の下方には、筒状の弁体部20が弁軸ホルダ6の収容室6hに対して摺動可能に配置されている。この弁体部20は、収容室6h内を摺動する筒状の弁ガイド18、および第2弁ポート16aを通過する流体の流量を調整する弁体17を備えている。なお、弁体17は、弁ガイド18の下方に固定され、弁ガイド18によって保持されている。また、弁ガイド18内には、圧縮された弁バネ27とバネ受け35とが収容されている。バネ受け35の上端部は、弁軸41の突出部41cと点接触している。
【0026】
弁ガイド18は天井部21側がプレス成形により略直角に折り曲げられている。そして、この天井部21には貫通孔18aが形成されている。また、弁軸41の下方には、さらに鍔部41bが形成されている。
【0027】
ここで、弁軸41は、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように弁ガイド18の貫通孔18aに遊貫状態で挿入されており、鍔部41bは、弁ガイド18に対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド18内に配置されている。また、弁軸41は貫通孔18aを挿通し、鍔部41bの上面が、弁ガイド18の天井部21に対向するように配置されている。なお、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0028】
弁軸41と弁ガイド18とが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁ガイド18および弁体17との同芯性が得られる。
弁ガイド18の天井部21と弁軸41の鍔部41bとの間には、中央部に貫通孔が形成されたワッシャ70が設置されている。
【0029】
次に、実施の形態に係る電動弁2の要部について説明する。図2は、実施の形態に係る電動弁2の要部を拡大した図である。図2に示すように、弁体17は、弁ガイド18の内周に固定される円柱状の固定部17a、弁ガイド18の下端を閉塞する略円盤状の蓋部17b、および略円錐台状の形状を有し第2弁ポート16aを通過する流体の流量を調整する機能を有するニードル部17cを備えている。なお、ニードル部17cは弁体17の最も下方に位置している。
【0030】
そして、蓋部17bには、蓋部17bの下方に突出するニードル部17cの基端17c´の外周に位置する環状平面である平面部17dを備えている。さらに、平面部17dの外周には、弁体部20の最大外径X(後述)を構成する部分の下端縁を成す肩部17eが形成されている。また、弁体部20の外周と弁軸ホルダ6の収容室6hの内周の間には、クリアランス22が形成されている。
【0031】
なお、弁体部20の最大外径Xとは、弁体部20が最も弁座部16に近接した状態において、弁軸ホルダ6の下端6kよりも下側の範囲(図3の符号S参照)で最も大径となる部分である。また、弁座部16の天面には、環状平面である弁座平面部16bが形成されている。
【0032】
ここで、弁体部20の最大外径Xは、弁座平面部16bの外径Yよりも大きく形成されている(X>Y)。また、第2管継手15に固定装着された弁座平面部16bの位置は、弁体17および弁体部20の中心軸である弁中心軸M方向において第1弁ポート12aの内径の最下端Pよりも上側(ロータ4側)に位置している。なお、最下端Pは、第1弁ポート12aの内径でロータ4と最も遠い位置である。また、最下端Pは、弁本体30内の内部底面30aよりも上側に位置し、弁本体30内の内部底面30aの近傍に弁座部16を囲む下方空間11aが形成されている。
【0033】
第1管継手12から第1弁ポート12aを介して弁室11内に流体が流入した場合、流体が弁座部16に衝突することによって、弁中心軸M方向の上向きの上昇流と弁中心軸M方向の下向きの下降流が生じる。上昇流は分流して、その一部は、平面部17d、肩部17eに衝突した後下方に折り返し、他の一部は、肩部17eから弁本体30内部側面に流れ、弁体部20と収容室6hのクリアランス22に流入することが回避される。また、上昇流が平面部17dに衝突することにより、弁体部20が上方に付勢される。一方、下降流は、下方空間11aに流入する。
【0034】
また、図3に示すように、弁体部20が最も弁座部16に近接した状態において、肩部17eの弁中心軸M方向の位置Rは、第1弁ポート12aの内径の最上端Qよりも上側(ロータ4側)に位置している。なお、最上端Qは、第1弁ポート12aの内径において、ロータ4と最も近い位置である。これにより、弁体部20が最も弁座部16に近接した状態においても第1弁ポート12aを介して弁室11内に流入した流体が弁体部20に衝突することが軽減され、かつ流体が弁座部16に衝突することによって生じた上昇流が肩部17eに妨げられることでクリアランス22に流入することが防止される。
【0035】
この実施の形態に係る電動弁2によれば、弁座部16が弁本体30内の内部底面30aから突出し、弁座平面部16bの位置が弁中心軸M方向において第1弁ポート12aの内径の最下端Pよりも上側に位置する場合において、弁体部20の最大外径Xを弁座平面部16bの外径Yよりも大きく形成することにより(X>Y)、上昇流が弁体部20に妨げられてクリアランス22に流入することが防止される。さらに、平面部17dに衝突した上昇流によって弁体部20が上方に付勢され、雄ネジ41aと雌ネジ6dのネジ山の接触面を一定に保つことができネジガタが生じることを抑制することができる。したがって、弁体部20が振動して生じる騒音を緩和することができ、的確に静音性を維持することができる。
【0036】
また、弁体部20が最も弁座部16に近接した状態において、肩部17eの弁中心軸M方向の位置Rが第1弁ポート12aの内径の最上端Qよりも上側に位置するため、この状態においても第1弁ポート12aから流入した流体がクリアランス22に流入することが的確に防止され、より確実に弁体部20が振動して生じる騒音を抑制することができる。
【0037】
また、弁体17が弁ガイド18に固定されているため、流体によって弁体17が弁ガイド18の中で振動することがなくなり、電動弁2の静音性を維持することができる。また、弁本体30内の内部底面30a近傍には下方空間11aが形成されているため、第1弁ポート12aから流入し下方に分岐した流体を、下方空間11aに流すことができ、流体がクリアランス22に流れ込むことを防止することができる。
【0038】
また、上述の実施の形態において、図4に示すように、弁座部16に、上方に向かって外径が小さくなるテーパー部16cを有するようにしてもよい。この場合、上昇流はテーパー部16cによって弁体部20の最大外径Xよりも内側に誘導される。したがって、さらに的確に上昇流がクリアランス22に流入することが回避され、電動弁2の静音性が維持される。なお、弁座部16の外周が傾斜し始める部分であるテーパー部16cのテーパー境界部Oが第1弁ポート12aの内径の最下端Pよりも下側(弁室内部底面30a側)に位置していれば、なお好ましい。この場合、上昇流のクリアランス22への流入をさらに的確に回避することができる。
【0039】
また、上述の実施の形態においては、弁本体30の内部底面30aに弁座部16が別部品として組み込まれている場合を例に説明しているが、図5に示すように、弁本体30の内部底面30aから弁座部16が突出し、弁本体30と弁座部16が一体の部品として形成されていてもよい。この場合、第1弁ポート12aが第1管継手12とは別の部品であってもよい。たとえば、図6に示すように、弁本体30の側面に第1弁ポート12aが形成されていてもよい。
【0040】
また、上述の実施の形態においては、流体が第1弁ポート12aを介して弁室11内に流入する順方向の場合について説明しているが、流体は、第2管継手15、弁座部16、および第2弁ポート16aを介して逆方向に弁室11内に流入してもよい。この場合においても、流体は、平面部17d、肩部17eに衝突した後下方に折り返し、または、肩部17eから弁本体30内部側面に流れ、弁体部20と収容室6hのクリアランス22に流入することが回避される。そして、流体が平面部17dに衝突することにより、弁体部20が上方に付勢される。
【0041】
また、上述の実施の形態において、蓋部17bに平面部17dが形成されていなくてもよい。たとえば、図7に示すように、ニードル部17cと蓋部17bの外周面との境界に肩部17eが形成されていてもよい。この肩部17eは、蓋部17bの下方に突出するニードル部17cの基端の外周の縁を成している。この場合、ニードル部17cの外周面の面積が大きく、かつ外周面の弁中心軸Mに対する傾斜角度が大きくなることにより、流体が弁本体30内部側面の方向に誘導され、クリアランス22に流入することが防止される。
【0042】
また、上述の実施の形態において、平面部17dは、平らな面である場合を想定しているが凹凸があっても構わない。また、平面部17dは、必ずしも弁中心軸Mと直交する平面でなくてもよく、弁中心軸Mと直交する平面に対して傾斜していてもよい。
【0043】
また、上述の実施の形態において、ニードル部17cの形状は、先端が尖った略円錐形状であってもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態の電動弁2は、たとえば、圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等から成る冷凍サイクルシステムにおいて、凝縮器と蒸発器との間に設けられる膨張弁として用いられる。
【符号の説明】
【0045】
2 電動弁
4 ロータ
6 弁軸ホルダ
6a 筒状小径部
6b 筒状大径部
6c 嵌合部
6d 雌ネジ
6f フランジ部
6g 上部開口部
6h 収容室
6k 弁軸ホルダの下端
11 弁室
11a 下方空間
12 第1管継手
12a 第1弁ポート
15 第2管継手
16 弁座部
16a 第2弁ポート
16b 弁座平面部
16c テーパー部
17 弁体
17a 固定部
17b 蓋部
17c ニードル部
17c´ ニードル部の基端
17d 平面部
17e 肩部
18 弁ガイド
18a 貫通孔
20 弁体部
21 天井部
22 クリアランス
27 弁バネ
30 弁本体
30a 内部底面
33 ブッシュ部材
41 弁軸
41a 雄ネジ
41b 鍔部
41c 突出部
51 均圧孔
60 ケース
67 ロータ収容室
70 ワッシャ
100 電動弁
103 ロータ
111 管継手
112 管継手
114 弁体
118 弁ガイド
120 弁体部
121 弁室
121a 雄ネジ
130 弁座
130a 天面
130b 弁ポート
131a 雌ネジ
L 弁中心軸
M 弁中心軸
O テーパー境界部
P 第1弁ポートの内径の最下端
Q 第1弁ポートの内径の最上端
R 肩部の軸方向の位置
X 弁体部の最大外径
Y 弁座平面部の外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10