(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-152502(P2019-152502A)
(43)【公開日】2019年9月12日
(54)【発明の名称】応力センサー
(51)【国際特許分類】
G01L 1/00 20060101AFI20190816BHJP
C22C 19/07 20060101ALI20190816BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20190816BHJP
【FI】
G01L1/00 F
C22C19/07 C
G01N27/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-37072(P2018-37072)
(22)【出願日】2018年3月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・発行者名 :一般社団法人 日本機械学会 刊行物名 :日本機械学会 2017年度年次大会 予稿集 発行年月日:2017年(平成29年)9月2日 ・集 会 名:日本機械学会2017年度年次大会 開 催 日:2017年(平成29年)9月3日〜6日
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】505000480
【氏名又は名称】フィンガルリンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴大
(72)【発明者】
【氏名】中尾 航
(72)【発明者】
【氏名】古屋 泰文
(72)【発明者】
【氏名】座間 誠一
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA19
2G053AB09
2G053CA07
(57)【要約】
【課題】外的な磁場変化にともない、自らが伸縮する性質を有する磁歪材料のうち、最近、日本で開発されたFeCo過剰型2元素系を用いて、その磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)効果を利用する、非破壊的かつ非接触的な状態で使用できる応力変化や歪み蓄積を計測評価できる応力センサーを提供する。
【解決手段】磁歪現象を有する磁歪合金を有し、その磁歪合金の磁化過程で発生する、微視的な磁気バルクハウゼン雑音効果を抽出・解析することにより、応力を非破壊的に測定可能に構成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁歪現象を有する磁歪合金を有し、前記磁歪合金の磁化過程で発生する、微視的な磁気バルクハウゼン雑音(Magnetic Barkhausen Noise;MBHN)効果を抽出・解析することにより、応力を非破壊的に測定可能に構成されていることを特徴とする応力センサー。
【請求項2】
前記磁歪合金は、大磁歪、高感度でかつ高強度・加工性が良好なFeCo系であり、そのCo組成範囲が、53≦Co≦78原子%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の応力センサー。
【請求項3】
磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)効果を高めるために、前記磁歪合金は、FeCo系磁歪合金材料を線状もしくは薄板上に強加工し、その後に温度範囲が420℃〜820℃、保持時間が1〜24時間の熱処理を施して磁歪感受率を高め、金属組織を改質し、高感度化させたものであることを特徴とする請求項1または2記載の応力センサー。
【請求項4】
FeCo系の前記磁歪合金を、被測定対象の構造部材の表層もしくは内部に接着固定または埋没させて複合化し、前記構造部材の応力を測定可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の応力センサー。
【請求項5】
バンドパスフィルター(BPF)を有し、変動する外力(応力)を評価するために、前記バンドパスフィルター(BPF)を300Hz≦BPF≦50KHzに設定し、かつ、その実効電圧RMS値、Vc=Vmax/√2、もしくはパワー値P=V2をパラメータとすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の応力センサー。
【請求項6】
移動体の保持素材やインフラ構造材での経年劣化現象を評価するために、FeCo系の前記磁歪合金からのBHNの高速フーリエ(FFT)変換によるスペクトラムを解析し、そのBHN出力と周波数関係の2次元的な波形分布形状とから定義される波形ピーク強度変化パラメータに着目することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の応力センサー。
【請求項7】
移動体の保持素材やインフラ構造材での経年劣化現象を評価するために、前記MBHNのウェーブレット変換によるスペクトラムを解析し、そのBHN出力と周波数および時間軸関係からなる3次元的なBHNの波形分布形状とから定義されて、その発生挙動も考慮した周波数強度変化パラメータに着目することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の応力センサー。
【請求項8】
FeCo系の前記磁歪合金の磁化とその表面からの漏れ磁束(不規則的なパルス信号)とを抽出するために、前記磁歪合金への励磁コイルおよびその漏れ磁束検出コイルが、その設置形態として、前記漏れ磁束検出コイルが前記励磁コイルに内包もしくは近接的に一体化させた構造を有していることを特徴とする請求項2、3または6記載の応力センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外的な磁場変化にともない、自らが伸縮する性質を有する磁歪材料(Magnetostrictive Material)を用いた、非破壊的かつ非接触的な状態で使用できる応力センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
当該分野に関する従来技術の現状と問題点を述べる。
磁性を利用した応力センサーの事例としては、磁性材料の外力負荷に伴う磁気的性質変化の利用原理から、以下に分類できる。1)透磁率変化、2)磁気抵抗変化、3)逆磁歪効果(漏れ磁束計測)および4)磁区ピン止め現象利用(バルクハウゼン雑音計測)である。
従来は、軟磁性材料がほとんど用いられてきており、アモルファスナノ結晶リボン(FeSiMn系)、パーマロイ(FeNi系)が殆どであった。
【0003】
しかし、上記の軟磁性材料では、磁歪量は小さく、高々20ppm程度であり、特に、これらは、高応力負荷域で、透磁率や磁気抵抗などの磁気特性変化が飽和域に達してしまうこと、さらに、これらの磁歪量(磁気弾性効果)は小さいことから、応力センサーとしての感度は著しく衰えるという欠点があった。また、その敏感性(感受率)も、磁気バルクハウゼン雑音(Magnetic Barkhausen Noise;MBHN)は、従来のマクロ的磁化抵抗の目安となる透磁率(μ)に較べて、結晶内部の微細な析出相や転位などの内部欠陥、および、材料内部の残留応力等に敏感な特徴がある。それゆえに、MBHN信号計測は、微小な応力変化や歪み蓄積変化、さらには、タービンロータ用CrMo低合金鋼での研究事例に有るように、材料ミクロ組織の劣化に対して、5〜30倍程度敏感となりうることが判っている(例えば、非特許文献1または2参照)。
【0004】
この様に、インフラ構造物や車両移動体等の、繰り返し応力負荷中に起こる材料劣化・金属組織内部損傷などの歪み蓄積・経年劣化現象の把握には、従来から試みられてきた、電磁現象をベースとしたマクロ的な指標、すなわち、対象部材の磁気的な透磁率(μ)、高周波通電時での渦電流変化、超音波信号変化等に着目した非破壊検査からのパラメータでは、応力および歪み蓄積検出用には鈍感であり、その定量的な計測・評価が困難となっていた。
【0005】
それゆえに、機械構造物、各種プラント部材、インフラ保持構造体で使用中での鉄鋼材料での長期使用中での歪み蓄積量の推定、微視的な金属組織因子に敏感な疲労損傷進行度合いや材質の経年劣化の両分野から、この種の高感度で非破壊的なセンサーの実用化が、産業界から長年望まれてきているのが現状である。
なお、近年、FeCo過剰型磁歪合金が開発されている(例えば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−177664号公報
【特許文献2】特開2014−84484号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】古屋泰文、島田平八、「バルクハウゼンノイズ解析による材料強度評価 −応力と材質の評価にむけて−」、非破壊検査、1986年、第35巻、第8号、p.532-537
【非特許文献2】伊藤勇一、「バルクハウゼンノイズの材料評価への適用」、豊田中央研究所R&D レビュー、1992年12月、Vol. 27、No. 4
【非特許文献3】古屋泰文、「バルクハウゼンノイズ法による非破壊材料評価」、溶接学会誌、1995年、Vol.64、No.2、p.120-125
【非特許文献4】N. Prabhu Gaunkar, C. I. Nlebedim, D. Jiles, “Examining the Corelation Between Microstructure and Barkhausen Noise Activity for Feromagnetic Materials”, IEEE Transactions on Magnetics,2015, Vol.51, No.11
【非特許文献5】L. Mierczak, D. C. Jiles, G.Fantoni, "A new method for evaluation of mechanical stress using the reciprocal amplitude of magnetic Barkhausen noise", IEEE Transactions on Magnetics, 2011, Vol.47, No.2, p.459-465
【非特許文献6】H. Sakamoto, M. Okada, M. Homa, “Theoretical analysis ofBarkhausen noise in carbon steels”, IEEE Transactions on Magnetics, 1987, Vol.23, p.2236
【非特許文献7】A. G. Olabi, A. Grunwald, “Design and application of magnetostrictive materials”, Mater. Des., 2008, Vol.29, No.2, pp.469-483
【非特許文献8】A. E. Clark, K. B. Hathaway, M. Wun-Fogle, J. B. Restorff, T. A. Lograsso, V. M. Kep-pens, G. Petculescu, R. A. Taylor, ”Composition and crystalinity in electrochemicaly deposited magnetostrictive galfenol (FeGa)”, J. Appl. Phys., 2003, Vol.93, pp.8621-8623
【非特許文献9】S. Yamaura, T. Nakajima, T. Satoh, T. Ebata, Y. Furuya, “Magnetostriction ofheavily deformed Fe-Co binary alloys prepared by forging and cold rolling”, Materials Science and Engineering B, 2015, Vol.193, pp.121-129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外的な磁場変化にともない、自らが伸縮する性質を有する磁歪材料のうち、最近、日本で開発されたFeCo過剰型2元素系を用いて、その磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)効果を利用する、非破壊的かつ非接触的な状態で使用できる応力変化や歪み蓄積を計測評価できる応力センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る応力センサーは、磁歪現象を有する磁歪合金を有し、前記磁歪合金の磁化過程で発生する、微視的な磁気バルクハウゼン雑音(Magnetic Barkhausen Noise;MBHN)効果を抽出・解析することにより、応力を非破壊的に測定可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る応力センサーで、前記磁歪合金は、大磁歪、高感度でかつ高強度・加工性が良好なFeCo系であり、そのCo組成範囲が、53≦Co≦78原子%の範囲であることが好ましい。また、磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)効果を高めるために、前記磁歪合金は、FeCo系磁歪合金材料を線状もしくは薄板上に強加工し、その後に温度範囲が420℃〜820℃、保持時間が1〜24時間の熱処理を施して磁歪感受率を高め、金属組織を改質し、高感度化させたものであってもよい。
【0011】
本発明に係る応力センサーは、FeCo系の前記磁歪合金を、被測定対象の構造部材の表層もしくは内部に接着固定または埋没させて複合化し、前記構造部材の応力を測定可能であってもよい。また、バンドパスフィルター(BPF)を有し、変動する外力(応力)を評価するために、前記バンドパスフィルター(BPF)を300Hz≦BPF≦50KHzに設定し、かつ、その実効電圧RMS値、Vc=Vmax/√2、もしくはパワー値P=V
2をパラメータとしてもよい。
【0012】
本発明に係る応力センサーは、移動体の保持素材やインフラ構造材での経年劣化現象を評価するために、FeCo系の前記磁歪合金からのBHNの高速フーリエ(FFT)変換によるスペクトラムを解析し、そのBHN出力と周波数関係の2次元的な波形分布形状とから定義される波形ピーク強度変化パラメータに着目してもよい。また、移動体の保持素材やインフラ構造材での経年劣化現象を評価するために、前記MBHNのウェーブレット変換によるスペクトラムを解析し、そのBHN出力と周波数および時間軸関係からなる3次元的なBHNの波形分布形状とから定義されて、その発生挙動も考慮した周波数強度変化パラメータに着目してもよい。
【0013】
本発明に係る応力センサーは、FeCo系の前記磁歪合金の磁化とその表面からの漏れ磁束(不規則的なパルス信号)とを抽出するために、前記磁歪合金への励磁コイルおよびその漏れ磁束検出コイルが、その設置形態として、前記漏れ磁束検出コイルが前記励磁コイルに内包もしくは近接的に一体化させた構造を有していてもよい。
【0014】
本発明に係る応力センサーの原理の特徴としては、磁歪合金素材(線、薄板)の磁化過程での磁区(ドメイン)の発生・移動および回転挙動時に発生する、不連続的な磁区の動き、いわゆる、“磁壁のピン止め”現象の度合い変化を利用することを特徴とする。
【0015】
この磁壁移動でのピン止め効果は、センサー材料周囲に、ミクロ的でパルス状の不連続な漏れ磁束を発生させるので、それを、磁歪材周囲に設置した、電磁コイルにより電圧出力として抽出できることになる。
【0016】
鉄系材料での磁壁厚さは、数ミクロン(×10
−6m)以下からナノ(×10
−9m)レベルオーダーであり、そのために、磁壁のピン止め現象の強弱の原因としては、材料内部の非常に細かい材料ミクロ内部欠陥、例えば、結晶粒界、結晶内部の析出相、転位、空孔、その周囲の残留応力因子などが挙げられる。
【0017】
また、磁化過程での磁壁移動は、外部から導入される応力、すなわち、歪みエネルギーにより大きな影響を受ける。多くの鉄系素材や大磁歪FeCo系合金では、磁歪定数はプラスであり、外部応力増加に従い、磁壁移動度は促進されるので、磁壁のピン止めの際のパルス電圧出力は、増大する傾向となる。
【0018】
一方、FeCo過剰型磁歪合金に関する特許文献1の記載からは、この新素材は、従来のMBHNに用いられてきた鉄鋼素材(たとえば、パーマロイ薄板、アモルファスナノ結晶リボン、軟鋼、CrMo鋼)よりも、磁歪量λや磁歪感受率dmが数倍高い。また、本合金は、高強度と加工延性も具えて、細線や薄い板に成形できるので、MBHN型応力および歪み蓄積検出センサーとしての適用範囲を拡げることができるという、素材側の特長を有する。
【0019】
さらに、磁気バルクハウゼン雑音効果の特徴から、1)外部応力変化に伴い、磁区の増大や回転が増進され、その際に磁壁ピン止めが促進されて、MBHNパルス電圧出力は増減し、応力センサーになり得ること、および、2)経年劣化損傷や長期にわたる剛性変化が生じる原因とされてきた、材料結晶内に存在する、ミクロ・ナノオーダーの内部欠陥(転位、空孔)や析出相変化を、MBHN特性は敏感に反映する、という特徴があることが判る。
【0020】
さらに、応力負荷時や内部損傷劣化の非破壊評価に対しては、ピン止め効果による電磁気パルスの電圧発生量(V)やその波形の周波数分布(スペクトラム)解析を併用することで、磁気バルクハウゼン雑音の発生原因まで踏み込んだ考察が可能となり、従来のマクロ的な透磁率(μ)や磁気抵抗(インピダンス)よりも、さらに数段の高精度な負荷応力の推定や内部損傷メカニズムの推定が可能となる。
【0021】
FeCo過剰型磁磁歪合金(Co=53〜78原子%)は、磁化に伴う磁歪量変化が、従来の素材よりも5〜10倍大きく、また、引張強度が800MPaというハイテン(高張力鋼)並みであり、おおきな外力負荷まで、センサー耐久性と感度とを維持できるという特徴がある。また、磁性がなくなるキュリー温度も高く(≒960℃)で、工業製品的には450℃までのセンサー利用が可能となるという利点がある。
【0022】
本発明では、FeCo過剰型磁歪合金でもっとも研究実績がある、代表的合金組成のFeCo過剰型(=70at%)磁歪ワイヤ―素材を用いることが好ましい。磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)センサーでは、従来の磁性マクロ的なパラメータに較べて、磁壁移動を反映しており、特に、低応力負荷域(≦30〜100MPa)で感度アップが可能となる。かつ、このFeCo磁歪素材は、高温側での使用が可能となるので、1)生体被覆分野や、2)インフラ(土木建設分野)経年劣化診断、3)発電タービンやエンジン部材の応力計測分野が有望となる。さらに、無線発信機能を付与すれば、その現場からのリアルタイムの自立型分散型のIoT(すなわち、Internet of things)診断型センサーへの応用が拓かれて、適用分野と経済技術的な負荷価値は大きく拡がる。
【0023】
また、MBHNは、従来のマクロ的磁化抵抗の目安となる透磁率(μ)に較べて、結晶内部の微細な析出相や転位などの内部欠陥、および、材料内部の残留応力等に敏感な特徴がある。それゆえに、バルクハウゼン雑音信号計測は、微小な応力変化や歪み蓄積変化に対して、5〜30倍程度敏感となる。ゆえに、繰り返し応力負荷中に起こる鉄鋼材料での金属組織内部損傷などの歪み蓄積・経年劣化度合いの非破壊的な把握が可能となる。
【0024】
そのセンサー形態としては、FeCo系磁歪合金の細線(ファイバー)や薄板材料の単体もしくは、それらを、構造部材の表層もしくは内部に接着固定、埋没・複合化させた形態をとる部材に適用となり、機械構造物、各種プラント部材、インフラ保持構造体で使用中での鉄鋼材料での、部材が受ける変動応力や長期使用中での歪み蓄積・損傷量の推定が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、外的な磁場変化にともない、自らが伸縮する性質を有する磁歪材料のうち、最近、日本で開発されたFeCo過剰型2元素系を用いて、その磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)効果を利用する、非破壊的かつ非接触的な状態で使用できる応力変化や歪み蓄積を計測評価できる応力センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(a)磁化過程での磁区発生・移動の不連続性(ピン止め効果)に起因する磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)の発生、(b)FeCo磁歪合金での磁化ヒステリシスループとそれに対応したバンドパスフィルター後に抽出されたBHNパルス出力信号の説明図である。
【
図2】磁気バルハウゼン雑音検出用センサー構造(左図)、および、検出回路ブロック図(右図)である。
【
図3】(a)励磁コイル電圧波、(b)小型検出コイル側に誘起された全体マクロ電圧、(c)バンドパスフィルター処理後のバルクハウゼン雑音信号の事例である。
【
図4】FeCo70at%磁歪合金ワイヤーおよびパーマロイFeNi系合金での熱処理条件ごとの、弾性変形限度以内での応力センサーの線形性とその感度変化を示すグラフである。
【
図5】FeCo70at%磁歪合金ワイヤーでの、塑性変形域までのバルクハウゼン雑音を利用した歪み直積センサーの出力感度変化、およびその際のノイズ発生時間軸挙動とFFT周波数スペクトラム分布変化である。
【
図6】(a)磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)信号、(b)その時間(t)〜出力(V)〜周波数(Hz)分布強度の3元的ウェーブレット変換解析表示、(c)磁化初期LF、中期〜後期磁化過程(HF)から抽出されたFFT解析によるバルクハウゼン雑音の周波数分布(スペクトラム)の変化である。
【
図7】弾性域での応力負荷と磁気バルクハウゼンノイズ(MBHN)出力の相関性を示すグラフである。
【
図8】塑性域での歪み損傷(転位密度)の増加と磁気バルクハウゼンノイズ(MBHN)の周波数波形分布(スペクトラム)の相関性を示すグラフである。
【
図9】バルクハウゼン雑音のFFT周波数分布(スペクトラム)の弾性域応力負荷、および塑性域での歪み量による変化とその評価パラメータによるプロット概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
近年注目される力学的センサーの一つに、鉄鋼構造体における磁気的な物理現象を利用した、磁気バルクハウゼンノイズ法(例えば、非特許文献1〜5参照)が挙げられる。磁気バルクハウゼンノイズ(Magnetic BHN;MBHN)とは、鉄などの強磁性材料に変動磁場を印加した際に、材料内の磁壁移動のピン止め現象により生じる不連続な磁気ノイズであり、検出コイルによって微小な電圧パルスとして計測される。
【0028】
このとき、磁気モーメントの集合体である磁区構造や磁壁移動の容易度は、微小な格子ひずみや結晶粒度、不純物などの内的要因(非特許文献1、2、4参照)や、印加磁場の強度分布、周波数、負荷応力などの外的要因(非特許文献3、5参照)に大きく依存する。これらの性質を利用して、現在、強磁性材料の応力、塑性変形、サイクル疲労などの非破壊評価手法への適用が検討されている。
【0029】
しかしながら、これまでの研究では、特定の磁化条件下におけるBHN特性の微細組織・応力依存性の報告にとどまっており、実用化に重要な磁気ひずみ特性を考慮したBHN発生要因やその磁壁挙動は十分に明らかになっていない。そのため、任意の材料形状や物性、磁化条件下でも適用可能なBHN発生機構の解明と有効な活用方法の検討が求められる。
【0030】
そこで本発明では、逆磁歪効果の大きなFeCo系磁歪合金におけるバルクハウゼンノイズ信号を活用した応力および歪み蓄積検出センサーへの適用に向けた基礎的な検討として、BHNパルス信号の出力およびその周波数特性に着目し、磁歪特性を考慮したBHNの発生機構の解明および、BHN特性の応力依存性による磁壁挙動の解明から、応力センサー感受性を実験的に調査した。
【0031】
図1の(a)には、磁化過程での磁区発生・移動の不連続性(ピン止め効果)に起因する磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)の発生、および(b)には、FeCo70at%磁歪合金ワイヤーの磁化ヒステリシスループとそれに対応したバンドパスフィルター後に抽出されたBHNパルス出力信号を示す。BHN信号は、結晶粒界面や欠陥などの局所的な磁気的エネルギーギャップが生じている境界上を磁壁が通過するとき、それらのエネルギー障壁により磁壁挙動や磁化ベクトルの回転(回転磁化)が妨げられ、不連続に磁束が変化することに起因する。
【0032】
しかし、実際のBHNは、磁壁の動的移動とそれに付随して起こるミクロ的磁気モーメントの変化とに起因しており、大変複雑である。非特許文献6では、材料内の個々の場所で発生する単発のBHN信号を電圧パルスと考え、1周期分の磁化過程で生じるBHN信号をガウス分布に近似している。BHN波形は、検出コイル周辺において誘導された各電圧パルスE(t)の合成波として表すことができるため、式(1)および(2)のように記述できる。
【0034】
ここで、kはコイルの巻き数、Φは磁束、tはパルス波の時間、Nは発生数、τはBHN発生時間、δは標準偏差を示す。この予測式から、バルクハウゼンノイズ波形は、磁化条件やパルス数を決定する材料内の欠陥密度だけでなく、正規分布を構成するτやδが重要なパラメータとなることがわかる。τやδは、材料内部の局所応力分布や磁壁エネルギー、微視結晶因子との相互作用に依存した特性を示す。そのため、それらのパラメータを最適化することにより、組織因子や応力に対して敏感な物理量となることが期待できる。
【0035】
また、バルクハウゼンノイズ信号の応力感度に影響を与えるパラメータの1つに、磁歪特性(磁気ひずみ定数)が挙げられる。これは、応力負荷に伴い変化する材料内部の磁気弾性エネルギーが、BHN発生を促進(抑制)するためである。これまでに、センサ・アクチュエータ材料として開発されてきた、希少元素を含む磁歪合金(Terfenol-D, Galfenol等)は、脆性や低キュリー温度を有するため、力学的負荷が少ない適用範囲に限られて使用されてきた(非特許文献7、8参照)。一方で、近年、発明者等によって開発されたCo過剰域Fe-Co系磁歪合金の引抜きワイヤー材は、大きな磁歪量(≧100 pm)、高強度(≧800MPa)、高剛性(≒205GPa)、高キュリー点(≧960℃)などと、優れた機械的・磁気的特性を有する(非特許文献9参照)。そのため、従来では対応不可能であったロバスト性が求められる使用環境(不規則な衝撃負荷・高温多湿など)における力学的センサーに適しているといえる。
【0036】
まず、実験に使用した試験片材料は、引抜き加工を施したFeCo70at%Fの2元素系磁歪合金である。試験片形状は、直径1mm、長さ100 mmの細い円柱状である。なお、伸線加工時に導入された結晶内部のミクロな残留応力(=格子ひずみ)除去を行うため、420 ℃での24時間保持・炉冷により焼なまし熱処理を施した。そのとき、表面酸化を防ぐため、試料片を石英管に真空封入した状態で焼成を行った。
【0037】
図2には、磁気バルクハウゼン雑音の計測システムブロック図および検出センサー構造を示す。FeCo系磁歪合金素材(細線、薄板)の磁化とその表面からの漏れ磁束(不規則的なパルス信号)とを抽出するために、FeCo素材への励磁コイルとその漏れ磁束検出コイルとが、漏れ磁束検出コイルが励磁コイルに内包もしくは近接的に一体化させた構造を有する。このセンサー構造により、鉄道レール周囲の法面崩落危険予知用センサーや、長大橋梁や、高層ビル梁上に設置することが可能となる。
【0038】
さらに、この計測システムブロック図には、励磁コイル用の1)波形発生電源、2)励磁コイル、3)ノイズ検出コイル、3)増幅器(アンプ)、4)バンドパスフィルター、および周波数分布(スペクトラム)強度解析用のデジタル信号処理が可能な5)高速フーリエ変換およびウェーブレット変換解析法(FFT解析)が組み込まれている。実測にあたっては、ワイヤー状試験片を引張試験装置(島津製作所製AG-X5kN)のチャックに固定し、試験片の長手方向に対して、0 MPから1150 MPaの引張応力を負荷した状態で、弾性域から塑性域までの各段階で、上記計測回路上でのBMHNの測定とその特性解析を行った。
【0039】
磁化条件に関しては、サンプル外周部に設置した励磁コイル(5000巻)へ三角波形状の交流電圧(電流)を印加することで、印加磁場の時間変化(dH/dt)が一定となるように、試料を磁化させた。このとき、微細組織の影響をより明確にするため、印加電圧の周期は0.5s-4sと極めて小さく、また、磁歪現象を確認するため、磁界強度は材料内部の磁化が回転磁化領域なるように、Hmax=2.16mT(Vmax=8V)と調整を行った。また、検出コイルに生じた誘導起電圧を、アンプによる増幅(40dB)、バンドパスフィルターによる特定周波数のBHN信号の抽出、アナログ計測器(キーエンスNR-HA08)による信号測定を行った。
【0040】
図3(a)〜(c)には、それぞれ励磁コイル電圧波形、小型検出コイル側に誘起された全体マクロ電圧およびバンドパスフィルター処理後のバルクハウゼン雑音信号の事例を示す。これは、印加磁界(Hmax =1.08mT,f=0.5Hz)によって励磁された試料の磁束密度変化dB/dt(に相当する出力電圧)と、BHN出力の経時変化の例である。
【0041】
加磁場が時間経過に伴い増加するにつれて、試験片の磁化が増大し、試料の磁束密度変化は、印加電圧が無応力下ではV=1.0(H=0.26mT)のとき、56MPa応力負荷時ではV=0.8 (H=0.21mT)のとき、最大となった。このとき、BHN出力電圧も同様に最大値を示し、その後減衰していった。これは、試料の磁化が飽和するに従って、移動可能な磁壁によるピニング頻度が減少するためであると考えられる。
【0042】
一方、応力印加時には、磁化の飽和後にもBHN出力が増大することから、試料の回転磁化領域で生じる磁歪現象に起因した不連続な磁化挙動によって、BHNが発生すると考えられる。また、応力負荷時における全体的なBHN出力の増大は、応力印加によって試料内部に存在する微小な欠陥が磁壁移動を妨げるようになり、その結果として、BHN信号の発生頻度の増加および、透磁率向上による磁束密度変化の向上に起因すると説明できる。
【0043】
このように検出され、かつ、バンドパスフィルター(500Hz〜10KHz)処理された、時間軸電圧波形に対して、まず、高速フーリエ(Fast Fourier transformation;FFT)変換をして周波数域に亘る分布形状(スペクトラム)を行い、次に、時間軸変化も加味したウェーブレット(wavelet transformation、WT)変換を行うことにより、3軸的な周波数強度分布変化を把握できる。このとき、得られた出力電圧(V)の時間軸波形から、MBHNの実効電圧RMS値およびVc=(Vmax/√2)を算出し、周波数軸波形の掃く面積から、パワー出力(V
2)を算出し、その応力依存性を調べた。さらに、FFTスペクトル波形および時間軸変化も加味したWT波形分布変化から、従来は困難視されてきた、歪み蓄積度の評価に関する可能性を調べた。
【0044】
図4には、FeCo70at%磁歪合金ワイヤーおよびパーマロイFeNi系合金での熱処理条件ごとの、弾性変形限度以内での応力センサーの線形性とその感度変化を示す。この図から、以下の3点の計測評価可能性と技術利点とが明らかになった。
1)高感度で微小な応力・歪み検知が可能
2)従来の報告にある軟鋼などよりも、線形性が維持されて、大きな応力範囲で力測定が可能
3)鉄鋼材などの低磁歪材料よりも感度が優れている。また、その感度は、熱処理による最適組織設計により感度の向上が可能である。
【0045】
図5には、FeCo70at%磁歪合金ワイヤーを用いた場合の、低応力側弾性域から高応力側の非線形塑性域までの、縦軸MBHNの実行値出力Vc=(Vmax/√2)と応力(横軸、歪み)の相関性を示す。図中、左上に挿入されたこのワイヤーでの応力〜ひずみ曲線の各段階での計測から、以下の特徴が判明した。
1)FeCo磁歪合金の弾性域(≦950MPa)までは、BHN出力は線形であり、その後の塑性域では飽和傾向を示すこと。
2)ゼロから負荷すると、弾性域までは、BHN出力は単調増加し、同時に、そのFFT波形は規格化すると低周波成分が増大していく傾向が見られた。これは、磁区の挙動(発生・移動・回転過程)を外部負荷が促進し、磁壁移動速度とピンニング力がアップして、発生パルス電圧が増加し、結果としてBHN出力は増大したと考察できる。
3)高負荷側になるほど、BHN発生は、磁化後半部に徐々に移動し、かつ、その周波数波形(スペクトラム)は、高周波側強度が相対的に上昇してきた。
【0046】
図6(a)〜(c)には、それぞれFeCo磁歪ワイヤーからの磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)信号、その時間(t)〜出力(V)〜周波数(Hz)分布強度の3元的なウェーブレット変換解析表示、磁化初期LFおよび中期〜後期磁化過程(HF)から抽出されたFFT解析によるバルクハウゼン雑音の周波数分布(スペクトラム)の変化を示す。BHN出力の時間軸で前半側(LFで図中表示)のスペクトラムは、
図6(c)中の上側、後半側(HFで図中表示)のそれは
図6(c)中の下側に示される。ウェーブレット変換図面内にもその部位に対応するLF、HFの部分が示されている。後半部の方が、高周波成分の相対比は上がっている傾向が読み取れる。
【0047】
以上の時間軸と周波数軸との解析結果から、BHN信号の周波数特性に対する歪み蓄積の影響について考察する。前述の通り、弾性域まではBHN出力が増大し、FFT低周波成分が増大していくが、塑性域(>950MPa)にはいると、BHN出力は変化が小さく、飽和傾向が出現した。そのような場合は、
図6に示すように、BHN時間軸波形の後半部分に出力の増大が見られた。また、そのFFT波形に関しては,高周波域の細かいもののピーク増大が見られ、全体のピーク強度も若干下がっていて、全体にスペクトラムの変化は高周波域に移動していることが判明した。
【0048】
FeCo系磁歪合金の塑性変形以後での、BHN出力および周波数分布(スペクトラム)変化について考察する。塑性変形は、ミクロ的には、結晶格子面内のすべりでおこり、これには転位(dislocation、格子ずれ)が関与している。降伏点を過ぎて転位が結晶内部に発生し、移動・集積化・蓄積が進むと、その周囲には微視的な応力場が生じる。これは、一般に磁壁の移動には障壁として作用するので、ピンニングは抑制されて、BHNは飽和傾向や低減を示す。特に、炭素鋼では降伏すべり(いわゆる、リュダースバンド)が顕著であり、降伏と同時にBHNは急激に減少し、BHN出力が検出できないことも多々あることが知られている。
【0049】
しかし、今回実験に供した、FeCo磁歪合金では、明瞭な降伏すべり現象は起こらず、いわば雪崩のようなすべり帯の発生がほとんど起こっていない可能性が高い。ゆえに、
図6に示される通り、降伏点以降での塑性域ではBHNは飽和してしまうこと、かつ、転位密度の増大が磁壁ピンニング障壁を高めるので、その際のBHN発生時間軸は後半部に移行する傾向が出たものと考えられる。そして、非常に微細な転位密度の増大は、高周波側でのBHN信号頻度を増大させるので、高周波側のスペクトラム形状が相対的に上昇したものと考えられる。
【0050】
以上を総括して、
図7には、弾性域での応力負荷と磁気バルクハウゼンノイズ発生出力(V)の相関性、
図8には、塑性域での歪み損傷(転位密度)の進行と磁気バルクハウゼンノイズ(MBHN)の周波数波形分布(スペクトラム)ピーク比α(=P1000Hz/P400Hz)の相関性を示す。いずれの場合も、BHN発生出力(V)やスペクトラムピーク比αで評価できることが明らかになった。
【0051】
なお、今後の課題として、さらに、高感度で経年劣化現象やインフラ構造物の長期診断に適した磁歪センサー素材としては、このFeCo元素系に、ごく微量な添加元素X(≦2at%、X=Cr,Mo,V、Mn、W等)をいれた合金組成が、微細析出相により、BHNピンニング効果が増進されて有効になることが推定できる。
【0052】
本発明のまとめとして、
図9には、バルクハウゼン雑音のFFT周波数分布(スペクトラム)の弾性域応力負荷、および塑性域での歪み量による変化とその評価パラメータによるプロット図を示す。以下の特徴が判明した。
1)弾性限度内での応力計測には、BHN発生での前半部(LF)時間軸からのパルス電圧信号抽出を行い、その実効電圧値(RMS)もしくはスペクトラム定義されるパワー出力値(V
2)を計測すれば、線形性に高く、高感度な構造部材への非破壊的な応力センサーとなる。
2)塑性変形域内での歪み蓄積・損傷度合いの推定には、BHN発生での後半部(HF)時間軸からのパルス電圧信号抽出を行い、その周波数スペクトラムの分布形状変化すること、特に、高周波側成分を低周波値で規格化整理したパラメータαを解析すれば、FeCo系磁歪合金素材の歪み蓄積検出センサーになりうる。
【0053】
以上、今回の実験結果より、磁気バルクハウゼン雑音効果を用いた、電圧値と周波数分布(スペクトラム)形状の一方、もしくは両方に着目することで、荷重−ストローク曲線から、弾性域では応力センサー、一方、塑性域では、歪み損傷センサーとして評価の優位性が実証された。これらの課題は、従来のマクロ的な磁気信号や渦電流検査、超音波解析等では困難視されていたので、新しい非破壊的応力および歪み蓄積評価用のセンサー技術として、非常に有意義となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の、代表的な合金組成のFeCo過剰型(70at%)磁歪ワイヤ―素材を用いた磁気バルクハウゼン雑音(MBHN)センサーでは、従来のパラメータに較べて、弾性域において、ミクロ的な金属組織因子に敏感であり、特に、低応力負荷域で5倍〜30倍以上の感度アップが可能となる。また、従来は困難視されてきた、長期にわたる、機械構造部材での歪み蓄積(損傷)度合いの推定が可能となる。また、このFeCo磁歪素材は、キューリー温度が960℃と高く、実用上にも450℃までの高温部材にも適用可能となる。
【0055】
以上より、このFeCo過剰型磁歪合金素材を用いた応力および歪み蓄積検出センサーは、その敏感な応力感度から、1)生体装着・被覆材分野、2)医療福祉機器、3)介護アシストロボット、そして、その素材の高強度かつロバスト性から、4)鉄道やダム等の土木建設分野での法面変形やインフラの経年変形診断、さらには高温までの磁気磁歪特性があるので、5)発電タービンやエンジン部材の応力計測分野が有望である。そのセンサー部分に、無線発信機能を付与すれば、その現場からのリアルタイムの自立型分散型のIoT(すなわち、Internet of things)診断型センサーへの応用が拓かれて、適用分野と経済技術的な負荷価値を大きく拡げることが出来る。
【符号の説明】
【0056】
1 磁気バルクハウゼン出力,BHN(V)
2 励磁電圧(V)
3 磁化時間経過,t(sec)
4 負荷応力stress,σ(MPa)
5 BHN発生前半部(LF)
6 BHN発生後半部(HF)
7 相対強度比(Relative Intensity)
8 面積 BHN PWA出力 (V
2)
9 スペクトラム相対比α(=P10KHz/P500Hz)
10 周波数(Hz)
11 蓄積歪み量(≒転位密度)