【解決手段】園芸用ハウスは、骨組みと、蓬、柿の葉、及びイタドリを主原料とする植物加工物を含有し、骨組みに張り渡される加工樹脂フィルムと、を備える。植物加工物は、蓬、柿の葉、及びイタドリ以外の植物を含有していてもよい。また、植物加工物は、蓬、柿の葉、及びイタドリ以外のその他の添加物を含んでいてもよい。加工用樹脂フィルムは、植物加工物及び樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
【背景技術】
【0002】
従来の園芸用ハウスは、骨組みに透光性の樹脂フィルムを張って作られていた。
【0003】
この透光性の樹脂フィルムは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどが用いられてきた。この技術によっては、温室の内部は暖かいために害虫やカビなどが発生しやすく、また露地栽培より概して植物の生育はよくなかった。
【0004】
この点に関し、樹脂に蓬の抽出物を混ぜ込んだフィルムが提案されている(例えば、特許文献1。)。
【0005】
しかし、カビの発生は若干抑えられるものの、害虫の発生や植物の生育の促進の効果は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実験に使用した園芸用ハウス及び従来のハウスの外観図。
【
図2】園芸用ハウスの中において栽培されたキャベツを示す図。
【
図3】従来のハウスの中において栽培されたキャベツを示す図。
【
図4】園芸用ハウスの中において栽培された白菜を示す図。
【
図5】従来のハウスの中において栽培された白菜を示す図。
【
図6】園芸用ハウスの中において栽培されたキャベツを示す図。
【
図7】従来のハウスの中において栽培されたキャベツを示す図。
【
図8】
図6のキャベツ(左)と
図7のキャベツ(右)の大きさを比較した図。
【
図9】園芸用ハウスの中において栽培された白菜と、従来のハウスの中において栽培された白菜の大きさを比較した図。
【
図10】園芸用ハウスの中において栽培されたブロッコリーと、従来のハウスの中において栽培されたブロッコリーの大きさを比較した図
【
図11】園芸用ハウスの中において栽培されたキャベツの断面を示す図。
【
図12】従来のハウスの中において栽培されたキャベツの断面を示す図。
【
図13】園芸用ハウスの中において栽培された白菜の断面を示す図。
【
図14】従来のハウスの中において栽培された白菜の断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態にかかる園芸用ハウス及び園芸ハウス用加工樹脂フィルムを、図面を参照しながら説明する。
【0012】
本実施形態の園芸用ハウスは、骨組みと、この骨組みに張り渡される加工樹脂フィルムと、を備える。
【0013】
骨組みは、従来の園芸用ハウスに用いられているものをそのまま用いることができる。
【0014】
加工樹脂フィルムは、蓬、柿の葉、及びイタドリを主原料とする植物加工物を含有する。
【0015】
(植物加工物の製法)
植物加工物は、以下のように製造される。
【0016】
(1)蓬、柿の葉、及びイタドリの生の葉及び枝を主原料とする植物の粉砕物を水性溶媒によって抽出する。植物の粉砕物の中には、蓬、柿の葉、及びイタドリ以外の植物が含有されていてもよい。
【0017】
水性溶媒は、例えば水、エタノールを挙げることができる。
【0018】
(2)(1)の抽出物を所定時間発酵させる。
【0019】
発酵に用いる菌は、例えば酵母菌を用いることができる。
【0020】
なお、植物加工物は有限会社ネイチャーグレイス社製、商品名「万生」を用いることができる。また、植物加工物はその他の添加物、例えば糖類、ビタミン類、アミノ酸類などを含んでいてもよい。
【0021】
(樹脂フィルムの製法)
樹脂フィルムは、マスターバッチにより植物加工物を樹脂に練り込み、ペレット化したものを、3〜5重量%の割合にて樹脂に練り込むことにより製造される。
【0023】
(1)上記の植物加工物100gに対して樹脂ペレット100gの割合にて混合し、100℃〜110℃により加熱しながら撹拌する。
【0024】
樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、及び塩化ビニルから1種類以上選ばれる樹脂を用いることができる。
【0025】
(2)水分が蒸発しきるまで、練り込む。
【0026】
(3)ペレットに成型し、植物加工物ペレットとする。
【0027】
(4)植物加工物ペレットの重量比が3重量%〜5重量%となるように、樹脂に加熱しながら練り込む。加熱温度は、樹脂が軟化する程度の温度である。
【0028】
(5)ペレットに成型し、原料樹脂ペレットとする。
【0029】
(6)原料樹脂ペレットを加熱しながらフィルム状に伸延し、加工樹脂フィルムとする。
【0030】
加工樹脂フィルムの厚さは、0.1mm〜0.5mmが、加工性の点から望ましい。
【0031】
加工樹脂フィルムは、他の成分を含んでいてもよい。他の成分は、例えば、分散剤、着色剤などである。加工樹脂フィルムは、他の成分を含んでいても、その効果を発揮することができる。
【0032】
(園芸用ハウスの製法)
骨組みを地面に建植し、建植した骨組みに加工樹脂フィルムを張って園芸用ハウスとする。園芸用ハウスは、例えば側壁の加工樹脂フィルムの適宜の箇所に通気孔を設けることもできる。通気孔は開閉可能なようにしてもよい。園芸用ハウスは人が出入りする出入口を設けることもできる。
【0033】
(園芸用ハウスの効果)
(実験)
図1は、実験に使用した園芸用ハウス及び従来のハウスの外観図である。
図1に示すように、農地に骨組みを建植し、一方に加工樹脂フィルムを張って園芸ハウス(
図1の左側)とし、他方に従来の樹脂フィルムを張って従来のハウス(
図1の右側)とした。
【0034】
両ハウスの中において、同時期にキャベツ、白菜、及びブロッコリーを種子から栽培し、比較した。
【0035】
(虫のつき方)
図2は本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培されたキャベツを示す図、
図3は従来のハウスの中において栽培されたキャベツを示す図である。
【0036】
図2及び
図3に示すように、従来のハウスの中において栽培されたキャベツはかなりの程度虫に食われているが、本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培されたキャベツはほとんど虫に食われていない。
【0037】
図4は本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培された白菜を示す図、
図5は従来のハウスの中において栽培された白菜を示す図である。
【0038】
図4及び
図5に示すように、従来のハウスの中において栽培された白菜はかなりの程度虫に食われているが、本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培された白菜はほとんど虫に食われていない。
【0039】
従って、本実施形態の園芸用ハウスは、防虫という点において植物の生育を促進する効果がある。
【0040】
(収穫物の大きさ)
図6は本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培されたキャベツを示す図、
図7は従来のハウスの中において栽培されたキャベツを示す図である。
図8は、
図6のキャベツ(左)と
図7のキャベツ(右)の大きさを比較した図である。
図9は、本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培された白菜と、従来のハウスの中において栽培された白菜の大きさを比較した図である。
図10は、本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培されたブロッコリーと、従来のハウスの中において栽培されたブロッコリーの大きさを比較した図である。
【0041】
図6から
図10までに示すように、キャベツ、白菜及びブロッコリーのすべてにおいて、本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培されたものの方が、従来のハウスの中において栽培されたものより大きさが大きかった。
【0042】
従って、本実施形態の園芸用ハウスは、大きく育つという点において植物の生育を促進する効果がある。
【0043】
(収穫物の品質)
図11は本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培されたキャベツの断面を示す図、
図12は従来のハウスの中において栽培されたキャベツの断面を示す図である。
図13は本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培された白菜の断面を示す図、
図14は従来のハウスの中において栽培された白菜の断面を示す図である。
【0044】
図11から
図14までに示すように、キャベツ及び白菜の両方において本実施形態の園芸用ハウスの中において栽培されたものの方が、従来のハウスの中において栽培されたものより葉の密度が高かった。
【0045】
従って、本実施形態の園芸用ハウスは、品質が良く育つという点において植物の生育を促進する効果がある。
【0046】
以上述べたように、本実施形態の園芸用ハウスは、骨組みと、蓬、柿の葉、及びイタドリを主原料とする植物加工物を含有し、骨組みに張り渡される加工樹脂フィルムと、を備える。
【0047】
従って、植物の生育を促進できる園芸用ハウスを提供することができるという効果がある。