(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-154296(P2019-154296A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】グルコシルセラミド濃縮物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/00 20060101AFI20190823BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
C12P19/00
C12P1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-44393(P2018-44393)
(22)【出願日】2018年3月12日
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】笠井 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】向井 克之
(72)【発明者】
【氏名】松山 彰収
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AF01
4B064CA21
4B064CB03
4B064CB07
4B064CC06
4B064CD22
4B064CE08
4B064CE20
4B064DA10
4B064DA20
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、りんご又はその搾汁残渣から効率的にグルコシルセラミドを濃縮し、グルコシルセラミド濃縮物を製造する方法を提供することである。
【解決手段】りんご又はその搾汁残渣に対して加熱処理及び酵素処理を行うことによって、グルコシルセラミドを効率的に濃縮できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
りんご及び/又はその搾汁残渣からグルコシルセラミド濃縮物を製造する方法であって、
りんご及び/又はその搾汁残渣に対して加熱処理を行う第1工程、並びに
前記第1工程で得られた加熱処理物に対して酵素処理を行い、固形分を回収する第2工程、
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記第1工程における加熱処理が、蒸気加熱処理によって行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程における加熱処理が、98℃以上の温度条件で行われる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程における酵素処理が、セルラーゼ及び/又はペクチナーゼを用いて行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程における酵素処理が、セルラーゼを用いた酵素処理、及びペクチナーゼを用いた酵素処理を、任意の順番で順次又は同時に行う、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2工程が、
前記第1工程で得られた加熱処理物に対してセルラーゼを用いて酵素処理を行う第2-1工程、
前記第2-1工程後に固液分離処理を行い、固形分を回収する第2-2工程、
第2-2工程で得られた固形分に対してペクチナーゼを用いて酵素処理を行う第2-3工程、及び
前記第2-3工程後に固液分離処理を行い、固形分を回収する第2-4工程、
を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシルセラミド濃縮物の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、りんご又はその搾汁残渣から効率的にグルコシルセラミドを濃縮し、グルコシルセラミド濃縮物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコシルセラミドは、肌の保湿効果や美白効果があることから、健康食品及び化粧品の原料として利用されている。従来、ウシ脳由来のグルコシルセラミドが広く利用されていたが、牛海綿状脳症(BSE)が問題となった以降は植物由来のグルコシルセラミドの利用に切り替えられている。
【0003】
一方、りんごは栄養価の高い果物として食されており、日本の年間生産量は約82万t、世界では約7600万tにも達している。りんご産業では、ジュース加工やペクチン抽出後において副産物である搾汁残渣を生じる。りんごの搾汁残渣は飼料や堆肥としても利用されるが保存が難しく、大半は産業廃棄物として扱われ、異臭等の環境問題となっているのが現状であり、充分に利用されていない。しかし、りんごの搾汁残渣には、グルコシルセラミドが含まれており、グルコシルセラミドの供給原料としての利用価値がある。
【0004】
従来、りんご又はその搾汁残渣からグルコシルセラミドを抽出してグルコシルセラミドの濃縮物を得る方法として、りんご又はその搾汁残渣をエタノール等の抽出溶媒で抽出処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような抽出処理を行う方法では、抽出処理前に、りんご又はその搾汁残渣を乾燥させ、十分に水を除去していなければ、グルコシルセラミドを効率よく抽出できないという欠点がある。りんご又はその搾汁残渣の乾燥には時間やコストを要するため、従来の方法では、効率的で安価に、グルコシルセラミドの濃縮物を得ることができないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−57378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、りんご又はその搾汁残渣から効率的にグルコシルセラミドを濃縮し、グルコシルセラミド濃縮物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、りんご又はその搾汁残渣に対して加熱処理及び酵素処理を行うことによって、グルコシルセラミドを効率的に濃縮できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. りんご及び/又はその搾汁残渣からグルコシルセラミド濃縮物を製造する方法であって、
りんご及び/又はその搾汁残渣に対して加熱処理を行う第1工程、並びに
前記第1工程で得られた加熱処理物に対して酵素処理を行い、固形分を回収する第2工程、
を含む、製造方法。
項2. 前記第1工程における加熱処理が、蒸気加熱処理によって行われる、項1に記載の製造方法。
項3. 前記第1工程における加熱処理が、98℃以上の温度条件で行われる、項1又は2に記載の製造方法。
項4. 前記第2工程における酵素処理が、セルラーゼ及び/又はペクチナーゼを用いて行われる、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5. 前記第2工程における酵素処理が、セルラーゼを用いた酵素処理、及びペクチナーゼを用いた酵素処理を、任意の順番で順次又は同時に行う、項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
項6. 前記第2工程が、
前記第1工程で得られた加熱処理物に対してセルラーゼを用いて酵素処理を行う第2-1工程、
前記第2-1工程後に固液分離処理を行い、固形分を回収する第2-2工程、
第2-2工程で得られた固形分に対してペクチナーゼを用いて酵素処理を行う第2-3工程、及び
前記第2-3工程後に固液分離処理を行い、固形分を回収する第2-4工程、
を含む、項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、りんご及び/又はその搾汁残渣に対して、加熱処理及び酵素処理を施すという簡易な手法で、グルコシルセラミドを効率的に濃縮することができる。また、本発明によれば、工程中に乾燥処理が必須にならないので、グルコシルセラミド濃縮物の製造に要するコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1で行った工程と各工程で得られた物の外観を撮影した写真を示す。
【
図2】実施例1で得られた第2酵素処理物の固形分(試料H)について、グルコシルセラミドを抽出し、TLC分析を行った結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、りんご及び/又はその搾汁残渣からグルコシルセラミド濃縮物を製造する方法であって、りんご及び/又はその搾汁残渣に対して加熱処理を行う第1工程、並びに前記第1工程で得られた加熱処理物に対して酵素処理を行い、固形分を回収する第2工程を含むことを特徴とする抽出方法である。このように、りんご及び/又はその搾汁残渣に対して、加熱処理及び酵素処理を順次実施するという簡便な手法によって、グルコシルセラミドが効率的に濃縮することができる。以下、本発明の製造方法について詳述する。
【0012】
[原料]
本発明では、グルコシルセラミドの濃縮原料として、りんご及び/又はその搾汁残渣を使用する。
【0013】
りんごは、バラ科リンゴ属に属する落葉高木樹の果実であり、本発明で使用するりんごの品種については特に制限されない。また、本発明で使用するりんごは、果肉のみの状態(即ち、皮及び種子が取り除かれている状態)、皮又は種子が取り除かれている状態、或は皮及び種子が含まれている状態のいずれであってもよい。更に、本発明で使用するリンゴは、カットリンゴの製造工程で副生するカット残り(皮、種子、果実等の残余部分)であってもよい。また、りんごを使用する場合、後述するか熱処理及び酵素処理が効率的に行われるように、破砕、磨砕、細切等の加工が施されていることが好ましい。
【0014】
りんごの搾汁残渣は、りんごを搾汁した際に残渣として得られる固形分である。りんごの搾汁残渣には、果肉の他に、皮及び/又は種子が含まれていてもよい。
【0015】
本発明の製造方法では濃縮原料として、りんご又はその搾汁残渣のいずれか一方を使用してもよく、また、これらを組み合わせて使用してもよい。資源の有効利用という観点から、りんごの搾汁残渣を使用することが好ましい。
【0016】
[第1工程]
第1工程では、りんご及び/又はその搾汁残渣に対して加熱処理を行う。
【0017】
第1工程では、りんご及び/又はその搾汁残渣は、そのまま加熱処理に供すればよいが、事前に、りんご及び/又はその搾汁残渣に含まれる少なくとも一部の水分を除去するために乾燥処理に供していてもよい。但し、このような乾燥処理は、グルコシルセラミドの濃縮効率に殆ど影響しないと考えられるため、製造コスト低減の観点からは、りんご及び/又はその搾汁残渣は、乾燥処理に供することなく、そのまま加熱処理に供することが好ましい。
【0018】
加熱処理の温度条件としては、例えば、98℃以上、好ましくは100℃以上、更に好ましくは100〜150℃、特に好ましくは110〜120℃が挙げられる。
【0019】
加熱処理の処理時間としては、加熱温度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10分間以上、好ましくは10〜40分間、更に好ましくは20〜40分間が挙げられる。
【0020】
加熱処理の手法については、特に制限されず、蒸気加熱処理(高圧蒸気加熱を含む)、過熱水蒸気処理、煮沸処理、蒸煮処理等の湿式加熱処理;直火加熱処理、熱風処理、電熱加熱処理、赤外線加熱処理、電磁加熱処理、高周波加熱処理等の乾式加熱処理等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは湿式加熱処理、更に好ましくは蒸気加熱処理が挙げられる。
【0021】
斯くして加熱処理を行うことによって得られた加熱処理物は、後述する第2工程に供される。
【0022】
[第2工程]
第2工程では、前記第1工程で得られた加熱処理物に対して酵素処理を行い、固形分を回収する。第2工程における酵素処理は、第1工程で得られた加熱処理物に酵素を添加し、当該加熱処理物の植物組織の少なくとも一部を崩壊させる。このように、加熱処理及び酵素処理に供することによって、回収される固形分にグルコシルセラミドを効率的に濃縮させることが可能になる。
【0023】
酵素処理に使用される酵素については、一次細胞壁及び二次細胞壁を可溶化除去できるものであればよい。このような酵素については公知(例えば、笠井尚哉、「解説 難分解繊維とされていた植物組織の酵素分売と可溶化」、科学と工業、91(11)、354-365(2017))であり、当業者であれば、使用できる酵素を適宜選択することは可能である。具体的には、酵素処理に使用される酵素として、セルロース(β−グルコシダーゼ、エンド−1,4−β−グルカナーゼ、アビセラーゼ)、ヘミセルロース、ペクチン、プロトペクチン等の細胞壁構成多糖の少なくとも1つを加水分解できるものであればよく、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロトペクチナーゼ等の植物組織崩壊酵素が挙げられる。また、これらの酵素の由来についても、特に制限されないが、例えば、Aspergillus niger、Trichoderma reesei、Trichoderma viride、Trichoderma longibrachiatum、Streptomyces lividans、Bacillus subtilis、Pyrococcus horikoshii、Clostridium thermocellum、Humicola、Pyrococcus horikoshii等の細菌由来;アワビ、エゾボラ、ヒメエゾボラ、エゾバイ、サザエ、タマキビ等の貝由来;マツノザイセンチュウ等の線虫由来等が挙げられ、また、遺伝子工学的手法を利用して得られた組換え体であってもよい。
【0024】
これらの酵素は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの酵素の中でも、より一層効率的にグルコシドセラミドを抽出するという観点から、好ましくはセルラーゼ及びペクチナーゼの少なくとも1種、更に好ましくはセルラーゼ及びペクチナーゼの2種が挙げられる。
【0025】
これらの酵素は酵素製剤として市販されており、第2工程における酵素処理は、市販の酵素製剤を使用して行うことができる。市販されている酵素製剤としては、具体的には、セルラーゼY-NC(ヤクルト薬品工業株式会社製)、エンチロンMCH(洛東化成工業株式会社)、セルラーゼR10(ヤクルト薬品工業株式会社製)、スミチームCAP(新日本化学工業株式会社製)、セルラーゼTP−3(協和化成株式会社)、GODO-TCF(合同酒精株式会社)等のセルラーゼ;スミチームPX(新日本化学工業株式会社製)、スミチームSPC(新日本化学工業株式会社製)、ペクチネックスSRL(ノボザイムズジャパン株式会社製)、スミチームPMAC(新日本化学工業株式会社製)等のペクチナーゼ;セルロシンGM5(エイチビィアイ株式会社製)、セルロシンHC(エイチビィアイ株式会社製)等のヘミセルラーゼ等が挙げられる。
【0026】
酵素処理時のpH条件については、使用する酵素の作用pH範囲内に設定すればよいが、例えば、セルラーゼの場合であれば、通常pH3〜7、好ましくはpH4〜7、更に好ましくはpH4〜5が挙げられる。
【0027】
酵素処理時の酵素の使用量については、酵素処理に供する加熱処理物の量、使用する酵素の種類や活性、酵素処理時の温度や時間等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、加熱処理物の乾燥重量1g当たり、前記酵素を含む酵素製剤が10〜100mg、好ましくは20〜100mg、更に好ましくは50〜100mgが挙げられる。より具体的には、セルラーゼの場合であれば、加熱処理物の乾燥重量1g当たり、10〜30000FPU、好ましくは100〜30000FPU、更に好ましくは1000〜30000FPUが挙げられる。ここで、セルロースの活性単位「1FPU」は、ろ紙(ワットマンNo.1)を基質として1分間に1μモルのグルコースを遊離する量である。また、ペクチナーゼの場合であれば、加熱処理物の乾燥重量1g当たり、3〜300U、好ましくは300〜30000U、更に好ましくは1000〜30000Uが挙げられる。ここで、ペクチナーゼの活性単位「1U」は、1分間に1μモルのペクチンの構成単糖を遊離する量である。
【0028】
酵素処理の温度条件としては、使用する酵素の作用温度範囲内に設定すればよいが、例えば、5〜60℃以上、好ましくは20〜50℃、更に好ましくは37〜48℃が挙げられる。
【0029】
酵素の処理時間としては、酵素処理に供する加熱処理物の量、酵素の使用量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、60分間以上、好ましくは60〜120分間、更に好ましくは60〜900分間が挙げられる。
【0030】
また、第2工程における酵素処理は、2回以上繰り返し行ってもよい。酵素処理を2回以上実施する場合、各酵素処理に使用する酵素は、同一のものであってもよいが、グルコシルセラミドの濃縮効率をより一層向上させるという観点から、2種以上の異なるものであることが好ましい。
【0031】
第2工程における酵素処理を2回以上実施する場合、先の酵素処理の後に、固液分離処理により固形分を回収し、当該固形分を後の酵素処理に供すればよい。固液分離処理としては、例えば、遠心分離、濾過、フィルタープレス等の公知の手法で行えばよい。
【0032】
第2工程における酵素処理は、1種の酵素を使用して行ってもよく、また2種以上の酵素を使用して行ってもよい。2種以上の酵素を使用する場合には、2種以上の酵素を同時に反応させてもよく、また各酵素を単独で使用した酵素処理を繰り返し実施してもよい。
【0033】
第2工程における酵素処理の好適な態様として、セルラーゼを用いた酵素処理とペクチナーゼを用いた酵素処理を任意の順又は同時に実施する態様が挙げられる。グルコシルセラミドの濃縮効率をより一層向上させるという観点から、好ましくは、セルラーゼを用いて酵素処理を行った後に、ペクチナーゼを用いて酵素処理する態様が挙げられる。
【0034】
第2工程における酵素処理後の固形分には、グルコシルセラミドが濃縮された状態で含まれているので、当該固形分を回収することにより、グルコシルセラミド濃縮物が得られる。酵素処理後に固形分の回収は、固液分離処理によって行うことができる。固液分離処理としては、例えば、遠心分離、濾過、フィルタープレス等の公知の手法で行えばよい。
【0035】
[グルコシルセラミド濃縮物]
第2工程で回収された固形分(グルコシルセラミド濃縮物)には、グルコシルセラミドが濃縮された状態で含まれているので、グルコシルセラミドの供給源として使用される。
【0036】
前記第2工程で得られた固形分は、そのまま又は必要に応じて乾燥させて、食品、化粧料、医薬品等に使用することができる。また、前記第2工程で得られた固形分は、そのまま又は必要に応じて乾燥させた後に、グルコシルセラミドの抽出処理や精製処理等に供してもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0038】
実施例1
1.グルコシルセラミド濃縮物の調製
以下の各操作を行い、りんごの搾汁残渣からグルコシルセラミド濃縮物(試料H)を調製した。
【0039】
りんご(青森県産ふじ)10個を用いて、皮剥き、芯部分の除去、及びカットを行い、りんご果肉の細片物(試料A)を得た。
【0040】
ジューサー(「ヘルシーファイバージューサーJE-223」、サン株式会社製)を用いて、りんご果肉の細片物2935.2gを搾汁し、果汁(試料B)約1500mLと搾汁残渣(試料C)1430gを得た。
【0041】
オートクレーブ(「High-pressure Steam Sterilizer KS-243」、株式会社トミー精工製)を用いて、搾汁残渣1380gに対して加熱処理(121℃、20分)を行い、加熱処理物(試料D)(pH3.8)を得た。
【0042】
続いて、得られた加熱処理物(試料D)にセルラーゼ製剤(100FPU/g以上、Trichoderma reesei由来、「GODO-TCF」、合同酒精株式会社製)を10g添加して、45℃で一晩反応させ、ペースト状の第1酵素処理物を得た。第1酵素処理物320mLから遠心分離にて上清(試料E)と固形分に分離した。得られた固形分を水洗した後に遠心分離にて固形分を回収した。固形分の水洗及び遠心分離による固形分の回収を再度行い、第1酵素処理物の洗浄後固形分(試料F)164.78gを得た。
【0043】
第1酵素処理物の洗浄後固形分164.78gに、500mLの水を加え、ペクチナーゼ製剤(26,000U/ml、「ペクチネックス ウルトラ SP-L」、ノボザイムジャパン株式会社製)6.8mLを添加し、45℃で一晩反応させ、ペースト状の第2酵素処理物を得た。第2酵素処理物を遠心分離し、上清(試料G)660mLと固形分(試料H)12.03gに分離した。
【0044】
図1に、本実施例で行った工程と各工程で得られた物の外観を撮影した写真を示す。
【0045】
2.グルコシルセラミドの分析
前記試料A〜Hを凍結乾燥した後に、各凍結乾燥物20mgをエタノール2mLに添加して20℃で10分間、時々撹拌し、続いて遠心分離処理(4000rpm、10分間)にて固形分を除去することにより、グルコシルセラミドの抽出液を得た。当該抽出液をHPLC分析に供し、グルコシルセラミドの含有量を求めた。
【0046】
また、試料Hについては、前記抽出液をクロロホルム/メタノール/水(容量比65:25:4)の条件でTLC分析に供した。
【0047】
各試料の凍結乾燥物に含まれるグルコシルセラミドの含有量を測定した結果を表1に示し、試料Hを用いてTLC分析を行った結果を
図2に示す。この結果、試料Hにおけるグルコシルセラミド含量が格段に高く、原料として使用したりんごの搾汁残渣(試料C)に比べてグルコシルセラミドが約50倍濃縮されていた。以上の結果から、りんご又はその搾汁残渣に対して、加熱処理を行った後に、酵素処理を施すことにより、効率的にグルコシルセラミドを濃縮できることが明らかとなった。
【0048】
【表1】