【解決手段】モータ制御装置は、縫製対象物を保持する保持部材をミシン針の直下の位置を含む所定面内において移動させるモータを制御するモータ制御部と、規定移動条件で保持部材が移動したときの保持部材の検出加速度に基づいてモータの制御パラメータを調整する制御パラメータ調整部と、を備える。
前記制御パラメータ調整部は、前記モータ制御部が前記モータの駆動を開始させる開始指令信号を出力した開始時点と前記開始時点から第1規定時間経過後の第1時点との間の応答期間における前記保持部材の検出加速度と前記保持部材の目標加速度との差が小さくなるように前記制御パラメータを調整する、
請求項2又は請求項3に記載のモータ制御装置。
前記制御パラメータ調整部は、前記モータ制御部が前記モータの駆動を停止させる停止指令信号を出力した停止時点と前記停止時点から第2規定時間経過後の第2時点との間の静定期間における前記保持部材の検出加速度と前記保持部材の目標加速度との差が小さくなるように前記制御パラメータを調整する、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0012】
ミシン1についてローカル座標系であるミシン座標系が規定される。ミシン座標系は、XYZ直交座標系により規定される。本実施形態においては、ミシン座標系に基づいて各部の位置関係について説明する。所定面内のX軸と平行な方向をX軸方向とし、X軸と直交する所定面内のY軸と平行な方向をY軸方向とし、所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸及びY軸を含むXY平面は、所定面と平行である。本実施形態においては、XY平面と水平面とが平行であることとする。Z軸方向は上下方向である。+Z方向は上方向であり−Z方向は下方向である。なお、XY平面が水平面に対して傾斜していてもよい。
【0013】
[ミシン]
図1は、本実施形態に係るミシン1の一例を示す斜視図である。ミシン1は、電子サイクルミシンである。ミシン1は、ミシン本体10と、操作装置20とを備える。ミシン本体10は、テーブル2の上面に搭載される。
【0014】
ミシン本体10は、ミシンフレーム11と、ミシンフレーム11に支持される針棒12と、ミシンフレーム11に支持される針板13と、支持部材14を介してミシンフレーム11に支持される保持部材40とを有する。
【0015】
ミシンフレーム11は、Y軸方向に延在する水平アーム11Aと、水平アーム11Aよりも下方に設けられるベッド11Bと、水平アーム11Aの+Y側の端部とベッド11Bとを繋ぐ垂直アーム11Cと、水平アーム11Aの−Y側に設けられるヘッド11Dとを有する。
【0016】
針棒12は、ミシン針3を保持する。針棒12は、ミシン針3とZ軸とが平行になるようにミシン針3を保持する。針棒12は、Z軸方向に移動可能にヘッド11Dに支持される。
【0017】
針棒12は、水平アーム11Aの内部に設けられているパルスモータのようなアクチュエータ4(
図3参照)が発生する動力に基づいてZ軸方向に往復移動する。針棒12に保持されているミシン針3は、Z軸方向に往復移動する。ベッド11Bの内部に釜が設けられる。ボビンケースに入れられたボビンが釜に収容される。釜は、針棒12のZ軸方向の往復移動と同期して回転する。ミシン針3に掛けられている上糸と釜から供給される下糸とによって、縫製対象物Sに縫い目が形成される。
【0018】
針板13は、保持部材40を支持する。針板13は、保持部材40よりも下方に配置される。針板13は、ベッド11Bに支持される。
【0019】
保持部材40は、縫製対象物Sを保持する。保持部材40は、ミシン針3の直下の位置を含むXY平面内において縫製対象物Sを保持して移動可能である。保持部材40は、支持部材14を介して水平アーム11Aに支持される。
【0020】
保持部材40は、押え部材41と下板42とを有する。押え部材41は、枠状の部材であり、Z軸方向に移動可能である。下板42は、押え部材41の下方に配置される。保持部材40は、押え部材41と下板42とで縫製対象物Sを挟むことによって縫製対象物Sを保持する。
【0021】
操作装置20は、作業者に操作される。操作装置20が操作されることにより、ミシン1が作動する。操作装置20は、操作パネル21と操作ペダル22とを含む。
【0022】
操作パネル21は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイを含む表示装置と、作業者に操作されることにより入力データを生成する入力装置とを有する。入力装置は、表示装置の表示画面に設けられているタッチセンサを含む。すなわち、操作パネル21は、入力装置の機能を有するタッチパネルを含む。操作パネル21は、テーブル2の上面に搭載される。操作ペダル22は、テーブル2の下方に配置される。作業者は、足で操作ペダル22を操作する。作業者により操作パネル21及び操作ペダル22の少なくとも一方が操作されることにより、ミシン1は作動する。
【0023】
[モータ]
図2は、本実施形態に係るミシン1の一部を示す斜視図である。
図2に示すように、ミシン1は、縫製対象物Sを保持する保持部材40と、保持部材40を支持する支持部材14と、支持部材14を支持するX軸ガイド部材15と、X軸ガイド部材15を支持するY軸ガイド部材17と、保持部材40を移動させる動力を発生するモータ50と、保持部材40の加速度を検出する加速度センサ6とを備える。
【0024】
保持部材40は、押え部材41と下板42とを有する。下板42は、縫製対象物Sを下方から支持する。押え部材41は、縫製対象物Sを下板42との間で挟んで保持する。押え部材41は、ミシンフレーム11のヘッド11Dの内部に配置されているアクチュエータ5(
図3参照)の作動によりZ軸方向に移動する。
【0025】
押え部材41が+Z方向に移動することにより、押え部材41と下板42とが離れる。これにより、作業者は、押え部材41と下板42との間に縫製対象物Sを配置することができる。押え部材41と下板42との間に縫製対象物Sが配置された状態で押え部材41が−Z方向に移動することにより、縫製対象物Sは押え部材41と下板42とで挟まれる。これにより、縫製対象物Sは保持部材40に保持される。また、押え部材41が+Z方向に移動することにより、保持部材40による縫製対象物Sの保持が解除される。
【0026】
支持部材14は、X軸ガイド部材15に支持される。X軸ガイド部材15は、ミシンフレーム11の内部に配置される。支持部材14は、X軸スライド機構16を介してX軸ガイド部材15に支持される。支持部材14は、X軸ガイド部材15にガイドされながらX軸方向に移動可能である。
【0027】
X軸ガイド部材15は、Y軸ガイド部材17に支持される。Y軸ガイド部材17は、ミシンフレーム11の内部に配置される。X軸ガイド部材15は、Y軸スライド機構18を介してY軸ガイド部材17に支持される。X軸ガイド部材15は、Y軸ガイド部材17にガイドされながらY軸方向に移動可能である。
【0028】
支持部材14がX軸ガイド部材15にガイドされながらX軸方向に移動すると、支持部材14に支持されている保持部材40は、支持部材14と一緒にX軸方向に移動する。X軸ガイド部材15がY軸ガイド部材17にガイドされながらY軸方向に移動すると、支持部材14を介してX軸ガイド部材15に支持されている保持部材40は、X軸ガイド部材15と一緒にY軸方向に移動する。保持部材40は、ミシン針3の直下の位置を含むXY平面内において移動可能である。
【0029】
モータ50は、保持部材40をミシン針3の直下の位置を含むXY平面内において移動させる。モータ50は、保持部材40をX軸方向に移動させる動力を発生するX軸モータ50Xと、保持部材40をY軸方向に移動させる動力を発生するY軸モータ50Yとを含む。X軸モータ50X及びY軸モータ50Yのそれぞれは、ステッピングモータである。X軸モータ50X及びY軸モータ50Yのそれぞれは、ミシンフレーム11の内部に配置される。
【0030】
X軸モータ50Xは、ギヤ機構61を介してシャフト62に連結される。シャフト62は、Y軸方向に長い。シャフト62は、Y軸と平行な回転軸を中心に回転可能である。X軸モータ50Xで発生した動力は、ギヤ機構61を介してシャフト62に伝達される。シャフト62は、X軸モータ50Xが発生した動力に基づいて回転する。シャフト62が回転すると、支持部材14に連結されているタイミングベルト63がX軸方向に移動する。タイミングベルト63がX軸方向に移動すると、支持部材14及び支持部材14に支持されている保持部材40がX軸方向に移動する。
【0031】
Y軸モータ50Yは、ギヤ機構65を介してシャフト66に連結される。シャフト66は、X軸方向に長い。シャフト62は、X軸と平行な回転軸を中心に回転可能である。Y軸モータ50Yで発生した動力は、ギヤ機構65を介してシャフト66に伝達される。シャフト66は、Y軸モータ50Yが発生した動力に基づいて回転する。シャフト66が回転すると、X軸ガイド部材15に連結されているタイミングベルト67がY軸方向に移動する。タイミングベルト67がY軸方向に移動すると、X軸ガイド部材15及び支持部材14を介してX軸ガイド部材15に支持されている保持部材40がY軸方向に移動する。
【0032】
このように、保持部材40は、X軸モータ50X及びY軸モータ50Yを含むモータ50が発生する動力に基づいて、ミシン針3の直下の位置を含むXY平面内を移動可能である。
【0033】
モータ50は、モータ50の駆動量を検出する駆動量センサ52を有する。駆動量センサ52は、X軸モータ50Xの駆動量を検出するX軸駆動量センサ52Xと、Y軸モータ50Yの駆動量を検出するY軸駆動量センサ52Yとを含む。X軸駆動量センサ52X及びY軸駆動量センサ52Yのそれぞれは、エンコーダを含む。X軸駆動量センサ52Xは、X軸モータ50Xの出力シャフトの回転量を検出する。Y軸駆動量センサ52Yは、Y軸モータ50Yの出力シャフトの回転量を検出する。
【0034】
加速度センサ6は、保持部材40に設けられる。加速度センサ6は、押え部材41に設けられる。なお、加速度センサ6は、下板42に設けられてもよい。加速度センサ6は、XY平面内において移動する保持部材40の加速度を検出する。加速度センサ6は、X軸方向における保持部材40の加速度を検出するX軸加速度センサ6Xと、Y軸方向における保持部材40の加速度を検出するY軸加速度センサ6Yとを含む。
【0035】
以下の説明において、保持部材40に設けられる加速度センサ6の検出データを適宜、検出加速度、と称する。
【0036】
[モータ制御装置]
図3は、本実施形態に係るモータ制御装置30の一例を示す機能ブロック図である。モータ制御装置30は、モータ50を制御する指令信号を出力する。
【0037】
モータ制御装置30は、コンピュータシステムを含む。モータ制御装置30は、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む記憶装置30Aと、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む演算処理装置30Bと、入出力回路を含む入出力インターフェース30Cとを有する。
【0038】
モータ制御装置30には、ミシン針3をZ軸方向に往復移動させるアクチュエータ4と、保持部材40の押え部材41をZ軸方向に移動させるアクチュエータ5と、XY平面内において保持部材40を移動させるモータ50と、モータ50の駆動量を検出する駆動量センサ52と、XY平面内における保持部材40の加速度を検出する加速度センサ6と、操作装置20とが接続される。
【0039】
モータ50は、保持部材40をX軸方向に移動させるX軸モータ50Xと、保持部材40をY軸方向に移動させるY軸モータ50Yとを含む。
【0040】
駆動量センサ52は、X軸モータ50Xの出力シャフトの回転量を検出するX軸駆動量センサ52Xと、Y軸モータ50Yの出力シャフトの回転量を検出するY軸駆動量センサ52Yとを含む。駆動量センサ52の検出データは、モータ制御装置30に出力される。モータ制御装置30は、駆動量センサ52の検出データに基づいて、保持部材40が目標位置に移動するようにモータ50をフィードバック制御する。
【0041】
記憶装置30Aは、縫製データ記憶部31と、プログラム記憶部32と、規定移動条件記憶部33と、目標加速度記憶部34とを有する。
【0042】
縫製データ記憶部31は、縫製データを記憶する。縫製データは、縫製対象物Sに形成される縫い目の目標形状を示す縫製パターンと、縫製対象物Sに縫製パターンで縫い目を形成するときの保持部材40の目標移動条件を示す縫製移動条件とを含む。
【0043】
プログラム記憶部32は、少なくともモータ50を制御するためのコンピュータプログラムを記憶する。縫製データ記憶部31に記憶されている縫製データがプログラム記憶部32に記憶されているコンピュータプログラムに入力される。コンピュータプログラムは、演算処理装置30Bに読み込まれる。演算処理装置30Bは、プログラム記憶部32に記憶されているコンピュータプログラムに従ってモータ50を制御する。
【0044】
規定移動条件記憶部33は、後述するチューニング処理における保持部材40の移動条件を示す規定移動条件を記憶する。規定移動条件は、XY平面内における保持部材40の速度、加速度、移動距離、移動方向、及び移動軌跡を含む。規定移動条件は予め定められ、規定移動条件記憶部33に記憶される。チューニング処理において、保持部材40は、規定移動条件で移動される。規定移動条件は、保持部材40をXY平面内において往復移動させることを含む。保持部材40は、チューニング処理において、例えばX軸方向に規定の速度及び加速度で規定の移動距離だけ10回往復移動される。また、保持部材40は、チューニング処理において、例えばY軸方向に規定の速度及び加速度で規定の移動距離だけ10回往復移動される。
【0045】
目標加速度記憶部34は、規定移動条件で保持部材40が移動するときの保持部材40の目標加速度を記憶する。保持部材40の目標加速度は、規定移動条件で基準部材40Rが移動したときの基準部材40Rの検出加速度である。基準部材40Rとは、ミシン1の出荷時においてミシン1に装着されている基準(標準)の保持部材40をいう。
【0046】
規定移動条件で基準部材40Rを移動させる実験が予め実施される。基準部材40Rに加速度センサ6が設けられる。加速度センサ6は、実験において規定移動条件で移動する基準部材40Rの加速度を検出する。目標加速度は、実験において加速度センサ6によって検出された基準部材40Rの検出加速度であり、目標加速度記憶部34に記憶される。
【0047】
演算処理装置30Bは、検出加速度取得部35と、モータ制御部36と、制御パラメータ調整部37とを有する。
【0048】
検出加速度取得部35は、保持部材40に設けられる加速度センサ6の検出データを示す検出加速度を加速度センサ6から取得する。
【0049】
モータ制御部36は、モータ50を制御する指令信号を出力する。チューニング処理において、モータ制御部36は、規定移動条件記憶部33に記憶されている規定移動条件で保持部材40が移動するようにモータ50を制御する。縫製処理において、モータ制御部36は、縫製データ記憶部31に記憶されている縫製移動条件で保持部材40が移動するようにモータ50を制御する。
【0050】
制御パラメータ調整部37は、規定移動条件で保持部材40が移動したときの保持部材40の検出加速度に基づいて、モータ50の制御パラメータを調整する。規定移動条件で保持部材40が移動したときの保持部材40の検出加速度は、検出加速度取得部35に取得される。制御パラメータ調整部37は、検出加速度取得部35に取得された保持部材40の検出加速度に基づいて、モータ50の制御パラメータを調整する。制御パラメータ調整部37は、検出加速度取得部35に取得された保持部材40の検出加速度と目標加速度記憶部34に記憶されている保持部材40の目標加速度との差が小さくなるようにモータ50の制御パラメータを調整する。
【0051】
[モータ制御部]
図4は、本実施形態に係るモータ制御部36の一例を示す制御ブロック図である。
図4に示すように、モータ制御部36は、偏差演算器36Aと、微分器36Bと、フィードフォワード速度演算器36Cと、微分器36Dと、フィードフォワード加速度演算器36Eと、偏差演算器36Fと、偏差演算器36Gと、積分器36Hと、指令信号生成器36Iと、フィルタ36Jと、外乱オブザーバ36Kと、反力オブザーバ36Lと、減算器e1と、演算器e2と、演算器e3と、加算器e4と、減算器e5とを有する。
【0052】
以下の説明において、回転方向におけるモータ50の出力シャフトの位置を適宜、モータ50の位置、と称する。回転方向におけるモータ50の出力シャフトの速度を適宜、モータ50の速度、と称する。回転方向におけるモータ50の出力シャフトの加速度を適宜、モータ50の加速度、と称する。モータ50の位置は、モータ50の目標位置及び検出位置を含む。モータ50の速度は、モータ50の目標速度及び検出速度を含む。モータ50の加速度は、モータ50の目標加速度及び検出加速度を含む。なお、モータ50の位置、速度、及び加速度は、回転方向におけるモータ50の回転子の位置、速度、及び加速度でもよい。
【0053】
モータ50の目標位置、目標速度、及び目標加速度は、記憶装置30Aの縫製データ記憶部31に記憶されている保持部材40の縫製移動条件から算出される。演算処理装置30Bは、記憶装置30Aに記憶されている保持部材40の縫製移動条件に基づいて、保持部材40を縫製移動条件で移動させるためのモータ50の目標位置、目標速度、及び目標加速度を算出することができる。
【0054】
モータ50の検出位置、検出速度、及び検出加速度は、駆動量センサ52の検出データから算出される。モータ50の検出位置は、駆動量センサ52の検出データから算出されるモータ50の実際の位置である。モータ50の検出速度は、駆動量センサ52の検出データから算出されるモータ50の実際の速度である。モータ50の検出加速度は、駆動量センサ52の検出データから算出されるモータ50の実際の加速度である。演算処理装置30Bは、駆動量センサ52の検出データに基づいて、モータ50の検出位置、検出速度、及び検出加速度を算出することができる。
【0055】
駆動量センサ52は、XY平面内における保持部材40の位置を検出する位置センサとして機能する。モータ50の駆動量と保持部材40の移動量とは1対1で対応する。モータ制御部36は、駆動量センサ52の検出データに基づいて、XY平面内における保持部材40の位置を算出することができる。
【0056】
X軸駆動量センサ52Xは、X軸モータ50Xの回転量を検出することにより、ミシン座標系における原点からの保持部材40のX軸方向の移動量を検出可能である。Y軸駆動量センサ52Yは、Y軸モータ50Yの回転量を検出することにより、ミシン座標系における原点からの保持部材40のY軸方向の移動量を検出可能である。XY平面内における原点からの保持部材40の移動量が検出されることにより、モータ制御部36は、検出された保持部材40の移動量に基づいて、XY平面内における保持部材40の位置を算出することができる。
【0057】
モータ50の目標位置がモータ制御部36に入力される。また、モータ50の検出位置及び検出速度がモータ制御部36に入力される。
【0058】
モータ50の目標位置と検出位置とが減算器e1に入力される。減算器e1は、モータ50の目標位置から検出位置を減算し、減算した値を偏差演算器36Aに出力する。
【0059】
偏差演算器36Aは、減算器e1の出力値に位置ゲインK
pを付与し、付与した値を演算器e2に出力する。
【0060】
また、モータ50の目標位置が微分器36Bに入力される。微分器36Bは、モータ50の目標位置を微分し、微分した値をフィードフォワード速度演算器36C及び微分器36Dに出力する。
【0061】
フィードフォワード速度演算器36Cは、微分器36Bの出力値に速度ゲインK
vFFを付与し、付与した値を演算器e2に出力する。
【0062】
微分器36Dは、微分器36Bの出力値を微分し、微分した値をフィードフォワード加速度演算器36Eに出力する。
【0063】
フィードフォワード加速度演算器36Eは、微分器36Dの出力値に加速度ゲインK
aFFを付与し、付与した値を演算器e3に出力する。
【0064】
モータ50の検出速度が演算器e2に入力される。演算器e2は、偏差演算器36Aの出力値とフィードフォワード速度演算器36Cの出力値とを加算し、加算した値からモータ50の検出速度を減算し、減算した値を偏差演算器36F及び偏差演算器36Gに出力する。
【0065】
偏差演算器36Fは、演算器e2の出力値に速度ゲインK
vを付与し、付与した値を演算器e3に出力する。
【0066】
偏差演算器36Gは、演算器e2の出力値に速度ゲインK
vを付与し、付与した値を積分器36Hに出力する。
【0067】
演算器e3は、フィードフォワード加速度演算器36Eの出力値と偏差演算器36Fの出力値とを加算し、加算した値から積分器36Hの出力値を減算し、減算した値を指令信号生成器36Iに出力する。
【0068】
指令信号生成器36Iは、演算器e3の出力値に基づいてモータ50を制御するための指令信号を生成し、生成した指令信号をフィルタ36Jに出力する。指令信号は、モータ50に供給する指令電流を含む。
【0069】
フィルタ36Jは、ノッチフィルタを含み、指令信号生成器36Iで生成された指令信号のうち特定周波数の指令信号を加算器e4に出力する。
【0070】
加算器e4の出力値が外乱オブザーバ36K及び反力オブザーバ36Lに入力される。また、モータ50の検出速度が外乱オブザーバ36K及び反力オブザーバ36Lに入力される。
【0071】
外乱オブザーバ36Kは、加算器e4の出力値とモータ50の検出速度とに基づいて、モータ50の出力シャフト又は回転子に作用する外乱トルクを推定し、推定した値を減算器e5に出力する。
【0072】
反力オブザーバ36Lは、加算器e4の出力値とモータ50の検出速度とに基づいて、モータ50の出力シャフト又は回転子に作用する回転方向の反力を推定し、推定した値を減算器e5に出力する。反力オブザーバ36Lは、加算器d4の出力値及びモータ50の検出速度にフィードバックゲインK
rを付与して、反力を推定する。
【0073】
減算器e5は、外乱オブザーバ36Kの出力値から反力オブザーバ36Lの出力値を減算し、減算した値を加算器e4にフィードバックする。
【0074】
加算器e4は、フィルタ36Jの出力値と減算器e5の出力値とを加算し、加算した値を指令信号としてモータ50に出力する。モータ50は、指令信号に基づいて作動する。
【0075】
[制御パラメータの調整]
図5は、本実施形態に係る加速度センサ6の検出データを示す検出加速度の一例を示す図である。
図5は、保持部材40がX軸方向に移動したときのX軸加速度センサ6Xの検出データを示す。
【0076】
保持部材40の移動を開始するとき、モータ制御部36は、X軸モータ50Xの駆動を開始させる開始指令信号をX軸モータ50Xに出力する。X軸モータ50Xは、開始指令信号に基づいて駆動を開始する。X軸モータ50Xの駆動が開始すると、保持部材40は、X軸方向への移動を開始する。
【0077】
また、保持部材40の移動を停止するとき、モータ制御部36は、X軸モータ50Xの駆動を停止させる停止指令信号をX軸モータ50Xに出力する。X軸モータ50Xは、停止指令信号に基づいて駆動を停止する。X軸モータ50Xの駆動が停止すると、保持部材40は、X軸方向への移動を停止する。
【0078】
図5は、開始時点tsにおいてモータ制御部36からX軸モータ50Xに開始指令信号が出力され、停止時点teにおいてモータ制御部36からX軸モータ50Xに停止指令信号が出力されたときのX軸加速度センサ6Xの検出データの一例を示す。
図5に示すように、保持部材40は、僅かに振動しながらX軸方向に移動する。X軸加速度センサ6Xは、保持部材40の振動を検出する。
【0079】
図4を参照して説明したように、モータ制御部36は、モータ50に設けられている駆動量センサ52の検出データに基づいて、モータ50を制御するための指令信号を出力する。通常、モータ50の制御パラメータは、ミシン1の出荷時においてミシン1に装着されている基準部材40Rに合わせて最適に調整される。ミシン1の出荷時において、モータ50の制御パラメータは、基準部材40Rが高い位置決め精度で移動するように調整される。
【0080】
そのため、ミシン1の利用時において保持部材40が交換され、基準部材40Rとは異なる重量又は形状の保持部材40がミシン1に装着された場合、その保持部材40の位置決め精度が低下する可能性がある。
【0081】
ミシン1においては、縫製対象物Sを保持する保持部材40の移動が停止しているときにミシン針3が下降して縫製対象物Sを貫通し、ミシン針3が上昇して縫製対象物Sから退去したときに保持部材40が移動する。
【0082】
モータ50の制御パラメータが保持部材40に合わせて調整されていない場合、保持部材40の位置決め精度が低下し、縫製対象物Sを良好に縫うことが困難となる可能性がある。モータ50の制御パラメータが保持部材40に合わせて調整されていない場合、例えば開始指令信号に対する保持部材40の応答性が低下したり、停止指令信号に対する保持部材40の静定性が低下したりする可能性がある。保持部材40の応答性とは、開始時点tsにおいてモータ制御部36からX軸モータ50Xに開始指令信号が出力されとき、保持部材40が直ちに移動を開始できる性能をいう。保持部材40の静定性とは、停止時点teにおいてモータ制御部36からX軸モータ50Xに停止指令信号が出力されたとき、保持部材40が直ちに移動を停止できる性能をいう。保持部材40の応答性が低かったり静定性が低かったりすると、例えばミシン針3が縫製対象物Sの目標位置を貫通することができなかったり、ミシン針3が縫製対象物Sを貫通しているにもかかわらず縫製対象物Sが動いてしまったりする可能性がある。その結果、縫製対象物Sを良好に縫うことが困難となる可能性がある。
【0083】
本実施形態においては、例えば保持部材40が交換されたとき、モータ50により保持部材40が規定移動条件で移動される。制御パラメータ調整部37は、規定移動条件で保持部材40が移動したときの保持部材40の検出加速度と、規定移動条件で保持部材40が移動するときの保持部材40の目標加速度との差が小さくなるように、X軸モータ50Xを制御する制御パラメータを調整する。
【0084】
制御パラメータ調整部37は、モータ制御部36がX軸モータ50Xの駆動を開始させる開始指令信号を出力した開始時点tsと開始時点tsから第1規定時間経過の第1時点ttとの間の応答期間T1における保持部材40の検出加速度と目標加速度との差が小さくなるように、制御パラメータを調整する。
【0085】
また、制御パラメータ調整部37は、モータ制御部36がX軸モータ50Xの駆動を停止させる停止指令信号を出力した停止時点teと停止時点teから第2規定時間経過の第2時点tfとの間の静定期間T2における保持部材40の検出加速度と目標加速度との差が小さくなるように、制御パラメータを調整する。
【0086】
モータ50の制御パラメータとは、モータ50を制御するためにモータ制御部36に設定されるパラメータをいう。モータ50の制御パラメータの一例としてモータ制御部36に設定されるゲインKが挙げられる。モータ制御部36のゲインKは、偏差演算器36Aに設定される位置ゲインK
p、フィードフォワード速度演算器36Cに設定される速度ゲインK
vFF、フィードフォワード加速度演算器36Eに設定される加速度ゲインK
aFF、偏差演算器36Fに設定される速度ゲインK
v、偏差演算器36Gに設定される速度ゲインK
v、及び反力オブザーバ36LのフィードバックゲインK
rの少なくとも一つを含む。
【0087】
モータ制御部36に設定される複数の制御パラメータのうち、応答期間T1における保持部材40の検出加速度の調整に寄与する制御パラメータとして、位置ゲインK
p及び速度ゲインK
vFFの少なくとも一方が挙げられる。
【0088】
モータ制御部36に設定される複数の制御パラメータのうち、静定期間T2における保持部材40の検出加速度の調整に寄与する制御パラメータとして、フィードバックゲインK
rが挙げられる。
【0089】
制御パラメータ調整部37は、応答期間T1における保持部材40の検出加速度と保持部材40の目標加速度との差が小さくなるように、保持部材40の検出加速度に基づいて、位置ゲインK
p及び速度ゲインK
vFFの少なくとも一方を調整する。
【0090】
制御パラメータ調整部37は、静定期間T2における保持部材40の検出加速度と保持部材40の目標加速度との差が小さくなるように、保持部材40の検出加速度に基づいて、フィードバックゲインK
rを調整する。
【0091】
以上、保持部材40がX軸方向に移動したときのX軸加速度センサ6Xの検出データ及びX軸モータ50Xの制御パラメータの調整について説明した。保持部材40がY軸方向に移動したときのY軸加速度センサ6Yの検出データ及びY軸モータ50Yの制御パラメータの調整も同様である。
【0092】
[縫製方法]
図6は、本実施形態に係る縫製方法の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、ミシン1に装着される保持部材40が交換される(ステップS10)。保持部材40が交換されると、モータ50の制御パラメータを調整するチューニング処理(ステップS20)が実施される。チューニング処理が実施された後、縫製対象物Sを縫う縫製処理(ステップS30)が実施される。
【0093】
[チューニング処理]
図7は、本実施形態に係るモータ制御方法の一例を示すフローチャートである。
図7は、
図6に示したチューニング処理(ステップS20)の具体的な手順を示すフローチャートである。
【0094】
ミシン1の作業者は、保持部材40を交換した後、操作パネル21を操作する(ステップS21)。操作パネル21が操作れることにより生成された入力信号は、モータ制御装置30に送信される。モータ制御装置30は、入力信号に基づいて、モータ50の制御パラメータを調整するためのチューニング処理を開始する。
【0095】
モータ制御部36は、XY平面内において保持部材40を規定移動条件で移動させる指令信号を出力する(ステップS22)。
【0096】
規定移動条件は、ミシン針3の直下の位置を含むXY平面内において保持部材40を往復させることを含む。モータ制御部36は、保持部材40をX軸方向に規定の速度及び加速度で規定の移動距離だけ10回往復移動させるために、X軸モータ50Xに指令信号を出力する。
【0097】
保持部材40がX軸方向に往復移動したときの保持部材40の検出加速度がX軸加速度センサ6Xによって検出される。検出加速度取得部35は、X軸加速度センサ6Xから保持部材40のX軸方向の検出加速度を取得する(ステップS23)。
【0098】
制御パラメータ調整部37は、保持部材40の1往復毎に制御パラメータを変更する。
【0099】
制御パラメータ調整部37は、第1回目から第5回目の保持部材40の往復移動において、1往復毎に、応答期間T1における保持部材40の検出加速度の調整に寄与する速度ゲインK
vFFを変更する。なお、制御パラメータ調整部37は、第1回目から第5回目の保持部材40の往復移動において、1往復毎に、応答期間T1における保持部材40の検出加速度の調整に寄与する位置ゲインK
pを変更してもよい。
【0100】
また、制御パラメータ調整部37は、第6回目から第10回目の保持部材40の往復移動において、1往復毎に、静定期間T2における保持部材40の検出加速度の調整に寄与するフィードバックゲインK
rを変更する。
【0101】
図8及び
図9のそれぞれは、本実施形態に係るモータ制御方法の一例を説明するための図である。
図8は、応答期間T1における保持部材40の検出加速度の調整に寄与する速度ゲインK
vFFを変更する例を説明するための図である。
図9は、静定期間T2における保持部材40の検出加速度の調整に寄与するフィードバックゲインK
rを変更する例を説明するための図である。
【0102】
図8に示すように、制御パラメータ調整部37は、第1回目から第5回目の保持部材40の往復移動において、1往復毎に、速度ゲインK
vFFを変更する。
図8は、第1回目の往復移動において速度ゲインK
vFFが数値10に設定され、第2回目の往復移動において速度ゲインK
vFFが数値20に設定され、第3回目の往復移動において速度ゲインK
vFFが数値30に設定され、第4回目の往復移動において速度ゲインK
vFFが数値40に設定され、第5回目の往復移動において速度ゲインK
vFFが数値50に設定される例を示す。なお、
図8に示す速度ゲインK
vFFの数値は一例であり、
図8に示す数値に限定されない。
【0103】
検出加速度取得部35は、第1回目から第5回目の保持部材40の往復移動毎に、応答期間T1における検出加速度の最大値とその検出加速度の最大値が検出されたときの時点とを取得する。
図8に示す例では、第1回目の往復移動の応答期間T1の時点t1において検出加速度の最大値A1が検出され、第2回目の往復移動の応答期間T1の時点t2において検出加速度の最大値A2が検出され、第3回目の往復移動の応答期間T1の時点t3において検出加速度の最大値A3が検出され、第4回目の往復移動の応答期間T1の時点t4において検出加速度の最大値A4が検出され、第5回目の往復移動の応答期間T1の時点t5において検出加速度の最大値A5が検出される。
【0104】
また、
図9に示すように、制御パラメータ調整部37は、第6回目から第10回目の保持部材40の往復移動において、1往復毎に、フィードバックゲインK
rを変更する。
図9は、第6回目の往復移動においてフィードバックゲインK
rが数値10に設定され、第7回目の往復移動においてフィードバックゲインK
rが数値20に設定され、第8回目の往復移動においてフィードバックゲインK
rが数値30に設定され、第9回目の往復移動においてフィードバックゲインK
rが数値40に設定され、第10回目の往復移動においてフィードバックゲインK
rが数値50に設定される例を示す。なお、
図9に示すフィードバックゲインK
rの数値は一例であり、
図9に示す数値に限定されない。
【0105】
検出加速度取得部35は、第6回目から第10回目の保持部材40の往復移動毎に、静定期間T2における正方向の加速度と負方向の加速度とを取得する。
図9に示す例では、第6回目の往復移動の静定期間T2において、正方向の検出加速度Ap6及び負方向の検出加速度Am6が検出され、7回目の往復移動の静定期間T2において、正方向の検出加速度Ap7及び負方向の検出加速度Am7が検出され、8回目の往復移動の静定期間T2において、正方向の検出加速度Ap8及び負方向の検出加速度Am8が検出され、9回目の往復移動の静定期間T2において、正方向の検出加速度Ap9及び負方向の検出加速度Am9が検出され、10回目の往復移動の静定期間T2において、正方向の検出加速度Ap10及び負方向の検出加速度Am10が検出される。
【0106】
制御パラメータ調整部37は、第1回目から第5回目のそれぞれの往復移動の応答期間T1において取得された保持部材40の検出加速度の最大値に基づいて、応答期間T1において保持部材40の検出加速度と保持部材40の目標加速度との差が最も小さくなる特定の制御パラメータを決定する。
【0107】
保持部材40の目標加速度は、規定移動条件で基準部材40Rが移動したときの基準部材40Rの検出加速度であり、目標加速度記憶部34に記憶されている。基準部材40Rが規定の速度及び加速度で規定の移動距離だけX軸方向に往復移動したときの応答期間T1の検出加速度の最大値Arとその検出加速度の最大値Arが検出されたときの時点trとが目標加速度記憶部34に記憶されている。
【0108】
例えば、最大値A1,A2,A3,A4,A5のうち、第3回目の往復移動の応答期間T1において取得された保持部材40の検出加速度の最大値A3と目標加速度の最大値Arとの差が最も小さい場合、制御パラメータ調整部37は、縫製処理において使用する速度ゲインK
vFFを数値30に決定する。
【0109】
次に、制御パラメータ調整部37は、第6回目から第10回目のそれぞれの往復移動の静定期間T2において取得された保持部材40の正方向の検出加速度及び負方向の検出加速度に基づいて、静定期間T2において保持部材40の検出加速度と保持部材40の目標加速度との差が最も小さくなる特定の制御パラメータを決定する。
【0110】
基準部材40Rが規定の速度及び加速度で規定の移動距離だけX軸方向に往復移動したときの静定期間T2の正方向の目標加速度Aprと負方向の目標加速度Amrとが目標加速度記憶部34に記憶されている。
【0111】
例えば、正方向の検出加速度Ap6,Ap7,Ap8,Ap9,Ap10のうち、第7回目の往復移動の静定期間T2において取得された保持部材40の正方向の検出加速度Ap7と正方向の目標加速度Aprとの差が最も小さく、負方向の検出加速度Am6,Am7,Am8,Am9,Am10のうち、第7回目の往復移動の静定期間T2において取得された保持部材40の負方向の検出加速度Am7と負方向の目標加速度Amrとの差が最も小さい場合、制御パラメータ調整部37は、縫製処理において使用するフィードバックゲインK
rを数値20に決定する。
【0112】
制御パラメータ調整部37は、検出加速度と目標加速度との差が小さくなるように決定された速度ゲインK
vFF(数値30)及びフィードバックゲインK
r(数値20)に基づいて、縫製処理において使用する速度ゲインK
vFF及びフィードバックゲインK
rを調整する(ステップS24)。すなわち、制御パラメータ調整部37は、速度ゲインK
vFFを数値30に更新し、フィードバックゲインK
rを数値20に更新する。
【0113】
以上、保持部材40をX軸方向に往復移動して、X軸加速度センサ6Xの検出データに基づいてX軸モータ50Xの制御パラメータを調整する方法について説明した。Y軸モータ50Yの制御パラメータを調整する方法は、X軸モータ50Xの制御パラメータを調整する方法と同様である。すなわち、保持部材40がY軸方向に往復移動され、保持部材40がY軸方向に往復移動したときの検出加速度がY軸加速度センサ6Yにより検出され、
Y軸方向に往復移動する保持部材40の検出加速度と保持部材40の目標加速度との差が小さくなるように、Y軸モータ50Yの制御パラメータ(速度ゲインK
vFF、フィードバックゲインK
r)が調整される。
【0114】
縫製処理(ステップS30)においては、モータ制御部36は、調整された制御パラメータ(速度ゲインK
vFF、フィードバックゲインK
r)と、縫製データ記憶部31に記憶されている縫製パターン又は縫製移動条件とに基づいて、モータ50を制御する。これにより、保持部材40に保持されている縫製対象物Sがミシン針3で縫われる。
【0115】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、ミシン1に装着される保持部材40が交換されても、交換後の保持部材40に対してチューニング処理(ステップS20)が実施されることにより、縫製処理(ステップS30)の実施前に、保持部材40の位置決め精度の低下を抑制できる最適な制御パラメータが決定される。縫製処理(ステップS30)においては、チューニング処理(ステップS20)において決定された制御パラメータ及び縫製移動条件に基づいてモータ50が制御され、保持部材40が移動して縫製が実施されることにより、保持部材40の位置決め精度の低下を抑制しつつ、縫製対象物Sを高精度に縫製することができる。
【0116】
ミシン1の出荷時においては、基準部材40Rがミシン1に装着され、モータ制御装置30の制御パラメータは、基準部材40Rの位置決め精度が維持されるように、基準部材40Rに合わせて調整される。そのため、ミシン1の利用時に基準部材40Rとは異なる重量又は形状の保持部材40に交換された場合、モータ50に設けられている駆動量センサ52に基づいてモータ50を制御する指令信号をモータ50に出力しても、保持部材40は基準部材40Rとは異なる挙動を示すため、保持部材40の位置決め精度が低下する可能性がある。
【0117】
本実施形態においては、保持部材40に加速度センサ6が設けられる。チューニング処理において、保持部材40の検出加速度と保持部材40の目標加速度との差が小さくなるように制御パラメータが決定される。縫製処理において、保持部材40の検出加速度と保持部材40の目標加速度との差が小さくなるように調整された制御パラメータに基づいて、モータ50が制御される。これにより、保持部材40が交換されても、駆動量センサ52に基づいてモータ50を制御する指令信号がモータ制御部36からモータ50に出力されることにより、保持部材40の位置決め精度の低下を抑制することができる。したがって、縫製対象物Sは良好に縫製される。
【0118】
また、本実施形態においては、縫製処理(ステップS30)の前にチューニング処理(ステップS20)が実施される。縫製しながら制御パラメータを調整する場合に比べて、最適な制御パラメータの決定を容易且つ高精度に実施することができる。
【0119】
また、本実施形態においては、応答期間T1及び静定期間T2が設定され、応答期間T1及び静定期間T2のそれぞれにおける保持部材40の検出加速度の調整に寄与する制御パラメータが選択され、その選択された制御パラメータが調整される。応答期間T1及び静定期間T2のそれぞれにおける保持部材40の検出加速度の調整に寄与する制御パラメータが調整されることにより、縫製対象物Sは良好に縫製される。
【0120】
[他の実施形態]
なお、上述の実施形態において、規定移動条件は保持部材40をXY平面内において往復させることを含み、チューニング処理においては、保持部材40をX軸方向及びY軸方向のそれぞれに往復移動させて検出加速度を取得することとした。チューニング処理における保持部材40の規定移動条件は任意に設定可能である。例えば、チューニング処理において、保持部材40はXY平面内において円を描くように移動されてもよい。
【0121】
なお、上述の実施形態においては、保持部材40の目標加速度が基準部材40Rの検出加速度であり、ミシン1の出荷時にミシン1に装着される基準部材40Rの振動特性とミシン1の利用時にミシン1に装着される保持部材40の振動特性とが一致するように制御パラメータが調整されることとした。保持部材40の目標加速度は、基準部材40Rの検出加速度でなくてもよい。複数の制御パラメータを順次変更しながら規定移動条件で移動する保持部材40の検出加速度を加速度センサ6で検出し、保持部材40の検出加速度を最も小さくすることができる制御パラメータを、縫製処理で使用する制御パラメータとして決定してもよい。