【解決手段】使用者が有酸素運動を行うことにより回転すると共に、クランク21の1回転当たりに複数のパルスを生成する。生成されたパルスを検出し、検出されたパルスの間隔に応じて変化する認知機能トレーニング用ゲーム画像を生成する。生成された認知機能トレーニング用ゲーム画像をディスプレイ31に表示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1、2のように使用者に問題を解答させることによって認知症を予防する方法は従来から知られているが、その効果については更なる向上が望まれている。また特許文献3の場合は使用者に歌唱させることによって認知症を改善する試みであるが、歌唱することに抵抗がある使用者もいるので使用者が限定されてしまう。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、様々な使用者の認知機能の維持効果及び認知機能の向上効果をより一層高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、使用者に、有酸素運動と認知機能トレーニング用ゲームとを組み合わせて行わせるようにした。
【0011】
第1の発明は、人の認知機能を維持または向上させるための認知機能維持向上システムにおいて、使用者が有酸素運動を行うことにより回転する回転部材と、該回転部材と共に回転して該回転部材の1回転当たり複数のパルスを生成するパルス生成部とを有する有酸素運動器具と、前記パルス生成部によって生成されたパルスを検出するパルス検出部と、前記パルス検出部で検出されたパルスの間隔に応じて変化する認知機能トレーニング用ゲーム画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部で生成された認知機能トレーニング用ゲーム画像を表示する表示部とを備えていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、使用者が有酸素運動器具で有酸素運動を行うことにより、回転部材が回転し、パルス生成部によってパルスが生成される。生成されたパルスは、パルス検出部で検出される。画像生成部は、パルス検出部で検出されたパルスの間隔に応じて変化する認知機能トレーニング用ゲーム画像を生成する。このとき、回転部材の1回転当たりに複数のパルスが生成されているので、使用者が回転部材をゆっくりにしか回転させることができなかったとしても、パルスの間隔が狭くなり、そのため所定時間内におけるパルスの間隔の変化が現れやすくなる。よって、速く有酸素運動を行うことができる使用者はもちろんのこと、ゆっくりとした有酸素運動を行う使用者であっても表示部に表示される認知機能トレーニング用ゲーム画像が変化するので、使用者は自身の有酸素運動と認知機能トレーニング用ゲーム画像との連動を意識することが可能になる。
【0013】
つまり、本発明では、有酸素運動による認知機能の維持及び向上効果を得ながら、その有酸素運動と認知機能トレーニング用ゲーム画像との連動を意識させながら認知機能トレーニング用ゲームを行わせることで、従来例のように問題を解くだけ、または歌唱するだけの場合に比べて、使用者の認知機能の維持効果及び認知機能の向上効果がより一層高まる。
【0014】
第2の発明は、前記認知機能トレーニング用ゲーム画像が前記表示部に表示されているときに使用者による入力操作を受け付ける操作受付部を更に備えていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、使用者が表示部に表示されている認知機能トレーニング用ゲーム画像を見ながら入力操作を行うことで使用者の認知機能が維持または向上する。
【0016】
第3の発明は、前記有酸素運動器具は、前記パルス生成部の回転速度を前記回転部材の回転速度よりも高める増速機構を備えていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、使用者が回転部材を回転させると、パルス生成部の回転速度が回転部材の回転速度よりも高まるので、回転部材が1回転する間に発生するパルスの数を多くすることができる。これにより、有酸素運動がゆっくり行われる場合であっても、所定時間内におけるパルスの間隔の変化がより一層現れやすくなるので、表示部に表示される認知機能トレーニング用ゲーム画像を確実に変化させることができる。
【0018】
第4の発明は、前記画像生成部は、前記パルス検出部で検出されたパルスの間隔の変化によって前記表示部の水平軸方向または垂直軸方向に位置を変える像を当該表示部に表示させるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、使用者が回転部材の回転速度を変えると、表示部に表示される像の位置が変わるので、回転部材の回転速度によって像の位置をコントロールして、例えば目標とする位置に持っていく等することができ、回転速度の調整による認知機能のトレーニング効果を得ることができる。
【0020】
第5の発明は、前記画像生成部は、前記パルス検出部で検出されたパルスの間隔の変化によって移動速度が変わったように見える像を当該表示部に表示させるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、使用者が回転部材の回転速度を変えると、表示部に表示される像の移動速度が変わったように見えるので、例えば目標とする速度に調節することで、回転速度の調整による認知機能のトレーニング効果を得ることができる。
【0022】
第6の発明は、前記操作受付部は、使用者の指による入力操作を受け付けるタッチセンサと、手または足で押すことによって信号の入力を行う信号入力装置との少なくとも一方で構成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、使用者の指の運動、手や足の運動も取り入れることで認知機能のトレーニング効果がより一層高まる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、有酸素運動と認知機能トレーニング用ゲームとを組み合わせて行わせることで、様々な使用者の認知機能の維持効果及び認知機能の向上効果をより一層高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る認知機能維持向上システム1の全体構成を示す図である。認知機能維持向上システム1は、有酸素運動器具2と、タブレット型端末3と、心拍測定器具4とを備えており、人の認知機能を維持または向上させるためのシステムであり、認知機能維持向上装置と呼ぶこともできる。認知機能維持向上システム1の使用者としては、例えば認知症の患者や、認知症と診断される前段階、即ち軽度認知障害の患者を挙げることができるが、これらに限らず、例えば認知症及び軽度認知障害ではない高齢者等であってもよい。認知症は正式な病名ではないが、例えばアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管型認知症等を挙げることができる。
【0028】
また、認知機能の維持とは、認知症と診断される前段階の認知機能の維持、ある程度低下している認知機能の維持を含んでおり、認知機能が低下するのを予防すれば認知症の発症を防止したり、発症を遅らせることもできる。また、認知機能の向上とは、低下した認知機能を向上させることである。本実施形態に係る認知機能維持向上システム1は、認知機能の維持だけでなく、認知機能の向上を図ることもできる。
【0029】
(有酸素運動器具2の構成)
有酸素運動器具2は、使用者が有酸素運動を行うための器具である。有酸素運動は、長時間継続することができる程度の軽度または中程度の負荷をかける運動であり、人によって異なるが、最大心拍数の70%〜60%よりも低い心拍数を維持しながら行う運動である。また20分以上、無理なく継続することができる運動を有酸素運動と呼ぶこともできる。
【0030】
本実施形態に係る有酸素運動器具2は、いわゆる自転車を漕ぐ運動を行うことができるように構成されており、エアロバイク、フィットネスバイク等と呼ばれるものである。
図4に示すように、有酸素運動器具2は、本体部20と、クランク(回転部材)21と、パルス生成板(パルス生成部)22と、パルス検出器(パルス検出部)23とを備えている。本体部20は、例えば樹脂材等からなる筐体であり、床等に置いた状態で床面上を滑らないように構成されている。
【0031】
クランク21は、使用者が有酸素運動を行うことにより回転する部材である。クランク21の左右方向の中間部分は、本体部20に対して例えばボールベアリング(図示せず)等を介して水平軸周りに回転可能に支持されている。クランク21の左右両側は、本体部20の左右両側壁からそれぞれ外方へ突出している。クランク21の左端部及び右端部には、それぞれ使用者が足を載せるためのペダル21aが水平軸周りに回転可能に取り付けられている。尚、有酸素運動器具2の左右方向は、使用者が使用する姿勢をとったときに当該使用者の左右方向と対応している。また、使用者は、図示しない椅子等に座った状態で左右の足をペダル21aにそれぞれ置き、その状態でクランク21を回転させることによって有酸素運動を行うことができる。また、使用者は、手でペダル21aを持ってクランク21を回転させることによって有酸素運動を行うこともできる。
【0032】
パルス信号を得る手法は様々な方法を用いることができるが、以下に一例を示す。パルス生成板22は、クランク21と共に回転して該クランク21の1回転当たり複数のパルスを生成するための部材である。パルス生成板22は、クランク21の中間部分に固定されており、該クランク21の回転軸の径方向に延びる円形板で構成されている。パルス生成板22の一方の側面には、複数の白色領域22aと黒色領域22bとが回転方向に交互に設けられている。白色領域22aと黒色領域22bとの数により、クランク21の1回転当たりに生成されるパルス数を変えることができる。クランク21の1回転当たりに生成されるパルス数は、2以上であり、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。クランク21の1回転当たりに生成されるパルス数が多いほど、後述するゲーム画面の変化を細かくすることができるので好ましい。
【0033】
パルス検出器23は、本体部20の外部に設けられており、図示しないがLED等からなる発光素子と受光素子とを有し、受光素子で受光された光の強度の変化をパルス信号に変換するように構成された従来から周知の機器である。パルス検出器23の発光素子は、パルス生成板22における白色領域22aと黒色領域22bとが設けられている側面に向けて光を照射する。パルス検出器23の受光素子は、パルス生成板22における白色領域22aと黒色領域22bとが設けられている側面からの反射光を受光するように配置されている。したがって、パルス検出器23の発光素子が光を照射した状態でパルス生成板22が回転すると、受光素子が受光する光の強度が周期的に変化することになり、この周期的な光の強度の変化からパルス信号を得ることができる。パルス検出器23は、パルス信号を出力することができるように構成されている。
【0034】
図5等に示すように、有酸素運動器具2は、負荷検出器26と負荷発生器27とを備えている。負荷発生器27は、従来から周知のものを用いることができ、例えば、機械的な負荷発生器、磁力(永久磁石、電磁石)を利用した負荷発生器等を挙げることができ、これらのうち、1つまたは複数を使用してクランク21の回転に負荷を与えることができる。機械的な負荷発生器の一例としては、クランク21に固定された回転ドラムに、本体部20に固定された摩擦材を接触させて回転ドラムと摩擦材との間に発生する摩擦力によってクランク21の回転に負荷を与えるものがある。このものでは、摩擦材の回転ドラムに対する接触力(面圧)を変化させることでクランク21の回転負荷を変えることができる。また、磁力を利用した負荷発生器の場合は、磁力を変化させることによってクランク21の回転負荷を変えることができる。クランク21の回転負荷は、使用者の運動負荷であり、クランク21の回転負荷を変えることで使用者の運動負荷を変えることができる。使用者が有酸素運動領域で運動することが可能になるように、クランク21の回転負荷を変えればよい。
【0035】
負荷検出器26は、クランク21の回転負荷を検出するための器具である。機械的な負荷発生器の場合、摩擦材の回転ドラムに対する接触力を各種センサによって直接または間接的に検出することで、クランク21の回転負荷を検出することができる。磁力を利用した負荷発生器の場合、磁力の変化をセンサによって検出することで、クランク21の回転負荷を検出することができる。クランク21の回転負荷を段階的に調整可能にすることもでき、この場合には、どの負荷領域にあるかを検出することができる。負荷検出器26は、検出したクランク21の回転負荷情報を電気信号で出力することができるように構成されている。
【0036】
図5等に示すように、有酸素運動器具2は通信部24を備えている。通信部24は、例えばBluetooth等の無線通信規格に準拠した通信モジュールや、赤外線通信モジュール等で構成することができる。通信部24には、パルス検出器23からパルス信号が入力されるとともに、負荷検出器26からクランク21の回転負荷情報が入力されるようになっている。通信部24に入力されたパルス信号及びクランク21の回転負荷情報は、通信部24によってタブレット型端末3に送信される。パルス信号の送信間隔は、短いほどよく、例えば0.1秒〜0.5秒間隔とすることができる。クランク21の回転負荷情報は、負荷の変化があったときにだけ送信するようにしてもよい。
【0037】
通信部24は、有線通信モジュールであってもよい。この場合、有酸素運動器具2の通信部24とタブレット型端末3の通信部34(
図3に示す)とを信号線等で接続すればよい。
【0038】
図5に示す符号25は電源である。電源25は、例えば電池とすることができ、パルス検出器23、通信部24、負荷検出器26等に電力を供給するためのものである。電力の供給は、例えば一般のコンセントから行うようにしてもよい。
【0039】
パルス生成板22、パルス検出器23、通信部24、負荷検出器26及び電源25は、それらを有しない有酸素運動器具に取り付けることができる。これにより、一般家庭等にある汎用の有酸素運動器具を、本発明の有酸素運動器具2とすることができるので、認知機能維持向上システム1の導入コストを低減することができる。
【0040】
上述の例では、有酸素運動器具2がエアロバイク、フィットネスバイク等で構成されている場合について説明したが、有酸素運動器具2はこれらに限られるものではなく、図示しないが、例えば歩行運動(ウォーキング)や軽いジョギングを行うことができるトレッドミル等であってもよい。トレッドミルのベルト上を使用者が歩行することでローラ(回転部材)が回転する。このローラと共に回転するようにパルス生成部を設けておき、トレッドミルの本体部にパルス検出部を設けておけばよい。
【0041】
(心拍測定器具4の構成)
図1に示すように、心拍測定器具4は、心拍測定部40とバンド41とを備えている。バンド41は、使用者の手首に巻くことができるように構成されており、心拍測定部40を手首に固定しておくための部材である。心拍測定部40は、従来から周知の手法によって心拍を測定する部分であり、例えば手首の動脈に対して赤外光を照射し、反射した赤外光を受光素子によって受光して受光強度の変化に基づいて心拍を測定することができる心拍センサ42(
図3に示す)を内蔵している。心拍センサ42は、脈拍数を測定することによって心拍数として得ることができる。
【0042】
さらに、心拍測定器具4は、通信部43を内蔵している。通信部43は、有酸素運動器具2の通信部24と同様な通信モジュールで構成することができる。通信部43には、心拍センサ42から出力された心拍数(1分間当たりの心臓の拍動数)が入力され、入力された心拍数はタブレット型端末3に送信される。心拍数の送信間隔は、短いほどよく、例えば0.1秒〜0.5秒間隔とすることができる。
【0043】
図示しないが、使用者の耳たぶの血流変化によって使用者の心拍数を得ることもできる。この場合、耳たぶに心拍センサを取り付けておく。また、使用者の胸部に心拍センサを取り付けることによっても使用者の心拍数を得ることもできる。
【0044】
(タブレット型端末3の構成)
図1に示すように、タブレット型端末3は、筐体30と、ディスプレイ31とを備えている。タブレット型端末3には、スマートフォンのような小型のディスプレイを搭載した端末を含むことができる。ディスプレイ31は、本発明の表示部であり、筐体30に取り付けられている。ディスプレイ31は、例えば液晶表示パネルや有機ELパネル等の平面型の各種表示デバイスで構成されており、文字や動画、静止画等の各種情報を表示することが可能になっている。ディスプレイ31は、制御装置32によって制御される。ディスプレイ31には、後述する画像生成部32aで生成された認知機能トレーニング用ゲーム画像が表示される。
【0045】
図3に示すように、タブレット型端末3は、制御装置32と、タッチセンサ33と、通信部34と、記憶部35とを更に備えている。タッチセンサ33は、ディスプレイ31の表面上に積層された状態で設けられており、従って、タッチパネルと呼ぶこともできる。タッチセンサ33は、表示画面上の押圧された位置を検出可能なセンサであり、従来から周知のセンサを用いることができる。例えば、ディスプレイ31上の押圧された位置を電圧の変化の測定によって検出する抵抗膜方式、静電容量の変化を感知する静電容量方式、赤外線光学イメージング方式等の各種方式のものを用いることができる。タッチセンサ33は、使用者の指等による押圧と、ペン等の操作部材による押圧との両方を検出することができるようになっている。タッチセンサ33によって検出された表示画面上の押圧位置は、制御装置32に出力されるようになっている。タッチセンサ33は、認知機能トレーニング用ゲーム画像がディスプレイ31に表示されているときに使用者による入力操作を受け付ける操作受付部である。操作受付部は、手または足で押すことによって信号の入力を行う信号入力装置44であってもよい。信号入力装置44は、例えば押しボタン等を使用することができ、手や足で押しボタンを押したことを検出して所定の信号を出力する装置等を挙げることができる。押しボタンは、上下左右の操作や、決定操作を行うことができるものである。また、クランク21を手で回転させているときには足で信号入力装置44を操作し、また、クランク21を足で回転させているときには手で信号入力装置44を操作することができるように、信号入力装置44を配設することができる。
【0046】
記憶部35は、プログラムやアプリケーション(認知機能トレーニング用ゲームアプリケーション)を記憶することができるとともに、後述するゲーム結果等も記憶することができるように構成されている。記憶部35は、例えばソリッドステートドライブ(SSD)等の半導体素子メモリやハードディスク等で構成することができる。記憶部35は制御装置32に接続されており、制御装置32との間でデータのやり取りが可能になっている。
【0047】
通信部34は、有酸素運動器具2の通信部24及び心拍測定器具4の通信部43と通信可能に構成された通信モジュールである。有酸素運動器具2の通信部24から出力されるパルス信号及びクランク21の回転負荷情報と、心拍測定器具4の通信部43から出力される使用者の心拍数は、通信部34により受信されて制御装置32に送られる。
【0048】
制御装置32は、中央演算処理装置(CPU)やRAM、ROM等で構成されており、予めインストールされているOSプログラムやアプリケーションプログラムに従って動作するように構成されている。
【0049】
制御装置32は、パルス検出器23で検出されたパルスの間隔に応じて変化する認知機能トレーニング用ゲーム画像を生成する画像生成部32aを備えている。画像生成部32aは、ソフトウェアで構成することができるし、ハードウェアで構成することもできる。画像生成部32aが生成する認知機能トレーニング用ゲーム画像の詳細は後述する。
【0050】
(インターネット接続)
図2に示すように、認知機能維持向上システム1はインターネットに接続することもできる。この場合、サーバ100を設けておき、タブレット型端末3とサーバ100とを、インターネットを介して接続可能に構成する。インターネットを介しての接続にあたっては、従来から周知の手法を用いることができる。タブレット型端末3とインターネットとは無線通信と有線通信のいずれであってもよい。またサーバ100とインターネットとの通信も無線通信と有線通信のいずれであってもよい。これらの通信には公衆電話回線を利用することもできる。またタブレット型端末3とサーバ100とはLAN(Local Area Network)等で接続することもできる。この場合、有線LAN等であってもよいし、無線LANであってもよい。サーバ100を含めて認知機能維持向上システム1とすることもできる。
【0051】
タブレット型端末3は、パルス信号に基づいて有酸素運動器具2が使用されているか否かを判定することができるとともに、心拍測定器具4が検出する心拍数に基づいて使用者の状態を把握することもできる。タブレット型端末3は、有酸素運動器具2の使用頻度及び使用時間等の使用状態及び心拍測定器具4が検出する心拍数を定期的にサーバ100に保存する。
【0052】
サーバ100には、医療機関がインターネットを介して接続可能である。医療機関とは、例えば使用者のかかりつけ医院や病院等を挙げることができる。医療機関の担当者は、サーバ100に保存されている有酸素運動器具2の使用状態及び心拍数を閲覧することができ、これにより、使用者の健康状態等を把握することができる。
【0053】
また、サーバ100には、親族等のみがインターネットを介して接続可能である。親族等が持つスマートフォンをサーバ100に接続することで、サーバ100に保存されている有酸素運動器具2の使用状態及び心拍数を親族等のみが閲覧可能になる。
【0054】
(有酸素運動器具2の変形例)
図6に示す変形例1では、パルス生成板22及びパルス検出器23を本体部20の内部に設けている。これにより、パルス検出の際に外乱が少なくなり、検出精度が向上する。
【0055】
図7に示す変形例2では、有酸素運動器具2が、パルス生成板22の回転速度をクランク21の回転速度よりも高める増速機構を備えている。増速機構は、クランク21の左右方向中間部分に固定されている駆動プーリ21bと、本体部20の側壁部に対して水平軸周りに回転する従動プーリ28と、伝動ベルト29とで構成されている。駆動プーリ21bは、クランク21の回転速度と同じ速度で回転する。従動プーリ28は、支軸28aを介して本体部20に回転可能に支持されており、駆動プーリ21bよりも小径に形成されている。伝動ベルト29は、駆動プーリ21bと従動プーリ28とに巻き掛けられており、駆動プーリ21bの回転力を従動プーリ28に伝達する。従動プーリ28の一方の側面に、パルス生成板22が固定されており、従動プーリ28とパルス生成板22とが一体に回転する。クランク21が回転すると、従動プーリ28が駆動プーリ21bよりも小径であるため、パルス生成板22の回転速度がクランク21の回転速度よりも高まる。よって、クランク21の1回転当たりに生成されるパルス数を多くすることができる。この変形例2の場合、駆動プーリ21b、従動プーリ28、伝動ベルト29、パルス生成板22及びパルス検出器23を備えていない有酸素運動器具にそれらを取り付けることにより、本発明の有酸素運動器具2とすることができる。
【0056】
図8及び
図9に示す変形例3では、変形例1のように、駆動プーリ21b、従動プーリ28、伝動ベルト29、パルス生成板22及びパルス検出器23を本体部20の内部に設けている。
【0057】
(認知機能の維持向上トレーニング)
次に、認知機能維持向上システム1を用いた認知機能の維持向上トレーニングの進め方について説明する。タブレット型端末3を操作して認知機能トレーニング用ゲームアプリケーションを立ち上げると、
図10に示すフローチャートのスタート後のステップSA1の処理、即ちタイトル画面がディスプレイ31に表示される。タイトル画面には、認知機能の維持向上トレーニングであることが示されており、使用者はタイトル画面を見ることで認知機能の維持向上トレーニングが始まることを把握できる。タイトル画面は、制御装置32の画像生成部32aが生成する。
【0058】
タイトル画面をディスプレイ31に所定時間表示した後、ステップSA2に進み、画像生成部32aが機器接続及び連動確認画面を生成してディスプレイ31に表示させる。機器接続及び連動確認画面を表示している間に、有酸素運動器具2及び心拍測定器具4の接続動作を行うとともに、有酸素運動器具2及び心拍測定器具4との通信が正常に行われるか否かを確認する。通信が正常に行われる状態であれば以下のステップSA3に進み、通信が正常に行われない場合には再接続等を要求する。
【0059】
ステップSA3では、画像生成部32aがメニュー画面を生成してディスプレイ31に表示させる。メニュー画面には、複数の種類のゲームの中から1つを選択する選択ボタンや、結果閲覧選択ボタン等が表示される。ボタン操作は、信号入力装置44またはタッチセンサ33によって受け付けることができる。結果閲覧とは、過去に行われたゲームの結果を閲覧することであり、例えばゲームの得点、ゲームの最高得点、ゲームを行った日時、ゲームを行った回数、複数回ゲームを行った場合の得点の推移等である。
【0060】
ステップSA4では、メニュー画面において複数の種類のゲームの中から1つが選択されたか否かを判定する。ステップSA4においてNOと判定されてゲームの選択がなされなかった場合にはステップSA5に進む。ステップSA5では、メニュー画面において結果閲覧が選択されたか否かを判定する。ステップSA5でNOと判定され、メニュー画面において結果閲覧が選択されなかった場合には、メニュー画面を継続してディスプレイ31に表示させる。
【0061】
上記ステップSA4においてYESと判定されてゲームが選択された場合にはステップSA6に進む。ステップSA6では画像生成部32aがゲーム画面を生成してディスプレイ31に表示させる。
【0062】
ゲーム画面の遷移について
図11に示すフローチャートに基づいて説明する。スタート後のステップSB1では、画像生成部32aがウォーミングアップ画面を生成してディスプレイ31に表示させる。ウォーミングアップ画面では、使用者に、有酸素運動器具2による運動を促す。例えば、「ウォーミングアップを開始して下さい。」等の指示を出し、それを所定時間継続するようにタイマーのカウントダウン表示をする。制御装置32は、有酸素運動器具2から出力されるパルスに基づいてウォーミングアップが行われているか否か判定し、ウォーミングアップが行われていると判定した場合には、そのまま所定時間が経過するのを待ち、所定時間が経過するとステップSB2に進む。ウォーミングアップが行われていないと判定した場合には、ステップSB2には進まずに待つ。
【0063】
ステップSB2では、画像生成部32aがゲーム画面を生成してディスプレイ31に表示させる。ゲーム画面の例を
図12〜
図14に示す。
図12は第1ゲームの画面の例を示し、
図12は第2ゲームの画面の例を示し、
図14は第3ゲームの画面の例を示している。第1ゲーム、第2ゲーム及び第3ゲームのいずれを行うかは、メニュー画面で選択することができる。
【0064】
図12示す第1ゲームは、移動空間に任意の形状の障害物201が多数存在しており、それらの間に通路200が形成されている。任意の形状に屈曲した通路200がディスプレイ31の右側から左側へ移動していき、その移動する通路200の内部に移動物体の像202が留まるようにするゲームである。
【0065】
通路200はディスプレイ31の左右方向に連続しており、ゲームの開始から終了まで常時、ディスプレイ31の右側から左側へ移動している。移動物体の像202は、パルス検出器32で検出されたパルスの間隔が広くなると、即ちクランク21の回転速度が低下するとディスプレイ31の下へ移動し、パルス検出器32で検出されたパルスの間隔が狭くなると、即ちクランク21の回転速度が速くなるとディスプレイ31の上へ移動していく。移動物体の像202が障害物201に接触すると減点となり、得点が少なくなるので、使用者は、ディスプレイ31を見ながら、移動物体の像202が障害物201に接触しないように、クランク21の回転速度を調整する。つまり、移動物体の像202が下の障害物201に接触しそうになるとクランク21の回転速度を高め、反対に移動物体の像202が上の障害物201に接触しそうになるとクランク21の回転速度を低下させる。従って、画像生成部32aは、パルス検出器23で検出されたパルスの間隔の変化によってディスプレイ31の垂直軸方向(上下方向)に位置を変える像202を当該ディスプレイ31に表示させるように構成されている。
【0066】
尚、
図12に示す画面を90゜回した状態でディスプレイ31に表示させることもできる。このように表示させることで、通路200が上下に連続することになり、移動物体の像202が右の障害物201に接触しそうになるとクランク21の回転速度を高め、反対に移動物体の像202が左の障害物201に接触しそうになるとクランク21の回転速度を低下させるようにすればよい。この場合、画像生成部32aは、パルス検出器23で検出されたパルスの間隔の変化によってディスプレイ31の水平軸方向(左右方向)に位置を変える移動物体の像202を当該ディスプレイ31に表示させるように構成されることになる。
【0067】
図13に示す第2ゲームは、最初、画面上部の数字表示領域203に複数の数字がランダムに表示され、所定時間経過後に数字が消える。使用者はこの数字表示領域203に表示された数字を記憶しておく。画面には、画面の奥側から手前側に流れてくるように道路204が表示され、この道路204上に車205が表示される。車205は、道路204の右側と左側に位置変更可能となっている。使用者がディスプレイ31に表示されている道路204の左側を指でタッチすると、タッチセンサ33がそのことを検出して車205を道路204の左側に移動させた画像とする。一方、使用者がディスプレイ31に表示されている道路204の右側を指でタッチすると、タッチセンサ33がそのことを検出して車205を道路204の右側に移動させた画像とする。従って、タッチセンサ33は、使用者の指による入力操作を受け付けることができるように構成されている。タッチセンサ33とは別に、信号入力装置44による入力操作を受けることもできる。
【0068】
また、道路204の右側及び左側にそれぞれ数字が表示され、それら数字が道路204の上記移動に伴うようにして画面の奥側から手前側に移動するようになっている。使用者は、数字表示領域203に表示されていた数字が位置している側に、車205を移動させる操作を行うと、車205がその数字に接触して数字表示領域203にその数字が表示される。これを繰り返して数字表示領域203に表示されていた数字の列を完成させる。誤った数字に車205を接触させてしまうと減点になる。
【0069】
この第2ゲームでは、パルス検出器23で検出されたパルスの間隔が広くなると道路204の移動速度、即ち数字の移動速度が遅くなり、反対にパルス検出器23で検出されたパルスの間隔が狭くなると道路204の移動速度、即ち数字の移動速度が速くなる。数字表示領域203に表示されていた数字の列を完成させるのに要する時間が短ければ短いほど得点が高くなる。また、道路204に表示されている数字の中には、数字表示領域203に表示されていた数字以外の数字も含まれており、この数字に接触しないように数字の移動速度を調整する必要がある。このように、画像生成部32aは、パルス検出器23で検出されたパルスの間隔の変化によって移動速度が変わったように見える像(道路204上の数字)をディスプレイ31に表示させるように構成されている。
【0070】
図14に示す第3ゲームは、最初、画面上部の数字表示領域207にある数字が表示され、所定時間経過後にその数字が消える。その後、数字表示領域207は計算指示が表示される。最初に数字表示領域207に表示されていた数字が10であるとした場合に、20を足す指示が数字表示領域207に表示されると、使用者は10+20の計算を行う。
【0071】
また画面には、海面208が表示されており、その海面208に浮かぶようにヨット209が表示されている。ヨット209は画面の左右方向に進む形態で表示され、パルス検出器23で検出されたパルスの間隔が広くなるとヨット209が画面の右側へ移動していき、反対にパルス検出器23で検出されたパルスの間隔が狭くなるとヨット209が画面の左側へ移動していく。パルスが0になるとヨット209が画面から消えるので、使用者はゲームを継続させるためには常にクランク21を回転させておく必要がある。
【0072】
使用者がディスプレイ31に表示されている海面208の上側を指でタッチすると、タッチセンサ33がそのことを検出してヨット209を海面208の上側に移動させた画像とする。一方、使用者がディスプレイ31に表示されている海面208の下側を指でタッチすると、タッチセンサ33がそのことを検出してヨット209を海面208の下側に移動させた画像とする。
【0073】
海面208には、上記計算の答えとなる数字とそれ以外の数字とが浮かぶように表示されていて、これら数字は、画面の右側から左側へ移動している。数字は画面の上側と下側とにそれぞれ表示されている。使用者は、上記計算の答えとなる数字が位置している側に、ヨット209を移動させる操作を行うと、ヨット209がその数字に接触して正答であれば得点になる。誤答である数字にヨット209を接触させてしまうと減点になる。
【0074】
画面の上下方向に延びる直線210の位置は固定されている。ヨット209を直線210上に位置させた状態で、正答である数字に接触させると得点が高くなる。よって、使用者は、ヨット209が直線210上に位置するようにクランク21の回転速度を調整する必要がある。タッチセンサ33とは別に、信号入力装置44による入力操作を受けることもできる。
【0075】
上記第1〜第3ゲームは認知機能トレーニング用ゲームの例であり、像の形状や大きさ、色等は任意に決定することができる。
【0076】
認知機能トレーニング用ゲームには、短期記憶力を利用するものや計算力を利用するものが好ましい。認知機能トレーニング用ゲームの難易度は認知機能に応じて変更することができる。
【0077】
ゲームが終了すると、
図11に示すフローチャートのステップSB3に進み、画像生成部32aがクールダウン画面を生成してディスプレイ31に表示させる。クールダウン画面では、使用者に、有酸素運動器具2によるクールダウン運動を促す。例えば、「クールダウンして下さい。」等の指示を出し、それを所定時間継続するようにタイマーのカウントダウン表示をする。
【0078】
ウォーミングアップ中、ゲーム中及びクールダウン中、制御装置32は常に心拍数をモニターしておく。そして、心拍数が使用者の有酸素運動領域を超えた場合には、ディスプレイ31上に警告表示して運動の停止を指示する。
【0079】
クールダウンが終了すると、
図10に示すフローチャートのステップSA8に進み、画像生成部32aがゲーム結果画面を生成してディスプレイ31に表示させる。このゲーム結果画面にはゲームの得点等が表示される。
【0080】
ゲーム結果画面をディスプレイ31に表示させた後、またはゲーム結果画面をディスプレイ31に表示させるのと並行してステップSA9の結果保存処理を行う。これはゲームの得点等を記憶部35に記憶させる処理である。このとき、
図2に示すサーバ100にゲームの得点等を送信して保存することもできる。
【0081】
ステップSA10ではゲーム結果画面に表示されている「終了」ボタンが押されたか否かを判定する。ステップSA10でNOと判定されて「終了」ボタンが押されていない場合には、ステップSA3に戻りメニュー画面をディスプレイ31に表示させる。ステップSA10でYESと判定されて「終了」ボタンが押された場合には、このフローを終了する。
【0082】
上記ステップSA5でYESと判定されて進んだステップSA7では、画像生成部32aが結果閲覧画面を生成してディスプレイ31に表示させる。結果閲覧画面では、過去に行われたゲームの結果が表示される。
【0083】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る認知機能維持向上システム1では、使用者が有酸素運動器具2で有酸素運動を行うとパルスが生成され、生成されたパルスの間隔に応じて変化する認知機能トレーニング用ゲーム画像を画像生成部32aが生成する。このとき、クランク21の1回転当たりに複数のパルス、具体的には2以上、好ましくは10以上のパルスが生成されているので、使用者がクランク21をゆっくりにしか回転させることができなかったとしても、パルスの間隔が狭くなり、そのため所定時間内におけるパルスの間隔の変化が現れやすくなる。よって、速く有酸素運動を行うことができる使用者はもちろんのこと、ゆっくりとした有酸素運動を行う使用者であってもディスプレイ31に表示される認知機能トレーニング用ゲーム画像が変化するので、使用者は自身の有酸素運動と認知機能トレーニング用ゲーム画像との連動を意識することが可能になる。
【0084】
つまり、有酸素運動による認知機能の維持及び向上効果を得ながら、その有酸素運動と認知機能トレーニング用ゲーム画像との連動を意識させながら認知機能トレーニング用ゲームを行わせることで、使用者の認知機能の維持効果及び認知機能の向上効果をより一層高めることができる。
【0085】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0086】
上記実施形態では、タブレット型端末3のディスプレイ31を本発明の表示部として利用しているが、これに限らず、テレビやパーソナルコンピュータのディスプレイを本発明の表示部として利用することもできる。テレビの場合、制御装置や記憶部は外部に設けておき、制御装置からの出力信号をテレビに入力することで上記した各表示を行うことができる。パーソナルコンピュータの場合、パーソナルコンピュータの本体によって制御装置や記憶部を構成することができる。
【0087】
また、心拍数と有酸素運動時の負荷情報とを得ることができるので、使用者が有酸素運動によって消費したカロリーを従来から周知の手法に基づいて算出することができる。
【0088】
また、ゲーム時には、ディスプレイ31に表示するだけでなく、端末が有するスピーカーから回転リズムや効果音、各種楽曲、呼びかけ、励まし等の各種音声を発するように構成することもできる。
【0089】
また、ゲーム結果に基づいて認知機能の評価点を算出することもできる。また、電子血圧計を接続して使用者の血圧変化を測定し、測定結果を端末に送信することもできる。認知機能の評価点、心拍数、血圧の変動をグラフ化して保存しておき、評価点、運動負荷と心拍数との関係、血圧の相関関係から認知機能の判定や身体の健康度の分析を行うこともできる。
【0090】
また、パルス数をカウントすることで有酸素運動器具2の部品の寿命時期や消耗度を予測することができ、使用者に交換を促すことができる。