【解決手段】本位置決めカートリッジは、それぞれが近位端部及び遠位端部を有する複数の位置決めインサート、並びに各位置決めインサートの近位端部に固定されている足場を有することができる。足場は、相互に対して、電極の複数の長手方向孔に相当する規定方向に、位置決めインサートを置くよう構成され得る。電極は、位置決めカートリッジを使用して製造することができる。本位置決めカートリッジは、複数の構成要素を有することができ、こうして少なくとも1つの構成要素は、各位置決めインサートと関連する。複数の構成要素は、温度センサとすることができる。本位置決めカートリッジは、電極の外側表面に隣接する位置に、各温度センサを位置決めするよう構成され得る。
電極の製造中に使用するための位置決めカートリッジであって、複数の位置決めインサートを備え、位置決めインサートの各々が、近位端部及び遠位端部、並びに各位置決めインサートの前記近位端部に固定された足場を有しており、前記足場が、前記位置決めインサートを、互いに対して、前記電極の複数の長手方向孔に対応する規定方向に置くように構成されている、位置決めカートリッジ。
前記位置決めカートリッジが、2つの位置決めインサートを備え、前記少なくとも1つのアームが、各位置決めインサートに固定されている、請求項2に記載の位置決めカートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に、本開示は、具体的に例示された材料、構成、手順、方法、又は構造に限定されず、変化し得ることが理解されるべきである。したがって、本開示の実践又は実施形態には、本明細書に記載されている選択肢と類似の又は等価ないくつかの選択肢を用いることが可能であるが、好ましい材料及び方法は本明細書に記載されている。
【0020】
本明細書で使用する用語は、本開示の特定の実施形態を説明するためのみであって、制限することを意図するものでないことも理解されるべきである。
【0021】
添付の図に関連して下記に示される詳細記述は、本開示の例示的実施形態を説明するためのものであり、本開示が実践可能な限定的な例示的実施形態を示すことを意図したものではない。本記述全体にわたって使用される用語「例示的」とは、「実施例、事例、又は実例として役立つ」ことを意味し、必ずしも他の例示的な実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。詳細記述には、本明細書の例示的な実施形態の徹底した理解を提供することを目的とした、具体的な詳細が含まれる。本明細書の例示的実施形態は、これらの具体的な詳細なしでも実施が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。場合によっては、本明細書に示される例示的実施形態の新しさを明確にするために、周知の構造及び装置がブロック図形式で示される。
【0022】
単に便宜的及び明確さの目的で、上、下、左、右、上方、下方、上側、下側、裏側、後側、背側、及び前側などの方向を示す用語が、添付の図に関して使用されることがある。これら及び類似の方向を示す用語は、本開示の範囲をいかなる意味でも制限すると見なされるべきではない。
【0023】
別段の規定がないかぎり、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0024】
最後に、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がないかぎり、複数の指示対象を包含する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による、システム12を用いた侵襲性医療処置の概略図である。この処置は、医療専門家14により行われ、一例として、本明細書の以下の説明における処置は、ヒト患者18の心臓の心筋16の一部のアブレーションを含むと仮定される。ただし、本発明の実施形態は、この特定の処置にだけ適用されるとは限らず、生物学的組織又は非生物学的材料に対する実質的にいかなる処置をも包含し得るという理解が得られるであろう。
【0026】
専門家14が、アブレーションを行うため、ハンドル22を使用してカテーテル20を患者の内腔に挿入すると、カテーテルの遠位端部24が患者の心臓に入る。遠位端部24は、心筋の位置に接触するために少なくとも先端電極26を備える。カテーテル20は、後述するような関連機器に接続するための近位端部28を有する。カテーテルの遠位端部24は、
図3A、
図3B、及び
図3Cに関連して更に詳細に説明する。
【0027】
システム12は、システムの操作コンソール32内に位置するシステムプロセッサ30により制御される。コンソール32は、プロセッサと通信するために専門家14によって用いられる制御装置34を含む。処置中、プロセッサ30は、一般的に当該技術分野において周知のいずれかの方法を用いてカテーテルの遠位端部24の位置及び配向を追跡する。例えば、プロセッサ30は、患者18の体外にある磁気送信器が遠位端部に位置付けられたコイルで信号を発生させる、磁気追跡方法を使用してもよい。上記で参照したCARTO(登録商標)システムは、このような追跡方法を使用したものであり、更なる詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、同第6,332,089号、同第7,729,742号、国際公開第96/05768号、及び米国特許公開第2004/0068178(A1)号に見出すことができ、これらの開示内容はすべて参照により本明細書に組み込まれている。
【0028】
プロセッサ30用のソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形態でプロセッサにダウンロードすることができる。代替的に又は追加的に、ソフトウェアは、光学的、磁気的又は電子的記憶媒体などの非一時的有形媒体上で提供され得る。遠位端部24の行路は、典型的に画面38上で患者18の心臓16の3次元表示36で表示される。システム12を操作するために、プロセッサ30は、装置を操作するためにプロセッサにより使用されるいくつかのモジュールを有するメモリ40と通信する。このように、メモリ40は、例えば、温度モジュール42及びアブレーションモジュール44を含み、典型的には、端部24にかかる力を測定する力モジュール、プロセッサ30により使用される追跡方法を操作する追跡モジュール、及びプロセッサが遠位端部24に向けて行われる潅注を制御することを可能にする潅注モジュールなど、他のモジュールも含む。煩雑さをなくすため、ハードウェア要素並びにソフトウェア要素を含むことができるそのような他のモジュールは、
図1では例示されていない。プロセッサ30は、一般的に、モジュール42により取得された温度の測定結果を使用して、画面38上に温度分布マップ46を表示する。
【0029】
カテーテル20の概略立面図を
図2に示しており、図示のように、長手方向軸を有する挿入シャフト又はカテーテル本体50と、カテーテル本体から軸線を外れて1方向又は2方向に所望により偏向可能な、カテーテル本体の遠位側の中間部分52と、を含む、細長い本体を示す。カテーテル本体50の近位側は制御ハンドル22であり、これによりオペレータは、操舵可能な実施形態が採用された場合に、中間部分52を偏向させることなどにより、上記で開示したカテーテルを操作することができる。例えば、制御ハンドル22は、それぞれの方向に偏向させるために、時計方向又は反時計方向に旋回する偏向ノブ54を含み得る。他の実施形態では、他の操舵可能な設計を採用することができ、例えば、米国特許第6,468,260号、同第6,500,167号、同第6,522,933号、及び同第8,617,087号に記述されている、複数の制御ワイヤを操作するための制御ハンドルなどが挙げられ、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
カテーテル本体50は可撓性、すなわち屈曲可能であるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性であり、任意の好適な構造及び任意の好適な材料のものであり得る。一態様では、ポリウレタン又はPEBAX製の外壁は、カテーテル本体50のねじり剛性を増大させるために、当該技術分野において一般的に既知であるステンレス鋼等の埋め込み式編組みメッシュを含んでよく、これにより、制御ハンドル22を回転させると、中間部分52が、対応する様相で回転することになる。意図される用途に応じて、カテーテル本体50の外径は約8フレンチであってよく、一部の実施形態では、7フレンチであってよい。同様に、カテーテル本体50の外壁の厚さは、後で更に詳しく述べるように、中心管腔が任意の望ましいワイヤ、ケーブル及び/又は管を収容可能なように十分に薄くすることができる。カテーテルの有用な長さ、すなわち、身体に挿入することができる部分は、所望とおりに変化させることができる。代表的実施形態では、この有用な長さは、約110cm〜約120cmの範囲であってよい。中間部分52の長さは、この有用な長さの比較的小さい部分に相当してよく、例えば約3.5cm〜約10cmであり、一部の実施形態では、約5cm〜約6.5cmであってよい。
【0031】
カテーテル20の遠位端部24の一実施形態に関する詳細が、
図3A、
図3B及び
図3Cに例示されている。図示のように、電極26は、非外傷性の遠位部分を備えた細長い円筒形の部分として構成されている。電極26の外殻は、内部空洞を画定し、内部空洞は、灌注液を供給するために、カテーテル本体50の長さに延びる管腔に流体連通している。複数の灌注開口部54が、電極26の表面にわたってほぼ均一に分布しており、液はこの開口部を通って電極26の外へと出ることができ、これによって、電極26と、電極26に隣接する環境とに、望ましいように冷却を提供することができる。電極26の外殻は、パラジウム、白金、金、イリジウム、並びに、Pd/Pt(例えば、パラジウム80%/白金20%)及びPt/Ir(例えば、白金90%/イリジウム10%)を含むこれらの組み合わせ及び合金などの任意の好適な導電性材料で形成することができる。
【0032】
具体的には、
図3Aは、プローブの長さに沿った断面図であり、
図3Bは、
図3Aにおいてマーキングされる切断部IIIB−IIIBに沿った横断面図であり、
図3Cは、遠位端部の部分の斜視図である。図示のように、電極26は、カテーテル本体の中間部分52の遠位に位置する。先端電極26は、その遠位端部においてほぼ平面の導電性表面56と、近位に位置する実質的に円柱状の表面58とを有し得る。所望により、電極60などの追加の電極をリング電極として構成してもよく、中間部分52に配置してもよい。導体62は、高周波(RF)電気エネルギーをアブレーションモジュール44(
図1)からカテーテル本体50を通って電極26に伝達し、したがって、電極が接触している心筋組織をアブレーションするために電極に通電する。モジュール44は、電極26を介して消散されるRF電力のレベルを制御する。アブレーション処置中には、開口部54を通って流出する冷却流体で、治療中の組織を灌注することができる。
【0033】
通常、銅コンスタンタン熱電対であって、したがって本明細書において熱電対64とも称することができる熱電対を備える温度センサ64は、先端電極26内でカテーテルの遠位先端部の周囲に配列された位置に、軸方向及び円周方向の両方向に装着されている。この例は6つのセンサを含み、3つのセンサからなる一方の群が先端部に近い遠位位置にあり、3つのセンサからなるもう一方の群が若干近位位置寄りにある。この分布は単に例として示されるが、より多い、又はより少ない数のセンサが、先端電極26内の任意の好適な位置に取り付けられてもよい。熱電対64は、温度信号を温度モジュール42に供給するため、カテーテル本体50の長さ全体にわたって延びるリード(これらの図には示されていない)で接続されている。
【0034】
開示されている実施形態では、先端電極26は、温度センサ64と先端部の中央空洞68の内側の冷却流体との間に所望の断熱がなされるよう、比較的厚い(およそ0.5mm厚)側壁66を特徴とする。冷却流体は、上述したように開口部54を通って空洞68を出る。再度、この実施形態のみに関するが、センサ64は、3つの別個の位置制御位置決めインサート70内で、近位部及び遠位部の熱電対のペアとしてグループ化されており、位置決めインサート70は、側壁66中の長手方向孔72内に嵌合している。以下に更に詳細に記載されているとおり、位置決めインサート70は、長手方向孔72内のセンサ64の位置を、位置制御するよう構成され得る。留意すべきことに、位置決めインサート70は、センサ64を近位及び遠位に、並びに表面56及び/又は58などの電極26の外側表面に向けて位置付けることができる。長手方向孔72内に一旦、配置されると、位置決めインサート70は、エポキシなどの好適なセメントで作製することにより、所定の位置に保持することができ、このエポキシは、望ましくは、熱伝導性及び電気絶縁性とすることができる。例えば、後述のように、硝酸銀及びその他などの、熱伝導性フィラー(40〜80重量%の充填)が添加されたエポキシ樹脂は、3.5〜10W/m
*Kの範囲の熱伝達率を伴う高熱伝達性の接着剤を提供するために利用されてよい。エポキシは、フィラーを容易に許容する一方で、低温硬化特性、良好なたわみ性、低ガス放出、及び高温での良好な熱安定性を含む、望ましい特性を有する。エポキシの熱伝導率は、フィラーのタイプ、フィラー使用量のパーセンテージ、及びフィラー粒子のサイズ/形状により影響を受ける。それらはすべて、エポキシ配合物の粘度/レオロジー全体における役割を有し得る。熱伝導率及び電気絶縁をもたらすために利用することができる、いくつかの例示的なフィラー材料としては、アルミナ−36W/m
*K、窒化ホウ素−60W/m
*K、窒化アルミニウム−285W/m
*K、及びダイヤモンド2000W/m
*Kが挙げられる。接着剤へのフィラー粒子の練り込みは、熱伝導率を増大させ得、かつ接着剤の熱膨張率を低下させ得る。増加したフィラー使用量により、接着剤の毛管現象故に、狭い孔の管材に充填することが一層困難である、高粘度がもたらされる場合があり、相対的な利点の均衡が保たれ得、当然ながら調節することができる。その他の実施形態では、特に、比較的小さい容量の熱伝導性材料82(例えば、およそ0.0092〜0.0139mm
3の程度)が管状要素80の端部の封止に必要とされるため、紫外線硬化性接着剤はまた、50〜70%(重量比)の範囲に及ぶフィラー粒子を有する場合であっても、接着接着剤を迅速に硬化させるために利用され得る。微量の、又は二次熱硬化を伴うアクリレート化ウレタンなどの代替的なUV接着剤はまた、熱伝導性フィラーと混合されて、先端電極26内の位置決めインサート70を固定するための許容可能な熱伝達性接着剤を提供し得る。
【0035】
上述した配置は6つのセンサ64のアレイを提供するが、当業者が理解するであろう範囲で所望のように他の配置及び他の数のセンサを使用することができる。このような配置及び数はすべて本開示の範囲に含まれる。望ましくは、温度センサ64を異なる位置に配置して、電極26の対応する外側表面で温度を測定してもよい。センサ64は、例えば、熱電対アセンブリ70が提供する位置制御により、外側表面と近接して熱的に連通することができ、空洞68から開口部54を通って吐出される冷却灌注液に浸漬されずに断熱され得る。センサはしたがって、先端電極26の異なる位置において、冷却流体温度と実質的に独立した、多数の温度読み取り値をもたらす。最高の温度読み取り値をもたらすセンサは、アブレーションされる組織と接するものであってよく、このセンサによって測定される温度は、実際の組織温度と共に直線的に変化する。灌注液の流れは、組織と強く接触させている領域では一般的に弱く、これらの領域のセンサは、典型的に最も高温の温度読み取り値をもたらす。いくつかの適用例では、このように「最も高温」のセンサの読み取り値は、過度に組織を損傷させずに所望の治療効果を得るため、特に組織温度をモニタリングし、アブレーション処置の適用電力及び持続時間を制御するために使用され得る。或いは、又は加えて、カテーテル先端部の領域にわたる温度のマップをもたらすために、複数のセンサの温度読み取り値が組み合わされ、補間される。
【0036】
本明細書における説明において、遠位端部24は、xyz直交軸線のセットを画定するものと想定され、このセットのz軸に対応するのが、遠位端部の軸76である。煩雑さをなくすため、一例として、y軸を紙の平面内にあると想定し、xy平面を本明細書ではz軸に直交する平面に相当するものと想定し、xyzの軸の原点をカテーテル本体50の中心であると想定する。一態様では、位置決めインサート70の制御は、一般的にはxy平面における軸76に垂直なセンサ64の相対位置に対するものであり、効果的には先端電極26の最も近い外側表面の方向におけるものであってよい。
【0037】
留意されるとおり、熱電対64は、任意の好適なタイプのセンサを含むことができる。後に続く説明は、タイプT、すなわち銅−コンスタンタン(Cu−Co)センサを主に指すが、任意の他の好適な熱電対タイプ又は他のセンサ構築物を代替として使用することができる。一実施形態の概略図が、
図4に示されており、各熱電対64は、銅(cu)導体及びコンスタンタン(co)導体の接合部で形成されている。この接合部において発生する電位は、接合温度を示す。プロセッサ30は、通常、熱電対接合部の電位を感知することにより、所与の熱電対の温度を感知する。配線を簡単にするため、導体の1つを、2つ以上の熱電対64により共有させてもよいが、これは必須ではない。例えば、導体78は、示されている複数の熱電対64に共通の、40ゲージの銅導体とすることができるが、導体80は、48ゲージのコンスタンタン導体とすることができ、個々の導体は、各熱電対64に専用である。代替的に、一般的な導体は、コンスタンタンであってもよく、個々の導体は、銅とすることができる。この構成では、N熱電対に関すると、カテーテル20からコンソール32まで経路を設ける必要がある導体の数は、わずかN+1である(2Nの代わり)。この技法は、カテーテルの配線を簡単にし、これにより、他の目的のため、カテーテル直径、並びに/又はカテーテル内及び電極26内の自由内部容積の低下を可能にする。明確さのために示されていないが、導体78及び80は、通常、熱電対64に対応する接合部におけるものを除いて、互いに電気的に隔離されており、熱電対64は、レーザーストリッピング法及びはんだ付け、又は導体を一緒に機械的にねじることなどにより、絶縁を取り除くことによって形成され得る。
【0038】
通常、カテーテル20の遠位端部24は、他の機能的構成要素を含み、これは、簡単にするため、省略されている。例えば、カテーテルの遠位端部は、位置センサ及び力センサなどの、他のタイプのセンサを含んでもよい。これらの種類の構成要素を含むカテーテルは、例えば、米国特許第8,437,832号及び米国特許公開第2011/0130648号に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれている。したがって、位置決めインサート70は、電極26内の熱電対64の配置を制御する文脈で記載されているが、これらの技術は、電極26内に運ばれ得る、これらの構成要素又は他の構成要素のいずれかに拡張することができることが理解されよう。
【0039】
上で議論されるように、位置決めインサート70は、各長手方向孔72内に配設することができ、これらの位置決めインサートはそれぞれ、1つ以上の熱電対64を配置する。したがって、長手方向孔72に対する各熱電対の位置決めを制御することができる。しかし、先端電極26は、複数のボアを備えてもよく、熱電対64は、それぞれに配置されている。上で議論したとおり、これにより、温度センサのアレイが形成され、他の温度センサに対して、及び電極26自体に関して、それぞれの位置を制御することが望ましい。その趣旨では、製造中にその個々の長手方向孔72内に各位置決めインサート70を個別に置くよりもむしろ、複数の位置決めインサート70は、足場82によって規定方向に、その近位端部で一緒に固定されて、
図5に概略的に示されている、位置決めカートリッジ84を形成する。足場82は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリプロピレンなどの、良好な温度耐性を有する、適切な機械的及び化学的耐性特性を有する好適なポリマー材料から形成され得るが、熱可塑性樹脂を含めた任意の他の好適なポリマーも使用することができる。一態様では、位置決めインサート70及び足場82を含めた、位置決めカートリッジ84は、モノリシック素子として成形されてもよい。足場82は、先端電極26における、相互に対して、長手方向孔72に対応する規定方向に、位置決めインサート70を置く。したがって、この実施形態の文脈では、位置決めインサート70の遠位端部は、一般に、同一平面にあり、かつ長手軸76に垂直とすることがきる一方、位置決めインサートはこれ自体、一般に平面とすることができる。他の実施形態では、位置決めインサート70の間隔、向き及び相対位置は、長手方向孔の特徴により決定され得、この長手方向孔に、位置決めインサート70が配置されることが意図されている。
【0040】
図示されている実施形態では、3つの長手方向孔72を有する先端電極26と共に使用するよう意図されている、3つの位置決めインサート70が提供されるが、他の用途において、位置決めインサート70の、2つ、4つ、5つ以上などの、任意の複数のものが、当然ながら使用することができる。したがって、足場82は、長手方向孔72の幾何学形状に一致する所望の向きで、位置決めインサート70を保持するよう構成され得、この長手方向孔72に、位置決めインサート70が配置されるであろう。これらの態様を例示する一助とするための、
図6は、
図3Bと同様の図中で製造中に、先端電極26内に配置されている位置決めカートリッジ84を概略して図示している。一旦、位置決めインサート70が、長手方向孔内に完全に置かれ、上記の好適なエポキシなどにより固定されると、足場82は、切り離される、又は開放されてよく、位置決めインサート70だけが残される。この最終構成は、
図7の一部が透明の立体図中に、概略して示されている。
【0041】
更に、
図5中に一層明確に示されているとおり、各位置決めインサート70は、熱電対を形成するために使用される導体を収容するよう構成されているスロット86を特徴としている(簡単にするため示されていない)。スロット86は、その近位端部において開放し、導体が、接続するためのカテーテル20を介して、熱電対からコンソール32まで延在するのを可能にするが、遠位端部88が閉鎖されて、熱電対アセンブリが隣接することができる止め部を形成し、スロット86内の熱電対の再現性の高い位置決めを長手方向に容易にすることができる。スロット86はまた、位置決めインサート70は、長手方向孔72内に、熱電対64を軸方向に位置させるよう機能する。例えば、位置決めインサート70は、孔内に緊密に適合するようなサイズとなり得、その結果、スロット86は、先端電極26の外側表面に実質的に直接、対向する。一態様では、これは、スロット86が、位置決めカートリッジ84の最外半径で、長手軸76に対して向けられていることに対応することができる。理解されるとおり、これにより、熱電対64は、孔の内側表面に比較的、接近して、又はこれと接触さえして位置決めされ、センサ64の熱応答時間を低減すると思われる、空隙の形成を最小化又は防止する。この構成はまた、熱電対64と、先端電極26の外側表面58又は56との間の距離を最小化する、又はそうでない場合、低下し、やはり熱的応答時間を改善すると理解され得る。更に、位置決めインサート70は、空洞68を通って送り込まれ得る、冷却用灌注液の影響を軽減するための断熱として作用することもできる。
【0042】
さまざまな足場形状を使用することができて、その結果、位置決めカートリッジは、製造中に電極内に配置するための互いに対して規定方向に、位置決めインサート70を保持することもやはり理解されよう。したがって、
図5に示されている足場82は、各位置決めインサート70に固定されている複数のアームを含み、その結果、各アームは、2つの位置決めインサート70を連結するが、任意の他の好適な構成が使用されてもよい。例示のためだけ、及び非限定的に、別の考えられる構成が
図8に示されており、この場合、足場90は、中央ハブから各位置決めインサート70まで半径方向に延在している複数のアームを有する。この実施形態では、足場90はまた、各位置決めインサート70に隣接する脆い接合部92を特徴とすることができ、位置決めカートリッジ84が、製造中、電極の長手方向孔内に位置決めインサート70を配置するために使用された後に、足場90の除去が容易になる。更に、
図5及び8に示されているどちらの実施形態も、先端電極26などの、一般に円筒形の対称電極において使用するよう構成されていることがわかり得る。他の実施形態では、位置決めカートリッジは、製造されている電極の長手方向孔の特徴に対応するよう、互いに対して、任意の所望の方向に位置決めインサート70を置くよう構成されてもよい。
【0043】
上記から、位置決めカートリッジ84の位置決めインサート70は、電極26の外側殻に近接して、又は接触して近位部及び遠位部センサ64に位置することが理解されよう。理解されるように、本開示の技術は、センサ64の位置に対応する領域で電極26に隣接する組織温度をより正確に測定するのに役立つ。したがって、センサ64は、例えば、時間応答の改善を示すと同時に、アブレーション状態をより正確に反映することができる。この設計はまた、灌注液の充填時に、電極26の外側表面に対向する比較的高温の側面と、空洞68に対向する比較的低温の側面とにより引き起こされ、存在することがある、温度勾配の影響を低減するのに役立つ。効果的には、位置決めインサート70は、センサ64を長手方向孔72内で電極26の外側表面に向けて空洞68から離れる方向に付勢させる。本開示の技術を特徴としない従来のアセンブリでは、異なる製造ユニット間でセンサの相対的な軸方向(及び長手方向)の位置にばらつきがあることがある。更に、位置決めインサート70が先端電極26内に配置されて、次に、固定される規定方向で、位置決めインサート70を保持することによって、位置決めカートリッジ84の使用は、軸方向と長手方向の両方に、及び互いに対して長手方向孔72内のセンサ64の位置を制御して、感知アレイを形成させるための一層確実で再現性の高い技法となる。
【0044】
理解されるように、本開示の位置決めカートリッジにより、所望のとおり、所期の用途に応じて、センサ64を電極内の異なる位置に位置決めすることが可能となる。重要なことに、センサは、そのような所望の位置において、再現性高く、位置することができる。わずか0.0025センチメートル(0.001インチ)の位置ずれが温度応答を大きく変化させ得るので、再現性が望ましい。更に、センサ64の相対的な長手方向位置を、当然ながら調整することができる。例えば、遠位センサは、電極26の表面56に向けて軸76と平行に配置されてよく、例えば、心筋壁でのスポットアブレーション中に組織温度の良好な再現をもたらすことができ、それに対して近位センサは、表面58に向けて軸76に概ね垂直に配置されてよく、心臓血管の入口周辺などの径方向のアブレーション中に組織温度の良好な再現をもたらすことができる。更に他の用途は、45°でのアブレーションを伴ってもよく、その方向にセンサが向くよう、ポジショナが構成されてもよい。
【0045】
このように、本開示の技術により、位置決めカートリッジは、手技が成功して完了するのに重要な特性である、温度応答及び正確さの改善をもたらす電極の製造を容易にする。例えば、温度誘導アブレーション(TGA)として知られる処置は、非常に高い電力及び短い持続時間の状況を伴い、熱応答が重要な特性になる。これらの技術はまた、センサ64を形成する熱電対接合部の正確かつ一貫した配置を可能にすることができ、繰返し可能かつ再現可能な温度応答結果をもたらす。それに比べて、従来の技法は、先端電極に対して、又は互いに対してセンサの一貫した設置を実現することはなく、このようなカテーテルは、結果としてユニット間に整合性がないという欠点を有する。更に、カテーテルの温度応答は、準最適熱伝導率と、熱電対接点を先端外殻内で不正確に設置する可能性とにより、アブレーション中の組織温度を代表するものでないことがある。特に、位置決めカートリッジにより配置されないセンサは、先端外殻に対するセンサの向きが広範に変動する傾向をもたらす、孔表面又は電極の他の凹部に対してばらつきを有する。更に、熱電対接合部を灌注液及び関連構成要素から適切に隔離しない従来設計は、孔全体に広がる熱電効果を示す。センサの熱的隔離が不適切な場合、温度差又は温度勾配が、熱電対の読み取り値に影響を及ぼして平均化することがある。位置決めカートリッジ84によりもたらされる制御なしに、従来の技術は製造中にばらつきが生じ易く、このことにより、再びセンサの位置決めのばらつきが生じるおそれがある。これらの位置決めの差異はまた、異なる熱的応答を生じ得るので、エポキシで充填された容積の異なる分布がもたらすおそれがある。したがって、この開示の技術は、電極内での熱電対及び他の構成要素の配置を容易にして、一層高価な材料又は複雑な工具の必要性を低減することができる。同様に、本位置決めカートリッジは、電極内のこのような構成要素の一貫した方向を可能にし、製造過程中の品質保証又は他のバリデーションの必要性を軽減し、この経済性を改善することができる。
【0046】
特定の代表的な実施形態が本明細書に記述されている。ただし、本実施形態に関連する当業者には、本開示の原理が他の用途に対して適切に改変することにより容易に拡張可能であることが理解されよう。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) 電極の製造中に使用するための位置決めカートリッジであって、複数の位置決めインサートを備え、位置決めインサートの各々が、近位端部及び遠位端部、並びに各位置決めインサートの前記近位端部に固定された足場を有しており、前記足場が、前記位置決めインサートを、互いに対して、前記電極の複数の長手方向孔に対応する規定方向に置くように構成されている、位置決めカートリッジ。
(2) 前記足場が、少なくとも1つのアームを備える、実施態様1に記載の位置決めカートリッジ。
(3) 前記位置決めカートリッジが、2つの位置決めインサートを備え、前記少なくとも1つのアームが、各位置決めインサートに固定されている、実施態様2に記載の位置決めカートリッジ。
(4) 前記足場が少なくとも1つのアームを備え、各アームが、前記位置決めインサートの少なくとも1つに固定されている、実施態様2に記載の位置決めカートリッジ。
(5) 各アームが、前記位置決めインサートのうちの少なくとも2つに固定されている、実施態様4に記載の位置決めカートリッジ。
【0048】
(6) 各位置決めインサートが、長手方向スロットを備える、実施態様1に記載の位置決めカートリッジ。
(7) 各長手方向スロットが遠位止め部を備える、実施態様6に記載の位置決めカートリッジ。
(8) 各長手方向スロットが、前記位置決めカートリッジの最外半径に位置する、実施態様6に記載の位置決めカートリッジ。
(9) 各長手方向スロット内に配設された少なくとも1つの構成要素を更に備える、実施態様6に記載の位置決めカートリッジ。
(10) 前記少なくとも1つの構成要素が、少なくとも1つの温度センサである、実施態様9に記載の位置決めカートリッジ。
【0049】
(11) 各長手方向スロット内に配設された少なくとも2つの温度センサを更に含む、実施態様10に記載の位置決めカートリッジ。
(12) 前記位置決めカートリッジが前記電極内に配置されている、実施態様1に記載の位置決めカートリッジ。
(13) 各位置決めインサートが、少なくとも1つの関連温度センサを有する、実施態様12に記載の位置決めカートリッジ。
(14) 前記位置決めカートリッジがモノリシック素子として成形されている、実施態様1に記載の位置決めカートリッジ。
(15) 前記足場が、前記位置決めインサートの各々に隣接する、脆い接合部を更に備える、実施態様1に記載の位置決めカートリッジ。
【0050】
(16) 複数の長手方向孔を備える電極を用意することと、
足場により固定されている、複数の位置決めインサートを有する、位置決めカートリッジを用意することであって、前記足場が、各位置決めインサートを、互いに対して、前記電極の前記長手方向孔に対応する規定方向に保持する、ことと、
各位置決めインサートが各長手方向孔内に配設されるように、前記電極内に前記位置決めカートリッジを配置することと、
各長手方向孔内に配設されている各位置決めインサートを残すと同時に、前記足場を除去することと、
を含む、電極を製造する方法。
(17) 前記位置決めカートリッジが複数の構成要素を備え、こうして少なくとも1つの構成要素が、各位置決めインサートと関連する、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記複数の構成要素が温度センサを備える、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記位置決めカートリッジが、前記電極の外側表面に隣接する位置に、各温度センサを位置決めするよう構成されている、実施態様18に記載の方法。