【解決手段】耐火性三次元構造体上に設けられた少なくとも1種の貴金属を含む下触媒層の表面に、異なる濃度の貴金属を含有する排気ガス流入側上触媒層と流出側上触媒層とを設けてなり、かつ該流入側上触媒層と該流出側上触媒層との間に、触媒構造体の全長に対して3〜23%の長さの中間域を設けてなり、該中間域は、該触媒の排気ガス流入側端面から10〜38%の位置から始まるリン化合物含有排気ガス浄化用触媒。
耐火性三次元構造体上に少なくとも1種の貴金属を含む下触媒層を設け、該下触媒層の表面に、排気ガス流入側上触媒層と流出側上触媒層とを設け、該流入側上触媒層と該流出側上触媒層とに含まれる貴金属の濃度が異なり、かつ該流入側上触媒層と該流出側上触媒層との間に、該耐火性三次元構造体の全長に対して3〜23%の長さの中間域を設けてなり、該中間域は、該触媒の排気ガス流入側端面から10〜38%の位置から始まるリン化合物含有排気ガス浄化用触媒。
該流入側上触媒層および該流出側上触媒層は少なくともロジウムを含み、かつ該流入側上触媒層のロジウムの濃度が、該流出側上触媒層のロジウムの濃度より高い請求項1〜3のいずれか一つに記載の触媒。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の手法は、そもそもリン被毒に対する耐性が弱いパラジウムを触媒成分として用いた触媒において、セリアがリン酸セリウムを形成しやすいことに起因したものであり、三元触媒として最も高活性なロジウムのリン被毒による触媒性能低下に着眼した本発明とは異なる。また、特許文献1の手法は、セリア単独に対し、ジルコニアを添加することで、リン被毒耐久後の触媒性能が従来技術よりも向上していることから、リン被毒が従来技術に対して抑制されていることが開示されている。しかしながら、いずれの触媒もリン被毒耐久後に触媒性能が低下しており、その抑制効果は充分ではない。
【0011】
一方、本発明では、リン被毒そのものを抑制するものではなく、リンが多量に付着した状態においても、触媒性能の低下を抑制するものである。
【0012】
さらに、リン化合物は、排気ガス流れ方向に対して、流入側に多く付着するため、特許文献2による触媒においては、流入側に触媒材料をコートしない部分を設けることで触媒性能の低下を抑制することが可能であると考えられる。しかし、リン被毒後の触媒性能についての実施例の記載がなく、その効果は不明である。さらに、走行距離によっては、流出側触媒出口近傍までリン化合物が多量に付着し、性能が低下すると考えられ、長期耐久性の観点からは、充分な対策であるとは言い難い。
【0013】
また、特許文献3による触媒のコート構成によると、流入側のPd単層域により、下触媒層へ排気ガスが拡散しやすくなることが開示されているが、前述のとおり、リン化合物は流入側に多く付着するため、リン化合物が付着する条件下においては、特にリンに対する反応性が高いPd単層域の性能が低下しやすいと考えられる。
【0014】
したがって、本発明の目的は、長期使用後においてもリン被毒による性能低下を抑制し、排気ガス浄化性能の耐久性を向上させた排気ガス浄化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。なお、本明細書中の「A〜B」は「A以上、B以下」を意味し、例えば、明細書中で「1重量%〜30重量%」または「1〜30重量%」と記載されていれば「1重量%以上、30重量%以下」を示す。また、本明細書において、「重量」と「質量」とは同義として扱う。また、本明細書で挙げられている各種物性は、特記しない限り、後述する実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0016】
(1) 耐火性三次元構造体上に少なくとも1種の貴金属を含む下触媒層を設け、該下触媒層の表面に、排気ガス流入側上触媒層と流出側上触媒層とを設け、該流入側上触媒層と該流出側上触媒層とに含まれる貴金属の濃度が異なり、かつ該流入側上触媒層と該流出側上触媒層との間に、該耐火性三次元構造体の全長に対して3〜23%の長さの中間域を設けてなり、該中間域は、該触媒の排気ガス流入側端面から10〜38%の位置から始まるリン化合物含有排気ガス浄化用触媒。
【0017】
(2) 該中間域は、該流入側上触媒層および該流出側上触媒層よりも1層少ないことを特徴とする前記(1)に記載の触媒。
【0018】
(3) 該貴金属は、ロジウム、パラジウムまたは、白金の中から選ばれる少なくとも1種である前記(1)または(2)に記載の触媒。
【0019】
(4)該流入側上触媒層および該流出側上触媒層は少なくともロジウムを含み、かつ該流入側上触媒層のロジウムの濃度が、該流出側上触媒層のロジウムの濃度より高い(1)〜(3)のいずれか一つに記載の触媒。
【0020】
(5) 該流入側上触媒層および該流出側上触媒層は、さらにパラジウムを含有してなる前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の触媒。
【0021】
(6) 上触媒層中の該ロジウムに対する該パラジウムの質量比は、0.05〜5.0である前記(5)に記載の触媒。
【0022】
(7) 該下触媒層は、少なくともパラジウムを含んでなる前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の触媒。
【0023】
(8) 前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の触媒を用いてリン化合物含有排気ガスを浄化することを特徴とする排気ガスの浄化方法。
【0024】
(9) 前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の触媒を用いてリン化合物を中間域に堆積させてリン化合物含有排気ガスを浄化することを特徴とする排気ガスの浄化方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、排気ガス中に高温で、かつ、リン化合物を含有した排気ガスに長期間曝される場合であっても、排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(THC:Total hydorocarbons)、窒素酸化物(NOx)に対して高い浄化能力を長期間維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明によるリン化合物含有排気ガス浄化用触媒は、耐火性三次元構造体上に設けられた少なくとも1種の貴金属を含む下触媒層、該下触媒層の表面に、排気ガス流入側上触媒層と流出側上触媒層とを設けてなり、該流入側上触媒層と該流出側上触媒層とに含まれる貴金属濃度が異なり、かつ該流入側上触媒層と該流出側上触媒層との間に、該耐火性三次元構造体の全長に対して3〜23%の長さの中間域を設けてなり、該中間域は、該触媒の排気ガス流入側端面から10〜38%の位置から始まるものである。
【0028】
ここで各触媒層の長さは、当該触媒層における長さが最も短くなる値Lminと最も長くなる値Lmaxの平均値((Lmin+Lmax)÷2)とする。また、三次元構造体と該下触媒層の間に1つまたは複数の触媒層があっても良い。さらに、該上触媒層と該下触媒層の間に1つまたは複数の触媒層があっても良い。
【0029】
耐火性三次元構造体は、特に制限されず、一般的に排気ガス浄化用触媒の分野で使用されるものを適宜採用することができ、好ましくはハニカム担体である。ハニカム担体としては、モノリスハニカム担体、メタルハニカム担体、パティキュレートフィルターなどのプラグハニカム担体等が挙げられる。材質は、コージエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ステンレス鋼、Fe−Cr−Al合金などの耐熱性金属などを用いることができる。
【0030】
これらのハニカム担体は、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などで製造される。そのガス通過口(セル形状)の形は、六角形、四角形、三角形またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は100〜1200セル/平方インチ(15.5〜186セル/平方センチ)であれば十分に使用可能であり、好ましくは200〜900セル/平方インチ(31〜139.5セル/平方センチ)である。
【0031】
該耐火性三次元構造体の全長は、10〜1000mm、好ましくは15〜300mm、より好ましくは30〜200mmである。
【0032】
該中間域は、該流入側上触媒層と該流出側上触媒層とが実質的に存在していない域である。実質的に存在していないとは、触媒作用として影響のない状態で担持されたこと、および/または、意図せず触媒調製時に偶然に担持されたことを含むものである。中間域の長さは、耐火性三次元構造体の全長に対して3〜23%、好ましくは3.0〜23%、より好ましくは3〜15%、さらに好ましくは3.0〜15%、特に好ましくは4.5〜9.5%の割合で設けられる。触媒全長に対する中間域長さの割合を以下、単に「割合」いう。該中間域は、該触媒の排気ガス流入側端面から10〜38%、好ましくは12〜35%、より好ましくは14〜33%の位置から始まる。具体的には、該中間域は、該耐火性三次元構造体の排気ガス流入側端面から好ましくは11〜44mm、より好ましくは13〜38mm、さらに好ましくは15〜35mmの位置から設けられる。
【0033】
また、耐火性三次元構造体の表面から該中間域表面までの触媒層の厚みは、耐火性三次元構造体の表面から該流入側上触媒層の表面までの厚みよりも薄いことが好ましい。また、耐火性三次元構造体の表面から該中間域表面までの触媒層の厚みは、耐火性三次元構造体の表面から該流出側上触媒層の表面までの厚みよりも薄いことが好ましい。該耐火性三次元構造体の表面から該流入側上触媒層および該流出側上触媒層の表面までのそれぞれの厚みは、それぞれの層における最大値とすることができる。また、耐火性三次元構造体の表面から中間域表面までの触媒層の厚みは、中間域部分における最小値とすることができる。
【0034】
各触媒層の厚さは、当該触媒層における厚さが最も薄くなる値Hminと最も厚くなる値Hmaxの平均値((Hmin+Hmax)÷2)とする。各触媒層の厚さは、必ずしもその全体にわたって均一である必要はないが、ほぼ全体にわたって実質的に均一であることが好ましい。このような構成によって、リン化合物含有排気ガスに含まれるリン化合物が中間域に堆積するなどによって、該触媒の活性低下を抑制することができると考えている。
【0035】
本発明に用いる貴金属は、排気ガス浄化用触媒に用いられるものであれば良いが、好ましくはロジウム、パラジウム、白金である。貴金属は単一、組み合わせの何れでも用いることができ、触媒層毎に同一種、異なる種類を組み合わせて使用することができる。具体的には以下の構成が好ましい。
【0036】
該下触媒層に用いる貴金属としては、パラジウム、ロジウムまたは白金が好ましく、特にパラジウムまたは白金が好まし、最も好ましくはパラジウムである。
【0037】
該流入側上触媒層および該流出側上触媒層に用いる貴金属としては、パラジウム、ロジウムまたは白金が好ましく、特にロジウムまたはパラジウムが好ましく、最も好ましくはロジウムである。該流入側上触媒層中のロジウム濃度は、該流出側上触媒層中のロジウム濃度に対して、好ましくは1.1〜5倍、より好ましくは1.1〜2倍、さらに好ましくは1.1〜1.35倍である。ここで、各層中のロジウム濃度は、当該層に含まれるロジウムの質量を当該層に含まれる固形分の総質量で割った百分率とする。比率が1.1倍以上であると充分な暖気性が発揮されるため好ましく、5倍以下であるとリン被毒による触媒性能低下が抑制されるため好ましい。該流入側上触媒層中のロジウムに対するパラジウムの質量比は、好ましくは0.05〜5.0、より好ましくは0.1〜2.0、更に好ましくは0.3〜0.8である。0.05以上であると該流入側上触媒層中のパラジウムによりロジウムがリン被毒を受けにくくなるため好ましく、一方、5.0以下であるとパラジウムがロジウムを被覆することによるロジウムの反応低下が抑制されるため好ましい。
【0038】
前記下触媒層、流入側上触媒層および流出側上触媒層に担持される貴金属量は、パラジウムであれば耐火性三次元構造体1リットルあたり0.05〜20g、好ましくは0.5〜15g、更に好ましくは1〜10gである。白金であれば耐火性三次元構造体1リットルあたり0.01〜15g、好ましくは0.1〜10g、更に好ましくは0.5〜5gである。ロジウムであれば耐火性三次元構造体1リットルあたり0.01〜10g、好ましくは0.05〜8g、更に好ましくは0.1〜5gである。
【0039】
出発原料としてのロジウム(Rh)源は、特に制限されることなく、排気ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、ロジウム;塩化ロジウム等のハロゲン化物;ロジウムの、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、アミン塩、へキサアンミン塩、炭酸塩、重炭酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩等の、無機塩類;蟻酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは、硝酸塩、アンモニウム塩、アミン塩、炭酸塩が挙げられる。ここで、ロジウム源の添加量は、上記したような量で耐火性三次元構造体上に担持される量である。なお、本発明では、上記ロジウム源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0040】
また、出発原料としてのパラジウム(Pd)源は、特に制限されることなく、排気ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、パラジウム;塩化パラジウム等のハロゲン化物;パラジウムの、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、アミン塩、テトラアンミン塩、炭酸塩、重炭酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩等の、無機塩類;蟻酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは硝酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、アミン塩、テトラアンミン塩、炭酸塩が挙げられる。なお、本発明では、上記パラジウム源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。ここで、パラジウム源の添加量は、上記したような量で耐火性三次元構造体上に担持される量である。なお、本発明では、上記パラジウム源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0041】
また、触媒活性成分として白金を含む場合の、出発原料としての白金(Pt)源は、特に制限されることなく、排気ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、白金;臭化白金、塩化白金等のハロゲン化物;白金の、硝酸塩、ジニトロジアンミン塩、テトラアンミン塩、硫酸塩、アンモニウム塩、アミン塩、ビスエタノールアミン塩、ビスアセチルアセトナート塩、炭酸塩、重炭酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩等の、無機塩類;蟻酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。これらのうち、硝酸塩(硝酸白金)、ジニトロジアンミン塩(ジニトロジアンミン白金)、塩化物(塩化白金)、テトラアンミン塩(テトラアンミン白金)、ビスエタノールアミン塩(ビスエタノールアミン白金)、ビスアセチルアセトナート塩(ビスアセチルアセトナート白金)が好ましい。なお、本発明では、上記白金源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。ここで、白金源の添加量は、上記したような量で三次元構造体上に担持される量である。
【0042】
これらの上下触媒層には、貴金属の他に酸素貯蔵材や耐火性無機酸化物、第一族元素や第二族元素の酸化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩等を用いることができる。酸素貯蔵材は、排気ガス中の酸素濃度に従って酸素を取り込む、または、排出することができる材料であり、酸化セリウム、セリウムと他の元素とで構成される酸化物、例えばセリウム−ジルコニウム複合酸化物、セリウム−ジルコニウム−ランタン複合酸化物、セリウム−ジルコニウム−ランタン−ネオジム複合酸化物、セリウム−ジルコニウム−ランタン−イットリウム複合酸化物等がある。
【0043】
また、前記酸素貯蔵材の結晶構造は、立方晶、正方晶、単斜晶、斜方晶等があり、好ましくは立方晶、正方晶、単斜晶であり、より好ましくは立方晶、正方晶である。
【0044】
また、酸素貯蔵材として用いるセリウム−ジルコニウム複合酸化物などのセリウム原料は、特に制限されることなく、排気ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、硝酸第一セリウムなどの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、などが挙げられる。これらのうち、硝酸塩が好ましく使用される。なお、本発明では、上記セリウム源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。ここで、セリウム源の添加量は、酸化セリウム(CeO
2)換算で耐火性三次元構造体1リットルあたり5〜200gが好ましく、5〜100gがより好ましく、さらに好ましくは5〜50gである。
【0045】
また、ジルコニウム原料は、特に制限されることなく、排気ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウムなどが挙げられる。これらのうち、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムが好ましく使用される。なお、本発明では、上記ジルコニウム源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。ここで、ジルコニウム源の添加量は、酸化ジルコニウム(ZrO
2)換算で耐火性三次元構造体1リットルあたり5〜200gが好ましく、10〜150gがより好ましく、さらに好ましくは20〜100gである。
【0046】
また、ランタン原料は、特に制限されることなく、排気ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、水酸化ランタン、硝酸ランタン、酢酸ランタン、酸化ランタンなどが挙げられる。これらのうち、硝酸ランタン、または、水酸化ランタンが好ましい。上記ランタン源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。ここで、ランタン源の添加量は、酸化ランタン(La
2O
3)換算で耐火性三次元構造体1リットルあたり1〜50gが好ましく、1〜35gがより好ましく、さらに好ましくは1〜20gである。
【0047】
また、イットリア原料は、特に制限されることなく、排気ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、水酸化イットリウム、硝酸イットリウム、しゅう酸イットリウム、硫酸イットリウムなどが挙げられる。これらのうち、水酸化イットリウム、硝酸イットリウムが好ましく使用される。なお、本発明では、上記イットリウム源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。ここで、イットリウム源の添加量は、酸化イットリウム(Y
2O
3)換算で耐火性三次元構造体1リットルあたり0〜50gが好ましく、0〜35gがより好ましく、さらに好ましくは0〜20gである。
【0048】
また、ネオジム原料は、特に制限されることなく、排気ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、水酸化ネオジム、硝酸ネオジム、しゅう酸ネオジム、硫酸ネオジムなどが挙げられる。これらのうち、水酸化ネオジム、硝酸ネオジムが好ましく使用される。なお、本発明では、上記ネオジム源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。ここで、ネオジム源の添加量は、酸化ネオジム(Nd
2O
5)換算で耐火性三次元構造体1リットルあたり0〜50gが好ましく、0〜35gがより好ましく、さらに好ましくは0〜20gである。
【0049】
また、耐火性無機酸化物としては、アルミナ、ランタン含有アルミナ、ジルコニア、シリカ−アルミナ、チタニア、ゼオライト等があり、単独であるいは2種以上の混合物の形態で用いることができる。本発明に使用される耐火性無機酸化物は、700℃以上、好ましくは1000℃以上で比表面積の変化が少ないものが好ましい。該耐火性無機酸化物のBET比表面積は、特に制限されないが、貴金属などの触媒活性成分を担持させる観点から、好ましくは50〜750m
2/g、より好ましくは150〜750m
2/gである。耐火性無機酸化物の平均一次粒径は、特に制限されないが、例えば、5nm〜20nm、より好ましくは5nm〜10nmの範囲である。このような範囲であれば、貴金属を耐火性無機酸化物上に担持することができる。なお、本発明における耐火性無機酸化物の形状または平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)などの公知の方法によって測定することができる。
【0050】
また、第一族元素や第二族元素としては、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等があり、単独であるいは2種以上の混合物の形態で用いることができる。本発明に使用される第一族元素や第二族元素は、酸化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩などの形態で用いることができ、好ましくは触媒を焼成後に酸化物、硫酸塩または、炭酸塩であることが好ましい。バリウム硫酸塩としては、BaSO
4を用いることができ、BaSO
4換算で耐火性三次元構造体1リットルあたり0〜50gが好ましく、0.5〜30gがより好ましく、さらに好ましくは0.5〜20gである。
【0051】
また、本発明の触媒が、耐火性無機酸化物、セリウム、セリア−ジルコニア複合酸化物、希土類金属、アルカリ土類金属を含む場合には、出発原料としてのこれらの成分は、そのままの形態で使用されてもあるいは他の形態で使用されてもよいが、好ましくはそのままの形態で使用される。また、上記各成分の添加量は、それぞれが上記したような量で三次元構造体上に担持される量あるいは上記したような量で触媒中に存在する量である。
【0052】
本発明の触媒の製造方法は、発明の効果を得られるものであれば特に制限されず、公知の方法が使用できるが、好ましくは、(1)貴金属、酸素貯蔵材、酸素貯蔵材を除く耐火性無機酸化物、第一族元素および/または第二族元素などを含むスラリーを作製し、(2)該スラリーを耐火性三次元構造体に塗布し、(3)乾燥および/または焼成を行う方法により触媒を製造する。
【0053】
スラリーは、耐火性無機酸化物、酸素貯蔵材、貴金属を担持した耐火性無機酸化物または貴金属を担持した酸素貯蔵材を水性媒体と混合し湿式粉砕することで得ることができる。水性媒体としては、水、エタノールや2−プロパノール等の低級アルコール、ならびに有機系のアルカリ水溶液などが挙げられ、好ましくは水や低級アルコールが使用され、特に水が好ましく使用される。スラリーに対してスラリー中の固体物の量は、5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%となるような量である。湿式粉砕の方法は、通常公知の方法によって行われ、特に制限されない。例えば、ボールミルなどを用いて湿式粉砕を行う。
【0054】
スラリーを耐火性三次元構造体に塗布する方法は、(a)下触媒層に用いるスラリーを該耐火性三次元構造体に塗布し乾燥、焼成した後、該構造体の排気ガス流入側から該流入側上触媒層に用いるスラリーを塗布し乾燥、焼成した後、該構造体の排気ガス流出側から該流出側上触媒層に用いるスラリーを塗布し乾燥、焼成する方法、(b)下触媒層に用いるスラリーを該耐火性三次元構造体に塗布し乾燥、焼成した後、該構造体の排気ガス流出側から該流出側上触媒層に用いるスラリーを塗布し乾燥、焼成した後、該構造体の排気ガス流入側から該流入側上触媒層に用いるスラリーを塗布し乾燥、焼成する方法、(c)下触媒層に用いるスラリーを該耐火性三次元構造体に塗布し乾燥、焼成した後、該構造体の排気ガス流入側から該流入側上触媒層に用いるスラリーを、該構造体の排気ガス流出側から該流出側上触媒層に用いるスラリーを同時に該耐火性三次元構造体に塗布し乾燥、焼成する方法等が使用できる。また、各触媒層を形成するときにこれらを組み合わせることにより触媒を得ることができる。
【0055】
上記触媒を調製する際に中間域を形成する方法としては、各スラリーの塗布状態と層形成長さとを予め測定することなどにより、該流入側上触媒層、該流出側上触媒層の形成状態を把握できるので、所定の位置、長さの中間域を形成することができる。所定の位置、長さの測定には、触媒を破壊し、ノギスやマイクロスコープなどの顕微鏡を用いることができる。また、X線CT装置を用いて触媒を破壊せずに中間域の位置、または、長さを測定することができる。中間域を測定できる方法であれば破壊、非破壊によらず用いることができる。
【0056】
上記の手順により得られたスラリーを該耐火性三次元構造体上にコートして、乾燥、焼成する。乾燥、焼成する条件は、該耐火性三次元構造体に耐火性無機酸化物等を付着できればよく、例えば乾燥、焼成は特に区別はない。乾燥または焼成の一方のみで足りることがあるが、好ましくは空気中で50〜300℃、更に好ましくは80〜200℃の温度で、5分〜10時間、好ましくは30分〜8時間乾燥させる。次に、300〜1200℃、好ましくは400〜700℃の温度で10分〜10時間、好ましくは30分〜5時間焼成させる。
【0057】
本発明が効果を発揮する排気ガスは、リン化合物を含む内燃機関の排気ガスであり、本発明の触媒は排気ガス中のリン化合物に長期間曝された場合にも排気ガスを浄化することができる。リン化合物を含む排気ガスに曝された触媒にはリン化合物が酸化リン(P
2O
5)として堆積する。本発明によると、耐火性三次元構造体1リットルあたり、1g〜50g、効果的には1g〜30g、さらに効果的には1g〜15g、最も効果的には1g〜10g蓄積した状態においても、優れた排気ガス浄化性能を発揮することができる。該リン化合物は流入側上触媒層上に生成しても、前記中間域(空間部分)において堆積されるので、流出側上触媒層上の触媒成分の活性への影響が低くなり触媒全体として考えると高い浄化能を有する。また、酸化リン(P
2O
5)として該中間域に堆積されるリン化合物の中間域体積に対するP
2O
5換算でのリン化合物の堆積量の割合は、流出側上触媒層上に堆積されるP
2O
5換算でのリン化合物の流出側体積に対する堆積量の割合よりも多い。
【0058】
また、触媒が耐火性三次元構造体にコートされてなる場合、一般的に前記リン化合物は、触媒層表面上に高い濃度で堆積する。すなわち、触媒層内部の深さ方向におけるリン化合物の濃度分布は偏っており、耐火性三次元構造体に近づくほど濃度は低く、気層と接するコート層の最表面に近づくほど濃度は高い。一方、排気ガスの流れ方向に対するリン化合物の濃度分布も偏っており、一般的には、流入側端面に近いほどリン化合物の濃度は高く、流出側端面に近づくほど濃度は低くなり、流入側端面と流出側端面の間で特異的に濃度が高くなることはない。しかし、本発明の触媒は、排気ガス流れ方向の所定の位置に所定の長さの中間域が設けられているために、中間域を有する位置に堆積するリン化合物の量は中間域を設けない場合と比較して多く堆積される。全部位に堆積したリン化合物量に対する中間域に堆積したリン化合物の合計量の割合を中間域堆積率とすると、中間域堆積率が12〜30%のリン化合物を堆積させて排気ガスを浄化することが好ましく、15%〜25%のリン化合物を堆積させて排気ガスを浄化することがより好ましい。
【0059】
また、中間域内では流出側端面に近い側にリン化合物が多く堆積し、中間域の流出側端面に近い側より流出側へのリン化合物の堆積が抑制される。そのため、特に流出側触媒成分がリン化合物による被毒を受けにくい状態となると思われる。ゆえに、本発明に係る触媒は、内燃機関の排気ガス中にリン化合物を含む排気ガスを浄化するのに好適に使用でき、特にガソリンエンジン等の内燃機関からの排気ガス中に含まれる窒素酸化物、一酸化炭素および炭化水素の浄化に優れた効果を奏する。
【0060】
触媒に堆積したリン化合物の量は、XRF(蛍光X線分析)、EPMA(エレクトロン・プローブ・マイクロアナライザー)、SEM−EDX等を用いて分析できる。触媒の排気ガス流れ方向の分布を調べる場合には、所定の長さで触媒を切断した後、各切断部位を前記XRF等でリン化合物量を分析することができる。各切断部位での分析結果を比較することで分布を調べることができる。
【0061】
上記内燃機関としては、特に限定されるものではない。例えば、ガソリンエンジン、ハイブリッドエンジン、天然ガス、エタノール、ジメチルエーテル等を燃料として用いるエンジン等を用いることができる。中でもガソリンエンジンであることが好ましい。
【0062】
上記排気ガス浄化用触媒を上記排気ガスに曝す時間は特に限定されるものではなく、上記排気ガス浄化用触媒の少なくとも一部分が上記排気ガスと接触することができる時間が確保されればよい。
【0063】
上記排気ガスの温度は、特に限定されるものではないが、0℃〜800℃、つまり通常運転時の排気ガスの温度範囲内であることが好ましい。ここで、温度が0℃〜800℃である上記内燃機関の排気ガスにおける空燃比は、10〜30未満であり、11〜14.7であることが好ましい。
【0064】
上記したような本発明の触媒または上記したような方法によって製造される触媒は、温度が800〜1200℃である排気ガスに曝されていてもよい。ここで、温度が800〜1200℃である排気ガスの空燃比は、10〜18.6であることが好ましい。また、上記排気ガス浄化用触媒を温度が800℃〜1200℃の排気ガスに曝す時間も、特に限定されるものではなく、例えば、5〜500時間曝されていてもよい。このような高温の排気ガスに曝された後にも本発明の触媒は、高い性能を有する。このように高温の排気ガスに曝された後の触媒の排気ガス浄化性能を調べるために、熱処理として、800℃〜1200℃の排気ガスに、5〜500時間曝す処理を触媒に施した後に、排気ガス浄化性能を調べることが有効である。
【0065】
[実施例]
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0066】
[実施例1]
硝酸パラジウム水溶液、CeO
2−ZrO
2複合酸化物、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酢酸ランタンおよび硫酸バリウムを、質量比がパラジウム(Pd):CeO
2−ZrO
2複合酸化物:Al
2O
3:硫酸バリウム(BaSO
4):酸化ランタンの換算で0.3:50:48:6:5となるように、それぞれ評量し、湿式粉砕することでスラリーaを作製した。作製したスラリーaを耐火性三次元構造体として、直径103mm、長さ105mm、円筒形の0.875L、1インチ(1インチ=25.4mm)あたり600セル、セル壁厚み2.5mil(1mil=0.0254mm)のコージェライト担体に焼成後の担持量が109.3g/Lとなるように塗布し、150℃で15分乾燥後、550℃で30分焼成し、耐火性三次元構造体に下触媒層を設けたA0を得た。なお、下触媒層は耐火性三次元構造体の排気ガス流入側端面から排気ガス流出側端面まで(排気ガス流入側端面から耐火性三次元構造体の全長に対して100%の位置まで)配置された。
【0067】
次に、CeO
2−ZrO
2複合酸化物、酸化アルミニウムおよび酸化ランタンを、質量比がCeO
2−ZrO
2複合酸化物:Al
2O
3:La
2O
3の換算で57:61:1.5となるように、それぞれ秤量し、湿式粉砕することでスラリーbを作製した。作製したスラリーbにロジウム(Rh):パラジウム(Pd):(スラリーbに含まれるCeO
2−ZrO
2複合酸化物およびAl
2O
3およびLa
2O
3の合計量の質量比)が0.17:0.08:29.4となるよう硝酸ロジウム水溶液、硝酸パラジウム水溶液、スラリーbを秤量し、混合したスラリーb1を作製した。
【0068】
次に、作製したスラリーbにロジウム(Rh):パラジウム(Pd):(スラリーbに含まれるCeO
2−ZrO
2複合酸化物およびAl
2O
3およびLa
2O
3の合計量)の重量比が0.23:0.12:90.1となるよう硝酸ロジウム水溶液、硝酸パラジウム水溶液、スラリーbを秤量し、混合したスラリーb2を作製した。
【0069】
作製したスラリーb1をA0に焼成後の担持量が担体1リットルあたり29.65gとなるように触媒流入側から25mmに塗布し、乾燥後、焼成を行いA1を得た。次にA1に、流出側上触媒層に流出側端面から65mmの長さまでスラリーb2を担体1リットルあたり90.45g塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側上触媒層と流出側上触媒層の間に下層が露出した長さ15mm(触媒全長に対する中間域長さの割合(以下、単に「割合」いう。)14.3%)の中間域を有する触媒Aを得た。なお、流入側上触媒層のロジウム濃度は0.57質量%であり、流出側上触媒層のロジウム濃度は0.25質量%であった。また、流入側上触媒層中のロジウムに対するパラジウムの質量比は0.47であり、流出側上触媒層中のロジウムに対するパラジウムの質量比は0.52であった。
【0070】
[実施例2]
実施例1において得られた該A1に、流出側端面から70mmの長さまでスラリーb2を担体1リットルあたり90.45g塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側上触媒層と流出側上触媒層の間に下層が露出した長さ10mm(割合9.5%)の中間域を有する触媒Bを得た。
【0071】
[実施例3]
実施例1において得られた該A1に、流出側端面から75mmの長さまでスラリーb2を担体1リットルあたり90.45g塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側上触媒層と流出側上触媒層流出側上触媒層の間に下層が露出した長さ5mm(割合4.8%)の中間域を有する触媒Cを得た。
【0072】
[比較例1]
実施例1において得られた該A1に、流出側端面から77mmの長さまでスラリーb2を担体1リットルあたり90.45g塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側上触媒層と流出側上触媒層流出側上触媒層の間に下層が露出した長さ3mm(割合2.9%)の中間域を有する触媒Dを得た。
【0073】
[比較例2]
実施例1において得られた該A1に、流出側端面から80mmの長さまでスラリーb2を担体1リットルあたり90.45g塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側上触媒層と流出側上触媒層の間に下層が露出した中間域の無い触媒Eを得た。
【0074】
[比較例3]
実施例1において得られた該A1に、流出側端面から55mmの長さまでスラリーb2を担体1リットルあたり90.45g塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側上触媒層と流出側上触媒層の間に下層が露出した長さ25mm(割合23.8%)の中間域を有する触媒Fを得た。
【0075】
[比較例4]
実施例1において得られた該A1に、流出側端面から50mmの長さまでスラリーb2を担体1リットルあたり90.45g塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側上触媒層と流出側上触媒層の間に下層が露出した長さ30mm(割合28.6%)の中間域を有する触媒Gを得た。
【0076】
[比較例5]
ロジウム(Rh):パラジウム(Pd):(スラリーbに含まれるCeO
2−ZrO
2複合酸化物およびAl
2O
3およびLa
2O
3の合計量)の重量比が0.4:0.2:119.5となるよう硝酸ロジウム水溶液、硝酸パラジウム水溶液、該スラリーbを秤量し、混合したスラリーb3を作製した。実施例1において得られた該A0の流入側端面から流出側端面に至るまでスラリーb3を担体1リットルあたり120.1g塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側から流出側に至るまで貴金属量の分布がなく、中間域の無い触媒Hを得た。
【0077】
[比較例6]
実施例1において得られたスラリーb1を実施例1において得られた該A0に焼成後の担持量が担体1リットルあたり29.65gとなるように触媒流入側から10mmに塗布し、乾燥後、焼成を行いI1を得た。次にI1に、流出側端面から85mmの長さまでスラリーb2を担体1リットルあたり90.45g塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側端面から10mm−20mmの位置に下層が露出した長さ10mm(割合9.5%)の中間域を有する触媒Iを得た。
【0078】
[実施例4]
実施例1において得られたスラリーb1を実施例1において得られた該A0に焼成後の担持量が担体1リットルあたり29.65gとなるように触媒流入側から15mmに塗布し、乾燥後、焼成を行いJ1を得た。次にJ1に、流出側端面から80mmの長さまでスラリーb2を塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側端面から15mm−25mmの位置に下層が露出した長さ10mm(割合9.5%)の中間域を有する触媒Jを得た。
【0079】
[実施例5]
実施例1において得られたスラリーb1を実施例1において得られた該A0に焼成後の担持量が担体1リットルあたり29.65gとなるように触媒流入側から35mmに塗布し、乾燥後、焼成を行いK1を得た。次にK1に、流出側端面から60mmの長さまでスラリーb2を塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側端面から35mm−45mmの位置に下層が露出した長さ10mm(割合9.5%)の中間域を有する触媒Kを得た。
【0080】
[比較例7]
実施例1において得られたスラリーb1を実施例1において得られた該A0に焼成後の担持量が担体1リットルあたり29.65gとなるように触媒流入側から45mmに塗布し、乾燥後、焼成を行いL1を得た。次にL1に、流出側端面から50mmの長さまでスラリーb2を塗布し、乾燥後、焼成を行った。流入側端面から45mm−55mmの位置に下層が露出した長さ10mm(割合9.5%)の中間域を有する触媒L得た。
【0082】
<熱およびリン被毒処理>
上記実施例1〜5ならびに比較例1〜7で得られた触媒A〜Lを、それぞれ、V型8気筒、4.6リットルエンジンの排気口から25cm下流側に設置し、触媒入口部のA/Fは14.6で触媒床部の温度を1000℃とし運転し、続いてA/Fが13.8で運転し、続いて燃料供給を停止して運転するサイクルを繰り返し、合計100時間運転し、熱処理を行った。
【0083】
次に、熱処理を行った各触媒を3.0Lエンジンの排気口の下流側に設置し、エンジンオイル中リン(P)濃度が3000ppmのオイルを用いて、触媒床部の温度を880℃とし運転することでリン被毒処理を行った。このように耐久した各触媒のリン含有量をXRFにて分析することで、三次元構造体1リットルあたり酸化リン(P
2O
5)として2.6gのリン化合物が触媒に含有することを確認した。
【0084】
<排気ガス浄化触媒のリン化合物付着量>
触媒B、Eおよび触媒Fについてリン付着量の分布を調べた。前記リン被毒を施した触媒B、E、およびFについて、排気ガス流入側端面を0mmとして流出側方向へ25mm、35mm、50mm、70mmの位置で各触媒を切断し、0〜25mm、25〜35mm、35mm〜50mm、50mm〜70mm、70mm〜105mmの各部位に含まれるリン化合物(P
2O
5換算)をXRF分析によって調べた。0〜105mmの全部位に堆積したリン化合物量に対する各部位に堆積したリン化合物量の割合および0〜105mmの全部位に堆積したリン化合物量に対する中間域に堆積したリン化合物の合計量の割合(以下中間域堆積率とする)を表2に示す。表から、10mmの長さの中間域を有する触媒Bは、中間域が位置する25mm〜35mmの部位のリン化合物の割合が中間域のない触媒Eより高く、25mmの長さの中間域を有する触媒Fは35〜50mmのリン化合物の割合が高い。触媒Fは、中間域の流入側10mmの部位に相当する25〜35mmは、35〜50mmよりもリン付着割合が少なく、排気ガス流れに沿って中間域内の流出側にリンが多く付着しており中間域にリンが付着することがわかる。
【0086】
<排気ガス浄化触媒の性能評価>
リン被毒後の上記各触媒を、それぞれ、直列6気筒、2.4リットルエンジン排気口から30cm下流側に設置し、A/Fを14.6で、触媒床部温度を100℃から500℃まで1800℃/分で昇温させ、触媒出口から排出されるガスをサンプリングし、CO、THC、NOxの各浄化率を算出した。各浄化率が20%に達する時の温度をT20として、T20に達するまでの時間を
図1、
図2に示す。リン被毒処理後のT20に達する時間が短いほど早期に20%の排気ガスが浄化されることを意味し、リン被毒処理後も高い排気ガス浄化性能を有していることを示している。
【0087】
図1、
図2の結果から、本実施例の触媒は、流入側から一定の位置に一定長さの中間域を有することで高い排気ガス浄化性能を有していることが示されている。
【0088】
本出願は、2016年7月20日に出願された日本国特許出願第2016−142702号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。