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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-155489(P2019-155489A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】穴あけ装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/20 20060101AFI20190823BHJP
   D05B 37/00 20060101ALI20190823BHJP
   D05C 7/04 20060101ALI20190823BHJP
   B26F 1/14 20060101ALI20190823BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20190823BHJP
   B26F 1/00 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   B26D7/20
   D05B37/00
   D05C7/04
   B26F1/14 Z
   B26D7/06 C
   B26F1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-41378(P2018-41378)
(22)【出願日】2018年3月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 順也
(72)【発明者】
【氏名】朝見 健
【テーマコード(参考)】
3B150
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
3B150AA15
3B150BA01
3B150CC07
3B150CE01
3B150CE23
3B150CE27
3B150CE28
3B150EB09
3B150EE03
3C021DA03
3C021DA06
3C021DA15
3C021GA01
3C060AA03
3C060AA20
3C060BA02
3C060BC26
3C060BD01
3C060BE08
3C060BG07
3C060BG18
3C060BH01
(57)【要約】
【課題】装置の生産性と作業性の向上を図る。
【解決手段】被加工物に穴あけを行う穴あけ工具2と、穴あけ工具の受け台31と、穴あけ工具を受け台に向かって進退移動させる進退機構と、受け台の上側で穴あけ工具の穴あけ位置を通過するように配置された帯状の保護シート41と、帯状の保護シートを一定の方向に沿って搬送する搬送機構40とを備えている。
帯状の保護シート41を穴あけ工具の穴あけ位置を通過するように搬送するので、保護シート41の未使用位置にいつも穴あけ工具を下降させることができ、被加工物と同程度の大きさの保護シートの毎回の交換も不要である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に穴あけを行う穴あけ工具と、
前記穴あけ工具の受け台と、
前記穴あけ工具を前記受け台に向かって進退移動させる進退機構と、
前記受け台の上側で前記穴あけ工具の穴あけ位置を通過するように配置された帯状の保護シートと、
前記帯状の保護シートをその長手方向に沿って搬送する搬送機構とを備えることを特徴とする穴あけ装置。
【請求項2】
前記搬送機構は、前記進退機構による前記穴あけ工具の一回の進退動作につき規定の送りピッチで前記帯状の保護シートを間欠的に搬送することを特徴とする請求項1に記載の穴あけ装置。
【請求項3】
前記被加工物を載置する載置台を備え、
前記載置台の載置面に前記帯状の保護シートを通すガイド溝を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の穴あけ装置。
【請求項4】
前記被加工物を保持する保持枠と、
前記保持枠を二次元方向に移動させる移動機構とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の穴あけ装置。
【請求項5】
前記進退機構は、前記穴あけ工具と縫い針とを交換保持可能であり、
前記受け台を着脱可能とし、
前記縫い針と協働して縫い糸による縫い目を形成する結節機構を備えることを特徴とする請求項4に記載の穴あけ装置。
【請求項6】
縫い針を保持してその上下動を行う針上下動機構と前記縫い針と協働して縫い糸による縫い目を形成する結節機構とを有するミシンを備え、
前記移動機構は、前記保持枠の可動範囲に前記穴あけ工具による穴あけ位置と前記ミシンによる針落ち位置とを含むことを特徴とする請求項4に記載の穴あけ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布、皮のようなシート状の対象物に穴あけを行う穴あけ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の穴あけ装置は、皮等の被加工物を水平に広げた状態で保持する保持枠と、保持枠を水平面上で任意の位置に移動させる移動機構と、ポンチを上下動させる穿孔機とを備え、被加工物の任意の位置に穴あけ加工を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−18151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記穴あけ装置は、ポンチと受け台の間に被加工物を配置した状態でポンチを下降させて穴あけ加工を行っている。
その際、ポンチの先端部が受け台に達すると欠けや劣化が生じやすくなり、また、加工時の騒音や振動が発生するので、保持枠で被加工物を保持する際に、被加工物の下側に受け台よりも軟質な樹脂等の材料からなる保護シートを介挿することで、ポンチの先端部の保護を図っていた。
【0005】
しかしながら、保護シートは一回使用すると各所に傷や穴、凹凸等が生じ、次の加工の際にはポンチ保護、騒音や振動の低減等の機能が損なわれ、また、凹凸による加工位置ズレが生じるおそれがあるので、一枚の被加工物毎に交換されていた。
このため、交換作業による作業効率の低下を生じ、また、一枚の被加工物につき一枚の保護シートが消費され、加工コストの増加も招いていた。
【0006】
本発明は、生産性及び経済性の向上を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、穴あけ装置において、
被加工物に穴あけを行う穴あけ工具と、
前記穴あけ工具の受け台と、
前記穴あけ工具を前記受け台に向かって進退移動させる進退機構と、
前記受け台の上側で前記穴あけ工具の穴あけ位置を通過するように配置された帯状の保護シートと、
前記帯状の保護シートをその長手方向に沿って搬送する搬送機構とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の穴あけ装置において、
前記搬送機構は、前記進退機構による前記穴あけ工具の一回の進退動作につき規定の送りピッチで前記帯状の保護シートを間欠的に搬送することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の穴あけ装置において、
前記被加工物を載置する載置台を備え、
前記載置台の載置面に前記帯状の保護シートを通すガイド溝を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の穴あけ装置において、
前記被加工物を保持する保持枠と、
前記保持枠を二次元方向に移動させる移動機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の穴あけ装置において、
前記進退機構は、前記穴あけ工具と縫い針とを交換保持可能であり、
前記受け台を着脱可能とし、
前記縫い針と協働して縫い糸による縫い目を形成する結節機構を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項4に記載の穴あけ装置において、
縫い針を保持してその上下動を行う針上下動機構と前記縫い針と協働して縫い糸による縫い目を形成する結節機構とを有するミシンを備え、
前記移動機構は、前記保持枠の可動範囲に前記穴あけ工具による穴あけ位置と前記ミシンによる針落ち位置とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、受け台の上側で穴あけ工具の穴あけ位置を通過するように配置された帯状の保護シートと、帯状の保護シートを一定の方向に沿って搬送する搬送機構とを備えているので、毎回の穴あけ工具の下降の際に、保護シートを移動させることができ、未使用箇所に穴あけ工具を下降させることが可能となる。
従って、保護シートにおける圧痕や傷等の凹凸箇所に穴あけ工具が下降することを回避することができ、凹凸の影響を受けずに良好な穴あけ加工を実現することが可能となる。
また、保護シートを帯状としてその長手方向に搬送する構成なので、被加工物と同程度の大きさの保護シートを用意して、毎回の被縫製物毎に交換する必要がなくなり、保護シートの消費量を低減することにより経済性を向上させると共に、交換作業の繁雑性を解消して生産性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】発明の実施形態である穴あけ装置の斜視図である。
図2】穴あけ装置の拡大斜視図である。
図3】穴あけ装置の一部を切り欠いた正面図である。
図4】保護シートの平面図である。
図5】穴あけ装置の他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[電子サイクルミシンの全体構成]
本発明の実施の形態である穴あけ装置10を図1図4に基づいて説明する。
この穴あけ装置10は、既存のミシンに対して、一部の構成を交換、追加することにより、穴あけ装置としての機能を実現させている。また、穴あけ装置10は、ミシンとしての機能も残しており、交換された構成をもとに戻すことでミシンとしても機能させることができる。ここでは穴あけ装置10の基礎として、いわゆる電子サイクル縫いミシンを利用した場合を例示する。電子サイクル縫いミシンは、縫製を行う被縫製物である布地を保持する保持枠を有し、その保持枠が縫い針に対し相対的に移動することにより、保持枠に保持される布地に所定の縫製パターンに基づく縫い目を形成するミシンである。
穴あけ装置10は、上記電子サイクル縫いミシンの特性を利用して、保持枠に被加工物を保持し、当該被加工物に対して任意の位置に穴あけを行うことを可能としている。
【0016】
図1は穴あけ装置10の斜視図、図2は拡大斜視図、図3は正面図を示す。
ここで、後述する穴あけ工具2が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する一定の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
穴あけ装置10は、図1に示すように、テーブルTの上面に配置されており、テーブルTの下部には穴あけ装置10を操作するためのペダルPが設けられている。
【0017】
穴あけ装置10は、被加工物に穴あけを行う穴あけ工具2と、穴あけ工具2の受け台31と、穴あけ工具2を受け台31に向かって進退移動させる進退機構と、受け台31の上側で穴あけ工具2の穴あけ位置を通過するように配置された帯状の保護シート41と、帯状の保護シート41をその長手方向に沿って搬送する搬送機構40と、被加工物を載置する載置台30と、被加工物を保持する保持枠61と、保持枠61を二次元方向に移動させる移動機構60と、穴あけ工具2と交換して装着可能な縫い針と、縫い針と協働して縫い糸による縫い目を形成する結節機構と、上記各構成を支持するフレーム20と、図示しない制御装置とを備えている。
【0018】
[フレーム]
図1に示すように、穴あけ装置10は、外形が側面視にて略コ字状を呈するフレーム20を備えている。このフレーム20は、ミシンフレームで構成されており、穴あけ装置10の上部をなし前後方向に延びるアーム部21と、穴あけ装置10の下部をなし前後方向に延びるベッド部22と、アーム部21とベッド部22とを連結する縦胴部23とを有している。
この穴あけ装置10は、フレーム20内に動力伝達機構が配され、回動自在でY軸方向に沿って配設された図示しない主軸及び図示しない下軸を有している。主軸はアーム部21の内部に配され、下軸はベッド部22の内部に配されている。
【0019】
[進退機構]
主軸は、主軸モーターの出力軸に連結されて回動力が付与される。また、下軸は、図示しない縦軸を介して主軸と連結しており、主軸が回動すると、主軸の動力が縦軸を介して下軸側へ伝達し、下軸が回動するようになっている。なお、これらの軸はいずれも図示が省略されている。
主軸の前端近傍には、上下動可能に支持された針棒からなる昇降軸が配設されている。この昇降軸は、アーム部21内において、Z軸方向に平行且つZ軸方向に沿って昇降可能に支持されている。そして、この昇降軸は、主軸に対して、クランク機構を介して連結されており、主軸一回転につき、昇降軸が一往復の上下動を行う。
そして、昇降軸の下端部には穴あけ工具2が装着されている。この穴あけ工具2は、抱き締め構造によって着脱可能であり、穴あけ装置10をミシンとして使用する場合には、穴あけ工具2を外して縫い針を装着することができる。
これら、主軸、主軸モーター、クランク機構及び昇降軸が進退機構を構成している。
【0020】
[穴あけ工具]
穴あけ工具2は、アーム部21の先端部の下方において、昇降軸の下端部に支持されている。この穴あけ工具2は円筒状であって、Z軸方向に平行に向けられている。そして、穴あけ工具2の下端部は下方に向かうにつれて周壁の厚さが薄くなり、下端は鋭利となっている。従って、穴あけ工具2の下端部を被加工物に押し当てると丸く穴あけ加工することができる。
この穴あけ工具2は、例えば、硬質材料であるハイス鋼から形成されており、シート状の布や皮等の被加工物に対して良好に穴あけ加工を行うことが可能である。なお、穴あけ工具2は、同程度の硬度と耐久性を有する他の材料から形成しても良い。
【0021】
[釜]
下軸(図示省略)の前端には、図3に示すように、穴あけ装置10をミシンとして使用する場合に使用する釜3が設けられている。釜3は、周知の垂直釜であり、外釜と内釜とボビンケースとボビンからなり、主軸とともに下軸が回転すると、外釜も回転して縫い針に通された縫い糸としての上糸を外釜の剣先が捕捉し、ボビンから繰り出される縫い糸としての下糸を絡め、縫い目を形成することができる、
【0022】
[載置台及び受け台]
図1図3に示すように、ベッド部22上には、被加工物を載置する載置台30が装備されている。この載置台30は、上面が水平な載置面となっている平板であり、穴あけ工具2の下方には、穴あけ工具2を縫い針に交換した場合に針落ちが行われる針落ち穴32が穿設されている。
また、載置台30の載置面には、針落ち穴32を通過するようにX軸方向に沿って帯状の保護シート41を通すガイド溝33が形成されている。さらに、ガイド溝33における針落ち穴32の形成位置の周囲は一段深くなっており、受け台31が嵌合する嵌合凹部34が形成されている。
また、ガイド溝33における一端部と他端部には、載置台30の下側から保護シート41が繰り出される繰り出し口35と、ガイド溝33を通過した保護シート41を載置台30の下側に回収する回収口36とが穿設されている。
【0023】
なお、穴あけ装置10をミシンとして使用する場合には、載置台30のガイド溝33全体を閉塞する針板が装備される。当該針板は、ガイド溝33に嵌合した状態で、その上面が載置台30の上面と面一となり、針落ち穴32の鉛直上方に同径の針落ち穴が形成されている。
また、前述した受け台31は、嵌合凹部34から取り外し可能であり、穴あけ装置10をミシンとして使用する場合には、受け台31は取り外される。
【0024】
受け台31は、穴あけ工具2の下降先に位置し、下降する穴あけ工具2の先端部が直接接触したとしても割れずに耐久し得る靱性備える金属、例えば、炭素工具鋼から形成されている。なお、受け台31は、同程度の硬度と耐久性を有する他の材料から形成しても良い。
【0025】
[保持枠及び移動機構]
載置台30の上には、図1に示すように、被加工物を保持する保持枠61が配設されている。この保持枠61は、いずれも矩形枠状の上板及び下板からなり、これらの間に被加工物を挟んで保持することができる。そして、これら矩形枠状の上板及び下板に挟持された被加工物は、枠の内側において、穴あけ工具2による穴あけ加工動作が行われる。
【0026】
移動機構60は、保持枠61を支持する移動台62と、移動台62のX軸方向に沿った移動動力となるX軸モーターと、移動台62のY軸方向に沿った移動動力となるY軸モーターと、X軸モーターからX軸方向に沿った移動力を移動台62に伝達する伝達機構と、Y軸モーターからY軸方向に沿った移動力を移動台62に伝達する伝達機構とを備えている。
これらにより、保持枠61は、X軸方向とY軸方向のそれぞれについて任意に移動位置決めが行われ、被加工物に対してX−Y平面上の任意の位置に穴あけ工具2を相対的に位置決めして穴あけ加工することができる。
【0027】
[保護シート及び搬送機構]
保護シート41は、図3に示すように、長尺の帯状に形成されており、リールRに巻き付けられてロール状に保持されている。
この保護シート41の長手方向に直交する幅方向の幅は、少なくとも穴あけ工具2の先端部の外径よりも広く設定されており、受け台31の上側に搬送されている。そして、被加工物の穴あけ加工の際には、当該被加工物を貫通した穴あけ工具2の先端部が保護シート41に衝突する。
この保護シート41は、穴あけ工具2及び受け台31よりも軟質な樹脂等の材料、例えば、非結晶性ポリエステル(PET)から形成されており、被加工物の良好な穴あけ加工、穴あけ工具2の先端部の保護、穴あけ工具2と受け台31との直接的な衝突による騒音の低減等を図ることができる。なお、保護シート41は、同様の作用が得られる他の樹脂、その他の材料から形成しても良い。
但し、この保護シート41は、穴あけ工具2が良好な穴あけ加工を行うために、その下端部が保護シート41に達するまで下降するように昇降軸に取り付けられているので、穴あけ加工が行われると、図4に示すように、保護シート41の穴あけ工具2の鉛直下方となる位置には、圧痕Mが形成される。
【0028】
搬送機構40は、図2及び図3に示すように、ベッド部22内に配設されている。即ち、搬送機構40は、ベッド部22内で回転可能に支持されたリールRから繰り出される保護シート41をガイドする受動スプロケット42と、保護シート41が受動スプロケット42の外周に密接するように支えるシート押さえ43と、保護シート41のリールRと受動スプロケット42との間で保護シート41の有無を検出するシート切れセンサ44と、載置台30のガイド溝33を通過してベッド部22内に戻された保護シート41を送る駆動スプロケット45と、保護シート41が駆動スプロケット45の外周に密接するように支えるシート押さえ46と、駆動スプロケット45に回転力を付与する図示しない搬送モーターと、駆動スプロケット45により下方に送られた保護シート41を回収する回収ボックス47とを備えている。
【0029】
上記受動スプロケット42は、前述した載置台30の繰り出し口35の下方において、Y軸回りに回転可能に支持されており、リールRは受動スプロケット42のさらに下方においてY軸回りに回転可能に支持されている。
そして、リールRから繰り出された保護シート41が受動スプロケット42の上部において外周に接して繰り出し口35に到るように、リールR及び受動スプロケット42は配置されている。
シート押さえ43は、上記配置の受動スプロケット42における保護シート41が接する位置に設けられ、弛み等の発生により保護シート41が受動スプロケット42から離れないように押さえている。
【0030】
また、受動スプロケット42は、外部から回転力は付与されず、駆動スプロケット45によって搬送される保護シート41によって従動回転を行う。この受動スプロケット42には、トルクリミッターが内蔵されており、駆動スプロケット45によって搬送される保護シート41が途中で弛みを生じないようにしている。
上記トルクリミッターは、トルクブレーキとして機能するものであり、外部からのトルクに対して一定のトルク抵抗を付与する。
【0031】
シート切れセンサ44は、保護シート41のリールRと受動スプロケット42との間を通過する保護シート41の有無を検出光の遮蔽状態から検出する光学的なセンサである。
シート切れセンサ44により保護シート41の有る状態が検出されている間は、穴あけ装置10の制御装置は、保護シート41の搬送を許可する制御を行い、シート切れセンサ44により保護シート41の無い状態が検出されると、保護シート41の搬送を停止させる制御が行われる。
【0032】
なお、このシート切れセンサ44は、リールRの保護シート41が全て繰り出され空になった状態と、保護シート41が何らかの原因で途中で切れてしまった場合の両方を検出することができる。
なお、シート切れセンサ44は、保護シート41の有無を検出することが可能なあらゆるセンサを使用することができる。例えば、保護シート41に接触する接触式のセンサにより、保護シート41がなくなると接触圧がなくなることで、保護シート41の有無を検出する構成としても良い。
【0033】
上記駆動スプロケット45は、前述した載置台30の回収口36の下方において、Y軸回りに回転可能に支持されている。
そして、載置台30のガイド溝33を通過して回収口36から回収された保護シート41が駆動スプロケット45の上部において外周に接して回収ボックス47に到るように、駆動スプロケット45は配置されている。
シート押さえ46は、上記配置の駆動スプロケット45における保護シート41が接する位置に設けられ、弛み等の発生により保護シート41が駆動スプロケット45から離れないように押さえている。
【0034】
駆動スプロケット45は、直接的に又は伝達機構を介して間接的に搬送モーターの出力軸に連結されており、搬送モーターから回転力が入力される。
この搬送モーターは、例えば、ステッピングモーターであり、任意の速度及び任意の角度量で駆動スプロケット45を回転させることができる。
そして、制御装置は、主軸モーターに併設された軸角度検出器又はエンコーダーの出力を監視して、穴あけ工具2が下降穿設後、上昇中に搬送モーターが保護シート41を一定の送りピッチで間欠的に搬送するように搬送モーターを同期制御する。
搬送モーターによる保護シート41の送りピッチは、図4に示すように、少なくとも穴あけ工具2の下端部の外径よりも大きく設定される。但し、各圧痕同士の間隔は極力小さくなるように送りピッチを設定することで、保護シート41の消費量を低減することができ、経済性の観点からはより好ましい。
【0035】
[ペダル]
ペダルPは、主軸モーターを駆動し、穴あけ加工を開始させるための操作ペダルとして機能する。すなわちペダルPには、ペダルPが踏み込まれたその踏み込み操作位置を検出するための、例えば、可変抵抗等から構成されるセンサ(踏み込み量検出手段)が組み込まれており、センサからの出力信号がペダルPの操作信号として制御装置に出力され、制御装置はその操作信号に応じて、主軸モーターを駆動し、動作させるように構成されている。
【0036】
[その他、ミシンとしての構成]
前述したように、穴あけ装置10は、穴あけ工具2を縫い針に交換してミシンとして使用することができる。
このため、穴あけ装置10は、穴あけ加工には使用されず、ミシンとしての使用の際に使用される構成を備えている。
例えば、昇降軸の隣には、保持枠61に被縫製物を保持した際に、縫い針によって上下動する被縫製物を押さえるための中押さえとその昇降機構が設けられている。この中押さえは、着脱可能であり、穴あけ工具2の装着時には取り外される。
また、ミシンとして必要な天秤機構、糸調子、糸案内も装備されているが、これらは図1図3において図示を省略している。
【0037】
[穴あけ装置の動作]
上記構成の穴あけ装置10は、制御装置が、被加工物に対する複数の穴あけ加工位置を記憶した加工データを記憶している。
そして、ペダルPが踏まれると、主軸モーターが起動し、毎回の穴あけ工具2の下降動作に同期して、X軸モーター及びY軸モーターが制御され、保持枠61に保持された被加工物が加工データに定められた穴あけ加工位置に穴あけ工具2が位置決めされるように被加工物の搬送が行われる。
一方、搬送機構40では、穴あけ工具2の下降動作に同期して、搬送モーターが駆動され、保護シート41が一定の送りピッチで間欠的に搬送され、毎回の穴あけ工具2の下降の際に、保護シート41の未使用位置に穴あけ工具2が下降するように制御される。
【0038】
[穴あけ装置の技術的効果]
以上の構成からなる穴あけ装置10は、受け台31の上側で穴あけ工具2の穴あけ位置を通過するように配置された帯状の保護シート41と、帯状の保護シート41を一定の方向に沿って搬送する搬送機構40とを備えているので、毎回の穴あけ工具2の下降の際に、保護シート41を移動させることができ、未使用箇所に穴あけ工具2を下降させることが可能となる。
従って、保護シート41における圧痕や傷等の凹凸箇所に穴あけ工具2が下降することを回避することができ、凹凸の影響を受けずに良好な穴あけ加工を実現することが可能となる。
また、保護シート41を帯状としてその長手方向に搬送する構成なので、被加工物と同程度の大きさの保護シートを用意して、毎回の被縫製物毎に交換する必要がなくなり、保護シートの消費量を低減することにより経済性を向上させると共に、交換作業の繁雑性を解消して生産性の向上を図ることが可能となる。
【0039】
また、搬送機構40は、進退機構による穴あけ工具2の一回の進退動作につき規定の送りピッチで帯状の保護シート41を間欠的に搬送するので、毎回の穴あけ工具2の下降に対して、保護シート41の未使用箇所に穴あけ工具2を下降させることができ、凹凸の影響をさらに低減してより良好な穴あけ加工を実現することが可能となる。
また、送りピッチを適正に選択して設定することで、保護シートの消費量をさらに低減することができ、経済性及び生産性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0040】
また、穴あけ装置10では、載置台30の載置面に帯状の保護シート41を通すガイド溝33が形成されているので、穴あけ工具2の打撃の影響による保護シート41のズレを抑制し、より的確に穴あけ工具2を保護シート41に下降させることができ、被加工物のより穴あけ加工、穴あけ工具2の先端部の保護、穴あけ工具2と受け台31との直接的な衝突による騒音の低減等をより効果的に実現することが可能となる。
【0041】
また、穴あけ装置10は、被加工物を保持する保持枠61と保持枠61を二次元方向に移動させる移動機構60とを備えているので、被加工物の任意の位置に的確に穴あけ加工を行うことができ、複数の目標位置に穴あけ加工を行う場合でも、連続して実行することができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0042】
また、穴あけ装置10は、その進退機構が穴あけ工具2と縫い針とを交換保持可能であり、受け台31を着脱可能とし、縫い針と協働して縫い糸による縫い目を形成する結節機構としての釜3を備えているので、穴あけ装置10の穴あけ工具2を縫い針に交換することにより、ミシンへの転用が可能である。
また、逆に、既存のミシンの構成を利用して、穴あけ装置10を容易に製造することが可能である。
【0043】
[その他の穴あけ装置]
図1の穴あけ装置10は、穴あけ工具2と縫い針の交換により穴あけ装置とミシンとしての機能を選択的に実現する構成だが、穴あけ装置にミシンの構成を別途付加して、部品の交換作業なしで穴あけ装置としての機能とミシンとしての機能を実現する構成としても良い。
【0044】
例えば、図5に示すように、穴あけ装置本体10Aと、針上下動機構を有するミシン90Aと、X−Y平面の任意の位置に移動可能な保持枠61Aと、その移動機構60Aと、これらを支持する支持台4Aとを備える穴あけ装置100Aを備える構成といても良い。
この穴あけ装置100Aの穴あけ装置本体10Aは、前述した穴あけ装置10の構成から移動機構60及び保持枠61とミシンとして使用する構成(釜、天秤、糸調子等)を全て除いた構成である。
また、ミシン90Aは、前述した穴あけ装置10の構成に対して穴あけ工具2を縫い針に交換し、受け台31を針板に交換し、搬送機構40及び保護シート41を除いた構成である。
穴あけ装置本体10Aとミシン90Aは互いに隣り合った状態で支持台4Aに支持され、移動機構60Aは、保持枠61Aの可動範囲に穴あけ装置本体10Aの穴あけ工具2の穴あけ位置とミシン90Aによる針落ち位置とを含むように配置されている。
【0045】
このような穴あけ装置100Aの場合、被加工物に対して穴あけ加工を行いつつ、形成された孔部を利用して縫製を行うことができる。
穴あけ装置100Aの制御装置は、被加工物に対する複数の穴あけ加工位置を記憶した加工データを記憶し、加工動作の際には、穴あけ装置本体10Aと移動機構60Aを同期させて、各穴あけ加工位置に穴あけ加工を実行する。
さらに、制御装置は、ミシン90Aと移動機構60Aを同期させて、各穴あけ加工位置に順番に針落ちを行って縫製を実行する。
【0046】
このように、穴あけ装置100Aは、穴あけ装置本体10Aとミシン90Aを備え、移動機構60Aを保持枠61Aの可動範囲に穴あけ装置本体10Aの穴あけ工具2の穴あけ位置とミシン90Aによる針落ち位置とを含むように配置することで、穴あけ加工を行い、その穴あけ加工位置を利用して縫製を実行することが可能となる。
【0047】
[その他]
前述した穴あけ装置10では、穴あけ工具2と縫い針を交換して、ミシンとしての機能も実現可能に構成されている場合を例示したが、穴あけ装置10について、ミシンでのみ使用する構成を全て除去して、穴あけ装置の専用機として構成しても良い。
【0048】
また、図4の例では、保護シート41の幅方向の中央部に穴あけ工具2が下降する配置で搬送される場合を例示したが、幅方向の片側に片寄って穴あけ工具2が下降する配置で搬送しても良い。
その場合、回収ボックス47に替えて、保護シート41を巻き取るリールRと巻き取り機構とを設けることが望ましい。
これにより、使用済みの保護シート41を巻き取ったリールRを、保護シート41を載置台30上に供給する側のリールRの取り付け位置に付け直すことで、使用済みの保護シート41の圧痕Mが形成されていない幅方向の半分側に穴あけ工具2を下降させることができ、保護シート41をより長期にわたって使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
2 穴あけ工具
10,100A 穴あけ装置
10A 穴あけ装置本体
20 フレーム
30 載置台
31 受け台
33 ガイド溝
34 嵌合凹部
40 搬送機構
41 保護シート
60,60A 移動機構
61,61A 保持枠
90A ミシン
M 圧痕
R リール
図1
図2
図3
図4
図5