特開2019-156522(P2019-156522A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-156522(P2019-156522A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】高所作業車の乗降装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20190823BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   B66F9/06 V
   B66F9/06 K
   B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-42516(P2018-42516)
(22)【出願日】2018年3月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 渉
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB02
3F333AB04
3F333BD02
3F333BE02
3F333DB10
3F333FA17
3F333FA34
3F333FA36
3F333FD01
3F333FE03
3F333FG05
(57)【要約】
【課題】作業台への乗降の安全性を確保することのできる高所作業車の乗降装置を提供する。
【解決手段】高所作業車1の乗降装置は、ブーム30を後方に倒伏させて作業台40を側方に首振りさせた状態でブーム30および作業台40が架装領域に格納されるように構成され、ブーム30および作業台40が車体2上の架装領域に格納された状態で、車体2上の架装領域のうち作業台40を挟んでブーム30に対して車幅方向の反対側に位置する反対側領域に、作業台40に乗降するときに利用される第2ステップ200を備え、この第2ステップ200が車幅方向の外方へ拡幅自在に構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に運転キャブを有して走行可能な車両と、前記車体における前記運転キャブの後方の架装領域の前部に水平旋回自在に設けられた旋回台と、前記旋回台に起伏自在に取り付けられたブームと、前記ブームの先端部に前記ブームに対して首振り自在に取り付けられた作業台とを備え、前記ブームを後方に倒伏させて前記作業台を側方に首振りさせた状態で前記ブームおよび前記作業台が前記架装領域に格納されるように構成された高所作業車において、
前記ブーム及び前記作業台が格納された状態で、前記架装領域のうち前記作業台を挟んで前記ブームに対して車幅方向の反対側に位置する反対側領域に、前記作業台に乗降するときに利用される乗降ステップを備え、
前記乗降ステップが車幅方向の外方へ拡幅自在に構成されていることを特徴とする高所作業車の乗降装置。
【請求項2】
前記乗降ステップは、前記車体上に固定された主ステップ部と、前記主ステップ部に対して車幅方向にスライド自在に取り付けられた副ステップ部とを備え、前記主ステップ部に対して前記副ステップ部を車幅方向の外方へスライドさせて当該乗降ステップを車幅方向に拡張させた張出状態と、前記主ステップ部に対して前記副ステップ部を車幅方向の内方へスライドさせて当該乗降ステップを車幅方向に縮幅させた格納状態とに変位可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の乗降装置。
【請求項3】
前記主ステップ部に対する前記副ステップ部のスライド位置を段階的に調節して固定するためのロック手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の高所作業車の乗降装置。
【請求項4】
前記乗降ステップが格納状態であるか否かを検出する格納検出手段と、
前記運転キャブ内に設けられて前記格納検出手段の検出情報に基づき前記乗降ステップが格納状態であるか否かを報知する格納報知手段とを備えていることを特徴とする請求項2又は3に記載の高所作業車の乗降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体上にブームと該ブームの先端部に取り付けられた作業台とを有する高所作業車の乗降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、一般的に、トラック車両をベースとした車体上に起伏動、伸縮動および旋回動可能に設けられた伸縮ブームの先端部に作業者搭乗用の作業台を有して構成され、該作業台に搭乗した作業者が該作業台に備えられた操作装置を操作することにより、伸縮ブームを作動させて作業台を所望の高所位置へ移動させて作業を行うことができるようになっており、電気設備の工事や道路工事等をはじめとして広く利用されている。
【0003】
このような高所作業車としては、旋回台が運転キャブ後方の車体上の前部に設けられて作業台が車体上の後方空間に格納される後方格納型の高所作業車(例えば、特許文献1を参照)が知られている。この高所作業車では、車両の構造規格を満足したうえで作業可能な範囲を拡大するため(すなわち、車両の規格寸法内にて最大のブーム長を確保するため)、作業台は車体上においてブームの側方に首振りした状態で格納されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐43112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の高所作業車において、作業台に搭乗する際のブーム及び作業台の姿勢は、ブーム及び作業台を車体上に格納した姿勢を前提としており、車体上には作業者が後方格納姿勢の作業台に搭乗するための乗降経路(乗降ステップ)が設けられている。この高所作業車では、車体上における作業台の側方に乗降ステップが隣接して配置されているが、ブーム及び作業台を後方格納姿勢とするレイアウトの都合上、必然的に作業台の側方の領域(乗降ステップの横幅)が狭くなってしまう。その結果、この乗降ステップを通る際に作業者の足場が狭小となるうえ作業台から圧迫感を受けるため、作業者の身体が車両外方にはみ出して不安全な体勢となり得る場合があり、作業台への乗降の安全性が低下するおそれがあるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、作業台への乗降の安全性を確保することのできる高所作業車の乗降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る高所作業車の乗降装置は、車体の前部に運転キャブを有して走行可能な車両と、前記車体における前記運転キャブの後方の架装領域の前部に水平旋回自在に設けられた旋回台と、前記旋回台に起伏自在に取り付けられたブームと、前記ブームの先端部に前記ブームに対して首振り自在に取り付けられた作業台とを備え、前記ブームを後方に倒伏させて前記作業台を側方に首振りさせた状態で前記ブームおよび前記作業台が前記架装領域に格納されるように構成された高所作業車において、前記ブーム及び前記作業台が格納された状態で、前記架装領域のうち前記作業台を挟んで前記ブームに対して車幅方向の反対側に位置する反対側領域に、前記作業台に乗降するときに利用される乗降ステップを備え、前記乗降ステップが車幅方向の外方へ拡幅自在に構成さ
れていることを特徴とする。
【0008】
なお、上記構成の高所作業車の乗降装置において、前記乗降ステップは、前記車体上に固定された主ステップ部と、前記主ステップ部に対して車幅方向にスライド自在に取り付けられた副ステップ部とを備え、前記主ステップ部に対して前記副ステップ部を車幅方向の外方へスライドさせて当該乗降ステップを車幅方向に拡張させた張出状態と、前記主ステップ部に対して前記副ステップ部を車幅方向の内方へスライドさせて当該乗降ステップを車幅方向に縮幅させた格納状態とに変位可能に構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記構成の高所作業車の乗降装置において、前記主ステップ部に対する前記副ステップ部のスライド位置を段階的に調節して固定するためのロック手段を備えていることが好ましい。
【0010】
さらに、上記構成の高所作業車の乗降装置において、前記乗降ステップが格納状態であるか否かを検出する格納検出手段と、前記運転キャブ内に設けられて前記格納検出手段の検出情報に基づき前記乗降ステップが格納状態であるか否かを報知する格納報知手段とを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高所作業車の乗降装置によれば、副ステップ部を主ステップ部に対して車幅方向にスライド移動させて、乗降ステップの踏面(有効面積)を拡縮調節することができるため、作業者が作業台の側方の乗降経路を通る際に、作業者の足場が十分に確保されて作業台から圧迫感を感じることもなく、安全且つ容易に作業台に乗降することが可能となる。
【0012】
また、上記構成の高所作業車の乗降装置において、副ステップ部のスライド位置をロック機構により段階的に調節する構成とすることで、当該車両の駐車時における寄せ幅(当該車両側方の障害物との距離)に応じた張出幅だけ副ステップ部を車両側方に張り出すことができるため、当該車両側方の限られた空きスペースを最大限に活用して乗降ステップの踏面として有効利用することができるようになり、作業者の乗降時の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0013】
さらに、上記構成の高所作業車の乗降装置において、乗降ステップが格納状態にあるか否かを報知する格納報知手段を具備することで、作業者は車両走行を開始する前に、この乗降ステップが格納状態にあるか否かを容易に確認することができるため、この乗降ステップを車両外方に張り出した状態(未格納状態)のままで、当該車両を誤って道路走行させてしまう事態を未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る乗降装置を備えた高所作業車の斜視図である。
図2】上記高所作業車の側面図である。
図3】上記高所作業車の平面図である。
図4】上記高所作業者の背面図である。
図5】上記高所作業車における作動機構を示すブロック図である。
図6】上記高所作業車に備えられた第2ステップ(乗降ステップ)の斜視図である。
図7】上記第2ステップの正面図である。
図8図7の矢視VIII−VIIIに沿って示す断面図である。
図9】上記第2ステップの側断面図である。
図10】上記第2ステップの基台の斜視図である。
図11】上記第2ステップの副ステップ部材の斜視図である。
図12】(A)は上記第2ステップの格納位置を示す平面図、(B)は上記第2ステップの最大張出位置を示す平面図である。
図13】(A)は上記第2ステップの格納位置を示す側面図、(B)は上記第2ステップの最大張出位置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る乗降装置を備えた高所作業車1を図1図4に示しており、まず、これらの図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に付記する矢印方向を前後、左右、上下と定義する。
【0016】
高所作業車1は、車体2の前部に運転キャブ7を有し、車体2の前後に配された左右一対の前輪5f及び後輪5rにより走行可能なトラック式車両をベースに構成されている。車体2は、前輪5fおよび後輪5rが配設されたシャシフレーム3と、このシャシフレーム3上に取り付けられたサブフレーム4とからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0017】
サブフレーム4の前後左右には、車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置10が設けられている。ジャッキ装置10は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11(図5を参照)を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。車体2には、各ジャッキ10f,10rの作動操作を行うためのジャッキ操作装置15(図5を参照)が設けられている。
【0018】
サブフレーム4上の前部(車体2における運転キャブ7後方の架装領域の前部)には、旋回モータ24(図5を参照)により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台20が設けられている。旋回台20は、サブフレーム4上の左右方向の略中央部に配設されている。この旋回台20の上部には、ブーム30の基端部がフートピン21を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、サブフレーム4の左右には、作業工具や作業基材などを収納するための左右の工具箱26L,26Rが設けられている。
【0019】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み立てられた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31(図5を参照)の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと旋回台20との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0020】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cとの間に配設されたレベリング装置(図示せず)により揺動制御が行われ、ブーム30の起伏の如何に拘らずこの垂直ポストが常時垂直姿勢に保持される構成となっている。また、この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ41(図5を参照)が設けられており、この首振りモータ41を駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持さ
れる。
【0021】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた作業操作装置(上部操作装置)45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、作業操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ41の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。なお、図示省略するが、車体2にも作業操作装置(下部操作装置)が設けられており、地上もしくは車体2上に居る作業者が上記の作動操作を行うことができるようになっている。
【0022】
車体2に設けられたジャッキ装置10及び高所作業装置(上述の旋回台20、ブーム30、作業台40など)の作動機構は、図5に示すように、ジャッキ操作装置15及び作業操作装置45からの操作信号が入力されるコントローラ50と、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31、首振りモータ41(以下、まとめて「油圧アクチュエータ55」と称する)を作動させるための作動油を供給する油圧ユニット60と、直流電力を蓄電する作業用バッテリ70と、作業用バッテリ70からの直流電力を交流電力に変換して油圧ユニット60に供給するインバータ71とを備えて構成されている。
【0023】
油圧ユニット60は、作業用バッテリ70からインバータ71を介して供給される電力(交流電力)を受けて駆動するポンプ駆動モータ61と、このポンプ駆動モータ61により駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプ62と、油圧アクチュエータ55のそれぞれに対応して設けられた制御バルブ63と、作動油を貯留する油タンクTとを有して構成されている。この油タンクTに貯留された作動油は、油圧ポンプ62により吸い上げられて制御バルブ63へ供給される。制御バルブ63は、コントローラ50からの制御信号(ジャッキ操作装置15及び作業操作装置45からの操作信号に応じた制御信号)に応じて油圧ポンプ62から各油圧アクチュエータ55に供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータ55の作動方向及び作動速度を制御する(ジャッキ装置10及び高所作業装置の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0024】
このように構成される高所作業車1では、図1図4に示すように、ブーム30を全縮状態に縮小作動させるとともに後方に倒伏作動させたうえで、作業台40をブーム30の左側方に首振り作動させることにより、ブーム30及び作業台40が車体2における運転キャブ7後方の架装領域上に格納された状態(後方格納姿勢)となる。ブーム30及び作業台40が格納状態(後方格納姿勢)となると、ブーム30の先端部が車体2上の後部右隅に位置し、このブーム30の先端部から左側方に首振り作動された作業台40が車体2上の後部左寄りに位置する。
【0025】
かかる構成の高所作業車1には、格納状態の作業台40と地上との間で作業者が乗降するための乗降経路80が設けられている。この乗降経路80は、作業者が車両の後方から車体2上に乗り込む、いわゆる後方乗り込み式の乗降経路として構成されている。
【0026】
この乗降経路80には、車体2の後方の左尾灯の上方に設けられた略樋状の第1ステップ100と、車体2上の後部左隅に設けられて作業台40の左側方に位置する踏台状の第2ステップ200と、第2ステップ200の前方に隣接して設けられた踏台状の第3ステップ300と、第3ステップ300の前方に隣接して設けられて左側の工具箱26Lと兼用して構成された第4ステップ400と、第4ステップ400の右方に隣接して設けられて作業台40の前方に位置する踏台状の第5ステップ500とが配設されている。各ステップ100〜500は、その上面側が作業者の足場となる踏面として形成されている。そ
して、これら第1〜第5ステップ100〜500は、第1ステップ100から第5ステップ500に向かって段階的に高くなる5段式の階段状に形成されている。
【0027】
ここで、この乗降経路80において、サブフレーム4上における作業台40の左側方の領域(第2ステップ200が配設される領域)は、ブーム30及び作業台40を後方格納姿勢とするレイアウトの都合上、必然的に横幅(左右方向の幅)が狭くなってしまう。その結果、そこを通る作業者の足場が狭小となるうえ作業台40に圧迫されるため、作業者の身体が車幅方向の外方にはみ出して不安全な体勢となり、作業台40への乗降の安全性が低下するおそれがある。そこで、本実施形態において、この狭幅の領域に配される第2ステップ200は、作業台40に乗降する際の作業者の足場を十分に確保するため、車幅方向(左右方向)に拡縮自在となるスライド式のステップ装置として構成されている。
【0028】
それでは、以下において本実施形態の第2ステップ200の構造について、図6図13を参照しながら説明する。第2ステップ200は、サブフレーム4上に取り付けられた基台210と、この基台210上に取り付けられた主ステップ部材220と、この主ステップ部材220にスライド自在に取り付けられた副ステップ部材230とを主体に構成される。
【0029】
基台210は、前後方向に延びる縦長の矩形平板状に形成されており、車体2のサブフレーム4上に接合されている。基台210の上面には、平面視L字状に屈曲する一対のレール板211と、このレール板211の左端部に近接配置された一対のローラ支持台212とが設けられている。レール板211は、左右方向に直線状に延びて副ステップ部材230のスライド運動を案内するレール部211aを有している。ローラ支持台212は、平面視コ字状に屈曲する支持板212aと、基台210の上面に複数本のボルトにより締結される固定板212bとを備えている。支持板212aには、水平軸回りに回転自在に支持されて副ステップ部材230の下面に摺接する下面ローラ213と、鉛直軸回りに回転自在に支持されて副ステップ部材230の側面に摺接する側面ローラ214とが取り付けられている。下面ローラ213及び側面ローラ214は、例えばカムフォロア等の転動体から構成される。また、基台210の上面には、副ステップ部材230を主ステップ部材220に対して位置決めした状態で固定するロック機構215が取り付けられている。
【0030】
ロック機構215は、基台210上に複数本のボルトにて固定された矩形状の底板216と、底板216の上面に接合された中空円筒状の支持筒217と、支持筒217の中空内に支持されて前後方向(副ステップ部材230のスライド方向と直交する方向)に摺動自在に取り付けられた棒状のロックピン218とを備えて構成される。ロックピン218は、支持筒217に抜け止め状態で取り付けられており、この支持筒217の中空内に配設されたコイルバネ(図示せず)の弾性力を受けて前方向(ロックピン218を後述のロック孔239に挿入させる方向)に常時付勢されている。
【0031】
主ステップ部材220は、前後方向に延びる縦長の矩形箱状に形成されており、複数本のボルトを用いて基台210の上面に固定されている。主ステップ部材220は、左側方に開口して副ステップ部材230を収容可能な内部収容空間221を有しており、この内部収容空間221の開口を通じて副ステップ部材230が主ステップ部材220に対してスライド自在に収容されている。この主ステップ部材220の上面には、作業者が乗降するときの足場となる右踏面SRが形成されている。この右踏面SRは、副ステップ部材230のスライド位置に関わらず、作業者が常時利用可能な足場として形成されている。
【0032】
主ステップ部材220の上面と後面との間には、作業者が乗降する際に把持できる棒状の内側手摺り229が取り付けられている。内側手摺り229は、複数本の管材を組み合わせて形成されており、主ステップ部材220の上面に立設されて上下方向に延びる直線
状の支柱229aと、この支柱部229aの上端に連結されて前後方向(水平方向)に延びる直線状の水平手摺り229bと、略矩形の環状に屈曲形成されて水平手摺り229bの後端部に連結されるとともにその両端部(下端部)が主ステップ部材220の上面及び後面に跨って固定された補助手摺り229cとを有して構成される。
【0033】
副ステップ部材230は、主ステップ部材220の内部収容空間221に収容可能な大きさの矩形箱状に形成されている。この副ステップ部材230の左端部には、作業者が乗降する際に把持できる棒状の外側手摺り245が取り付けられている。外側手摺り245は、一本の管材を下向きの略コ字形に屈曲して形成されており、その各端部が副ステップ部材230の左隅部に形成された貫通孔233aに抜け止め状態で装着されている。この外側手摺り245には、該外側手摺り245の下半部分を覆う矩形状のカバー部材246が固定されている。
【0034】
副ステップ部材230は、水平面内に延びる天板部231と、天板部231の前後の縁部から下方に延出して内側に屈曲する断面L字状の一対の曲板部232と、天板部231の左側の縁部から下方に延出する側板部233とから構成されている。この副ステップ部材230は、右側方および下方に向けて開口されている。
【0035】
天板部231の上面には、作業者が乗降するときの足場となる左踏面SLが形成されている。本実施形態では、主ステップ部材220の右踏面SRと副ステップ部材230の左踏面SLとの組合せにより、第2ステップ220の踏面(ステップ面)Sが構成される。この天板部231の上面における前後の端部には、上面スライダ234がそれぞれ取り付けられている。上面スライダ234は、例えば合成樹脂材を用いて左右方向に延びる略直方体状に形成されており、複数本のボルトにて該天板部231に締結されている。また、各曲板部232の右端部の内面には、鉛直軸回りに回転自在に支持されて基台210のレール部211aに摺接する側面ローラ235が取り付けられている。各曲板部232の右端部の底面には、下面スライダ236がそれぞれ取り付けられている。下面スライダ236は、例えば合成樹脂材を用いて略直方体状に形成されており、曲板部232の右端部にボルトにて締結されている。上面スライダ234は主ステップ部材220の内面と摺接可能に形成され、下面スライダ236は基台210の上面と摺接可能に形成されており、それにより副ステップ部材230の主ステップ部材220に対するスライド移動(往復運動)を上下のスライダ234,236にて円滑に案内することが可能となる。
【0036】
各曲板部232の前後の外面には、該外面に接合されたブラケット部材237を介してロック板238が固定されている。ロック板238は、左右方向に延びる横長の平板状に形成されており、複数本のボルトによりブラケット部材237に締結されている。ロック板238には、図11に示すように、複数のロック孔239が左右方向に等間隔で形成されており、左から右に向かって順に、第1ロック孔239a、第2ロック孔239b、第3ロック孔239c、第4ロック孔239d、第5ロック孔239eおよび第6ロック孔239fが配設されている。各ロック孔239は、ロックピン218の先端部が挿入可能となるように形成されており、その挿入状態において副ステップ部材230が基台210及び主ステップ部材220に対して位置決め状態で固定される。ここで、各ロック孔239は、上述のように、左右方向(スライド方向)に等間隔で形成されており、ロックピン218が挿入されるロック孔239の位置に応じて、主ステップ部材220に対する副ステップ部材230の相対位置(左方への張出量)を段階的に調節可能となっている。つまり、複数のロック孔239のうち、ロックピン218が挿入されるロック孔239の位置が右側となるほど、主ステップ部材220に対する副ステップ部材230の張出量が大きくなり、ロックピン218が挿入されるロック孔239の位置が左側となるほど、主ステップ部材220に対する副ステップ部材230の張出量が小さくなる。従って、複数のロック孔239のうち最も左側に位置する第1ロック孔239aは、副ステップ部材230
が主ステップ部材220の内部収容空間221内に格納された位置(「格納位置」と呼称する)となるときにロックピン218が挿し込まれるロック孔239である。一方、複数のロック孔239のうち最も右側に位置する第6ロック孔239fは、副ステップ部材230が主ステップ部材220に対して最も左側方に張り出した位置(「最大張出位置」と呼称する)となるときにロックピン218が挿し込まれるロック孔239である。よって、副スライド部材230は、ロックピン218が第1ロック孔239aに挿入される格納位置(図12(A)及び図13(A)を参照)と、ロックピン218が第6ロック孔239fに挿入される最大張出位置(図12(B)及び図13(B)を参照)との間でスライド移動自在に構成されている。このように副ステップ部材230のスライド位置に応じて、主ステップ部材220に対する副ステップ部材230の張出量(左踏面SLの露出範囲)が変化し、第2ステップ220の踏面Sの有効面積が拡縮調節されることになる。
【0037】
ここで、基台210の上面には、副ステップ部材230の格納状態(格納位置にある状態)を検出する格納検出器240が取り付けられている。格納検出器240は、ローラ形に形成された可動式の接触子241を有するリミットスイッチである。これに対して、副ステップ部材230に設けられた上記ロック板238は、この格納検出器(リミットスイッチ)240にて検出されるドグ(被検出部材)として用いられる。格納検出器240は、その接触子241をロック板238の右端部(被検出部位)と左右方向に対向させた状態で基台210上に取り付けられている。格納検出器240は、副ステップ部材230が未格納状態にあるときは、接触子241が不図示の内蔵バネの弾性力によって外側に揺動することでリミットスイッチが検出オフ状態となり、コントローラ50へ向けてオフ信号(未格納検出信号)を出力する。一方、格納検出器240は、副ステップ部材230が格納状態にあるときは、接触子241が内蔵バネの弾性力に抗してロック板238の右端部によって内側に押し込まれることで検出オン状態となり、コントローラ50へ向けてオン信号(格納検出信号)を出力する。
【0038】
なお、運転キャブ7内には、副ステップ部材230が格納状態にあるか否かを報知する格納表示装置(格納報知手段)250(図5を参照)が備えられている。この格納表示装置250は、例えばLEDランプや液晶ディスプレイなどから構成される。コントローラ50は、格納検出器240からオン信号(格納検出信号)を入力すると、運転キャブ7内に設けられた格納表示装置250に副ステップ部材230が格納状態である旨を表示させる。一方、コントローラ50は、格納検出器240からオフ信号(未格納検出信号)を入力すると、運転キャブ7内に設けられた表示装置250に副ステップ部材230が未格納状態である旨を表示させる。それにより、作業者は作業の終了に伴って高所作業車1の運転を開始する前に、この格納表示装置250の表示内容を確認することで、副ステップ部材230を格納せずに側方に張り出した状態のままで高所作業車1を走行させてしまう事態を未然に防止することができる。なお、上記の格納報知手段として、格納表示装置250の代わりに、例えば警報ブザーや警報ランプ等の警報装置を適用してもよい。
【0039】
次に、本実施形態に係る高所作業車1の乗降装置の特徴的な作用として、作業者が搭乗経路80を通って作業台40に搭乗するまでの作業の流れについて説明する。
【0040】
まず、作業現場に到着した作業者は、他の交通の妨げとならないように、高所作業車1を道路の左側に寄せて駐車する。次いで、当該車両の周囲にカラーコーン(登録商標)等を設置して交通の安全確保を実施した後、ジャッキ10f,10rを張り出して接地させることで、車体2を安定保持させる。続いて、作業者は、所望の高所作業を行うため、地上から車体2上の乗降経路80(第1〜第5ステップ100〜500)を通って作業台40に搭乗することになるが、このとき第2ステップ200(副ステップ部材230)は格納された状態となっており、この第2ステップ200の踏面Sとして、主ステップ部材220の右踏面SRのみが実質的に利用可能となっている。そのため、地上に居る作業者は
、作業台40への乗降性を高めるため、第2ステップ200の付近に移動して、副ステップ部材230の調節作業を行う。
【0041】
副ステップ部材230の調節作業において、まず、作業者はロックピン218を副ステップ部材230の第1ロック孔239a(最も左側に位置するロック孔239)から抜脱して、ロックピン218と第1ロック孔239aとの係合を解除することで、副ステップ部材230を格納位置からスライド可能な状態とする。そして、ロックピン218を抜脱した状態(ロックを解除した状態)を保持して、副ステップ部材230を左方向にスライド移動させて、該副ステップ部材230を所望の位置まで変位させる。このとき、作業者は、副ステップ部材230を高所作業車1の駐車時の寄せ幅に応じた位置までスライドさせることができる。続いて、副ステップ部材230のスライド位置を左右に微調整して、ロックピン218をいずれかのロック孔239に挿し込むことで、副ステップ部材230のスライド移動がロックピン218により規制され、副ステップ部材230が主ステップ部材220に対して位置決めされた状態で固定される。それにより、副ステップ部材230が主ステップ部材220に対して左側方に張り出した状態となり、この副ステップ部材230が左側方に張り出した分だけ、第2ステップ200の踏面Sの有効面積が実質的に拡張される。つまり、第2ステップ200の踏面Sとして、主ステップ部材220の右踏面SRに加えて、副ステップ部材230の左踏面SL(左側方に張り出した踏面部分)まで利用可能となる。
【0042】
作業者は、上記のように副ステップ部材230の調節作業を完了した後、高所作業車1の後方に移動して、第1ステップ100に足をかけて、第2ステップ200上に乗り込む。第2ステップ200の踏面S(有効面積)は、上述のとおり、副ステップ部材230を主ステップ部材220に対して左側方に張り出した分だけ、実質的に拡張されているため、作業者が第2ステップ200上を移動するのに十分な足場が確保され、作業台40に不意に接触することもなく、作業者が第2ステップ200上を安全且つ容易に移動しやすくなる。そして、作業者は第3ステップ300、第4ステップ400、第5ステップ500の順に足をかけて乗降経路80を進み、最終的には作業台40に搭乗する。
【0043】
なお、所望の高所作業が終了して、作業台40から降りる場合は、上記と逆の順に各ステップ100〜500を移動することで(上記と逆の順に乗降経路を戻ることで)、作業者は地上に降り立つことができる。そして、地上に降りた作業者は、当該現場での作業の終了時に、第2ステップ200の近傍に移動して、副ステップ部材230を格納位置に戻す。つまり、ロックピン218を抜脱してから、副ステップ部材230を右方向にスライド移動させることで、副ステップ部材230を主ステップ部材220の内部収容空間221内に収容させた格納状態に戻すことができ、最後にロックピン218を第1ロック孔239a(最も左側に位置するロック孔239)に挿し込むことで、副ステップ部材230を格納位置に位置決めした状態で固定することができる。なお、副ステップ部材230が格納位置に復帰すると、格納検出器240が検出オン状態となり、運転キャブ7内に設けられた格納表示装置250にてその旨が作業者に報知される。
【0044】
以上、本実施形態に係る高所作業車1によれば、副ステップ部材230を主ステップ部材220に対して車幅方向(左右方向)にスライド移動させて、第2ステップ200の踏面Sを拡縮調節することができるため、作業者が作業台40の側方の乗降経路を通る際に、作業者の足場が十分に確保されて作業台40から圧迫感を感じることもなく、安全且つ容易に作業台40に乗降することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る高所作業車1では、副ステップ部材230のスライド位置をロック機構215により段階的に調節して、当該車両の駐車時における寄せ幅(当該車両側方の障害物との距離)に応じた張出幅だけ副ステップ部材230を車両側方に張り出すこ
とができるため、当該車両側方の限られた空きスペースを最大限に活用して第2ステップ200の踏面Sとして有効利用することができるようになり、作業者の乗降時の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態に係る高所作業車1では、第2ステップ200が格納状態にあるか否かを報知する格納表示装置250を具備しているため、作業者は車両走行を開始する前に、この第2ステップ200が格納状態にあるか否かを容易に確認することができるため、この第2ステップ200を車両外方に張り出した状態(未格納状態)のままで、当該車両を誤って道路走行させてしまう事態を未然に防止することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態に係る高所作業車1には、後方乗り込み専用のステップ100,200の他に、側方乗り込み専用のステップ600,700が設けられており(その他のステップ300〜500は兼用タイプ)、地上から作業台40への乗降方法として、作業者は当該車両の駐車状態等に応じて後方乗り込み及び側方乗り込みのいずれか一方の乗降方法方を選択することが可能である。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る高所作業車として、伸縮ブーム式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、屈伸ブーム式の高所作業車、軌陸車等であってもよく、車体上にブームを後方格納姿勢で保持する構成を採用した高所作業車であれば、本発明を適用可能である。また、上述の実施形態では、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の高所作業車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 高所作業車
2 車体
7 運転キャブ
20 旋回台
30 ブーム
40 作業台
45 作業操作装置
80 乗降経路
200 第2ステップ(乗降ステップ)
210 基台
215 ロック機構(ロック手段)
218 ロックピン(ロック手段)
220 主ステップ部材(主ステップ部)
230 副ステップ部材(副ステップ部)
239 ロック孔(ロック手段)
240 格納検出器(格納検出手段)
250 格納表示装置(格納報知手段)
S 踏面
SR 右踏面
SL 左踏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13