【解決手段】板材分離装置は、対面部と磁化部と弾性部とを備え、上下方向に積層された複数の板材を磁化する。対面部は、搖動軸を中心に、板材側、及び、その反対側である反板材側に搖動する。磁化部は、対面部の対面領域を介して板材を磁化する。弾性部は、基準位置よりも反板材側に搖動した対面部を、弾性力により板材側に搖動させる。そして、搖動軸は、対面領域における上下方向の中央よりも上に位置する。
上下方向に積層された複数の板材のうちの最も上側に位置する板材である上板材を他の板材から分離するため、前記上板材を磁化するよう構成された板材分離装置であって、
前記複数の板材が位置する側を板材側とすると共に、前記板材側の反対側を反板材側とし、前記上下方向に対し直交又は略直交する搖動軸を中心に、前記板材側及び前記反板材側に搖動可能に支持され、前記複数の板材の端部に対面する対面領域が設けられた対面部と、
前記対面領域を介して前記上板材を磁化するよう構成された磁化部と、
前記上下方向に沿って延びた状態となる前記対面部の位置を、基準位置とし、前記基準位置よりも前記反板材側に搖動した前記対面部を、弾性力により前記板材側に搖動させるよう構成された弾性部と、を備え、
前記搖動軸は、前記対面領域における前記上下方向の中央よりも上に位置する
板材分離装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された技術では、ワーク押し金具はフレームの下側に設けられている。このため、複数の板材がフレームに到達するまでの短期間に、複数の板材を揃える必要がある。しかし、例えば、板材が重い場合等には、複数の板材が短期間に揃わない可能性がある。また、板材の重量等に応じて、ワーク押し金具を押圧する力を好適に調整する必要がある。
【0007】
複数の板材を、より好適に磁化しながら持ち上げるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、上下方向に積層された複数の板材のうちの最も上側に位置する板材である上板材を他の板材から分離するため、上板材を磁化するよう構成された板材分離装置であって、対面部と、磁化部と、弾性部と、を備える。ここで、複数の板材が位置する側を板材側とすると共に、板材側の反対側を反板材側とする。対面部は、上下方向に対し直交又は略直交する搖動軸を中心に、板材側及び反板材側に搖動可能に支持され、複数の板材の端部に対面する対面領域が設けられる。磁化部は、対面領域を介して上板材を磁化するよう構成される。ここで、上下方向に沿って延びた状態となる対面部の位置を、基準位置とする。弾性部は、基準位置よりも反板材側に搖動した対面部を、弾性力により板材側に搖動させるよう構成される。そして、搖動軸は、対面領域における上下方向の中央よりも上に位置する。
【0009】
上記構成によれば、端部が不揃な複数の板材が持ち上げられ、側方にずれた板材が対面部に接触すると、対面部が基準位置から反板材側に搖動する。また、搖動軸は、対面領域における上下方向の中央よりも上に位置する。このため、対面部が反板材側に搖動した結果、対面領域が基準面よりも反板材側に突出するのが抑制される。つまり、対面部の反板材側への搖動により、対面部の上部等が新たに板材に接触し、複数の板材の持ち上げを妨げてしまうのを抑制できる。さらに、反板材側に搖動した対面部は、弾性部の弾性力により、側方にずれて当該対面部に接触している板材を板材側に押圧する。このため、ずれの度合いに応じた好適な大きさの力で、端部が揃うように板材が押圧される。
【0010】
また、上記構成では、対面領域を有する対面部が搖動する。このため、側方にずれた板材が対面領域に到達した後から、該板材の磁化が完了し、該板材が対面領域の上方に到達するまでの期間にわたって、該板材を押圧できる。したがって、より一層、複数の板材の端部が揃うように促される。
【0011】
つまり、上記構成によれば、積層された複数の板材の端部が不揃であっても、複数の板材が磁化されながら持ち上げられる過程で、複数の板材の端部を好適に揃えることができる。このため、側方にずれた板材が板材分離装置と衝突し、板材分離装置や板材が損傷するのを抑制できる。したがって、複数の板材を、より好適に磁化しながら持ち上げることができる。
【0012】
なお、基準位置に位置する対面部の対面領域における最も板材側の部分の位置を、最近接位置としても良い。そして、対面部は、基準位置から反板材側に搖動する際、対面領域が最近接位置よりも板材側を通過しないよう構成されても良い。
【0013】
上記構成によれば、対面部が基準位置から反板材側に搖動した際、対面領域が複数の板材に接近するのを抑制できる。このため、対面部が反板材側に搖動した際に複数の板材の持ち上げを妨げてしまうのを、より一層抑制できる。
【0014】
また、基準位置に位置する対面部の対面領域が存在する領域を、基準面としても良い。また、対面部は、基準位置から反板材側に搖動した際、対面領域の全てが、基準面上、又は、基準面よりも前記反板材側に位置するよう構成されても良い。
【0015】
上記構成によれば、対面部が基準位置から反板材側に搖動した際、対面部の対面領域全体が、基準面上又は基準面よりも反板材側に位置する。このため、対面部が反板材側に搖動した際に複数の板材の持ち上げを妨げてしまうのを、より一層抑制できる。
【0016】
また、対面部は、基準位置に位置する際、対面領域における上下方向に直交する断面が円弧状となるよう構成されていても良い。
上記構成によれば、板材の外縁の形状が複雑であっても、対面部は、複数の板材の端部に好適に近接又は接触できる。このため、より好適に板材を磁化できる。
【0017】
また、対面領域は、第1領域と第2領域とを有しても良い。そして、対面部は、基準位置に位置する際、第2領域が、第1領域の下側に隣接すると共に、対面領域の下端から上側に広がり、下側に向かうに従い反板材側に向かうように傾斜するよう構成されていても良い。
【0018】
上記構成によれば、端部が不揃な複数の板材が持ち上げられた際、より確実に、側方にずれた板材の端部を対面部の第2領域に接触させ、該板材を押圧することが可能となる。このため、より一層、複数の板材の端部が揃うように促される。
【0019】
また、対面部は、基準位置に位置する際、対面領域における上下方向に直交する断面が円弧状となるよう構成されていても良い。そして、対面部における第2領域が設けられた部分は、テーパ状に構成されていても良い。
【0020】
上記構成によれば、板材の外縁の形状が複雑であっても、端部が不揃な複数の板材が持ち上げられた際に、より確実に、側方にずれた板材の端部を対面部の第2領域に接触させ、該板材を押圧することが可能となる。このため、より一層、複数の板材の端部が揃うように促される。
【0021】
また、複数の板材における最も下側に位置する板材を、下板材としても良い。そして、板材分離装置は、外部から押圧されると対面部の内部に収容されると共に、外部から押圧されていない場合には、下板材を下側から支持するため、対面領域から突出するよう構成されたラッチ部をさらに備えていても良い。
【0022】
上記構成によれば、持ち上げられた複数の板材によりラッチ部を押圧し、ラッチ部を対面部の内部に収容することが可能となる。その後、複数の板材が持ち上げられ、ラッチ部の側方に複数の板材が存在しなくなると、ラッチ部が対面領域から突出し、ラッチ部により複数の板材を下方から支持可能となる。つまり、下板材が一定の高さに到達するまで板材の搬送が進行した後は、ラッチ部により複数の板材を支持できる。そして、ラッチ部が複数の板材を支持している間に、新たに搬送される複数の板材を板材分離装置の下側に配置可能となる。このため、より効率的に板材を搬送できる。
【0023】
また、弾性部は、搖動軸の下側に設けられても良い。
上記構成によれば、弾性部から対面部に対し、効果的に弾性力を作用させることができる。
【0024】
また、板材分離装置は、対面部の反板材側に位置し、搖動軸を介して、対面部を搖動可能に支持するよう構成された背面部をさらに備えていても良い。そして、弾性部は、搖動軸の下側であって、背面部と対面部との間に配置されても良い。
【0025】
上記構成によれば、基準位置よりも反板材側に搖動した対面部を、好適に、弾性力により板材側に搖動させることができる。
また、本開示の一態様は、磁気を帯びることができる板材に所定の製造手順を施すことで、板材から部品を製造する方法である。該製造方法では、上下方向に積層された複数の板材のうち、最も上側に位置する上板材を他の板材から分離させるため、板材分離装置により上板材を磁化する。そして、磁化された上板材を、製造手順を施すために搬送する。
【0026】
また、板材分離装置は、対面部と、磁化部と、弾性部と、を備える。ここで、複数の板材が位置する側を板材側とすると共に、板材側の反対側を反板材側とする。対面部は、上下方向に対し直交又は略直交する搖動軸を中心に、板材側及び反板材側に搖動可能に支持され、複数の板材の端部に対面する対面領域が設けられる。磁化部は、対面領域を介して上板材を磁化するよう構成される。ここで、上下方向に沿って延びた状態となる対面部の位置を、基準位置とする。弾性部は、基準位置よりも反板材側に搖動した対面部を、弾性力により板材側に搖動させるよう構成される。そして、搖動軸は、対面領域における上下方向の中央よりも上に位置する。
【0027】
上記構成によれば、積層された複数の板材の端部が不揃であっても、複数の板材が磁化されながら持ち上げられる過程で、複数の板材の端部を好適に揃えることができる。このため、側方にずれた板材が板材分離装置と衝突し、板材分離装置や板材が損傷するのを抑制できる。したがって、部品を製造する際、所定の製造手順を施すべく板材を搬送するために、複数の板材を、より好適に磁化しながら持ち上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0030】
[構成について]
図1〜4に示す本実施形態の板材分離装置1は、マグネットフロータ等とも呼ばれ、磁気を帯びることができる板材から部品を製造する方法に用いられる。なお、板材とは、例えば、ステンレス等により構成されていても良い。また、板材は、例えば、外縁が複雑な形状であっても良いし、矩形又は円形等といった単純な形状であっても良い。また、板材は、例えば、平面状であっても良いし、凹凸を有していても良い。また、部品とは、例えば、車両等の移動体、より詳しくは、移動体のボディを構成する部品であっても良い。
【0031】
図5,6に示すように、板材分離装置1は、上下方向70に積層された同一形状の複数の板材8の側方に配置される。ここで、複数の板材8のうち、最も上側に位置する板材を上板材80とし、最も下側に位置する板材を下板材81とする。板材分離装置1は、複数の板材8のうち、少なくとも上板材80を磁化する。これにより、上板材80は、下側に位置する板材の磁力によって上方に持ち上げられることにより、上板材80の下側に隣接する他の板材8から容易に分離可能となる。詳細は後述するが、磁化された上板材80は、後述するバキュームカップにより持ち上げられ、所定の場所に搬送され、所定の製造手順が施される。なお、所定の製造手順とは、例えば、板材のプレス加工、板材の切断、及び、板材と他の部材との溶接のうちの少なくとも1つを含んでいても良い。
【0032】
板材分離装置1は、水平方向に延びる棒状の部位である支持部100により、側方から支持される。また、板材分離装置1は、対面部10と、搖動部20と、磁化部30と、弾性部40と、ラッチ部50と、背面部60と、棒状部65とを備える。なお、以後、複数の板材8が位置する側を板材側71とし、板材側の反対側を反板材側72とする。
【0033】
対面部10は、予め定められた方向に延びる部位である。対面部10は、搖動部20に設けられた搖動軸21を中心に、板材側71と反板材側72とに搖動可能に支持される。搖動軸21は、上下方向70に対し直交又は略直交する向きに延びる。
【0034】
ここで、対面部10が上下方向70に延びた状態となる位置を、基準位置73とする。また、本実施形態では、対面部10が基準位置73に位置する場合を基準に、対面部10の構成を説明する。具体的には、対面部10が基準位置73に位置する際の対面部10の上側,下側,板材側71,反板材側72を、それぞれ、上側,下側,板材側71,反板材側72と記載する。
【0035】
対面部10は、対面領域11を有する。対面領域11は、対面部10の板材側71の部分における、上下方向70に積層された複数の板材8の端部に対面する領域である。対面領域11は、上下方向70に並ぶ第1〜第3領域11a〜11cを有する。
【0036】
ここで、基準位置73に位置する対面部10の対面領域11における最も板材側71の部分の位置を、最近接位置11dとする。本実施形態では、一例として、対面領域11における搖動軸21の軸方向の中央の部分を、最近接位置11dとする。なお、最近接位置11dは、対面部10と複数の板材8との位置関係等に基づき、適宜定められ得る。対面部10は、基準位置73から反板材側72に搖動する際、対面領域11の全てが、最近接位置11dよりも板材側71の空間を通過しないよう構成される。
【0037】
また、基準位置73に位置する対面部10の対面領域11が存在する領域を、基準面74とする。対面部10は、基準位置73から反板材側72に搖動した際、対面領域11の全てが、基準面74上、又は、基準面74よりも反板材側72に位置するよう構成される。
【0038】
対面部10は、対面領域11における上下方向70に直交する断面が、円弧状となるよう構成される。また、対面領域11における第1領域11aは、上下方向70に沿って広がる。なお、第1領域11aは、例えば、上下方向70に対し傾斜を有していても良いし、凹凸を有していても良い。
【0039】
一方、第2領域11bは、第1領域11aの下側に隣接すると共に、対面領域11の下側の端部から上側に広がる。さらに、第2領域11bは、下側に向かうに従い反板材側72に向かうように傾斜する。より詳しくは、対面部10における第2領域11bが設けられた部分は、テーパ状に構成される。すなわち、対面部10における第2領域11bが設けられた部分は、下側に向かうに従い細くなる。
【0040】
なお、詳細は後述するが、積層された複数の板材8は、端部が不揃な可能性があり、第2領域11bの傾斜は、複数の板材8の端部のずれを吸収するために設けられる。第2領域11bの傾斜の度合い、換言すれば、第2領域11bが設けられた部分が細くなる度合いは、想定される複数の板材8の端部のずれの度合いに応じて定められても良い。
【0041】
また、第3領域11cは、第1領域11aの上側に隣接すると共に、対面領域11の上側の端部から下側に広がる。第3領域11cは、上側に向かうに従い反板材側72に向かうように傾斜する。
【0042】
搖動部20は、対面部10の反板材側72であって、対面部10の上側の端部に設けられる。搖動部20は、対面部10から反板材側72に突出し、上下方向70に沿って広がる板状の部位である。搖動部20には、当該搖動部20に直交又は略直交した状態で、上述した搖動軸21が設けられる。搖動軸21は、背面部60により支持される。また、搖動軸21は、対面領域11の上下方向70の中央よりも上に位置する。より詳しくは、搖動軸21は、対面領域11の上部に位置する。
【0043】
磁化部30は、対面部10の内部に設けられる。磁化部30は、一例として永久磁石として構成されている。なお、磁化部30は、電磁石として構成されていても良い。磁化部30の側方に位置する複数の板材8は、磁化部30により磁化される。磁化部30は、一例として、第1領域11aの内側に設けられる。より詳しくは、磁化部30は、第1領域11aにおける上下方向70の中央から上側の端部にわたって配置される。なお、磁化部30の位置はこれに限らず、磁化部30は、例えば、第1領域11aにおける上下方向70の中央周辺に設けられても良い。
【0044】
弾性部40は、一例としてコイルばねとして構成され、板材側71から反板材側72に延びた状態で、対面部10と背面部60との間に配置される。弾性部40は、搖動軸21の下側に設けられ、対面部10の反板材側72の部分と、背面部60の下側の端部とを繋いだ状態で設けられる。対面部10が基準位置73よりも反板材側72に搖動すると、弾性部40に弾性力が生じる。そして、弾性部40は、該弾性力により、反板材側72に搖動した対面部10を板材側71に搖動させる。なお、弾性部40は、例えば板ばね等といった、コイルばね以外の弾性部材として構成されていても良い。また、弾性部40は、例えば、搖動軸21の上側に設けられても良い。また、弾性部40は、例えば、搖動軸21に設けられたねじりばねとして構成されていても良い。
【0045】
ラッチ部50は、対面部10の対面領域11に設けられ、対面部10の内部に収容可能に構成された部位である。ラッチ部50は、外部から押圧されると、対面領域11に設けられた穴部52に収容された状態(以後、収容状態)となる。そして、ラッチ部50は、押圧されていない場合には、例えば、当該ラッチ部50の重量、又は、ばねによる弾性力により、穴部52から板材側71に移動し、対面領域11から突出した状態(以後、突出状態)となる。また、ラッチ部50は、突出状態となった際に、複数の板材8を下側から支持することができるよう構成されている。
【0046】
ラッチ部50は、対面部10の対面領域11の第1領域11aに設けられる。具体的には、穴部52は、第1領域11aの下端から上側に延びる細長い領域に設けられる。そして、突出状態となった際、ラッチ部50は、第1領域11aの下端から上側に延びた状態で、第1領域11aから突出する。
【0047】
また、ラッチ部50は、三角形状に形成されており、傾斜部51を有する。傾斜部51は、三角形状のラッチ部50の一辺をなす部分である。ラッチ部50が突出状態となった際、傾斜部51は、下側に位置し、上側に向かうに従い板材側71に向かうように上下方向70に対して傾斜する。そして、傾斜部51を上側に押圧することで、ラッチ部50が穴部52に収容される。
【0048】
背面部60は、上下方向70に延びた状態で、対面部10の反板材側72に配置される。背面部60は、上端付近の部分で搖動軸21を支持する。つまり、背面部60は、上端付近の部分で、搖動軸21を介して対面部10を搖動可能に支持する。また、背面部60の下端付近の部分には、弾性部40が繋がっている。
【0049】
また、背面部60は、支持部100により側方から支持される。支持部100は、反板材側72から板材側71に延びる帯状の部位であり、背面部60の反板材側72に繋がっている。なお、背面部60は、例えば、上側又は下側から支持されても良い。
【0050】
また、棒状部65は、対面部10の反板材側72の外面から、反板材側72に突出する棒状の部位である。棒状部65は、弾性部40と搖動部20との間に設けられる。また、棒状部65は、背面部60に設けられた図示しない穴部を通過した状態で配置される。
【0051】
[使用方法について]
次に、部品の製造工程における板材分離装置1の使用方法について説明する。換言すれば、板材分離装置1を用いた部品の製造方法について説明する。
図5,6に示すように、本実施形態では、複数(一例として6個)の板材分離装置1が、上下方向70に積層された複数の板材8の側方に配置される。これらの板材分離装置1は、同じ高さに配置される。なお、1つの板材分離装置1を用いて、複数の板材8の磁化がなされても良い。
【0052】
複数の板材8は、載置台110の上に積層される。より詳しくは、載置台110は、上下方向70に延びる複数のガイド部111を有する。複数の板材8は、複数のガイド部111の間に配置される。
【0053】
複数の板材分離装置1は、載置台110、及び、リフト装置120の上側に配置される。
図6,7に示すように、リフト装置120は、載置台110に積層された複数の板材8を上側に持ち上げる。これにより、
図8に示すように、複数の板材8の最も上側に位置する上板材80は、各板材分離装置1の対面部10における磁化部30の側方まで到達する。この時、各板材分離装置1の対面部10は、磁化部30の側方に位置する複数の板材8を磁化する。これにより、上板材80を含む複数の板材8が磁化され、上板材80は、下側に位置する板材の磁力によって上方に持ち上げられることにより、下側に隣接する他の板材8から容易に分離可能となる。
【0054】
一方、
図8に示すように、複数の板材分離装置1及び複数の板材8の上方には、バキュームカップ130が配置される。バキュームカップ130は、吊るされた状態で設けられており、磁化された上板材80まで降ろされ、上板材80を吸着する。そして、上板材80は、バキュームカップ130を介して持ち上げられ、所定の場所まで搬送され、所定の製造手順が施される。
【0055】
このようにして、複数の板材8は、バキュームカップ130により1枚ずつ所定の場所へと搬送される。また、板材8が搬送されるのに伴い、リフト装置120により複数の板材8が持ち上げられる。そして、新たな板材8が磁化部30に到達すると、該板材8が新たに磁化される。なお、バキュームカップ130以外の装置により、板材が搬送されても良い。
【0056】
また、上述したように、板材分離装置1における対面部10の第1領域11aの下部には、ラッチ部50が設けられている。
図6,7に示すように、複数の板材8が第1領域11aに到達する前は、ラッチ部50は、外部から押圧されず、突出状態となる。しかし、複数の板材8が持ち上げられるのに伴い、上板材80は突出状態となったラッチ部50に下側から押圧し、これにより、
図8に示すように、ラッチ部50は収容状態となる。
【0057】
そして、複数の板材8がラッチ部50の側方に位置する間は、ラッチ部50は複数の板材8により押圧され、ラッチ部50の収容状態が維持される。しかし、
図9,10に示すように、複数の板材8が持ち上げられ、下板材81がラッチ部50の上側に到達すると、ラッチ部50の押圧が解除され、ラッチ部50は再び突出状態となる。この時、別の複数の板材8を用意するため、リフト装置120が降ろされる。これにより、複数の板材8が、突出状態となった各板材分離装置1のラッチ部50により下側から支持された状態となる。
【0058】
その後、リフト装置120が降ろされ、複数の板材8が載置されていない状態となった載置台110は、別の場所に移動する。また、別の複数の板材8が載置された新たな載置台110が、複数の板材分離装置1の下側に配置される。そして、新たな載置台110に載置された複数の板材8が同様にして持ち上げられ、複数の板材分離装置1による磁化、及び、バキュームカップ130による搬送が、同様にして行われる。
【0059】
なお、上述したように、対面部10の上部には、第3領域11cが設けられている。第3領域11cは、下側に向かうに従い板材側71に向かうように傾斜している。このため、
図11に示すように、複数の板材分離装置1の上側でバキュームカップ130から板材8が落下した場合、該板材が第3領域11cに衝突すると、積層されている複数の板材8の上に向かうように促される。
【0060】
ここで、水平面上に予め定められた板材8の位置を、搬送位置とする。
図5に示すように、各板材分離装置1は、対面部10の第1領域11aの側方に位置し、且つ、搬送位置にある板材8の端部に、第1領域11aが近接又は接触した状態となるように配置されている。しかし、
図6に示すように、通常、複数の板材8は、端部が不揃な状態で載置台110の上に積層されている。このため、複数の板材8が持ち上げられると、板材8と板材分離装置1とが衝突し、板材分離装置1が破損したり、板材8が損傷したりする恐れがあった。
【0061】
これに対し、本実施形態では、対面部10は、板材側71及び反板材側72に搖動可能に支持されている。また、対面部10の対面領域11の下部に位置する第2領域11bは、下側に向かうに従い複数の板材8から離れるように傾斜している。このため、
図7,8に示すように、不揃な複数の板材8が対面部10に到達すると、側方にずれた板材8が、いずれかの板材分離装置1の対面部10の第2領域11bに接触する。この時、接触している対面部10は、板材8を上側に持ち上げる力により基準位置73から反板材側72に搖動する。これにより、弾性部40に弾性力が生じ、該弾性力により該対面部10は板材側71に搖動する。その結果、該対面部10に接触している板材8(換言すれば、ずれている板材8)が、板材側71に押圧される。
【0062】
このように、各板材分離装置1の対面部10は、当該対面部10が位置する側にずれている板材8を、搬送位置に向けて押圧する。このため、複数の板材8が持ち上げられ、各板材分離装置1の対面部10の側方を通過する間に、各板材8の端部が揃うように促される。
【0063】
[効果]
(1)上記実施形態によれば、搖動軸21は、対面領域11における上下方向70の中央よりも上に位置する。このため、対面部10が反板材側72に搖動した結果、対面領域11が基準面74よりも反板材側72に突出するのが抑制される。つまり、対面部10の反板材側72への搖動により、対面部10の上部等が新たに板材8に接触し、複数の板材8の持ち上げを妨げてしまうのを抑制できる。さらに、対面部10は、弾性部40の弾性力により、側方にずれた板材8を板材側71に押圧する。このため、該板材8は、そのずれの度合いに応じた好適な大きさの力で押圧される。
【0064】
また、上記実施形態では、対面部10全体が搖動する。このため、側方にずれた板材8が対面領域11に到達した後から、該板材8の磁化が完了し、該板材8が対面領域11の上方に到達するまでの期間にわたって、該板材8を押圧できる。したがって、より一層、複数の板材8の端部が揃うように促される。
【0065】
つまり、積層された複数の板材8の端部が不揃であっても、複数の板材8が持ち上げられる過程で、複数の板材8の端部を好適に揃えることができる。このため、側方にずれた板材8が板材分離装置1と衝突し、板材分離装置1や板材8が損傷するのを抑制できる。したがって、複数の板材8を、より好適に磁化しながら持ち上げることができる。
【0066】
(2)また、上記実施形態によれば、対面部10が基準位置73から反板材側72に搖動する際、対面領域11が最近接位置11dよりも板材側71を通過しない。このため、対面部10が反板材側72に搖動した際に複数の板材8の持ち上げを妨げてしまうのを、より一層抑制できる。
【0067】
(3)また、上記実施形態によれば、対面部10が基準位置73から反板材側72に搖動した際、対面部10の対面領域11全体が、基準面74上又は基準面74よりも反板材側72に位置する。このため、対面部10が反板材側72に搖動した際に複数の板材8の持ち上げを妨げてしまうのを、より一層抑制できる。
【0068】
(4)また、対面部10の対面領域11における上下方向70に直交する断面は、円弧状である。このため、板材8の外縁の形状が複雑であっても、対面部10は、複数の板材8の端部に好適に近接又は接触できる。したがって、より好適に板材8を磁化できる。
【0069】
(5)また、対面部10の対面領域11には、傾斜した第2領域11bが設けられる。より詳しくは、対面部10における第2領域11bが設けられた部分は、テーパ状である。このため、板材8の外縁の形状が複雑であっても、端部が不揃な複数の板材8が持ち上げられた際、より確実に、側方にずれた板材8の端部を第2領域11bに接触させ、該板材8を押圧することが可能となる。このため、より一層、複数の板材8の端部が揃うように促される。
【0070】
(6)また、複数の板材8がラッチ部50に接触するまで持ち上げられると、複数の板材8がラッチ部50を押圧し、ラッチ部50を収容状態にする。その後、複数の板材8が持ち上げられ、ラッチ部50の側方に複数の板材8が存在しなくなると、ラッチ部50が突出状態となり、ラッチ部50により複数の板材8が下方から支持される。そして、ラッチ部50が複数の板材8を支持している間に、新たに搬送される複数の板材8が板材分離装置1の下側に配置される。このため、より効率的に板材8を搬送できる。
【0071】
(7)また、弾性部40は、搖動軸21の下方に設けられる。このため、弾性部40から対面部10に対し、効果的に弾性力を作用させることができる。
(8)また、対面部10は、反板材側72に位置する背面部60により、搖動軸21を介して搖動可能に支持される。そして、弾性部40は、搖動軸21の下方であって、背面部60と対面部10との間に配置される。このため、基準位置73よりも反板材側72に搖動した対面部10を、好適に、弾性力により板材側71に搖動させることができる。
【0072】
(9)また、上記実施形態における部品の製造方法によれば、積層された複数の板材の端部が不揃であっても、複数の板材8が持ち上げられる過程で、複数の板材8の端部を好適に揃えることができる。このため、側方にずれた板材8が板材分離装置1と衝突し、板材分離装置1や板材8が損傷するのを抑制できる。したがって、部品を製造する際、所定の製造手順を施すべく板材を搬送するために、複数の板材8を、より好適に磁化しながら持ち上げることができる。
【0073】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、対面部10の対面領域11には、第1〜第3領域11a〜11cが設けられている。しかし、対面領域11は、例えば、第1領域11aのみから構成されていても良いし、第1及び第2領域11a,11bから構成されていても良い。
【0074】
また、例えば、対面部10における対面領域11は、平面状に構成されていても良い。また、対面領域11における上下方向70に直交する断面は、例えば、多角形状(例えば、V字状)であっても良い。また、該断面は、円弧状又は曲線状であっても良い。なお、このような場合においても、第2領域11bは、下側に向かうに従い反板材側72に向かうように傾斜していても良い。
【0075】
(2)上記実施形態では、対面部10の上側の端部に設けられた搖動部20に、搖動軸21が設けられる。しかし、対面部10が基準位置73から反板材側72に搖動した際、対面領域11の全てが、基準面74上、又は、基準面74よりも反板材側72に位置するという第1条件を充足する範囲で、搖動軸21の位置は適宜定められても良い。
【0076】
また、対面部10が基準位置73から反板材側72に搖動する際、対面領域11の全てが最近接位置11dよりも板材側71の空間を通過しないという第2条件を充足する範囲で、搖動軸21の位置は適宜定められても良い。
【0077】
具体的には、例えば、搖動軸21は、対面部10の上側に設けられても良い。また、例えば、対面領域11の形状を調整することで、第1及び/又は第2条件を充足しつつ、搖動軸21を上記実施形態よりも下側に設けても良い。
【0078】
また、上記実施形態では、搖動軸21は、対面領域11の上部に位置する。しかし、これに限らず、搖動軸21は、対面領域11の上下方向70の中央から上端までの間のいずれかの位置に設けられても良い。
【0079】
(3)上記実施形態の対面部10には、ラッチ部50が設けられている。しかし、対面部10にラッチ部50を設けない構成としても良い。
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。