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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-156683(P2019-156683A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/06 20060101AFI20190823BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20190823BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20190823BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20190823BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   C04B38/06 E
   C04B35/577
   C04B41/88 U
   C04B41/85 C
   F28F21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-45692(P2018-45692)
(22)【出願日】2018年3月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石黒 創之介
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥啓
(57)【要約】
【課題】形状の精度の安定性を向上させる。
【解決手段】熱交換器等のハニカム構造体の製造方法は、炭化ケイ素粒子、有機分、及び分散媒を含有する混合物を成形して成形体を得る成形工程と、成形体に含まれる有機分を除去してハニカム多孔体を得る脱脂工程と、ハニカム多孔体の区画壁の内部に金属ケイ素を含浸させる含浸工程とを有する。含浸工程は、固体状の金属ケイ素を収容する容器の内部に支持具を介してハニカム多孔体を配置した状態で、容器内を金属ケイ素の融点以上の温度に加熱することにより、溶融した金属ケイ素を、多孔質の支持具を通じてハニカム多孔体に含浸させる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルに区画する区画壁を備えるハニカム構造体の製造方法であって、
炭化ケイ素粒子、有機分、及び分散媒を含有する混合物を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体に含まれる前記有機分を除去してハニカム多孔体を得る脱脂工程と、
前記ハニカム多孔体の前記区画壁の内部に金属ケイ素を含浸させる含浸工程とを有し、
前記含浸工程は、固体状の金属ケイ素を収容する容器の内部に支持具を介して前記ハニカム多孔体を配置した状態で、前記容器内を金属ケイ素の融点以上の温度に加熱することにより、溶融した金属ケイ素を、多孔質の前記支持具を通じて前記ハニカム多孔体に含浸させることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記金属ケイ素は、前記容器の底面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記容器の内部に前記支持具を介して前記成形体を配置し、
前記容器内の温度を、前記有機分が焼失する温度かつ金属ケイ素の融点未満の第1温度として前記脱脂工程を行った後、前記金属ケイ素の融点以上の第2温度に昇温することにより、前記含浸工程を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1温度は、400℃以上1400℃以下の温度であることを特徴とする請求項3に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第2温度は、1420℃以上2000℃以下の温度であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記容器の内部に配置される前記成形体は、複数の前記成形体を組み合わせた組立体の状態であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記脱脂工程と前記含浸工程との間に、1800℃以上の温度で加熱する焼成工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱交換器として用いられるハニカム構造体として、金属ケイ素が含浸された炭化ケイ素質のハニカム構造体が開示されている。特許文献1のハニカム構造体は、セラミック粒子、有機バインダー、及び分散媒を含有する混合物を成形した成形体を加熱して、有機バインダーが除去された脱脂体とした後、脱脂体の壁部の内部に金属ケイ素を含浸させることにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−218342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、脱脂体に金属ケイ素を含浸させる方法として、脱脂体の上に金属ケイ素の塊を載せた状態で加熱する方法を採用している。この場合、溶融した金属ケイ素の自重に基づいて脱脂体内に含浸されることから、脱脂体の気孔容積を超えた量の金属ケイ素が含浸されて、余剰の金属ケイ素がハニカム構造体の外周から垂れ下がったり、ハニカム構造体内のセル内に膨出したりすることがある。そのため、特許文献1の製造方法は、安定した形状の精度を確保することが難しい。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、形状の精度の安定性を向上させることができるハニカム構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するためのハニカム構造体の製造方法は、複数のセルに区画する区画壁を備えるハニカム構造体の製造方法であって、炭化ケイ素粒子、有機分、及び分散媒を含有する混合物を成形して成形体を得る成形工程と、上記成形体に含まれる上記有機分を除去してハニカム多孔体を得る脱脂工程と、上記ハニカム多孔体の上記区画壁の内部に金属ケイ素を含浸させる含浸工程とを有し、上記含浸工程は、固体状の金属ケイ素を収容する容器の内部に支持具を介して上記ハニカム多孔体を配置した状態で、上記容器内を金属ケイ素の融点以上の温度に加熱することにより、溶融した金属ケイ素を、多孔質の上記支持具を通じて上記ハニカム多孔体に含浸させる。
【0007】
上記構成によれば、ハニカム多孔体の毛細管現象による吸い上げ力に基づいて金属ケイ素が含浸される。そのため、ハニカム多孔体の気孔容積を超えた量の金属ケイ素が含浸され難く、余剰の金属ケイ素が外周から垂れ下がったり、ハニカム構造体内のセル内に膨出してセルが設計値よりも狭くなったりすることが抑制される。その結果、ハニカム構造体の形状安定性が向上する。
【0008】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記金属ケイ素は、上記容器の底面に配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、溶融した金属ケイ素が容器の下部から上部に向かって、ハニカム多孔体の毛細管現象によって吸い上げられるため、余剰の金属ケイ素が外周から垂れ下がったり、ハニカム構造体内のセル内に膨出してセルが設計値よりも狭くなったりすることが更に抑制される。
【0009】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記容器の内部に支持具を介して上記成形体を配置し、上記容器内の温度を、上記有機分が焼失する温度かつ金属ケイ素の融点未満の第1温度として上記脱脂工程を行った後、上記金属ケイ素の融点以上の第2温度に昇温することにより、ハニカム多孔体に含浸させる上記含浸工程を行うことが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、容器内の温度を第1温度とすることにより、成形体に含まれる有機分が焼失してハニカム多孔体が得られる。このときの第1温度は、金属ケイ素の融点未満の温度であるため、容器内に収容された金属ケイ素は、固体の状態が維持される。その後、容器内の温度を金属ケイ素の融点以上の第2温度に昇温することにより、金属ケイ素が溶融する。溶融した金属ケイ素が、支持具を通じてハニカム多孔体の内部へ含浸することによりハニカム構造体が得られる。このように、容器内の温度管理によって、一度の加熱処理の中で脱脂工程と含浸工程を連続的に行うことができ、その結果、ハニカム構造体の製造工程が簡略化される。
【0011】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記第1温度は、400℃以上1400℃以下の温度であることが好ましい。
上記構成によれば、脱脂工程に相当する第1温度による加熱処理時において、金属ケイ素が溶融して成形体に含浸することを抑制しつつ、有機分の焼失を好適に進行させることができる。
【0012】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記第2温度は、1420℃以上2000℃以下の温度であることが好ましい。
上記構成によれば、含浸工程に相当する第2温度による加熱処理時において、ハニカム多孔体への金属ケイ素の含浸を好適に進行させることができるとともに、過剰に加熱されることによる劣化を抑制できる。また、上記構成の第2温度とすることにより、得られるハニカム構造体は、その構成成分である炭化ケイ素粒子の殆どが焼結されずに、それぞれ独立して存在する未焼結のハニカム構造体となる。この未焼結のハニカム構造体は、ヤング率が高く、変形し難い性質を有しており、熱交換器等として有用である。
【0013】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記容器の内部に配置される上記成形体は、複数の上記成形体を組み合わせた組立体の状態である。
複数の成形体からなる組立体であっても、全体が脱脂後の多孔質構造であるため、上述したメカニズムによって、金属ケイ素を含浸させることができる。
【0014】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記脱脂工程と上記含浸工程との間に、1800℃以上の温度で加熱する焼成工程を有する。
含浸工程に供されるハニカム多孔体が、焼成工程により焼成された状態であっても、上述したメカニズムによって、金属ケイ素を含浸させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、形状の精度の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】熱交換器の斜視図。
図2図1の2−2線断面図。
図3図2の3−3線断面図。
図4図2の4−4線断面図。
図5】成形工程の説明図。
図6】加工工程の説明図(第1加工の加工治具を挿入した状態の説明図)。
図7】加工工程の説明図(第1加工の加工治具を挿入した後の説明図)。
図8】加工工程の説明図(第2加工の説明図)。
図9】脱脂工程の説明図。
図10】含浸工程の説明図。
図11】容器内に加工成形体を配置した状態を示す説明図。
図12】容器内の温度変化を示すグラフ。
図13】変更例の温度変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、製造されるハニカム構造体の一例として、ハニカム構造体により構成される熱交換器について説明する。
図1、2に示すように、本実施形態の熱交換器10は、矩形筒状の周壁11と、周壁11の内部を周壁11の軸方向に延びる複数の第1セル13a及び複数の第2セル13bに区画する区画壁12とを備えている。矩形筒状の周壁11は、対向する一対の縦側壁11aと対向する一対の横側壁11bとを有し、周壁11の軸方向に直交する断面形状が横長の長方形をなすように構成されている。
【0018】
図2に示すように、区画壁12は、周壁11の軸方向に直交する断面において、縦側壁11aと平行な区画壁12と、横側壁11bに平行な区画壁12とで格子状をなすように構成されている。区画壁12が構成するセル構造は特に限定されるものではないが、例えば、区画壁12の壁厚が0.1〜0.5mmであり、セル密度が、周壁11の軸方向に直交する断面1cmあたり15〜93セルであるセル構造とすることができる。
【0019】
図3に示すように、第1セル13aは、第1流体を流通させるセルであり、その両端部が共に封止部22によって封止されている。図4に示すように、第2セル13bは、第2流体を流通させるセルであり、その両端部が共に開放されている。
【0020】
第1流体としては特に限定されず、例えば、公知の熱媒体を用いることができる。公知の熱媒体としては、例えば、冷却水(Long Life Coolant:LLC)や、エチレングリコール等の有機溶剤が挙げられる。第2流体としては特に限定されず、例えば、内燃機関の排気ガスが挙げられる。
【0021】
図2に示すように、周壁11の軸方向に直交する断面において、第1セル13aの断面形状と第2セル13bの断面形状は、全て同じである。
図2に示すように、熱交換器10は、周壁11の縦側壁11aに平行に第1セル13aのみが配列した複数の第1セル列14aと、縦側壁11aに平行に第2セル13bのみが配列した第2セル列14bとを備える。本実施形態においては、隣り合う第1セル列14a同士の間に、4列の第2セル列14bが配置され、この配置が繰り返された配置パターンが形成されている。
【0022】
図1、3に示すように、熱交換器10において、第1セル列14aには、縦側壁11aに沿った方向である縦方向に延びるように形成されて、縦方向に隣接する第1セル13a同士を区画する区画壁12を貫通して、第1セル列14aを構成する各セルを連通する連通部15が設けられている。連通部15における縦方向の一方側(図3の上側)の端部は、周壁11(横側壁11b)に開口するとともに、同他方側(図3の下側)の端部は、縦方向において最も他方側に位置する第1セル13aにまで達している。熱交換器10は、連通部15として、熱交換器10の軸方向の一方の端部である第1端部10a側に設けられた第1連通部15aと、熱交換器10の軸方向の他方の端部である第2端部10b側に設けられた第2連通部15bとを有している。
【0023】
図3に示すように、熱交換器10の内部には、第1セル13a、第1連通部15a及び第2連通部15bにより構成され、熱交換器10の周壁11に形成された、第1連通部15a及び第2連通部15bの各開口を流入口又は流出口とする第1流路16が形成されている。また、図4に示すように、熱交換器10の内部には、第2セル13bにより構成され、周壁11の第1端部10a及び第2端部10bを流入口又は流出口とする第2流路17が形成されている。上記構成の熱交換器10は、第1流路16を流れる第1流体と、第2流路17を流れる第2流体との間で、区画壁12を介して熱交換を行うことができる。
【0024】
次に、熱交換器10の周壁11及び区画壁12を構成する材料について説明する。なお、周壁11及び区画壁12は、構成する材料が同じであることから、以下では、区画壁12について具体的に説明し、周壁11についての説明を省略する。
【0025】
図1に示すように、区画壁12は、多孔質構造の骨格部分12aと、骨格部分12aの隙間に充填されるとともに骨格部分12aの表面を覆う金属ケイ素からなる充填部分12bとを備えている。骨格部分12aは、炭化ケイ素を含有する。骨格部分12aは、炭化ケイ素以外の成分を含有する物であってもよい。炭化ケイ素以外の成分としては、例えば、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物等のセラミック材料が挙げられる。炭化ケイ素以外の成分を含有する場合、当該成分を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0026】
区画壁12における骨格部分12aと充填部分12bとの体積比(骨格部分:充填部分)は、例えば、60:40〜40:60であることが好ましい。充填部分12bを構成する金属ケイ素の体積は、上記気孔容積と同程度であることが好ましい。
【0027】
以下、図5〜10に基づいて、熱交換器10の一製造方法について説明する。
熱交換器10は、以下に記載する成形工程、加工工程、脱脂工程、含浸工程を順に経ることにより製造される。
【0028】
(成形工程)
熱交換器の成形に用いる原料として、炭化ケイ素の粒子と、有機分と、分散媒とを含有する粘土状の混合物を調製する。この際、必要に応じて、セラミック粒子等の炭化ケイ素以外の粒子を混合してもよい。
【0029】
炭化ケイ素の粒子、及び炭化ケイ素以外の粒子の平均粒子径(50%粒子径)は、例えば、0.5〜50μmであることが好ましい。
有機分としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の有機バインダーが挙げられる。これらの有機バインダーの中でも、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースが特に好ましい。また、上記の有機分のうちの一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0030】
分散媒としては、例えば、水、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、エタノールが挙げられる。また、上記の分散媒のうちの一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0031】
また、混合物中にその他の成分を更に含有させてもよい。その他の成分としては、例えば、可塑剤、潤滑剤が挙げられる。可塑剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物が挙げられる。潤滑剤としては、例えば、グリセリンが挙げられる。
【0032】
図5に示すように、この粘土状の混合物を用いて、矩形筒状の周壁11と、周壁11の内部を周壁11の軸方向に延びる複数のセル13に区画する区画壁12とを備える成形体20を成形する。この成形体20は、全てのセル13について、その両端が開放された状態となっている。成形体20は、例えば、押し出し成形により成形することができる。
【0033】
必要に応じて、得られた成形体20に対して、成形体20を乾燥させる乾燥処理を行う。乾燥処理の具体的方法としては、例えば、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いた乾燥処理が挙げられる。なお、図5の拡大部分における「有機分」として示される部分には、図示を省略しているが、分散媒も含有される。そして、上記乾燥処理を行うことにより、成形体20に含まれる分散媒が減少又は消失する。
【0034】
(加工工程)
加工工程では、成形体に第1連通部及び第2連通部を形成する第1加工、及び成形体における一部のセルの両端部を封止する第2加工を行う。
【0035】
図6に示すように、第1加工では、例えば、加熱された加工具21を成形体20に接触させる方法を用いて、成形体20における周壁11及び区画壁12の一部を除去して、第1連通部15a及び第2連通部15bを形成する。
【0036】
具体的には、図6に示すように、加工具21として、第1連通部15a及び第2連通部15bに対応する外形状を有するブレードを用意する。このブレードは、耐熱性の金属(例えば、ステンレス鋼)により形成され、その厚さは、第1セル13aの幅を超えない厚さに設定されている。次に、成形体20に含まれる有機分が焼失する温度となるようにブレードを加熱する。例えば、有機分がメチルセルロースである場合には、ブレードを400℃以上に加熱する。
【0037】
図7に示すように、加熱されたブレードを周方向外方から成形体20に差し込んだ後、これを引き抜くことによって、第1連通部15a及び第2連通部15bを形成する。このとき、加熱されたブレードと成形体20とが接触すると、その接触部分において成形体20に含まれる有機分が燃焼して焼失する。そのため、成形体20に対するブレードの挿入抵抗は非常に小さいものとなり、ブレードの挿入時に、挿入された部分の周辺部分に変形や破壊が生じ難い。また、有機分が焼失することによって、発生する加工屑の量が減少する。
【0038】
図8に示すように、第2加工では、成形体20に形成される複数のセル13のうち、第1セル13aを構成するセル13の両端部に対して、成形工程において用いた粘土状の混合物を充填して、当該セル13の両端部を封止する封止部22を形成する。その後、成形体20に対して、封止部22を乾燥させる乾燥処理を行う。
【0039】
上記の第1加工、及び第2加工からなる加工工程を経ることにより、加工成形体20aが得られる。第1加工と第2加工の順序は特に限定されず、第2加工を行った後、第1加工を行ってもよい。
【0040】
(脱脂工程及び含浸工程)
脱脂工程は、加工成形体20aを加熱することによって、加工成形体20aに含まれる有機分を焼失させることにより、加工成形体20aから有機分が除去された脱脂体を得る工程である。図9に示すように、脱脂工程を経ることにより、加工成形体20aから有機分が除去されて、炭化ケイ素の粒子間に隙間を有する多孔質構造の脱脂体30が得られる。ここで、脱脂体30における隙間の容積(気孔容積)は、40〜60体積%であることが好ましい。脱脂体30の気孔容積は、成形工程において用いた混合物における炭化ケイ素の粒子の含有率を変更することにより調整できる。本実施形態においては、多孔質構造の脱脂体30がハニカム多孔体となる。
【0041】
含浸工程は、脱脂体の各壁の内部に金属ケイ素を含浸させる工程である。図10に示すように、含浸工程を経ることにより、脱脂体30の各壁を構成する炭化ケイ素粒子の隙間に金属ケイ素が充填されて、熱交換器10が得られる。
【0042】
ここで、本実施形態の製造方法では、脱脂工程及び含浸工程を、異なる温度域による多段階の加熱処理によって連続的に行う。
図11に示すように、グラファイト等からなる有底箱状の耐熱性の容器40内に、加工成形体20aを配置する。図11では、加工成形体20aについて、その断面形状を省略して図示している。加工成形体20aは、容器40の底面に配置された支持具41の上に載置されることにより、支持具41を介して容器40内に配置される。
【0043】
支持具41は、加工成形体20aの下面の一部のみに接触する大きさ及び形状に形成されており、加工成形体20aの下面の一点又は数点において加工成形体20aを支持する。支持具41の数は単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0044】
支持具41の形状としては、例えば、角柱状、円柱状、角錐台状、円錐台状が挙げられる。これらの中でも、加工成形体20aの下面との接点を少なくできる点から、角錐台状、円錐台状が特に好ましい。
【0045】
支持具41は、毛細管現象を生じさせる程度の大きさの連続した気孔を有する多孔質材により構成される。支持具41を構成する多孔質材としては、例えば、炭化ケイ素からなる多孔質材、黒鉛等の炭素からなる多孔質材が挙げられる。支持具41を構成する多孔質材の気孔率は、例えば、20〜60%である。
【0046】
また、容器40の底面に粉末状、粒状、塊状等の固体状の金属ケイ素42を配置する。具体的には、容器40の底面と支持具41に載置された加工成形体20aとの間の隙間Sに金属ケイ素42を配置する。金属ケイ素42としては、その純度が98%未満の金属ケイ素を用いることが好ましい。固体状の金属ケイ素は、その純度が低くなるにしたがって融点が低くなる傾向がある。そのため、低純度の金属ケイ素を用いることにより、含浸工程に要する加熱温度を低く抑えることができる。その結果、製造コストを抑制することができる。なお、金属ケイ素の純度は、例えば、95%以上である。
【0047】
容器40内に収容される金属ケイ素42の量は、例えば、加工成形体20aから得られる脱脂体30の気孔容積と支持具41の気孔容積の和に相当する量(例えば、上記和の1.00〜1.05倍の体積に相当する量)とする。この場合には、熱交換器10の気孔率を0%に近づけることができる。また、金属ケイ素42の使用量が抑えられて、製造コストを抑制することができる。
【0048】
上記のように、容器40内に加工成形体20a及び金属ケイ素42を配置した状態として、焼成炉等の公知の加熱手段を用いて、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気下又は真空下にて容器40を加熱する。このとき、容器40に対して異なる温度域による多段階の加熱を行う。
【0049】
具体的には、図12に示すように、容器40内の温度を、第1温度まで昇温させ、第1温度にて一定時間、保持することにより一次加熱を行う。その後、容器40内の温度を、第1温度よりも高い第2温度まで昇温させ、一定時間、保持することにより二次加熱を行う。その後、容器40内の温度を降下させる。
【0050】
一次加熱は、脱脂工程に相当する加熱処理である。一次加熱の第1温度は、有機分が焼失する温度かつ金属ケイ素の融点未満の温度であり、加工成形体20aに含まれる有機分の種類に応じて設定される。一次加熱により、加工成形体20aに含まれる有機分が焼失して、加工成形体20aは多孔質構造の脱脂体30(ハニカム多孔体)となる。このとき、容器40内の温度(第1温度)は、金属ケイ素の融点未満の温度であるため、容器40内に収容された金属ケイ素42は、固体の状態が維持される。
【0051】
第1温度は、例えば、400℃以上1400℃以下の温度であることが好ましく、450℃以上1000℃以下の温度であることがより好ましい。上記温度範囲に設定することにより、金属ケイ素42の溶融を抑制しつつ、有機分をより確実に焼失させることができる。
【0052】
一次加熱は、加工成形体20aに含まれる有機分が完全に除去されるまで行うことが好ましい。例えば、事前の予備試験により、加工成形体20aに含まれる有機分が除去された状態の脱脂体30となる加熱時間を測定しておき、その加熱時間の経過をもって、容器40内の温度を第1温度から第2温度に昇温する。
【0053】
二次加熱は、含浸工程に相当する加熱処理である。二次加熱の第2温度は、金属ケイ素の融点以上に設定される。二次加熱により、容器40内に収容された金属ケイ素42が溶融する。そして、溶融した金属ケイ素は、毛細管現象によって、多孔質材からなる支持具41を通じて脱脂体30(ハニカム多孔体)の各壁を構成する炭化ケイ素粒子の隙間に入り込み、その隙間に金属ケイ素42が含浸される。
【0054】
第2温度は、例えば、1420℃以上の温度であることが好ましい。上記温度範囲に設定することにより、金属ケイ素をより確実に含浸させることができる。
また、第2温度は、例えば、2000℃以下の温度であることが好ましく、1900℃以下の温度であることがより好ましい。上記温度範囲に設定することにより、設備やエネルギー等の観点において、製造コストを抑制することができる。
【0055】
また、第2温度は、成形工程に用いた混合物に含まれる炭化ケイ素の焼結温度未満(例えば、2000℃以下)の温度であることが好ましい。上記温度範囲に設定することにより、得られる熱交換器10は、その構成成分である炭化ケイ素粒子の殆どが焼結されずに、それぞれ独立して存在する未焼結のハニカム構造体となる。この未焼結のハニカム構造体は、ヤング率が高く、変形し難い性質を有しており、熱交換器として有用である。
【0056】
二次加熱は、脱脂体30の各壁を構成する炭化ケイ素粒子の隙間に金属ケイ素が十分に含浸されるまで行うことが好ましい。例えば、容器40内に収容される金属ケイ素42の量が、脱脂体30(ハニカム多孔体)の気孔容積と支持具41の気孔容積の和に相当する量である場合には、全ての金属ケイ素42が含浸されたことをもって、金属ケイ素が十分に含浸されたと判断することができる。
【0057】
そして、二次加熱の後は、容器40内の温度を降下させ、容器40から熱交換器10を取り出し、熱交換器10の下面に一体化している支持具41を分離する。これにより、熱交換器10が得られる。
【0058】
次に、本実施形態の作用及び効果について記載する。
(1)熱交換器等のハニカム構造体の製造方法は、炭化ケイ素粒子、有機分、及び分散媒を含有する混合物を成形して成形体を得る成形工程と、成形体に含まれる有機分を除去してハニカム多孔体を得る脱脂工程と、ハニカム多孔体の区画壁の内部に金属ケイ素を含浸させる含浸工程とを有する。含浸工程は、固体状の金属ケイ素を収容する容器の内部に支持具を介してハニカム多孔体を配置した状態で、容器内を金属ケイ素の融点以上の温度に加熱することにより、溶融した金属ケイ素を、多孔質の支持具を通じてハニカム多孔体に含浸させる。
【0059】
上記構成によれば、ハニカム多孔体の毛細管現象による吸い上げ力に基づいて金属ケイ素が含浸される。そのため、ハニカム多孔体の気孔容積を超えた量の金属ケイ素が含浸され難く、余剰の金属ケイ素がハニカム構造体の外周から垂れ下がったり、ハニカム構造体内のセル内に膨出してセルが設計値よりも狭くなったりすることが抑制される。その結果、ハニカム構造体の形状安定性が向上する。
【0060】
また、上記構成によれば、多様な形状の成形体に対して実施することができる。すなわち、固体状の金属ケイ素を成形体の上に配置した状態として含浸工程を行う場合には、成形体の上面が、固体状の金属ケイ素を配置可能な形状である必要がある。これに対して、上記構成の場合には、固体状の金属ケイ素を配置することが難しい形状(例えば、湾曲形状や尖った形状等)の上面を有する成形体であっても、含浸工程を行うことができる。
【0061】
(2)金属ケイ素は、容器の底面に配置されている。
上記構成によれば、溶融した金属ケイ素が容器の下部から上部に向かって、ハニカム多孔体の毛細管現象によって吸い上げられるため、余剰の金属ケイ素が外周から垂れ下がったり、ハニカム構造体内のセル内に膨出してセルが設計値よりも狭くなったりすることが更に抑制される。
【0062】
(3)固体状の金属ケイ素を収容する容器の内部に支持具を介して成形体を配置し、容器内の温度を、有機分が焼失する温度かつ金属ケイ素の融点未満の第1温度として脱脂工程を行った後、金属ケイ素の融点以上の第2温度に昇温することにより、ハニカム多孔体に含浸させる含浸工程を行う。
【0063】
上記構成によれば、容器内の温度を第1温度とすることにより、成形体に含まれる有機分が焼失してハニカム多孔体が得られる。このときの第1温度は、金属ケイ素の融点未満の温度であるため、容器内に収容された金属ケイ素は、固体の状態が維持される。その後、容器内の温度を金属ケイ素の融点以上の第2温度に昇温することにより、金属ケイ素が溶融する。溶融した金属ケイ素が、支持具を通じてハニカム多孔体の内部へ含浸することによりハニカム構造体が得られる。このように、容器内の温度管理によって、一度の加熱処理の中で脱脂工程と含浸工程を連続的に行うことができ、その結果、ハニカム構造体の製造工程が簡略化される。
【0064】
(4)第1温度は、400℃以上1400℃以下の温度である。
上記構成によれば、脱脂工程に相当する第1温度による加熱処理時において、金属ケイ素が溶融して成形体に含浸することを抑制しつつ、有機分の焼失を好適に進行させることができる。
【0065】
(5)第2温度は、1420℃以上2000℃以下の温度である。
上記構成によれば、含浸工程に相当する第2温度による加熱処理時において、ハニカム多孔体への金属ケイ素の含浸を好適に進行させることができるとともに、過剰に加熱されることによる劣化を抑制できる。また、未焼結のハニカム構造体が得られやすくなる。未焼結のハニカム構造体は、ヤング率が高く、変形し難い性質を有しており、熱交換器等として有用である。
【0066】
(6)容器に収容される金属ケイ素の量は、ハニカム多孔体の気孔容積と支持具の気孔容積の和の1.00〜1.05倍の体積に相当する量である。
上記構成によれば、ハニカム構造体の各壁の気孔率を0%に近づけることができる。また、1.05倍以下にすることで、含浸される金属ケイ素によりハニカム構造体のセルが塞がれてしまうことを抑制できるとともに、製造コストを抑制することができる。
【0067】
(7)容器に収容される金属ケイ素は、純度98%未満である。
上記構成によれば、含浸工程に要する加熱温度である第2温度を低く抑えることができる。よって、製造コストを抑制することができる。
【0068】
本実施形態は、次のように変更して実施することも可能である。また、上記実施形態の構成や以下の変更例に示す構成を適宜組み合わせて実施することも可能である。
・ハニカム構造体の形状(例えば、ハニカム構造体の外形や断面形状)は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変更することができる。例えば、周壁を構成する特定の側壁を、周壁を構成する他の側壁よりも厚く形成してもよい。また、周壁を備えないハニカム構造体であってもよい。
【0069】
・支持具の上に載置される成形体の向きは特に限定されるものではないが、成形体の周壁における壁厚が最も厚い側壁が下側に位置するようにして、成形体を支持具に載置することが好ましい。この場合には、支持具による成形体の変形を抑制できる。
【0070】
・脱脂工程に対応する一次加熱は、第1温度の範囲において、その温度を変化させてもよい。例えば、図13に示すように、容器内の温度を第2温度まで連続的に上昇させ、その途中における第1温度の範囲(第1温度域)に滞在する期間を一次加熱としてもよい。この場合、第1温度域に滞在する期間が十分に確保されるように、容器内の温度の上昇曲線を調整することが好ましい。同様に、含浸工程に対応する二次加熱についても、第2温度の範囲において、その温度を変化させてもよい。
【0071】
・上記実施形態では、一つの構成部品からなる成形体を容器の内部に配置していたが、複数の成形体(構成部品)を組み合わせてなる組立体を容器の内部に配置してもよい。複数の成形体からなる組立体であっても、脱脂工程に相当する第1加熱により、全体的に多孔質構造の脱脂体(ハニカム多孔体)になるため、一つの構成部品からなる成形体を配置した場合と同様のメカニズムによって、金属ケイ素を含浸させることができる。そして、金属ケイ素が含浸されることにより各構成部品が一体化する。したがって、この場合には、含浸工程と同時に各構成部品を一体化する処理も行うことができ、ハニカム構造体の製造工程が簡略化される。
【0072】
・上記実施形態では、多孔質材により構成される支持具を用いていたが、支持具は、二次加熱(含浸工程)を行う際に、毛細管現象を生じさせる多孔質形状であればよい。例えば、成形体の形成に用いる混合物から構成される支持具や、成形体を得る際に生じた切断片からなる支持具としてもよい。この場合、一次加熱(脱脂工程)を経ることにより、支持具についても成形体と同様に脱脂されて多孔質構造の支持具となる。また、成形工程において、成形体に対して支持具となる部分を一体に形成する、又は支持具となる部分を組み合わせた組立体として、その成形体又は組立体を容器に直接、載置してもよい。
【0073】
・上記実施形態では、脱脂工程と含浸工程とを異なる温度域による多段階の加熱処理によって連続的に行っていたが、脱脂工程の加熱処理と、含浸工程の加熱処理とを別々に行ってもよい。この場合、例えば、脱脂工程により得られた脱脂体(ハニカム多孔体)を、金属ケイ素を収容する容器の内部に支持具を介して配置する。そして、容器内を金属ケイ素の融点以上の温度に加熱して含浸工程を行う。
【0074】
・含浸工程に供されるハニカム多孔体は、脱脂体を焼成して炭化ケイ素粒子同士を焼結させた焼成体の状態であってもよい。例えば、脱脂工程と含浸工程とを別々に行うとともに、脱脂工程と含浸工程との間に、脱脂体を1800℃以上の温度で加熱して焼成体を得る焼成工程を行う。そして、焼成工程により得られた焼成体を、金属ケイ素を収容する容器の内部に支持具を介して配置し、容器内を金属ケイ素の融点以上の温度に加熱して含浸工程を行う。含浸工程に供されるハニカム多孔体が焼成体の状態であっても、脱脂体の状態である場合と同様のメカニズムによって、金属ケイ素を含浸させることができる。また、容器の内部に焼成体を配置する際に、複数の焼成体を組み合わせてなる組立体を配置してもよい。
【0075】
・成形工程、加工工程、脱脂工程、含浸工程以外のその他の工程を更に行ってもよい。その他の工程としては、例えば、上記焼成工程、複数の成形体や焼成体を組み合わせて組立体を得る組立工程、含浸工程後に研磨等の表面加工を行う後加工工程が挙げられる。また、加工工程を省略してもよい。
【0076】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる別の技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記成形体の前記周壁における壁厚が最も厚い側壁を下側として、前記成形体を前記支持具に載置する前記ハニカム構造体の製造方法。
【符号の説明】
【0077】
10…熱交換器(ハニカム構造体)、11…周壁、12…区画壁、12a…骨格部分、12b…充填部分、13a…第1セル、13b…第2セル、20…成形体、20a…加工成形体、30…脱脂体(ハニカム多孔体)、40…容器、41…支持具、42…金属ケイ素。
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図10
図11
図12
図13