(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-156710(P2019-156710A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】セメント組成物および該セメント組成物を用いたセメント硬化物の中性化抑制方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20190823BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20190823BHJP
C04B 111/22 20060101ALN20190823BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B24/38 A
C04B111:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-211933(P2018-211933)
(22)【出願日】2018年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2018-39293(P2018-39293)
(32)【優先日】2018年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592037907
【氏名又は名称】株式会社デイ・シイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】下沢 択己
(72)【発明者】
【氏名】谷田貝 敦
(72)【発明者】
【氏名】二戸 信和
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カルボキシメチルセルロースの少量の添加によりセメント硬化物の中性化を効果的に抑制でき、高炉セメントに添加した場合でも普通ポルトランドセメントに近い中性化速度係数が得られるセメント組成物および該セメント組成物を用いたセメント硬化物の中性化抑制方法を提供する。
【解決手段】普通セメントあるいは高炉セメントなどの混合セメントにカルボキシメチルセルロースを添加する。カルボキシメチルセルロースを添加したセメント組成物を用いて水和反応させることで、硬化後の硬化物の中性化抑制機能を改善することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントにカルボキシメチルセルロースを添加したことを特徴とするセメント組成物。
【請求項2】
請求項1記載のセメント組成物において、セメントが高炉セメントであることを特徴とするセメント組成物。
【請求項3】
セメントを含む水硬性組成物にカルボキシメチルセルロースを添加した状態で水和反応させることで、硬化後の硬化物の中性化抑制機能を改善することを特徴とするセメント硬化物の中性化抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント硬化物の中性化抑制のためにカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いたセメント組成物および該セメント組成物を用いたセメント硬化物の中性化抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉スラグ微粉末などを使用した混合セメントが使用されており、初期強度の増進、収縮の抑制に効果的であるが、普通ポルトランドセメントよりも促進中性化が大きく、中性化の抑制が必要とされている。
【0003】
セメントの中性化抑制に関する従来技術としては、例えば以下の特許文献1〜6記載の発明がある。
【0004】
特許文献1には、ポルトランドセメント10〜30質量%と高炉スラグ微粉末70〜90質量%からなる結合材100質量部にハイドロキシアパタイトを0.5〜15質量%を含む低炭素中性化抑制モルタルの開示がある。
【0005】
特許文献2には、結合材が普通ポルトランドセメントを45質量%〜65質量%と、高炉スラグ微粉末を25質量%〜55質量%と、フライアッシュを10質量%以下含むことを特徴とする混合セメントの開示がある。
【0006】
特許文献3には、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、消石灰の中から選んだ1種または2種以上と、製鋼スラグと、高炉スラグ微粉末とを含有して、鉄筋が耐候性を有する炭素鋼であることを特徴とする耐中性化性および耐塩害性に優れた鉄筋を有する水和硬化体の開示がある。
【0007】
特許文献4には、γ−2CaO・SiO
2、α−CaO・SiO
2、及びカルシウムマグネシウムシリケートからなる群から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の非水硬性化合物を含有することを特徴とするセメント混和材が開示されている。
【0008】
特許文献5にセメントと難溶性酸化マグネシウムからなる中性化反応の進行を抑制した水硬性組成物が開示されている。
【0009】
また、本願の出願人は、特許文献6において、ポルトランドセメントや高炉セメントなどのセメントを主体とする水硬性組成物に予めアルギン酸塩を加えた状態で水和反応させることで、硬化後の硬化物の中性化抑制機能および塩化物イオン浸透抑制機能を改善するする方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015−221735号公報
【特許文献2】特開2015−202978号公報
【特許文献3】特開2007−269557号公報
【特許文献4】国際公開2003/016234号
【特許文献5】特開2017−222541号公報
【特許文献6】特開2018−002509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
中性化の問題は、コンクリートの中性化が進むと鉄筋コンクリートなどのコンクリート中の鋼材の腐食に起因してコンクリートのひび割れや剥離が生じ、コンクリート構造物が劣化するというものである。
【0012】
特に、高炉セメントの促進中性化は普通ポルトランドセメントよりも大きく、従来技術においては一般的に普通ポルトランドセメントに近い促進中性化が得られていない。
【0013】
上述した特許文献6記載の発明では、中性化抑制機能および塩化物イオン浸透抑制機能を改善する目的で、セメントを主体とする水硬性組成物にアルギン酸塩を添加しているが、添加量が多くなるという問題がある。
【0014】
本発明は、従来、主として食品添加物などとして利用されているカルボキシメチルセルロースをセメントに添加するものであり、少量の添加によりセメント硬化物の中性化を効果的に抑制でき、高炉セメントに添加した場合でも普通ポルトランドセメントに近い中性化速度係数が得られるセメント組成物および該セメント組成物を用いたセメント硬化物の中性化抑制方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のセメント組成物は、セメントにカルボキシメチルセルロースを添加したことを特徴とするものである。
【0016】
本発明のセメント硬化物の中性化抑制方法は、セメントを含む水硬性組成物にカルボキシメチルセルロースを添加した状態で水和反応させることで、硬化後の硬化物の中性化抑制機能を改善することを特徴とするものである。
【0017】
セメントは普通セメント等のポルトランドセメントに限らず、混合セメントでもよく、特に中性化が問題となりやすい高炉セメントおよびフライアッシュセメントにおいてもカルボキシメチルセルロースを添加することで、セメント硬化物について顕著な中性化抑制効果が得られる。ポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末等の混和材料を添加した結合材に対しても適用できる。
【0018】
前述した特許文献6記載の発明で用いられるアルギン酸に比べ少量の添加で中性化抑制効果が得られる。セメントに対し内割で0.1重量%でも十分な中性化抑制効果が得られており、添加量が多すぎるとセメントの性能に影響を及ぼす可能性も考えられるため、カルボキシメチルセルロースの添加量はセメント組成物に対し内割で2.0重量%以下が好ましい。
【0019】
後述する試験1のNo.5〜No.14では、高炉セメントB種にカルボキシメチルセルロースとしてのF30MC、F800HC、F1400MCを、セメントに対し内割で0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、1.0重量%添加して中性化速度係数を求めたが、高炉セメントB種のみのNo.2、アルギン酸を0.5重量%添加したNo.3の場合に比べ、総じて約半分の数値が得られた。これは普通セメントの場合のNo.1と同程度の中性化速度係数である。
【0020】
0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、1.0重量%の添加において、中性化速度係数に大きな差がみられなかったことから、カルボキシメチルセルロースをセメントに対し内割で0.1重量%よりさらに少ない量添加した場合でもある程度の中性化抑制効果が得られるものと推定できる。従って、あえて添加量の下限を与えるとすれば、カルボキシメチルセルロースの添加量はセメント組成物に対し内割で0重量%より大となる。
【発明の効果】
【0021】
セメントへのカルボキシメチルセルロースの添加によりセメント硬化物の中性化が抑制される。高炉セメントにカルボキシメチルセルロースを添加した場合には中性化速度係数が普通ポルトランドセメントと近い値になった。
【0022】
セメントに添加するカルボキシメチルセルロースは、アルギン酸より少ない添加量で中性化抑制効果が認められた。また、カルボキシメチルセルロース自体安価に入手することができるので、セメント組成物としてのコスト増も小さく抑えることができる。
【0023】
カルボキシメチルセルロースの添加量は、例えば0.1重量%以下でも中性化抑制効果が期待でき、できるだけ添加量を抑えることで、セメント硬化物の性能に与える影響も小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の効果を確認するために行った試験について説明する。
【0025】
〔試験1〕
試験1に使用したセメントは、普通ポルトランドセメントと高炉セメントB種である。なお、試験に用いた高炉セメントB種は、普通ポルトランドセメント60重量%に、高炉スラグ微粉末(高炉スラグ微粉末4000)40重量%を添加したものである。
【0026】
水セメント比W/C=50%、セメント:細骨材(セメント協会標準)=1:2とし、消泡剤で空気量を2.0%以下に調整し、これにカルボキシメチルセルロース(CMC)として、日本製紙株式会社製のカルボキシメチルセルロースF30MC、F800HC、F1400MCを混合した。
【0027】
F30MC:日本製紙株式会社のカルボキシメチルセルロースの銘柄(粘度:250〜350 mPa・s、エーテル化度DS:0.65〜0.75 mol/C6)
F800HC:日本製紙株式会社のカルボキシメチルセルロースの銘柄(粘度:11000〜14000 mPa・s、エーテル化度DS:0.65〜0.75 mol/C6)
F1400MC:日本製紙株式会社のカルボキシメチルセルロースの銘柄(粘度:6000〜8000 mPa・s、エーテル化度DS:0.80〜1.00 mol/C6)
【0028】
促進中性化はJIS A 1153「コンクリートの促進中性化試験方法」に準拠した方法(本検討では水中養生7日間)で促進中性化をした試料の中性化深さを測定した。
【0029】
試験水準を示す表1において、No.1〜No.4は比較例であり、No.1は普通ポルトランドセメントのみの場合、No.2は高炉セメントB種のみの場合、No.3、No.4はそれぞれ高炉セメントB種にアルギン酸をセメントに対し内割で0.5重量%、1.0重量%添加した場合である。
【0030】
No.5〜No.10は本発明の実施例であり、No.5、No.6はそれぞれ高炉セメントB種にカルボキシメチルセルロースとしてのF30MCをセメントに対し内割で0.5重量%、1.0重量%添加した場合である。
【0031】
No.7、No.8はそれぞれ高炉セメントB種にカルボキシメチルセルロースとしてのF800HCをセメントに対し内割で0.5重量%、1.0重量%添加した場合である。
No.9、No.10はそれぞれ高炉セメントB種にカルボキシメチルセルロースとしてのF1400MCをセメントに対し内割で0.5重量%、1.0重量%添加した場合である。
【0032】
No.11〜No.14はカルボキシメチルセルロースの添加量がさらに少量の場合の追加の実施例であり、No.11、No.12はそれぞれ高炉セメントB種にカルボキシメチルセルロースとしてのF30MCをセメントに対し内割で0.1重量%、0.3重量%添加した場合である。
【0033】
No.13、No.14はそれぞれ高炉セメントB種にカルボキシメチルセルロースとしてのF800HCをセメントに対し内割で0.1重量%、0.3重量%添加した場合である。
【0037】
比較例である普通ポルトランドセメントのみの場合のNo.1と高炉セメントB種のみの場合のNo.2の対比では、従来の知見どおり、高炉セメントB種は普通ポルトランドセメントよりも促進中性化が早いことが分かる。
【0038】
高炉セメントB種にアルギン酸を添加した比較例No.3、No.4の対比では、アルギン酸を高炉セメントB種に対し内割で1.0重量%添加したNo.4では、明確な中性化抑制効果が確認できたが、アルギン酸を高炉セメントB種に対し内割で0.5重量%添加したNo.3では高炉セメントB種のみの場合のNo.2に対する差がわずかであり、内割で0.5重量%の添加では中性化抑制効果が不十分であることが示唆されている。
【0039】
カルボキシメチルセルロースを添加した本発明の実施例であるNo.5〜No.10については、カルボキシメチルセルロースを高炉セメントB種に対し内割で0.5重量%添加したNo.5、No.7、No.9についても明確な中性化抑制効果が確認できた。
【0040】
カルボキシメチルセルロースを高炉セメントB種に対し内割で1.0重量%添加したNo.6、No.8、No.10ではさらに中性化抑制効果が増しているが、アルギン酸の場合のような顕著な差はなかった。
【0041】
また、カルボキシメチルセルロースの銘柄F30MC、F800HC、F1400MCでは効果に若干の差は見られたが顕著な差ではなかった。
【0042】
この試験結果から、セメントに対するカルボキシメチルセルロースの添加により、アルギン酸に比べて少量で、セメント硬化物における顕著な中性化抑制効果が得られることが分かった。
【0043】
次に、カルボキシメチルセルロースの添加量をさらに少量として場合のNo.11〜No.14についてみると、F30MCを高炉セメントB種に対し内割で0.3重量%添加したNo.12がF30MCを高炉セメントB種に対し内割で1.0重量%添加したNo.06よりも結果としてさらに高い中性化抑制効果の数値が出ており、高炉セメントB種にカルボキシメチルセルロースを添加した場合、総じて中性化速度係数が普通ポルトランドセメントと近い値になった。
【0044】
No.11〜No.14の実験結果から、カルボキシメチルセルロースの添加量が0.1重量%以下でも高い中性化抑制効果が得られることが分かった。一方、カルボキシメチルセルロース自体は安価であり、添加量の増加によるコスト的なデメリットは少ないため、セメント硬化物の強度その他の性能に影響が少ない範囲で添加すればよい。