【解決手段】1,1,3−トリクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ca)及び/又は1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213ya)並びに1,2,2−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ab)を含む混合物から前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去する工程を含む、HCFC−224ca及び/又はCFO−1213yaの精製方法。
1,1,3−トリクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ca)及び/又は1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213ya)並びに1,2,2−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ab)を含む混合物から前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去する工程
を含む、HCFC−224ca及び/又はCFO−1213yaの精製方法。
前記混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物に接触させることにより、前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去する、請求項1に記載のHCFC−224ca及び/又はCFO−1213yaの精製方法。
前記有機リン化合物が、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−プロピルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト及びトリフェニルホスファイトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本明細書において、室温とは、本発明が実施される地理的位置等によって変わるが、10℃〜40℃の範囲内の温度を意味する。
【0015】
(実施形態1)
実施形態1に係る発明は、1,1,3−トリクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ca)及び1,2,2−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ab)を含む混合物からHCFC−224abの少なくとも一部を除去する工程を含む、HCFC−224caの精製方法である。
【0016】
実施形態1では、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物に接触させることにより、前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去することが好ましい。
【0017】
実施形態1によれば、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、特に、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物と反応させることにより、沸点が近いHCFC−224ca(沸点91℃)及びHCFC−224ab(沸点92.5℃)を含む混合物から、蒸留による分離が困難なHCFC−224abの少なくとも一部を簡便に除去し、HCFC−224caを精製することができる。
【0018】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物に所定量の有機リン化合物を加え、室温で、又は必要に応じて加熱しながら、好適な溶媒中で所定時間撹拌すると、HCFC−224abのみが選択的に有機リン化合物と反応し、脱ハロゲンを起こして沸点の低いオレフィン化合物に変換される。そのため、当該反応により得られた混合物には、HCFC−224caと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いHCFC−224caを容易に得ることができる。
【0019】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔を用いて蒸留することにより、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを容易に分離することができる。そのため、当該精留塔を用いた蒸留により得られた混合物には、HCFC−224caと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いHCFC−224caを容易に得ることができる。
【0020】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段未満の精留塔で蒸留した場合、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを除去することが困難となる。その結果、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物にはHCFC−224abが多く残存することになり、純度の高いHCFC−224caを得ることができないという問題点を有する。
【0021】
理論段数の上限値については、コスト削減の点から、30段未満であることが好ましく、20段以下であることがより好ましく、15段以下であることが更に好ましく、10段以下であることが特に好ましい。
【0022】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際の塔頂の圧力については、特に限定されず、減圧下、大気圧下、又は加圧下のいずれでも蒸留を行うことができる。本実施形態では、−0.09MPa以上の減圧下、大気圧(0.1MPa)下、又は0.3Mpa以下の加圧下で蒸留を行うことが好ましく、蒸留設備を簡素化できる点から、大気圧下で蒸留を行うことがより好ましい。
【0023】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際には、分離効率を悪化させないために、蒸留缶や蒸留塔の温度を適切にコントロールすることが好ましい。例えば、大気圧で蒸留を行う場合、蒸留缶の温度を88℃から97℃まで変化させることが好ましく、蒸留缶の温度を91℃から95℃まで変化させることがより好ましい。また、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際には、分離効率を悪化させないために、塔頂の温度が90℃から93℃の間の留分を主留分として回収することが好ましく、塔頂の温度が90.5℃から92.0℃の間の留分を主留分として回収することがより好ましい。
【0024】
有機リン化合物としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−プロピルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト及びトリフェニルホスファイトからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが好ましい。
【0025】
有機リン化合物の量は、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物中に含まれるHCFC−224ab1質量部に対して、1〜100質量部が通常であり、3〜75質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、7.5〜40質量部が更に好ましく、10〜30質量部が特に好ましい。
【0026】
有機リン化合物を用いる場合の溶媒としては、特に限定されるものではなく、公知の有機溶媒を広く使用できる。例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングルコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム類などのエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物が好適に用いられる。
【0027】
上記溶媒の量は、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物1質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。
【0028】
有機リン化合物を用いる場合の反応温度は、例えば、0〜100℃とすることができる。
【0029】
有機リン化合物を用いる場合の反応圧力は、例えば、大気圧とすることができる。
【0030】
有機リン化合物を用いる場合の反応時間は、例えば、1〜24時間とすることができる。
【0031】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物中におけるHCFC−224ab除去前のHCFC−224caの純度は、1.00mol%〜99.99mol%が好ましく、50.00mol%〜99.99mol%がより好ましく、70.00mol%〜99.99mol%が更に好ましく、90.00mol%〜99.99mol%が特に好ましい。
【0032】
(実施形態2)
実施形態2に係る発明は、1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213ya)及びHCFC−224abを含む混合物から前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去する工程を含む、CFO−1213yaの精製方法である。
【0033】
実施形態2では、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物に接触させることにより、前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去することが好ましい。
【0034】
実施形態2によれば、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、特に、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物と反応させることにより、沸点が近いHCFC−224ab(沸点92.5℃)及びCFO−1213ya(沸点85℃)を含む混合物から、蒸留による分離が困難なHCFC−224abの少なくとも一部を簡便に除去し、CFO−1213yaを精製することができる。
【0035】
CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物に所定量の有機リン化合物を加え、室温で、又は必要に応じて加熱しながら、好適な溶媒中で所定時間撹拌すると、HCFC−224abのみが選択的に有機リン化合物と反応し、脱ハロゲンを起こして沸点の低いオレフィン化合物となる。そのため、当該反応により得られた混合物には、CFO−1213yaと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いCFO−1213yaを高収率で得ることができる。
【0036】
CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔を用いて蒸留することにより、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを分離することができる。そのため、当該精留塔を用いた蒸留により得られた混合物には、CFO−1213yaと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いCFO−1213yaを高収率で製造することができる。
【0037】
CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段未満の精留塔で蒸留した場合、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを除去することが困難となる。その結果、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物にはHCFC−224abが多く残存することになり、純度の高いCFO−1213yaを得ることができないという問題点を有する。
【0038】
理論段数の上限値については、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物からのHCFC−224abの分離が可能であればよく、コスト削減の点から、30段未満であることが好ましく、20段以下であることがより好ましく、15段以下であることが更に好ましく、10段以下であることが特に好ましい。
【0039】
CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際の塔頂の圧力については、特に限定されず、減圧下、大気圧下、又は加圧下のいずれでも蒸留を行うことができる。本実施形態では、−0.09MPa以上の減圧下、大気圧(0.1MPa)下、又は0.3Mpa以下の加圧下で蒸留を行うことが好ましく、蒸留設備を簡素化できる点から、大気圧下で蒸留を行うことがより好ましい
【0040】
CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際には、大気圧で蒸留を行う場合の条件として、分離効率を悪化させないために、蒸留缶の温度を85℃から90℃まで変化させることが好ましく、蒸留缶の温度を85℃から87℃まで変化させることがより好ましい。また、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際には、分離効率を悪化させないために、塔頂の温度が83℃から86℃の間の留分を主留分として回収することが好ましく、塔頂の温度が84℃から85℃の間の留分を主留分として回収することがより好ましい。
【0041】
有機リン化合物としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−プロピルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト及びトリフェニルホスファイトからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが好ましい。
【0042】
有機リン化合物の量は、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物中に含まれるHCFC−224ab1質量部に対して、1〜100質量部が通常であり、3〜75質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、7.5〜40質量部が更に好ましく、10〜30質量部が特に好ましい。
【0043】
有機リン化合物を用いる場合の溶媒としては、公知の有機溶媒を広く使用できる。例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングルコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム類などのエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物が好適に用いられる。
【0044】
上記溶媒の量は、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物1質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。
【0045】
有機リン化合物を用いる場合の反応温度は、例えば、0〜100℃程度とすることができる。
【0046】
有機リン化合物を用いる場合の反応圧力は、例えば、大気圧とすることができる。
【0047】
有機リン化合物を用いる場合の反応時間は、例えば、1〜24時間とすることができる。
【0048】
CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物中におけるHCFC−224ab除去前のCFO−1213yaの純度は、1.00mol%〜99.99mol%が好ましく、50.00mol%〜99.99mol%がより好ましく、70.00mol%〜99.99mol%が更に好ましく、90.00mol%〜99.99mol%が特に好ましい。
【0049】
本発明の組成物は、HCFC−224ab及びCFO−1213yaを含む組成物であって、HCFC−224abの含有量が、前記組成物に対して1質量%以下である。
【0050】
本発明の組成物において、純度の高いCFO−1213yaを高収率で得る観点から、HCFC−224abの含有量は、HCFC−224ab及びCFO−1213yaを含む組成物に対して0.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。
【0051】
(実施形態3)
実施形態3に係る発明は、1,1,3−トリクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ca)及び1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213ya)並びに1,2,2−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ab)を含む混合物から前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去する工程を含む、HCFC−224ca及びCFO−1213yaの精製方法である。
【0052】
実施形態3では、HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物に接触させることにより、前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去することが好ましい。
【0053】
実施形態3によれば、HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物を、特に、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物と反応させることにより、沸点が近いHCFC−224ca(沸点91℃)及びCFO−1213ya(沸点85℃)並びにHCFC−224ab(沸点92.5℃)を含む混合物から、蒸留による分離が困難なHCFC−224abの少なくとも一部を簡便に除去し、HCFC−224ca及びCFO−1213yaを精製することができる。
【0054】
HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物に所定量の有機リン化合物を加え、室温で、又は必要に応じて加熱しながら、好適な溶媒中で所定時間撹拌すると、HCFC−224abのみが選択的に有機リン化合物と反応し、脱ハロゲンを起こして沸点の低いオレフィン化合物となる。そのため、当該反応により得られた混合物には、HCFC−224ca及びCFO−1213yaと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いHCFC−224ca及びCFO−1213yaを高収率で得ることができる。
【0055】
HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔を用いて蒸留することにより、HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを分離することができる。そのため、当該精留塔を用いた蒸留により得られた混合物には、HCFC−224ca及びCFO−1213yaと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いHCFC−224ca及びCFO−1213yaを高収率で製造することができる。
【0056】
HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段未満の精留塔で蒸留した場合、HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを除去することが困難となる。その結果、HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物にはHCFC−224abが多く残存することになり、純度の高いHCFC−224ca及びCFO−1213yaを得ることができないという問題点がある。
【0057】
理論段数の上限値については、HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物からのHCFC−224abの分離が可能であればよく、コスト削減の点から、30段未満であることが好ましく、20段以下であることがより好ましく、15段以下であることが更に好ましく、10段以下であることが特に好ましい。
【0058】
HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際の塔頂の圧力については、特に限定されず、減圧下、大気圧下、又は加圧下のいずれでも蒸留を行うことができる。本実施形態では、−0.09MPa以上の減圧下、大気圧(0.1MPa)下、又は0.3Mpa以下の加圧下で蒸留を行うことが好ましく、蒸留設備を簡素化できる点から、大気圧下で蒸留を行うことがより好ましい。
【0059】
有機リン化合物としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−プロピルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト及びトリフェニルホスファイトからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが好ましい。
【0060】
有機リン化合物の量は、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物中に含まれるHCFC−224abの1質量部に対して、1〜100質量部が通常であり、3〜75質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、7.5〜40質量部が更に好ましく、10〜30質量部が特に好ましい。
【0061】
有機リン化合物を用いる場合の溶媒としては、公知の有機溶媒を広く使用できる。例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングルコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム類などのエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物が好適に用いられる。
【0062】
上記溶媒の量は、例えば、HCFC−224ca及びCFO−1213ya並びにHCFC−224abを含む混合物1質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。
【0063】
有機リン化合物を用いる場合の反応温度は、例えば、0〜100℃程度とすることができる。
【0064】
有機リン化合物を用いる場合の反応圧力は、例えば、大気圧とすることができる。
【0065】
有機リン化合物を用いる場合の反応時間は、例えば、1〜24時間とすることができる。
【0066】
(実施形態4)
実施形態4に係る発明は、(1)テトラフルオロエチレン(TFE)及びクロロホルム(CHCl
3)を反応させて、1,1,3−トリクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ca)及び1,2,2−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ab)を含む混合物を生成させる工程、及び(2)前記工程(1)で得られた混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物に接触させることにより、前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去する工程を含む。
【0067】
実施形態4によれば、前記工程(1)及び前記工程(2)を経ることによって、、沸点が近いHCFC−224ca(沸点91℃)及びHCFC−224ab(沸点92.5℃)を含む混合物から、蒸留による分離が困難なHCFC−224abの少なくとも一部を簡便に除去し、純度の高いHCFC−224caを製造することができる。
【0068】
以下、実施形態4に係る発明の各工程について、具体的に説明する。
【0069】
(1)HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を生成する工程
本工程では、テトラフルオロエチレン(TFE)を原料として、例えば、触媒の存在下、反応に不活性な溶媒中又は無溶媒で、TFE及びクロロホルム(CHCl
3)を接触させることによって行うことができる。これにより、TFEにクロロホルムが付加して、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物が生成する。
【0070】
本工程で使用する触媒としては、無水塩化アルミニウムに代表されるルイス酸、例えば、無水四塩化チタン、無水四塩化ジルコニウム、無水四塩化スズ、無水五塩化アンチモン、無水塩化亜鉛、無水塩化鉄、無水臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素などが挙げられる。これらの触媒中、TFEへのクロロホルムの付加反応に対して良好な触媒活性を示す観点から、無水塩化アルミニウム、無水四塩化チタン、及び無水四塩化ジルコニウムが好ましく、特に無水塩化アルミニウムが好ましい。
【0071】
本工程で使用する無水塩化アルミニウム、無水四塩化ジルコニウム、無水四塩化チタン等は、通常市販されている粒状または粉末状のもの、あるいは液状のものが使用できる。
【0072】
本工程で使用する触媒の量は、TFE及びクロロホルムの合計量100質量部に対して、0.1〜50質量部が通常であり、0.5〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、1.5〜15質量部が更に好ましく、2〜10質量部が特に好ましい。
【0073】
TFE及びクロロホルムを反応させる際の温度は、−40〜200℃が好ましく、10〜150℃がより好ましい。
【0074】
TFE及びクロロホルムを反応させる際の圧力は、常圧〜2MPaが好ましく、常圧〜1MPaがより好ましい。
【0075】
TFE及びクロロホルムを反応させる際の時間は、0.5〜12時間が好ましく、1〜8時間がより好ましい。
【0076】
(2)HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abの少なくとも一部を除去する工程
本工程では、工程(1)で生成したHCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物に接触させることにより、前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去する。
【0077】
工程(1)で生成したHCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物に所定量の有機リン化合物を加え、室温で、又は必要に応じて加熱しながら、好適な溶媒中で所定時間撹拌すると、HCFC−224abのみが選択的に有機リン化合物と反応し、脱ハロゲンを起こして沸点の低いオレフィン化合物となる。そのため、当該反応により得られた混合物には、HCFC−224caと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いHCFC−224caを製造することができる。
【0078】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔を用いて蒸留することにより、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを分離することができる。そのため、当該精留塔を用いた蒸留により得られた混合物には、HCFC−224caと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いHCFC−224caを製造することができる。
【0079】
有機リン化合物としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−プロピルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト及びトリフェニルホスファイトからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが好ましい。
【0080】
有機リン化合物の量は、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物中に含まれるHCFC−224ab1質量部に対して、1〜100質量部が通常であり、3〜75質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、7.5〜40質量部が更に好ましく、10〜30質量部が特に好ましい。
【0081】
有機リン化合物を用いる場合の溶媒としては、公知の有機溶媒を広く使用できる。例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングルコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム類などのエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物が好適に用いられる。
【0082】
上記溶媒の量は、例えば、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物1質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。
【0083】
有機リン化合物を用いる場合の反応温度は、例えば、0〜100℃とすることができる。
【0084】
有機リン化合物を用いる場合の反応圧力は、例えば、大気圧とすることができる。
【0085】
有機リン化合物を用いる場合の反応時間は、例えば、1〜24時間とすることができる。
【0086】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段未満の精留塔で蒸留した場合、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを除去することが困難となる。その結果、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物にはHCFC−224abが多く残存することになり、純度の高いHCFC−224caを得ることができないという問題点がある。
【0087】
理論段数の上限値については、コスト削減の点から、30段未満であることが好ましく、20段以下であることがより好ましく、15段以下であることが更に好ましく、10段以下であることが特に好ましい。
【0088】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際の塔頂の圧力については、特に限定されず、減圧下、大気圧下、又は加圧下のいずれでも蒸留を行うことができる。本実施形態では、−0.09MPa以上の減圧下、大気圧(0.1MPa)下、又は0.3Mpa以下の加圧下で蒸留を行うことが好ましく、蒸留設備を簡素化できる点から、大気圧下で蒸留を行うことがより好ましい。
【0089】
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際には、分離効率を悪化させないために、大気圧下で蒸留をおこない場合の条件の一例として、蒸留缶の温度を88℃から97℃まで変化させることが好ましく、蒸留缶の温度を91℃から95℃まで変化させることがより好ましい。また、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際には、分離効率を悪化させないために、塔頂の温度が90℃から93℃の間の留分を主留分として回収することが好ましく、塔頂の温度が90.5℃から92.0℃の間の留分を主留分として回収することがより好ましい。
【0090】
(実施形態5)
実施形態5に係る発明は、(1)テトラフルオロエチレン(TFE)及びクロロホルムを反応させて、1,1,3−トリクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ca)及び1,2,2−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ab)を含む混合物を生成する工程、(2)工程(1)で生成した混合物に塩基を接触させて、1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213ya)及びHCFC−224abを含む混合物を生成する工程、及び(3)工程(2)で生成された混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物に接触させて、前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去する工程を含む、CFO−1213yaの製造方法である。
【0091】
実施形態5によれば、前記工程(1)〜前記工程(3)を経ることによって、沸点が近いHCFC−224ab(沸点92.5℃)及びCFO−1213ya(沸点85℃)を含む混合物から、蒸留による分離が困難なHCFC−224abの少なくとも一部を簡便に除去し、純度の高いCFO−1213yaを高収率で製造することができる。
【0092】
以下、実施形態5に係る発明の各工程について、具体的に説明する。
(1)HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を生成する工程
本工程では、テトラフルオロエチレン(TFE)を原料として、例えば、触媒の存在下、反応に不活性な溶媒中又は無溶媒で、TFE及びクロロホルムを接触させることによって行うことができる。これにより、TFEにクロロホルムが付加して、HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物が生成される。
【0093】
本工程で使用する触媒としては、無水塩化アルミニウムに代表されるルイス酸、例えば、無水四塩化チタン、無水四塩化ジルコニウム、無水四塩化スズ、無水五塩化アンチモン、無水塩化亜鉛、無水塩化鉄、無水臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素などが挙げられる。これらの触媒中、TFEへのクロロホルムの付加反応に対して良好な触媒活性を示す観点から、無水塩化アルミニウム、無水四塩化チタン、無水四塩化ジルコニウムが好ましく、特に無水塩化アルミニウムが好ましい。
【0094】
本工程で使用する無水塩化アルミニウム、無水四塩化ジルコニウム、無水四塩化チタン等は、通常市販されている粒状または粉末状のもの、あるいは液状のものが使用できる。
【0095】
本工程で使用する触媒の量は、TFE及びクロロホルムの合計量100質量部に対して、0.1〜50質量部が通常であり、0.5〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、1.5〜15質量部が更に好ましく、2〜10質量部が特に好ましい。
【0096】
TFE及びクロロホルムを反応させる際の温度は、−40〜200℃が好ましく、10〜150℃がより好ましい。
【0097】
TFE及びクロロホルムを反応させる際の圧力は、常圧〜2MPaが好ましく、常圧〜1MPaがより好ましい。
【0098】
TFE及びクロロホルムを反応させる際の時間は、0.5〜12時間が好ましく、1〜8時間がより好ましい。
【0099】
(2)CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を生成する工程
工程(1)で生成したHCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物に塩基を接触させて、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物が生成される。
【0100】
上記塩基としては、公知のアルカリ金属水酸化物を広く使用でき、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらのうち、水酸化カリウムが好ましい。
【0101】
上記塩基の量は、工程(1)で生成したHCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物100質量部に対して、1.0〜5質量部が通常であり、1.1〜3質量部が好ましい。
【0102】
上記塩基との接触は、反応場が有機相と水相とに分離しても円滑に反応を進めることができる点から、相間移動触媒の存在下で行うことが好ましい。相間移動触媒としては、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩等の四級アンモニウム塩;テトラブチルホスホニウム塩、ベンジルトリメチルホスホニウム塩等の四級ホスホニウム塩;12−クラウン−4、18−クラウン−6、ベンゾ−18−クラウン−6等の大環状ポリエーテル化合物等が挙げられる。これらの中でも、トリオクチルメチルアンモニウム塩であるトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMAC)が好ましい。
【0103】
上記相間移動触媒の量は、工程(1)で生成したHCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物100質量部に対して、0.005〜1質量部が通常であり、0.1〜0.5質量部が好ましい。
【0104】
上記混合物に塩基を接触させる時間は、通常、2〜10時間である。
【0105】
上記混合物に塩基を接触させる温度は、通常、50〜90℃である。
【0106】
(3)CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abの少なくとも一部を除去する工程
本工程では、工程(2)で生成されたCFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する及び/又は有機リン化合物に接触させることにより、前記HCFC−224abの少なくとも一部を除去する。
【0107】
工程(2)で生成されたCFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物に所定量の有機リン化合物を加え、室温で、又は必要に応じて加熱しながら、好適な溶媒中で所定時間撹拌すると、HCFC−224abのみが選択的に有機リン化合物と反応し、脱ハロゲンを起こして沸点の低いオレフィン化合物となる。そのため、当該反応により得られた混合物には、CFO−1213yaと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いCFO−1213yaを高収率で製造することができる。
【0108】
工程(2)で生成されたCFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔を用いて蒸留することにより、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを分離することができる。そのため、当該精留塔を用いた蒸留により得られた混合物には、CFO−1213yaと沸点が近いHCFC−224abが含まれておらず、純度の高いCFO−1213yaを高収率で製造することができる。
【0109】
有機リン化合物としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−プロピルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト及びトリフェニルホスファイトからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが好ましい。
【0110】
有機リン化合物の量は、HCFC−224abを効率よく除去できる観点から、HCFC−224abの1質量部に対して、1〜100質量部が通常であり、3〜75質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、7.5〜40質量部が更に好ましく、10〜30質量部が特に好ましい。
【0111】
有機リン化合物を用いる場合の溶媒としては、公知の有機溶媒を広く使用できる。例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングルコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム類などのエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物が好適に用いられる。
【0112】
上記溶媒の量は、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物1質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。
【0113】
有機リン化合物を用いる場合の反応温度は、例えば、0〜100℃程度とすることができる。
【0114】
有機リン化合物を用いる場合の反応圧力は、例えば、大気圧とすることができる。
【0115】
有機リン化合物を用いる場合の反応時間は、例えば、1〜24時間とすることができる。
【0116】
CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段未満の精留塔で蒸留した場合、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物からHCFC−224abを除去することが困難となる。その結果、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物には、CFO−1213yaと沸点が近いHCFC−224abが多く残存することになり、純度の高いCFO−1213yaを得ることができないという問題点がある。
【0117】
理論段数の上限値については、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物からのHCFC−224abの分離が可能であればよく、コスト削減の点から、30段未満であることが好ましく、20段以下であることがより好ましく、15段以下であることが更に好ましく、10段以下であることが特に好ましい。
【0118】
CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際の塔頂の圧力については、特に限定されず、減圧下、大気圧下、又は加圧下のいずれでも蒸留を行うことができる。本実施形態では、−0.09MPa以上の減圧下、大気圧(0.1MPa)下、又は0.3Mpa以下の加圧下で蒸留を行うことが好ましく、蒸留設備を簡素化できる点から、大気圧下で蒸留を行うことがより好ましい。
【0119】
CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際には、分離効率を悪化させないために、大気圧下で蒸留をおこない場合の条件の一例として、蒸留缶の温度を85℃から90℃まで変化させることが好ましく、蒸留缶の温度を85℃から87℃まで変化させることがより好ましい。また、理論段数3段以上の精留塔で蒸留する際には、分離効率を悪化させないために、塔頂の温度が83℃から87℃の間の留分を主留分として回収することが好ましく、塔頂の温度が84℃から85℃の間の留分を主留分として回収することがより好ましい。
【実施例】
【0120】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0121】
(実施例1)
(1)
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物の製造
100mLステンレス製オートクレーブに、無水塩化アルミニウム(5g,37mmol)及びクロロホルム(100g,838mmol)を入れて撹拌しながら減圧脱気した後、テトラフルオロエチレン(TFE)を0.05MPaまで供給して80℃に昇温した。その後、圧力を0.5MPaを維持し、テトラフルオロエチレンの全量が33g(330mmol)となるまで、オートクレーブにテトラフルオロエチレンを供給した。さらに80℃で4時間撹拌した後、室温まで冷却して、反応液を得た。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、クロロホルムの転化率は36%であり、HCFC−224caの選択率は88%であった。得られた反応液を濾別することによって、HCFC−224ca混合物(80g)を得た。得られたHCFC−224ca混合物中のHCFC−224ca及びHCFC−224abの含有量をガスクロマトグラフィーで測定したところ、HCFC−224caの含有量は88質量%であり、HCFC−224abの含有量は0.8質量%であった。また、得られたHCFC−224ca混合物中のHCFC−224caの純度をガスクロマトグラフィーで測定したところ、HCFC−224caの純度は90mol%であった。
【0122】
(2)
HCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物からのHCFC−224abの除去
30mlのフラスコに、上記(1)で得られたHCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を10g入れ、さらにトリ−n−ブチルホスフィンを3.66mmol(HCFC−224abの1質量部に対して10質量部)入れた後、室温で1時間撹拌した。撹拌後の溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、HCFC−224abは消失していることが確認できた。
【0123】
(実施例2)
(1)
HCFC−224ca、HCFC−224ab及びCFO−1213yaを含む混合物の製造
200mlのガラス製フラスコに、実施例1の(1)で得られたHCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を50g入れ、相間移動触媒であるトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMAC)を50mg入れた後、さらに30wt%に希釈した水酸化カリウム水溶液を57g滴下した。滴下が完了した後、得られた反応溶液を70℃まで加熱して70℃で4時間撹拌した。その後、加熱と撹拌を停止し、反応溶液を室温まで放冷した。
【0124】
放冷後、反応溶液における分液している下層を分取した。分取した下層を単蒸留で精製(蒸留温度:83〜91℃、蒸留圧力:大気圧)することによって、CFO−1213ya混合物(42g)を得た。得られたCFO−1213ya混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、CFO−1213yaの純度は95mol%であり、当該混合物には0.8質量%のHCFC−224ab及び3質量%のHCFC−224caが含まれていることがわかった。
【0125】
(2)
HCFC−224ca、HCFC−224ab及びCFO−1213yaを含む混合物からのHCFC−224abを除去
30mlのフラスコに、上記(1)で得られたHCFC−224ca、HCFC−224ab及びCFO−1213yaを含む混合物を10g入れ、さらにトリ−n−ブチルホスフィンを3.66mmol(HCFC−224abの1質量部に対して10質量部)入れた後、室温で1時間撹拌した。撹拌後の溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、HCFC−224abは消失していることが確認できた。
【0126】
(実施例3)
1000mlのガラス製フラスコに、実施例1の(1)の操作を5回繰り返して得られたHCFC−224ca及びHCFC−224abを含む混合物を400g入れ、理論段数3段のオルダーショー型精留塔を用いて大気圧下にて蒸留を行った。蒸留缶の温度を88℃から95℃まで変化させて蒸留を行い、塔頂の温度が90.5℃から92.0℃の間の留分を主留分として回収した。
【0127】
精留塔の上部から抜き出した主留分をガスクロマトグラフィーによって分析したところ、当該留分中のHCFC−224abの含有量が0.1質量%以下であったことから、HCFC−224abが低減できていることが確認できた。
【0128】
(実施例4)
500mlのガラス製フラスコに、実施例2の(1)の操作を10回繰り返して得られたCFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物を350g入れ、理論段数30段のオルダーショー型精留塔を用いて大気圧下にて蒸留を行った。蒸留缶の温度は82℃から90℃まで変化させて蒸留を行い、塔頂の温度が84.5℃から86.0℃の間の留分を主留分として回収した。
【0129】
精留塔の上部から抜き出した主留分をガスクロマトグラフィーによって分析したところ、当該留分中のHCFC−224abの含有量が0.05質量%であったことから、CFO−1213ya及びHCFC−224abを含む混合物中のHCFC−224abを低減できることがわかった。