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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-156741(P2019-156741A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】機能性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7048 20060101AFI20190823BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20190823BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20190823BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 36/63 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20190823BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20190823BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20190823BHJP
   A23K 20/111 20160101ALI20190823BHJP
   A23K 20/121 20160101ALI20190823BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20190823BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20190823BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20190823BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20190823BHJP
【FI】
   A61K31/7048
   A61P39/06
   A61P9/14
   A61P43/00 121
   A61P43/00 111
   A61K31/12
   A61K31/05
   A61K36/232
   A61K36/63
   A61K8/35
   A61K8/34
   A61K8/60
   A61Q19/00
   A61K8/9789
   A23L33/105
   A23K20/111
   A23K20/121
   A61K125:00
   A61K127:00
   A61K131:00
   A61K135:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-43474(P2018-43474)
(22)【出願日】2018年3月9日
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 均
(72)【発明者】
【氏名】國府 大智
(72)【発明者】
【氏名】シャン レイ
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
2B150AB03
2B150AB10
2B150CE30
2B150DA01
2B150DB04
4B018MD08
4B018MD27
4B018MD48
4B018ME06
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC471
4C083AC472
4C083AD201
4C083AD202
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4C083CC03
4C083EE12
4C083EE13
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4C086AA02
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4C086ZC75
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4C088AC13
4C088BA11
4C088BA13
4C088BA21
4C088MA02
4C088MA04
4C088MA07
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA05
4C088ZA44
4C088ZC21
4C088ZC41
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA20
4C206CB19
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA83
4C206NA05
4C206ZA44
4C206ZC21
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】アシタバ由来の成分とオリーブ由来の成分とを同時に作用させることにより、相乗的にそれらの機能性を発揮させる技術を提供する。
【解決手段】有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含む、機能性組成物、酸化ストレスの予防又は改善用組成物、血管内皮の保護又は損傷治癒促進用組成物、活性酸素の消去又は無害化用組成物、又は内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化用組成物である。上記組成物は、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、動物用医薬品又は飼料の形態であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする機能性組成物。
【請求項2】
有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする酸化ストレスの予防又は改善用組成物。
【請求項3】
有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする血管内皮の保護又は損傷治癒促進用組成物。
【請求項4】
有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする活性酸素の消去又は無害化用組成物。
【請求項5】
有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化用組成物。
【請求項6】
前記キサントアンゲロール及び/又は前記4−ヒドロキシデリシンはアシタバ由来のものであるか、及び/又は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記オレウロペインはオリーブ由来のものである、請求項1記載の機能性組成物。
【請求項7】
前記キサントアンゲロール及び/又は前記4−ヒドロキシデリシンはアシタバ由来のものであるか、及び/又は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記オレウロペインはオリーブ由来のものである、請求項2記載の酸化ストレスの予防又は改善用組成物。
【請求項8】
前記キサントアンゲロール及び/又は前記4−ヒドロキシデリシンはアシタバ由来のものであるか、及び/又は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記オレウロペインはオリーブ由来のものである、請求項3記載の血管内皮の保護又は損傷治癒促進用組成物。
【請求項9】
前記キサントアンゲロール及び/又は前記4−ヒドロキシデリシンはアシタバ由来のものであるか、及び/又は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記オレウロペインはオリーブ由来のものである、請求項4記載の活性酸素の消去又は無害化用組成物。
【請求項10】
前記キサントアンゲロール及び/又は前記4−ヒドロキシデリシンはアシタバ由来のものであるか、及び/又は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記オレウロペインはオリーブ由来のものである、請求項5記載の内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化用組成物。
【請求項11】
食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、動物用医薬品又は飼料の形態である請求項1又は6記載の機能性組成物。
【請求項12】
食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、動物用医薬品又は飼料の形態である請求項2又は7記載の酸化ストレスの予防又は改善用組成物。
【請求項13】
食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、動物用医薬品又は飼料の形態である請求項3又は8記載の血管内皮の保護又は損傷治癒促進用組成物。
【請求項14】
食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、動物用医薬品又は飼料の形態である請求項4又は9記載の活性酸素の消去又は無害化用組成物。
【請求項15】
食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、動物用医薬品又は飼料の形態である請求項5又は10記載の内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来成分を有効成分として含む機能性組成物に関し、より詳細には、アシタバ及びオリーブに由来する有効成分を含む、酸化ストレスの予防又は改善用組成物、血管内皮の保護又は損傷治癒促進用組成物、活性酸素の消去又は無害化用組成物、及び内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セリ科植物であるアシタバ(明日葉、学名Angelica keiskei)には、カルコン類に属するキサントアンゲロールや4−ヒドロキシデリシンが主要な機能性成分として含まれている。また、モクセイ科植物であるオリーブ(学名Olea europaea)には、その葉にはオレウロペインが、その果実にはヒドロキシチロソールが、主要な機能性成分として含まれている。オレウロペインは分子内にヒドロキシチロソールの構造を有し、果実の成熟とともにオレウロペインがヒドロキシチロソールに変化することが知られている。また、生体内に摂取したオレウロペインは一部ヒドロキシチロソールに変換されることが知られている。
【0003】
上記植物来成分の機能性について、本発明者らの研究によれば、オレウロペインやヒドロキシチロソールには、排卵障害改善の作用効果があることが明らかにされている(特許文献1)。また、オレウロペインやヒドロキシチロソールには、骨形成促進の作用効果があることが明らかにされている(特許文献2)。また、アシタバ抽出物には、排卵障害改善の作用効果があることが明らかにされている(特許文献3)。また、アシタバ抽出物や、その機能性成分であるキサントアンゲロールや4−ヒドロキシデリシンには、暑熱ストレスによる精子機能低下を改善する作用効果があることが明らかにされている(特許文献4)。また、アシタバ抽出物には、家畜の乳房炎を予防又は改善する作用効果があることが明らかにされている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−191012号公報
【特許文献2】特開2009−227616号公報
【特許文献3】特開2012−102055号公報
【特許文献4】特開2016−033131号公報
【特許文献5】特開2017−071564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、種々の機能性が知られるアシタバ由来の成分とオリーブ由来の成分について、これらを同時に作用させることは、従来報告がない。
【0006】
本発明の目的は、アシタバ由来の成分とオリーブ由来の成分とを同時に作用させることにより、相乗的にその機能性を発揮させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者らが鋭意研究した結果、アシタバ由来の成分であるキサントアンゲロール又は4−ヒドロキシデリシンと、オリーブ由来の成分であるヒドロキシチロソールとを併用すると、種々の機能性において相乗的に効果が高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、第1に、有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする機能性組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、第2に、有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする酸化ストレスの予防又は改善用組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、第3に、有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする血管内皮の保護又は損傷治癒促進用組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、第4に、有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする活性酸素の消去又は無害化用組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、第5に、有効成分として、(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含むことを特徴とする内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化用組成物を提供するものである。
【0013】
本発明による上記組成物においては、前記キサントアンゲロール及び/又は前記4−ヒドロキシデリシンはアシタバ由来のものであるか、及び/又は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記オレウロペインはオリーブ由来のものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明による上記組成物においては、該組成物は、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、動物用医薬品又は飼料の形態であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アシタバ由来の成分であるキサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、オリーブ由来の成分であるオレウロペイン及び/又はヒドロキシチロソールとを併用するので、種々の機能性において、それら成分による効果が相乗的に高められる。よって、これを利用して、酸化ストレスの予防又は改善用組成物、血管内皮の保護又は損傷治癒促進用組成物、活性酸素の消去又は無害化用組成物、内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化用組成物等、種々機能性組成物を提供することができる。また、機能性の高められた食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、動物用医薬品、飼料等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】試験例1において、被験物質が血管内皮細胞の酸化ストレス抵抗性に与える影響を、トリパンブルー染色による細胞生存率の測定により評価した結果を示す図表である。
図2】試験例2において、被験物質が血管内皮細胞の創傷治癒促進作用に与える影響を、顕微鏡下の観察により評価した結果を示す図表である。
図3】試験例3において、被験物質が血管内皮細胞のグルタチオンペルオキシダーゼ活性に与える影響を、血管内皮細胞の総タンパク抽出液を用いた試験管内酵素活性測定により評価した結果を示す図表である。
図4】試験例4において、被験物質が血管内皮細胞の内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化に与える影響を、血管内皮細胞の総タンパク抽出液を用いたウエスタンブロット解析により評価した結果を示す図表であり、図4(a)は血管内皮細胞の総タンパク抽出液をSDSゲル電気泳動に展開してウエスタンブロットメンブレン上に検出したp−eNOS(活性型eNOS)又はα−チューブリンに相当するバンドの写真であり、図4(b)はそのバンド強度から相対的な発現量を求めてプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、第1の有効成分として、下記化学式(1)で示されるキサントアンゲロール(Xanthoangelol)及び/又は下記化学式(2)で示される4−ヒドロキシデリシン(4-hydroxyderricin)を用いる。第1の有効成分としては、これらいずれかを単独で用いてもよく、両者は併用してもよい。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
本発明においては、第2の有効成分として、下記化学式(3)で示されるヒドロキシチロソール(Hydroxytyrosol)及び/又は下記化学式(4)で示されるオレウロペイン(Oleuropein)を用いる。第2の有効成分としては、これらいずれかを単独で用いてもよく、両者は併用してもよい。なお、オレウロペインは分子内にヒドロキシチロソールの構造を有し、生体内でオレウロペインは一部ヒドロキシチロソールに変換されることが知られている。
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
上記化合物としては、化学合成品を用いてもよいが、入手しやすさや生体に投与したときの安全性の観点からは、天然物由来のものを用いることが好ましい。
【0024】
セリ科植物であるアシタバ(明日葉、学名Angelica keiskei)は古くから食用されており、キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンが豊富に含まれている。よって、本発明に用いる第1の有効成分としては、そのような植物由来の素材を用いることが好ましい。ただし、基原としてはアシタバ以外にもこれらの化合物を含む植物等であればよく、特に制限はない。
【0025】
アシタバとしては、使用する品種や栽培地域等に特に制限はないが、基原として特定の品種を挙げれば、例えば農林水産省品種登録第14641号の「理恵」がある。これによれば、品質の安定したキサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンを含有する素材を得ることができる。使用するアシタバの部位については、本発明の目的を損なわなければ特に制限されず、全草、あるいは葉、茎、根茎、花序、果実、種子等の部位が挙げられる。これらは選択される1種又は2種以上の部位でよく、適宜組み合わせて用いてもよい。これらのうち目的成分の含有量や収量の観点からは、葉、茎、根茎が特に好ましい。使用する品種、収穫時期にもよるが、例えばアシタバ葉には、乾燥重量にして、通常、キサントアンゲロールが0.02質量%〜0.20質量%程度含まれている。また、4−ヒドロキシデリシンが0.01質量%〜0.10質量%程度含まれている。アシタバ茎には、乾燥重量にして、通常、キサントアンゲロールが0.05質量%〜0.40質量%程度含まれている。また、4−ヒドロキシデリシンが0.05質量%〜0.35質量%程度含まれている。アシタバ根には、乾燥重量にして、通常、キサントアンゲロールが0.10質量%〜0.30質量%程度含まれている。また、4−ヒドロキシデリシンが0.10質量%〜0.35質量%程度含まれている。
【0026】
本発明に用いる第1の有効成分としては、アシタバ等の基原植物の植物体をそのまま、例えば葉、茎、及び/又は根茎等の部位の乾燥末などの形態にして用いてもよく、あるいは圧搾してその搾汁液や、これを濃縮、乾燥、粉末化等してなる加工物などの形態にして用いてもよい。ただし、キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンの含有量を高める観点からは、より好ましくは、その抽出物を用いる。
【0027】
抽出は、従来公知の手法によって行うことができる。例えば、基原植物としてアシタバの全草あるいは1種又は2種以上の部位、あるいはその搾汁液や、これを濃縮、乾燥、粉末化等してなる加工物を、適宜適当な溶媒中において、低温ないし加温下で所定時間浸漬したり加熱還流したりすることによって行い得る。得られた一次抽出物は、必要に応じてろ過や濃縮、イオン交換樹脂や液体クロマトグラフィーなどを用いた精製・分離、凍結乾燥等を行ってもよい。これらの分画・精製等の手段によれば、適宜にキサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンの存在を指標にして、その含有量を高めることができる。
【0028】
抽出に使用する溶媒としては、特に制限はなく、通常植物抽出に用いられる溶媒を1種又は2種以上選択して用いることができる。例えば、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭素類等が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、メタノール、プロパノール等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル等が挙げられる。ハロゲン化炭素類としては、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。
【0029】
得られた抽出物は、液状(ジュース)、ペースト状、ゲル状、油状、エマルジョン等いずれの形態に調製して用いてもよい。あるいは乾固させて固体状としてもよく、凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥させて粉末状としてもよい。この場合、デキストリン等の乾燥助剤やショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤を添加してもよい。
【0030】
本発明に用いる第1の有効成分としては、キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンを、その合計量の乾燥固形分換算で0.01質量%〜100質量%含有する素材を用いることができる。例えば、植物体からの一次的な抽出物やアシタバ葉粉末そのもの等である場合などには、その上限としては、典型的に20質量%以下でもよいが、より典型的には10質量%以下であってもよく、更により典型的には5質量%以下であってもよい。その下限としては、典型的に0.01質量%以上でもよいが、より典型的には0.1質量%以上であってもよく、更により典型的には0.2質量%以上であってもよい。また、例えば、植物体からの一次的な抽出物やアシタバ葉粉末そのものから、更に高度に精製等してなる素材などである場合には、その上限としては、典型的に100質量%以下でもよいが、より典型的には90質量%以下であってもよく、更により典型的には80質量%以下であってもよい。その下限としては、典型的に50質量%以上でもよいが、より典型的には60質量%以上であってもよく、更により典型的には70質量%以上であってもよい。
【0031】
一方、モクセイ科植物であるオリーブ(学名Olea europaea)も古くから食用されており、ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインが豊富に含まれている。特に、その葉にはオレウロペインが、その果実にはヒドロキシチロソールが、それぞれ含まれる。よって、本発明に用いる第2の有効成分としては、そのような植物由来の素材を用いることが好ましい。ただし、ヒドロキシチロソールやオレウロペインは、オリーブ以外にもエンジュ、ノボタノキ等に含まれているので、基原としてはこれらに由来のものを用いてもよく、特に制限はない。
【0032】
オリーブとしては、使用する品種や栽培地域に特に制限はない。使用するオリーブの部位についても、本発明の目的を損なわなければ特に制限されず、実、葉、花、茎、根等の部位が挙げられる。これらは選択される1種又は2種以上の部位でよく、適宜組み合わせて用いてもよい。これらのうち目的成分の含有量や収量の観点からは、実、葉が特に好ましい。使用する品種、収穫時期にもよるが、例えばオリーブオイルには、通常、ヒドロキシチロソールが5mg/kg〜150mg/kg程度含まれている。また、例えばオリーブ葉には、通常、オレウロペインが乾燥重量にして5質量%〜20質量%程度含まれている。
【0033】
本発明に用いる第2の有効成分としては、オリーブ等の基原植物の植物体をそのまま、例えば実及び/又は葉等の部位の乾燥末などの形態にして用いてもよく、あるいは圧搾してその搾汁液や、これを濃縮、乾燥、粉末化等してなる加工物などの形態にして用いてもよい。ただし、ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインの含有量を高める観点からは、より好ましくは、その抽出物を用いる。ここで、通常のオリーブオイルの製造工程においては、オリーブ実からオリーブオイルを搾油する際に大量の植物水、処理水及び絞りかすが発生するが、そのような副生産物からヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインを抽出することもできる。更に、ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペイン、特にヒドロキシチロソールはオリーブオイルにも含まれていることから、オリーブオイルから抽出し、場合によってはオリーブオイルそのものを利用してもよい。
【0034】
抽出は、従来公知の手法によって行うことができる。例えば、基原植物としてオリーブの1種又は2種以上の部位、あるいはその搾汁液や、これを濃縮、乾燥、粉末化等してなる加工物を、適宜適当な溶媒中において、低温ないし加温下で所定時間浸漬したり加熱還流したりすることによって行い得る。得られた一次抽出物は、必要に応じてろ過や濃縮、イオン交換樹脂や液体クロマトグラフィーなどを用いた精製・分離、凍結乾燥等を行ってもよい。これらの分画・精製等の手段によれば、適宜にヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインの存在を指標にして、その含有量を高めることができる。
【0035】
抽出に使用する溶媒としては、特に制限はなく、通常植物抽出に用いられる溶媒を1種又は2種以上選択して用いることができる。例えば、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭素類等が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、メタノール、プロパノール等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル等が挙げられる。ハロゲン化炭素類としては、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。
【0036】
得られた抽出物は、液状(ジュース)、ペースト状、ゲル状、油状、エマルジョン等いずれの形態に調製して用いてもよい。あるいは乾固させて固体状としてもよく、凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥させて粉末状としてもよい。この場合、デキストリン等の乾燥助剤やショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤を添加してもよい。
【0037】
本発明に用いる第2の有効成分としては、ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインを、その合計量の乾燥固形分換算で1質量%〜100質量%含有する素材を用いることができる。例えば、植物体からの一次的な抽出物やオリーブオイルそのもの等である場合などには、その上限としては、典型的に40質量%以下でもよいが、より典型的には30質量%以下であってもよく、更により典型的には20質量%以下であってもよい。その下限としては、典型的に0.1質量%以上でもよいが、より典型的には5質量%以上であってもよく、更により典型的には7質量%以上であってもよい。また、例えば、植物体からの一次的な抽出物やオリーブオイルそのものから、更に高度に精製等してなる素材である場合などには、その上限としては、典型的に100質量%以下でもよいが、より典型的には90質量%以下であってもよく、更により典型的には80質量%以下であってもよい。その下限としては、典型的に50質量%以上でもよいが、より典型的には60質量%以上であってもよく、更により典型的には70質量%以上であってもよい。
【0038】
本発明に係る機能性組成物は、有効成分として、上記(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、上記(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを同時に又は別々に含む。ここで「機能性組成物」とは、ヒトや動物の生体に作用させる目的のものであること意味している。また、「同時に又は別々に含む」とは、上記(1)及び上記(2)を有効成分として同一の形態中に含んでいてもよく、また、それを有効成分として別々の形態中に含むようにして、生体に作用させるときは同時に又は、時間をおかずに、あるいは任意に時間をおいて順次に、生体に作用させるようにする目的の場合をも包含する意味である。
【0039】
例えば、本発明において、上記(1)及び上記(2)を有効成分として同一の形態中に含む場合、上記(1)としてキサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンを、その合計量の乾燥固形分換算で0.01質量%〜99質量%含有する形態であってよい。その上限としては99質量%でもよいが、典型的には95質量%以下であってもよく、より典型的には93質量%以下であってもよく、更により典型的には80質量%以下であってもよく、とくに典型的には70質量%以下であってもよく、もっとも典型的には60質量%以下であってもよい。その下限としては0.01質量%でもよいが、典型的には0.1質量%以上であってもよく、より典型的には0.2質量%以上であってもよく、更により典型的には5質量%以上であってもよく、とくに典型的には10質量%以上であってもよく、もっとも典型的には20質量%以上であってもよい。また、上記(2)としてヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインを、その合計量の乾燥固形分換算で1質量%〜99.99質量%含有する形態であってよい。その上限としては99.99質量%でもよいが、典型的には90質量%以下であってもよく、より典型的には80質量%以下であってもよく、更により典型的には70質量%以下であってもよく、とくに典型的には60質量%以下であってもよく、もっとも典型的には50質量%以下であってもよい。その下限としては1質量%でもよいが、典型的には5質量%以上であってもよく、より典型的には7質量%以上であってもよく、とくに典型的には20質量%以上であってもよく、もっとも典型的には30質量%以上であってもよい。また、上記(1)と上記(2)との配合比として、キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンの合計量の乾燥固形分換算量とヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインの合計量の乾燥固形分換算量とは、100:1〜1:100の割合で含有することができ、より典型的には20:1〜1:20の割合で含有することができ、更により典型的には5:1〜1:5の割合で含有することができる。
【0040】
例えば、本発明において、上記(1)と上記(2)を有効成分として別々の形態中に含む場合、その第1の形態中には、上記(1)としてキサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンを、その合計量の乾燥固形分換算で0.01質量%〜100質量%含有する形態であってよい。その上限としては100質量%でもよいが、典型的には90質量%以下であってもよく、より典型的には80質量%以下であってもよく、更により典型的には70質量%以下であってもよく、とくに典型的には60質量%以下であってもよく、もっとも典型的には50質量%以下であってもよい。その下限としては0.01質量%でもよいが、典型的には0.1質量%以上であってもよく、より典型的には0.2質量%以上であってもよく、更により典型的には5質量%以上であってもよく、とくに典型的には10質量%以上であってもよく、もっとも典型的には20質量%以上であってもよい。また、その第2の形態中には、上記(2)としてヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインを、その合計量の乾燥固形分換算で1質量%〜100質量%含有する形態であってよい。その上限としては100質量%でもよいが、典型的には90質量%以下であってもよく、より典型的には80質量%以下であってもよい。更により典型的には70質量%以下であってもよく、とくに典型的には60質量%以下であってもよく、もっとも典型的には50質量%以下であってもよい。その下限としては1質量%でもよいが、典型的には5質量%以上であってもよく、より典型的には7質量%以上であってもよく、とくに典型的には20質量%以上であってもよく、もっとも典型的には30質量%以上であってもよい。
【0041】
本発明に係る機能性組成物は、上記(1)キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンと、上記(2)ヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインとを、ヒトや動物の生体に作用させるようにして用いる。その場合、上記(1)及び上記(2)を有効成分として同一の形態中に含むようにして、それをヒトや動物に投与するようにしてもよく、あるいは、また、上記(1)と上記(2)とを有効成分として別々の形態中に含むようにして、それを同時に又は、時間をおかずに、あるいは任意に時間をおいて順次に、ヒトや動物に投与するようにしてもよい。日常の服用のし易さの観点からは、上記(1)及び上記(2)を有効成分として同一の形態中に含むようにして、それをヒトや動物に投与するようにすることがより好ましい。
【0042】
投与形態に特に制限はなく、経口、静脈、経腸、経鼻、腹腔、経皮、経肺、口腔、皮膚外用等、いずれの投与形態であってもよい。この場合、その各種の投与形態に適するように、適宜適当な製剤的基材等ともに、周知の製剤手段により、上記有効成分を含有せしめるよう調製された剤形的形態をなしてもよい。例えば、粉末、顆粒、ソフトカプセル、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、ハードカプセル剤、ゼリー状剤、トローチ剤、口腔内崩壊剤、注射剤、吸引剤、坐剤、塗布剤等の剤形的形態中に、上記有効成分を含有せしめて用いることに、特に制限はない。また、上記(1)と上記(2)とを同一の投与形態で投与するようにしてもよく、別々の投与形態で投与するようにしてもよい。
【0043】
本発明に係る機能性組成物は、日常の服用のし易さの観点からは、経口的に摂取するように用いられることが好ましい。そのため必要に応じて、経口摂取用として許容される基材や担体を用いて、粉末、顆粒、ソフトカプセル、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、ハードカプセル剤、ゼリー状剤、トローチ剤、口腔内崩壊剤等の経口摂取用組成物の形態とすることができる。
【0044】
投与量については、所望する機能性の種類や、摂取する者の年齢、性別、健康状態等の条件に応じて適宜設定すればよく、一概ではないが、経口の場合には、例えば、成人大人1日当たり、上記(1)としてキサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンを、その合計量換算で1mg〜1000mgの範囲で投与することができ、より典型的には1mg〜100mgの範囲で投与することができ、更により典型的には1mg〜10mgの範囲で投与することができる。また、成人大人1日当たり、上記(2)としてヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインを、その合計量換算で1mg〜1000mgの範囲で投与することができ、より典型的には1mg〜100mgの範囲で投与することができ、更により典型的には1mg〜10mgの範囲で投与することができる。また、上記(1)と上記(2)との投与割合として、キサントアンゲロール及び/又は4−ヒドロキシデリシンの合計量の乾燥固形分換算量とヒドロキシチロソール及び/又はオレウロペインの合計量の乾燥固形分換算量とを、100:1〜1:100の割合で投与することができ、より典型的には20:1〜1:20の割合で投与することができ、更により典型的には5:1〜1:5の割合で投与することができる。
【0045】
後述の実施例の結果によれば、本発明に係る機能性組成物は、特には、酸化ストレスの予防又は改善用組成物、血管内皮の保護又は損傷治癒促進用組成物、活性酸素の消去又は無害化用組成物、内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化用組成物等として用いられることがより好ましい。
【0046】
ここで、「酸化ストレスの予防又は改善」とは、生体では、日常的に喫煙、過度な運動、精神的ストレス、睡眠不足、老化等の様々なストレスが体内で酸化ストレスに変換され、往々にしてこれが健康を害する原因となるので、それを予防又はその程度を軽減することを含む意味である。家畜においては、夏季の暑熱ストレスが体内で酸化ストレスに変換され雌雄の生殖障害を起こす原因となっており、その予防又はその程度を軽減することも含まれる。これは、人におけるストレス依存的な生殖障害に関しても同様である。
【0047】
また、「血管内皮の保護又は損傷治癒促進」とは、生体では、高血圧、高血糖、高コレステロール血漿等の様々な血管への負荷がかかり、往々にしてこれがアテローム性動脈硬化症、狭心症、心筋梗塞、脳卒中等の種々の疾患の原因となったり、健康を害する原因となるので、それを予防又はその程度を軽減することを含む意味である。
【0048】
また、「活性酸素の消去又は無害化」とは、生体では、日常的にスーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素等の様々な活性酸素種が生じ、往々にしてこれが健康を害する原因となるので、それを予防又はその程度を軽減することを含む意味である。具体的には、化合物の持つスカベンジング効果による活性酸素種の消去又は無毒化、あるいは抗酸化酵素の発現増加を介しての効率的な活性酸素種の消去又は無毒化、活性酸素種生成の抑制等を指す。
【0049】
また、「内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化」とは、生体では、特には、血管内皮等の組織では、日常的に内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS:endothelial nitric oxide synthase)により一酸化窒素が産生され、血管を酸化ストレス、過度な収縮、炎症性サイトカイン等による障害から保護して恒常性を保っているが、これが不活性であるかその産生量が低いと、往々にして健康を害する原因となるので、それを予防又はその程度を軽減することを含む意味である。
【0050】
本発明に係る機能性組成物は、特には、健常なヒト又は動物に適用されることが好ましい。
【0051】
上記組成物の使用形態としては、その作用効果を損なわない限り、特に制限はない。例えば、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、サプリメント、動物用医薬品、飼料などの各種の形態で、あるいはそれら製品と組み合わせて使用され得る。ここで、食品には栄養補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品や、又は、それら食品用の食品添加物なども含む意味であり、また、飼料には飼料添加物なども含まれる。
【実施例】
【0052】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0053】
(材料)
キサントアンゲロール(Xanthoangelol)(以下、「XA」と略記する。)と4−ヒドロキシデリシン(4-Hydroxyderricin)(以下、「4HD」と略記する。)は、株式会社日本生物.科学研究所製から入手した「あした葉ポリフェノールCHALSAP」からから80%Methanol(メタノール)を用いて抽出した後、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)を2回繰り返し、純度95%以上に精製したものを用いた。
【0054】
ここで、HPLCの条件は以下の通りである。
<HPLCによる精製条件>
カラム:Intersil OSD-4(10.0×250 mm)
移動相:80% Methanol
流速:4.0 ml/min
溶媒:Methanol
検出:280 nm
インジェクション量:0.75 ml
【0055】
ヒドロキシチロソール(Hydroxytyrosol)以下、「HT」と略記する。)は、Cayman社から入手した。
【0056】
血管内皮細胞(Vascular endothelial cells)は、土浦食肉協同組合から購入したブタ胸部大動脈から採取し、単離、培養した。具体的には、土浦食肉協同組合から購入したブタ胸部大動脈をPBS(−)で洗浄した後、抗生物質を含むPBS(−)に30分間以上浸して滅菌した。滅菌後の血管をハサミで切り開き、血管内膜表面の細胞をメスで採取し、DMEM培地に懸濁した。その後、1,500rpmで5分間遠心することで細胞を回収し、6cmディッシュに細胞を播種して、37℃、5%CO2環境下で培養した。培養には、10%FBS(Fetal Bovine Serum)、1%P/S(ペニシリン−ストレプトマイシン溶液)、及び1.0g/L濃度のグルコースを含むDMEM培地を用いた。実験には、継代数7代から10代までの細胞を用いた。
【0057】
還元型グルタチオン(GSH:glutathione)は、和光純薬工業株式会社から入手した。
【0058】
グルタチオンリダクターゼ(GR:Glutathione reductase)は、Sigma-Aldrich社から入手した。
【0059】
tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BuOOH)は、Sigma-Aldrich社から入手した。
【0060】
ウエスタンブロット解析用の内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性型であるリン酸化eNOS(p−eNOS)に対する特異抗体は、Sigma-Aldrich社から入手した。
【0061】
ウエスタンブロット解析用のα−チューブリンに対する特異抗体は、Calbiochem社から入手した。
【0062】
<試験例1>
被験物質が血管内皮細胞の酸化ストレス抵抗性に与える影響を、トリパンブルー染色による細胞生存率の測定により評価した。具体的には、血管内皮細胞を24ウェルプレートに5×104cells/wellで播種し、7時間接着させた後、1%FBS(Fetal Bovine Serum)を含むDMEM培地で17時間同調培養を行ない、その後、各被検物質を添加して24時間培養した。PBS(−)で2回洗浄して各被検物質を除去した後、1%FBS(Fetal Bovine Serum)及びH22を最終濃度が800μMで含むDMEM培地を添加し、24時間培養後、トリプシンEDTA溶液を用いて細胞をディッシュから剥がして回収し、0.5%トリパンブルー染色液と混合して、自動セルカウンター「Countess(登録商標)11FL Automated Cell Counter (Thermo Fisher Scientific)を用いて細胞生存率を測定した。
【0063】
血管内皮細胞に添加する被検物質としては、HTについては最終濃度が2μMとなるよう、XA及び4HDについては最終濃度が0.3μMとなるよう、それぞれ培地に添加した。また、対照として、H22を添加しない参照コントロールや、H22を添加するが被験物質を添加しない比較コントロールを実施した。試験は、各々の被験物質やコントロールについて4例ずつ行い、参照コントロールの細胞生存率を100%としたときの相対生存率を求めた。結果は、平均値±SE(標準誤差:Standard Error)で示した。各集団の比較は、Tukey-Kramer検定又はt検定を行い、p<0.05のときに有意であると判断した。その結果を図1に示す。
【0064】
図1(a)に示されるように、最終濃度800μMのH22で処理した比較コントロールの血管内皮細胞の細胞生存率はおよそ57%と低下し、H22で処理しない参照コントロールの血管内皮細胞に比べ、酸化ストレスによる細胞障害が認められた。一方、血管内皮細胞を、予め最終濃度2μMのHT、又は最終濃度0.3μMのXAで単独処理してからH22で処理したときの細胞生存率は、それぞれおよそ63%、59%であり、比較コントロールの結果とあまり差異がなかった(図1(a)中、「b」は比較コントロールとの有意差が認められないことを示す。)。これに対し、血管内皮細胞を、予め最終濃度2μMのHT及び最終濃度0.3μMのXAで併用処理してからH22で処理したときの細胞生存率はおよそ90%であり、比較コントロールからの顕著な回復がみられた(図1(a)中、「a」は比較コントロールとの有意差がp<0.05で認められたことを示す。)。
【0065】
図1(b)には、HT又はXAのそれぞれの単独処理による細胞生存率の増加分の和と、HT及びXAの併用処理による細胞生存率の増加分とを比較した結果を示す。この図1(b)からも、HTとXAとが相乗的に作用して、血管内皮細胞の酸化ストレス抵抗性を顕著に高めたことが分かる。
【0066】
また、図1(c)に示されるように、血管内皮細胞を、最終濃度800μMのH22で処理した比較コントロールの血管内皮細胞の細胞生存率はおよそ49%と低下し、予め最終濃度2μMのHTで単独処理してからH22で処理したときの細胞生存率はおよそ60%であったのに対して(図1(a)に示した通り)、予め最終濃度0.3μMの4HDで単独処理してからH22で処理したときの細胞生存率はおよそ65%であった。したがって、同様に比較コントロールの結果とあまり差異がなかった(図1(c)中、「b」は比較コントロールとの有意差が認められないことを示す。)。これに対し、血管内皮細胞を、予め最終濃度2μMのHT及び最終濃度0.3μMの4HDで併用処理してからH22で処理したときの細胞生存率はおよそ88%であり、比較コントロールからの顕著な回復がみられた(図1(c)中、「a」は比較コントロールとの有意差がp<0.05で認められたことを示す。)。
【0067】
図1(d)には、HT又は4HDのそれぞれの単独処理による細胞生存率の増加分の和と、HT及び4HDの併用処理による細胞生存率の増加分とを比較した結果を示す。この図1(d)からも、HTと4HDとが相乗的に作用して、血管内皮細胞の酸化ストレス抵抗性を顕著に高めたことが分かる。
【0068】
<試験例2>
被験物質が血管内皮細胞の創傷治癒促進作用に与える影響を、顕微鏡下の観察により評価した。具体的には、血管内皮細胞を3.5cmディッシュに3×105cells/dishで播種し、7時間接着させた後、1%FBS(Fetal Bovine Serum)を含むDMEM培地で17時間同調培養を行い、各被検物質を添加した。各被検物質の添加後、200μLチップの先端を用いてディッシュ面にほぼコンフルエントに接着した細胞に擬似的な傷を作り、顕微鏡下で観察、撮影した。24時間後に再び撮影を行い、最初に作成した傷の範囲内に存在する細胞数をカウントすることで傷の修復の程度を評価した。
【0069】
血管内皮細胞に添加する被検物質としては、HTについては最終濃度が20μMとなるよう、XA及び4HDについては最終濃度が0.3μMとなるよう、それぞれ培地に添加した。また、対照として、被験物質を添加しない比較コントロールを設けた。試験は、各々の被験物質やコントロールについて3例ずつ行った。各試験は、被験物質やコントロールの各々について撮影を1ディッシュにつき3視野分行い、その視野ごと、比較コントロールの場合に観察された傷の範囲内に存在する細胞数を100%としたときの相対的な創傷治癒率を求めた。結果は、平均値±SE(標準誤差:Standard Error)で示した。各集団の比較は、Dunnett検定を行い、p<0.05のときに有意であると判断した。その結果を図2に示す。
【0070】
図2(a)に示されるように、血管内皮細胞を、最終濃度20μMのHT又は最終濃度0.3μMのXAで単独処理したときの創傷治癒率は、それぞれおよそ110%、118%であり、比較コントロールの結果とあまり差異がなかった(図2(a)中、「a」は比較コントロールとの有意差が認められないことを示す。)。これに対し、血管内皮細胞を、最終濃度2μMのHT及び最終濃度0.3μMのXAで併用処理したときの創傷治癒率はおよそ167%であり、比較コントロールに比べて創傷治癒が顕著であった(図2(a)中、「b」は比較コントロールとの有意差がp<0.05で認められたことを示す。)。
【0071】
図2(b)には、HT又はXAのそれぞれの単独処理による創傷治癒率の増加分の和と、HT及びXAの併用処理による創傷治癒率の増加分とを比較した結果を示す。この図2(b)からも、HTとXAとが相乗的に作用して、血管内皮細胞の創傷治癒促進作用を顕著に高めたことが分かる。
【0072】
また、図2(c)に示されるように、血管内皮細胞を、最終濃度20μMのHTで単独処理したときの創傷治癒率はおよそ103%であったのに対して(図2(a)に示した通り)、予め最終濃度0.3μMの4HDで単独処理したときの創傷治癒率はおよそ145%であり、比較コントロールに比べて創傷治癒促進作用が高められた(図2(c)中、「a」で示すように比較コントロールとの有意差は認められなかった。)。一方、血管内皮細胞を、最終濃度20μMのHT及び最終濃度0.3μMの4HDで併用処理したときの創傷治癒率はおよそ242%であり、比較コントロールに比べて創傷治癒促進作用が更により一層顕著であった(図2(c)中、「b」は比較コントロールとの有意差がp<0.05で認められたことを示す。)。
【0073】
図2(d)には、HT又は4HDのそれぞれの単独処理による創傷治癒率の増加分の和と、HT及び4HDの併用処理による創傷治癒率の増加分とを比較した結果を示す。この図2(d)からも、HTと4HDとが相乗的に作用して、血管内皮細胞の創傷治癒促進作用を顕著に高めたことが分かる。
【0074】
<試験例3>
被験物質が血管内皮細胞のグルタチオンペルオキシダーゼ(glutathione peroxidase)(以下、「GPx」と略記する。)の活性に与える影響を、血管内皮細胞の総タンパク抽出液を用いた試験管内酵素活性測定により評価した。具体的には、血管内皮細胞を3.5cmディッシュに3×105cells/dishで播種し、7時間接着させた後、1%FBS(Fetal Bovine Serum)を含むDMEM培地で17時間同調培養を行い、その後、各被検物質を添加して24時間培養した。PBS(−)で2回洗浄して各被検物質を除去した後、直ちに−80℃で凍結・保存した。その後、各ディッシュに溶出バッファー(50mM HEPES、pH7.5、50mM NaC1、1mM EDTA、50% Glycero1、100mM NaF、10mM Sodium pyrophosphate、1% TritonX-100、1mM NaVO4、1mM PMSF、10pg/mL Antipain、10μg/mL Leupeptin、10pg/mL Aprotinin)を150μL/dishで加え、5分間静置した後、スクレーパーで細胞を剥離、回収した。氷上で15分間静置した後、4℃、14,000rpmで15分間遠心分離を行い、回収した上清を最終的なサンプルとした。
【0075】
血管内皮細胞に添加する被検物質としては、HTについては最終濃度が2μMとなるよう、XAについては最終濃度が0.3μMとなるよう、それぞれ培地に添加した。また、対照として、被験物質を添加しない比較コントロールを実施した。試験は、各々の被験物質やコントロールについて4例ずつ行い、比較コントロールのGPx活性を1倍としたときの相対的な活性増加倍率を求めた。結果は、平均値±SE(標準誤差:Standard Error)で示した。各集団の比較は、Games Howell又はt検定を行い、p<0.05のときに有意であると判断した。
【0076】
GPx活性の測定は、次のようにして行った。すなわち、測定を行うエッペンに1×TE(トリスバッファー、pH8.0)を50μL、2回蒸留水を290μL加え、更に0.1M還元型グルタチオン(GSH:glutathione)を10μL、10U/mLグルタチオンリダクターゼ(GR:Glutathione reductase)を50μL、2mMNADPHを50μL、それぞれ加えて37℃に2分間置き、次いで7mM tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BuOOH)を5μL、サンプルを50μL加えて340nmの吸光度で測定を行った。測定は30秒ごとに300秒間の設定で行い、吸光度の経時的変化を追った。また、測定ブランクには1×TE(トリスバッファー、pH8.0)、0.1M還元型グルタチオン(GSH:glutathione)、10U/mLグルタチオンリダクターゼ(GR:Glutathione reductase)、2回蒸留水をそれぞれ50μL、10μL、50μL、390μL合わせたものを用いた。測定後、各サンプルにおける吸光値の変化量をタンパク量で割った値を酵素活性とした。その結果を図3に示す。
【0077】
図3(a)に示されるように、血管内皮細胞を、最終濃度2μMのHT、又は最終濃度0.3μMのXAで単独処理したときのGPx活性増加倍率は、それぞれおよそ1.03倍、およそ1.10倍であり、比較コントロールの結果とあまり差異がなかった(図3(a)中、「a」は比較コントロールとの有意差が認められないことを示す。)。これに対し、血管内皮細胞を、最終濃度2μMのHT及び最終濃度0.3μMのXAで併用処理したときのGPx活性増加倍率はおよそ2.32倍であり、比較コントロールに比べてGPx活性の顕著な増加が認められた(図3(a)中、「b」は比較コントロールとの有意差がp<0.05で認められたことを示す。)。
【0078】
図3(b)には、HT又はXAのそれぞれの単独処理によるGPx活性増加倍率の増加分の和と、HT及びXAの併用処理によるGPx活性増加倍率の増加分とを比較した結果を示す。この図3(b)からも、HTとXAとが相乗的に作用して、血管内皮細胞のGPx活性を顕著に高めたことが分かる。
【0079】
<試験例4>
被験物質が血管内皮細胞の内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthase)(以下、「eNOS」と略記する。)の活性化に与える影響を、血管内皮細胞の総タンパク抽出液を用いたウエスタンブロット解析により評価した。具体的には、血管内皮細胞に添加するHTの最終濃度を20μMとし、被験物質を加えてからの培養時間を12時間とした以外は試験例3と同様にして、総タンパク抽出液を調製し、常法に従い、これをSDSゲル電気泳動に供し、eNOSの活性型であるリン酸化eNOS(以下、「p−eNOS」と略記する。)に対する特異抗体を用いたウエスタンブロット解析を行って、その発現量を測定した。なお、α−チューブリン(α−Tubulin)をウエスタンブロット解析における供試タンパク量の内部標準とし、得られたバンドの強度をイメージ解析ソフト(Image Studio Software)により測定して、相対的な発現量を求めた。試験は、各々の被験物質やコントロールについて3例ずつ行い、比較コントロールのp−eNOS量を1倍としたときの相対的な発現量増加倍率を求めた。結果は、平均値±SE(標準誤差:Standard Error)で示した。各集団の比較は、Dunnett検定を行い、p<0.05のときに有意であると判断した。その結果を図4に示す。
【0080】
図4(a)、(b)に示されるように、血管内皮細胞を、最終濃度20μMのHT、又は最終濃度0.3μMのXAで単独処理したときのp−eNOS産生量増加倍率は、それぞれおよそ1.22倍、1.60倍であり、比較コントロールから若干の増加しか認められなかった。これに対し、血管内皮細胞を、最終濃度20μMのHT及び最終濃度0.3μMのXAで併用処理したときのp−eNOS産生量増加倍率はおよそ2.27倍であり、比較コントロールに比べてp−eNOS産生量の顕著な増加が認められた。
図1
図2
図3
図4