特開2019-156777(P2019-156777A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-156777(P2019-156777A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】セラミド産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20190823BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20190823BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20190823BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61Q19/08
   A61K36/28
   A61K36/53
   A61P17/16ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-46635(P2018-46635)
(22)【出願日】2018年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】太田 涼介
(72)【発明者】
【氏名】杉田 多喜男
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC01
4C083CC02
4C083EE06
4C083EE12
4C083FF01
4C088AB26
4C088AB38
4C088AC03
4C088AC11
4C088BA10
4C088CA08
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】
生体自体が有するセラミド産生機能を健常に戻すことにより、加齢、紫外線曝露、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、乾癬などによって減少した角層中のセラミド代謝を回復させて、セラミド量を増加させ、その結果、優れた、保湿機能およびバリア機能を有する皮膚を取り戻すことができるセラミド産生促進剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
ムラサキバレンギク、ラベンダーから選択される1種又は2種を有効成分とするセラミド産生促進剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムラサキバレンギク、ラベンダーから選択される1種又は2種を有効成分とする、セラミド産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムラサキバレンギク、ラベンダーから選択される1種又は2種を有効成分とする、セラミド産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のセラミドは、表皮角化細胞において、アミノ酸の一種L−セリンとパルミチン酸を出発原料としてスフィンゴシン骨格が作られて、その後種々の酵素反応を経て生合成される(非特許文献1)。表皮角化細胞で合成されたセラミドは一旦グルコシルセラミドまたはスフィンゴミエリンの形で蓄えられたあと、細胞外へ排出されて、種々の酵素の作用を受けて、再びセラミドとなり、細胞間脂質として機能する(特許文献1)。
【0003】
ここでセラミドの代謝は、加齢、紫外線曝露、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、乾癬などによって、健全な状態が損われることがある。その結果、角層中のセラミド量が減少して、例えば、皮膚の保湿機能およびバリア機能の低下を引き起こすことが数多く報告されている。そこで最近では、皮膚の角質層において、表皮セラミドの生成の促進を目的とした物質を生産する研究が活発に進められている。かかるセラミド産生促進剤としては、例えば、カンナ(特許文献2)、ユーカリ(特許文献3)、ゲンクワニン(特許文献4)、センキュウ抽出物(特許文献5)、スフィンゴイド類(特許文献6)、ダイオウ(特許文献7)が知られている。
【0004】
また近年アトピー性皮膚炎や乾皮症などの皮膚疾患において、アシルセラミドが減少していることが報告されている(非特許文献2)。さらに、表皮の水分保持能が激減すること、アシルセラミドのみを産生できないように改変したマウスでは、出生後に著しい皮膚異常を発生し、皮膚からの水分喪失により死亡してしまうことが報告されている(非特許文献3)。
このように、セラミド、特にアシルセラミドの産生を促進することにより表皮バリア機能の改善、正常化が促進されることが期待される。しかし、皮膚外用剤および飲食物に使用し得るセラミド産生特にアシルセラミドを促進する物質に関しては、いまだ充分なバリエーションの存在が確認されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本化粧品技術者会編「化粧品事典」丸善株式会社、平成15年12月15日、p.563-564
【非特許文献2】J. Invest. Dermatol., 130, 2511-2514 (2010).
【非特許文献3】Nature Communication (2017) DOI: 10.1038/ncomms14609
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−24993号公報
【特許文献2】特開2017−88539号公報
【特許文献3】特開2000−169359号公報
【特許文献4】特開2004−161648号公報
【特許文献5】特開2010−150237号公報
【特許文献6】特開2012−92032号公報
【特許文献7】特開2014−74074
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生体自体が有するセラミド産生機能、特にアシルセラミド産生機能を健常に戻すことにより、加齢、紫外線曝露、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、乾癬などによって減少した角層中のセラミド代謝を回復させて、セラミド量を増加させ、その結果、優れた、保湿機能およびバリア機能を有する皮膚を取り戻すことができるセラミド産生促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ムラサキバレンギク、ラベンダーから選択される1種又は2種を有効成分とする、セラミド産生促進剤を提供する
【発明の効果】
【0009】
本発明のムラサキバレンギク、ラベンダーは、高いセラミド産生促進効果、特にアシルセラミド産生促進効果を発揮する。
【0010】
ムラサキバレンギクはセラミドなどの細胞間脂質の合成・分泌に関与するABCA12遺伝子発現促進効果、SGMS1遺伝子発現促進効果、アシルセラミドの合成に関与するELOVL4遺伝子発現促進効果、CYP4F22遺伝子発現促進効果、CERS3遺伝子発現促進効果、PNPLA1遺伝子発現促進効果、ABHD5遺伝子発現促進効果を発揮する。
【0011】
ラベンダーは、セラミドの合成・分泌に関与するABCA12遺伝子発現促進効果、GBA遺伝子発現促進効果、アシルセラミドの合成に関与するPNPLA1遺伝子発現効果、ABHD5遺伝子発現促進効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
本発明で使用するムラサキバレンギク(Echinacea purpurea)は、キク科ムラサキバレンギク属の多年草でありエキナセア、エキナケア又はエチナシとも呼ばれる。ムラサキバレンギクは、葉、茎、花、根等の各部位および全草を用いることができるが、根を用いることが好ましい。
【0014】
ムラサキバレンギクは、使用時に新鮮な状態若しくは乾燥させたものを、飲料等に添加して用いることができる。また、ムラサキバレンギクを溶媒を用いて抽出したムラサキバレンギク抽出物として用いることもできる。
【0015】
ムラサキバレンギク抽出物は生のまま抽出に供してもよいが、抽出効率を考えると、細切,乾燥,粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽出は、抽出溶媒に浸漬して行う。抽出効率を上げるため撹拌を行ったり、抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、4時間〜14日間程度とするのが適切である。
【0016】
抽出溶媒としては、水の他、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等の低級アルコール、1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等のケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水,リン酸緩衝液,リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。
【0017】
上記植物の上記溶媒による抽出物は、そのままでも本発明に係る組成物に含有させることができるが、濃縮,乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはそれらの皮膚生理機能向上作用を損なわない範囲で脱色,脱臭,脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また保存のため、精製処理の後凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0018】
なお、本発明においては、ムラサキバレンギクの抽出溶媒として、水、エタノール、1,3-ブチレングリコールから選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、さらには、エタノール水溶液を用いることが好ましい。
【0019】
本発明で使用するラベンダーは、(Lavandula angustifolia (L.) Mill. ; Lavandula spica L.,p.p. ; Lavandula officinalis Chaix ; Lavandula spica var. angustifolia L. f.)は、シソ科ラベンダー属に属する植物である。ラベンダーは、葉、茎、花、花穂、根等の各部位および全草等を用いることができるが、花又は花穂を用いることが好ましい。
【0020】
ラベンダーは、使用時に新鮮な状態若しくは乾燥させたものを、飲料等に添加して用いることができる。また、ラベンダーを溶媒を用いて抽出したラベンダー抽出物として用いることもできる。ラベンダー抽出物を得る方法としては、上記ムラサキバレンギク抽出物と同様である。なお、ラベンダーの抽出溶媒としては、水、エタノール、1,3-ブチレングリコールから選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0021】
ムラサキバレンギク、ラベンダーから選択される1種又は2種は、優れたセラミド産生促進作用、特にアシルセラミド産生促進作用を有し、セラミド産生促進剤、アシルセラミド産生促進剤としてとして利用することができる。
【0022】
ムラサキバレンギクは、セラミド合成・分泌、アシルセラミド合成に関与する、ABCA12遺伝子発現促進作用、SGMS1遺伝子発現促進作用、ELOVL4遺伝子発現促進作用、CYP4F22遺伝子発現促進作用、CERS3遺伝子発現促進作用、PNPLA1遺伝子発現促進作用、及びABHD5遺伝子発現促進作用を発揮し、ABCA12遺伝子発現促進剤、SGMS1遺伝子発現促進剤、ELOVL4遺伝子発現促進剤、CYP4F22遺伝子発現促進剤、CERS3遺伝子発現促進剤、PNPLA1遺伝子発現促進剤、及びABHD5遺伝子発現促進剤として利用することができる。
【0023】
ラベンダーは、セラミド合成・分泌、アシルセラミド合成に関与する、ABCA12遺伝子発現促進作用、GBA遺伝子発現促進作用、PNPLA1遺伝子発現促進作用果、及びABHD5遺伝子発現促進作用を発揮し、ABCA12遺伝子発現促進剤、GBA遺伝子発現促進剤、PNPLA1遺伝子発現促進剤、及びABHD5遺伝子発現促進剤として利用することができる。
【0024】
ムラサキバレンギク、ラベンダーから選択される1種又は2種を含有することを特徴とするセラミド産生促進剤は、単独でも使用することができるが、セラミド産生促進剤として医薬品、医薬部外品、飲食品、化粧品などの種々の組成物に配合することにより、セラミド産生促進作用、特にアシルセラミド産生促進作用を有する組成物を得ることができる。
【0025】
ムラサキバレンギク、ラベンダーから選択される1種又は2種を含有することを特徴とするセラミド産生促進剤は、その形態およびその他成分の配合の有無等については、なんら制限されない。形態については、液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等の任意の形態を、その用途等に応じて選択でき、その形態とするために必要なビヒクル(賦形剤)、溶剤、その他の一般的な添加剤(酸化防止剤、着色剤、分散剤等)を任意に含むことができる。
【0026】
ムラサキバレンギク、ラベンダーから選択される1種又は2種を含有することを特徴とするセラミド産生促進剤を配合する組成物は、任意の剤型をとることができる。組成物が皮膚化粧料、毛髪用化粧料、洗浄料等の場合には、ローションなどの可溶化系やカラミンローション等の分散系、クリームや乳液などの乳化系として提供することができる。さらに、噴射剤と共に充填するエアゾール形態、軟膏剤、パップ剤などの種々の剤型で提供することができる。
【0027】
具体的には、乳液、クリーム、ローション、化粧水、パック、美容液、洗浄料、メイクアップ化粧料等の各種化粧料;液剤、軟膏、粉末、顆粒、エアゾール剤、貼付剤、パップ剤等の様々な形態の化粧料、医薬部外品や外用医薬品などが例示できる。
【0028】
また、経口用医薬品等の場合には、ドリンク剤・点滴剤などの液剤、ガム・飴のような固形剤、カプセル、粉末、顆粒、錠剤などの一般的な剤型とすることができる。
【0029】
ムラサキバレンギク、ラベンダーから選択される1種又は2種を配合する組成物には、これらの他に、その用途と必要に応じて、医薬品、医薬部外品、皮膚化粧料、毛髪用化粧料、洗浄料、および経口用医薬品等に通常配合される任意の成分、例えば水、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、ゲル化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、増粘剤、pH調整剤、キレート剤、薬剤(薬効成分)、香料、樹脂、防菌防かび剤、抗酸化剤、アルコール類等を適宜配合することができる。さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、他の保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗酸化剤および痩身剤あるいは各種植物/菌類またはその抽出物との併用も可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0031】
[ムラサキバレンギクエキス末]
乾燥させたムラサキバレンギクの根30g細切し、600gの50容量%エタノール水溶液を用いて、常温で48時間浸漬した。ろ過後溶媒を留去してムラサキバレンギクエキス末約5gを得た。
【0032】
[ムラサキバレンギクエキス」
ムラサキバレンギクエキス末0.5gを50質量%1,3―ブチレングリコール水溶液99.5gに溶解し、ムラサキバレンギクエキスとした。
【0033】
[ラベンダーエキス]
ラベンダーの花を乾燥後細切し、50質量%1,3−ブチレングリコール溶液に浸漬後
ろ過したものをラベンダーエキスとした。
【0034】
[ABCA12遺伝子発現促進作用、SGMS1遺伝子発現促進作用、ELOVL4遺伝子発現促進作用、CYP4F22遺伝子発現促進作用、CERS3発現促進作用、PNPLA1遺伝子発現促進作用、ABHD5遺伝子発現促進作用]
ヒト表皮角化細胞を3*105個/ウェルとなるように6ウェルプレートに播種し、Humedia-KG2培地(クラボウ社製)にて一晩培養した。ムラサキバレンギクエキス末を0.5mg/mL、ラベンダーエキスを0.5体積%となるようにそれぞれ添加溶解した培地に交換し、37℃、5% CO2インキュベーター内で24時間培養した。採取した細胞から、市販のRNA抽出キット(Quick Gene RNA Cultured Cell HC Kit S)を使用してRNAを抽出し、cDNA合成後に下記のプライマーを使用してサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRにより遺伝子発現を確認した。なお、内部標準としてGAPDHを使用した。ムラサキバレンギクエキス末による各作用は表2に、ラベンダーエキスによる各作用は表3にそれぞれ示した。なおmRNA発現量は、各抽出物無添加の場合の発現量を1とした相対値で示した。さらに無添加の場合との有意差をt-検定で算出し、5%有意を*で、1%有意を**でそれぞれ示した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
表2に示した通り、ムラサキバレンギクエキス末は、表皮顆粒細胞内の層板顆粒の膜上に存在し、細胞間脂質の分泌において重要な役割を果たすABCA12遺伝子、セラミドからスフィンゴミエリンへの合成をつかさどるSGMS1遺伝子、表皮において炭素数28以上の脂肪酸の生合成に必須であるELOVL4遺伝子、超長鎖脂肪酸を基質としてω位を水酸化するCYP4F22遺伝子、超長鎖アシルCoAに特異的に反応し、セラミドを合成するCERS3遺伝子、セラミドとトリグリセリド由来のリノール酸がエステル結合を形成しアシルセラミドを生合成するPNPLA1遺伝子、トリグリセリドからのリノール酸の供給に関与するABHD5遺伝子の発現をそれぞれ促進し、セラミド合成促進作用、特にアシルセラミド生合成促進作用に優れていた。
【0039】
表3に示した通り、ラベンダーエキスは、表皮顆粒細胞内の層板顆粒の膜上に存在し、細胞間脂質の分泌において重要な役割を果たすABCA12遺伝子、グルコシルセラミダーゼに関与するGBA遺伝子、セラミドとトリグリセリド由来のリノール酸がエステル結合を形成しアシルセラミドを生合成するするPNPLA1遺伝子、トリグリセリドからのリノール酸の供給に関与するABHD5遺伝子の発現をそれぞれ促進し、セラミド合成促進作用、特にアシルセラミド生合成促進作用に優れていた。
【0040】
[ヒト3次元培養皮膚モデルにおけるセラミド産生促進作用]
ヒト3次元培養皮膚モデルLabCyte EPIMODEL24(J−TEC製)を、アッセイ培地(J−TEC製)中で、37℃、5%COインキュベーター内で24時間培養した。
各ウェルより培地を除去した後、ムラサキバレンギクエキス末0.5mg/mLを含むアッセイ培地を0.5mL培養カップの外側に添加し、COインキュベーター内で24時間培養した。
各ウェルから培地を除去した後、サンプルを含まないアッセイ培地J−TEC製)で48時間培養した。
皮膚モデルをPBSで3回洗浄し、Bligh−Dyer法による脂質の抽出を行った。なお、得られる固形物はクロロホルム:メタノール(体積比2:1)溶液50μLで溶解した。
脂質サンプルの定量はHPTLCを用いて行った。以下にHPTLCによる試験方法を示す。
TLC展開槽の壁面にろ紙を張り、HPTLCプレートのスポット位置に触れない程度の展開液(クロロホルム:メタノール:酢酸(体積比190:9:1)溶液)を加えた。
HPTLCプレートのガラス下から1.5cmの部分にマイクロシリンジを用いて各脂質サンプルを5μLずつスポットした。
また、標準品としてCeramide I(Matreya製)、Ceramide II(Avanti Polar Lipids製)、Ceramide III(SIGMA製)を15.625、31.25、62.5、125、250μg/mLの濃度となるようクロロホルム:メタノール(体積比2:1)溶液に溶解し、これらを5μLずつスポットした。
HPTLCCプレートを静かに展開槽に入れ、上端まで(スポットから8cm)展開した。展開溶媒を乾燥後、10質量%CuSo4−8体積%H3PO4溶液をHPTLCプレートに満遍なく噴霧し、150℃で10分間加熱した。
HPTLCプレートを常温まで冷却した後、TLC撮影用のキャビネットに設置したデジタルカメラ(Canon製EOS5D Mark II)でプレートの写真を撮影した。
得られた画像データからJustTLC(SWEDAY製)を用いて、各バンドのシグナル強度に関する検量線を作成し、各バンドにおけるセラミド量を算出した。
セラミド量は、ムラサキバレンギクエキス無添加の場合のセラミド量を1とした相対値で表4に示した。
【0041】
【表4】
【0042】
表4に示した通り、ムラサキバレンギクエキス末は、同エキス未添加の場合と比較して、高いセラミド産生促進作用を示した。