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特開2019-156898微細樹脂処理有機顔料の製造方法、微細樹脂処理有機顔料、着色分散液、着色樹脂組成物、成品及び着色樹脂成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-156898(P2019-156898A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】微細樹脂処理有機顔料の製造方法、微細樹脂処理有機顔料、着色分散液、着色樹脂組成物、成品及び着色樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/08 20060101AFI20190823BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20190823BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20190823BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20190823BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20190823BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190823BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20190823BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20190823BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20190823BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190823BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20190823BHJP
   C09B 67/04 20060101ALN20190823BHJP
【FI】
   C09B67/08 Z
   C09B67/08 C
   C09B67/46 B
   C09B67/20 F
   C09D17/00
   G02B5/20 101
   C08L101/00
   C08K3/00
   C09D11/322
   C09D11/037
   C09D201/00
   C09D7/41
   C09B67/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-41706(P2018-41706)
(22)【出願日】2018年3月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】宮田 未来
(72)【発明者】
【氏名】狩野 克彦
【テーマコード(参考)】
2H148
4J002
4J037
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2H148BE06
2H148BE13
2H148BE15
2H148BE26
4J002BC07W
4J002BG01W
4J002BH01W
4J002BH02W
4J002DD057
4J002DD067
4J002DE059
4J002DE099
4J002DE187
4J002DG047
4J002EA066
4J002EC058
4J002ED028
4J002ED038
4J002ED068
4J002EE056
4J002EN009
4J002EN107
4J002EQ016
4J002EU026
4J002EU028
4J002EU036
4J002EU056
4J002EU106
4J002EU226
4J002EU236
4J002FD096
4J002FD207
4J002FD208
4J002FD209
4J002GH01
4J002GP03
4J002GT00
4J002HA03
4J037CC16
4J037EE02
4J037EE08
4J037EE28
4J037EE29
4J037EE33
4J037FF15
4J038CG012
4J038HA116
4J038KA08
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA25
4J039BA10
4J039BA15
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】従来技術よりも工程数を少なくでき、濾過や水洗にかかっていた多大な時間や水等の消費量を低減できる、製造効率に優れ、製造のみならず廃水処理等の二次処理においてコスト的に有利で、比較的容易に、大量に樹脂処理顔料を得ることができる微細樹脂処理有機顔料の製造方法の提供。
【解決手段】顔料分散樹脂で有機顔料を処理してなる微細樹脂処理有機顔料の製造方法で、有機顔料と、水溶性無機塩からなる磨砕助剤と、水溶性有機溶剤とを含む混合物をソルベントソルトミリング処理して混練物を得る混練工程と、水洗工程を設けることなく、混練工程で得られた混練物を、あらかじめ準備した顔料分散樹脂とアルカリ化合物とを含むアルカリ性水溶液に添加混合して混合液とする混合工程と、該混合工程で得られた混合液に、酸を添加することで、前記顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を析出させる、酸析工程とを有する微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料分散樹脂で有機顔料を処理してなる微細樹脂処理有機顔料の製造方法であって、
(1)有機顔料と、水溶性無機塩からなる磨砕助剤と、水溶性有機溶剤とを含む混合物をソルベントソルトミリング処理して混練物を得る、混練工程と、
(2)水洗工程を設けることなく、前記混練工程で得られた混練物を、あらかじめ準備した顔料分散樹脂とアルカリ化合物とを含むアルカリ性水溶液に添加混合して混合液とする、混合工程と、
(3)前記混合工程で得られた混合液に、酸を添加することで、前記顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を析出させる、酸析工程と、
を有することを特徴とする微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【請求項2】
前記(3)酸析工程を、40℃〜100℃の温度条件下で行う請求項1に記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【請求項3】
前記(3)酸析工程の後、さらに、(4)前記磨砕助剤、前記水溶性有機溶剤及び前記酸析工程により生じた塩類を濾過洗浄する、洗浄工程を有する請求項1又は2に記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【請求項4】
前記(3)酸析工程で使用する酸が有機酸であり、該酸を前記混合液のpHが3.0〜6.0になるように添加する請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【請求項5】
前記(2)混合工程で使用するアルカリ性水溶液は、前記顔料分散樹脂が前記アルカリ化合物によって溶解したpHが8.0〜12.0の水溶液であり、該アルカリ化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【請求項6】
前記顔料分散樹脂が、少なくとも、(メタ)アクリル酸及び/又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる高分子化合物であり、その使用量が、前記有機顔料100質量部に対して1〜100質量部である請求項1〜5いずれか1項に記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【請求項7】
前記水溶性無機塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、その使用量が、前記有機顔料100質量部に対して100〜2000質量部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【請求項8】
前記水溶性有機溶剤が、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン及びホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、その使用量が、前記有機顔料100質量部に対して100〜1000質量部である請求項1〜7のいずれか1項に記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする微細樹脂処理有機顔料。
【請求項10】
液状の分散媒体中に、請求項9に記載の微細樹脂処理有機顔料を含んでなることを特徴とする着色分散液。
【請求項11】
樹脂中に、請求項9に記載の微細樹脂処理有機顔料が分散されてなることを特徴とする着色樹脂組成物。
【請求項12】
印刷インキ、インクジェット記録用インク、塗料及びカラーフィルター画素形成用インクからなる群から選択されるいずれかの成品であって、請求項10に記載の着色分散液を含んでなることを特徴とする成品。
【請求項13】
請求項11に記載の着色樹脂組成物を含むことを特徴とする着色樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細樹脂処理有機顔料の製造方法、及びその製造方法により得られる微細樹脂処理有機顔料、着色分散液、着色樹脂組成物、成品及び着色樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、その高機能化により、個人用、事務用、業務用、文書の記録用、カラー写真用と、その用途が多岐にわたってきている。インクジェット用の顔料インクでは、着色剤である顔料の、鮮明性、色の冴え、色濃度などの向上による高画質化を図るため、インク中の顔料粒子の微細化が進んでいる。
【0003】
顔料を微細化する方法としては、湿式磨砕法や乾式磨砕法などが挙げられる。インクジェットインクやカラーフィルターに用いられる顔料の微細化の方法としては、有機顔料と、水溶性無機塩類からなる磨砕助剤と、水溶性有機溶剤とを混合して湿式磨砕する、ソルベントソルトミリング法が主流である。湿式磨砕する方法では、主に、強力なせん断応力を発生させるニーダーや連続式の混練機などが使用されている。
【0004】
上記したソルベントソルトミリング法によって微細化した顔料を使用する際には、無機塩類などの磨砕助剤や水溶性有機溶剤を除去して使用することが必要になる。その際、混練物を水と混合し、撹拌させ無機塩類と水溶性有機溶剤を水に溶解させた後、濾過によって、顔料分と水溶分とを分離させることが一般的に行われている。濾過装置としては、工業的にはフィルタープレスが広く使用されており、顔料分を分離すると共に、引き続き水道水や純水等を通水させて洗浄することもできる。工業的に顔料を微細化する場合、上記のようにして、微細化顔料の含水プレスケーキ顔料を得ている。
【0005】
しかし、先に述べたように、ソルベントソルトミリング法によって微細化顔料を得る場合には、混練物から、磨砕助剤と水溶性有機溶剤とを、濾過、さらには水洗して除去するが、顔料が微細化されていることから、濾過や洗浄する速度が遅く、多大なる時間と、洗浄用の大量の水が必要になる。このため、製造効率に劣るという問題に加えて、使用後の有機溶剤等を含む洗浄水についての廃水処理の問題が生じる。
【0006】
一方、有機顔料を水に代表される水系媒体に分散させる際に、分散を容易にし、分散後の媒体中での安定性を向上させるために、樹脂により顔料の表面処理をすることがよく行われている。樹脂による表面処理の手法としては、下記に挙げるように、塩や酸の効果により、ポリマーを顔料表面に析出させる表面堆積法が知られている。この場合、前記のようにして得た微細化顔料の含水プレスケーキ顔料を用いて、或いは、含水プレスケーキ顔料を乾燥粉砕した粉末状の顔料を用いて、樹脂によって表面処理を行なって樹脂処理顔料としている。微細化顔料は、含水プレスケーキのままで使用してもよいし、さらに乾燥粉砕してパウダー状にして使用してもよい。好ましくは、含水プレスケーキを使用した方が、乾燥時の凝集体形成がないため表面処理しやすい。
【0007】
特許文献1には、アクリル樹脂のアルカリ水溶液と顔料とを混合撹拌して分散機にて微分散した後、混合物のpH調整又は貧溶剤の添加により、アクリル樹脂を析出させ、顔料表面を樹脂で被覆処理する製造方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、混練時に、有機顔料と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤と樹脂とを機械的に混練して混練組成物を得た後、水にて、水溶性無機塩と水溶性有機溶剤とを除去する微細有機顔料の製造方法で、該樹脂に、アミノ基及び4級アンモニウム塩基から選択される基を有する樹脂を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−111019号公報
【特許文献2】特許第5597926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、樹脂で有機顔料を表面処理して樹脂処理顔料とする際に、含水プレスケーキ顔料を用いる方法では、まず、微細化した顔料と磨砕助剤と有機溶剤とを含む混合物から、磨砕助剤と有機溶剤を除去して微細化顔料を得、ついで、樹脂で処理するという2つの工程が必要になる。さらに、前記したように、ソルベントソルトミリング法によって得られる微細化顔料から、磨砕助剤と水溶性有機溶剤を除去する工程は、顔料が微細化されていることから、濾過や洗浄が遅く、多くの洗浄水を必要とするため、濾過や水洗に時間がかかり、且つ、工程が多いので、顔料の再凝集の可能性も生じやすく、製造効率に劣り、エネルギー消費の点でも課題があった。また、場合によっては、樹脂処理時に分散機で分散する必要があり、さらに工程と時間が必要であり、この点でも製造効率に劣るという課題があった。また、洗浄後の大量の洗浄水によって生じる廃水処理の問題があり、環境保全の点でも課題があった。
【0011】
また、前記した特許文献1に記載の方法では、アクリル樹脂のアルカリ水溶液と顔料の混合物を分散機にて微分散する必要があり、顔料の被覆処理に多大な工程と時間を必要とするため、製造効率の点、多大なエネルギー消費の点で課題がある。特許文献1では、顔料を混合撹拌し、微分散せず樹脂を析出させる製造方法も開示しているが、本発明者らの検討によれば、この方法では顔料の被覆処理が均一に行われず品質面で劣るという課題がある。
【0012】
一方、特許文献2に記載の方法では、ソルベントソルトミリング法において樹脂処理顔料化を同時に行うことができるため、顔料の被覆処理に多大な工程と時間を必要としない。しかしながら、この方法では、樹脂に、水溶性有機溶剤に対する適切な溶解度を持たせることが求められるために、使用できる樹脂には、分子量や構造(官能基)などに制約があり、汎用できる技術ではなかった。
【0013】
本発明は、前記の従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、従来技術よりも工程数を少なくでき、濾過や水洗にかかっていた多大な時間や水等の消費量を低減できる、すなわち、環境にやさしく、省エネルギーの実現を可能にできる、製造効率に優れ、製造のみならず廃水処理等の二次処理においてコスト的に有利で、比較的容易に、大量に樹脂処理顔料を得ることができる微細樹脂処理有機顔料の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、上記した工程数を少なくし、製造効率を高めた製造方法で得られた樹脂処理有機顔料でありながら、微細で分散性に優れ、筆記用インキ、印刷インキ、塗料或いは繊維やプラスチック成形体等の用途には勿論、より微細な顔料が求められているインクジェット記録用インクやカラーフィルター画素形成用インクの着色剤としても適用可能な微細樹脂処理有機顔料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題は、下記の本発明によって達成される。
[1]顔料分散樹脂で有機顔料を処理してなる微細樹脂処理有機顔料の製造方法であって、
(1)有機顔料と、水溶性無機塩からなる磨砕助剤と、水溶性有機溶剤とを含む混合物をソルベントソルトミリング処理して混練物を得る、混練工程と、
(2)水洗工程を設けることなく、前記混練工程で得られた混練物を、あらかじめ準備した顔料分散樹脂とアルカリ化合物とを含むアルカリ性水溶液に添加混合して混合液とする、混合工程と、
(3)前記混合工程で得られた混合液に、酸を添加することで、前記顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を析出させる、酸析工程と、を有することを特徴とする微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【0015】
上記した本発明の微細樹脂処理有機顔料の製造方法の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
[2]前記(3)酸析工程を、40℃〜100℃の温度条件下で行う前記[1]に記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
[3]前記(3)酸析工程の後、さらに、(4)前記磨砕助剤、前記水溶性有機溶剤及び前記酸析工程により生じた塩類を濾過洗浄する、洗浄工程を有する前記[1]又は[2]に記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
[4]前記(3)酸析工程で使用する酸が有機酸であり、該酸を前記混合液のpHが3.0〜6.0になるように添加する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
[5]前記(2)混合工程で使用するアルカリ性水溶液は、前記顔料分散樹脂が前記アルカリ化合物によって溶解したpHが8.0〜12.0の水溶液であり、該アルカリ化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
[6]前記顔料分散樹脂が、少なくとも、(メタ)アクリル酸及び/又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる高分子化合物であり、その使用量が、前記有機顔料100質量部に対して1〜100質量部である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
[7]前記水溶性無機塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、その使用量が、前記有機顔料100質量部に対して100〜2000質量部である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
[8]前記水溶性有機溶剤が、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン及びホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、その使用量が、前記有機顔料100質量部に対して100〜1000質量部である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の微細樹脂処理有機顔料の製造方法。
【0016】
本発明は、別の実施形態として、
[9]前記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする微細樹脂処理有機顔料を提供する。
【0017】
本発明は、別の実施形態として、
[10]液状の分散媒体中に、前記[9]に記載の微細樹脂処理有機顔料を含んでなることを特徴とする着色分散液を提供する。
【0018】
本発明は、別の実施形態として、
[11]樹脂中に、前記[9]に記載の微細樹脂処理有機顔料が分散されてなることを特徴とする着色樹脂組成物を提供する。
【0019】
本発明は、別の実施形態として、
[12]印刷インキ、インクジェット記録用インク、塗料及びカラーフィルター画素形成用インクからなる群から選択されるいずれかの成品であって、前記[10]に記載の着色分散液を含んでなることを特徴とする成品を提供する。
【0020】
本発明は、別の実施形態として、
[13]前記[11]に記載の着色樹脂組成物を含むことを特徴とする着色樹脂成形体を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の微細樹脂処理有機顔料の製造方法によれば、従来の製造方法では、ソルベントソルトミリング処理後、顔料を樹脂で処理する前に行っていた、ソルベントソルトミリング処理の際に使用した磨砕助剤や水溶性有機溶剤を除去するための洗浄と、高分子分散剤である顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を析出させる酸析工程で生じた塩類の濾過洗浄とをまとめて行うことが可能になるので、ソルベントソルトミリング処理後に洗浄を行っていた従来の製造方法で大きな問題であった、濾過や洗浄する速度が遅く、多大な時間がかかり、洗浄に大量の水が必要になるといった課題が改善される。すなわち、本発明によれば、特別な工程を追加することなく、上記した濾過や洗浄にかかっていた多大な時間及び水の量を低減することができ、しかも分散性に優れる微細な樹脂処理有機顔料の製造が可能になる。製造された樹脂処理顔料は、ソルベントソルトミリング処理して得た微細有機顔料の再凝集を防ぎ、疎水性の樹脂で顔料の表面が被覆処理されたことで、疎水性となることから、処理後の顔料粒子同士が疎水性の相互作用で凝集して大きい粒子となっているため、その状態で行う濾過や水洗は非常に容易であり、その結果、従来の製造方法に比べて、濾過や水洗にかかる時間の短縮や、水洗に必要になる水の量を大幅に低減することができる。従って、本発明の微細樹脂処理有機顔料の製造方法は、従来の製造方法に比較し、製造工程や時間の短縮、コスト削減につながり、廃水処理にかかる負荷も低減できる、工業的に極めて有用な製造方法となる。また、本発明の製造方法で得られた微細樹脂処理有機顔料を分散させると、より微細な粒子径の顔料分散体或いは顔料分散液とすることができ、例えば、インクジェット記録用インクの着色剤として使用した場合、記録ヘッドの詰まりや吐出性不良という不具合を発生せず、良好な性能のインクジェット記録用インクの提供が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、発明の好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、顔料分散樹脂で有機顔料を処理してなる微細樹脂処理有機顔料の製造方法に関し、(1)有機顔料と、水溶性無機塩からなる磨砕助剤と、水溶性有機溶剤とを含む混合物をソルベントソルトミリング処理して混練物を得る、混練工程と、(2)水洗工程を設けることなく、前記混練工程で得られた混練物を、あらかじめ準備した顔料分散樹脂とアルカリ化合物とを含むアルカリ性水溶液に添加混合して混合液とする、混合工程と、(3)前記混合工程で得られた混合液に、酸を添加することで、前記顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を析出させる、酸析工程と、を有することを特徴とする。本発明の微細樹脂処理有機顔料の製造方法では、ソルベントソルトミリング処理して得た混練物について、従来の製造方法で必須とされていた水洗工程を設けることなく、そのまま、顔料分散樹脂と上記特有の方法で混合し、その後に、混合液に酸を添加することで、顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を析出させることを特徴としている。水洗工程については、前記(3)酸析工程の後、さらに、(4)前記磨砕助剤、前記水溶性有機溶剤及び前記酸析工程により生じた塩類を濾過洗浄する、洗浄工程で行うように構成したことを特徴とする。以下、本発明の微細樹脂処理有機顔料の製造方法における各工程について説明する。
【0023】
<(1)混練工程>
本発明の製造方法では、まず、有機顔料を、ソルベントソルトミリング処理によって微細化し、その結果として、微細化された有機顔料(以下、単に顔料とも呼ぶ)と、後述したような、水溶性無機塩からなる磨砕助剤と、水溶性有機溶剤とを含む混練物を得る。ここで、ソルベントソルトミリング処理とは、強力なせん断応力を発生させるボールミルやニーダーなどの混練装置を用いて、有機顔料と水溶性無機塩からなる磨砕助剤と水溶性有機溶剤とを、混合・混練して磨砕することで、微細な顔料を得る従来公知の方法である。ソルベントソルトミリング処理は、保温又は加熱条件下で実施することが好ましい。保温又は加熱条件下で湿式磨砕することで、所望とする微細化顔料を容易に調製することができる。湿式磨砕は、処理する対象物(処理前顔料)の温度が50〜100℃となるように管理しながら実施することが好ましく、60〜95℃となるように管理しながら実施することがさらに好ましい。また、湿式磨砕に要する時間は特に限定されないが、通常3〜24時間程度である。
【0024】
ソルベントソルトミリング処理によって微細化した顔料を使用する際には、最終的に、水溶性無機塩からなる磨砕助剤と水溶性有機溶剤を除去するか、または、これらの成分を極力低減することが好ましい。すなわち、磨砕助剤と水溶性有機溶剤が多く残存した微細顔料を使用すると、顔料分散液の粘度に影響する場合や、品質安定性が劣る場合がある。磨砕助剤と水溶性有機溶剤を除去または低減する方法としては、従来技術では、ソルベントソルトミリング処理で得た混練物を水と混合し撹拌させて、無機塩類と水溶性有機溶剤を水に溶解させた後、濾過によって顔料分と水溶分を分離させる方法が一般に用いられている。本発明の製造方法では、従来技術で、ソルベントソルトミリング処理後に、混練物に対して行っている上記水洗工程を設けることなく、次の、顔料分散樹脂を含有する樹脂溶液に混練物を添加混合する(2)の混合工程を行う。
【0025】
(有機顔料)
本発明の製造方法で使用される有機顔料は、従来公知のものがいずれも使用でき、ソルベントソルトミリング処理によって微細化することが可能であれば特に限定されない。具体的には、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料及びペリレン顔料などが挙げられる。
【0026】
(磨砕助剤)
磨砕助剤としては、後工程で除去する観点から水溶性無機塩が一般的に用いられている。水溶性無機塩であれば特に限定されるものではない。具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはこれらの混合物が挙げられる。本発明の製造方法で最終的に(4)の洗浄工程を行う場合を考慮し、塩化ナトリウムを用いることがさらに好ましい。磨砕助剤の粒子径については特に限定されるものではない。
【0027】
ソルベントソルトミリング処理に用いられる磨砕助剤の量は、質量換算で有機顔料100部あたり100〜2000部の範囲が好ましい。100部より少ないと顔料の磨砕効果を十分に発揮することができず、2000部より多いと磨砕助剤が過剰となり、磨砕効率や後工程で必要になる除去効率が悪くなる場合があるので好ましくない。より好ましくは、有機顔料100部あたり300〜1000部の範囲とするとよい。この範囲だとより効率よく磨砕効果を発揮することができる。
【0028】
(水溶性有機溶剤)
ソルベントソルトミリング処理に用いられる水溶性有機溶剤としては、顔料の結晶成長を適度に促すものが好ましい。このような効果を有する水溶性有機溶剤の具体例としては、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(#200、#300等)、グリセリン、ホルムアミド等を挙げることができる。顔料の結晶成長を強めてしまう溶剤(例えば、N−メチル−2−ピロリドン等)では、湿式磨砕の効果よりも、結晶成長の方が促進されてしまうので、所望とする微細化顔料を得ることが困難になる場合がある。
【0029】
使用する水溶性有機溶剤の量は、質量換算で有機顔料100部あたり100〜1000部の範囲とすることが好ましい。100部より少ないと流動性が足りず混練が困難になる場合があり、1000部より多いと顔料にかかる負荷が小さくなり、十分な磨砕効果を発揮できないことがある。
【0030】
(ソルベントソルトミリング処理に用いる他の添加剤)
本発明の製造方法を構成するソルベントソルトミリング処理では、上記の材料の他に、有機顔料の結晶成長を防止したり分散性を向上させたりする目的で、必要に応じて従来公知の添加物が使用できる。例えば、水添ロジン等のロジン類である分散剤の他、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルや、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤、或いは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のスルフォン酸塩や、アルキルリン酸カリウム等のリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤等の界面活性剤等の高分子系分散剤を添加することができる。また、顔料と同一構造で、顔料骨格に対し、アルキル基、スルフォン酸基、スルフォン酸アミド基、スルフォン酸金属塩基、ハロゲン基、フタルイミド基等で置換された色素誘導体である顔料誘導体を添加することもできる。シリカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン等の体質顔料等を単独若しくは併用して添加することもできる。
【0031】
<(2)混合工程>
次に、従来の顔料の微細化方法で行っていた、ソルベントソルトミリング処理後に行う磨砕助剤と水溶性有機溶剤を除去するための水洗工程を設けることなく、前記(1)の混練工程で得られた混練物を、あらかじめ準備した顔料分散樹脂とアルカリ化合物とを含むアルカリ性水溶液に添加混合して混合液とする、本発明を特徴づける混合工程について説明する。すなわち、本発明の製造方法は、有機顔料と、水溶性無機塩からなる磨砕助剤と、水溶性有機溶剤とを含む混合物をソルベントソルトミリング処理後、従来行われていた濾過・水洗、さらには必要に応じて乾燥を行う「水洗工程」を経ることなく、得られた混練物を、予め調製した顔料分散樹脂とアルカリ化合物とを含む水性の樹脂溶液中に添加混合して混合物とすることを特徴とする。まず、本発明者らの検討によれば、本発明の製造方法で、ソルベントソルトミリング処理後に得られた混練物を、水洗、濾過或いは乾燥工程を経ずに使用することで、微細化した顔料の凝集可能性を低下させることができ、後述するように、本発明で最終的に(4)の水洗工程を行う場合において、従来のソルベントソルトミリング処理後に設けた濾過・水洗工程で課題となっていた、大量の洗浄水を必要とし、工程に長時間がかかっていたことが、時間の短縮及び洗浄水の量の低減にも繋がり有効である。さらに、本発明者らの検討によれば、ソルベントソルトミリング処理後に得られた混練物を水に解膠し、その中に、顔料分散樹脂とアルカリ化合物とを含む水性の樹脂溶液を添加した場合は、高濃度塩による樹脂の塩析を引き起こすことがあり、本発明の製造方法によって得られる顕著な効果を安定に得ることができない。
【0032】
(顔料分散樹脂)
本発明の製造方法で使用する顔料分散樹脂としては、従来公知の、水溶性または水分散性、水乳化性の、顔料を水系媒体中に分散させる機能を有する高分子分散剤等のポリマーが使用できる。具体的には、ビニルモノマー系の重合体の水または有機溶剤溶液やエマルジョン、ポリウレタンやポリエステルの水分散体、エマルジョンなどを用いることができる。
【0033】
好ましくは、ビニルモノマー系の従来公知の顔料分散剤を使用する。その構造は特に限定されず、ランダムコポリマー型、ブロックコポリマー型、グラフトコポリマー型などの共重合体からなる高分子分散剤をいずれも使用できる。また、樹脂の種類としては、スチレンアクリル系ポリマー、スチレンアクリルメタクリル系ポリマー、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマー、スチレンメタクリル系ポリマー、スチレンマレイン酸系ポリマー、スチレンアクリルマレイン酸系ポリマーなどが使用できる。
【0034】
本発明で使用するさらに好ましい顔料分散樹脂としては、カルボキシル基を有するモノマー、具体的には、(メタ)アクリル酸及び/又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを共重合成分として含むビニル系のポリマーである。カルボキシル基を有する共重合しうるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、二塩基酸であるマレイン酸、イタコン酸、それらのハーフエステル化物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのごとき水酸基を有するモノマーにコハク酸やフタル酸などの二塩基酸を反応させたモノマー、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基に2塩基酸を反応させたモノマー、それらのモノマーからε−カプロラクトンを反応させたモノマーなどが挙げられ、特に限定されない。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などは、加水分解するエステル基を含まないので好ましい。なお、上記「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」および「メタクリル」の双方を意味する。
【0035】
上記したモノマーを(共)重合してなる顔料分散樹脂は、その構造中の、上記に挙げたモノマー由来のカルボキシル基をアルカリ化合物で中和させてイオン化し、水溶液化させて使用される。中和する際のアルカリ化合物としては、従来公知のものが使用され特に限定されないが、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物などが1種以上使用される。
【0036】
これらの顔料分散樹脂の使用量は、質量換算で、有機顔料100部あたり1〜100部の範囲が好ましい。1部より少ないと、樹脂処理顔料の分散性が十分に得られない場合があり、100部より多いと、過剰な分散樹脂が溶液中に存在することとなり、顔料分散液の粘度が上昇するので好ましくない。より好ましくは、顔料100部あたり10〜50部の範囲で使用する。この範囲にすることで、顔料分散液の保存安定性がより向上し、分散液粘度の上昇も抑えられる。
【0037】
本発明の製造方法の(2)の混合工程で使用するアルカリ性水溶液は、顔料分散樹脂が前記アルカリ化合物によって溶解した水溶液のpHが、8.0〜12.0のものであることが好ましい。pHが8.0より低いと顔料分散樹脂が析出することがあり、一方、12.0より高いと、最終的に(4)の洗浄工程を行う場合における洗浄効率が低下する原因となり、また、容器を腐食することがある。さらに好ましくは、上記pHが8.0〜10.5の範囲であるとよい。pHをこの好適な範囲にすることで、最終的に(4)の洗浄工程を行う場合の洗浄効率もよく、容器の腐食の問題もより確実に抑制できる。
【0038】
また、本発明の製造方法の(2)の混合工程で使用する顔料分散樹脂のアルカリ水溶液には、従来公知の水溶性有機溶剤が含有されていてもよい。その際に用いる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール系、プロピレングリコール系、アミド系の溶剤が挙げられ、水に完全に溶解する溶剤が特に好ましい。
【0039】
本発明の製造方法の(2)の混合工程において、上記した顔料分散樹脂を含むアルカリ性水溶液に、ソルベントソルトミリング処理後に得た混練物を添加混合した後の塩濃度は、質量換算で、1〜30%程度になるようにすることが好ましい。1%未満にすると溶媒が多量に必要となり、生産効率が低下する場合がある。30%超であると洗浄に多大な水と時間を必要とすることになり、効率が低下する。洗浄効果をより高めるため、1〜10%程度とすることがさらに好ましい。
【0040】
<(3)酸析工程>
本発明の製造方法を構成する(3)酸析工程では、前記(2)の混合工程で得られた混合液に、酸を添加することで、前記顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を析出させる。酸析工程で使用する酸は、有機酸が好ましい。有機酸としては、従来公知のものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、酢酸、乳酸、ギ酸、プロピオン酸またはそれらの混合物が挙げられる。有機酸を用いることで、塩酸、硫酸などの無機酸に比べ、容器への腐食性を抑えることができる。酸の使用量としては、酸添加後のpHが、3.0〜6.0程度となるようにすることが好ましい。上記範囲より低いと酸が過剰となり、最終的に(4)の洗浄工程を行う場合の樹脂処理顔料の洗浄に余計な時間や洗浄水が必要になる。一方、6.0より高いと、顔料分散樹脂の一部が析出せず、最終的に行う(4)の洗浄工程で濾液と共に取り除かれてしまう。
【0041】
また、酸添加による酸析工程の後、最終的に行う(4)の洗浄工程で濾過する場合、粒子径が小さいと濾過に時間がかかるので粒子を凝集させるため、或いは、強く顔料表面に樹脂を吸着させるため、酸析工程で加温することが好ましい。加温する温度は、40〜100℃がよく、濾過効率、処理効率から、50〜100℃、さらには水沸点回避と作業性から、60〜95℃が最も好ましい。
【0042】
<(4)洗浄工程>
本発明の製造方法では、最終工程として、(1)の混練工程で行うソルベントソルトミリング処理で使用した、磨砕助剤及び水溶性有機溶剤、さらに、(3)の酸析工程で生じた塩類を濾過洗浄するための洗浄工程を設けることが好ましい。この場合に、加圧濾過や減圧濾過により濾過することが好ましい。濾過装置としては、工業的にはフィルタープレスが広く使用される。フィルタープレスによる加圧濾過の場合、微細樹脂処理顔料のペーストと、上記した水溶性成分の分離に引き続き、水道水や純水等を通水させ、水溶性成分を洗浄することができる。(4)の洗浄工程を設けることで、磨砕助剤と水溶性有機溶剤の除去に加えて、酸添加処理で生じた塩類を除去、低減できる。さらに、顔料中に含まれる無機金属イオンなどの不純物を除去、低減することもできる。先に述べたように、(4)の洗浄工程で分離される微細樹脂処理顔料は、疎水性の顔料分散樹脂で処理されていることから、顔料粒子同士が疎水性の相互作用で凝集して大きい粒子となっているため、濾過や水洗が非常に容易であり、その結果、ソルベントソルトミリング処理後に濾過・水洗を行っている従来の製造方法に比べて、濾過や水洗に長くかかっている時間の短縮や、水洗に必要になる水の量を大幅に低減することができる。
【0043】
<樹脂処理有機顔料の使用>
次に、本発明の製造方法で製造した微細樹脂処理顔料について説明する。以上の工程で得られた樹脂処理顔料は、含水ペーストとして使用してもよいし、乾燥して粉砕してパウダー状にして使用してもよい。水分散する用途での使用の場合は、含水ペーストを使用することが好ましい。乾燥すると二次凝集してしまい、微粒子分散するのに時間とエネルギーが必要な場合がある。有機溶剤等に分散する場合は、パウダーを使用することが好ましい。
【0044】
本発明の製造方法で製造した微細樹脂処理有機顔料を、各種用途のそれぞれに好適な分散媒体に分散して着色用組成物として使用する場合、分散媒体としては、各用途において使用されている分散媒体がいずれも使用でき、特に限定されない。また、着色用組成物における樹脂処理有機顔料の使用割合も、特に限定されず、各用途における従来公知の使用量と同様である。用途によって異なるが、通常、着色用組成物中の樹脂処理有機顔料の含有量は1〜60重量%程度である。
【0045】
前記分散媒体を例示すると、例えば、塗料用の分散媒体は固体状でもよいし、液状でもよく、例えば、液状の分散媒体中に本発明の製造方法で製造した微細樹脂処理有機顔料を含み着色分散液とすることができる。液状の場合の分散媒体としては、水或いは水−親水性有機溶媒の混合溶媒や、有機溶媒が使用される。有機溶媒としては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系炭化水素、ハロゲン化炭化水素系、エステル系、ケトン系、グリコールエーテル系、アルコール系などが使用され、特に限定されるものではない。
【0046】
また、塗料用ベヒクル、印刷インキ用ワニス及びコーティング剤用ベヒクルを分散媒体とするときは、各用途に応じて従来公知の油性乃至水性の分散媒体が適宜に使用される。例えば、長油長、中油長及び短油長のアルキッド樹脂、フェノール変性アルキッド樹脂、スチレン化アルキッド樹脂などの変性アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂、焼付用アクリル樹脂、アクリルラッカー樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−ジエン共重合体樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ブチラール樹脂、石油樹脂、ロジンエステル、マレイン化ロジンエステルなどの変性樹脂、乾性油、ボイル油などが挙げられる。
【0047】
また、固体の分散媒体(成形品など)としては、各種プラスチック、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル−スチレン共重合体樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。繊維が分散媒体であるときは、紡糸前の繊維原料、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリイミドなどが挙げられる。具体的には、上記したような樹脂中に、本発明の製造方法で製造した微細樹脂処理有機顔料を分散することで着色樹脂組成物として用いることができ、さらに、上記着色樹脂組成物を用いて成形することにより、着色樹脂成形体とすることができる。
【0048】
また、画像記録用のインクジェット用インクにおける分散媒体としては、水や水と水溶性有機溶剤との混合物があり、これらの水溶性の溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなど)、アミン類(例えば、ジエタノールアミン、エタノールアミンなど)、複素環類(例えば、N−メチル−2−ピロリドンなど)、スルホランなどが用いられる。また、これらのインク用分散媒体中には水溶性樹脂が含まれる場合があり、該水溶性樹脂としては、例えば、アクリル系、アクリル−スチレン共重合体系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系などの樹脂の単独または混合物が挙げられる。
【0049】
例えば、本発明の製造方法で製造した微細樹脂処理有機顔料を、水を含む媒体に分散させた成品は、環境面でも有用である。この場合の水分散体は、従来公知の配合や工程で得るものであって、特に限定されない。具体的な配合としては、水溶性有機溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルを4部、水を78部、樹脂処理有機顔料を18部含む水分散液などが挙げられる。
【0050】
また、電子写真複写機用などの現像剤(画像記録用)における分散媒体としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが種々の添加剤とともに用いられる。また、液晶ディスプレイのカラーフィルターの着色剤(画像表示用)に使用される分散媒体は、通常、被膜形成樹脂を含む有機溶剤などからなり、さらに分散剤の使用も好ましい態様である。ここで使用される樹脂としては、例えば、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド樹脂、感光性ポリイミド系樹脂など、及び不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル−アクリレート系樹脂、ポリエポキシ−アクリレート系樹脂、ポリウレタン−アクリレート系樹脂、ポリエーテル−アクリレート系樹脂、ポリオール−アクリレート系樹脂などが挙げられ、さらに反応性希釈剤として各種のモノマーを加えることができる。
【0051】
本発明者らの検討によれば、本発明の製造方法で製造した微細樹脂処理有機顔料を、プラスチックの着色、顔料捺染、印刷用・筆記用インキ、塗料、特にメタリック塗料などの着色剤として使用すると、被着色物において、染料に匹敵する透明性、鮮明性、冴えを有しながら、分散性に優れ、耐候性、耐光性、耐熱性などの諸物性に優れる。また、本発明の製造方法で製造した微細樹脂処理有機顔料は、インクジェット記録方式の画像記録剤、電子印刷・静電記録方式の画像記録剤またはカラーフィルター画素形成用着色剤の顔料としても有用である。
【実施例】
【0052】
以下に合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0053】
[合成例1:顔料分散樹脂含有のアルカリ性水溶液BP−1の調製]
<A−BブロックコポリマーBP−1の合成>
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計及び窒素導入管を取り付けた反応容器に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、DEGBE)を82.5部、ヨウ素を1.0部、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、以下、V−70)を3.7部、シクロヘキシルメタクリレート(以下、CHMA)を3.4部、ベンジルメタクリレート(以下、BzMA)を26.8部、メタクリル酸メチル(以下、MMA)を3.0部、及びジフェニルメタン(以下、DPM)を0.17部仕込んだ。そして、窒素バブリングしながら、45℃で5.5時間重合させてポリマー溶液を得た。
【0054】
サンプリングし、固形分を測定したところ、不揮発分から換算した重合転化率は83.5%であった。なお、この固形分は、一部をアルミ皿に所定量取り、真空乾燥機、150℃、3時間乾燥した後の重量から算出したものである。以下、固形分はこの方法で測定した。また、この時の、THFを展開溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPC)の示差屈折検出器(以下、RI)での数平均分子量(以下、Mn)は3800であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量、以下、PDI)は1.21であった。以下、分子量はこの方法で測定した。
【0055】
ついで、40℃に冷却し、BzMAを34.0部、メタクリル酸(以下、MAA)を9.2部、及びV−70を1.3部加え、3.5時間重合させた。その後、70℃に加熱し1時間撹拌を続け、顔料分散樹脂であるA−BブロックコポリマーBP−1を得た。固形分を測定し、不揮発分から換算した重合転化率は100%であった。また、GPCのRIでのMnは8000であり、PDIは1.35であった。ここで得られたブロックコポリマーBP−1の酸価は78.6mgKOH/gであった。
【0056】
<アルカリ性水溶液BP−1の調製>
別の容器に準備した、水酸化リチウム一水和物(以下、LiOH・H2O)を4.9部、及び水を36.3部加えよく撹拌し、計41.2部にしたものを、上記で得た顔料分散樹脂であるA−BブロックコポリマーBP−1に加え、ブロックコポリマーBP−1を含むアルカリ性水溶液を得た。この水溶液に水を加えて固形分濃度30%に調整した。これをアルカリ性水溶液BP−1と呼ぶ。
【0057】
[合成例2:顔料分散樹脂含有のアルカリ性水溶液RP−1の調製]
<ランダムコポリマーRP−1の合成>
撹拌機、逆流コンデンサー及び温度計を取り付けた反応容器に、DEGBEを52.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGME)52.2部を仕込んで、75℃に加熱した。また、別容器にスチレン(以下、St)を20部、MAAを10部、MMAを30部、メタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、2EHMA)を40部、及び2,2’−アゾビス(イソブチルニトリル)(以下、AIBN)を4部仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器に3分の1添加後、残り3分の2を1.5時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了から3.5時間重合後、AIBNを0.5部添加し、85℃に加熱し、さらに2時間重合し、顔料分散樹脂であるランダムコポリマーRP−1を得た。固形分を測定し、不揮発分から換算した重合転化率はほぼ100%であった。GPCのRIでのMnは16400であり、PDIは1.96であった。ここで得られたランダムコポリマーRP−1の酸価は65.2mgKOH/gであった。
【0058】
<アルカリ性水溶液RP−1の調製>
ついで、別容器に、水酸化ナトリウム(以下、NaOH)を4.7部と水を47.5部仕込んでよく撹拌し、中和液を調製した。この中和液を上記で得たランダムコポリマーRP−1に添加して中和を行い、ランダムコポリマーRP−1を含むアルカリ性水溶液を得た。この水溶液に水を加えて固形分濃度30%に調整した。これをアルカリ性水溶液RP−1と呼ぶ。
【0059】
[顔料合成例1]
<粗製有機顔料−1(C.I.PigmentRed122)の合成>
温度計を取り付けた反応容器にて、2,5−ジ(p−トルイジノ)テレフタル酸を600部と、ポリリン酸とを110〜130℃の温度で4時間撹拌することにより、ポリリン酸を用いて2,5−ジ(p−トルイジノ)テレフタル酸を縮合閉環させた。反応系内の温度を90℃に下げ、その反応物を水に徐々に流下させた。反応物の水溶液を撹拌させ、2,9−ジメチルキナクリドンの粗顔料を析出させた。温度計を取り付けた反応容器内で、得られた2,9−ジメチルキナクリドンの粗顔料をジメチルホルムアミドに流下させ、110〜140℃の温度で6時間撹拌させた。混合物を水に徐々に流下させ、得られたスラリーを濾過し、残渣を水洗及び乾燥して、粗製有機顔料−1として、2,9−ジメチルキナクリドン(C.I.PigmentRed122)を得た。
【0060】
[顔料合成例2]
<粗製有機顔料−2(C.I.PigmentOrange43)の合成>
温度計を取り付けた反応容器に、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸600部、o−フェニレンジアミン537部を、氷酢酸4050部と共に仕込み、120℃に加熱し、縮合させた。得られた反応混合物を、水酸化カリウムを溶解させたアルコール中に排出し、75℃で加熱後、20℃に冷却した。沈殿するカリウム付加体を濾過して析出物を得た。得られた析出物を、水酸化カリウムを溶解させたアルコール中に排出し、75℃にて加熱後、20℃に冷却し、濾過して得られた析出物をアルコール、水、及び水酸化カリウムの混合物で洗浄、60℃の水中で加水分解し、水洗及び乾燥して、粗製有機顔料−2として、trans−ナフトレンビスベンゾイミダゾール(C.I.PigmentOrange43)を得た。
【0061】
[実施例1]
<(1)混練工程:混練物−1の調製>
有機顔料として、顔料合成例1で製造した粗製有機顔料−1を400部、磨砕助剤として塩化ナトリウムを2400部、及び、水溶性有機溶剤としてジエチレングリコール560部をニーダーで混錬し、内容物を均一に湿潤した塊とした。冷却装置及び熱媒装置を調整し、内容物の温度が60〜90℃になるように管理しながら12時間混練磨砕処理(ソルベントソルトミリング処理)して、微細化した有機顔料−1を含む混練物−1を得た。
【0062】
下記の方法で、上記で得た混練物−1中の有機顔料の性状を確認した。すなわち、混練物−1の一部を少量採取し、従来の製造方法で行っているのと同様の方法で、採取した混練物−1を濾過及び水洗して塩化ナトリウムとジエチレングリコールを除去した後、100℃で24時間乾燥し、その後に粉砕して測定用試料を得た。得られた測定用試料について、透過型電子顕微鏡を使用して6万倍の撮影条件で撮影し、観察した。その結果、顔料粒子の形状は、比較的球状であり、短軸に対する長軸の比(長軸/短軸)の平均値は1.2であった。さらに、平均一次粒子径は約70nmであった。
【0063】
<(2)混合工程:混合液−1の調製>
先述した合成例1で得たA−BブロックコポリマーBP−1を含有してなるアルカリ性水溶液BP−1を125部、純水13615部を計量し、ディスパー羽根にてよく撹拌して溶液BP−1を均一に混合した。引き続き撹拌しながら、(1)の混練工程で得た混練物−1を少量ずつ投入して、投入した混練物−1の総量が1260部となった時点で投入を完了し、その後、2時間撹拌して混練物を解膠して混合液−1とした。得られた混合液−1を濾紙に少量滴下したところ、濾紙を通過せず濾紙表面に残る固形物も見られたが、一部の溶液は濾紙を通過した。また、このときの溶液のpHは7.8であった。
【0064】
<(3)酸析工程:樹脂処理顔料−1の調製>
(2)の混合工程で得た混合液−1を撹拌しながら、5%酢酸水溶液を少量ずつ添加して、溶液のpHを5.5まで低下させ、その後に70℃まで加熱し、酸析を行った。この際の溶液を濾紙に少量滴下したところ、顔料が浸透しないことから、顔料分散樹脂であるA−BブロックコポリマーBP−1が有機顔料を包含して析出していることが確認された。
【0065】
<(4)洗浄工程>
(3)の酸析工程で得た析出物を含む溶液と、洗浄水とを、下記に述べるようにして順にヌッチェに投入して、濾過と水洗浄を行い、乾燥、粉砕して、A−BブロックコポリマーBP−1で処理された、粗製有機顔料−1を出発原料としてなる、本実施例の微細な有機顔料(微細樹脂処理有機顔料)を得た。これを樹脂処理顔料−1と呼ぶ。
【0066】
上記で、濾過と水洗浄を行うのに必要とした洗浄水は、60000部であり、かかった時間は6時間であった。濾過は、濾紙(商品名:ADVANTEC4A、東京濾紙会社製)を敷いたヌッチェを、ハンディアスピレーター(商品名:WP−15、ヤマト科学社製)に繋ぎ、ゲージ圧−80〜−60KPに減圧して行った。洗浄水の投入は、濾過して、酸析工程で得た析出物を含む溶液の50%が濾液として得られた時点で開始し、濾液の電気伝導度が6μS/cm以上10μS/cm以下となった時点で投入を終了した。上記した濾過時間は、ヌッチェに酸析工程後の溶液を投入してから、濾液を74375部得られるまでの時間とした。この濾液の量は、濾別された樹脂処理顔料−1のペーストの固形分が30%となるまでの量である。このことは、濾別した樹脂処理顔料−1のペーストの一部を採取し、乾燥機で重量の変化がなくなるまで乾燥させ、乾燥物の重量と乾燥前のペーストの重量を測定して、樹脂処理顔料−1のペーストの固形分が30%となったことで確認した。以下の実施例及び比較例についても同様に、濾過の際に濾別される顔料ペーストの固形分が30%となる量の濾液が得られるまでの時間を濾過時間とした。
【0067】
<使用例:顔料分散液−1の調製>
純水232部、10%濃度NaOH水溶液13部、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、TPGME)30部を計量して、これらをよく撹拌して、水−親水性有機溶媒のアルカリ性の混合溶媒を調製した。そして、調製した混合溶媒に、上記で得られた樹脂処理顔料−1を125部、少量ずつ全量加えよく撹拌し、均一化してミルベースを調製した。このミルベースを、直径0.5mmのジルコニア製ビーズを用いて横型媒体分散機ダイノミル(容量0.6リットル、シンマルエンタープライゼス社製)を使用し、周速10m/sで40分間分散処理を行った。そして、分散終了後に取り出し、水で顔料濃度を16%に調整した後に、遠心分離処理(12000回転、20分間)を行った。その後、この樹脂処理顔料−1を含有した顔料溶液を10μmのメンブレンフィルターで濾過し、粗粒を除き、得られた溶液に純水を加えて顔料濃度を14%に調整して顔料分散液−1を得た。
【0068】
得られた顔料分散液−1について、粒度測定器NICOMP380(商品名、ピーエスエスジャパン社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、106nmであった。また、粘度は、2.84mPa・sであり、液色度は、L*が63.1、a*が62.9、b*が−26.6であった。測定方法については後述する。
【0069】
[実施例2]
<(2)混合工程:混合液−2の調製>
実施例1と同様に、顔料分散樹脂であるA−BブロックコポリマーBP−1を含有したアルカリ性水溶液BP−1を125部と、純水13615部を均一に混合した。そして、実施例1の(2)の混合工程で行ったと同様に、引き続き撹拌しながら、その中に、実施例1の(1)混練工程で得た混練物−1を、総量が1260部となるまで少量ずつ投入し、解膠し、混合液−2を得た。なお、混合液−2は、混合液−1と同様のものである。
【0070】
<(3)酸析工程:樹脂処理顔料−2の調製>
(2)の混合工程で得た混合液−2を撹拌しながら、5%酢酸水溶液を少量ずつ添加し、溶液のpHを5.5まで低下させ、その後に50℃まで加熱し、酸析を行った。この際の溶液を濾紙に少量滴下したところ、顔料が浸透しないことから、顔料分散樹脂であるA−BブロックコポリマーBP−1が、有機顔料を包含して析出していることを確認した。
【0071】
<(4)洗浄工程>
(3)の酸析工程で得た析出物を含む溶液と、洗浄水を、実施例1の(4)洗浄工程で行ったのと同様の手順でヌッチェに投入して、濾過と水洗浄を行い、乾燥、粉砕して、顔料分散樹脂であるA−BブロックコポリマーBP−1で処理された、粗製有機顔料−2を出発原料としてなる、微細な有機顔料(微細樹脂処理有機顔料)を得た。これを樹脂処理顔料−2と呼ぶ。実施例1の(4)洗浄工程の場合と同様、濾過するのに必要とした洗浄水は60000部、かかった時間は6.5時間であった。
【0072】
<使用例:顔料分散液−2の調製>
上記で得られた樹脂処理顔料−2を用いた以外は、実施例1の使用例と同様の手順で、ミルベースを調製し、ミルベースを、分散処理、遠心分離処理、濾過を行った後、得られた溶液に純水を加えて顔料濃度を14%に調整して、樹脂処理顔料−2を含有した顔料分散液−2を得た。得られた顔料分散液−2について、実施例1の使用例で得た顔料分散液−1と同様に、平均粒子径、粘度、液色度を測定したところ、平均粒子径は107nmであり、粘度は、2.82mPa・sであり、液色度は、L*が62.8、a*が62.6、b*が−26.6であった。
【0073】
[比較例1]
容器に、水13740部を計量し、ディスパー羽根にてよく撹拌しながら、その中に、実施例1の(1)混練工程で得た混練物−1を1260部、少量ずつ投入し、投入完了後2時間撹拌して混練物を解膠した。この溶液を、ヌッチェで、減圧濾過、水洗浄して、従来技術で行われているようにして、ソルベントソルトミリング処理後に、得られた混練物−1を濾過、洗浄して、微細化処理した顔料ペーストを得た。このペースト状のものを比較微細化顔料−1と呼ぶ。比較微細化顔料−1を得るまでに必要とした洗浄水の量は45000部、濾過にかかった時間は13時間であった。上記で得た微細化処理した顔料ペーストの一部を採取し、乾燥機で重量の変化がなくなるまで乾燥させ、比較微細化顔料−1の固形分が30%であることを確認した。
【0074】
ついで、前記した合成例1で得た顔料分散樹脂含有のアルカリ性水溶液BP−1を125部と、上記で得られた比較微細化顔料−1(固形分30%ペースト)を500部とを計量した後、よく撹拌して混合した溶液に、さらに水14375部を加え、よく撹拌して均一化して、比較混合液−1を調製した。
【0075】
上記で調製した比較混合液−1を撹拌しながら、5%酢酸水溶液を少量ずつ添加し、溶液のpHを5.5まで低下させた後、70℃まで加熱し、酸析を行った。この際の溶液を濾紙に少量滴下したところ、顔料が浸透しないことから、顔料分散樹脂が有機顔料を包含して析出していることが確認された。ついで、この溶液を、ヌッチェで、減圧濾過した後、水洗浄、乾燥、粉砕して、顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を得た。これを比較樹脂処理顔料−1と呼ぶ。上記の最終段階での、減圧濾過、水洗浄に使用した洗浄水は45000部、濾過にかかった時間は、4時間であった。この結果、出発原料である粗製有機顔料−1の状態から、比較樹脂処理顔料−1を得るまでの全工程において、使用した濾過に要した合計時間は17時間で、水洗浄に用いた水の量は、90000部であった。
【0076】
ついで、上記で得られた比較樹脂処理顔料−1を用いた以外は、実施例1の使用例と同様にして均一化し、ミルベースを調製した。そして、実施例1の使用例と同様にして、分散処理、遠心分離処理、濾過を行った。そして、得られた溶液に純水を加えて顔料濃度を14%に調整して比較顔料分散液−1を得た。得られた比較顔料分散液−1の平均粒子径は111nmであった。また、比較顔料分散液−1の粘度及び液色度を、実施例1で得た顔料分散液−1と同様にして測定し、結果を表1に記載した。
【0077】
[比較例2]
粗製有機顔料−1を用い、比較例1で行ったと同様の、ソルベントソルトミリング処理後に、濾過、洗浄を行う手順により、微細化顔料ペーストを得た。比較例2では、比較例1の場合と異なり、上記で得られた微細化顔料ペーストを、従来技術で行われているのと同様の方法で、さらに、乾燥、粉砕して比較微細化顔料−2とした。比較微細化顔料−2を得るまでに必要とした洗浄水の量は45000部、濾過にかかった時間は13時間であった。
【0078】
ついで、顔料分散樹脂含有のアルカリ性水溶液BP−1を125部と水350部を計量してよく撹拌混合した溶液に、上記で得た比較微細化顔料−2を150部と、さらに、水14375部を加え、よく撹拌して均一化して、比較混合液−2を調製した。
【0079】
調製した比較混合液−2を撹拌しながら、5%酢酸水溶液を少量ずつ添加し、溶液のpHを5.5まで低下させた後、70℃まで加熱し、酸析を行った。この際の溶液を濾紙に少量滴下したところ、顔料が浸透しないことから、顔料分散樹脂が有機顔料を包含して析出していることが確認された。ついで、この溶液を、ヌッチェで減圧濾過した後、水洗浄、乾燥、粉砕して、A−BブロックコポリマーBP−1で処理された微細な有機顔料を得た。これを比較樹脂処理顔料−2と呼ぶ。上記の最終段階での、減圧濾過、水洗浄に使用した洗浄水は45000部、濾過にかかった時間は、4.5時間であった。この結果、出発原料である粗製有機顔料−1の状態から、比較樹脂処理顔料−2を得るまでの全工程において、濾過に要した合計時間は17.5時間で、水洗浄に用いた水の量は、90000部であった。なお、比較例2では、上記濾過時間に加えて、さらに、乾燥時間が17時間かかっている。
【0080】
上記で得られた比較樹脂処理顔料−2を用いた以外は、実施例1の使用例と同様にして均一化し、ミルベースを調製した。そして、実施例1の使用例と同様にして、分散処理、遠心分離処理、濾過を行った。得られた溶液に純水を加え、顔料濃度を14%に調整して比較顔料分散液−2を得た。粗製有機顔料−1を出発原料とし、A−BブロックコポリマーBP−1を含有してなるアルカリ性水溶液BP−1を用い、上記のようにして得た比較顔料分散液−2の平均粒子径は、130nmであった。また、比較顔料分散液−2の粘度及び液色度を実施例1と同様にして測定し、結果を表1に示した。
【0081】
[顔料分散液の評価]
(平均粒子径、粘度、液色度の評価)
実施例及び比較例で得られたそれぞれの顔料分散液について、平均粒子径を粒度測定器NICOMP380(動的光散乱法)で、粘度を粘度計RE−80L(東機産業社製)で、液色度をU−3310型分光光度計(日立製作所社製)でそれぞれ測定し、結果を表1に示した。
(平均粒子径、粘度の保存性の評価)
実施例及び比較例で得られた顔料分散液をそれぞれ、70℃で7日間保存し、保存前と比較して保存後に生じた粒子径及び粘度の変化についてそれぞれ上記と同様の方法で測定し、以下の規準で保存性を評価した。結果を表1に示した。
【0082】
<評価基準>
以下、同様の試験においては、同様の評価基準とする。
○:70℃で1週間静置後の変化率が±3%未満
△:70℃で1週間静置後の変化率が±3%以上±5%未満
×:70℃で1週間静置後の変化率が±5%以上
【0083】
【0084】
表1に示したように、実施例1の使用例で顔料分散液を得るまでに要した洗浄水の量及び濾過時間は、比較例1、比較例2の使用例で得た顔料分散液を得るまでの場合と比べて、洗浄水の量が約67%に低減され、濾過時間が約34%〜35%と大きく低減され、本発明の製造方法がコスト面で極めて有利なことがわかる。
【0085】
また、実施例1及び比較例1、2で原料に同じ粗製有機顔料を用い、同じ条件で、樹脂処理顔料を分散させているのに対し、粒子径が比較例1、比較例2の顔料分散液と比べて小さいことから、実施例1の樹脂処理顔料の方が、分散性が良好であるという結果が得られた。分散性が良好であることから、液色度a**の値についてもより高くなっており、目視でも良好な発色が得られている。その理由としては、実施例1の製造方法では、粗製有機顔料に対してソルベントソルトミリング処理した後に比較例で行っている微細化顔料を得るための濾過工程がないので、微細化顔料の凝集が少なく、このため、最終的に得た顔料分散液の分散性が良好だったと考えられる。また、表1に示したように、比較例2の顔料分散液では、比較例1の顔料分散液と比べて保存性に劣ることがわかった。これは、比較例2の顔料分散液では、微細化顔料の乾燥工程により顔料が凝集したためと考えられる。また、比較例1のように微細化顔料ペーストを用いれば保存性の低下は防げるが、顔料ペーストは水分を多く含むため、この場合は、腐敗、水分の蒸発による品質の変化が起こることがあり、保存に適さないという別の問題がある。これらのことから、ソルベントソルトミリング処理後の混練物に対して、従来技術では必須とされている水洗工程(濾過工程)を経ることなく、発色性、保存安定性に優れる顔料を得ることができた実施例1の製造方法の有効性を確認した。
【0086】
[実施例3]
<(1)混練工程:混練物−2の調製>
有機顔料として、顔料合成例2で製造した粗製有機顔料−2を用いた以外は、実施例1における(1)の混練工程で行ったと同様に処理し、混練磨砕処理して微細化した有機顔料−2を含む混練物−2を得た。実施例1で使用した混練物−1の場合と同様にして、混練物−2中の顔料粒子を観察したところ、混練物−1中の顔料粒子とほぼ同様の性状を有することを確認した。
【0087】
<(2)混合工程:混合液−3の調製>
合成例2で製造した顔料分散樹脂であるランダムコポリマーRP−1を含有してなるアルカリ性水溶液RP−1を100部、純水10892部を計量し、ディスパー羽根にてよく撹拌して溶液RP−1を均一に混合した。そして、引き続き撹拌しながら、その中に、(1)の混練工程で、粗製有機顔料−2を用いて製造した混練物−2を少量ずつ投入し、総量が1008部となったところで投入を完了し、その後2時間撹拌して混練物を解膠し、混合液−3とした。この際の混合液のpHは8.8であった。
【0088】
<(3)酸析工程:樹脂処理顔料−3の調製>
(2)の混合工程で得た混合液−3を撹拌しながら、5%酢酸水溶液を少量ずつ添加し、溶液のpHを5.5まで低下させた後に、70℃まで加熱し、酸析を行った。
【0089】
<(4)洗浄工程>
(3)の酸析工程で得た析出物を含む溶液と、洗浄水を、実施例1の(4)洗浄工程で行ったのと同様の手順でヌッチェに投入して、減圧濾過し、水洗浄、乾燥、粉砕して、顔料分散樹脂であるランダムコポリマーRP−1で処理された微細な有機顔料(微細樹脂処理有機顔料)を得た。これを樹脂処理顔料−3と呼ぶ。上記で濾過するのに必要とした洗浄水は48000部であり、かかった時間は4時間であった。
【0090】
<使用例:顔料分散液−3の調製>
純水235部、10%濃度NaOH水溶液10部、TPGME30部を計量して、これらをよく撹拌して、水−親水性有機溶媒のアルカリ性の混合溶媒を調製した。そして、調製した混合溶媒に、上記で得られた樹脂処理顔料−3を125部、少量ずつ全量加えよく撹拌し、均一化してミルベースを調製した。このミルベースを、直径0.5mmのジルコニア製ビーズを用いて横型媒体分散機ダイノミルを使用し、周速10m/sで40分間分散処理を行った。そして、分散終了後に取り出し、水で顔料濃度16%に調整した後に、遠心分離処理(12000回転、20分間)を行った。その後、その顔料溶液を10μmのメンブレンフィルターで濾過し、得られた溶液に純水を加えて顔料濃度を14%に調整して顔料分散液−3を得た。得られた顔料分散液−3について、粒度測定器NICOMP380で平均粒子径を測定したところ、128nmであった。また、顔料分散液−3の粘度及び液色度を、実施例1で得た顔料分散液−1と同様にして測定し、結果を表2に記載した。
【0091】
[比較例3]
容器に、水10992部を計量し、ディスパー羽根にてよく撹拌しながら、その中に、実施例3の(1)混練工程で得た出発原料に粗製有機顔料−2を用いた混練物−2を1008部、少量ずつ投入し、投入完了後2時間撹拌して混練物を解膠した。この溶液を、ヌッチェで、減圧濾過、水洗浄して、従来技術で行われているようにして、ソルベントソルトミリング処理後に、得られた混練物−2を濾過、洗浄して、微細化処理した顔料ペーストを得た。このペースト状のものを比較微細化顔料−3と呼ぶ。比較微細化顔料−3を得るまでに必要とした洗浄水の量は36000部、濾過にかかった時間は12時間であった。上記で得た微細化処理した顔料ペーストの一部を採取し、比較例1と同様にして比較微細化顔料−3の固形分を確認したところ、30%であった。
【0092】
ついで、合成例2で製造した顔料分散樹脂であるランダムコポリマーRP−1を含有してなるアルカリ性水溶液RP−1を100部と、上記で得られた比較微細化顔料−3(固形分:30%ペースト)を400部とを計量した後、よく撹拌して混合した溶液に、さらに、水11500部を加え、よく撹拌して均一化して比較混合液−3を調製した。
【0093】
調製した比較混合液−3を撹拌しながら、5%酢酸水溶液を少量ずつ添加し、溶液のpHを5.5まで低下させた後、70℃まで加熱し、酸析を行った。この際の溶液を濾紙に少量滴下したところ、顔料が浸透しないことから、顔料分散樹脂が有機顔料を包含して析出していることを確認した。ついで、この溶液を、ヌッチェで、減圧濾過した後、水洗浄、乾燥、粉砕して、顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を得た。これを比較樹脂処理顔料−3と呼ぶ。上記の最終段階での、減圧濾過、水洗浄に使用した洗浄水は36000部、濾過にかかった時間は、5時間であった。この結果、出発原料である粗製有機顔料−2の状態から、比較樹脂処理顔料−3を得るまでの全工程において、使用した濾過に要した合計時間は17時間で、水洗浄に用いた水の量は、72000部であった。
【0094】
ついで、上記で得られた比較樹脂処理顔料−3を用いた以外は、実施例3の使用例と同様にして均一化し、ミルベースを調製した。そして、実施例3の使用例と同様にして、分散処理、遠心分離処理、濾過を行った。得られた溶液に純水を加えて顔料濃度を14%に調整して比較顔料分散液−3を得た。得られた比較顔料分散液−3の平均粒子径は133nmであった。また、比較顔料分散液−3の粘度及び液色度を、実施例1で得た顔料分散液−1と同様にして測定し、結果を表2に記載した。
【0095】
[比較例4]
粗製有機顔料−2を用い、比較例3で行ったと同様の、ソルベントソルトミリング処理後に、濾過、洗浄を行う手順により、微細化顔料ペーストを得た。本比較例では、比較例3の場合と異なり、上記で得られた微細化顔料ペーストを、従来技術で行われているのと同様の方法で、さらに、乾燥、粉砕して比較微細化顔料−4とした。比較微細化顔料−4を得るまでに必要とした洗浄水の量は36000部、濾過にかかった時間は12時間であった。
【0096】
ついで、顔料分散樹脂であるランダムコポリマーRP−1を含有したアルカリ性水溶液RP−1を100部と、水280部を計量してよく撹拌混合した溶液に、上記で得られた比較微細化顔料−4を120部と、さらに、水11500部を加え、よく撹拌して均一化して比較混合液−4を調製した。
【0097】
調製した比較混合液−4を撹拌しながら、5%酢酸水溶液を少量ずつ添加し、溶液のpHを5.5まで低下させた後、70℃まで加熱し、酸析を行った。その後、この溶液を、ヌッチェで、減圧濾過した後、水洗浄、乾燥、粉砕して、顔料分散樹脂で処理された微細な有機顔料を得た。これを比較樹脂処理顔料−4と呼ぶ。上記の最終段階での、減圧濾過、水洗浄に使用した洗浄水は36000部、濾過にかかった時間は、4時間であった。この結果、出発原料である粗製有機顔料−2の状態から、比較樹脂処理顔料−4を得るまでの全工程において、使用した濾過に要した合計時間は16時間で、水洗浄に用いた水の量は、72000部であった。
【0098】
ついで、上記で得られた比較樹脂処理顔料−4を用いた以外は、実施例3の使用例と同様にして均一化し、ミルベースを調製した。そして、実施例3の使用例と同様にして、分散処理、遠心分離処理、濾過を行った。得られた溶液に純水を加えて顔料濃度を14%に調整して比較顔料分散液−4を得た。得られた比較顔料分散液−4の平均粒子径は145nmであった。また、比較顔料分散液−4の粘度及び液色度を、実施例1で得た顔料分散液−1と同様にして測定し、結果を表2に記載した。
【0099】
【0100】
表2に示したように、粗製有機顔料及び顔料分散樹脂が異なる実施例3、比較例3、4の樹脂処理顔料の場合も、実施例1、比較例1、2の樹脂処理顔料の場合と同様に、本発明の製造方法によって樹脂処理した顔料の分散液の方が、従来の製法で得た比較例3、4の顔料の分散液より、分散性が良好であるという結果が得られた。
【0101】
[樹脂処理顔料をインクの着色剤に用いた場合の印刷適正の評価]
実施例及び比較例の各顔料分散液を用いて、下記のようにしてインクを調製し、インクの性能を評価した。
【0102】
(印刷評価用インクの調製−顔料分散液−1を使用)
実施例1の使用例で得た顔料分散液−1(顔料濃度:14%)を42.9部、DEGBEを5部、2−ピロリドンを5部、グリセリンを16部、サーフィノール465(エア・プロダクツ社製)1部、水30.1部を加え、十分撹拌した。その後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクジェットプリンター用の、マゼンタ色の顔料インクW−1を得た。
【0103】
(印刷評価用インクの調製−比較顔料分散液−1を使用)
顔料分散液−1を使用して行った顔料インクW−1の調製で、顔料分散液−1(顔料濃度:14%)を、比較例1で得た比較顔料分散液−1(顔料濃度:14%)に替えた以外は同様にして、インクを調製し、水性顔料インクW−2を得た。
【0104】
[印刷評価−比較例2]
顔料分散液−1を使用して行った顔料インクW−1の調製で、顔料分散液−1(顔料濃度:14%)を、比較例2で得た比較顔料分散液−2(顔料濃度:14%)に替えた以外は同様にして、インクを調製し、水性顔料インクW−3を得た。
【0105】
(水性顔料インクの評価)
上記で得られたマゼンタインクをそれぞれインクカートリッジに充填し、マイクロジェット社製の印刷試験機により、写真光沢紙にベタ印刷を行った。印刷後、室内に1日放置し、測色計Eye−One−Pro(商品名、X−Rite社製)にて光学濃度ODと色彩値を測定した。彩度C*値は、a*、b*値より計算した。また、光沢計(商品名:マイクロトリグロス、BYKガードナー社製)にて20度グロスを測定した。それぞれ測定各5回の平均値を表3に示した。
【0106】
また、吐出安定性(吐出性)については、印刷物を目視で確認し、スジ抜けが見られない場合は○、1箇所見られた場合は△、それ以上の場合は×とした。
【0107】
【0108】
表3に示したように、実施例1の顔料分散液−1を用いたインクW−1は、比較顔料分散液を用いたインクと比べて、光学濃度、彩度、グロスの値が高いという結果が得られた。その理由は、表1に示したように、顔料分散液−1は、比較顔料分散液に比べて分散性が良好で粒径が小さいためと考えられる。また、比較例2の比較顔料分散剤−2を用いたインクW−3では、吐出が不安定であった。その理由は、比較顔料分散剤−2を得る工程で、ソルベントソルトミリング処理後に、水洗工程に加え、微細化顔料の乾燥工程を設けたことにより、顔料が凝集したためと考えられる。
【0109】
(印刷評価用インクの調製−顔料分散液−3を使用)
実施例3の使用例で得た顔料分散液−3(顔料濃度:14%)を42.9部、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを8部、グリセリンを17部、サーフィノール465(エア・プロダクツ社製)1部、水31.1部を加え、十分撹拌した。その後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、オレンジ色の水性顔料インクW−4を得た。
【0110】
(印刷評価用インクの調製−比較顔料分散液−3を使用)
顔料分散液−3を使用して行った顔料インクW−4の調製で、顔料分散液−3(顔料濃度:14%)を、比較例3で得た比較顔料分散液−3(顔料濃度:14%)に替えた以外は同様にして、インクを調製し、水性顔料インクW−5を得た。
【0111】
(印刷評価用インクの調製−比較顔料分散液−4を使用)
顔料分散液−3を使用して行った顔料インクW−4の調製で、顔料分散液−3(顔料濃度:14%)を、比較例4で得た比較顔料分散液−4(顔料濃度:14%)に替えた以外は同様にして、インクを調製し、水性顔料インクW−6を得た。
【0112】
(水性顔料インクの評価)
上記で得た水性顔料インクW−4〜水性顔料インクW−6について、先に水性顔料インクW−1〜水性顔料インクW−3で行ったと同様にしてインクの評価を行った。結果を表4に示した。
【0113】
【0114】
表4に示したように、本発明の顔料分散液−3を用いた水性顔料インクW−4は、先に評価したマゼンタインクの水性顔料インクW−1と同様に、比較顔料分散液を用いたインクと比べて、彩度、グロスの値が高いという結果が得られた。その理由は、表2に示したように、顔料分散液−3は、比較顔料分散液に比べて分散性が良好で粒径が小さいためと考えられる。