(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-156908(P2019-156908A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】光触媒塗料組成物およびそれを用いた塗装方法
(51)【国際特許分類】
C09D 127/18 20060101AFI20190823BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20190823BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20190823BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20190823BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
C09D127/18
C09D5/16
C09D7/61
B05D7/24 302L
B05D7/24 303A
B05D1/28
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-42131(P2018-42131)
(22)【出願日】2018年3月8日
(11)【特許番号】特許第6539370号(P6539370)
(45)【特許公報発行日】2019年7月3日
(71)【出願人】
【識別番号】508214879
【氏名又は名称】協立技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516325246
【氏名又は名称】北村 透
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100182796
【弁理士】
【氏名又は名称】津島 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100181308
【弁理士】
【氏名又は名称】早稲田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】小原 英昭
(72)【発明者】
【氏名】北村 透
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC51
4D075AC54
4D075AE03
4D075CA34
4D075CA37
4D075CA38
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB06
4D075DB07
4D075DC01
4D075DC02
4D075DC11
4D075EA05
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB16
4D075EB51
4D075EC02
4D075EC30
4D075EC37
4D075EC54
4J038CD091
4J038GA13
4J038HA216
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA05
(57)【要約】
【課題】形成される被膜が高い透明度で良好な外観を有し、厚みが比較的薄くても十分な光触媒活性を発揮し、さらに親水性および耐水性の相反する性質をバランスよく付与することができる光触媒塗料組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る光触媒塗料組成物は、下記式(I)に示されるモノマー単位を少なくとも含むフッ素樹脂(A)と、光触媒粉末(B)と、溶剤(C)とを含み、成分(A)100質量部に対して、成分(B)が100〜300質量部の割合で含有され、成分(A)と成分(B)とが合計で0.06〜1質量%の濃度で含有される。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)に示されるモノマー単位を少なくとも含むフッ素樹脂(A)と、光触媒粉末(B)と、溶剤(C)とを含み、
成分(A)100質量部に対して、成分(B)が100〜300質量部の割合で含有され、
成分(A)と成分(B)とが合計で0.06〜1質量%の濃度で含有される、
光触媒塗料組成物。
【化1】
【請求項2】
前記成分(A)が、下記式(II)に示されるモノマー単位をさらに含む樹脂である請求項1に記載の光触媒塗料組成物。
【化2】
式(II)中、C
mF
2mおよびC
nF
2nは直鎖または分岐のパーフルオロアルキレン基であり、mは1〜10の整数であり、nは1〜5の整数である。
【請求項3】
前記式(II)に示されるモノマー単位が、パーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]に由来するモノマー単位である請求項2に記載の光触媒塗料組成物。
【請求項4】
前記成分(A)が、800以上のスルホン酸当量を有する請求項2または3に記載の光触媒塗料組成物。
【請求項5】
前記成分(B)が、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛および酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光触媒塗料組成物を、ローラー塗装によって基材に塗布する塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒塗料組成物およびそれを用いた塗装方法関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、風雨に曝される建築物の外壁やテント生地、あるいは自動車や鉄道車両などの車体鋼板の塗装に使用される塗料には、外観が良好で(透明性に優れ)、汚れを付着しにくくする耐汚染性などが求められる。このような塗料として、例えば、特許文献1に記載されるような光触媒塗料が提案されている。
【0003】
しかし、光触媒塗料は、塗装する際に多くの工程を経る必要があり煩雑で、さらに特殊なスプレー塗装機が必要であるという点で、広範な普及が阻まれている。光触媒塗料には、樹脂として一般的に縮合系シリケート無機化合物が採用されている。縮合系シリケート無機化合物は、有機物への接着性に乏しく、縮合時に体積収縮が著しいため、厚塗りすることができない。さらに、縮合系シリケート無機化合物が光触媒反応を阻害するため、大過剰の光触媒を配合する必要がある。その結果、「裏反応」と称する有機系の下地を侵食する反応が生じるため、「裏反応」を防止する下塗り工程が必要となる。
【0004】
このような現象を解消するために、樹脂としてフッ素樹脂を使用することも検討されている。しかし、光触媒反応での樹脂の分解を警戒するあまり、光触媒の含有量が少なすぎて、十分な光触媒機能や親水性を発揮させることができない。これらの効果を発揮させるために、光触媒塗料を大量に塗布して層を厚くする必要があるなど、さらなる煩雑な工程が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−124312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、形成される被膜が高い透明度で良好な外観を有し、厚みが比較的薄くても十分な光触媒活性を発揮し、さらに親水性および耐水性の相反する性質をバランスよく付与することができる光触媒塗料組成物およびこの組成物を用いた塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)下記式(I)に示されるモノマー単位を少なくとも含むフッ素樹脂(A)と、光触媒粉末(B)と、溶剤(C)とを含み、成分(A)100質量部に対して、成分(B)が100〜300質量部の割合で含有され、成分(A)と成分(B)とが合計で0.06〜1質量%の濃度で含有される光触媒塗料組成物。
【化1】
(2)成分(A)が、下記式(II)に示されるモノマー単位をさらに含む樹脂である上記(1)に記載の光触媒塗料組成物。
【化2】
式(II)中、C
mF
2mおよびC
nF
2nは直鎖または分岐のパーフルオロアルキレン基であり、mは1〜10の整数であり、nは1〜5の整数である。
(3)式(II)に示されるモノマー単位が、パーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]に由来するモノマー単位である上記(2)に記載の光触媒塗料組成物。
(4)成分(A)が、800以上のスルホン酸当量を有する上記(2)または(3)に記載の光触媒塗料組成物。
(5)成分(B)が、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛および酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1種である(1)〜(4)のいずれかに記載の光触媒塗料組成物。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光触媒塗料組成物を、ローラー塗装によって基材に塗布する塗装方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光触媒塗料組成物によれば、形成される被膜が高い透明度で良好な外観を有し、厚みが比較的薄くても十分な光触媒活性を発揮する。さらに、形成される被膜は、親水性および耐水性の相反する性質をバランスよく有する。さらに、本発明の塗装方法によれば、煩雑な工程を経ることなく簡便な工程で、光触媒塗料組成物を基材に塗布することができ、厚みが比較的薄い被膜を基材に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の光触媒塗料組成物は、上記式(I)に示されるモノマー単位を少なくとも含むフッ素樹脂(成分(A))と、光触媒粉末(成分(B))と、溶剤(成分(C))とを含む。以下、これらの成分について詳細に説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る光触媒塗料組成物に含まれる成分(A)は、下記の式(I)に示されるモノマー単位を少なくとも含むフッ素樹脂であれば、特に限定されない。
【0012】
このようなフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンと共重合可能なモノマーの共重合体、ポリテトラフルオロエチレンのパーフルオロアルキルグラフト重合体などが挙げられる。テトラフルオロエチレンと共重合可能なモノマーとしては、例えばフッ素含有モノマーが挙げられる。フッ素含有モノマーの中でも、最高度にフッ素化されたモノマー、すなわち炭素原子に結合した水素原子が全てフッ素原子に置換されたモノマーが好ましい。成分(A)として、主鎖および側鎖に炭素−水素結合(C−H結合)が存在しないフッ素樹脂を使用することによって、光触媒に対する耐久性がより向上し、より優れた光触媒活性を発揮することができる。
【0013】
フッ素含有モノマーとしては、特に下記式(III)に示されるパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルアルコキシ)アルキルビニルエーテルが好ましい。
【0015】
式(III)中、C
mF
2mおよびC
nF
2nは直鎖または分岐のパーフルオロアルキレン基であり、mは1〜10の整数であり、nは1〜5の整数である。
【0016】
式(III)に示されるパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルアルコキシ)アルキルビニルエーテルに由来するモノマー単位が、上記式(II)に示されるモノマー単位である。式(III)に示されるパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルアルコキシ)アルキルビニルエーテルの中でも、C
mF
2mが分岐構造を有しmが3であり、C
nF
2nのnが2であるパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル(式(II)に示されるモノマー単位においては、C
mF
2mが分岐構造を有しmが3であり、C
nF
2nのnが2)が好ましい。テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテルとの共重合体は、例えば「Nafion(ナフィオン)」(Chemours社製)などが市販されている。
【0017】
成分(A)の分子量は特に限定されず好ましくは10,000〜2,000,000の重量平均分子量、より好ましくは20,000〜1,000,000の重量平均分子量を有する。特に、成分(A)が、式(I)に示されるモノマー単位および式(II)に示されるモノマー単位を含む共重合体の場合、具体的な分子量(重量平均分子量)の代わりに、スルホン酸当量を測定して分子量(重量平均分子量)の目安とすることがある。スルホン酸当量とは、スルホン酸1基当たりのその高分子の分子量である。式(I)に示されるモノマー単位および式(II)に示されるモノマー単位を含む共重合体(特定の共重合体)は、好ましくは800以上のスルホン酸当量を有し、より好ましくは900以上のスルホン酸当量を有する。800以上のスルホン酸当量を有する特定の共重合体を用いることによって、より優れた耐水性を付与することができる。特定の共重合体において、スルホン酸当量の上限は限定されない。特定の共重合体の水溶性あるいはその他の溶剤へのコーティング液を形成するに必須な溶解性を考慮すると、スルホン酸当量の上限は、好ましくは1300程度である。
【0018】
一実施形態に係る光触媒塗料組成物に含まれる成分(B)は、光触媒活性を有する化合物であれば特に限定されない。光触媒とは、太陽光や蛍光灯などの照射によって酸化力が発生し、浄化効果、脱臭効果、防汚効果、浄水効果、抗菌効果などを発揮する触媒(化合物)である。成分(B)としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。具体的には、TiO
2、WO
3、ZnO、Fe
2O
3、Fe
3O
4、ZrO
2などが挙げられる。成分(B)としては、例えば、ST−01(石原産業(株)製品)、セルミューズ((株)ダイセル製、酸化チタン系光触媒)などが市販されている。
【0019】
成分(B)は粉末であれば、平均粒子径などは特に限定されない。形成される被膜の透明性を考慮すると、粉末の粒子径は小さい方が好ましく、例えば、2次粒子径として0.4〜2.0μm程度を有する粉末が好ましい。平均粒子径は、例えば粒度分布計によって測定される。
【0020】
一実施形態に係る光触媒塗料組成物において、成分(B)は、成分(A)100質量部に対して100〜300質量部の割合で含まれる。成分(B)の含有量が100質量部未満の場合、形成される被膜に十分な親水性が付与されない。さらに、成分(A)の割合が高くなり、成分(B)の割合が低くなるため、十分な光触媒活性が発揮されなくなる。一方、成分(B)の含有量が300質量部を超える場合、形成される被膜の透明性が損なわれ、形成された被膜の表面に成分(B)が浮き出るチョーキング現象も発生する。成分(B)は、成分(A)100質量部に対して好ましくは150〜250質量部の割合で含まれる。
【0021】
一実施形態に係る光触媒塗料組成物に含まれる成分(C)は、成分(A)を溶解し、成分(B)を分散し得る溶剤であれば、特に限定されない。このような溶剤としては、水、炭素数が1〜4のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類などが挙げられる。これらの中でも、作業性や環境への負荷を考慮すると、水、エタノールまたは含水エタノールが好ましい。
【0022】
一実施形態に係る光触媒塗料組成物において、成分(C)は、成分(A)と成分(B)とが合計で0.06〜1質量%の濃度(不揮発分)となるように含まれる。成分(A)と成分(B)とが合計で0.06質量%未満となるように成分(C)を使用すると、不揮発分の濃度が低すぎるため、被膜が形成されにくくなる。一方、成分(A)と成分(B)とが合計で1質量%を超えるように成分(C)を使用すると、不揮発分の濃度が高くなりすぎて、塗布量が多くなる。その結果、形成される被膜に含まれる成分(B)の量が多くなり、塗膜が白濁して外観上好ましくない。さらに、コストも高くなる。成分(C)は、成分(A)と成分(B)とが合計で好ましくは0.1〜0.5質量%の濃度となるように含まれる。
【0023】
一実施形態に係る光触媒塗料組成物の製造方法は特に限定されず、公知慣用の塗料製造工程と同じである。すなわち、まず成分(A)と成分(B)とを分散機でよく強分散し、その後成分(C)を混合して撹拌すればよい。成分(A)、成分(B)および成分(C)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて塗料組成物に一般的に含まれる添加剤を混合してもよい。このような添加剤としては、例えば、防腐剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、可塑剤、沈降防止剤、タレ防止剤などが挙げられる。
【0024】
このようにして得られた光触媒塗料組成物は、基材に塗布される。基材としては特に限定されず、例えば、ビル、マンション、家屋、橋梁、堤防、ダム、門などの建築物や建造物を含む構造物、テント生地、自動車や鉄道車両などの車体鋼板、オブジェ、モニュメントなどが挙げられる。一実施形態に係る光触媒塗料組成物は、このような基材の壁面(表面)や屋根、特に風雨や多湿雰囲気に曝される壁面や屋根、浴室などの水回りに塗布される。
【0025】
一実施形態に係る光触媒塗料組成物は、従来のフッ素樹脂を含む光触媒塗料と異なり、厚く塗布しなくてもよい。一実施形態に係る光触媒塗料組成物は、比較的薄く塗布するだけでも形成される被膜は、十分な光触媒活性を発揮し、高い透明度で良好な外観を有しており、基材表面の色や図柄などに影響を及ぼさない。さらに、一実施形態に係る光触媒塗料組成物には、フッ素樹脂(成分(A))の割合に対して、比較的高い割合で光触媒粉末(成分(B))が含まれている。このように、光触媒粉末を比較的高い割合で配合することによって、形成される被膜がフッ素樹脂に由来する耐水性に加えて親水性をも発揮する、すなわち親水性および耐水性の相反する性質をバランスよく発揮することを見出した。
【0026】
一実施形態に係る光触媒塗料組成物を塗布する方法は特に限定されないが、一実施形態に係る光触媒塗料組成物は、ローラー塗装できることが最大の特長である。すなわち、一実施形態に係る光触媒塗料組成物は、厚く塗布しなくてもよいため、ローラー塗装で基材に塗布することができる。従来の光触媒コーティング剤の施工仕様は、大がかりな装置を準備する必要があり、訓練も必要なスプレー塗装に限られていた。一実施形態に係る光触媒塗料組成物は、施工仕様としてローラー塗装を採用することができる。その結果、より簡単に施工できるようになり、施工コストも劇的に低減させることが可能である。一実施形態に係る光触媒塗料組成物をローラーで1回または2回塗布するだけで、簡便に比較的薄い被膜を基材に形成することができる。このようにして形成される被膜は、例えば0.1〜2.0μm程度、好ましくは0.1〜0.9μm程度の厚みを有する。
【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
下記に示す成分(A)、成分(B)および成分(C)を混合し、光触媒塗料を調製した。具体的には、10質量部のNafionDE521(成分(A)に換算して0.5質量部)および5質量部のセルミューズ(成分(B)に換算して0.5質量部)を混合して、塗料用分散機で十分に分散させた。次いで、45質量部のエタノールおよび40質量部の水を添加して十分に混合し、光触媒塗料を得た。得られた光触媒塗料には、成分(A)100質量部に対して成分(B)が100質量部の割合で含まれ、成分(A)と成分(B)とが合計で1質量%の濃度(不揮発分:1質量%)で含まれている。
成分(A):NafionDE521(Chemours社製、スルホン酸当量:1000、5質量%分散液)
成分(B):セルミューズ((株)ダイセル製、酸化チタン系光触媒、10質量%分散液)
成分(C):エタノールおよび水
【0029】
(実施例2)
0.6質量部のNafionDE521(成分(A)に換算して0.03質量部)、0.3質量部のセルミューズ(成分(B)に換算して0.03質量部)、50質量部のエタノールおよび49.1質量部の水を使用した以外は、実施例1と同様の手順で光触媒塗料を得た。得られた光触媒塗料には、成分(A)100質量部に対して成分(B)が100質量部の割合で含まれ、成分(A)と成分(B)とが合計で0.06質量%の濃度(不揮発分:0.06質量%)で含まれている。
【0030】
(実施例3)
0.6質量部のNafionDE521(成分(A)に換算して0.03質量部)、0.6質量部のセルミューズ(成分(B)に換算して0.06質量部)、50質量部のエタノールおよび48.8質量部の水を使用した以外は、実施例1と同様の手順で光触媒塗料を得た。得られた光触媒塗料には、成分(A)100質量部に対して成分(B)が200質量部の割合で含まれ、成分(A)と成分(B)とが合計で0.09質量%の濃度(不揮発分:0.09質量%)で含まれている。
【0031】
(実施例4)
0.4質量部のNafionDE521(成分(A)に換算して0.02質量部)、0.6質量部のセルミューズ(成分(B)に換算して0.06質量部)、50質量部のエタノールおよび49.0質量部の水を使用した以外は、実施例1と同様の手順で光触媒塗料を得た。得られた光触媒塗料には、成分(A)100質量部に対して成分(B)が300質量部の割合で含まれ、成分(A)と成分(B)とが合計で0.08質量%の濃度(不揮発分:0.08質量%)で含まれている。
【0032】
(比較例1)
13.2質量部のNafionDE521(成分(A)に換算して0.66質量部)、3.4質量部のセルミューズ(成分(B)に換算して0.34質量部)、50質量部のエタノールおよび33.4質量部の水を使用した以外は、実施例1と同様の手順で光触媒塗料を得た。得られた光触媒塗料には、成分(A)100質量部に対して成分(B)が約50質量部の割合で含まれ、成分(A)と成分(B)とが合計で1質量%の濃度(不揮発分:1質量%)で含まれている。
【0033】
(比較例2)
4質量部のNafionDE521(成分(A)に換算して0.2質量部)、8質量部のセルミューズ(成分(B)に換算して0.8質量部)、50質量部のエタノールおよび38質量部の水を使用した以外は、実施例1と同様の手順で光触媒塗料を得た。得られた光触媒塗料には、成分(A)100質量部に対して成分(B)が400質量部の割合で含まれ、成分(A)と成分(B)とが合計で1質量%の濃度(不揮発分:1質量%)で含まれている。
【0034】
(比較例3)
実施例1で使用したNafionDE521の代わりに、シリケートオリゴマー(MKCシリケートMS56、三菱ケミカル(株)製)を使用した。まず、0.5質量部のMKCシリケートMS56に9.5質量部のエタノールを添加して、シリケートオリゴマーの濃度が5質量%の溶液を調製した。得られた溶液(10質量部)、5質量部のセルミューズ(成分(B)に換算して0.5質量部)、および85質量部のエタノールを使用した以外は、実施例1と同様の手順で光触媒塗料を得た。
【0035】
各実施例および各比較例で得られた光触媒塗料それぞれを、基材に塗布して光触媒性能試験に供した。具体的な試験方法は次のとおりである。まず、アルミ素地に水性白色塗料(水系ファインコートシリコン、菊水化学工業(株)製)を、乾燥被膜が80μmの厚みを有するように塗布した。水性白色塗料を十分に乾燥させて基材を得た。
【0036】
得られた基材の被膜面に、各光触媒塗料を短毛ローラー(毛足:4mm)で1回塗布した。比較例3で得られた光触媒塗料を塗布する際には、シリケートオリゴマーの硬化触媒として100ppmのジブチル錫ジアセテートを添加した。次いで、光触媒塗料が塗布された基材を、温度25℃および相対湿度60%の環境下で、十分に(168時間以上)乾燥させて試験板を得た。試験板に形成された光触媒被膜は、いずれも0.2μm前後(計算値による推定)の厚みを有していた。得られた各試験板の外観を目視で観察した結果を表1および2に示す。さらに、JIS R1703−1に準拠し、得られた各試験板について限界接触角測定を行った。限界接触角測定は、外観を目視で観察した後および試験板を水道水に168時間浸漬して乾燥した後に行った。接触角が小さいほど耐水性に優れていると評価できる。結果を表1および2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1に示すように、実施例1および2で得られた光触媒塗料を塗布した試験板は、チョーキング現象など外観に影響を及ぼすような現象は発生しておらず、優れた外観を有していることがわかる。実施例3および4で得られた光触媒塗料を塗布した試験板は、若干乳白色を呈しているものの、透明性を損なうような着色ではなく実用性に全く問題はない。実施例1〜4で得られた光触媒塗料を塗布した試験板は、限界接触角も小さく、優れた親水性を有していることがわかる。さらに、実施例1〜4で得られた光触媒塗料を塗布した試験板は、水道水に浸漬する前の限界接触角と浸漬した後の限界接触角とに差がない。この結果から、得られた試験板を水道水に浸漬した際に、形成された光触媒被膜が流失していないことは明らかであり、実施例1〜4で得られた光触媒塗料を塗布した試験板は、優れた耐水性を有していることがわかる。
【0040】
一方、表2に示すように、比較例1〜3で得られた光触媒塗料を塗布した試験板は、チョーキング現象が発生したり、耐水性に乏しかったりすることがわかる。比較例1に示すように、フッ素樹脂の割合が高い場合、試験板の外観は優れているものの、親水性に乏しいことがわかる。比較例2に示すように、光触媒の割合が高い場合、試験板にチョーキング現象が発生していることがわかる。さらに、得られた試験板は、水道水に浸漬する前の限界接触角と浸漬した後の限界接触角との差が大きく、形成された被膜は水道水に浸漬することによって流失、すなわち耐水性に乏しいことがわかる。比較例3に示すように、樹脂として一般的に使用されているシリケートオリゴマーを用いた場合、ローラーを用いて塗布すると、試験板にチョーキング現象が発生していることがわかる。
【手続補正書】
【提出日】2019年3月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)に示されるモノマー単位を少なくとも含むフッ素樹脂(A)と、光触媒粉末(B)と、溶剤(C)とを含み、
成分(B)の平均粒子径が、2次粒子径として0.4〜2.0μmであり、
成分(A)100質量部に対して、成分(B)が100〜300質量部の割合で含有され、
成分(A)と成分(B)とが合計で0.06〜1質量%の濃度で含有される、
光触媒塗料組成物。
【化1】
【請求項2】
前記成分(A)が、下記式(II)に示されるモノマー単位をさらに含む樹脂である請求項1に記載の光触媒塗料組成物。
【化2】
式(II)中、C
mF
2mおよびC
nF
2nは直鎖または分岐のパーフルオロアルキレン基であり、mは1〜10の整数であり、nは1〜5の整数である。
【請求項3】
前記式(II)に示されるモノマー単位が、パーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]に由来するモノマー単位である請求項2に記載の光触媒塗料組成物。
【請求項4】
前記成分(A)が、800以上のスルホン酸当量を有する請求項2または3に記載の光触媒塗料組成物。
【請求項5】
前記成分(B)が、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛および酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光触媒塗料組成物を、ローラー塗装によって基材に塗布する塗装方法。