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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-156979(P2019-156979A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】複合組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20190823BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   C08L83/04
   C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-45976(P2018-45976)
(22)【出願日】2018年3月13日
(71)【出願人】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕美
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP14W
4J002DA016
4J002DA037
4J002FB026
4J002FD116
4J002FD117
4J002GQ02
(57)【要約】
【課題】ウェアラブル機器に利用でき、ハンドクリーム等の油分に接しても抵抗値の悪化が少ない複合組成物を提供すること。
【解決手段】オルガノポリシロキサンでなる高分子基材と、複数のカーボンナノチューブ単繊維が結束した直径50〜2000nmのバンドルを有するカーボンナノチューブ繊維状物と、前記カーボンナノチューブ繊維状物よりもアスペクト比の小さい導電性粉末と、を含み、前記導電性粉末が前記カーボンナノチューブ繊維状物を覆うとともにこれらの導電性体が前記高分子基材に分散した複合組成物として構成した。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサンでなる高分子基材と、
複数のカーボンナノチューブ単繊維が結束した直径50〜2000nmのバンドルを有するカーボンナノチューブ繊維状物と、
前記カーボンナノチューブ繊維状物よりもアスペクト比の小さい導電性粉末と、を含み、
前記導電性粉末が前記カーボンナノチューブ繊維状物を覆うとともにこれらの導電性体が前記高分子基材に分散した複合組成物。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ単繊維の直径が0.4〜50nmである請求項1記載の複合組成物。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ繊維状物のアスペクト比が2以上であり、前記導電性粉末のアスペクト比が2未満である請求項1または請求項2記載の複合組成物。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ繊維状物の平均繊維径よりも前記導電性粉末の平均粒径が小さい請求項1〜請求項3何れか1項記載の複合組成物。
【請求項5】
100Ω・cm以下の体積抵抗率を備える請求項1〜請求項4何れか1項記載の複合組成物。
【請求項6】
皮膚表面への貼着可能な粘着性表面を有するシート状に形成された請求項1〜請求項5何れか1項記載の複合組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子基材中に特定のバンドル径を有するカーボンナノチューブ繊維状物が分散した複合組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体の状態を検知して記録して、トレーニングや健康管理のために情報をフィードバックする腕時計やバンド型の活量計などのウェアラブル機器が活発に開発されている。こうした活量計等において人体の状態を検知するセンサとしては、光センサや加速度センサが用いられることが多い。これらのセンサは必ずしも人体と接触していなくても所定の情報を検知できるため、耐久性や装着性の観点から好ましいものであったが、得られる情報に限度があることから、より多くの情報を活用したいという要望が出るようになってきた。これに対し、人体の状態を検知する方式には電気的な方式もあり、心電図への利用など医療分野では以前から実用化されてきた。
【0003】
心電図等の医療機器により電気的な方式で人体からの医療情報を検知するための電極は、水系のゲル素材に塩化銀を複合したゲル電解質を介して人体に貼り付けているが、ゲル電解質は水分の影響を受け易く、耐久性が著しく低いため、数十回の使用で交換する必要があり、ウェアラブル機器への適用は困難であった。
【0004】
ウェアラブル機器や医療機器等で用いられ、人体に貼着する柔軟部材に関する先行技術文献としては、次に示す公報を挙げることができる。最初に挙げる特開2003−225217(特許文献1)には、所定の構造を備えるオルガノポリシロキサン100重量部と、導電性カーボン1〜100重量部と、所定の帯電防止剤0.1〜50重量部、所定量の硬化剤とを含む生体電極用シリコーンゴム組成物が開示されている。
【0005】
この特許文献1に記載された発明は、人体上での抵抗値の安定性を課題として発明されたものであるが、その発明で用いるシリコーンはハンドクリームなどの油分を吸収しやすく、シリコーンに炭素粉末を配合した導電性組成物は、油分を吸収すると抵抗値が高くなり易いという問題があった。
【0006】
次に挙げる特開2016−067722(特許文献2)には、カーボンナノチューブ(以下「CNT」とも記す)を含む抄紙成型シートを有する生体用電極が記載されている。この特許文献2に記載された発明は、低周波におけるインピーダンスを低減することで生体信号を良好に検出すること、X線CTとの併用が可能であること、安価で使い捨てが可能であることを目的とした発明であるが、柔軟なシートを用いていないため生体に密着させることが困難であり、また、生体との間に親水性のゲルを介在させると、経時による水分の揮発や、汗の吸収などでゲルが劣化したり抵抗値が変化したりする問題があった。
【0007】
最後に挙げるWO2016/133207(特許文献3)には、直径20nm以下で層数10層以下のCNTをエラストマ中に0.1〜20重量%分散させたCNTエラストマ複合材料が記載されている。この特許文献3に記載された発明は、引き裂き強度や耐薬品性向上を目的としたものであるが、解繊してバンドルを形成しないようにした所定のCNTを用いており、製造に際し長時間の処理が必要でコストの点で懸念があり、また、バインダーとしてシリコーンを用いた場合には、油分を吸収して抵抗値が高くなり易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−225217号公報
【特許文献2】特開2016−067722号公報
【特許文献3】国際公開第2016/133207号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、ウェアラブル機器や医療機器等で用い皮膚に貼着される柔軟な組成物では、種々の課題があり、またハンドクリーム等の油分に接すると抵抗値が高くなるという課題があった。そこで本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、ウェアラブル機器に利用でき、ハンドクリームや化粧品等に含まれる油分に接しても抵抗値の悪化が少ない複合組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の複合組成物は以下のとおり構成される。即ち、本発明は、オルガノポリシロキサンでなる高分子基材と、複数のカーボンナノチューブ単繊維が結束した直径50〜2000nmのバンドルを有するカーボンナノチューブ繊維状物と、前記カーボンナノチューブ繊維状物よりもアスペクト比の小さい導電性粉末と、を含み、前記導電性粉末が前記カーボンナノチューブ繊維状物を覆うとともにこれらの導電性体が前記高分子基材に分散した複合組成物により構成される。
【0011】
オルガノポリシロキサンでなる高分子基材を用いたため、ゲル電解質のような水分の蒸発が課題とならず、長期間にわたって柔軟性を維持することができる。また、複数のカーボンナノチューブ単繊維が結束した直径50〜2000nmのバンドルを有し、導電性粉末に覆われているカーボンナノチューブ繊維状物を含むため、ハンドクリーム等に含まれる油分に接した後に抵抗値が悪化するという耐薬品性の課題を解消し、これらの油分に接しても安定した抵抗値を維持し、製品の劣化を起こし難い。
【0012】
さらにカーボンナノチューブ繊維状物よりもアスペクト比の小さい導電性粉末を含むため、この導電性粉末がカーボンナノチューブ繊維状物の周りをきめ細かく覆うため、カーボンナノチューブの絡まりによって生じる細孔を埋めることができる。これにより、高分子基材中の導電性パスを効果的につなぐことができ導電性を高めることができる。また、これにより導電性粉末は、ランダムに分散しているのではなく、カーボンナノチューブ繊維状物の繊維に沿って密集する。そのため、複合組成物の抵抗値を効果的に低くすることができ、また高分子基材が伸長や膨潤しても、導電性粉末どうしの隙間を広がり難くすることができる。したがって、ハンドクリームや化粧品等に含まれる油分が高分子基材に浸透して膨潤しても抵抗値の悪化が少ない複合組成物とすることができる。
【0013】
前記本発明は、前記カーボンナノチューブ単繊維の直径が0.4〜50nmであるものとして構成できる。前記カーボンナノチューブ単繊維の直径を0.4〜50nmとしたため、50〜2000nmに至る所望のバンドル径を有するカーボンナノチューブ繊維状物を得られると共に、カーボンナノチューブ繊維状物に導電性粉末を付着し易くすることができる。
【0014】
前記本発明は、前記カーボンナノチューブ繊維状物の平均繊維径よりも前記導電性粉末の平均粒径が小さいものと構成することができる。前記カーボンナノチューブ繊維状物の平均繊維径よりも前記導電性粉末の平均粒径を小さくしたため、この導電性粉末がカーボンナノチューブ繊維状物の周りを覆い易い。そのため、高分子基材中の導電性パスを効果的につなぐことができ導電性の高い複合組成物とすることができる。
【0015】
前記本発明は、100Ω・cm以下の体積抵抗率を備えるものとして構成できる。100Ω・cm以下の体積抵抗率を備えるため、人体に貼付して使用する用途に好適に用いることができる。
【0016】
前記本発明は、皮膚表面への貼着可能な粘着性表面を有するシート状に形成されたものとして構成できる。皮膚表面への貼着可能な粘着性表面を有するシート状に形成したため、ヒトの体表に貼着して使用することができ、生体電極用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の複合組成物によれば、ウェアラブル機器に利用でき、ハンドクリーム等に含まれる油分に接しても抵抗値の悪化が少ないという耐薬品性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】表1の繊維状物1の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図2】表1の繊維状物2の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図3】表1の繊維状物3の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図4】表1の繊維状物4の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図5】表1の繊維状物5の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図6】表1の繊維状物6の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図7】表1の導電性粉末1の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図8】表1の導電性粉末2の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図9】表1の試料1の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図10】表1の試料2の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図11】表1の試料3の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図12】表1の試料4の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図13】表1の試料5の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図14】表1の試料6の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図15】表1の試料7の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図16】表2の試料11の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図17】表2の試料12の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図18】表2の試料13の走査型電子顕微鏡による写真図である。
図19】カーボンナノチューブ繊維状物の表面に導電性粉末が付着する様子を示す模式図である。
図20】導電性粉末がカーボンナノチューブ単繊維を覆っていない様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の複合組成物について実施形態に基づいて詳しく説明する。各実施形態において重複する材料、材質、大きさ、製造方法、作用効果、機能等については重複説明を省略する。
【0020】
本発明の複合性組成物は、オルガノポリシロキサンでなる高分子基材と、複数のカーボンナノチューブ単繊維が結束した直径50〜2000nmのバンドルを有するカーボンナノチューブ繊維状物と、前記カーボンナノチューブ繊維状物よりもアスペクト比の小さい導電性粉末と、を含み、前記導電性粉末が前記カーボンナノチューブ繊維状物を覆うとともにこれらの導電性体が前記高分子基材に分散したものである。最初にこの複合組成物を構成する成分について詳しく説明する。
【0021】
高分子基材: 高分子基材は、繊維状物やその他の充填剤を保持する部材であり、オルガノポリシロキサンでなるシリコーンゴムで形成される部材である。シリコーンゴムとしては過酸化物硬化型、付加反応型のものなど何れも使用することができ、その性情も液状であっても、固体状であってもよい。シリコーンゴムの好ましい性質としては、生体に対する刺激性や腐食性がほとんどなく、また耐環境性や耐薬品性が比較的高いことがある。また、シリコーンゴムは表面自由エネルギーが小さく、炭素材料やその他の充填剤との親和性に優れるため、繊維状物等を高充填し易い性質をもつこと。硬化物を柔軟にすることができ、貼付したときに不快感が少ないことも挙げることができる。前記シリコーンの中でも付加反応型シリコーンは、硬化前は比較的低粘度のため、繊維状物やその他の添加剤を充填し易いという点で好ましい。この場合は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンなど液状シリコーンの主剤と硬化剤で液状成分を形成し、その後熱硬化等により高分子マトリクスを形成することで硬化してゴム状弾性を有する固化体となる。
【0022】
カーボンナノチューブ繊維状物: カーボンナノチューブ繊維状物は、カーボンナノチューブの集合体であって、カーボンナノチューブ単繊維が平行に結束することでバンドルを形成した部分を少なくとも有するものである。すなわちバンドルは、複数のカーボンナノチューブ単繊維が平行に結束して、全体として太い繊維状物を構成している状態をいう。したがって、カーボンナノチューブが他のカーボンナノチューブと結束していないものはバンドルを形成しているとは言わず、また、多数のカーボンナノチューブが接していても、その繊維どうしが平行に結束した部分が存在せず、単に絡まっているだけのものはバンドルを形成しているとは言わない。したがって、バンドルを形成しない態様のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブ繊維状物には含まれない。
【0023】
バンドルの形成は、カーボンナノチューブ繊維状物の全体でも良いし一部分であっても良いが、少なくとも50%以上のカーボンナノチューブはバンドルの一部となっていることが好ましい。バンドルが部分的である態様としては、カーボンナノチューブ単繊維の一端側が他のカーボンナノチューブ単繊維と結束しているが、他端がフリーである場合を例示することができる。また、バンドルを形成しているカーボンナノチューブ繊維状物の外形は、繊維が平行に結束しているバンドルが単独でカーボンナノチューブ繊維状物を構成する以外にも、複数のカーボンナノチューブ繊維状物どうしが複雑に絡みあう形態や、太いバンドルが部分的解れて、一部が細いバンドルを構成している形態もある。
【0024】
カーボンナノチューブ単繊維としては、その直径が0.4〜50nmのカーボンナノチューブを用いることが好ましい。直径が0.4nm未満のカーボンナノチューブ短繊維は得ることが難しく、実用的ではない。一方、直径が50nmを超えるカーボンナノチューブを用いると、後述の耐薬品性の改善効果が小さくなることが懸念される。耐薬品性の改善にはバンドル構造、すなわちカーボンナノチューブどうしが接している状態が寄与しているものと考えられるが、所定のバンドル径のカーボンナノチューブ繊維状物を考えたとき、その構成要素であるカーボンナノチューブ単繊維の直径が大きくなると相対的にカーボンナノチューブ繊維状物を構成する単繊維の数は減ることとなり、カーボンナノチューブどうしが接している界面が少なくなるからと考えられる。
【0025】
また、カーボンナノチューブ単繊維の直径が0.4〜50nmの範囲であると、開繊により任意のバンドル径を備えた繊維状物を得易い点で好ましい。さらに、カーボンナノチューブ単繊維の直径は、少なくとも得ようとするカーボンナノチューブ繊維状物のバンドル径の5分の1以下であることが好ましく、さらに小さいことがより好ましい。
【0026】
バンドルの直径は50〜2000nmであることが好ましい。直径がこの範囲にあるときに耐薬品性が向上するからである。バンドルの直径が50μm未満となるまで分散している場合や、2000nmを超える太さのバンドルを形成している場合には、耐薬品性を向上させる効果が乏しい。一般にカーボンナノチューブは、その製造過程で、複数のカーボンナノチューブが結束して太いバンドルを形成しているが、分散剤等と共にそのまま樹脂等に配合したり、バンドルを開繊してカーボンナノチューブ単繊維が分散した状態で用いたりすることがあっても、バンドル径を所定の範囲に調製することの利点はあまり注目されてこなかった。しかしながら、本発明ではバンドルの直径の範囲を限定することで、耐薬品性の向上に資することができた。
【0027】
カーボンナノチューブ単繊維の繊維長は、0.1〜600μmとすることが好ましい。繊維長が0.1μm未満の場合には、繊維どうしの接触が少なくなり、導電性が悪くなるおそれがある。一方、繊維長が600μmを超えると繊維どうしが過剰に絡まりあい、カーボンナノチューブ繊維状物を分散させた液状混合物の粘度が高くなりすぎるおそれがある。なお、開繊処理により、比較的長い繊維長を持つカーボンナノチューブ単繊維は、ある程度の長さに破断される。
【0028】
カーボンナノチューブ維状物の添加量は、高分子基材100体積部に対して0.3〜5体積部とすることが好ましい。0.3体積部よりも少ないと、導電性粉末が付着する繊維状物の量が少なくなり、耐薬品性を向上させる効果が望み難く、5体積部よりも多いと、相対的に高分子基材の含有量が少なくなり、得られる複合組成物の柔軟性が損なわれるおそれがある。
【0029】
カーボンナノチューブ繊維状物のアスペクト比は2以上であることが好ましく、5以上がより好ましく、10以上であることがなお好ましい。アスペクト比が2以上であることで、少ない添加量でもカーボンナノチューブ繊維状物どうしが接触し導電性が高まるからである。アスペクト比の上限は特に限定するものではないが一態様として100以下を例示できる。
【0030】
バンドル径の測定は、次の方法に従った。走査型電子顕微鏡でカーボンナノチューブを観察し、その視野内で多数を占めるバンドルの平均的な大きさのものを任意に100本選択して、その直径を測定した。そしてこの直径の相加平均をバンドル径とした。なお、走査型電子顕微鏡による観察に際しては、拡大率は任意とすることができるが、低倍率から倍率を上げながら観察していき最初に認められた繊維状物の直径を測定できる程度の拡大率が好適であり、典型的には0.1〜10μmを測定し得る範囲の拡大率とすることが好ましい。このようにする理由は、倍率を高めすぎると、バンドル構造を把握できずに、誤って部分的に解けたカーボンナノチューブや粉砕された微粉末を測定するおそれがあるためである。拡大率の設定に際しては、平均的な大きさのものに対してその10倍以上大きいものや10分の1以下の小さいものを含めないと1画面内で100本の繊維状物を捉えられない場合には、異なる視野に移動して測定しても良い。なお、バンドル径の測定方法は電子顕微鏡に限定されず、繊維状物の直径を認識し得る他の測定方法を採用しても良い。例えば、透過型電子顕微鏡などを採用することができる。また、カーボンナチューブ単繊維の直径や繊維長も同じ測定方法を採用することができる。
【0031】
カーボンナノチューブ繊維状物は、比較低強い相互作用で結束してバンドルを構成しているため、通常のニーダー、ロール、回転羽根、ミキサー、振動撹拌機、自転公転撹拌機等では、混合の前後でほとんどバンドル径が変化しない。したがって、前記したバンドル径は、高分子基材に分散した前後の状態で変わらないということができる。そのため、複合組成物から高分子基材を溶解したり分解したりできる場合に、高分子基材から分離したカーボンナノチューブ繊維状物のバンドル径も、複合組成物中に存在する場合のバンドル径とほとんど変わらない。したがって、複合組成物から単離したカーボンナノチューブ繊維状物のバンドル径を測定することで、複合組成物形成前のカーボンナノチューブ繊維状物のバンドル径を近似することができる。
【0032】
カーボンナノチューブとしては、シングルウォールカーボンナノチューブやマルチウォールカーボンナノチューブを用いることができる。
【0033】
導電性粉末: カーボンナノチューブはアスペクト比が極めて大きく、また比表面積が大きいことから高分子基材中に高充填し難いため、カーボンナノチューブだけで抵抗値を下げるには限界がある。そこでカーボンナノチューブ以外の導電性粉末を添加することで、低抵抗の複合組成物を得ることができる。導電性粉末の材質としては、導電性を高めるという観点からは、金や銀、ニッケル等の良導電性の金属粉末が好ましい。また、樹脂やゴム等の粉末を金や銀、ニッケル等でめっきした粉末は、導電性に優れるだけでなく、低価格、低比重であり、また高分子基材に近い比重となるため硬化前の液状組成物の段階において導電性粉末の沈降を抑制できる点で好ましい。別の材質としては炭素材料を用いることもでき、ケッチェンブラック等のストラクチャーを形成し易い炭素粉末や、比較的大きな黒鉛化炭素繊維および鱗片状黒鉛粉末を用いることは好ましい。
【0034】
この導電性粉末は、カーボンナノチューブ繊維状物よりもアスペクト比の小さい材料を用いる。こうした導電性粉末をカーボンナノチューブ繊維状物と共に用いることで複合組成物の導電性を飛躍的に高め、また、複合組成物の耐薬品性を向上させる相乗効果が認められる。
【0035】
さらに導電性粉末としては、カーボンナノチューブ繊維状物の平均繊維径よりも平均粒径が小さいものを用いることが好ましい。こうした大きさの導電性粉末を用いることで繊維状物の周りを導電性粉末できめ細かく覆うことができるからである。導電性粉末は、単独で用いても良いが、粒度の異なる複数の導電性粉末を混合することで、効果的に導電性を高めることができる。なお、上記導電性粉末の平均粒径についても、バンドル径と同様の走査型電子顕微鏡による測定方法で求めることができる。
【0036】
導電性粉末の添加量は任意とすることができるが、例えば以下のようにすることができる。導電性粉末として金属粉末を用いる場合には、高分子基材100体積部に対して20〜50体積部とすることが好ましい。また、導電性粉末としてケッチェンブラックを用いる場合には、高分子基材100体積部に対して1〜10体積部、黒鉛化炭素繊維を用いる場合には、高分子基材100体積部に対して5〜20体積部、鱗片状黒鉛粉末を用いる場合には、高分子基材100体積部に対して10〜30体積部とすることが好ましい。
【0037】
導電性粉末の添加量は、カーボンナノチューブ繊維状物の添加量より多いことが好ましい。また、導電性粉末の添加量は、体積割合でカーボンナノチューブ繊維状物の添加量の2〜30倍であることがより好ましく、10〜20倍であることが特に好ましい。導電性粉末の添加量を、カーボンナノチューブ繊維状物の添加量より多くすることで、カーボンナノチューブ繊維状物の表面の広い範囲を導電性粉末で覆うことができるためである。また、この範囲を2〜30倍とすることで、耐薬品性を高めながら、複合組成物の抵抗値を効果的に下げることができ、10〜20倍では、カーボンナノチューブ繊維状物の周りを導電性粉末できめ細かく覆うことができ、耐薬品性を大幅に高めることができる。
【0038】
添加剤等: 上記成分以外にも本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種添加剤を適宜配合することができる。例えば、シランカップリング剤や反応遅延剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤及び帯電防止剤等が挙げられる。また、導電性を必要としない用途であれば、シリカやクレイ等の絶縁性フィラーを添加してもよく、電磁波対策機能を付与したい場合には軟磁性体フィラーなどの種々の充填剤により、用途に応じた機能を付与することもできる。
【0039】
硬化して高分子基材となる液状シリコーンの主剤と硬化剤からなる液状成分には溶剤やその他の液状成分を加えることができる。溶剤を用いる場合には、液状成分の硬化後に揮発させることにより複合組成物中に残存させない場合や、複合組成物中に残存させて可塑剤とすることができる。溶剤の具体例としては、トルエンやジメチルポリシロキサンオイルを挙げることができる。
【0040】
製造方法: 典型的な例では、カーボンナノチューブはその生産(合成)において、カーボンナノチューブどうしの相互作用が強いため大きなバンドルを形成した状態で生産される。したがって、所定のバンドル径を備えた繊維状物を得るためには解繊処理を行う必要がある。解繊処理の一例としては、以下の方法を採用することができる。
【0041】
硬化させることで高分子基材となる液状シリコーンの主剤と硬化剤を含む混合物からなる液状成分とカーボンナノチューブ繊維状物を混合し、ジェットミルやホモジナイザー、超音波照射等によってカーボンナノチューブ繊維状物を液状成分中に分散させながら解繊処理をすることができる。これらの方法の中では、比較的大きなバンドル径のカーボンナノチューブ繊維状物が得られる超音波照射法よりは、解繊を進めることができるジェットミルが好ましい。
【0042】
高分子基材となる液状成分と、カーボンナノチューブ繊維状物を混合する割合は適宜変更し得るが、前記液状成分にカーボンナノチューブ繊維状物を混合した分散液の粘度が高くなりすぎると、解繊処理によりこの分散液の温度が上昇し、液状成分の揮発や劣化、解繊処理のための機器への悪影響が懸念される。こうした点を考慮すると、液状成分100体積部に対してカーボンナノチューブ繊維状物の混合割合は1〜10体積部程度が好ましい。
【0043】
こうして得たカーボンナノチューブ混合液を高分子基材となる液状成分や導電性粉末、必要によりその他の添加剤等と混合し、液状成分を硬化することで複合組成物を得ることができる。複合組成物の体積抵抗率は、1×10−3〜100Ω・cmの範囲とすることができる。こうした体積抵抗率を備える複合組成物は、人体に貼付して使用する用途に好適である。
【実施例】
【0044】
実施例に基づいて本発明をさらに説明する。
【0045】
カーボンナノチューブ繊維状物の製造: カーボンナノチューブ繊維状物を調製した。ジメチルポリシロキサンオイル(粘度1cS;25℃)を用い、これにカーボンナノチューブを分散させた。このジメチルポリシロキサンオイルは、後述の液状シリコーンと混合した後に、揮発させるため複合組成物中には略残存しない。
【0046】
より具体的には、ジメチルポリシロキサンオイル300質量部と、スーパーグロース法で製造したカーボンナノチューブ繊維状物(比重2.2、単繊維の平均直径4nm、バンドル径20000nm)を10質量部とを混合し、その後ジェットミル(常光社製「JN5」(商品名))で10分間解繊処理をしてカーボンナノチューブ繊維状物1を含む混合液1を得た。得られた混合液1中のカーボンナノチューブ繊維状物のバンドル径は50nmであった。続いて、解繊処理の圧力と処理時間を変更して繊維状物2〜6を含む各混合液2〜6を得た。
【0047】
複合組成物(試料1〜13)の製造: 前記カーボンナノチューブ繊維状物1を含む混合液1と、液状シリコーンの主剤(ビニル基含有オルガノポリシロキサン)50質量部と、液状シリコーンの硬化剤(ハイドロジェンオルガノポリシロキサン)50質量部と、導電性粉末2としてアスペクト比が上記カーボンナノチューブ繊維状物1よりも小さいケッチェンブラック10質量部を混合し、振動撹拌機を用いて1分間撹拌した。次いで、この混合物を厚みが200nm程度となるようにポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布してから加熱して、ジメチルポリシロキサンオイルを揮発しながら液状シリコーンを硬化して試料1となる複合組成物を得た。なお、複合組成物の外形は幅2cm、長さ5cmとした。この試料1の配合、および後述する耐薬品性試験結果について以下の表1に示した。表中の「繊維状物1」は上記カーボンナノチューブ繊維状物1を示す。
【0048】
混合成分を次の表1及び表2に示した材料、配合量(質量部)に変更した以外は試料1と同様の方法で、試料1〜13となる複合組成物を製造した。用いた混合成分のうち、導電性粉末1は、気相成長法によるカーボンナノチューブ(直径約150nm)である。このカーボンナノチューブはバンドルを形成していないため、繊維状物ではなく導電性粉末に分類している。また、表中の「繊維状物2」〜「繊維状物6」は、カーボンナノチューブ繊維状物1を製造した際のカーボンナノチューブ繊維状物(比重2.2、単繊維の平均直径4nm、バンドル径20000nm)を用い、同様のジェットミルにて、解繊時間を変更することで、バンドル径が異なるカーボンナノチューブ繊維状物としたものである。「繊維状物2」のバンドル径は200nm、「繊維状物3」は750nm、「繊維状物4」はバンドル径が2000nm、「繊維状物5」はバンドル径が20000nm、「繊維状物6」はバンドル径が30nmであり、「繊維状物5」は解繊処理を行っていないものである。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
また、表中における混合成分の顕微鏡写真図を図1図18に示した。このうち図1図8に示した写真は、複合組成物に配合する前の各粉末を走査型電子顕微鏡で撮影したものである。一方、図9図18に示した写真は、作製した複合組成物からシリコーン溶解剤を用いて高分子基材を除去し、その後に洗浄した粉末を走査型電子顕微鏡で撮影したものである。
【0052】
上記試料1〜13の複合組成物について、次に説明する種々の測定を行った。
【0053】
体積抵抗率: 各試料について、低抵抗率計(三菱化学社製、「Loresta−GP MCP−T600」(商品名))を用いて抵抗値を測定し、次いで体積抵抗率を算出した。
【0054】
耐薬品性: 各試料について、その表面にリキッドファンデーション(メイベリン社製、「スーパーミネラルリキッド ロングキープ オークル2」(商品名))を0.3g均一に塗布し、その上からガーゼをかぶせた状態で、温度65℃、湿度95%RHの条件で12時間放置し、耐薬品性試験とした。その後、各試料の表面からリキッドファンデーションを拭き取って前記と同様に抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出した。
【0055】
各試料の導電性体の分散状態:いくつかの試料について高分子基材を溶解させて残った導電性体の様子を走査型電子顕微鏡により観察した。試料1〜試料6、試料11をそれぞれ示す図9図14図16では、それぞれの繊維状物の表面に導電性粉末2が付着している様子がわかった。直線状に見て取れる繊維状物には、多数の導電性粉末が集まることで綿状の導電性粉末群が形成されている様子が、図9図14図16から見て取ることができる。図19には、こうした繊維状物(a)の表面に導電性粉末2(b)が付着する様子を模式図として示す。一方、試料7を示す図15では、導電性粉末1,2が混合されているが、導電性粉末2は導電性粉末1を覆っていない様子がわかった。図20には、導電性粉末1(c)の表面を導電性粉末2(d)が覆っていない様子を模式図として示す。
【0056】
また、配合前のカーボンナノチューブ繊維状物2の状態を示す図2と、試料2から分離した粉末の状態を示す図10とを比較すると、カーボンナノチューブ繊維状物のバンドル径は、ほとんど変化していないことがわかった。したがって、カーボンナノチューブ繊維状物は、所定の解繊処理により解繊されるが、その後の配合や、分析のための分離過程では、ほとんど解繊されないことがわかった。
【0057】
各試料の評価: 試料1〜4は、耐薬品性試験後の体積抵抗率が初期値の83〜121%であり、体積抵抗率の変化が極めて小さいという結果が得られた一方で、試料5、7は、耐薬品性試験後の体積抵抗率が初期値の504〜540%であり、体積抵抗率の変化が極めて大きいという結果が得られた。また、試料6は、耐薬品性試験後の体積抵抗率が初期値の196%であり、体積抵抗率の変化が中程度であった。これらのことから、何れのカーボンナノチューブ繊維状物を用いても、耐薬品性を向上させる効果を有することがわかった。
【0058】
カーボンナノチューブ繊維状物のバンドル径の影響について考察すると、バンドル径が30nmの試料6は耐薬品性試験後の体積抵抗率が初期値の196%とやや悪く、バンドル径が50nmの試料1は前記変化が102%と改善していることがわかった。このことから、繊維状物のバンドル径は小さければよいというものでもなく、50nm以上であることが好ましいことがわかった。
【0059】
一方で、バンドル径が20000nmの試料5は耐薬品性試験後の体積抵抗率が初期値の540%と極めて悪く、バンドル径が2000nmの試料4は前記変化がなくかなり改善することから、カーボンナノチューブ繊維状物のバンドル径は大きくても改善効果は見込めず、2000nm以下が好ましいことがわかった。さらに試料7のように、カーボンナノチューブであってもバンドルを形成していない場合にも耐薬品性の改善効果が見込めないことがわかった。
【0060】
また、カーボンナノチューブ繊維状物を含まない試料8は、耐薬品性試験後の体積抵抗率が初期値の13630%と極めて悪いことがわかった。これに対して、導電性粉末を混合せず、カーボンナノチューブ繊維状物を単独で用いた試料9は、耐薬品性試験後の体積抵抗率が初期値の1590%であり、導電性粉末を単独で用いるよりは改善していた。そうした一方で、カーボンナノチューブ繊維状物と導電性粉末を共に含む試料2では、耐薬品性試験後の体積抵抗率は、初期値の121%であることから、カーボンナノチューブ繊維状物と導電性粉末の両者を含むことで、耐薬品性の改善について相乗効果があることがわかった。
【0061】
試料9と試料10との比較では、試料10に対して試料9の方が耐薬品性試験後の体積抵抗率の変化が小さいことがわかった。このことから導電性粉末を含まない場合であっても、所定のバンドル径を備える繊維状物を含む方が耐薬品性の改善効果が大きいことがわかった。
【0062】
試料2、試料8、試料11の比較では、試料8はカーボンナノチューブ繊維状物を含まず、試料11は0.23体積部、試料2は0.45体積部のカーボンナノチューブ繊維状物2を含む複合成形体であるところ、これらの試料の耐薬品性試験後の体積抵抗率の変化に注目すると、試料8は13630%と極めて悪いのに対して、試料11では144%、試料2では121%と改善されている。このことから、少なくともカーボンナノチューブ繊維状物を0.23質量%以上含めば、耐薬品性の向上が見込めることがわかった。
【0063】
導電性粉末2の添加量が異なる試料2、試料12、試料13について、その初期抵抗値について比較すると、大きな違いはないものの導電性粉末2の添加量が多くなるにつれて抵抗値が低くなり、試料13では0.8Ω・cmまで低くなった。また、耐薬品性試験後の体積抵抗率の変化については、試料2が最も変化が小さく、試料12と試料13は、やや悪い結果だった。
【0064】
ここで、カーボンナノチューブ繊維状物2と導電性粉末2の配合量について、さらに導電性粉末2のみを配合した試料8、カーボンナノチューブ繊維状物2のみを配合した試料9、カーボンナノチューブ繊維状物2の添加量を減少させた試料11を交えて考察する。体積抵抗率について比較すると、カーボンナノチューブ繊維状物2のみの試料9は9.4Ω・cm、これに導電性粉末2の添加量を増やしていった試料12は5.6Ω・cm、試料2は2.8Ω・cm、試料13は0.8Ω・cm、導電性粉末2のみの試料8は9.2Ω・cmだった。このことから、カーボンナノチューブ繊維状物2に導電性粉末2を多く添加した方が、体積抵抗率が低くなることがわかった。
【0065】
一方、耐薬品性試験後の体積抵抗率の変化を比較すると、カーボンナノチューブ繊維状物2のみの試料9は1590%、これに導電性粉末2の添加量を増やしていった試料12は425%、試料2は121%、試料13は171%、導電性粉末2のみの試料8は12630%だった。このことから、導電性粉末2を多くすれば、耐薬品性が高まるというわけではないことがわかった。カーボンナノチューブ繊維状物2と導電性粉末2の配合割合としてみると、「繊維状物2:導電性粉末2=0:1」の試料8は耐薬品性が極めて悪く、「繊維状物2:導電性粉末2=1:0」の試料9も悪い。一方、「繊維状物2:導電性粉末2=1:19.6」である試料11、「繊維状物2:導電性粉末2=1:15.1」である試料13、「繊維状物2:導電性粉末2=1:10」である試料2、「繊維状物2:導電性粉末2=1:5.1」である試料12は、前記試料8や試料9と比較して、いずれも耐薬品性が大きく改善していることがわかった。この中で、導電性粉末2の添加量がやや少ない試料12を除いたものが特に耐薬品性の改善効果が大きいことがわかった。このことから、カーボンナノチューブ繊維状物2に対する導電性粉末2の添加量は、体積割合でおおむね5〜20倍の範囲が好ましく、10〜20倍であることがより好ましいことがわかった。
【0066】
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態の変更または公知技術の付加や、組合せ等を行い得るものであり、それらの技術もまた本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
a カーボンナノチューブ繊維状物
b 導電性粉末
c カーボンナノチューブ単繊維
d 導電性粉末
図1
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図3
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